月夜の音楽会2

マスター:葉槻

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
6日
締切
2016/11/14 07:30
完成日
2016/11/27 19:40

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出? もっと見る

オープニング

●薔薇の招待状
 白亜宮、と呼ばれる屋敷があった。
 確かに一介の帝国臣民が1人で住むには大きすぎる豪邸ではあるが、豪奢な装飾が付いているわけでも、壁や床が大理石や御影石という訳でも無い。
 ただ、白い漆喰で外壁を整えられた、どちらかと言えば質素で上品な印象を与える屋敷だった。
 この屋敷の女主人も自分の住まいを『白亜宮』等と大それた名前で呼ぶことはない。
 ただ、『聖母』と讃えられた彼女の人柄と、屋敷裏手にある大きな薔薇園の薔薇が香り立つ様から、人々は自然と『白亜宮』と呼び慕ったのだと言う。


「その白亜宮の主人であるカサンドラ様から今年も音楽会の招待状が届きました」
 昨年、様々な音楽を楽しみたいという意向からハンター達が参加し盛り上げた音楽会に今年も招待されたらしい。
「また是非、音楽会を盛り上げて欲しいとの事ですので、皆さんちょっとおめかしして行かれるといいと思いますよ」
 ソサエティの説明係の女性はあなたに一通の招待状を手渡した。
「今年は14日が満月なのだそうで。満月の下、聞こえてくる音楽をBGMに薔薇園を望む……なんて素敵ですね」
 うっとりと夢見るように彼女は言うと……はたと我に返って、こほんと小さく咳払いをした。
「音楽会で演奏をしていただける方は、楽器の演奏、歌の披露、芝居、朗読、何でも良いのだそうです。ただ主催であるカサンドラ様は目が見えません。ですので、去年は音だけでなく、光や香りなどを交えて演奏したところ大変素晴らしかったとの事で、今年もまたお願いしたいとの事です」
 光であれば、白いのか、青いのか、赤いのか等の判別は付くらしい。
「食事は主に村の特産品であるハーブを使ったパスタやピザ、飲み物はハーブティにハーブ酒などが楽しめるそうですよ」
 もちろん、ソフトドリンクもあるそうなので、安心して下さいね、と彼女は付け加える。
「楽器はチェンバロがサロンにあるそうですが、他の楽器を使いたい場合は持参して下さいとの事です。また今年も夜はそのまま白亜宮や近隣の空き家に泊めて貰えるそうなので、心配はしなくて良いそうです」
 招待状を開くと、ふわりと薔薇の良い香りが漂ってきた。
「ここ最近恐ろしい戦いばかりの日々でしたから、どうか心身共にゆっくり休めてきて下さいね」
 そう言って彼女は微笑みながらあなたを見送ったのだった。



●白亜宮にて
 視力を失ったカサンドラにとって、この年に一度の音楽会は何事にも代えがたい楽しみの一つだった。
 冬が来て、村中がその寒さに耐えるようにひっそりと静まりかえる前に開かれる小さな音楽会。
 村の者を呼んで、日頃の彼らの働きを労る。それは彼女が領主として辣腕を振るっていた頃から行ってきた唯一の行事だった。
「ふふ……今年はどんな演奏が聴けるのかしら……楽しみね」
 薔薇の香る庭先で彼女に寄り添うように静かに座っている大型犬の頭をゆっくりと撫でる。
 犬は撫でるがままにされているが、その尾はゆるりと床を掃くように揺れた。
 その気配にカサンドラは笑みを深めると、晩秋の風の中、静かに薔薇園の散歩を楽しみながらハンター達の到着を待っていた。

リプレイ本文

●月に謳う
 村の子ども達による素朴な演奏会から始まった音楽会は、穏やかなで優しい雰囲気で満たされていた。
 村の人々による演奏が終わり、ついに本日のゲストであるハンター達による演奏の時間がやってきた。
「今年も素晴らしい夜会への御招待、感謝致します」
 トップバッターとして辺境の巫女の正装に身を包んだエアルドフリス(ka1856)が舞台中央でお辞儀する。
 彼の足元、そして舞台周囲を照らすのは色とりどりの小型提灯。
「本職には敵いませんが、変わり種としてお楽しみ頂けたら幸い」
 すぅ、と大きく息を吸い込むかすかな音が、舞台を見守る人々の耳に届いた。
 エアルドフリスの形の良い唇から紡ぎ出されるのは掠れ気味のファルセット。
 喪われた言葉で紡がれる独特の節回し。それに合わせて、雨音のような鈴の音が降る。ジュード・エアハート(ka0410)のアンクレットベルだ。最初は静かに降る雨音が、徐々に止み晴天を示すように――そして干魃を表すようにヒールが床を打ち鳴らし、雷鳴よあれとパリージョが雨を乞う。
 朝、昼そして夜と、春夏秋冬の空の巡りを称える歌は2人の息の合ったコンビネーションにより大喝采を受ける。
 万雷の拍手の中、額に汗を浮かべたジュードがエアルドフリスに笑いかける。その笑顔にエアルドフリスもまた微笑み返した。

 その拍手の中、エステル・クレティエ(ka3783)とカフカ・ブラックウェル(ka0794)は提灯の中に仕込んでいた色紙を変えて行く。
 拍手がまばらになってきた頃、ホゥホゥという梟の鳴き声に似た音が鳴る。アージェンタ メルキウス(ka6373)による空き瓶の口を吹いて鳴らした夜の演出だ。さらに、笛を使って風を起こし、拾ってきた落ち葉の入った篭を揺らして、その場で落ち葉が舞い落ちたように人々に錯覚させる。

 カーテンがゆるゆると閉まり、照明を落とした状態でカフカがフルートを奏で始める。
 澄んだ音色が室内を満たしていく中、少しずつ開かれていくカーテンから、外の満月の明かりが徐々に室内へと入ってく。
 カーテンが全て開かれ、月明かりを背にフルートを奏でるカフカの姿は一種の神々しさを秘めている。
 一曲目が終わり、二曲目に入るタイミングで、本当はカフカは窓を開ようと思っていた。そうすることで夜独特の気や花の控えめな香り、凛とした冷たさを演出として使いたかったのだが、先ほど外に出て確認したら、予想以上に冷え込んでいた。
 ここには大勢の村人達もおり、音楽を聴きながら食事も楽しむという音楽会だ。せっかく暖かく保たれている室内だが夜風が入り温度が下がれば当然料理も早く冷めるだろう。そこはカフカの望む所では無い。
 その分、心を込めて演奏することでそれらを音色で感じ取って貰おうと弦を爪弾いた。
 月光の精霊が旅人に物語を求める詩を乗せる。先ほどのエアルドフリスが謳い、ジュードが舞った辺境の歌とはまた趣の違う異国情緒のある旋律が人々の心を打った。
 優しい拍手がカフカを包む。

 次いでエステルがルナ・レンフィールド(ka1565)と共に前に立った。
 消されていた提灯に再び火が灯されれば月や星、花型にくり抜いた型紙で、天井には夜が、足元には花畑が出現した。
 様変わりした舞台を前に、人々がさざ波のように声を潜めながらその幻想的な空間に見入った。
 エステルのフルートが最初のフレーズをやわらかく歌い始め、それを追うようにルナのハープが合わさる。どこかで聞いたような懐かしさを感じさせるクラシカルでフルートがメインの曲は聴く者の心を和ませ、安心した人々は食事やドリンクに手が伸びる。
 ルナはキーボードへと持ち変える。曲調は一転して明るくリズミカルな――リアルブルー出身者が後ほどJAZZのようだったと褒め称えた――即興を交えた自由曲。
 小鳥のさえずりのようなエステルのフルートは爽やかな朝の目覚めを感じさせ、鍵盤の上を踊るルナの指先が慌ただしくも健康的な朝の一幕を彷彿させる。そして突然フルートの音が艶っぽさを増す。
 『想いを寄せる相手と遭遇したのだ』と、音に身体を揺らしていた人達は気付いた。
 慌てて髪を整え、話しかけようとして……だが、上手くいかなかったに違いない。すっかり弱々しくなったフルートの音色に対し鍵盤の音は気の置けない女の子同士の軽快なおしゃべりのように跳ね、“次は上手くいくわよ”と励ます。フルートの音は再び元気を取り戻し、より艶やかさを増して友人と共に街へと出て行く……そんな情景が目の前で繰り広げられているかのようだった。
 いつしか料理をドリンクを口に運ぶ人々の手が止まって、すっかり音の紡ぐ物語に引き込まれている。
 ラストはルナのリュートによるしっとりとしたソロ演奏で締めると、人々は感嘆の溜息を吐きながら惜しみない拍手を2人に贈った。

 そしてルナとエステルが提灯を片付けている間に再びアージェンタが舞台の隅でザルを揺らす。
 それはざぁんざぁんと海の音を奏で、本物そっくりの音に人々は驚きざわめいた。このためにわざわざ東方のよいザルと粒の揃った小豆を買い付けたアージェンタは、ゆっくり丁寧にザルを揺らす。
 波の音に合わせ出てきた料理は魚料理だ。事前に料理の出てくるタイミングを調べていたアージェンタは舞台の準備の合間にも皆を楽しませたいと様々な自然の音を奏者と奏者の間に準備し、奏でていた。

 次に奏者として立ったのがルーン・ルン(ka6243)。サロンに設えてあるチェンバロが紡ぐ、やさしいキラ星のフレーズに誰もが微笑みを浮かべた。そしてそのまま拍手する間を与えずワルツへと曲が変わる。
 思わず身体がリズムを刻んでしまうような楽しげで親しみある曲調は、サロン中の楽しい食事の時間を豊かに彩っていく。
 その曲調がHolmes(ka3813)の参入により、より華やかなものへと変化する。
 ルーンと合わせ、曲はそのままだが、ヴァイオリンで刻まれるリズムはジャズへと変わり、人々はおぉ、と感嘆の声を上げた。
 ルーンの指が楽しげに鍵盤の上を駆け、Holmesの弓が弦の上を踊るようにリズムを刻み、音に合わせて村人達が踊り始めた。決して洗練されたダンスなどでは無いがそれを見てHolmesは微笑むと、共に身体を揺らしながら舞台を下り、サロンを練り歩く。
 食事を頬張っていた者も、ドリンクを片手に談笑していた者も、皆が笑顔で2人が奏でるリズムに合わせて身体を揺らす。
 サロンを一周したところで丁度曲が終わり、人々の拍手にルーンはその服装も相まって歌劇プリモ・ウォーモのように洗練された一礼を、Holmesは戯けたように仰々しい一礼をした後、舞台を次の演者へと譲るため舞台を下りようとする。が、アウレール・V・ブラオラント(ka2531)のアイリッシュフルートの素朴な音が彼女達を引き留めた。
 穏やかで深みのある音色が人々の耳朶を打つ。そこに、ヴァイオリンのピッツィカートが加わり、チェンバロから光が弾けるようなメロディが刻まれ、朗々とした和音は人々を爽やかな春の草原へと誘う。
 曲が終わる頃には各テーブルに灯されたキャンドル・ハーブに火が灯され、そこからは爽やかなミントやシトラスの香りがふわりと漂うと、人々は晩春、そして初夏の夜を思い始める。
 そこに、ゲコゲコという蛙の鳴き声に似た音が響く。
 アージェンタの蛙貝。二枚の貝の背を手のひらの中で擦り合わせ、手技によって生み出される様々な鳴き声の蛙たちだ。
 次いで長い筒をそっと立てるとぱらぱらと小雨が降る音が響く。雨期の到来。そして、アウレールのアイリッシュフルートが低音から雨の止んだ夜の街を表現し、それは軽やかな小夜曲へと変わった。
 【蒼乱】に【神森】。憂いの尽きない時だからこそ、皆誰もが心安らぐ時間を、とアウレールの想いが満月の夜へと広がり、ルーンのチェンバロとHolmesのヴァイオリンによる即興の三重奏は喝采の下成功を収めた。

 再びアージェンタによる梟の鳴き声が響き、人々は拍手を止め、次の奏者達へ期待の眼差しを向ける。
 エメラルド・シルフィユ(ka4678)、ブリジット(ka4843)、リラ(ka5679)の3人は互いに目配せし合うと、各々手に持つ楽器を鳴らし始める。
 エメラルドは竪琴をで主旋律を。その音を追従するようにブリジットはギターを爪弾き、リラが優しくもどこか神聖さを感じさせるハンドベルの音色で装飾しながら歌い始めたのは、聖歌のアレンジ。
 3人は沢山の共通する点があった。聖職者の家系出身であること。身内に楽士がいること。そしてなによりもそれぞれがそれぞれの事を掛け替えのない友人として想い合っていること。今日という類い希な満月の夜に一緒に演奏出来ることが嬉しくて楽しくて仕方が無いこと――。
 そんな3人の演奏はメインとなる歌姫をリラからブリジットへ、ブリジットからエメラルドへ変えても誰が突出することも無く、見事な調和を持って人々の心に染み渡る。
 聖歌でありながらも神を称えるだけでは無い。仲間を想い、友を想い、この場にいる者全てに感謝する想いが、世界は時に残酷そのものでも、誰にも彼にも平等で美しいのだと讃える想いが歌声の端々から溢れ、祈りは届くのだと、歌は、音楽は通じるのだと、信じる気持ちが奇蹟を起こすのだと、3人の微笑みが物語る。
 そんな3人の歌と演奏は人々の心にじわりと熱を灯す。
 恋人同士はより寄り添うようにその声に耳を傾ける。なんて良い夜だと静かに涙を流す者もいた。
 エメラルドとブリジットとリラによる絶妙なハーモニーを、視線を合わせるだけでぴたりと止めた。
 そして、3人は同時に観客に向かって頭を下げた。
 洪水のような拍手を受け、3人は顔を見合わせた後、弾けんばかりの笑顔をみせたのだった。

 最後は奏者として立ったハンター全員での即興合奏で幕を締めると、サロン中から割れんばかりの拍手が響いた。
「去年の音楽会も素敵だったけれど、今年はもっと素敵になったわ」
 ヴェール越しでもわかるカサンドラの笑顔に、一同は誇らしげに笑みを交わし互いの演奏を称え合ったのだった。

 カサンドラとフランツに挨拶を終え、チーズがメインのピザに舌鼓を打っていた浅黄 小夜(ka3062)は顔を紅潮させて舞台から降りたエステルとルナを迎えた。
「……お二人とも……ほんま、素敵やったです」
「ありがとうございます、小夜さん」
「小夜ちゃんも凄く素敵! ちょっと大人っぽい感じ?」
 笑顔のルナが示した通り、今日の小夜は愛らしいディアンドルに身を包んでる。この地方のディアンドルはフランツの村の物よりスカート丈が短く、代わりにひだをふんだんとったパニエとペチコートを履くのが特徴らしい。
 前回がビタミンカラーだったのに比べ、今回は夜の音楽会ということで、白いブラウスに深緑のベストとスカート、淡い黄色のエプロンというスタンダードカラーだが、そのベストとスカートにはエプロンと同色の刺繍が施され、シンプルながらも上品なデザインだった。
 なお、この服を貸してくれた大体同じ歳ぐらいの娘さんは大きかった。何が、とは言わない。それでも型崩れしないこのブラウスとベストの作りは上手いこと出来ていると感心する。
 なお、そのままではちょっと寂しいのでと大振りな白い石のネックレスを借りたのだが、甘くないデザインは大人の女性らしくて少し気に入っていた。
「……おおきに、です」
 大人っぽい、と言われて少しはにかみながら小夜は2人にオススメの料理を紹介しはじめた。
 一通りの紹介が終わり、小夜はそっとバルコニーに出た。
 冴え冴えとした空気の中、大きな満月が照らす薔薇園は美しかったが、小夜はそれよりも星空を求めて空を見上げた。
 ――うん、怖くない。
 でも、夢の中では繋いでいた手が、傍に無い事が、少しだけ寂しかった。

「素敵な音楽会ですね。白亜宮という響きも」
 カサンドラにルーネ・ルナ(ka6244)は挨拶の言葉をかける。
「そう? 皆さんのおかげよ。でもありがとう」
 カサンドラは微笑んでその讃辞を受け止める。
 ルーネは先ほど受け取った葡萄のジュースで唇を湿らせるとガラス越しに月を見た。
「月の光にも温度があるような気がします」
 とてもやわらかい。気にしなければ気づかない花の香気のよう。そうルーネがたとえた時、姉であるルーンが舞台から降りてきたので、断りを入れて姉の元へと駆け寄る。
 甘えるようにルーンに寄り添ったルーネは、フランツにチョイスしてもらった白ワインのグラスを持つとルーンを誘って庭へと降りた。
「お疲れ様でしたぁ」
 甘えるようにルーン微笑みかけグラスを手渡すと、自身のグラスと乾杯する。
「……ん。美味しい」
「よかった。最初に飲むのならこれが良いってフランツさんにオススメしていただいたの」
 薔薇の芳香と葡萄の爽やかな芳香がルーンの鼻腔をくすぐる。恐らく食前酒として勧められたのだろう辛口で少し酸味のある口当たり。それが胃に落ちると火照った身体の隅々に行き渡るような飲みやすさがあった。
 サロンからは再び誰かの演奏する音楽が聞こえ始める。
 ルーンは庭に設えられたテーブルにグラスを置くと、大輪の薔薇の一つに顔を寄せ直接香りを嗅ぐ。その花弁のようなしっとりとした香りを胸一杯に吸い込んだルーンはぽつりと薔薇へと問いかけた。
「ねぇ、私の音は今も……?」
 その背に甘えるようにルーネは頬を寄せ、背中越しに聞こえる姉の心音に耳を傾けたのだった。

「……不思議、だな」
 夜空を見上げ、思わず口に出して呟いたことが可笑しくてユキヤ・S・ディールス(ka0382)は薄く微笑む。
 空は美しかった。高く、澄み切った空気のお陰か沢山の瞬きが見える。
 この見上げる星の彼方、何処かに、リアルブルーも存在しているのだろうかとユキヤは月夜を仰ぐ。
(ずっとこうした時間が続けばいいのに)
 あまりに静かで穏やかに流れる時に思わずそう願ってしまうが、満月は光が強すぎた。
 強い光は気高いまでにその存在が大きく、真昼の太陽よりも空の支配者な感じを受けた。
 耳を澄ませば音楽会の音が薔薇の芳香に乗ってユキヤの下まで聞こえてきた。
 見上げる空と、聞こえる音と……キラキラと光るようなこの綺麗な時をユキヤは1人静かに楽しんだ。


●薔薇に惑う
 広い薔薇園。薔薇で出来た迷路のような垣根の間を彷徨い歩きながら、シェリル・マイヤーズ(ka0509)は聞こえてくる音楽に耳を傾けていた。
(今頃何、してるかな……)
 思い描くのはたった1人の皇子様。比喩でも何でもなく、本当に帝国の皇子である彼のことだった。
 最初は友達になりたいと思っていた。それでも知れば知るほど、その優しい笑顔に、全部隠してるのだと気付いた。
(あの人は……私とは比べものにならないくらい強くて……)
 『傍にいたい』この想いを自覚してもう随分経つ。
 今更だけれど、今更だから、シェリルは悩んでいた。
(この気持ちをどうしよう……持ち続けるだけなら……いいかな……?)
 もだもだと悩み、薔薇園を進む内に、目の前に彼の髪と同じ深い赤色に、瞳と同じ橙が混じった薔薇の花を見つけて思わず立ち止まった。
「転移して力と刀をとって……皇子様に……恋して……何だか変なの」
 こちらの皇族や貴族階級の仕組みを詳しく知っているわけでは無い。けれど物語の皇子様のお相手は、いつだってお姫様だと言うことをシェリルはイヤと言うほど知っていた。
 それでも……
「…………好き……」
 彼を想って薔薇に呟く。
「……好き」
 彼に似た薔薇に触れ、その荊に指先を傷付けられても。
 シェリルが胸に宿した恋心は、彼を想って真紅の薔薇の如く咲き誇った。

「いい香りですね……」
 美しい薔薇を眺め志鷹 都(ka1140)は先ほどまでカサンドラと話していた内容を思い出す。
「あの……眼はどのようにして……?」 
 カサンドラにブーケを手渡し、そう控えめに……だが初対面にもかかわらず不躾に聴いてしまったのは、職業ゆえだろうか。
 それでもカサンドラのヴェールの向こうに隠れた表情もその声音もそれを咎めるような変化はなかった。
「60を越えた頃から少しずつ見えなくなって。色々調べましたけれども結局原因はわからず終いのまま」
 恐らく何度も答えてきたのだろう、少し戯けたように両肩を竦めて首を傾げる様には手慣れた風にも見えた。
「私の夫も、片眼ですが……眼が見えないんです。子供の頃に事故で光を失う前は、今日の満月のような……美しい琥珀色をしていました」
 満月を見上げ少し哀しげに微笑した都に、カサンドラは静かに頷いて続きを促した。
「子供が産まれてからは以前より笑顔を見せるようになりましたが……昔のような笑顔は、もう見れません」 
 彼を想い、九つで医の道を志し、十九で医者になったが、わかったのはもう光を戻す術は無いという現実だった。
「あなたは、彼に笑って欲しいのね。幸せでいて欲しいのね」
「……はい」
 カサンドラは「彼に会ったことがないのでわかりませんが」と前置きすると微笑みながら都に告げた。
「では、まずは誰よりもあなたが笑顔でいることね。そしてあなたが幸せでなければ」
 いつも笑顔・謙虚でいる事を心掛けてきた都は「そうですね」と返し、礼を言ってその場を離れ……今薔薇園にいた。
 光の有無程度しかわからない彼女に何と声を掛けて欲しかったのだろう。
 深い自問自答を繰り返しながら、都は1人立ち竦んでいた。


●君に酔う
「こういう所も珍しくていいだろ、ルシ」
 天宮 紅狼(ka2785)と共に薔薇園に設えられた東屋に着いた途端、ルシエド(ka1240)は「もういいよな?」と言うなりネクタイを緩めて窮屈な上着を脱いで肩にかけると、どかりと椅子に腰掛け、髪もラフに崩してしまった。
「ってもう脱ぐのかよ! 折角髪整えてやったつーのに……」
 紅狼は大げさに嘆いて見せた後、「まあ、お前が良きゃそれでいいけど」と諦めたように呟き唇の端を上げた。
「スラム育ちにゃ、ちっとお上品過ぎんぜ。飯は旨かったけど」
 メシマズな帝国の片田舎にしてはハーブや香辛料が使われた料理はルシエドも素直に美味しいと感じた。
 夜風が2人の間を駆け、ふわりと薔薇の香りが漂う。
「覚えとけ。ルシ。彼女できたらこういう場所連れて来い。口説くにはもって来いだ」
「は? 女ってこういう場所で口説かれると嬉しいの?」
 唐突な話題にルシエドは両目を大きく瞬かせた。
「お。そんな口振りってこたそういう相手いるんだな? おっさん安心したわー」
 そう言って煙草に手を伸ばそうとして、止めた。他にも薔薇園に来る者はいるだろうというTPOから来る遠慮と何より灰皿が手元に無かったからだ。
「そんなキザな真似できっかよ! めんどくせえ女は嫌いだしっ」
 手の甲で犬を払うような仕草をした後、大きく仰け反り空を見上げた。
 大きな月が地上を照らしているのが見えて、ルシエドは眉間にしわを寄せる。
 そんなルシエドの様子に、何故か紅狼まで眉間にしわを寄せているのに気付いてその顔を覗き込んだ。
「そーいう紅狼は、薔薇しょって女口説いた事あんの?」
「あ? 俺? そんな気障な事するように見えるか? そもそも『子持ちはお断り』って言われてここんとこ彼女も出来た試しねーよ」
 にやにやとした笑みに、紅狼はうんざりとしたジト目でルシエドを見た。
 一方で『子持ち』という言葉にルシエドが首を傾げると、紅狼の人差し指が眼前に飛び込んで来ておでこをツンと突かれた。
「お前のことだよ」
「俺のことかよ! ……紅狼も俺の事ガキだと思ってんじゃねーだろなー」
 心外だ! と言わんばかりに頬を引きつらせたルシエドはすぐに頬を膨らませて紅狼を上目使いで見上げる。
「おう。子供だと思ってるぜ」
 紅狼の返答にルシエドが大きな瞳を釣り上げて子犬が噛みつくように異議を唱える。
(全く、まだ暫く目離せねえかな……)
 紅狼は本心をルシエドには隠したまま、わざと適当にあしらいながらこの時間を楽しんでいた。

 夜の薔薇園は予想よりも綺麗だった。
 少しだけいつもよりテンションが高くなっている柄永 和沙(ka6481)の右手は先ほどから宙を泳ぎ、頬を掻き、何度も指先は屈伸を繰り返して……意を決して隣を歩くテオバルト・グリム(ka1824)のコートの袖を摘んだ。
 それに気付いたテオバルトは目を細めて和沙の手を取った。
「!」
「裾も良いけど手を繋ぎたいので俺は繋ぎます」
「!!」
 宣言され、和沙は耳まで真っ赤に染め上げると、それでも嬉しくて微笑んだ。
「あ、この曲知ってる」
 邸から聞こえるのはリアルブルーでも有名なキラ星を歌った童謡の一節。
 演奏に合わせて小さな鼻歌を歌いながら薔薇を眺める和沙の姿にテオバルトはすっかり見入っていた。
「薔薇綺麗だね……あ、和沙の方が綺麗だよとかいうクサい台詞は止めてね?」
「……先手を打たれた」
 褒め時を奪われてテオバルトは困ったように微笑む。そんな彼を見上げて和沙は満面の笑顔を向けた。
 夜風が和沙の桃色の髪を揺らす。
「ちょっと、寒いね。テオ……大丈夫? マフラー貸そうか?」
 寒いと聞いていた筈なのに、マフラー一つしか防寒具を身につけていない和沙のこの言葉。
「どーだ、温かいだろ?」
 テオバルドは夜風に震える和沙ごとコートで包むように抱きしめる。すっかり冷えてしまった体温に、やっぱマフラーだけじゃ無理だったんじゃないかと回す腕に力を込めた。
 突然抱き締められた和沙は少し戸惑いつつもその体温の暖かさにすり寄るように抱きしめ返す。
「テオ、大好き。……愛してる
 温もりを分けて貰ったお陰で震えが止まった頃、和沙はそっと背伸びをしてテオバルトの頬へ唇を落とした。
 頬にキスを受けて大きく見開かれたテオバルトの緑瞳はいつもより少し色っぽい熱を帯びて。
「俺も愛してるよ、和沙。今夜は月より綺麗だな」
 お返しのキスを和沙へと落とす。
(貴方はわたしの月です)
 月と薔薇しか見ていない事を祈りつつ。その少しかさついた唇を受け止めながら和沙はゆっくりと瞳を閉じた。

「ンー♪ ちょっと肌寒いけど、素敵な景色だねぇ」
「はい、ボク、こんなに立派な薔薇園は初めて見ました!」
 イルム=ローレ・エーレ(ka5113)の言葉にブレナー ローゼンベック(ka4184)は大きく頷いて薔薇へと駆け寄った。
 心地よい調べと月に照らされた薔薇は美しく、また幻想的でもあった。
 だからだろうか、はしゃぎ浮かれていたブレナーは普段なら人に頼ることが苦手で溜めこんでしまいがちな性格であるのに、イルムにぽつりぽつりとこの世界での暮らしの最中で自身の持つ不安を口にし始めた。
 戦いに身を投じて見つけた手の届く者を救おうとする守る為の戦い、しかしその中でいつか自身へ訪れるかもしれない死への恐怖とその場合に友人たちの思い出(記憶)に自分は居られるだろうかという不安。
「ねぇ、イルムさん。あなたは今日までどうやって戦ってきたの? 死への恐怖に抗ってきたの……? ボクのこの想いはただの我儘なのかな……」
 恐らくイルムも色んな事があって今のハンターの生活を送っている筈、と彼女がどんな体験してきたのかを聞いて、参考にしたかった。
 そんなブレナーの唇を手袋越しの人差し指一つで塞ぎ、イルムはにっこりと微笑んだ。
「ねえ、ブレナー君。我儘っていうのは、他の子からすると意外と大したことではなかったりするんだ。それどころか大切な人を失った時、相手も我儘を聞いてあげられなかったと後悔を抱くものなのさ」
 芝居がかった口調と身振り手振り。男装の麗人。イルムから紡がれる言葉は多くの場合が冗長で数々の美辞麗句に装飾されその本質を掴みがたい。
「だからボクは我儘で欲張りなことを沢山言うんだよ。だって、そうすれば相手も言いやすくなるじゃない? ブレナー君。ボクに沢山我儘を言って甘えてほしいな。それがボクの我儘だよ」
 ……つまり、イルムのことを知りたい、というブレナー我儘を叶えるには、まだ『我儘が足りない』という事。
 その意図に気付いて、ブレナーはカッと頬を染めた。震える両拳は太腿の辺りで硬く握り締められ、暫しの沈黙の後、意を決した様に顔を上げた。
「……イルムさんは、魅力的な人が多い中で誰かを一番に想う事がありますか……?」
 若き友人の年頃の少年らしい質問にイルムは満足そうに頷いて微笑んだ。
「ふふっ、この場には二人っきり。それなら今一番に想う人なんて決まっているよねぇ? ……なんてね」
 騎士が跪き、乙女の手を取るように、イルムはブレナーの手を取って口元に寄せて……悪戯っぽく笑った。
「ありがとうございます」
 この軽薄で好色にも見えるイルムの軽口。だがブレナーにとっては憧れの人の言葉に笑みを浮かべると感謝の言葉を告げた。

「本当に綺麗っすねぇ」
 感嘆の溜息と共に骸香(ka6223)が目の前の薔薇園を見つめれば、鞍馬 真(ka5819)も頷き、空を仰ぐ。
「今宵は、月が綺麗だな」
「満月のお陰で薔薇が光って見える気がするっす。こんなお庭見た事ないっす」
 去年は奏者としてほとんどの時間を過ごしたため、真もまた薔薇園に踏み込むのは始めてだった。
 最近激しい戦いばかりで中々二人でデートの時間も取れ無かったこともあり、2人は微笑み合いながら薔薇園を散策していく。
 スーツ姿にコートを纏った真に対し、黒地に椿柄の着物一枚で飛び出してきてしまった骸香は小さくくしゃみをして、全身を震わせた。
「わ、あ、ありがとっす」
 真は身につけていたストールを骸香の肩に巻くと、照れくさそうにはにかんだ骸香を見て満足そうに微笑み返し、その手を取って奥の東屋へと進んだ。
 2人並んで座ると、他愛ない話をしたり、聞こえてくる音楽に身を委ねながらのんびりとした時間を過ごした。
「何時も依頼お疲れ様っす」
 何処か疲れてる真を見て、骸香は少しでも真が甘えてくれるようにと寄り添う。
「夜は本当に真さんっすねこんなに綺麗な夜は特に」
「私?」
 両手で包み込むように真の手を取ると、骸香は頷く。
「優しくて綺麗で凛としていて格好良くて……」
「そんな事は無いだろう」
 立て板を水が滑り落ちるように褒め立てられて真は気恥ずかしくなって視線を彷徨わせる。
「夜は隠してくれるんすから、ね?」
 甘えていいんっすよ。と骸香に促され、真は握り締められた手に引かれるままに、骸香の細い肩口に額を載せた。
 柔らかな真の髪が少しくすぐったくて、肩の重みが嬉しくて、骸香は胸一杯に息を吸い込んだ。
 薔薇の香りと、真の匂いが混じり合って、とてつもなく甘美な気がする。
「……いい匂いっすね」
「なっ!?」
 思わず呟いてしまったら、真が凄い勢いで顔を上げた。
 てっきり自分の匂いを嗅がれた感想だと思った真は耳まで真っ赤にしてそっぽを向いてしまう。
「いや、花の匂いっすよ!? あと、夜の匂いっす!」
 夜=真なのだけれど。と心の中で思いつつも、骸香はえぃ! と真の頭に手を伸ばし、再び肩口に埋めてやった。
 すこしだけ抵抗した素振りをしてみせた真も、骸香の温もりと、背をぽんぽんと叩く感触にすぐに力を抜いた。
(……うん、良い香りだ)
 真もまた大きく息を吸って、薔薇の香りと自分のために笑ってくれる愛おしい花の香りを堪能し、ゆっくりと目を閉じた。

 アンコールからようやく解放されたジュードとエアルドフリスもまた薔薇園へと足を延ばしていた。
「ね、エアさん。一緒におどろ?」
 聞こえてくる音楽にジュードは手を差し出し、エアルドフリスはその手を恭しく取ると2人は先ほどとは違い音楽に身を任せ優雅に踊り始めた。
「以前此処へ来たのは、随分と辛い時期だった。前を向けたのは、ジュードの御蔭だ」
 かけられた言葉にエアルドフリスの瞳をじっと見つめたジュードは、ふわりと笑った。
「いつも有難う……愛してるよ、シキ」
 額を合わせ、2人は笑い合う。



 月は静かに東の空から天頂へと昇っていく。
 サロンは笑顔と音楽に溢れ、人々は暖かな気持ちでひとときを過ごす。
 一方で恋人達の夜は穏やかに幸せに満ちた時間を過ごしていた。
 もうすぐ冬が来る。
 冷たく、厳しい冬が来る。
 それでも今日の夜を忘れなければ、きっと乗り越えられるだろう。
 ――そう、誰もが感じることのできた夜となった。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 13
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MVP一覧

  • 人を繋ぐ奏者
    アージェンタ メルキウスka6373

重体一覧

参加者一覧

  • 遙けき蒼空に心乗せて
    ユキヤ・S・ディールス(ka0382
    人間(蒼)|16才|男性|聖導士
  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズ(ka0509
    人間(蒼)|14才|女性|疾影士
  • 月氷のトルバドゥール
    カフカ・ブラックウェル(ka0794
    人間(紅)|17才|男性|魔術師
  • 母のように
    都(ka1140
    人間(紅)|24才|女性|聖導士
  • 孤狼の養い子
    ルシエド(ka1240
    エルフ|10才|男性|疾影士
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 献身的な旦那さま
    テオバルト・グリム(ka1824
    人間(紅)|20才|男性|疾影士
  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリス(ka1856
    人間(紅)|30才|男性|魔術師
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 漂泊の狼
    天宮 紅狼(ka2785
    人間(蒼)|27才|男性|闘狩人
  • きら星ノスタルジア
    浅黄 小夜(ka3062
    人間(蒼)|16才|女性|魔術師
  • 星の音を奏でる者
    エステル・クレティエ(ka3783
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • 唯一つ、その名を
    Holmes(ka3813
    ドワーフ|8才|女性|霊闘士
  • 刃の先に見る理想
    ブレナー ローゼンベック(ka4184
    人間(蒼)|14才|男性|闘狩人
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • 咲き初めし白花
    ブリジット(ka4843
    人間(紅)|16才|女性|舞刀士
  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレ(ka5113
    人間(紅)|24才|女性|舞刀士
  • 想いの奏で手
    リラ(ka5679
    人間(紅)|16才|女性|格闘士

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 孤独なる蹴撃手
    骸香(ka6223
    鬼|21才|女性|疾影士

  • ルーン・ルン(ka6243
    エルフ|26才|女性|符術師

  • ルーネ・ルナ(ka6244
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 人を繋ぐ奏者
    アージェンタ メルキウス(ka6373
    人間(紅)|25才|男性|聖導士
  • 《大切》な者を支える為に
    和沙・E・グリム(ka6481
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 月下の待合室
エアルドフリス(ka1856
人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/11/14 01:03:13
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/11/13 20:01:07