• 詩天

【詩天】殺めのとき

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/11/04 19:00
完成日
2016/11/08 22:40

みんなの思い出

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オープニング

 千石原の乱の後、葦原和彦は詩天に戻ってきた。
 憤怒の攻撃の爪痕が残るこの地に追い打ちをかけるように、次代詩天の座を巡り、水面下の小競り合いがあった。
 しかし、状況は悪化の一路をたどるばかり。
 三条家のみならず、臣下にまで暗殺や毒殺がされていたという。
 最終的には、二つの軍に分かれての戦となった。
 戦いは三条真美側の勝利。
 秋寿派は全て命を奪われることになった。
 その中に葦原流当主である葦原若松の遺体は見当たらなく、和彦は父の行方を探し出す。


 斗跋。
 詩天は古くからあるとされている葦原流の技。
 自身の中を巡るマテリアルを練り上げた状態で身体を斬りつけて流血させた箇所より負のマテリアルを取り込み、自身のマテリアルを変換させて歪虚化する。
 効力は身体能力の強制引き上げ。
 使用者の身体によってその効力の持続期間が変わり、期間が過ぎると命を落とす。
 首を跳ねるか、心臓を刺すかで死ぬと言われている。
 人間として意識が残るかどうかは使用者次第。
 ただし、一度歪虚化すると、人としての姿は失われる。
 故に、禁じ手と伝わり、忌み嫌われる。

 秘技。
 こちらも葦原流の技。
 葦原流が歪虚と戦う中で敵の能力を剣に昇華したとされている。
 いくつかの技を伝えられたものの、現在の和彦が技として使えるのは一つだけ。
 納刀状態で敵の悟られる事なく接近して強烈な一撃を浴びせる。


 梅鶯神社の帰り道、ハンター達と和彦は葦原流に関して話していた。
「斗跋に関しては、幼いころから知ってました」
 決して使ってはいけない技と聞いていたものの、その内容に子供心に惹かれる。
 強くなることというのは人の心を惹きつけてやまない。
「しかし、父は斗跋を教えてくれることはありませんでした。そんなものを使わなくても強くなれと言い聞かされました。いつか、葦原流を受け継ぐ時に教わるのだろうとぼんやりと思ってました」
 しかし、現実は父である若松が戦死し、教わることはなかった。
「秘技に関しては、先代詩天が亡くなってから父より教わりましたが……現在、形にできたのは一つだけです」
 はぁ……と和彦はため息をついてしまう。
 もっと早く技を習得せねばならないのに、上手くいかなかったのだろう。


 数日後、和彦は即疾隊局長に呼ばれた。
「まぁ、ご苦労だった」
「いえ……」
 労う局長に和彦の表情は冴えない。
「もう、話は聞いてるんだろ」
 局長の言葉に和彦は頷いた。
 呼ばれる前に辻斬り犯が再び現れた知らせを受けたのだ。
 再び目的は即疾隊だった。
「分社で見た秘伝書と思われる冊子には、斗跋に持続期間があると。急激に歪虚化することにより、急激な体の変化に耐えきれないとありましたが……」
「本来はもう、死んでいるからな。術者が遺体を処置していたからこそ、半年ほど保てた可能性はある」
 ふむと、副局長は考える。
「俺の秘技で辻斬り犯を押え、その隙に一斉に攻撃してもらう方法を取ります」
「だったら、場所は街中じゃない方がいいだろう」
 そう言った局長に和彦は頷き、地図を局長より借りた。
 広げられた地図で和彦が指したのは、二岡町のある屋敷。
「ここは秋寿派の武将であった上原柊一郎様の邸宅です。現在は、空き家となっております。ここには広い庭があり、大人数でも動けます。亀田医師の診療所からも近いですし、ここにおびき寄せましょう」
 和彦の提案に局長、副局長が頷く。
「おびき寄せるのは志願させるか」
「そうですね」
 三人は動き出した。

 おびき寄せ役は隊士達から志願させ、足の速い隊士が選出された。
 隊士達は、和彦の事は何も知らないが、彼とハンター達を信じ、おびき寄せ役を買って出た。
 必ず、辻斬り犯を倒すために。

リプレイ本文

 ハンター達が即疾隊屯所に現れた時、屯所の中は慌ただしく動いていた。
 局長の号令と動ける者は辻斬りの誘導を隊員たちに志願させていた。後押しで一番隊長壬生和彦の懇願すると、動ける殆どの隊士達が挙手してくれたという。
 基本的な誘導は覚醒者の隊士が中心となるが、非覚醒者の隊士は一般人が紛れ込まないようにする警備を番所の者達と連携するために繋ぎで走り回る者など、ここ数日は屯所に活気が戻ってきているという。
 ハンター達は局長の部屋へと向かい、暫くすると、和彦が局長の部屋に入ってきた。
 和彦がじっと見たのは七葵(ka4740)の方。
「秋……いや、三条仙秋に手酷くやられた」
 和彦に疲弊と怪我が見て取れたのかと察した七葵はぽつりと言う。 
「下がっていろと言いたいが、辻斬りは俺の技で抑えきれるかの確率は正直半々。手伝ってくれ」
 そっとため息をついた和彦は本音を七葵に告げるしかなかった。
「言われるまでもない」
 どんな役になれるかわからないが、七葵にとって和彦の言葉に応える気持ちしかない。
「七葵殿だけではなく、皆様の御力をお貸しください」
 和彦が他のハンター達にも言えば、ハンター達は応える気だ。
 そろそろ、動こうとしていた時、和彦はルイトガルト・レーデル(ka6356)に声をかけられた。
 呼びかけられて振り向いた和彦であったが、声の主であるルイトガルトは和彦の指をぎゅっと握り込む。
「指は大丈夫なのか」
「え、指?」
 和彦がオロオロとしていると、マシロビ(ka5721)が思い出したようにルイトガルトの隣に立ち、和彦の指先を見つめる。
「そういえば、蔵の中で、顔を顰めてましたよね」
「大丈夫ですか?」
 カリン(ka5456)も話に入ってくると、和彦は女子三人に囲まれてパニックになっている模様。
「は、はい、大丈夫です……」
 男ハンター三人は少し遠巻きに見ており、「免疫ないのだろうな」と心中で意見を一致させていた。
「壬生の指の件は聞いている」
 ひょっこり話に入ってきたのは副局長だ。
「人が触れると、少なからず衝撃を受け、書物が焦げるような符術の細工を施してあったようだ」
「仕掛けを解除すれば焦げずに済んだ可能性があるという事でしょうか」
 マシロビの問い尋ねに副局長は「そうだな」と呟く。
「その手のものは施術者を見つけないとならん。あの書物が使えなくなったのはお前たちのせいではない」
「あのような禁じ手は無くなってしまった方がいいものですから……ルイトガルト殿、手を……」
 和彦は書物が使えなくなったことは気にしていなかったようだが、女性に手を握り締められるのは気になってしまうようだった。
「今は平気です。模擬戦で確認もしましたが、問題ありません」
 当人を疑う気はないが、異変があれば、医者へ和彦を引きずって行こうとルイトガルトは心に決める。

 即疾隊士たちが見回りを始めるころ、ハンター達は辻斬り犯、葦原若松をおびき寄せる目的の場所である、秋寿派の武将であった上原柊一郎の屋敷にいた。
「下見とかしたのか?」
 綿狸 律(ka5377)が尋ねると、和彦は「一応は」と返す。
「上原様は父が仕えていた武将です。この庭で剣の相手をして頂いた覚えがあります」
 和彦の声を聞きつつも、皆守 恭也(ka5378)は人の気配が消え去った上原の屋敷を見上げた。
 葦原若松が禁術を発動させ、歪虚へ堕ちて命を落としたが、死して尚、詩天を彷徨う現状。
 愛した妻の父を手にかけ、更には詩天より遠ざけてまで守ろうとした息子を手にかけようとしている無念は惨い話だと恭也は瞳を伏せる。
 守るために『倫理』の境界線を踏み越えるのは葛藤が少なからずあるもの。
 明日は、我が身かもしれない。

 隊士達が見回りへと向かって行く姿を見送ったカリンは上弦へと向かう三日月が夜空に浮かんでいるのに気づいた。
 三日月が薄笑いに思えてカリンは月を睨み付ける。
 これ以上の被害を抑えると決意を胸に秘めて。
 和彦は即疾隊の印である鉢金を外し、前髪をかき上げると、抑えるように鉢金を巻く。
「いいのか」
 七葵の心配に和彦は少し困ったような顔をする。
「よくは、ない。が、戦いの場に隊士は入ってこない話だ。夜で篝火を焚いても、あまり顔の判別ができないと思いたい。少しでも態勢を整えたいのと、屍人でも……父の姿を刻み付けたいと思う」
 これが父の姿を見る最期と分かっているのだろう。
 上原の屋敷からは喧噪があまり聞こえず、状況はあまり分からなかったが、近い所で悲鳴のような声が聞こえると、ハンター達の緊張感が一気に高まる。
「出ます」
 そう言ったのはマシロビだ。
「気を付けて下さい」
 和彦が気遣うと、マシロビは一つ頷いて屋敷の外に出る。
 引付役の見回り隊士が上原邸へ入った際、ある地点へ引き付けてほしいと頼んでいた。マシロビは周囲を見回すと、垣根のような場所を見つける。
 垣根に隠れたマシロビの耳に複数の走る足音が届いていた。
 走る音は近くまで来ると、「散!」と誰かが叫ぶと、隊士達は蜘蛛の子が散るようにばらけて逃げだした。
 若松が姿を現し、中へ入ると、彼の足元がゆっくりと泥状へと変えていき、若松の足を絡めていく。
「かかりました!」
 マシロビが叫ぶと、後ろの方からハンター達が駆け出してくるのが合図のように若松を取り囲むようにいくつもの篝火が隊士達の手によって点火されていく。
「おとなしくお縄につきなさい、なのです!」
 カリンの声が響くと、燃えゆく薪より火花が爆ぜる。
 泥状でも気にせずに動き出そうとする若松へマシロビは飛び出した。
 指に挟んだ符が紫色に光ると、炎の燐光が彼女の前より煌き、扇状の炎が若松へと向けられる。
「若松! 今からテメェをぶっ倒す!」
 駆け付けて叫ぶ律が持つ弓には弦がなかった。矢を番えようとした瞬間、律より込められるマテリアルによって光の弦が張られ、しっかりと矢が番えられる。
 篝火にしっかり火が付くと、若松を焼くマシロビの炎がゆっくり鎮まり炎が消えていく。若松の上半身を焼いたが、着物を焦がしただけであり、若松自体にダメージはなかった。
 禁じ手で歪虚化し、人とは思えない姿となった若松に律は苛立ちを抑えられない。
 様々な理由が絡まった結果とはいえ、人の命を奪おうとする『若松』を律は許せなかった。
 名を交わした人間が、共に歩む人間が傷つき、命を奪われていくのは、もう見たくはない。
「オレは綿狸家次期当主、綿狸律だ! 覚えとけ、この大馬鹿野郎!!」
 緑のオーラが矢に纏い、律が矢を放つ。
 剛力矢は律のオーラだけではなく、凍てつくような冷気も纏っていた。
 矢は真っすぐ若松の方へと向かっていく。律の狙いは若松の利き手であったが、逆の肘に刺さり、関節まで貫いた。
 その威力を知らしめるように腕があらぬ方向へと捻じり上げられ、その腕が変色し、凍りついていく。
 先に攻撃を繰り出したのは恭也だった。
 若松へ一撃を加えようとせんが為に、大上段からの構えで刀を振り下ろすが、若松は片手の返し刀で恭也の一撃を抑える。
 下からくる圧を刀越しに感じた恭也は若松が振るい返す一撃に逆らわないように離れて間合いをとった。
 恭也が後退るタイミングを見計らって飛び出したのは半身の姿勢で武器を構えるルイトガルトだ。
 高速の動きで剣を抜いたルイトガルトの刀は若松の胸を大きく切り裂いたが、動きは鈍ることなく、恭也を退けたあと、手首を翻してルイトガルトの側頭部に柄を叩きつける。
「……くっ」
 苦悶の表情を浮かべるルイトガルトを覆うように光のガラスが砕けた。
 屍人である若松の動きには問題なかったのだろうか、更に追い打つように素早く態勢を整え、ルイトガルトへ刀を振り下ろす。
 ルイトガルトの肢体へ焼くような痛みが走り、悲鳴を上げる暇もなく血が迸る。ルイトガルトは斬りつかれた衝撃からか、着地もうまくいかずに地を這う。
 若松がルイトガルトの再び刀を振るいあげると、若松の頭上で紫電が走り、マシロビが発動させた風雷神が若松の脳天を貫いた。
 しかし、若松の動きを止めたのも束の間であったが、それはルイトガルトを後退させるには十分な時間。
 七葵がルイトガルトの肩をつかんで後退させる。
「すまん……」
 若松の動きがあまりに早すぎて、声も出なかった七葵がそっと声を上げる。
「助かった」
 ルイトガルトが礼を言うと同時に恭也が若松の方へ疾風剣を繰り出してルイトガルトと七葵を守るように若松の前へ割って入った。
 水平に抜刀された恭也が繰り出した疾風剣は若松の刀に遮られ、動きを止められてしまう。
 恭也は流れるような動作で更に大上段へ刀を振り上げ、切っ先が若松の肩口を斬りつける。
「きょーや、引け!」
 律の言葉に反応した恭也は重心を横へ動かして間合いを取る為に跳ぶ。
 若松の周囲がいなくなったのを見計らった律だが、若松の後ろ……入口の方から隊士達の悲鳴が聞こえる。
「な……」
 最初に見たのは七葵だった。
「援軍だ!」
 即座に叫ぶと、律が歯噛みをする。
 隊士達が必死に食い止めようとしているのは、二体の落ち武者のような歪虚だ。
 屍人のように肉はなく、骨と髪、ぼろの着物と武具しかない。
「みなさん、離れてください!」
 マシロビが叫ぶと、隊士達は遠慮なく離れる。
 中央に骨武者二体になるように距離を取ったのを確認したマシロビは即座に地縛符を発動させた。
 地を歩くものであれば、その泥は骨でも絡めとっていく。
 骨武者もまた同じく、ぬかるみに捕らわれる。
「くっそー! なんだよ!」
 目標を若松から骨武者へと変えた律が矢を再び放つと、骨武者の左肩を砕く。
「援軍はお任せ下さい!」
 叫ぶマシロビは骨武者へ火炎符を発動させた。
 カリンは恭也の跳んだ着地地点を見計らい、恭也へ防御障壁を再び発動させて付与させる。
「助かります」
 若松への闘志を出しつつも、カリンへの礼を忘れない恭也は再びルイトガルトと共に若松の意識を引き付ける。
 ルイトガルトが前に出て、若松の刀を受け止めた。
 先ほど若松より出血を伴う大きな傷を受けたルイトガルトは若松の動きに異変を感じる。
 怪我をして、動きが鈍っている自分が若松の刀を受け止めた。
 思案の隙を突かれたルイトガルトはそのまま若松の攻撃を受け、光のガラスを散らす。ルイトガルトの光のガラスをすり抜けるように恭也が彼女の背後から剣を繰り出し、若松の刀をはじき返した。
 二人の壁役の動きを見ていたカリンが飛び出して若松の背に飛び込み、背骨に向かって思いっきり剣を突き刺し、そのままエレクトリックショックを発動させる。
 若松は電撃に跳ねるように一度肩を震わせて動きを止めた。
「今だ!」
 ハンターの誰が叫んだのかは分からない。
 しかし、それはハンター達全員の声なのはわかっている。
 皆がここまでしてやってくれたのだ。
 しくじるわけにはいかない。
 仲間の為、家族の為、自分の為……!
 和彦が納刀状態のまま、若松との間合いを一気に詰めた。若松は接近する和彦に気づいたのだろうか、電撃で鈍る身体を動かして迎撃の構えを取る。
 これから仕掛けるだろう攻撃が和彦が速いのか、若松が速いのかわからない。
「和彦ーーー!」
 しかし、和彦は怯むことなく突っ込もうとする事に気づいた七葵は和彦を守るべく駆けだす。
 攻撃は若松の方が速かったが、その一撃は和彦が巻いている鉢金を割り、和彦の額が切れただけで済んだ。
 和彦は自身の攻撃の間合いへ入った瞬間、光より速く抜刀し、若松が刀を持つ腕を斬り飛ばす。
 その威力は腕を飛ばすだけに留まらず、若松の背骨が砕けて剣の威力が止まるまで……腹の半分ほどまで斬りつけていた。
 片方は斬り飛ばされ、もう片方は千切れかけてしまい、両の腕は使い物にはならない状態。
 胴も自立が出来ないほど斬られてしまい、若松はその場に崩れるように倒れた。
「捕縛を頼む」
 恭也達は律達の応援に駆けつけ、若松の捕縛はカリンと七葵に託す。
 捕縛せんが為に縄を持ち寄った七葵が見たのは、若松の斬られた所の皮膚が乾き、風化しているような部分を見た。
「七葵さん?」
「見てくれ」
 眉をひそめたカリンが七葵を気遣う。
「斗跋の限界か」
 縄で縛った箇所の肉片がひび割れて音もなく崩れる。
「壬生さん!」
 悲鳴のような声を上げるカリンが見たのは、和彦が最後の骨武者を切り倒したところ。
「カリン殿?」
 和彦が振り向くと、二人の異変に気付き、駆け寄る。
 縄で縛られた親の姿よりも、禁じ手を使って人を捨てた親の姿に和彦は衝撃を受けたようだった。
「父上……」
 ぽつりと和彦が父を呼ぶと、今まで一度も動かなかった若松の口元が動いたような気がし、若松は動かなくなった。
 和彦は父親の『最期』を見届けたのを本能で気づき、その場に両足をつく。
 彼は涙を流したのかはわからない。
 父に斬られた額の傷から流れる血が彼の頬を伝っていた。


 屯所の局長達に報告した後、和彦は亀田診療所へ放り投げられており、初名の手当てを受けていた。
 女性陣は初名が診療所で一人でいるというのを聞いて、一緒に泊っていた。
 一夜明けて、屯所で寝泊まりした男性陣は診療所の方へと向かう。
 初名の診察を受けた後、皆で茶を啜っていた。
 夕べ、父親の『最期』を看取った和彦であったが、その様子は普通というよりか、状況に追いついていないというのが正解な気もする。
 状況に追いついた時、和彦の心の状態がどうなるかはわからない。
「壬生さん、これからどうするんですか?」
 そう尋ねたカリンに和彦はこのまま残ると返した。
「確かに、秋寿派の者ですし、西方に出て、ハンターとして生きるのも考えたのですが、やはり、今の詩天を放ることはできません。幸い、局長達は壬生和彦として即疾隊に置きたいと仰っていただけましたし」
「そういってもらえるのは助かるな」
 恭也はそう言って頷くと、玄関の方から「隊長」と呼ぶ声がする。
 何事かと初名が玄関先へと向かうと、即疾隊の一番隊士達が来ていた。
「隊長の新しい鉢金作りました!」
 まだまだ金のない即疾隊は鉢金を作るにも古い鍋を溶かして作っている。
 作り置きの物を鉢巻きに縫い付けた模様。
「まだ、頑張らないとならないな」
 七葵が言えば、和彦は頷く。
「一番隊が揃ってんのか。皆で亀田先生んところの墓参りにいこうぜ」
 律が提案すると、マシロビは「いいですね」と手を叩く。皆はそれに乗り、初名も一緒に行くようだ。
「和彦」
「はい」
 ルイトガルトが和彦へ振り向く。
「いつでも甘えに来てもいいんだぞ」
 至極普通に言い放つルイトガルトに和彦は「恥じらいを持ってください」と照れ隠しに怒ると、近くで聞いていた七葵が笑う。

 秋も深まる頃、暗い道を歩いていた和彦に漸く眩しい光が差し込んできた。

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MVP一覧

  • 律する心
    皆守 恭也ka5378
  • 即疾隊一番隊士
    マシロビka5721

重体一覧

参加者一覧

  • 千寿の領主
    本多 七葵(ka4740
    人間(紅)|20才|男性|舞刀士
  • 仁恭の志
    綿狸 律(ka5377
    人間(紅)|23才|男性|猟撃士
  • 律する心
    皆守 恭也(ka5378
    人間(紅)|27才|男性|舞刀士
  • 鈴蘭の妖精
    カリン(ka5456
    エルフ|17才|女性|機導師
  • 即疾隊一番隊士
    マシロビ(ka5721
    鬼|15才|女性|符術師
  • 戦場に疾る銀黒
    ルイトガルト・レーデル(ka6356
    人間(紅)|21才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 決戦です!
カリン(ka5456
エルフ|17才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/11/04 01:22:01
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/11/01 02:05:51