ゲスト
(ka0000)
狼雑魔討伐作戦7:決戦、三つ首狼!
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/12/07 12:00
- 完成日
- 2016/12/12 02:48
みんなの思い出
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オープニング
●ついにこの時が……!
王都イルダーナ。
聖堂教会の総本山があるこの地は多数の巡礼者が訪れているのだが、その巡礼者が旅路において、どす黒く、大きく体躯を膨らませた狼雑魔から襲われる事件が起こっていた。
その討伐依頼を受けたハンターや、本格的にその対処に乗り出した聖堂戦士団により、狼の討伐が繰り返されている。地道な討伐作戦を重ねたことで、狼雑魔の数は徐々に減ってきていた。
狼雑魔達も危機感を募らせているのは間違いない。全体数が減ったことで、先日とある街を狙って攻め込んできたことも明らかだ。その際はハンター達の作戦によって、見事に撃退に成功。狼もこちらが迎撃したことを感じたのか、深く攻め込んでは来なかったようだ。
さらに、幾度か聖堂戦士団が小競り合いを続けるうち、狼達はさらにその数を減らし……。
「ようやく、ここまで来ました……!」
イルダーナのハンターズソサエティ。ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)が集まるハンター達へと告げる。
「ここから東、街道南の平原に残る狼が集結しているようです」
その数は、30体弱にまで減っていることが確認されている。
数でネットワークを構築し、効果的に動いていた狼雑魔。先日の1件で今のままでは人々を攻めるのも難しいと思ったのか、自衛に入り始めたらしい。
遠目から観察を続けるうち、ボスの三つ首のそばに小さな狼雑魔を確認した。仲間の数を増やそうとしているボスは歪虚、憤怒ではないかと予想される。
「今なら、狼雑魔達へと攻め込むチャンスです……!」
前回は街の人々の護衛を優先させ、思うようには攻め込めなかったが、今回は全力でボスへと攻め込むことが出来る。
それでも、ボスを取り巻く狼雑魔の数は普段交戦する2倍以上の数がいる。その為、聖堂戦士団もファリーナら3小隊長が率いる小隊がこの作戦に当たり、やや多めのハンターを募集することとなったのだ。
そこで、ハンター達は気づく。ファリーナが小隊長に任命されたことに。
「ありがとうございます。でも、喜ぶのはこの戦いの後にしたいのです」
敵がなぜ街道を行く人々を狙うのかは分からぬままが……、ここで憂いを断つことが出来るのであれば、これまで被害に遭った人々もさぞ喜ぶことだろう。
作戦については、こちらも数を活かし、外側から包囲網を狭める形で敵に攻め込む案をファリーナは提示している。3小隊とハンターが少しずつ近づくことで、敵が逃げられるようにしようというものだ。
「でも、皆さんにいい案があるなら、それに乗りたいと思っております」
これまで、ハンター達に従う形で彼女達は戦っていた。絶対の信頼を持つからこそ、今回もそれに合わせて作戦を展開したいとファリーナやロジェら小隊長らは語る。
「ともあれ、これ以上の機会はないと私達は判断しております。必ずや、ここで狼雑魔の殲滅を……!」
ファリーナは改めて、聖堂戦士団を代表してハンター達へと頭を下げるのだった。
王都イルダーナ。
聖堂教会の総本山があるこの地は多数の巡礼者が訪れているのだが、その巡礼者が旅路において、どす黒く、大きく体躯を膨らませた狼雑魔から襲われる事件が起こっていた。
その討伐依頼を受けたハンターや、本格的にその対処に乗り出した聖堂戦士団により、狼の討伐が繰り返されている。地道な討伐作戦を重ねたことで、狼雑魔の数は徐々に減ってきていた。
狼雑魔達も危機感を募らせているのは間違いない。全体数が減ったことで、先日とある街を狙って攻め込んできたことも明らかだ。その際はハンター達の作戦によって、見事に撃退に成功。狼もこちらが迎撃したことを感じたのか、深く攻め込んでは来なかったようだ。
さらに、幾度か聖堂戦士団が小競り合いを続けるうち、狼達はさらにその数を減らし……。
「ようやく、ここまで来ました……!」
イルダーナのハンターズソサエティ。ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)が集まるハンター達へと告げる。
「ここから東、街道南の平原に残る狼が集結しているようです」
その数は、30体弱にまで減っていることが確認されている。
数でネットワークを構築し、効果的に動いていた狼雑魔。先日の1件で今のままでは人々を攻めるのも難しいと思ったのか、自衛に入り始めたらしい。
遠目から観察を続けるうち、ボスの三つ首のそばに小さな狼雑魔を確認した。仲間の数を増やそうとしているボスは歪虚、憤怒ではないかと予想される。
「今なら、狼雑魔達へと攻め込むチャンスです……!」
前回は街の人々の護衛を優先させ、思うようには攻め込めなかったが、今回は全力でボスへと攻め込むことが出来る。
それでも、ボスを取り巻く狼雑魔の数は普段交戦する2倍以上の数がいる。その為、聖堂戦士団もファリーナら3小隊長が率いる小隊がこの作戦に当たり、やや多めのハンターを募集することとなったのだ。
そこで、ハンター達は気づく。ファリーナが小隊長に任命されたことに。
「ありがとうございます。でも、喜ぶのはこの戦いの後にしたいのです」
敵がなぜ街道を行く人々を狙うのかは分からぬままが……、ここで憂いを断つことが出来るのであれば、これまで被害に遭った人々もさぞ喜ぶことだろう。
作戦については、こちらも数を活かし、外側から包囲網を狭める形で敵に攻め込む案をファリーナは提示している。3小隊とハンターが少しずつ近づくことで、敵が逃げられるようにしようというものだ。
「でも、皆さんにいい案があるなら、それに乗りたいと思っております」
これまで、ハンター達に従う形で彼女達は戦っていた。絶対の信頼を持つからこそ、今回もそれに合わせて作戦を展開したいとファリーナやロジェら小隊長らは語る。
「ともあれ、これ以上の機会はないと私達は判断しております。必ずや、ここで狼雑魔の殲滅を……!」
ファリーナは改めて、聖堂戦士団を代表してハンター達へと頭を下げるのだった。
リプレイ本文
●決戦の前に……
幾度もグラズヘイム東の街道に現れた狼雑魔。
その討伐の為、終結場所から比較的近い集落にハンターと聖堂戦士団達が集まっていた。
「さーてと……そろそろ、可愛げのない犬っころとの喧嘩も終わりにしたいわね」
「狼雑魔とは前にもちょろっと戦ったことがあるけど……連中のボス、ね」
狼雑魔と最も交戦を行っているアルスレーテ・フュラー(ka6148)は妹、セレス・フュラー(ka6276) と参加だ。狼を犬と見なす姉と、狼を番犬にしたいと考える妹。似たもの姉妹である。
「中々の数を揃えたもんじゃない。ふふ、怖いわ……なんて」
「1人辺り4体倒せばおつりが来るのよ? 難しく考えないで気楽に行きましょう?」
この狼雑魔の関連依頼に初参加のケイ(ka4032)、マリィア・バルデス(ka5848) 。彼女達は狼達に因縁こそ持たないが、それだけに思いっきり自らの力を存分に奮える機会を喜んでいたようだ。
「今回も宜しく頼む、奴をここで仕留めよう」
「む~、前に会ったときは逃げられちゃったけど、今度こそ逃がさないんだからね」
こちらは常連組のヴァイス(ka0364)、夢路 まよい(ka1328)。なかなか叩けそうで叩けないボスを今日こそと意気込んでいる。
「さてさて、最後にやっと顔を出せたか」
序盤の作戦に参加していたアルト・ヴァレンティーニ(ka3109) は、久々の参加だ。
「ここでボスを倒してしまえば、当分の間は静かになるだろう。全力でやらせてもらおう」
そのアルトは同伴している祖父、バリトン(ka5112)を見る。祖父の前で無様なことはできぬと気合を入れていた。
「やっとここまできたのう。これで最後にしたいもんじゃ」
すっかり常連となったバリトン。それだけにボス討伐にかける意欲も強い。彼は孫娘のアルトの成長を楽しみにしながらも、聖堂戦士団メンバーも気にかける。
「よくぞここまで頑張ったのう。ここが最後の踏ん張りどころじゃ、期待しているぞ」
バリトンと同様に、クリスティン・ガフ(ka1090)も聖導士達を気にかける。
「知った顔が多いな」
ハンターの知人も多いが、彼女は一度、聖導士達へと戦術指南をしたことがある。ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)が幾人かの団員が刀を所持しているのも、彼の影響が大きい。
(あの頃から刀や行動力はどの程度上達したのか。戦場で分かる事、か)
そのファリーナには、アシェ-ル(ka2983)が声をかける。彼女もまた狼雑魔討伐の為、長く尽力している1人だ。
「いよいよ、最後ですね。できれば、ここで終わりにさせたい所です」
「はい!」
新米小隊長はやや力んだ様子で返事をしていた。
●接敵、そして、開戦の時
狼雑魔達の討伐の為、メンバーは聖堂戦士団の小隊に合わせ、3班に分かれて接敵を行う。
北側は、ファリーナ新小隊長率いるAチーム。ヴァイス、まよい、アルトが同伴する。
「たくさんの聖導士と一緒だと頼もしいね、頼らせてもらうよ」
アルトが聖導士達を鼓舞する。間に合うなら、キュアがあればとアルトやまよいが依頼したが、隊員達は力量不足、ファリーナは習得が間に合わなかったことを、謝罪する。
「仕方ないさ。指揮と回復を優先してもらいたい」
各自できることをと、アルトが改めて依頼する。また、ヴァイスが前衛に立って彼らの被害を抑える予定だ。
南西からはCチーム、別小隊にバリトンとフュラー姉妹が同行する。
こちらはアルスレーテが隊長へ細やかな要請を行う。バリトン、セレスは所持するトランシーバーをオンにし、他チームと足並みを揃えていたようだ。
南東からはBチーム。ロジェ隊と、クリスティン、アシェ-ル、ケイ、マリィアと、馬、バイクを持つハンターが加わる。
聖導士達が徒歩の為、彼らに合わせての進行、そして、布陣の為向かう位置が最も遠い為、他チームを待たせる形となってしまう。
「……確かに、不安がないわけじゃないけどね」
魔導バイクを駆りながら、マリィアは敵の異常攻撃は厄介と考える。
「相手の攻撃範囲を見切って、その外側から銃弾を叩きこむのが猟撃士の醍醐味だもの」
愛用の銃に、彼女はしっかりと弾丸を込める。その後ろ、ゴースロンの手綱を握るケイは涼しい笑みを浮かべていた。
「無理は禁物ですからね」
「心得た。よろしく頼む」
こちらは、アシェ-ルがロジェに回復と敵の逃亡阻止を依頼する。頼もしいクリスティンの存在をそばに感じる彼女は、全チームの布陣が完了したことを受け、トランシーバーに呼びかける。
「リーナさん、やりましょう!」
「はい、皆さん、お願いします!」
三方から一斉に仕掛けるハンター、聖堂戦士団混成軍。それに、狼雑魔達もすぐに気づき、すくっと立ち上がって戦闘態勢を整えたのだった。
●群がる狼を相手に……
狼雑魔達は動かない。いや、動けないのか。
三方から人間が攻めくる状況に、彼らは諦観しているようにも見えたが、立ち上がったボス、三つ首は瞳を赤く光らせて高らかに吠える。
乗り物に騎乗し、高射程のBチームがいち早く攻め込む。
ボスを護るように布陣する雑魔ども。ケイは携えたエルヴィン・アローから射た矢をマテリアルで操作し、首なしを含めた狼雑魔を射抜き、敵の動きを注意深く観察する。
バイクに騎乗したまま、マリィアは自らの速度を高めていた。一射一殺を狙い、彼女は敵の首に照準を定めマシンガン「プレートスNH3」で射撃を行う。射撃の直後は敵から距離を取り、敵の包囲を避ける為、そして射程の調節の為に敵から距離をとる。
乱戦となる前に、アシェ-ルは2つの魔法を詠唱していた。
「私のとっておきです!」
高度な集中力を求められるスキルだが、出し惜しみなどしている状況ではない。彼女は燃え盛る火球による爆発、そして、冷気の嵐を狼雑魔達へと浴びせかける。
クリスティンもバイクを駆り、赤い刀身の斬魔刀を振るい、小型、大型の狼雑魔を刻む。
ある程度数を叩くと、クリスティンは自チーム側へと誘導を図る。彼女は弓から矢を飛ばして釣れた雑魔数体を牽制し、聖導士を含めたメンバー達が確実に叩いていく。
南西、Cチームがそれに続く。チームを率いるように前に出ていたのは、バリトンだ。彼は斬龍刀「天墜」を両手で操り、敵陣の空間を定めた上で狼雑魔達を切り伏せていく。
向かい来る狼雑魔。こちらの聖導士はアルスレーテの指示で、隊長はキュアによる回復を最優先、隊員は1人を回復メインで、他メンバーが攻撃。ヒールを使い切ったら交代という戦法で戦う。
アルスレーテ自身は手にした鉄扇「北斗」を叩きつける。セレスも投げ飛ばした「コウモリ」と呼ばれる投具ををマテリアルで操り、多くの雑魔を切り裂いていた。
正面のAチームも、すでに交戦を開始している。
(前は取り巻きを盾に逃げられちゃったし、増援のない今回こそ、ボスを丸裸にしちゃうんだから)
まよいは燃える火球を投げ飛ばし、向かってくる狼数体に爆発による衝撃を浴びせかける。
それを受けた小型狼は着地した直後、麻痺牙で食らいついてきた。
その攻撃で体の一部に麻痺を覚えていたアルトは、全身を炎のようなオーラに包んでいた。
彼女は全身を加速させ、残像を伴って動き回る。赤い髪に洋服の彼女が戦場を駆け巡れば、紅き花弁が舞い散るようにも見えて。
そして、彼女は投げ飛ばす手裏剣「八握剣」にマテリアルを紐付けており、引き合うように加速して敵に迫った。
回復メインに立ち回る聖導士達は交替で狼雑魔へと斬りかかり、あるいは殴打してダメージを与える。
ヴァイスは彼らの盾となるべく前に出ていた。こちらへと、首のない大きな狼が毒爪を振るってきたのを見て、ヴァイスは暖かな灯火の如きオーラを斬龍刀「天墜」に纏わせから毒爪を受け止め、返す刃を切りかかる。
「無事か!」
「ありがとうございます!」
ヴァイスの呼びかけに、ファリーナが小さく頭を下げていた。
時に足元の子供を見下ろす三つ首は、炎を発してくる。着弾したのはCチームだ。
「むう……」
唸るバリトン。それに聖導士達は慌ててはいたが、小隊長が喝を入れ、隊員を落ち着かせる。
現状は戦線は持っているが、隊員達のヒールの回数は限られている。出来るだけ早く敵を減らそうと、バリトンは群がる敵に何度も斬りかかり、大型、小型1体ずつを消滅させる。
練り上げたマテリアルを放出して狼雑魔を貫いていたアルスレーテも、その炎を浴びることとなる。
彼女はちらりと妹、セレスの方を振り返ってスタッフ「アライアンス」を振るい、マテリアルを淡い光となしてその傷を癒そうとする。それはまるで、母親に優しく抱きしめられたかのような暖かさを覚えさせた。
「アルスお姉様、ちょっと過保護が過ぎるんじゃないの?」
コウモリを飛ばし続けていたセレスは、姉の回復に戸惑いを見せる。姉に負けないように戦い、狼を屠っているというのに。
「そちらに狼達が向かっています!」
そこで、何かに気づいたセレスがトランシーバーへ呼びかけると、アルトが腰のベルトに吊るしたトランシーバーから、Aチームメンバーに伝えられる。
Aチーム前方には、首なしと狼雑魔が攻めてきていた。
ヴァイスが首なしを抑えるが、敵はAチームに対し、やや多めに戦力を投入してきていたのだ。
「恐れず、戦うのです。気持ちで負けてはいけません……!」
小隊長となったファリーナは、必死に隊員を鼓舞する。格上の相手であることは仕方がないが、彼女は指揮する立場として、精一杯立ち回る。
群がってくる敵を相手にしながら、アルトは自チームメンバーへと呼びかけた。
「仲間同士でぶつからないよう、気をつけて」
アルトは駆け抜けざまに、超重刀「ラティスムス」で狼雑魔を切り倒す。
灯火のオーラを刀に維持させながら、首なしを抑えるヴァイス。聖堂戦士団員達では手に余るこいつを抜かせるわけにはならない。
「アオオォォォン……」
首のない狼がどこからか紡ぎ出す声は怨嗟の叫びとなって、ハンターと聖導士を苦しめる。
そいつを含め、まよいは飛ばした火球で爆発を浴びせる。時にそれがヴァイスにまで及んだのは痛いが、ヴァイスは気を引き締め、さらに首なしへと刃を浴びせていた。
もう1体の首なしは、他チームと足並みを合わせようとしていたBチームに向かっていた。
マリィアがオートマチック「エタンドルE66」で小型を撃ち抜いて消し飛ばし、ケイは時に三つ首をも射程に収め、マテリアルを込めた矢を連続して発射することで、矢の雨を敵陣に降り注がせる。
三つ首がこちらにも注意を引くのを目にしつつも、クリスティンが向かい来る首なしを相手にしていた。
彼女は孤立して戦うことを良しとせず、後方に控える少女を気にかける。
「アシェ-ル!」
「援護します、クリスティンさん。思いっきりやっちゃってください!」
そのクリスティンの背を護るように、アシェ-ルが駆け込んでくる。
後方からはロジェ隊がヒールをかけてくる。自分達は全力で攻め込むだけ。アシェ-ルは魔導拳銃「スピリトゥス」の引き金を弾き、首なしの胸に銃弾を叩き込む。
「所詮は獣です。もう、怖くないですからね!」
忌々しげに吠え、暴れる首なし。その猛攻はハンター達の体力を大きく削いでくる。
しかし、敵も全身からどす黒い血を流す。もう長くはないはずだ。
マリィアが隙を誘う為に射撃し、首なしを怯ませたタイミング。クリスティンはその隙を逃さない。彼は左右の手に生体マテリアルで強化した刀とブレードを握り、連続して刃を叩き込む。
黒い血を撒き散らした首なし。それは弾ける様に消し飛んでいった。
Aチームで奮闘するヴァイスもまた、もう1体の首なしを追い込んでいた。
「仕掛ける。退避を頼む!」
ヴァイスは戦う仲間へと声を上げて呼びかけ、正面にいる敵へと流れるような所作で斬龍刀の刃を一閃させる。
すると、正面の首なしの体が左右にずれる。それは地面に崩れ落ちるのを待たずして虚空へと消え去っていった。
そこで、マリィアとケイが再びボス、三つ首を射程に捉える。彼女達の狙いは、戦闘に加わらない、小さな狼雑魔達だ。
「歪虚だもの、今此方に手を出さなかろうが小さかろうが殲滅する。歪虚は生命の敵だもの」
「今はチビでも、生かしておけば後々厄介になるばかり……。確実に仕留めておかないとね」
マリィアは銃の引き金を引く瞬間にマテリアルを込めて高加速した射撃で小型の狼を射抜く。ケイも再度矢の雨を降らし、小さな雑魔の生命を絶ってしまう。
「オオオォォォォン!!」
それに気づいた三つ首は嘆きの声を上げ、怒りの炎を燃え上がらせたのだった。
●ついに、その首を……!
狼雑魔がかなり減ってきていたこともあり、3方向から中央へと集まるようにしてメンバー達が狙うのは、ボス、三つ首。
怒りに燃える三つ首がそれぞれの口で食らいついてくる。
それを前線のアルスレーテ、アルト、ヴァイスが受け止める。ヴァイスは最後の灯火を利用した刀で大きくその顔目がけて薙ぎ払う。
合流したメンバー達は、ここに来て大きく動き始めた。ハンターの半数がボスを狙って攻撃を開始する。
(こいつは絶対殲滅する)
先ほど、小さな雑魔を倒したマリィア。バイクをNH3の銃架代わりに使用し続け、三つ首もまた躊躇なく狙撃した後ですぐさま離脱する。
「大人しくしてて……」
セレスはというと、姉から離れて雑魚の討伐に専念する。ムチを打ちつけて大型の態勢を崩し、投具から持ち変えたダガー「ヒュドール」でそいつに斬りかかる。
まよいはこれまでのように敵が逃げることも警戒しつつ、紫色の重力波で三つ首を含めて狼雑魔を纏めて潰す。小型が圧死する中でも、三つ首は少しくらいの攻撃ではビクともしない。
そいつは三つの口を開き、口内に赤い炎を巻き起こす。
「来るぞ!」
叫ぶヴァイスに応じ、アルトとバルトンが敵の懐に潜り込む。
「上を向かすように下からがいいか?」
「そうだな、一緒に……!」
戦闘中だからか、普段と違った口調でタイミングを合わせる2人。敵の顎を掬い上げるように刀を叩きこむ。だが、2つの首が上を向くものの、1つの首はハンター達へと業火を浴びせかけてくる。
炎の威力はやや弱まっていたが、疲弊する聖堂戦士団がその炎を浴び、倒れる者も出始めていた。
これ以上仲間を傷つけぬ為、一体でも多く討伐を。ケイは近づく大小の雑魔に変則的な軌道を描く矢を射抜き、敵の頭を貫いていた。
深手を負う聖導士達の頑張りを無駄にしない為にも。ハンター達は草原に威風堂々と立つ三つ首狼を狙う。
そいつはこれまでとは違い、苛烈な攻撃でハンター達を攻め立ててくる。もう退路はないと悟っているのだろう。
「私が抑え込みます!」
それでも、逃げないとは限らない。今まで、何度も何度も、こいつはハンター達の手から逃れている。今回またここで逃せば……。アシェ-ルは盾をしっかりと構え、全身を使って三つ首をこの場に押し留めるようにして退路を塞ぐ。
刀で深く斬撃を浴びせ、矢や銃弾をその体を射抜き、また、刀を浴びせる。周囲をハンターに囲まれ、これまで頼っていた雑魔が倒れ行く中、三つ首はさらに炎を浴びせかけようとする。
スキルも徐々に尽き、直接攻撃を浴びせるメンバーも増える。死力を尽くす歪虚との戦い。しかし、ハンターは誰も倒れることなく、三つ首狼を追い込んでいく。
一度納刀したクリスティン。彼はバイクを加速させた。敵が体勢を崩しかけたタイミングでその背にバイクで乗り、中央の首うなじ付近をラージブレードで深く突き刺す。
暴れる三つ首。しかし、体力がなくなってきていたのか、その動きに勢いは失われていて。
「じゃあね」
アルスレーテは抉るように、鉄扇を中央の顔へと抉りこむ。
「オオオオオォォォォォォン!!」
最後に一際長い鳴き声を残し、そいつはこの世界からなくなっていった。
「……せいせいしたわね」
アルスレーテはそこで自らの傷を実感し、ぐったりとその場に座り込んでしまったのだった。
●長い戦いを終えて……
雑魔全ての討伐を確認した、ハンター達は安堵の息を漏らす。
なかなかハンター達が集まるのが難しく、作戦として最善の状況で戦いに臨むことはできず、聖導士達も深手を負うものもいたが、犠牲者を誰1人として出さずに済んだのは、1人1人が最善を尽くして戦ったからだろう。
メンバーによっては、単なる1つの依頼。ただ、長く狼雑魔と戦っていた者達にとっては感慨深い。聖堂戦士団団員の中には、涙すら流す者もいる。一連の作戦において、犠牲者だって全くいないわけでもないのだ。
アシェ-ルはそんな団員達を見回すうちに、目的の女性を見つけて笑顔で飛び込んでいく。
「よかったです、リーナさん!」
「はい……!」
アシェ-ルを受け止めるファリーナ。その頬にもまた、一筋の涙が零れ落ちていたのだった。
幾度もグラズヘイム東の街道に現れた狼雑魔。
その討伐の為、終結場所から比較的近い集落にハンターと聖堂戦士団達が集まっていた。
「さーてと……そろそろ、可愛げのない犬っころとの喧嘩も終わりにしたいわね」
「狼雑魔とは前にもちょろっと戦ったことがあるけど……連中のボス、ね」
狼雑魔と最も交戦を行っているアルスレーテ・フュラー(ka6148)は妹、セレス・フュラー(ka6276) と参加だ。狼を犬と見なす姉と、狼を番犬にしたいと考える妹。似たもの姉妹である。
「中々の数を揃えたもんじゃない。ふふ、怖いわ……なんて」
「1人辺り4体倒せばおつりが来るのよ? 難しく考えないで気楽に行きましょう?」
この狼雑魔の関連依頼に初参加のケイ(ka4032)、マリィア・バルデス(ka5848) 。彼女達は狼達に因縁こそ持たないが、それだけに思いっきり自らの力を存分に奮える機会を喜んでいたようだ。
「今回も宜しく頼む、奴をここで仕留めよう」
「む~、前に会ったときは逃げられちゃったけど、今度こそ逃がさないんだからね」
こちらは常連組のヴァイス(ka0364)、夢路 まよい(ka1328)。なかなか叩けそうで叩けないボスを今日こそと意気込んでいる。
「さてさて、最後にやっと顔を出せたか」
序盤の作戦に参加していたアルト・ヴァレンティーニ(ka3109) は、久々の参加だ。
「ここでボスを倒してしまえば、当分の間は静かになるだろう。全力でやらせてもらおう」
そのアルトは同伴している祖父、バリトン(ka5112)を見る。祖父の前で無様なことはできぬと気合を入れていた。
「やっとここまできたのう。これで最後にしたいもんじゃ」
すっかり常連となったバリトン。それだけにボス討伐にかける意欲も強い。彼は孫娘のアルトの成長を楽しみにしながらも、聖堂戦士団メンバーも気にかける。
「よくぞここまで頑張ったのう。ここが最後の踏ん張りどころじゃ、期待しているぞ」
バリトンと同様に、クリスティン・ガフ(ka1090)も聖導士達を気にかける。
「知った顔が多いな」
ハンターの知人も多いが、彼女は一度、聖導士達へと戦術指南をしたことがある。ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)が幾人かの団員が刀を所持しているのも、彼の影響が大きい。
(あの頃から刀や行動力はどの程度上達したのか。戦場で分かる事、か)
そのファリーナには、アシェ-ル(ka2983)が声をかける。彼女もまた狼雑魔討伐の為、長く尽力している1人だ。
「いよいよ、最後ですね。できれば、ここで終わりにさせたい所です」
「はい!」
新米小隊長はやや力んだ様子で返事をしていた。
●接敵、そして、開戦の時
狼雑魔達の討伐の為、メンバーは聖堂戦士団の小隊に合わせ、3班に分かれて接敵を行う。
北側は、ファリーナ新小隊長率いるAチーム。ヴァイス、まよい、アルトが同伴する。
「たくさんの聖導士と一緒だと頼もしいね、頼らせてもらうよ」
アルトが聖導士達を鼓舞する。間に合うなら、キュアがあればとアルトやまよいが依頼したが、隊員達は力量不足、ファリーナは習得が間に合わなかったことを、謝罪する。
「仕方ないさ。指揮と回復を優先してもらいたい」
各自できることをと、アルトが改めて依頼する。また、ヴァイスが前衛に立って彼らの被害を抑える予定だ。
南西からはCチーム、別小隊にバリトンとフュラー姉妹が同行する。
こちらはアルスレーテが隊長へ細やかな要請を行う。バリトン、セレスは所持するトランシーバーをオンにし、他チームと足並みを揃えていたようだ。
南東からはBチーム。ロジェ隊と、クリスティン、アシェ-ル、ケイ、マリィアと、馬、バイクを持つハンターが加わる。
聖導士達が徒歩の為、彼らに合わせての進行、そして、布陣の為向かう位置が最も遠い為、他チームを待たせる形となってしまう。
「……確かに、不安がないわけじゃないけどね」
魔導バイクを駆りながら、マリィアは敵の異常攻撃は厄介と考える。
「相手の攻撃範囲を見切って、その外側から銃弾を叩きこむのが猟撃士の醍醐味だもの」
愛用の銃に、彼女はしっかりと弾丸を込める。その後ろ、ゴースロンの手綱を握るケイは涼しい笑みを浮かべていた。
「無理は禁物ですからね」
「心得た。よろしく頼む」
こちらは、アシェ-ルがロジェに回復と敵の逃亡阻止を依頼する。頼もしいクリスティンの存在をそばに感じる彼女は、全チームの布陣が完了したことを受け、トランシーバーに呼びかける。
「リーナさん、やりましょう!」
「はい、皆さん、お願いします!」
三方から一斉に仕掛けるハンター、聖堂戦士団混成軍。それに、狼雑魔達もすぐに気づき、すくっと立ち上がって戦闘態勢を整えたのだった。
●群がる狼を相手に……
狼雑魔達は動かない。いや、動けないのか。
三方から人間が攻めくる状況に、彼らは諦観しているようにも見えたが、立ち上がったボス、三つ首は瞳を赤く光らせて高らかに吠える。
乗り物に騎乗し、高射程のBチームがいち早く攻め込む。
ボスを護るように布陣する雑魔ども。ケイは携えたエルヴィン・アローから射た矢をマテリアルで操作し、首なしを含めた狼雑魔を射抜き、敵の動きを注意深く観察する。
バイクに騎乗したまま、マリィアは自らの速度を高めていた。一射一殺を狙い、彼女は敵の首に照準を定めマシンガン「プレートスNH3」で射撃を行う。射撃の直後は敵から距離を取り、敵の包囲を避ける為、そして射程の調節の為に敵から距離をとる。
乱戦となる前に、アシェ-ルは2つの魔法を詠唱していた。
「私のとっておきです!」
高度な集中力を求められるスキルだが、出し惜しみなどしている状況ではない。彼女は燃え盛る火球による爆発、そして、冷気の嵐を狼雑魔達へと浴びせかける。
クリスティンもバイクを駆り、赤い刀身の斬魔刀を振るい、小型、大型の狼雑魔を刻む。
ある程度数を叩くと、クリスティンは自チーム側へと誘導を図る。彼女は弓から矢を飛ばして釣れた雑魔数体を牽制し、聖導士を含めたメンバー達が確実に叩いていく。
南西、Cチームがそれに続く。チームを率いるように前に出ていたのは、バリトンだ。彼は斬龍刀「天墜」を両手で操り、敵陣の空間を定めた上で狼雑魔達を切り伏せていく。
向かい来る狼雑魔。こちらの聖導士はアルスレーテの指示で、隊長はキュアによる回復を最優先、隊員は1人を回復メインで、他メンバーが攻撃。ヒールを使い切ったら交代という戦法で戦う。
アルスレーテ自身は手にした鉄扇「北斗」を叩きつける。セレスも投げ飛ばした「コウモリ」と呼ばれる投具ををマテリアルで操り、多くの雑魔を切り裂いていた。
正面のAチームも、すでに交戦を開始している。
(前は取り巻きを盾に逃げられちゃったし、増援のない今回こそ、ボスを丸裸にしちゃうんだから)
まよいは燃える火球を投げ飛ばし、向かってくる狼数体に爆発による衝撃を浴びせかける。
それを受けた小型狼は着地した直後、麻痺牙で食らいついてきた。
その攻撃で体の一部に麻痺を覚えていたアルトは、全身を炎のようなオーラに包んでいた。
彼女は全身を加速させ、残像を伴って動き回る。赤い髪に洋服の彼女が戦場を駆け巡れば、紅き花弁が舞い散るようにも見えて。
そして、彼女は投げ飛ばす手裏剣「八握剣」にマテリアルを紐付けており、引き合うように加速して敵に迫った。
回復メインに立ち回る聖導士達は交替で狼雑魔へと斬りかかり、あるいは殴打してダメージを与える。
ヴァイスは彼らの盾となるべく前に出ていた。こちらへと、首のない大きな狼が毒爪を振るってきたのを見て、ヴァイスは暖かな灯火の如きオーラを斬龍刀「天墜」に纏わせから毒爪を受け止め、返す刃を切りかかる。
「無事か!」
「ありがとうございます!」
ヴァイスの呼びかけに、ファリーナが小さく頭を下げていた。
時に足元の子供を見下ろす三つ首は、炎を発してくる。着弾したのはCチームだ。
「むう……」
唸るバリトン。それに聖導士達は慌ててはいたが、小隊長が喝を入れ、隊員を落ち着かせる。
現状は戦線は持っているが、隊員達のヒールの回数は限られている。出来るだけ早く敵を減らそうと、バリトンは群がる敵に何度も斬りかかり、大型、小型1体ずつを消滅させる。
練り上げたマテリアルを放出して狼雑魔を貫いていたアルスレーテも、その炎を浴びることとなる。
彼女はちらりと妹、セレスの方を振り返ってスタッフ「アライアンス」を振るい、マテリアルを淡い光となしてその傷を癒そうとする。それはまるで、母親に優しく抱きしめられたかのような暖かさを覚えさせた。
「アルスお姉様、ちょっと過保護が過ぎるんじゃないの?」
コウモリを飛ばし続けていたセレスは、姉の回復に戸惑いを見せる。姉に負けないように戦い、狼を屠っているというのに。
「そちらに狼達が向かっています!」
そこで、何かに気づいたセレスがトランシーバーへ呼びかけると、アルトが腰のベルトに吊るしたトランシーバーから、Aチームメンバーに伝えられる。
Aチーム前方には、首なしと狼雑魔が攻めてきていた。
ヴァイスが首なしを抑えるが、敵はAチームに対し、やや多めに戦力を投入してきていたのだ。
「恐れず、戦うのです。気持ちで負けてはいけません……!」
小隊長となったファリーナは、必死に隊員を鼓舞する。格上の相手であることは仕方がないが、彼女は指揮する立場として、精一杯立ち回る。
群がってくる敵を相手にしながら、アルトは自チームメンバーへと呼びかけた。
「仲間同士でぶつからないよう、気をつけて」
アルトは駆け抜けざまに、超重刀「ラティスムス」で狼雑魔を切り倒す。
灯火のオーラを刀に維持させながら、首なしを抑えるヴァイス。聖堂戦士団員達では手に余るこいつを抜かせるわけにはならない。
「アオオォォォン……」
首のない狼がどこからか紡ぎ出す声は怨嗟の叫びとなって、ハンターと聖導士を苦しめる。
そいつを含め、まよいは飛ばした火球で爆発を浴びせる。時にそれがヴァイスにまで及んだのは痛いが、ヴァイスは気を引き締め、さらに首なしへと刃を浴びせていた。
もう1体の首なしは、他チームと足並みを合わせようとしていたBチームに向かっていた。
マリィアがオートマチック「エタンドルE66」で小型を撃ち抜いて消し飛ばし、ケイは時に三つ首をも射程に収め、マテリアルを込めた矢を連続して発射することで、矢の雨を敵陣に降り注がせる。
三つ首がこちらにも注意を引くのを目にしつつも、クリスティンが向かい来る首なしを相手にしていた。
彼女は孤立して戦うことを良しとせず、後方に控える少女を気にかける。
「アシェ-ル!」
「援護します、クリスティンさん。思いっきりやっちゃってください!」
そのクリスティンの背を護るように、アシェ-ルが駆け込んでくる。
後方からはロジェ隊がヒールをかけてくる。自分達は全力で攻め込むだけ。アシェ-ルは魔導拳銃「スピリトゥス」の引き金を弾き、首なしの胸に銃弾を叩き込む。
「所詮は獣です。もう、怖くないですからね!」
忌々しげに吠え、暴れる首なし。その猛攻はハンター達の体力を大きく削いでくる。
しかし、敵も全身からどす黒い血を流す。もう長くはないはずだ。
マリィアが隙を誘う為に射撃し、首なしを怯ませたタイミング。クリスティンはその隙を逃さない。彼は左右の手に生体マテリアルで強化した刀とブレードを握り、連続して刃を叩き込む。
黒い血を撒き散らした首なし。それは弾ける様に消し飛んでいった。
Aチームで奮闘するヴァイスもまた、もう1体の首なしを追い込んでいた。
「仕掛ける。退避を頼む!」
ヴァイスは戦う仲間へと声を上げて呼びかけ、正面にいる敵へと流れるような所作で斬龍刀の刃を一閃させる。
すると、正面の首なしの体が左右にずれる。それは地面に崩れ落ちるのを待たずして虚空へと消え去っていった。
そこで、マリィアとケイが再びボス、三つ首を射程に捉える。彼女達の狙いは、戦闘に加わらない、小さな狼雑魔達だ。
「歪虚だもの、今此方に手を出さなかろうが小さかろうが殲滅する。歪虚は生命の敵だもの」
「今はチビでも、生かしておけば後々厄介になるばかり……。確実に仕留めておかないとね」
マリィアは銃の引き金を引く瞬間にマテリアルを込めて高加速した射撃で小型の狼を射抜く。ケイも再度矢の雨を降らし、小さな雑魔の生命を絶ってしまう。
「オオオォォォォン!!」
それに気づいた三つ首は嘆きの声を上げ、怒りの炎を燃え上がらせたのだった。
●ついに、その首を……!
狼雑魔がかなり減ってきていたこともあり、3方向から中央へと集まるようにしてメンバー達が狙うのは、ボス、三つ首。
怒りに燃える三つ首がそれぞれの口で食らいついてくる。
それを前線のアルスレーテ、アルト、ヴァイスが受け止める。ヴァイスは最後の灯火を利用した刀で大きくその顔目がけて薙ぎ払う。
合流したメンバー達は、ここに来て大きく動き始めた。ハンターの半数がボスを狙って攻撃を開始する。
(こいつは絶対殲滅する)
先ほど、小さな雑魔を倒したマリィア。バイクをNH3の銃架代わりに使用し続け、三つ首もまた躊躇なく狙撃した後ですぐさま離脱する。
「大人しくしてて……」
セレスはというと、姉から離れて雑魚の討伐に専念する。ムチを打ちつけて大型の態勢を崩し、投具から持ち変えたダガー「ヒュドール」でそいつに斬りかかる。
まよいはこれまでのように敵が逃げることも警戒しつつ、紫色の重力波で三つ首を含めて狼雑魔を纏めて潰す。小型が圧死する中でも、三つ首は少しくらいの攻撃ではビクともしない。
そいつは三つの口を開き、口内に赤い炎を巻き起こす。
「来るぞ!」
叫ぶヴァイスに応じ、アルトとバルトンが敵の懐に潜り込む。
「上を向かすように下からがいいか?」
「そうだな、一緒に……!」
戦闘中だからか、普段と違った口調でタイミングを合わせる2人。敵の顎を掬い上げるように刀を叩きこむ。だが、2つの首が上を向くものの、1つの首はハンター達へと業火を浴びせかけてくる。
炎の威力はやや弱まっていたが、疲弊する聖堂戦士団がその炎を浴び、倒れる者も出始めていた。
これ以上仲間を傷つけぬ為、一体でも多く討伐を。ケイは近づく大小の雑魔に変則的な軌道を描く矢を射抜き、敵の頭を貫いていた。
深手を負う聖導士達の頑張りを無駄にしない為にも。ハンター達は草原に威風堂々と立つ三つ首狼を狙う。
そいつはこれまでとは違い、苛烈な攻撃でハンター達を攻め立ててくる。もう退路はないと悟っているのだろう。
「私が抑え込みます!」
それでも、逃げないとは限らない。今まで、何度も何度も、こいつはハンター達の手から逃れている。今回またここで逃せば……。アシェ-ルは盾をしっかりと構え、全身を使って三つ首をこの場に押し留めるようにして退路を塞ぐ。
刀で深く斬撃を浴びせ、矢や銃弾をその体を射抜き、また、刀を浴びせる。周囲をハンターに囲まれ、これまで頼っていた雑魔が倒れ行く中、三つ首はさらに炎を浴びせかけようとする。
スキルも徐々に尽き、直接攻撃を浴びせるメンバーも増える。死力を尽くす歪虚との戦い。しかし、ハンターは誰も倒れることなく、三つ首狼を追い込んでいく。
一度納刀したクリスティン。彼はバイクを加速させた。敵が体勢を崩しかけたタイミングでその背にバイクで乗り、中央の首うなじ付近をラージブレードで深く突き刺す。
暴れる三つ首。しかし、体力がなくなってきていたのか、その動きに勢いは失われていて。
「じゃあね」
アルスレーテは抉るように、鉄扇を中央の顔へと抉りこむ。
「オオオオオォォォォォォン!!」
最後に一際長い鳴き声を残し、そいつはこの世界からなくなっていった。
「……せいせいしたわね」
アルスレーテはそこで自らの傷を実感し、ぐったりとその場に座り込んでしまったのだった。
●長い戦いを終えて……
雑魔全ての討伐を確認した、ハンター達は安堵の息を漏らす。
なかなかハンター達が集まるのが難しく、作戦として最善の状況で戦いに臨むことはできず、聖導士達も深手を負うものもいたが、犠牲者を誰1人として出さずに済んだのは、1人1人が最善を尽くして戦ったからだろう。
メンバーによっては、単なる1つの依頼。ただ、長く狼雑魔と戦っていた者達にとっては感慨深い。聖堂戦士団団員の中には、涙すら流す者もいる。一連の作戦において、犠牲者だって全くいないわけでもないのだ。
アシェ-ルはそんな団員達を見回すうちに、目的の女性を見つけて笑顔で飛び込んでいく。
「よかったです、リーナさん!」
「はい……!」
アシェ-ルを受け止めるファリーナ。その頬にもまた、一筋の涙が零れ落ちていたのだった。
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依頼相談掲示板 | |||
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【相談卓】三つ首狼狩り アシェ-ル(ka2983) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/12/07 11:07:03 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/12/06 23:58:50 |