ゲスト
(ka0000)
智者は賛美に己が身を捧ぐ
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/12/01 19:00
- 完成日
- 2016/12/15 07:30
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
俺はヴァルトフォーゲル家の次男として生まれた。
当時はどこにでもあるような貴族の家だ。多少格は高かったみたいだがな。
とはいえ、俺は昔からこんな性格だったから、どうにもあの連中とは反りが合わなかった。で、学問の一環として錬金術を学んでこい、という理由をつけて追い出されたわけだ。
だが、これが意外と面白い。錬金術師組合の連中も人のために技術を活かそうという心意気を持った奴が多くてな。当初いやいやだった俺もすぐに錬金術にのめりこんでいった。それこそ、実家のことなんかどうでもよくなるぐらいに。
そんな時、革命が起きた。ヴァルトフォーゲル家は革命に対し反対の姿勢を取った。貴族としてそれなり以上にいい生活送ってたんだから当然だよな。だが、俺は開明的な今の皇帝の考えを良しとしたし、何よりヴァルトフォーゲル家が嫌いだった。
だから、革命戦争で味方として共に戦ってくれと言われたとき……
●
「とっとと降伏しろ、とそう言ってやったわけだ。結局それなりに強く反抗したみたいで、命は助けられたみたいだが領地も家財も没収。行方不明で10数年が経過して今に至ると……」
錬金術師組合は革命に対して中立的な立場を取っていたこともあるが、勝ち目がない、古い体制への嫌悪。それらがクロウにそういう行動を取らせた。
「俺の話はこれで終わりだ。別に面白くもなんともなかったろ? 言っておくが、ズィルバーの野郎と会ったのは革命以来だし、俺自身は教導団となんのかかわりもないぞ」
そうクロウは念を押した。
「でも、疑問はまだ残りますね」
「そうね。ズィルバーがなぜこのタイミングで表舞台に戻ってきたのかとか」
「それに、なぜ『錬金術』なのか……」
口々に並べられる疑問を受けて、小柄な男が顎に手を当てる。
(現体制への不満があるから反帝国組織というのは……うん。わかる。そして、その旗に敢えて錬金術を掲げたのは……)
「……恨まれてるねぇ」
煙を吐き出しながら男が言った。その言葉に理由のすべてが集約されているような、そんな気がした。
「理由なんてどうだっていいだろ!」
威勢のいい声が響く。
「確かに、それら諸々捕まえてから話させれば宜しいでしょう」
「準備はできてる。急ぐとしようか」
そこにはエンジンが始動した状態の魔導トラックがあった。
先発した帝国兵に続く形で、彼らも逃げるズィルバー、ハルトを追うのだった。
●
「あ……が……」
「あ~あ、つまんないな」
その、先発した帝国兵。無論覚醒者を中心としたメンバーで編成された部隊であったがそれらは皆地面に倒れ伏し、最後の一人も……
「はい、終わり」
今、魔導アーマーにつぶされて、息絶えた。敵は2人、魔導アーマーがあっても有利は動かないだろうと、帝国兵も思っていたのだろう。だが、それは大きな間違いであった。
「終わったか。全く……話にならんな」
そこにいたのは輸送用の剣機リンドヴルム。そして、歪虚フリッツ・バウアーの姿。さらに魔導トラック一台がこの場にあり、そこには複数の機導師が乗り込んでいた。
「協力感謝しますよ」
「死体集めの一環だ。覚醒者なら使い道は多い」
腹部を抑えるズィルバーに対し、フリッツはそう言いながら鞭を器用に操り死体を剣機に放り投げていく。
「……では、俺は戻るぞ」
遠くを眺めていた様子のフリッツは剣機に乗り込むと、そのまま上昇していく。
ズィルバーはというと、トラックに移乗。あとはアーマーを乗せて撤退していくだけだ。
「……フリッツさんも一言言ってくれればいいのに」
「ん? どうしたんだいハルト」
「追手が来たみたいです……先輩みたいですね。ズィルバーさん、先に行ってもらえますか?」
「そうか……君を失うわけにはいかない。無理しないでくれ?」
「ありがとうございます。でも、先輩に僕のすごさを見せるいい機会です」
「……ありがとう。期待しているよ」
「はい! 任せてください!」
ズィルバーを乗せたトラックはそのまま走り出す。それを追う、ハンターたちが乗ったトラック。その間に割り込むような位置にアーマーをつけるハルト。
「さぁ、ここからは通さないよ!」
背部のバックパックから、複数の浮遊魔導機械が放出された。
●
「戦闘が始まったようです。急ぎましょう」
逃げる魔導トラック。運転手がそうズィルバーに言う。
「あぁ。頼むよ……ありがとうハルト……」
痛みがあるのだろう。そういって目をつむるズィルバー。
きっと、殿を務めたハルトを想っての言葉なのだろうと運転手は聞いていたが、その後に続く、ズィルバーの心中の声は聞きようがなかった。
(私の思惑通り動いてくれて……本当にありがとう。最期の役割もきちんと、頼むよ)
俺はヴァルトフォーゲル家の次男として生まれた。
当時はどこにでもあるような貴族の家だ。多少格は高かったみたいだがな。
とはいえ、俺は昔からこんな性格だったから、どうにもあの連中とは反りが合わなかった。で、学問の一環として錬金術を学んでこい、という理由をつけて追い出されたわけだ。
だが、これが意外と面白い。錬金術師組合の連中も人のために技術を活かそうという心意気を持った奴が多くてな。当初いやいやだった俺もすぐに錬金術にのめりこんでいった。それこそ、実家のことなんかどうでもよくなるぐらいに。
そんな時、革命が起きた。ヴァルトフォーゲル家は革命に対し反対の姿勢を取った。貴族としてそれなり以上にいい生活送ってたんだから当然だよな。だが、俺は開明的な今の皇帝の考えを良しとしたし、何よりヴァルトフォーゲル家が嫌いだった。
だから、革命戦争で味方として共に戦ってくれと言われたとき……
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「とっとと降伏しろ、とそう言ってやったわけだ。結局それなりに強く反抗したみたいで、命は助けられたみたいだが領地も家財も没収。行方不明で10数年が経過して今に至ると……」
錬金術師組合は革命に対して中立的な立場を取っていたこともあるが、勝ち目がない、古い体制への嫌悪。それらがクロウにそういう行動を取らせた。
「俺の話はこれで終わりだ。別に面白くもなんともなかったろ? 言っておくが、ズィルバーの野郎と会ったのは革命以来だし、俺自身は教導団となんのかかわりもないぞ」
そうクロウは念を押した。
「でも、疑問はまだ残りますね」
「そうね。ズィルバーがなぜこのタイミングで表舞台に戻ってきたのかとか」
「それに、なぜ『錬金術』なのか……」
口々に並べられる疑問を受けて、小柄な男が顎に手を当てる。
(現体制への不満があるから反帝国組織というのは……うん。わかる。そして、その旗に敢えて錬金術を掲げたのは……)
「……恨まれてるねぇ」
煙を吐き出しながら男が言った。その言葉に理由のすべてが集約されているような、そんな気がした。
「理由なんてどうだっていいだろ!」
威勢のいい声が響く。
「確かに、それら諸々捕まえてから話させれば宜しいでしょう」
「準備はできてる。急ぐとしようか」
そこにはエンジンが始動した状態の魔導トラックがあった。
先発した帝国兵に続く形で、彼らも逃げるズィルバー、ハルトを追うのだった。
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「あ……が……」
「あ~あ、つまんないな」
その、先発した帝国兵。無論覚醒者を中心としたメンバーで編成された部隊であったがそれらは皆地面に倒れ伏し、最後の一人も……
「はい、終わり」
今、魔導アーマーにつぶされて、息絶えた。敵は2人、魔導アーマーがあっても有利は動かないだろうと、帝国兵も思っていたのだろう。だが、それは大きな間違いであった。
「終わったか。全く……話にならんな」
そこにいたのは輸送用の剣機リンドヴルム。そして、歪虚フリッツ・バウアーの姿。さらに魔導トラック一台がこの場にあり、そこには複数の機導師が乗り込んでいた。
「協力感謝しますよ」
「死体集めの一環だ。覚醒者なら使い道は多い」
腹部を抑えるズィルバーに対し、フリッツはそう言いながら鞭を器用に操り死体を剣機に放り投げていく。
「……では、俺は戻るぞ」
遠くを眺めていた様子のフリッツは剣機に乗り込むと、そのまま上昇していく。
ズィルバーはというと、トラックに移乗。あとはアーマーを乗せて撤退していくだけだ。
「……フリッツさんも一言言ってくれればいいのに」
「ん? どうしたんだいハルト」
「追手が来たみたいです……先輩みたいですね。ズィルバーさん、先に行ってもらえますか?」
「そうか……君を失うわけにはいかない。無理しないでくれ?」
「ありがとうございます。でも、先輩に僕のすごさを見せるいい機会です」
「……ありがとう。期待しているよ」
「はい! 任せてください!」
ズィルバーを乗せたトラックはそのまま走り出す。それを追う、ハンターたちが乗ったトラック。その間に割り込むような位置にアーマーをつけるハルト。
「さぁ、ここからは通さないよ!」
背部のバックパックから、複数の浮遊魔導機械が放出された。
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「戦闘が始まったようです。急ぎましょう」
逃げる魔導トラック。運転手がそうズィルバーに言う。
「あぁ。頼むよ……ありがとうハルト……」
痛みがあるのだろう。そういって目をつむるズィルバー。
きっと、殿を務めたハルトを想っての言葉なのだろうと運転手は聞いていたが、その後に続く、ズィルバーの心中の声は聞きようがなかった。
(私の思惑通り動いてくれて……本当にありがとう。最期の役割もきちんと、頼むよ)
リプレイ本文
●
「さっさと追っかけるためにも、目の前のやつを潰さなきゃいかんか」
機関銃の安全装置を解除したリカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)は、トラックが止まるとともに飛び降り、走り出す。アーマーの背部へ回り込むのが目的か。
「確かに……色々気になることは多いけど、まずはね」
ズィルバーの思惑は確かに気になるが、今は目の前に集中しなければいけない。ドロテア・フレーベ(ka4126)は視界内の魔導機械を狙うため銃を取り出す。だが、最終的には魔導ア―マーに接触したい考え。
「先行した帝国兵がなすすべなく返り討ち、か……あたしたちに対してもそうできる自信があるってことかしらね」
「例えそうだとしても……先遣隊の無念を晴らすためにも、ここで立ち止まるわけにはいきません。道を上げていただきましょう」
ロベリア・李(ka4206)の危惧も尤もだが、日下 菜摘(ka0881)の言う通り、何の成果も無しに帰るわけにはいかない。
「ここで敢えてあれを見捨てる、か……」
マッシュ・アクラシス(ka0771)は、敵が魔導アーマーとハルトを置いていったことに何らかの思惑を感じ取った。だが、足止めが不要だったのかというとそうでもないだろう。
「どの道選択肢はありませんか」
呟いたマッシュは、支部での戦いと同様、トミヲの護衛についた。
「……コレさえなきゃあ、あの魔導アーマーをぶっ潰してやりたかったんだが……」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)は展開していくハンター達を車内から眺めていた。大怪我の為直接戦闘することはできない。
「まぁ、言ってもしょうがねぇ。俺は俺にできることをするだけ、ってな」
「そういうことだな。頼むぜ」
車内から戦況の分析や観察を行うことにしたボルディアに、クロウが声をかける。
「……クロウくん」
そんなクロウに、今度は水流崎トミヲ(ka4852)が話しかけた。
「彼は……取り戻せないのかな」
彼、とはハルトのことであろうことはクロウにもすぐわかった。だが、その答えは容易には出てこない。
「……どちらにせよ、話してみなきゃ分からんさ。その為にもちっとは懲らしめないといけないだろうがな」
「そっか。それなら、今は彼を……倒す!」
そう言って、トミヲはFMTを使用する。それにより、トラック前の地面に遮蔽となる壁が……いや、美少女の像が完成した。
「ちょっとトミヲ! シリアスな流れだったのにこれ!?」
ロベリアの叫びが響く。こうして、ハルトとの戦闘は開始された。
●
ハンター側はFMTによる像を遮蔽としてその後ろに展開。また、ドロテアとリカルドは両翼に分かれて前進していく。
こちらの行動に合わせて、ハルト側も動き出す。
「へぇ……見覚えのあるやつが1種にぃ? 特にない奴が2種ってか。よくもまぁ用意したもんだなおい」
鵤(ka3319)の言葉通り、視界に入る魔導機械は全3種。砲型と剣型は左右からこちらを挟み込むような動き。ただし、大きく各機が距離をとっているのが特徴的。範囲攻撃による殲滅を避けているのだろう。
もう一種、盾型は数機がハルトの周辺を滞空している。明らかに防御を意識したものだ。
この辺りの動き方は大凡ロベリアはじめハンター側の読み通りといったところだ。
「問題は、こっちが手の内見せてる分範囲攻撃の警戒が高いってところかしらね……」
壊身を使う鵤に合わせ、マテリアルアーマーを出力重視で発動するロベリア。
「ちょっと無茶することになりそう。バックアップは頼むわよ」
「はい。多少の負傷は私が癒せます。皆さんは前だけを向いて、戦ってください」
すぐさま銃で牽制しながら菜摘が言う。非常時には菜摘がカバーしてくれるだろう。それに、菜摘は支部での戦いでは施設内にいたこともありハルト側に癒し手であることは露見していないはずだ。そういう意味では引き気味での対応はヘイトを稼ぎにくくて良い。
鵤は右から接近する魔導機械に対して光針を使用して迎撃。支部での戦いにおいて使用した陽炎と比べると殲滅能力は低いように思われるが、その代りこちらは多少ばらけていても複数に攻撃が可能だ。
「距離を取ったところで関係ないってね」
ロベリアは逆、左側から接近する魔導機械を狙いデルタレイBを使って迎撃。
「剣型が寄ってきたら任せるわよ」
「はい。迂闊に前へ出るわけにもいきませんからね……」
トミヲをカバーするようにマッシュは銃撃で援護を重ねる。とくに剣型は注意する必要がある。
(本当はFMTを側面に使えればよかったんだけど……)
しかし、この魔法は一つ作り出したらそれが壊れるまで次を作れない。ならば、今は守りより攻めの手をと、トミヲはSIENを使用したのち、火焔紋。味方を巻き込まない位置を見極め使用。威力は折り紙付きだ。一撃で魔導機械を破壊する。ただ、相手の警戒がきつく、思いのほか複数を巻き込むことができなかった。
「しっかし……」
一方、前進しながら弾幕を張るリカルドはついぼやいてしまう。
「こうして数が多いうえに、倒すたびに爆発されるのはなぁ」
堅い鎧を装備しているため、距離を取ったうえでの爆発ならそんなに大きなダメージは受けないのだが、やはり面倒ではある。
「けど……」
自身への攻撃はそれほど多くは無い。それが少し不思議ではあった。
「嫌なオモチャね……!」
ドロテアはリカルドとは逆方向から魔導アーマーへ向け走り出す。死角を取るような動きを心がけたいところだが、平地ではこちらの動きは筒抜けだ。
にも関わらず攻撃の手が緩い。この辺りはリカルドと同様だ。
(おそらくは……あれかしらね)
視線の先はアーマー周辺を滞空する盾型。信頼が厚いのだろうと解釈することにした。実際それは正解であり、アーマーに接近するのは近接型で、近接型への対応は盾型で行えばいいとハルトは考えていた。それよりも重視すべきなのは範囲攻撃が可能な敵。
「数が多いわね……!」
デルタレイBを打ち込むロベリア。そのロベリアに攻撃が向かう。マテリアルアーマーによる防御を加味しても敵の火力が高い。
「下がってください! 狙われてます!」
「いいのよ……これも狙い通りではあるから」
マッシュが叫ぶ。それでもあえて前に出るロベリア。当然狙われてしまうが、すべては火力の高いトミヲが攻撃を受けないようにするため。つまり、ロベリアは半ば自分を囮として使ったのだ。
「まだま……だ……!」
砲型の攻撃にさらされながらも迎撃を続けたロベリアだが、その体を剣型が貫く。マッシュやクロウの牽制から抜け出た一つだ。
「これ……ただの剣じゃない! 痺れが……」
その言葉を言い切る前に剣型が爆発。ロベリアは爆風で飛ばされ、そのまま動かなくなる。
「ちっ……注意しろよ! ただの剣じゃない!」
状況を観察していたボルディアが叫ぶ。
「どういう……うぉっ!?」
砲型からの攻撃をかわしたところを狙われた鵤。剣型が肩口に突き刺さる。同時に爆発が発生。横殴りに倒される形。この時、ロベリアが伝えようとしたことが実体験として理解できた。
(なるほど、エレクトリックショックを使われたようなもんか。しかし、今の連携攻撃は……)
砲型からの連携は非常に精度が高い。これだけ複数の魔動機械を同時操作するなら多少操作が甘くなりそうなものだ。
「やはり、あれが怪しそうかね」
鵤が見据えたのは、魔導アーマーの両側に取り付けられた機械だった。
●
「多分、見て操作してる感じだ! 視界に入っているところは精度が上がるみたいだから気を付けろ!」
遮蔽物の後ろにいるマッシュやトミヲの被弾率からそう判断し声を上げるボルディア。それは正しい。だが、それだけではない。
「大丈夫ですか!」
鵤は菜摘のヒールでなんとか戦闘継続が可能。盾で受けられたのが良かった。だが、それでもダメージは深い。
「助かった。こっちはもういいからほかの回復に回ってくんねぇかな。さて……」
痛む体に鞭打ち鵤は立ち上がる。
「マッシュ君!」
「……わかりました。少し離れます」
鵤への援護を行うためマッシュは走り出す。そのまま拳銃での援護射撃。剣型を鵤の目前で撃ち落とす。それを牽制するかのように、剣型が一機マッシュを襲う。それを薙ぎ払いで叩き落す。同時にその場を飛退き爆発を避ける。
この間に鵤は攻撃を受ける。砲型の集中攻撃だ。引きながら銃撃を行う菜摘。1機は落とすがそれまでだ。だが、ほぼ同じタイミングで鵤は氷弾を使用していた。狙いは敵アーマー左部。盾型が射線に割り込むように入ってくるが、無数の銃弾はそれをも巻き込み、狙いだったアーマーに取り付けられた魔導機械を打ち抜いた。
「1発が限界、か……あとは任せるわ」
砲型、さらに剣型が攻撃をして鵤は倒される。だが、この攻撃は敵にとっても予想外の物だったのだろう。盾型が貫通されたのだから。鵤への攻撃集中がその証だ。
「高まれ! DT魔力っ!」
このタイミングでトミヲは像の横に出て、火焔紋を魔導アーマーに向けて使用する。射程は十分、タイミングも鵤に気がそれている今がベスト。
「高ぶり、刻む……! 火焔紋!」
だが、読まれた。
火焔紋が発動する直前、魔導アーマーの前に壁……複数の盾型を並べたものだ。それが現れ、火焔紋を防いだ。
「っ……数というものは本当に、面倒なのですよ。ええ……」
チャージングを使用しながら突っ込むマッシュ。ハルトも黙っているわけではなく、トミヲを狙いこのタイミングで複数の剣型を投入。それを薙ぎ払いで殲滅する。だが、その際に起こる爆発は避けようがなく、ダメージを受ける。
「くっ……やるねハルト君……!」
だが、この撃ち合いを制したのは間違いなくトミヲだ。今の一発で大量の盾型をまとめて吹き飛ばすことができたのだから。それに……攻撃の精度が先ほどより落ちている。これは鵤の氷弾によるアーマー攻撃が影響しているのだろう。戦況は確実にハンター側へ傾いてきている。
「急いで治療してやってくれ!」
倒れたロベリアをトラックに運びながらクロウが声を上げた。
「危ない危ない……やっぱりあの人は厄介だな」
一方、魔導アーマーに乗っていたハルトは爆風で多少ダメージを受けた。盾型の防御で致命傷を防ぐことはできたようだ。その意識は、攻撃しているトミヲへと向いていた。
「あら、あの人って誰のことかしら?」
隙と呼べるほどのものではなかった。
トミヲの魔法と、それに対する防御行動と爆発による影響。それが一瞬ハルトの視界を閉ざした。そして、その一瞬こそが、ドロテアが待ち望んでいたものだった。
「しまっ……!」
「あなたには聞きたいことがたくさんあるのよ、ね!」
ハルトが何かした。それと同時に、ドロテアの鞭がハルトの首に巻きつき、そのままアーマーから引きずり落とされる。量産型魔導アーマーを基にしている以上コクピットはガラ空きだ。そこが弱点にもなっている。
「次があれば、ヘイムダルでも参考に……すること、ね……」
同じくしてドロテアも力なく魔導アーマーから落下する。腹部には剣型が突き刺さっている。さらに、地面に落ちると同時に爆発。致命的なダメージを受ける。
「くっそ……」
一方のハルトも無事ではなさそうだ。地面に強く叩きつけられ、かなりのダメージを負っているように見える。
「でも、これぐらいじゃまだ……」
「いいや、終わりだ」
不意の声は、搭乗者のいなくなった魔導アーマー……その背部から聞こえた。
「ただの的なら、あとのことを考えなくていいからな」
リカルドだ。ギリギリの間合いから踏込により射程を詰めたリカルドが、渾身の力を込めた龍の型によりバックパックを攻撃する。
「うそ、正気なの!?」
ハルトはその場を離れようとする……が、よろめき倒れ、叶わない。バックパックの内部にはまだいくつかの魔導機械が残されていた。そう。『爆発する』魔導機械だ。
(まだ……まだ僕は……!)
そうするとどうなるか……その結果は一際大きな爆発が示してくれた。
●
「無茶をやる……!」
魔導アーマーは本来安定した重心の機体であるはずだが、それが前のめりに倒れているあたり相当な火力だったと見える。それはつまり、まだバックパック内に相当数の魔導機械が内蔵されていたことを示している。恐らくは、これも範囲攻撃による殲滅リスクを避けるための行動だったのだろうが、そのことを感謝すべきだろう。
魔導アーマーから離れた位置には仰向けで倒れたリカルドの姿が見える。ピクリとも動かない。爆心に最も近かったのがリカルドなのだから当然と言えば当然か。
ドロテアも吹き飛ばされかなり遠くに転がっている。
「こっちは大丈夫。急いで二人のところへ」
「分かりました」
マッシュにヒールを使用していた菜摘だったが、そう言われ走り出す。戦闘は終わった。そう考えてよさそうだ。
「何か落ちてきた! 注意しろ!!」
ボルディアの叫び。ボルディアは戦闘中、上空から降りてこない剣機を警戒していた。その高度が下がることはなかったのだが、そこから何か……人のようなものが降ってきたというのだ。
ズン、という重い落着音。一瞬の噴煙とともに立っていたのは、フリッツ・バウアーと呼ばれる歪虚だった。
そのままフリッツは歩き出し、その歩みを……倒れたハルトの前で止めた。
「ハルト君が狙われてる!」
動きが最も早かったのはトミヲだ。火焔紋をフリッツ向けて打ち込む。
だが、それを防いだのは落ちるかのように降りてきた剣機の巨体だ。
フリッツは抵抗をしないハルトを肩に乗せ、悠々と剣機の上へ飛び乗った。
「貴様たちがハルトを『殺してくれた』お陰で、大した抵抗もなく商品を受け取れた。ご苦労だったな」
再度の火焔紋。それに加え、接近していた菜摘もホーリーライトを使用。さらにマッシュも走り出していた。だが、時すでに遅く、剣機は急上昇。すぐに射程外へと飛び去って行った。備えていないわけではなかった。だが、損耗が激しすぎたのだ。
「……商品?」
その様子を見ていたクロウは、フリッツが言った言葉を、もう一度口に出していた。
●
「そうか……報告感謝するよ」
ハルトが死んだと聞いた時、ズィルバーは俯き肩を震わせた。報告した教団員はその様子を見てそっと部屋を出た。きっと、その死を悼んでいるのだろうと。だが……その実ズィルバーが笑いを堪えていたなんてことは思いもしないだろう。
「後輩を手にかけ、その後輩が歪虚の取引材料にされていた。それを知ったときのクロウ……どういう顔をしていたかなぁ……見たかったなぁ。だけど……まだ終わりじゃないよクロウ……お前はもう一度、ハルトを殺さないといけないんだからねぇ……」
「さっさと追っかけるためにも、目の前のやつを潰さなきゃいかんか」
機関銃の安全装置を解除したリカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)は、トラックが止まるとともに飛び降り、走り出す。アーマーの背部へ回り込むのが目的か。
「確かに……色々気になることは多いけど、まずはね」
ズィルバーの思惑は確かに気になるが、今は目の前に集中しなければいけない。ドロテア・フレーベ(ka4126)は視界内の魔導機械を狙うため銃を取り出す。だが、最終的には魔導ア―マーに接触したい考え。
「先行した帝国兵がなすすべなく返り討ち、か……あたしたちに対してもそうできる自信があるってことかしらね」
「例えそうだとしても……先遣隊の無念を晴らすためにも、ここで立ち止まるわけにはいきません。道を上げていただきましょう」
ロベリア・李(ka4206)の危惧も尤もだが、日下 菜摘(ka0881)の言う通り、何の成果も無しに帰るわけにはいかない。
「ここで敢えてあれを見捨てる、か……」
マッシュ・アクラシス(ka0771)は、敵が魔導アーマーとハルトを置いていったことに何らかの思惑を感じ取った。だが、足止めが不要だったのかというとそうでもないだろう。
「どの道選択肢はありませんか」
呟いたマッシュは、支部での戦いと同様、トミヲの護衛についた。
「……コレさえなきゃあ、あの魔導アーマーをぶっ潰してやりたかったんだが……」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)は展開していくハンター達を車内から眺めていた。大怪我の為直接戦闘することはできない。
「まぁ、言ってもしょうがねぇ。俺は俺にできることをするだけ、ってな」
「そういうことだな。頼むぜ」
車内から戦況の分析や観察を行うことにしたボルディアに、クロウが声をかける。
「……クロウくん」
そんなクロウに、今度は水流崎トミヲ(ka4852)が話しかけた。
「彼は……取り戻せないのかな」
彼、とはハルトのことであろうことはクロウにもすぐわかった。だが、その答えは容易には出てこない。
「……どちらにせよ、話してみなきゃ分からんさ。その為にもちっとは懲らしめないといけないだろうがな」
「そっか。それなら、今は彼を……倒す!」
そう言って、トミヲはFMTを使用する。それにより、トラック前の地面に遮蔽となる壁が……いや、美少女の像が完成した。
「ちょっとトミヲ! シリアスな流れだったのにこれ!?」
ロベリアの叫びが響く。こうして、ハルトとの戦闘は開始された。
●
ハンター側はFMTによる像を遮蔽としてその後ろに展開。また、ドロテアとリカルドは両翼に分かれて前進していく。
こちらの行動に合わせて、ハルト側も動き出す。
「へぇ……見覚えのあるやつが1種にぃ? 特にない奴が2種ってか。よくもまぁ用意したもんだなおい」
鵤(ka3319)の言葉通り、視界に入る魔導機械は全3種。砲型と剣型は左右からこちらを挟み込むような動き。ただし、大きく各機が距離をとっているのが特徴的。範囲攻撃による殲滅を避けているのだろう。
もう一種、盾型は数機がハルトの周辺を滞空している。明らかに防御を意識したものだ。
この辺りの動き方は大凡ロベリアはじめハンター側の読み通りといったところだ。
「問題は、こっちが手の内見せてる分範囲攻撃の警戒が高いってところかしらね……」
壊身を使う鵤に合わせ、マテリアルアーマーを出力重視で発動するロベリア。
「ちょっと無茶することになりそう。バックアップは頼むわよ」
「はい。多少の負傷は私が癒せます。皆さんは前だけを向いて、戦ってください」
すぐさま銃で牽制しながら菜摘が言う。非常時には菜摘がカバーしてくれるだろう。それに、菜摘は支部での戦いでは施設内にいたこともありハルト側に癒し手であることは露見していないはずだ。そういう意味では引き気味での対応はヘイトを稼ぎにくくて良い。
鵤は右から接近する魔導機械に対して光針を使用して迎撃。支部での戦いにおいて使用した陽炎と比べると殲滅能力は低いように思われるが、その代りこちらは多少ばらけていても複数に攻撃が可能だ。
「距離を取ったところで関係ないってね」
ロベリアは逆、左側から接近する魔導機械を狙いデルタレイBを使って迎撃。
「剣型が寄ってきたら任せるわよ」
「はい。迂闊に前へ出るわけにもいきませんからね……」
トミヲをカバーするようにマッシュは銃撃で援護を重ねる。とくに剣型は注意する必要がある。
(本当はFMTを側面に使えればよかったんだけど……)
しかし、この魔法は一つ作り出したらそれが壊れるまで次を作れない。ならば、今は守りより攻めの手をと、トミヲはSIENを使用したのち、火焔紋。味方を巻き込まない位置を見極め使用。威力は折り紙付きだ。一撃で魔導機械を破壊する。ただ、相手の警戒がきつく、思いのほか複数を巻き込むことができなかった。
「しっかし……」
一方、前進しながら弾幕を張るリカルドはついぼやいてしまう。
「こうして数が多いうえに、倒すたびに爆発されるのはなぁ」
堅い鎧を装備しているため、距離を取ったうえでの爆発ならそんなに大きなダメージは受けないのだが、やはり面倒ではある。
「けど……」
自身への攻撃はそれほど多くは無い。それが少し不思議ではあった。
「嫌なオモチャね……!」
ドロテアはリカルドとは逆方向から魔導アーマーへ向け走り出す。死角を取るような動きを心がけたいところだが、平地ではこちらの動きは筒抜けだ。
にも関わらず攻撃の手が緩い。この辺りはリカルドと同様だ。
(おそらくは……あれかしらね)
視線の先はアーマー周辺を滞空する盾型。信頼が厚いのだろうと解釈することにした。実際それは正解であり、アーマーに接近するのは近接型で、近接型への対応は盾型で行えばいいとハルトは考えていた。それよりも重視すべきなのは範囲攻撃が可能な敵。
「数が多いわね……!」
デルタレイBを打ち込むロベリア。そのロベリアに攻撃が向かう。マテリアルアーマーによる防御を加味しても敵の火力が高い。
「下がってください! 狙われてます!」
「いいのよ……これも狙い通りではあるから」
マッシュが叫ぶ。それでもあえて前に出るロベリア。当然狙われてしまうが、すべては火力の高いトミヲが攻撃を受けないようにするため。つまり、ロベリアは半ば自分を囮として使ったのだ。
「まだま……だ……!」
砲型の攻撃にさらされながらも迎撃を続けたロベリアだが、その体を剣型が貫く。マッシュやクロウの牽制から抜け出た一つだ。
「これ……ただの剣じゃない! 痺れが……」
その言葉を言い切る前に剣型が爆発。ロベリアは爆風で飛ばされ、そのまま動かなくなる。
「ちっ……注意しろよ! ただの剣じゃない!」
状況を観察していたボルディアが叫ぶ。
「どういう……うぉっ!?」
砲型からの攻撃をかわしたところを狙われた鵤。剣型が肩口に突き刺さる。同時に爆発が発生。横殴りに倒される形。この時、ロベリアが伝えようとしたことが実体験として理解できた。
(なるほど、エレクトリックショックを使われたようなもんか。しかし、今の連携攻撃は……)
砲型からの連携は非常に精度が高い。これだけ複数の魔動機械を同時操作するなら多少操作が甘くなりそうなものだ。
「やはり、あれが怪しそうかね」
鵤が見据えたのは、魔導アーマーの両側に取り付けられた機械だった。
●
「多分、見て操作してる感じだ! 視界に入っているところは精度が上がるみたいだから気を付けろ!」
遮蔽物の後ろにいるマッシュやトミヲの被弾率からそう判断し声を上げるボルディア。それは正しい。だが、それだけではない。
「大丈夫ですか!」
鵤は菜摘のヒールでなんとか戦闘継続が可能。盾で受けられたのが良かった。だが、それでもダメージは深い。
「助かった。こっちはもういいからほかの回復に回ってくんねぇかな。さて……」
痛む体に鞭打ち鵤は立ち上がる。
「マッシュ君!」
「……わかりました。少し離れます」
鵤への援護を行うためマッシュは走り出す。そのまま拳銃での援護射撃。剣型を鵤の目前で撃ち落とす。それを牽制するかのように、剣型が一機マッシュを襲う。それを薙ぎ払いで叩き落す。同時にその場を飛退き爆発を避ける。
この間に鵤は攻撃を受ける。砲型の集中攻撃だ。引きながら銃撃を行う菜摘。1機は落とすがそれまでだ。だが、ほぼ同じタイミングで鵤は氷弾を使用していた。狙いは敵アーマー左部。盾型が射線に割り込むように入ってくるが、無数の銃弾はそれをも巻き込み、狙いだったアーマーに取り付けられた魔導機械を打ち抜いた。
「1発が限界、か……あとは任せるわ」
砲型、さらに剣型が攻撃をして鵤は倒される。だが、この攻撃は敵にとっても予想外の物だったのだろう。盾型が貫通されたのだから。鵤への攻撃集中がその証だ。
「高まれ! DT魔力っ!」
このタイミングでトミヲは像の横に出て、火焔紋を魔導アーマーに向けて使用する。射程は十分、タイミングも鵤に気がそれている今がベスト。
「高ぶり、刻む……! 火焔紋!」
だが、読まれた。
火焔紋が発動する直前、魔導アーマーの前に壁……複数の盾型を並べたものだ。それが現れ、火焔紋を防いだ。
「っ……数というものは本当に、面倒なのですよ。ええ……」
チャージングを使用しながら突っ込むマッシュ。ハルトも黙っているわけではなく、トミヲを狙いこのタイミングで複数の剣型を投入。それを薙ぎ払いで殲滅する。だが、その際に起こる爆発は避けようがなく、ダメージを受ける。
「くっ……やるねハルト君……!」
だが、この撃ち合いを制したのは間違いなくトミヲだ。今の一発で大量の盾型をまとめて吹き飛ばすことができたのだから。それに……攻撃の精度が先ほどより落ちている。これは鵤の氷弾によるアーマー攻撃が影響しているのだろう。戦況は確実にハンター側へ傾いてきている。
「急いで治療してやってくれ!」
倒れたロベリアをトラックに運びながらクロウが声を上げた。
「危ない危ない……やっぱりあの人は厄介だな」
一方、魔導アーマーに乗っていたハルトは爆風で多少ダメージを受けた。盾型の防御で致命傷を防ぐことはできたようだ。その意識は、攻撃しているトミヲへと向いていた。
「あら、あの人って誰のことかしら?」
隙と呼べるほどのものではなかった。
トミヲの魔法と、それに対する防御行動と爆発による影響。それが一瞬ハルトの視界を閉ざした。そして、その一瞬こそが、ドロテアが待ち望んでいたものだった。
「しまっ……!」
「あなたには聞きたいことがたくさんあるのよ、ね!」
ハルトが何かした。それと同時に、ドロテアの鞭がハルトの首に巻きつき、そのままアーマーから引きずり落とされる。量産型魔導アーマーを基にしている以上コクピットはガラ空きだ。そこが弱点にもなっている。
「次があれば、ヘイムダルでも参考に……すること、ね……」
同じくしてドロテアも力なく魔導アーマーから落下する。腹部には剣型が突き刺さっている。さらに、地面に落ちると同時に爆発。致命的なダメージを受ける。
「くっそ……」
一方のハルトも無事ではなさそうだ。地面に強く叩きつけられ、かなりのダメージを負っているように見える。
「でも、これぐらいじゃまだ……」
「いいや、終わりだ」
不意の声は、搭乗者のいなくなった魔導アーマー……その背部から聞こえた。
「ただの的なら、あとのことを考えなくていいからな」
リカルドだ。ギリギリの間合いから踏込により射程を詰めたリカルドが、渾身の力を込めた龍の型によりバックパックを攻撃する。
「うそ、正気なの!?」
ハルトはその場を離れようとする……が、よろめき倒れ、叶わない。バックパックの内部にはまだいくつかの魔導機械が残されていた。そう。『爆発する』魔導機械だ。
(まだ……まだ僕は……!)
そうするとどうなるか……その結果は一際大きな爆発が示してくれた。
●
「無茶をやる……!」
魔導アーマーは本来安定した重心の機体であるはずだが、それが前のめりに倒れているあたり相当な火力だったと見える。それはつまり、まだバックパック内に相当数の魔導機械が内蔵されていたことを示している。恐らくは、これも範囲攻撃による殲滅リスクを避けるための行動だったのだろうが、そのことを感謝すべきだろう。
魔導アーマーから離れた位置には仰向けで倒れたリカルドの姿が見える。ピクリとも動かない。爆心に最も近かったのがリカルドなのだから当然と言えば当然か。
ドロテアも吹き飛ばされかなり遠くに転がっている。
「こっちは大丈夫。急いで二人のところへ」
「分かりました」
マッシュにヒールを使用していた菜摘だったが、そう言われ走り出す。戦闘は終わった。そう考えてよさそうだ。
「何か落ちてきた! 注意しろ!!」
ボルディアの叫び。ボルディアは戦闘中、上空から降りてこない剣機を警戒していた。その高度が下がることはなかったのだが、そこから何か……人のようなものが降ってきたというのだ。
ズン、という重い落着音。一瞬の噴煙とともに立っていたのは、フリッツ・バウアーと呼ばれる歪虚だった。
そのままフリッツは歩き出し、その歩みを……倒れたハルトの前で止めた。
「ハルト君が狙われてる!」
動きが最も早かったのはトミヲだ。火焔紋をフリッツ向けて打ち込む。
だが、それを防いだのは落ちるかのように降りてきた剣機の巨体だ。
フリッツは抵抗をしないハルトを肩に乗せ、悠々と剣機の上へ飛び乗った。
「貴様たちがハルトを『殺してくれた』お陰で、大した抵抗もなく商品を受け取れた。ご苦労だったな」
再度の火焔紋。それに加え、接近していた菜摘もホーリーライトを使用。さらにマッシュも走り出していた。だが、時すでに遅く、剣機は急上昇。すぐに射程外へと飛び去って行った。備えていないわけではなかった。だが、損耗が激しすぎたのだ。
「……商品?」
その様子を見ていたクロウは、フリッツが言った言葉を、もう一度口に出していた。
●
「そうか……報告感謝するよ」
ハルトが死んだと聞いた時、ズィルバーは俯き肩を震わせた。報告した教団員はその様子を見てそっと部屋を出た。きっと、その死を悼んでいるのだろうと。だが……その実ズィルバーが笑いを堪えていたなんてことは思いもしないだろう。
「後輩を手にかけ、その後輩が歪虚の取引材料にされていた。それを知ったときのクロウ……どういう顔をしていたかなぁ……見たかったなぁ。だけど……まだ終わりじゃないよクロウ……お前はもう一度、ハルトを殺さないといけないんだからねぇ……」
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/11/26 23:36:22 |
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質問卓 日下 菜摘(ka0881) 人間(リアルブルー)|24才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/11/29 09:15:44 |
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追撃戦!【相談卓】 ドロテア・フレーベ(ka4126) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/12/01 00:19:11 |