ゲスト
(ka0000)
狼雑魔討伐作戦4:狼に対抗する力を……!
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/10/04 22:00
- 完成日
- 2016/10/10 01:07
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●さらなる鍛錬を……
王都イルダーナ。
聖堂戦士団といえば、聖堂教会の戦力として知られているが、その中核となるメンバーは前線へと出て、激しい戦いの中へと身を置いている。
だが、戦闘経験の浅い団員達は、教会の雑務や、街の警護、手が足りない雑魔討伐など仕事に追われる日々を過ごし、なかなか自己啓発ができない現状がある。
それでも、現在、グラズヘイムの東にて発生している狼雑魔に対し、巡礼者が襲われるなど被害があっており、対処が急務となってきている中、末端隊員達の育成が不可欠と判断された。
今回はハンター側からの働きかけがあり、聖堂戦士団側が了承する形で行われる形で鍛錬の場が設けられた。
「我々としては、隊としての行動が基本だ」
小隊長であるロジェが語る。いかに連携の取れた行動ができるか。まずはそれに焦点を当てて、午前中、団員達はハンターとの模擬戦を望む。
3隊相手なら、いくら熟練のハンター相手とはいえ引けを取らないのではないかという考えだ。彼らにとって、これは格上の相手である狼雑魔を想定した戦いでもある。
「ただ、戦場において、個々の判断が求められる場面があることを、身をもって思い知らされました」
ファリーナが告げる。これは、狼を谷間で挟撃した際、小隊をバラけさせて作戦に当たらせたこと、そして、この間、狼の本拠地調査を少数で当たっていたファリーナが狼に囲まれたことなどがある。結局、現場では己の判断力、そして実力が物を言うのだ。
だからこそ、個々での戦力アップの為、午後は個別にハンター達から手ほどきを受ける形をとる。こちらに関しては、ハンターがやりやすい方法でと聖堂戦士団側は考えている。要するに、お任せしたいということだ。
ともあれ、実りある1日にしたい。任務として鍛錬する形だが、聖堂戦士団としては、貴重な人手を割くことになる。何も成果が上がらない状況では、ハンターに対する不信度も上がってしまう。決して手を抜くことは許されない。
「どうか、よろしく頼む」
団員を代表し、ロジェとファリーナがハンター達へと頭を下げたのだった。
王都イルダーナ。
聖堂戦士団といえば、聖堂教会の戦力として知られているが、その中核となるメンバーは前線へと出て、激しい戦いの中へと身を置いている。
だが、戦闘経験の浅い団員達は、教会の雑務や、街の警護、手が足りない雑魔討伐など仕事に追われる日々を過ごし、なかなか自己啓発ができない現状がある。
それでも、現在、グラズヘイムの東にて発生している狼雑魔に対し、巡礼者が襲われるなど被害があっており、対処が急務となってきている中、末端隊員達の育成が不可欠と判断された。
今回はハンター側からの働きかけがあり、聖堂戦士団側が了承する形で行われる形で鍛錬の場が設けられた。
「我々としては、隊としての行動が基本だ」
小隊長であるロジェが語る。いかに連携の取れた行動ができるか。まずはそれに焦点を当てて、午前中、団員達はハンターとの模擬戦を望む。
3隊相手なら、いくら熟練のハンター相手とはいえ引けを取らないのではないかという考えだ。彼らにとって、これは格上の相手である狼雑魔を想定した戦いでもある。
「ただ、戦場において、個々の判断が求められる場面があることを、身をもって思い知らされました」
ファリーナが告げる。これは、狼を谷間で挟撃した際、小隊をバラけさせて作戦に当たらせたこと、そして、この間、狼の本拠地調査を少数で当たっていたファリーナが狼に囲まれたことなどがある。結局、現場では己の判断力、そして実力が物を言うのだ。
だからこそ、個々での戦力アップの為、午後は個別にハンター達から手ほどきを受ける形をとる。こちらに関しては、ハンターがやりやすい方法でと聖堂戦士団側は考えている。要するに、お任せしたいということだ。
ともあれ、実りある1日にしたい。任務として鍛錬する形だが、聖堂戦士団としては、貴重な人手を割くことになる。何も成果が上がらない状況では、ハンターに対する不信度も上がってしまう。決して手を抜くことは許されない。
「どうか、よろしく頼む」
団員を代表し、ロジェとファリーナがハンター達へと頭を下げたのだった。
リプレイ本文
●少しでも力を得る為に
王都イルダーナ。
聖堂戦士団の詰め所に、ハンター達は集まっていた。
「今日はよろしく頼む」
改めてロジェがハンター達へと頭を下げると、隊員達は皆、教授を請うハンター達へと頭を下げた。
「これからも狼雑魔との戦いは熾烈になるでしょうし、訓練は良いと思います!」
アシェ-ル(ka2983) は聖導士達のその意気込みを買い、言葉を返す。
「少しでも、戦の機微をお伝えすることが出来れば」
アニス・エリダヌス(ka2491) は内心で歴戦と言われる程度の実力となったことを実感しつつも、自分達の動きが少しでも彼らの参考になればと思慮している。
(個人的には、非常に……らしくない、立ち回りを演じる事になりますけれど。その意図を汲んで貰えると良いですね)
何か技術であれ、発見であれ。聖堂戦士団の成長に良い刺激を与えられたならと天央 観智(ka0896) は考える。
「どうやら、自分の戦い方を確立できてないやつが多いみたいだからな」
狼と対する以前に、兵士として何が足りないのか。エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は「そこから教え込んでやらねぇと」と気合を入れる。
「はい、お願いします!」
それに対し、ファリーナが改めてハンター達へと会釈するのだった。
午前中はハンター8人と7人編成が3隊の聖導士とで、模擬戦を行う。
その前にと、エヴァンスは予め前日に隊員に配布していたアンケート用紙を回収する。それには、自分が使う武器、防具、戦闘のスタンスを大まかに記入してもらっていた。
それらを、エヴァンスは仲間にも目を通してもらう。隊員のこだわりや癖を大まかに理解した上で、午後のハンター主導で行う指導の際に、教授する流れをスムーズにしようと考えたのだ。
それを見ていた、アルスレーテ・フュラー(ka6148)は隊員達を眺めて思う。
「なんで、こんなに盾を使っていないのよ……」
武器を所持する前のめりな聖堂戦士団団員達に、アルスレーテは呆れる。
まずは、自分たちの身を。アルスレーテは彼らに少しでも守りの意識を植え付けたいと思いやっていた。
「できるだけ、狼に応用できるような模擬戦にしたいの」
敵に有効な攻撃の探り方、敵討伐の順番、そして、身の守り方……。団員達には、「戦場での考える力」を養ってもらいたいとバリトン(ka5112) は期待している。
「狼……、上手く再現できればよいのですが……」
聖導士達にとって、この模擬戦は狼との戦いをも想定したもので。すでに狼と直に相対しているハンターも多い。デュシオン・ヴァニーユ(ka4696) はその攻撃や機動力を示すことができればと、やや自身なさげに模擬戦に臨む。
「体の持つ限り何度でもやろう」
「ヘェ……、多勢で攻める。悪くねェ」
バリトンはゆっくりと構えを取る。万歳丸(ka5665) もまた、展開していく聖導士達を見ながらにやりと笑う。
「だが、まだまだ数が足りねェなァ! 俺を相手取ろうっつーなら、倍の人数連れて来なァ!」
そうして、万歳丸は隊列を組む聖導士へと襲い掛かったのだった。
●仮想狼だけではなく……
小隊ごとに編成を組む聖導士達。その中には、ロジェ隊。そして、別の隊にはファリーナ、セリアの姿が見える。
先陣をきるのは万歳丸だ。大型狼を模した動きをと、彼は大地を強く踏みしめてから手前の聖導士へと拳を叩きつける。万歳丸は立ち位置を小まめに変えて高機動戦闘を仕掛けていた。
「こうすると、万歳丸さんは風属性になります」
アシェールはその万歳丸に、緑色の風を纏わせて回避力を高める。アシェール自身は土砂を鎧のように纏って防御力を高めていた。
「これで、私は土属性の硬い人ですよ。攻撃通せるなら、やってみて下さい」
アシェールはある程度準備を整えた後、混元傘を振るって交戦していた。
観智は狼の行動阻害を意図し、時折冷気の嵐を巻き起こすが、さすがに攻め来る前衛の攻撃は捌かねばならない。先陣を切って攻めてくるファリーナやセリアの攻撃を盾で防ぎ、緑に輝く風を自らの身体に取り巻かせてから白兵戦を繰り広げていた。
聖導士達の力を少しでも高める為に。バリトンは武器を振るってくる聖導士達へと盾を構え、その有能性を分からせてやろうとする。杖を始めとした聖導士達の武器をバリトンは受け止め、あるいは受け流す。
(盾代わりの大刀の力が大きいと、気が付いてもらいたいの)
その上で、彼もまた狼の動きを真似るように、斬龍刀「天墜」を水平に構えて一気に間合いを詰めて聖導士達を貫く。それは、前足の爪を振るう狼のようだ。
とはいえ、いくらバリトンでもその全てを受け止めることはできない。共に行動するアルスレーテがバリトンの後で陰陽符「伊吹」を持ち、体内で練り上げたマテリアルを分け与えることで、彼の傷を癒す。
小隊での行動ということもあり、数で勝る聖導士は後のアルスレーテまで攻め込んでくる。彼女は積極的に攻撃をしてはいなかったが、間近にやってくるならば話は別。アルスレーテは鉄扇「北斗」を振り回して攻撃を避けながら、相手の身体をすくって投げ飛ばす。
さらに、特攻してきた別の聖導士の攻撃をバリトンは敢えて受け止めた。
「無謀と勇気は別じゃぞ?」
その隙を突き、バリトンは加減しながらも手痛い反撃をと切り込むのである。
「……神剣を授けましょう」
アニスは折を見て、前線で戦う仲間の武器に光の精霊力を付与した援護も行う。
とはいえ、相手する聖導士達は個々の力量が不足していたし、隊の統率も取れているとはいいがたい。
そんな彼らの攻撃を、アニスは盾で抑える。護身以上に剣を振るわぬようにしていたアニスは戦うハンターの身体へと光を纏わせ、防御を高める。
こうした支援を続けることで、身体を持って防御の重要性を示そうと彼女は考えていた。
「前線に攻撃を集中させ、一点突破を!」
対して、小隊長ロジェの指示で攻め来る小隊メンバー達。
「狼の攻撃には、厄介な状態異常が御座います」
デュシオンはそれを見て氷の矢をマテリアルによって生み出し、一直線に飛ばす。その矢による衝撃を受けた聖導士は、身体を凍りつかしてしまう。
「特徴として、狼は増援を呼ぶことも御座います」
タイミングを見て、デュシオンは広範囲に冷気の嵐を吹き荒れさせる。彼女は広域攻撃を行うことで、狼が呼ぶ増援の手数を演出していた。
これには、小隊メンバーは下がりながら、攻撃方法を組み立て直す。
「お前らはそもそも基礎がなってねぇんだ。軍隊として行動するなら、そこは重点的に覚えろ!」
向かい来る聖導士達に言い放つエヴァンスは前方にいながら、聖堂戦士団の戦いぶりを観察していた。仲間達が激しく攻め入るので、攻撃を控えめにして全体を見回していた形だ。
デュシオンは燃える火球を1つ生み出し、小隊へと投げ飛ばす。敢えて着弾点を直撃させないギリギリラインを狙い、彼女は威力も出来る限り抑える様にと配慮していたようだ。
それを食らったロジェ隊はなんとか体勢を整えつつ、再び攻勢に打って出てきたが、エヴァンスがしっかりとグレートソード「テンペスト」を薙ぎ払い、反撃を叩き込む。
「意識する場所を間違え過ぎだ。相手は一か所だけから攻めてくれるわけじゃねぇんだぜ」
その一撃でやや隊列を崩しかけたロジェ隊のメンバーにエヴァンスはそう告げ、劣勢の中で防御して耐えた後、自身の優位を取り戻す流れを教え込もうとしていた。
聖導士達も強敵相手とあって、序盤は包囲網を張るなど機能的な戦いを行っていた。
だが、戦いが長引いてくると、隊員達の傷も増え、士気が落ちてくる。
アニスはそれを見計らい、精霊に祈りを捧げて前線メンバーの傷を癒していく。これは、増援を想定したもの。更なる戦いが続くと、聖導士達を苦境に立たせる。
アルスレーテもまたバリトンを癒し続ける。
「どうだ、速攻でわしを倒すのは難しかろう」
こうなると、聖導士達は戦列が乱れ、小隊に統率がなくなってくる。
万歳丸は聖導士の役割分担が乱れたのを見計らい、無策に襲ってくる隊員を拳でぶっ飛ばす。
だが、中には、戦況を見定めて戦況分析する隊員もいる。万歳丸はそんな隊員を良い判断だと見逃す。
「個人の力も足りねえ。知恵もたりねェ。だが、実りはある。その事を感じなくちゃ、腐っちまうだけだしな!」
彼は嬉々として、模擬戦を楽しんでいたようだ。
その後で、観智も行動阻害を意図し、冷気の嵐を巻き起こして聖導士達を凍りつかせていく。
「来いよ、遠慮なく打って来い!」
そこで、万歳丸が後ろにいるアシェールと観智に支援を願う。
ならばと、観智は青白いガスを展開し、万歳丸ごと攻め来る聖導士達を眠らせてしまう。
「万歳丸さん行きますよ!」
さらに、アシェールが一直線に伸びる雷撃を打ち出し、万歳丸もろとも焼き払おうとする。
「おおおおおおお!」
ぷしゅー。
居眠り仕掛けた万歳丸が黒煙を上げる。聖導士達はそれに驚き戸惑っていた。
「まさか、仲間ごと撃つと思いました? 不測の事態はいつでも有り得ますよ」
それを合図に、双方が手を止める。
「属性を有効に使うという事を頭の片隅にでも入れておけば、なにか役に立つ時が来るはずです」
それが、戦場で首の皮一枚繋げる差となるかもしれないとアシェールが語るのを、傷つく聖導士達は互いの傷を癒しつつ耳にしていたのだった。
●模擬戦後だからこそ分かること
やや長めの小休憩を挟んだ後、午後の部が開始される。
いくら苦しかろうが、聖導士達は休むわけにも行かない。苦境の中での任務も多く、肉体面以上に精神的なタフさを求められるのだ。
「模擬戦中のわたしの動きは見ていただけましたか?」
アニスは、小隊長3人へと団体戦の支援、回復の重要性を説いていた。
それは、聖導士であるアニスだからこそ、同じ聖導士の聖堂戦士団へと伝えられることでもある。支援、回復のスキルは味方を鼓舞し、自身を含めた仲間が倒れない為の技術だとアニスは語った。
「是非、戦い抜いて、皆で生きてください」
生き抜いた先に希望がある。真剣ながらも優しい眼差しで隊長らを見つめるアニスはそう願っていた。
同じく、ハンター数人が一般隊員を集めて戦法についてそれぞれ語る。
「あれもこれもとやらず、まずは一つの修練度を上げるといい」
こちらはバリトン。聖導士であるならば、ヒール系を基本として、攻撃、守り、魔法など、どんな聖堂戦士になりたいのか、その方針を決めて伸ばしてみよとアドバイスする。
「まだ経験の浅いうちでも、一つでも自信があれば、それを軸に少し余裕が生まれ視野が広まるのじゃ」
もちろん、慣れてくれば、複合的に実力を高めることもできる。
「自分の将来(さき)を見つめよ」
バリトンは若い聖導士達へとそう諭していた。
「さて、僕から話と言うと……そうですね」
傍では、観智が自身の考えを語る。集団は生存戦術なのだと。
「強いものは群れない、必要が無いから。それは、悪い事ではなくて……。つまり、皆が無事である為に……互いが守り合う事と支え合う事が大切です」
そこで、アルスレーテが合いの手を入れる。
「……そりゃ、敵を倒せば結果として守れるかもしれないけど、そうじゃないでしょう」
今の戦いでも、攻める姿勢に出る隊員が多かったと彼女は指摘する。
「先の訓練で言えば、言わばバリトンが私の『盾』。盾であるバリトンが私を護るから、私は安心してヒーラーに徹していたのよ」
一方、バリトンにとっては、アルスレーテは生命を守る『鎧』だと語る。倒れることなく戦い続けられるのは、厚い守りがあってこそ。ヒーラーであるアルスレーテを倒さねば、バリトンも倒れることはない。
「敵を倒すなら、どちらを先に倒すべきか。それを判断する力も身に着けて欲しいわね」
なるほどと唸る隊員達へ、観智は追加して、自身が生き延びる為の戦術についても語っていた。
「生きてさえいれば、次が在り得るから……」
そんな観智の言葉も、聖導士達は重く受け止めてくれていたようだ。
デュシオンは、以前の依頼で同行したロジェ隊の面々と話をしていた。
「さて、問題です。あなた方が現在行うべき行動とは何でしょうか」
「雑魔に囲まれている怪我人を助ける」という目的でシチュエーションを提示し、デュシオンは質問を投げかける。丁度、ロジェ隊長はアニスと話していた為、指示を受けられぬ隊員は悩み、戸惑いながらも、答えを出そうと必至に考える。
出題するデュシオンにとって、答えは二の次。答えを出す為に考える姿勢を彼女は評価する。
「答えを教えてくれる人が常に傍にいるとは、限りませんのよ」
それをどうか忘れないで欲しいと、デュシオンは聖導士達へと願う。
ファリーナ所属の小隊には、エヴァンスが話しかけていた。彼らのスタンスと事前のアンケートを合わせ、質疑応答をしつつ、これから成長する方針を提示していた。
そんな聖導士の中から、アシェールはファリーナを呼んで話をしていた。
「今はそこそこ戦えるようになりましたが、私は駆け出しの頃は酷くて」
魔法を撃ち尽くし、仲間を背後から応援することもあったとアシェールは昔の自分について語る。
「聖導士のスキルは、回復や支援が多いと聞きました。攻撃は仲間に任せ、支援に徹する……そんなスキルのセットもありだと思うのです」
戦い方によってスキルを柔軟に使えるようにとアシェールが助言すると、前に出て戦っていたファリーナがややしゅんとしてしまっていた。
「これから先、きっと、もっと苦しい時があるかもしれませんが、絶対に諦めたりしないで下さいね」
「はい、ありがとうございます」
ファリーナはにっこりと笑顔を見せた。
座学をしていた聖導士から希望者を募り、万歳丸はさらに1対多数の演習を行っていた。
「てめェらには、理由があるンだろ。歪虚を前にしたって退かねェ理由が、よ」
何度でも付き合うと、彼は拳を聖導士達に突きつける。
「強くなりてェなら、上を見な。横も下も向くンじゃねェ。強くなったテメェら自身の背を見ろよ」
そうしないと、強くはなれない。過酷な環境で育った万歳丸だからこと言える言葉だ。
もう一手合わせする中で、彼は体内の《氣》を腕に集中させ、手加減して正面へと撃つ。
「――最後の教えだ。知らねェ相手には気をつけな。もっとも、こりゃ逆の立場でも言えるンだがな!」
拳を下げた万歳丸は最後にこう聖導士達を激励した。
「気張れよ。結果、楽しみにしてンぜ!」
狼雑魔の討伐の朗報。それに、聖導士達は一斉に「はい!」と返事したのだった。
王都イルダーナ。
聖堂戦士団の詰め所に、ハンター達は集まっていた。
「今日はよろしく頼む」
改めてロジェがハンター達へと頭を下げると、隊員達は皆、教授を請うハンター達へと頭を下げた。
「これからも狼雑魔との戦いは熾烈になるでしょうし、訓練は良いと思います!」
アシェ-ル(ka2983) は聖導士達のその意気込みを買い、言葉を返す。
「少しでも、戦の機微をお伝えすることが出来れば」
アニス・エリダヌス(ka2491) は内心で歴戦と言われる程度の実力となったことを実感しつつも、自分達の動きが少しでも彼らの参考になればと思慮している。
(個人的には、非常に……らしくない、立ち回りを演じる事になりますけれど。その意図を汲んで貰えると良いですね)
何か技術であれ、発見であれ。聖堂戦士団の成長に良い刺激を与えられたならと天央 観智(ka0896) は考える。
「どうやら、自分の戦い方を確立できてないやつが多いみたいだからな」
狼と対する以前に、兵士として何が足りないのか。エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は「そこから教え込んでやらねぇと」と気合を入れる。
「はい、お願いします!」
それに対し、ファリーナが改めてハンター達へと会釈するのだった。
午前中はハンター8人と7人編成が3隊の聖導士とで、模擬戦を行う。
その前にと、エヴァンスは予め前日に隊員に配布していたアンケート用紙を回収する。それには、自分が使う武器、防具、戦闘のスタンスを大まかに記入してもらっていた。
それらを、エヴァンスは仲間にも目を通してもらう。隊員のこだわりや癖を大まかに理解した上で、午後のハンター主導で行う指導の際に、教授する流れをスムーズにしようと考えたのだ。
それを見ていた、アルスレーテ・フュラー(ka6148)は隊員達を眺めて思う。
「なんで、こんなに盾を使っていないのよ……」
武器を所持する前のめりな聖堂戦士団団員達に、アルスレーテは呆れる。
まずは、自分たちの身を。アルスレーテは彼らに少しでも守りの意識を植え付けたいと思いやっていた。
「できるだけ、狼に応用できるような模擬戦にしたいの」
敵に有効な攻撃の探り方、敵討伐の順番、そして、身の守り方……。団員達には、「戦場での考える力」を養ってもらいたいとバリトン(ka5112) は期待している。
「狼……、上手く再現できればよいのですが……」
聖導士達にとって、この模擬戦は狼との戦いをも想定したもので。すでに狼と直に相対しているハンターも多い。デュシオン・ヴァニーユ(ka4696) はその攻撃や機動力を示すことができればと、やや自身なさげに模擬戦に臨む。
「体の持つ限り何度でもやろう」
「ヘェ……、多勢で攻める。悪くねェ」
バリトンはゆっくりと構えを取る。万歳丸(ka5665) もまた、展開していく聖導士達を見ながらにやりと笑う。
「だが、まだまだ数が足りねェなァ! 俺を相手取ろうっつーなら、倍の人数連れて来なァ!」
そうして、万歳丸は隊列を組む聖導士へと襲い掛かったのだった。
●仮想狼だけではなく……
小隊ごとに編成を組む聖導士達。その中には、ロジェ隊。そして、別の隊にはファリーナ、セリアの姿が見える。
先陣をきるのは万歳丸だ。大型狼を模した動きをと、彼は大地を強く踏みしめてから手前の聖導士へと拳を叩きつける。万歳丸は立ち位置を小まめに変えて高機動戦闘を仕掛けていた。
「こうすると、万歳丸さんは風属性になります」
アシェールはその万歳丸に、緑色の風を纏わせて回避力を高める。アシェール自身は土砂を鎧のように纏って防御力を高めていた。
「これで、私は土属性の硬い人ですよ。攻撃通せるなら、やってみて下さい」
アシェールはある程度準備を整えた後、混元傘を振るって交戦していた。
観智は狼の行動阻害を意図し、時折冷気の嵐を巻き起こすが、さすがに攻め来る前衛の攻撃は捌かねばならない。先陣を切って攻めてくるファリーナやセリアの攻撃を盾で防ぎ、緑に輝く風を自らの身体に取り巻かせてから白兵戦を繰り広げていた。
聖導士達の力を少しでも高める為に。バリトンは武器を振るってくる聖導士達へと盾を構え、その有能性を分からせてやろうとする。杖を始めとした聖導士達の武器をバリトンは受け止め、あるいは受け流す。
(盾代わりの大刀の力が大きいと、気が付いてもらいたいの)
その上で、彼もまた狼の動きを真似るように、斬龍刀「天墜」を水平に構えて一気に間合いを詰めて聖導士達を貫く。それは、前足の爪を振るう狼のようだ。
とはいえ、いくらバリトンでもその全てを受け止めることはできない。共に行動するアルスレーテがバリトンの後で陰陽符「伊吹」を持ち、体内で練り上げたマテリアルを分け与えることで、彼の傷を癒す。
小隊での行動ということもあり、数で勝る聖導士は後のアルスレーテまで攻め込んでくる。彼女は積極的に攻撃をしてはいなかったが、間近にやってくるならば話は別。アルスレーテは鉄扇「北斗」を振り回して攻撃を避けながら、相手の身体をすくって投げ飛ばす。
さらに、特攻してきた別の聖導士の攻撃をバリトンは敢えて受け止めた。
「無謀と勇気は別じゃぞ?」
その隙を突き、バリトンは加減しながらも手痛い反撃をと切り込むのである。
「……神剣を授けましょう」
アニスは折を見て、前線で戦う仲間の武器に光の精霊力を付与した援護も行う。
とはいえ、相手する聖導士達は個々の力量が不足していたし、隊の統率も取れているとはいいがたい。
そんな彼らの攻撃を、アニスは盾で抑える。護身以上に剣を振るわぬようにしていたアニスは戦うハンターの身体へと光を纏わせ、防御を高める。
こうした支援を続けることで、身体を持って防御の重要性を示そうと彼女は考えていた。
「前線に攻撃を集中させ、一点突破を!」
対して、小隊長ロジェの指示で攻め来る小隊メンバー達。
「狼の攻撃には、厄介な状態異常が御座います」
デュシオンはそれを見て氷の矢をマテリアルによって生み出し、一直線に飛ばす。その矢による衝撃を受けた聖導士は、身体を凍りつかしてしまう。
「特徴として、狼は増援を呼ぶことも御座います」
タイミングを見て、デュシオンは広範囲に冷気の嵐を吹き荒れさせる。彼女は広域攻撃を行うことで、狼が呼ぶ増援の手数を演出していた。
これには、小隊メンバーは下がりながら、攻撃方法を組み立て直す。
「お前らはそもそも基礎がなってねぇんだ。軍隊として行動するなら、そこは重点的に覚えろ!」
向かい来る聖導士達に言い放つエヴァンスは前方にいながら、聖堂戦士団の戦いぶりを観察していた。仲間達が激しく攻め入るので、攻撃を控えめにして全体を見回していた形だ。
デュシオンは燃える火球を1つ生み出し、小隊へと投げ飛ばす。敢えて着弾点を直撃させないギリギリラインを狙い、彼女は威力も出来る限り抑える様にと配慮していたようだ。
それを食らったロジェ隊はなんとか体勢を整えつつ、再び攻勢に打って出てきたが、エヴァンスがしっかりとグレートソード「テンペスト」を薙ぎ払い、反撃を叩き込む。
「意識する場所を間違え過ぎだ。相手は一か所だけから攻めてくれるわけじゃねぇんだぜ」
その一撃でやや隊列を崩しかけたロジェ隊のメンバーにエヴァンスはそう告げ、劣勢の中で防御して耐えた後、自身の優位を取り戻す流れを教え込もうとしていた。
聖導士達も強敵相手とあって、序盤は包囲網を張るなど機能的な戦いを行っていた。
だが、戦いが長引いてくると、隊員達の傷も増え、士気が落ちてくる。
アニスはそれを見計らい、精霊に祈りを捧げて前線メンバーの傷を癒していく。これは、増援を想定したもの。更なる戦いが続くと、聖導士達を苦境に立たせる。
アルスレーテもまたバリトンを癒し続ける。
「どうだ、速攻でわしを倒すのは難しかろう」
こうなると、聖導士達は戦列が乱れ、小隊に統率がなくなってくる。
万歳丸は聖導士の役割分担が乱れたのを見計らい、無策に襲ってくる隊員を拳でぶっ飛ばす。
だが、中には、戦況を見定めて戦況分析する隊員もいる。万歳丸はそんな隊員を良い判断だと見逃す。
「個人の力も足りねえ。知恵もたりねェ。だが、実りはある。その事を感じなくちゃ、腐っちまうだけだしな!」
彼は嬉々として、模擬戦を楽しんでいたようだ。
その後で、観智も行動阻害を意図し、冷気の嵐を巻き起こして聖導士達を凍りつかせていく。
「来いよ、遠慮なく打って来い!」
そこで、万歳丸が後ろにいるアシェールと観智に支援を願う。
ならばと、観智は青白いガスを展開し、万歳丸ごと攻め来る聖導士達を眠らせてしまう。
「万歳丸さん行きますよ!」
さらに、アシェールが一直線に伸びる雷撃を打ち出し、万歳丸もろとも焼き払おうとする。
「おおおおおおお!」
ぷしゅー。
居眠り仕掛けた万歳丸が黒煙を上げる。聖導士達はそれに驚き戸惑っていた。
「まさか、仲間ごと撃つと思いました? 不測の事態はいつでも有り得ますよ」
それを合図に、双方が手を止める。
「属性を有効に使うという事を頭の片隅にでも入れておけば、なにか役に立つ時が来るはずです」
それが、戦場で首の皮一枚繋げる差となるかもしれないとアシェールが語るのを、傷つく聖導士達は互いの傷を癒しつつ耳にしていたのだった。
●模擬戦後だからこそ分かること
やや長めの小休憩を挟んだ後、午後の部が開始される。
いくら苦しかろうが、聖導士達は休むわけにも行かない。苦境の中での任務も多く、肉体面以上に精神的なタフさを求められるのだ。
「模擬戦中のわたしの動きは見ていただけましたか?」
アニスは、小隊長3人へと団体戦の支援、回復の重要性を説いていた。
それは、聖導士であるアニスだからこそ、同じ聖導士の聖堂戦士団へと伝えられることでもある。支援、回復のスキルは味方を鼓舞し、自身を含めた仲間が倒れない為の技術だとアニスは語った。
「是非、戦い抜いて、皆で生きてください」
生き抜いた先に希望がある。真剣ながらも優しい眼差しで隊長らを見つめるアニスはそう願っていた。
同じく、ハンター数人が一般隊員を集めて戦法についてそれぞれ語る。
「あれもこれもとやらず、まずは一つの修練度を上げるといい」
こちらはバリトン。聖導士であるならば、ヒール系を基本として、攻撃、守り、魔法など、どんな聖堂戦士になりたいのか、その方針を決めて伸ばしてみよとアドバイスする。
「まだ経験の浅いうちでも、一つでも自信があれば、それを軸に少し余裕が生まれ視野が広まるのじゃ」
もちろん、慣れてくれば、複合的に実力を高めることもできる。
「自分の将来(さき)を見つめよ」
バリトンは若い聖導士達へとそう諭していた。
「さて、僕から話と言うと……そうですね」
傍では、観智が自身の考えを語る。集団は生存戦術なのだと。
「強いものは群れない、必要が無いから。それは、悪い事ではなくて……。つまり、皆が無事である為に……互いが守り合う事と支え合う事が大切です」
そこで、アルスレーテが合いの手を入れる。
「……そりゃ、敵を倒せば結果として守れるかもしれないけど、そうじゃないでしょう」
今の戦いでも、攻める姿勢に出る隊員が多かったと彼女は指摘する。
「先の訓練で言えば、言わばバリトンが私の『盾』。盾であるバリトンが私を護るから、私は安心してヒーラーに徹していたのよ」
一方、バリトンにとっては、アルスレーテは生命を守る『鎧』だと語る。倒れることなく戦い続けられるのは、厚い守りがあってこそ。ヒーラーであるアルスレーテを倒さねば、バリトンも倒れることはない。
「敵を倒すなら、どちらを先に倒すべきか。それを判断する力も身に着けて欲しいわね」
なるほどと唸る隊員達へ、観智は追加して、自身が生き延びる為の戦術についても語っていた。
「生きてさえいれば、次が在り得るから……」
そんな観智の言葉も、聖導士達は重く受け止めてくれていたようだ。
デュシオンは、以前の依頼で同行したロジェ隊の面々と話をしていた。
「さて、問題です。あなた方が現在行うべき行動とは何でしょうか」
「雑魔に囲まれている怪我人を助ける」という目的でシチュエーションを提示し、デュシオンは質問を投げかける。丁度、ロジェ隊長はアニスと話していた為、指示を受けられぬ隊員は悩み、戸惑いながらも、答えを出そうと必至に考える。
出題するデュシオンにとって、答えは二の次。答えを出す為に考える姿勢を彼女は評価する。
「答えを教えてくれる人が常に傍にいるとは、限りませんのよ」
それをどうか忘れないで欲しいと、デュシオンは聖導士達へと願う。
ファリーナ所属の小隊には、エヴァンスが話しかけていた。彼らのスタンスと事前のアンケートを合わせ、質疑応答をしつつ、これから成長する方針を提示していた。
そんな聖導士の中から、アシェールはファリーナを呼んで話をしていた。
「今はそこそこ戦えるようになりましたが、私は駆け出しの頃は酷くて」
魔法を撃ち尽くし、仲間を背後から応援することもあったとアシェールは昔の自分について語る。
「聖導士のスキルは、回復や支援が多いと聞きました。攻撃は仲間に任せ、支援に徹する……そんなスキルのセットもありだと思うのです」
戦い方によってスキルを柔軟に使えるようにとアシェールが助言すると、前に出て戦っていたファリーナがややしゅんとしてしまっていた。
「これから先、きっと、もっと苦しい時があるかもしれませんが、絶対に諦めたりしないで下さいね」
「はい、ありがとうございます」
ファリーナはにっこりと笑顔を見せた。
座学をしていた聖導士から希望者を募り、万歳丸はさらに1対多数の演習を行っていた。
「てめェらには、理由があるンだろ。歪虚を前にしたって退かねェ理由が、よ」
何度でも付き合うと、彼は拳を聖導士達に突きつける。
「強くなりてェなら、上を見な。横も下も向くンじゃねェ。強くなったテメェら自身の背を見ろよ」
そうしないと、強くはなれない。過酷な環境で育った万歳丸だからこと言える言葉だ。
もう一手合わせする中で、彼は体内の《氣》を腕に集中させ、手加減して正面へと撃つ。
「――最後の教えだ。知らねェ相手には気をつけな。もっとも、こりゃ逆の立場でも言えるンだがな!」
拳を下げた万歳丸は最後にこう聖導士達を激励した。
「気張れよ。結果、楽しみにしてンぜ!」
狼雑魔の討伐の朗報。それに、聖導士達は一斉に「はい!」と返事したのだった。
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【相談卓】聖堂戦士団強化月間 アシェ-ル(ka2983) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/10/04 19:07:14 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/10/03 05:10:53 |