• 猫譚

【猫譚】ユグディラの島で ~哀愁の羊娘~

マスター:坂上テンゼン

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/10/22 19:00
完成日
2016/10/29 17:33

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●ショートコントの二人
「支配人と支配者って言葉の意味は同じなのに全く違うわよね?」
「何言ってんの突然?!」

 森の中を歩く二人の少女。一人は緑色の巻き毛、もう一人は赤い直毛の髪型が特徴だった。この組み合わせは人によってはある二人組を思い出すかもしれない。それは決して無関係ではない。
 しかし頭に捩れた小さな角があったり、羊の毛を纏っていたりという特徴は彼女ら特有のものだ。
 より陣営をわかりやすく、という意味があるらしい。

 ベリアル軍幹部候補生――今は『元』がつく。もう幹部(ここではベリアルの側近を意味する。かの双子の少女がそうであったように)への道は完全に閉ざされたと見ていい。先月、その時点ですでに冷遇されていた幹部候補生のうち数人が実戦投入された。もしかしたら起死回生になり得なくはないかもしれない機会であったが、結果は全滅。これを聞いたベリアルは出来損ないメェと憤慨したという。

 既に軍内では立場がない。ゆえにこの二人は……元幹部候補生であるこの二人は……野に下るという選択をした。

 作戦に従い未開の地であるこの地に来た。
 作戦といっても彼女らは拠点で待機命令を出されている。
 未開の地であれば身を隠すのにはうってつけだ……見捨てられていたら隠れる意味がないが……。
 ともかく身を隠し再起の時を待つ。
 今は辛くとも未来に栄光を夢見る……傲慢として、同種といえど見下されるのは我慢ならないのだから。

「深い意味はないわ……」
「ま~たそれだよ! ゼーゼベル、君ゃいったい何度目の深い意味は無い発言をしてるんだい?!
 よっぽどその深い意味の無い発言が気に入ったと見えるね! それも主に語感がだろ!」
「何を言っているのギガーベル。ただのジョークよ。君主たるものユーモアにも秀でなければ駄目。
 あの豚羊はそれがなかったわ……」
「君ゃほんとにベリアル様に対して遠慮がないねぇ! 豚羊ってフレーズ、クラベル様も使ってたけどさぁ!」
「そうね、それじゃ新鮮さに欠けるわね……新しい呼び名を考えましょう」

「……豚ゴリラ」
「そりゃまずいって!」

「……トンガリ」
「繋がっちゃいけない方向に繋がっちゃったよ!」

「……しゃけ弁当」
「今度は繋がりがわからねぇ?!」

「……年中はだか祭り」
「そりゃ東方君主だろ!」

「……豚ゴリラ」
「二週目突入しちゃったよ!」

 この二人は元幹部候補生の中でも独自性が強い二人だった。
 フラベル・クラベルと似ているようで似ていない。

 フラベルとクラベルが『陽』と『陰』ならば、
 この二人、ゼーゼベルとギガーベルはまるで『ボケ』と『ツッコミ』――



 さておき、ここがどこなのかに触れようと思う。



 ここは、ユグディラの島。
  


●野生の王国
「王女殿下を困らせる奴は悪だ! 王女殿下を良く言わない奴は偽装された悪だ!」
 
 島では野生のヘザー・スクロヴェーニ(kz0061)が闊歩していた。

 訂正。いや、訂正するところはなかった。
 野生のヘザー・スクロヴェーニ(kz0061)が闊歩していた。

 王国暦1016年10月――
 グラズヘイム王国王女システィーナ・グラハム(kz0020)は、ユグディラの女王に面会すべく、ユクディラの島へと訪れていた。
 王女に行き過ぎた愛を捧ぐヘザーは(直接同行することはできなかったが)仲間達と共に嬉々として島内の警戒活動を行っていた。

「エリオットの分まで私が王女殿下をお守りするのだ!
 もはやこの瞬間、私はロイヤルガードと言っても過言ではないだろう」
 上機嫌だった。マルグリッド・オクレールが聞いたら黙ってはいないような事を口走るくらい、上機嫌だった。

 

 ところで、どんなに上機嫌であってもそれは警戒活動であり、
 警戒活動であるからには不安要素を探し、それに対応するのがその目的とするところであり、
 いうなれば、かれらは不安要素を捜し求めていたわけであって――

「「「あ」」」

 ――不安要素に出会うのもある意味、必然といえば必然であった。

「貴様ら! 量産型フラベル&クラベルだな!
 二種類揃っているとは都合が良いわ!」
「ニンゲン! それもだいぶ酔狂な部類に入るニンゲン!
 なんてことだこれから身を隠そうって思ってたところで!」
「落ち着きなさいギガーベル。それにしても何よ量産型って。
 それを言うならマークⅡプロトタイプよ」
「マニア受けしそうなフレーズになったよ?!」
「何を面白い掛け合いを……貴様らはここでマテリアルの塵となれ!」
「ここでやられるわけにはいかないわ」
「あばよとっつぁん!」

 量産型フラベル・クラベル改め、フラベル・クラベルマークⅡプロトタイプは、まるで訓練された二人三脚のように脚をそろえて高速で逃げ去った。

「追うぞ! 絶対逃がすな!」

 ヘザーもまた追って、駆け込んでいく。

 未知の場所、ユグディラの島の奥へと――

リプレイ本文

●追跡開始
「ちょっと待って」
 突っ走ろうとしたヘザーの襟元を仁川 リア(ka3483)が引っ張った。ヘザーは超仰け反って止まった。
「何だどうした!?」
「闇雲に突っ込むんじゃ効率が悪いぜ!」
「二手に別れるくらいの工夫はしたいところですね」
 まあ聞けという風にジルボ(ka1732)が説明し、アシェ-ル(ka2983)は思案する。
「でも遅くなりすぎちゃってもいけませんし……ヘザーさんはバイクをふかしててくださいっ!」
「よしきたぁ!」
 ミコト=S=レグルス(ka3953)に言われてヘザーは近くに止めてあったバイクを取りに行った。こうして会議から勢いだけで喋りそうな奴を排除できた。
「敵は北へと向かったようじゃな……その先は海か」
 ヴィルマ・ネーベル(ka2549)が遠くを見やりながら言った。
「敵が海岸に出てきたら狙い撃つのに良さそうじゃない?」
 ジュード・エアハート(ka0410)はそう言って腰のエア・スティーラーを叩いた。
「じゃあ半分は海付近で隠れて待ち伏せだな……残りは追い込みってことで」
「合点承知!」
「聞いてたのか?!」
 纏めたジルボに遠くから返事するヘザーだった。

●追跡班サイド
「分かってるとは思うけど、姫様が現れたりしても付いて行っちゃダメだからね。飴渡されたりしてもダメだよ?」
「何で私子供扱いされてるんだ?」
 見た目よりは年上だがヘザーよりも年下のリアが注意していた。
「行くぞ、二人とも?」
 ヴィルマが促す。その前方ではすでにジュードが出発していた。
「じゃあ、また後で!」
「おう、気をつけてな」
 ジュードにジルボが手をあげて応える。二人は別々の方向を向いていた。
 リア、ヘザー、ヴィルマ、ジュードは追跡班として歪虚の後を追い、ジルボ、アシェール、ミコトは先回り班として森を迂回して海岸付近を目指す。一行は二手に別れ出発した。

 そして追跡班はすぐにその足を止める事になった。

「くっ……なんて卑怯なんだ……!」
 馬上でジュードが絶望した。 
「これではバイクが使えぬ……!」
 ヴィルマもまた驚愕とともに降りねばならなかった。
 木々の間には林道と言えるだけの狭い道が通っていたが、その道には、ことごとくユグディラが寝そべっていた。
「羊汚い! 流石羊汚い!」
 絶望のあまりジュードは魔導カメラでユグディラの撮影を始めた。
「ジュード!
 我の分も頼む」
「解ったよヴィルマさん!」
 やたら気合いの入ったやりとり。
 そして撮影が終わったら餌をあげようとする。
 匂いをかぎつけたユグディラ達は寄って来るが、決して道から退こうとはしなかった。
「二人とも、先に進むよ!」
 非猫好きのリアが注意を呼びかける。ジュードとヴィルマは渋々従い、一行は徒歩で進むことになった。

 しかし、その歩みはまたもや止まった。突然前方から何かが飛んできたからだ。リアは反射的に受け止めた。
「ユグディラ? 何で飛んでくるの?」
「木だ! みんな!」
 ヘザーが注意を促す。
 一行は見た。鬱蒼と茂った木々の――
 枝の上に、一列に並んだユグディラの姿を!

「連発式ネコ大砲……!」
 それらは間髪を入れずに、猫特有の瞬発力で飛び掛ってきた……!

「我は……ここまで……じゃ……」
「俺も……だめみたい…………」
 ヴィルマとジュードが、大量のユグディラに抱きつかれて倒れた。
 満面の笑みだった。
 二人は柔らかい毛の感触と温もりを全身余すところなく感じていた。ユグディラ達も幸せそうに二人に抱きついている。

「しっかりしろ二人ともーーー!!!」
 ヘザーが叫んだ。ヘザーとリアは適当にいなした。避けられたユグディラも着地してヴィルマとジュードにくっついている。

「ぐっ?!」

「へぇ、急所を反らしたか……」

 突然の事だった。
 緑髪の少女の姿。リアの脇腹に、拳を叩き込んでいた。
「ユグディラに紛れていたのか?!」
「そうだよー」
 歪虚は軽いトーンで言って両拳を目の高さに構える。
 さらに、リアの足元に光の矢が直撃し土煙をあげた。
「気をつけろリア! 狙われているぞ!」
 ヘザーが注意を促し、周囲を見渡す。

「くっ、これじゃゆぐにゃんたちを戦いに巻き込んじゃう!」
 ジュードは立ち上がったが、ユグディラ達は抱きついたままだ。
 うれしいが、邪魔だ。
 振り払っても離れない。
「いくら何でもこんなに好かれるかな」
 さすがに不自然に思えた。強制を受けているに違いない。
「ジュード、こっちじゃ!」
 同じようにユグディラまみれのヴィルマが呼んだ。杖を手にしている。
 ジュードが近寄ると、蒼白い霧が二人と周囲を包んだ。
 見る間にユグディラ達は眠りに落ち、ぼとぼとと落ちた。
 ヴィルマはジュードの肩をゆすり声をかける。
「さあ、今じゃ」
 ジュードはヴィルマの言葉にうなづき、一瞬ユグディラの寝顔を見てから、その場を離れた。

 ヘザーは木々の間に赤髪の少女の姿を認めた。
「そこか!」
 ランナウトで一気に距離を詰める。
 肉薄の直前、赤髪の歪虚は側に垂れ下がっていた紐を引っ張った。するとシーソーめいた謎の仕掛けが作動して凄まじい勢いで跳んだ。
 着地点は、ヘザーの頭上だった。
「あの者達と戦いなさい!」
「う……ああ……天から声が……!」
 ヘザーの頭頂部を踏みつけ直立した歪虚が堂々と命ずる。
 それだけやって歪虚は木々の間に消えていった。

 緑髪の歪虚はリアと打ち合っていたが、ジュードとヴィルマの援護もあり押され気味になっていた。
 そこに、真っ赤な塗料が炸裂した。
「これでもう変容は使えないぞ!」
 ジュードのペイント弾だった。
「汚されちゃった……責任とってね?
 なーんっつって☆アハハハハハ!」
 緑髪の歪虚は身を翻し、木々の間に身を踊らせた。
 追おうとするリアだったが、ふいに剥き出しの殺意を感じ、その場を跳び退く。
 一瞬遅れてその場所に旋風の如き勢いで何かが金色のものを翻して突進してきた。

 ヘザーだった。

「「「ああ……うん……」」」
 三人とも納得の展開だった。

 最初にヴィルマがワンドを突き出し呪文を紡ぐ。青白い霧がヘザーを包み込んだ。
 ヘザーは咄嗟に口と鼻を手で覆った。
「そんなので防げんからな?!」
 しかしヘザーは抵抗した。
「何という無駄根性……」
「ああもう、さっさと正気に返ってよね!」
 リアが踏み込み、盾で押し込む。さらにジュードが制圧射撃を行った。
 しかし制圧射撃が止むとヘザーはナックルをかざして突進してくるのだった。

 ……結局、ヘザーが強制の抵抗に成功するまで、三人がかりで押さえ込み続け、時間を食ってしまった。
 当然、歪虚は見失った……。



●先回り班
 ジルボ・アシェール・ミコトの三人の前に、「ぬっ」と何かが現れた。最大級の「ぬっ」だった。大型だが、ぎりぎりユグディラ……? と考えられなくもない。「キラー・ザ・フィッシャー」とか「ヘルキャット・プレデター」とか呼ばれそうな面構えをしている。
「グワーオ!」
 吠えられた。
「まあ落ち着いて聞いてくれ」
 話術の心得があるジルボが素性と、歪虚のことを話した。ユグディラなら言葉は通じるはずだ。ゴリラだったら無理だが。
「ゴギャァァーーッ」
 強面のユグディラは大音声を放った。周囲が騒がしくなり、やがて何体かのユグディラが現れた。
「捕まえる気なんでしょうかっ?」
 ミコトは慌てて仲間の顔を見る。
「マズいな……敵対は避けたいんだが」
 ジルボはこの先の展開を考えていた。
「……あらイケメン」
 そしてアシェール。新たに現れたユグディラのことだった。
 猫というより猫科の獣といった雰囲気の、黒い艶やかな毛並みと金色の瞳。野性的な力強さとともに気品をも感じさせる佇まいをしている。
 そのイケメンは槍を持っていたが、それを一行に向けずに話を聞く態度を示した。
 ジルボがもう一度話すと、眼前に地図の幻影が浮かんだ。そして一点から矢印が二つ伸びており、一つはまっすぐ北へ、もう一つは森を迂回して北にある海岸へと伸びている。
「これ……うちらの行こうとしてるルートですよっ!」
「そう、俺達はそうやって歪虚を探すつもりなんだ!」
 ミコトが確認し、ジルボが同意を示すと、地図の幻影に点がいくつか増えた。それらから複数の方向に矢印が延びた。
「なんでしょうこれ……追う人が増えるってことでしょうか……もしかして協力してくれるんですか?」
 アシェールが問うと、イケメンは頷いた。それから腰に取り付けていた笛を見せた。
「見付けたらそれで知らせてくれるんですか?」
 ミコトが問うと、頷いた。
「助かる。しかし、絶対に手を出さないようにしてくれ。戦うのは俺達がやる」
 ジルボの言葉に、イケメンは同意を示すような態度を示した。

 その時だった。
 追跡班から、伝話がかかってきた。

「見失ったか……そうか……」
 襲撃を受けた末見失ったという報告を受けたジルボは、ユグディラの協力を取り付けたことを伝えた。
 伝話の向こうでジュードがやたら高まったテンションになった。
「作戦は続行だぜ!」
 ジルボは快い返事を返し、伝話を切った。



●ユグディラ・ポリスとハンター達
 それから、しばらくして……

「ぬっ」

「うわあ!?」

 緑髪の歪虚は物陰から突如現れた尋常ではない眼光のユグディラに驚いていた。
 赤髪の方はというと、無言で2mばかり飛び上がっていた。
「落ち着きなさい」
「キミがね!」
 木の枝に引っかかってまっ逆様の赤髪。
 コワモテ・ユグディラはとうに逃げ去っていた。
 すぐ後に、甲高い笛の音が響いた。



「そこか!」
 そして雷電が炸裂した。
 嘘みたいにひらりと飛び降りた赤髪は緑髪と一緒に走り出す。
「勘が良い。だが、その先は――」
 雷電を放ったのはヴィルマ。火力の差を考慮してか逃げ去った歪虚を、目で追う。
 何体かユグディラがぶら下がっている。ご満悦である。

 歪虚達の行く道に矢が突き刺さった。
「おっと、その位置じゃ――狙い撃ちだ」
 木の上から、ジュードが弓に矢をつがえていた。
 歪虚は不利を悟り、踵を返す。
 だが、反対側からはリアとヘザーが迫っていた。
「ここで勝負といこうか」
 リアは影のように黒い刀身を翳し勝負を挑む。
「勿論、嫌よ」
 赤髪の歪虚は焦らすように逃げた。

「へえ、それは良かった」
 リアは歪虚が、思った通りの方向に走ったことを安堵した。



 歪虚達は森を抜けた。――同時に桃色の光が一筋見えた。
 それは歪虚達の眼前で弾け、視界を白く染めた。爆発的な冷気が広がったのだ。
 それよりわずかに遅れて銃弾の雨が振りそいだ。弾幕が張られ動きが取れなくなる。
「作戦通り――」
「――地獄へようこそってな!」
 不敵に笑ったのはアシェール。攻撃的に笑ったのはジルボ。
 そして、ミコトが金色の剣を掲げ歪虚の正面に立った。
「島の平和を乱す歪虚は、成敗ですっ!」

 歪虚達は、逃げ場を断たれたことを悟った。

●哀愁の羊娘
 赤髪の少女は居住まいを正して言った。

「チェックメイトよ」

「私達がな! あとそれ死亡フラグだから!」
 緑髪は、普通に焦っていた。
 赤髪はひとつ長く息を吐くと、意を決したように言った。
「じゃあこの先の展開も読めるでしょう」
「そうか……やるのか、仕方ないね」
 一瞬、二人の殺気が夥しくなった。

 そうして、少女は最後の手段に打って出た。

「ギガーベル」

「私かよ」

 クラベルは本人自身にだったのだが。

「貴方に強制する。……執行せよ、これは断罪の時間よ」



「一人残らず肉塊にしてあげるよ!」
 そこから先の動きは誰にも追えなかった。
 緑髪の歪虚は両手に短剣を携え、先ずミコトに斬りかかった。不意の一撃を喰らったミコト、そのまま大地を蹴って後方に跳躍、リアとヘザーの頭上を取る。
 落下と共に振り下ろす二つの刃。空気を切り裂く音と共に、鮮血の花が両横に咲いた。

「嘘……いきなりシリアスだ!」
「何じゃこのifストーリーみたいな展開!」
 驚くジュードとヴィルマ。もっともである。
 背中を預けあって立つ歪虚二人。
 さながら二次創作で主役に抜擢されたフラベル・クラベルのようだった。



 ターーーン……
「あ」
 今度は赤髪が驚いた。緑髪の額に突如穴が開いたからだ。
「この状態だと防御を省みないのだったわね……」
「お前らの罪は、やはり――間抜け、かな」
 ジルボが、ターゲッティングで額を打ち抜いていた。
「今です! 罵倒すれば奴は逃げられません!」
「よしきたァ! あんな羊についていた部下じゃて、たかが知れておるわ!」
「いや止め刺せるよね普通に」
 罵倒し始めるアシェールとヴィルマ。一方でジュードが冷静だった。
 緑髪は大きく体勢を崩しながらもいまだ立っている。それにリアが向かった。

「猛れ、炎よ!」

 イグニッションプレデター
「 炎 刃 暴 食 !」

 リアが紫の炎を纏うと、それは猛獣の姿に変じ、緑髪の歪虚を一瞬にして喰らい尽くした。後には何も残らなかった。

「こうなった以上は私が執行するわ……」
 鞭を構える赤髪だったが、そこにも猛獣が踊りかかった。
 金色の獅子だった。
「させませんっ!」
 ミコトの金色の剣が、爪牙の如く歪虚に襲い掛かる。
「援護するよ!」
「凍てつき果てよ!」
 ジュードが冷気を纏った矢を放ち、ヴィルマの杖から氷刃が飛んだ。それらは歪虚の身体に突き刺さると氷の彫刻の如くにする。
「割り込み右ストレェェェェェト!!!」
 さらには強制の借りを返さんとばかりに繰り出されたヘザーの拳が歪虚の顎に叩き込まれた。
「がっ、は……!」
「今だ、ミコト!」
 頭部を揺さぶることによって隙を作る狙いだった。
「はいっ! これで、とどめ……!」
 金色の軌跡を描いて、獅子の牙は歪虚の身体に深々と突き刺さる。
「……二人だけで勢力を築き……この島を……そして……。夢を見る程度には……傲慢でいられたわ……」
 そんな微かな声を、ミコトは聞いたかもしれない。
 言い終わると同時に、歪虚は消滅した。



●勝利、猫と言う名の美酒
 勝利の後、一行は戦いを見守っていたユグディラ達とともに喜びを分かち合った。
 例のコワモテも「もふれ」とばかりにその威容を見せ付けていた。目付きが凶悪だったが。
 イケメンは、武人らしく態度で感謝を示していた。言葉を用いずとも、ハンター達と通じ合うものがあった。
「ユグディラ島の平和は俺達が守る!」
 ジュードが格好良くキメると、ユグディラ達がにゃーにゃー喝采を送った。
「よしよし。そなたらとは仲良くやってゆきたいものよのう……」
 ヴィルマもユグディラに囲まれて、破顔していた。
 一方でジルボはしかめっ面のパルムをポーチから開放していた。理由は本人のみぞ知る。



「ここにはいなかったか……」
 そして、リアは遠くを眺めていた。
 彼には追っている敵がいた。再び合間見えるには、また新たなる戦場を巡ることになるだろう。

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参加者一覧

  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • ライフ・ゴーズ・オン
    ジルボ(ka1732
    人間(紅)|16才|男性|猟撃士
  • 其の霧に、籠め給ひしは
    ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549
    人間(紅)|23才|女性|魔術師
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 大地の救済者
    仁川 リア(ka3483
    人間(紅)|16才|男性|疾影士
  • コル・レオニス
    ミコト=S=レグルス(ka3953
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士

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依頼相談掲示板
アイコン ユグ島遠足のしおり(相談卓)
ジュード・エアハート(ka0410
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/10/22 10:51:37
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/10/19 00:37:47