【魔装】強さの果てに 第2話

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/02/25 15:00
完成日
2017/03/06 20:54

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●レタニケの街
 王国北西部に位置する小さい領地であるレタニケは、中心となる街といくつかの村や集落から成る。
 特にこれといった特産はなく、領地北部の温泉だけが取り柄のような、そんな所だ。
「すぐに残った亜人を討伐します。ハンターオフィスには引き続き、支援を要請します」
 領主代行となったライルが疲れきった表情で紡伎 希(kz0174)に言った。
 彼の父である領主は未だ戻らず……古参の兵らも居ない為、ライルに負担が掛かるのは当然の事だった。
「手配はできますが、費用的な面は大丈夫ですか?」
「そこに……関しては……」
 提示された金額を見てライルは驚いた。
 亜人を討伐するまで幾ら掛かるか分からない。今後の領地経営の事もある。
「ノゾミ君もいぢわるだなぁ~」
 鳴月 牡丹(kz0180)のニヤリと不気味に笑った顔。
 それに希が冷めた視線を向ける。
「牡丹様が手伝うとか言わないで下さいね」
「要は、ハンターが同行していれば良いんだよね? なら、答えは簡単さ」
 自信満々に胸を張る牡丹。
 豊かな胸が東方独特の服を押し上げた。
「亜人との戦いを『観戦』させて貰うよ」
「……言うと思いました……」
 観戦武官である牡丹は直接戦えない。
 もちろん、自衛の為の戦いは認められるだろう。だが、それは緊急時のみだ。
 万が一でも東方の武将が王国内で怪我でもしたら外交問題に繋がるので、大事をとってハンターの護衛を付けている。
 その費用は、牡丹――正確に言うと、鳴月家――から出ている。
「僕が亜人を討伐する際に、ぼ……牡丹お姉ちゃんも同行すると」
 ライルが牡丹の名を良いかけ直した。
 不本意な所ではあるが、事態を考えれば、素直に言っておいた方が良いという事でもあるが。
「そういう事。もれなくハンター達も一緒に来るって事さ」
「なんだが、卑怯です」
「ノゾミ君は細かいんだよ。こんなものはね、ドーとやって、バーと終わらせればいいんだよ」
 牡丹の言い分に怪しい瞳を向けたままの希だったが、気を取り直してライルに視線を向ける。
「では、亜人を討伐するにして、まずはどうしますか?」
「父上や兵士達の行方も気になりまし、亜人を討伐するには拠点も必要だと思います。なので、亜人に奪われた集落を奪還したいと思います」
 最初の襲撃で集落の一つが亜人に奪われている。
 その集落に住む人々がどうなったか分からないが――最悪の事態になっていたとしても、それでも集落は取り戻す必要がある。
「分かりました。では、集落の奪還作戦という事で、牡丹様に同行するハンターの皆様にはお伝えしておきますね」
 希がそう告げると歩き出した。
 その足が止まり、牡丹を振り返る。
「牡丹様、今回、私は同行しませんが、くれぐれもお気を付け下さい」
「え? 一緒に来ないの?」
「少し――気になる事がありますので、情報を集めに行きたいと思います」
 一瞬、視線をライルの方に向けた希の言葉。
 希は丁寧に一礼すると、再び歩き出した。

●集落
「やはり、集落はゴブリン共に占拠されていますね」
 森の茂みから集落の様子を確認したライルが呟いた。
 亜人の数は分からないが、10体以上いるのは確実だろう。
「作戦はあるのかい?」
 牡丹の質問にライルは少し考える。
 特に作戦らしい作戦を決めてはいなかったようだ。
「……僕が正面から突撃します。ハンターの皆さんは、側面を突いていただければと」
「自ら進んで囮になるって事か」
「それでは、僕は準備してきますので、突撃が見えたら、手筈通りお願いします」
 ライルはそう言い残し、待機させている兵らの所へ向かう。
 兵と言っても、街を警備していた自警団の中から、志願してきた血気盛んな連中が5人ほどしかいないが。
 彼の豪華な全身鎧も、その兵らが馬車に乗せて運んできている。重たいので普段から装着する所ではないというのがライルの言い訳だった。
「気をつけてね」
「大丈夫ですよ。僕は、牡丹お姉ちゃんの“弟”なのですから」
 ハニカムように笑った表情が、また、凄く実の弟に似ていると牡丹は思った。
「そうだね。強くないといけないから、心配は無用だったね」
 その牡丹の台詞に頷きながら、ライルは森の中へと消えて行った。

 一方、集落ではゴブリン共が略奪品をまとめていた。
 いつまでも此処に残る必要がない事を亜人は知っていた。居残り続ければ人間が戻ってくる事を知っているからだ。
「トラエタ、ニンゲンドモ、ショブン、オワッタ」
 亜人の手には真っ赤な血に染まったひと振りの剣。
「サイゴ、ヒヲ、ハナテ」
 鋭い槍を手にしている亜人が命令を下す。
 見た所、普通の亜人と変わらない。だが、力強さを周囲に放っていた。
 そこへ別の亜人が、ソソソと駆け寄り、槍を持つ亜人に耳打ちする。
「ナニ? ニンゲンダト?」
 亜人はぐるりと集落を見渡す。
 そして、処刑した人間を集めておいた倉庫に視線を向ける。
「アレヲ、ツカウ、ゾ」
 その表情はきっと、人間だったら、こう表現しただろうか。

 ――狡猾と。

リプレイ本文

●開始
 ライルと兵達が亜人との交戦を開始。
 だが、状況が想定していた動きと違うとすぐにハンター達は分かった。
「数が少なすぎる」
 ルイトガルト・レーデル(ka6356)が集落を突っ切ってライルとの合流を図る。
 作戦では、ライル達が亜人を引きつけた所で、側面からハンター達が奇襲する流れだった。しかし、誘き出された数が少ないのだ。
「まず、ライル達と合流だな」
 人の背丈にも及ぶかという程、巨大な盾を構えてイレーヌ(ka1372)も走る。
 こちらの意図が読まれているのか、亜人に何か策があるのか、どちらにせよ、早々に合流した方が良いと判断した。
 ライルの表情は豪華な全身鎧のフルヘルムに隠れて見えないが、動きにキレが見えない。彼も“可笑しい”と感じているようだ。

 合流を目指すハンターとは別に隠れていた者達も動き出す。
「鳴月さん、暴れないで下さいね」
 連絡用のトランシーバーを渡しつつ、ソフィア =リリィホルム(ka2383)が鳴月 牡丹(kz0180)へとあざとらしく声を掛ける。
 牡丹は観戦武官の立場なので、基本的には戦ってはいけないからだ。
「分かってるって。ここから見させて貰うよ」
 大袈裟な頷きで胸を揺らしながら応える牡丹。
 これは危ないなと心の中で呟きつつ、ソフィアは集落へと潜入する為、駆け出した。
「亜人達の様子が“可笑しい”……。これは、何かあるとみて動かないといけなさそうかな」
 抜刀しながらシェラリンデ(ka3332)も走り出している。
 視界に居る亜人は、普通の亜人のようだ。他の亜人の姿は見られない。
 建物の中で潜めている可能性もありえるだろう。となると、敵は何を狙っているのだろうか。不意打ちか撤退の時間稼ぎか、逆襲か、或いは、目的が複数あるのか。
「陽動は失敗のようですね。逆にこちらが釣りだされているようです。釣り野伏せでしょうか?」
 ライラ = リューンベリ(ka5507)が疾影士としてのスキルを使いながら集落へと潜入する。
 釣り野伏せとは戦術の一つである。囮の隊を敗走を装いさせ後退し、追撃を伏兵で襲わせるのだ。
 言葉にすると簡単そうであるが、実は高度な戦術である。亜人如きが真似するには困難なはずだ。
 ライル達と交戦を開始した亜人らは僅かに切り結んだだけで、敗走を開始する。
「あの組織だった動きと言い、特殊な武器を持っている事と言い、“可笑しい”事ばかりです」
 集落の建物を確認しつつ、ミュオ(ka1308)が呟く。
 何事も想定通りとは行かないものだと思う。一先ず、迎撃に数体しか出てこなかった、その理由の調査が必要だろうと思った時だった。

「兵長!?」
 ある倉庫に向かって敗走する亜人を追っていたライルが叫んだ。
「深追いは危険だ、ライル!」
 ルイトガルトの忠告は届いているのか、いないのか……亜人を追い掛けて倉庫に入っていくライルと兵士。
 大きな盾を構えたまま走るイレーヌはライルの背が見える位置に追いついた。
「あれは……?」
 倉庫の入口が大きく開き、中に“人間”が吊らされていた。
 イレーヌとルイトガルトは目を合わせ、頷き合うとライル達の後を追う。
 先に合流を目指していた意味は十分に合っただろう。二人が倉庫に入ると同時に金属製の吊り扉がガタンと閉じたのだった。

●亜人の策
「森の中ではなく、物置からですか!?」
 囮が居るなら森の中から増援が来るかと思っていたミュオが驚きながら大鎌を振りかぶった。
 ライル達が閉じ込められた倉庫の傍の物置や別の建物から多数の亜人が現れたからだ。
「これは、あからさまに怪しいですねぇ」
 ソフィアも古びた包帯に覆われた腕を亜人へと向ける。
 何かの罠ではないかと思っていた。例えば、死体を利用した罠や爆発物など……いくつか思い浮かんだ罠は亜人の行動ですぐに分かった。
 囲んだ倉庫に対して火を放とうとしているからだ。
「やっぱり、火計ですね」
 倉庫に逃げ込んだ亜人諸共、こちらを嵌める策を使ってくるかもしれない。
 そう読んでいたシェラリンデが、火を使われるのを防ぐ為に亜人の群れへと突入を試みる。
 それを防ぐように、盾持ちの亜人が立ち塞がった。ただの盾ではなさそうな雰囲気だ。
「陽動に乗らなかったり、亜人にしては練度が高いですわね」
 マテリアルで投擲武器を操り、幾体かの亜人を攻撃したライラ。その表情は険しい。
 倉庫を囲んだ亜人に対し、4人のハンターが攻勢を仕掛けている状況だ。相手がただの亜人であれば、遅れを取る事はないはず――。
「指揮官を倒せれば、群れは崩れるはずです」
 亜人を見渡した中に、前回、姿を見せた槍持ちを見つけた。
 何か言葉を話しているようだが、聞き取れない。見方によっては指揮しているようにも見える。
「援護、するよ」
 大鎌でぶぉんと宙と亜人を切り裂きながらミュオがライラの援護に入る。
 それで開いた空間にライラは滑らかな動きで体を滑り込ませると、竜尾刀を機構させた。
 金属音を響かせ、節ごとに独立した刃を持つ鞭とすると、槍持ちの亜人に向かって放った。
「指揮する余裕は与えませんわ」
 ギュッと固く締めた所で、ミュオの鎌が地獄へとその亜人を誘った。
 首を切られ崩れ落ちる亜人。
 地に転がった鋭い槍――に向かって、数体の亜人が飛び掛る。
「奪い合い!?」
 突然、目の前で繰り広げられる光景に、驚いたような言葉を発したソフィア。
 思いもしないチャンス到来である。
「紅焔、陽光に煌く、我が往く先を見よ! クリムゾンウェスト式機導術 ガンブレイズ!」
 焔を纏った拳で地面を叩くと前方に群がる亜人の足元から豪炎が吹き出した。
 一網打尽とはこの事だろう。我先に槍を手にしようとした亜人が纏まって焼却処分された。
「やらせないよ!」
 一刀のもとに火を付けようとした亜人の背中をシェラリンデが斬りつけた。
 僅かな差で火付けの方が早かった。油でも染みこませてあったのか、炎がぶわっと揺らめく。
 その時、頑健な盾を持つ亜人が何かを叫ぶと、亜人らは、バラバラの方角へと一斉に逃げ出した。
「私がこの程度で動揺すると思いましたか?」
 逃げ出す亜人に対してライラが容赦なく追撃する。
 倉庫は燃え始めている。だが、中には頼りになるハンターも居るのだ。動揺する所ではない。
「今度は持ち逃げさせませんよ」
 最後まで槍を持ち去ろうとする亜人を寄せ付けず、ミュオも大鎌を振るい続けた。

 倉庫の中に閉じ込められる形となったライルらとイレーヌ、ルイトガルトだったが、慌てはしなかった。
 薄ぼんやりとした中で、倉庫の中へと逃げ込んだ亜人を追い詰めるルイトガルトは、その手を緩めた。
(ライルの顔を立てるようにしておこう)
 兵士達も一緒なのだ。領主代理としての面目は今後、必要だろうと判断しての事だ。
 その想いに応えてか、ライルの緊張していた動きが解れたようにも見える。次々と亜人を打ち取る。
「まさか、ライルの坊ちゃんがここまで戦えるなんて」
 一人の兵士が驚きの声を上げていた。
 別の兵士もイレーヌからの回復魔法を受けながら、頷いた。
「他に怪我人はいないかな?」
 罠と分かっていてもあえて掛かりにいった甲斐が合ったというものだ。イレーヌは癒しの魔法と堅固な守りでライルらを支援した。
 致命傷を負った兵士も、彼女の回復魔法を受けて回復し、一命を取り留めた。
「……火を放たれた?」
「みたいだな。だが、水場の位置は確認してある。仲間へと知らせ、消火して貰おう」
 焦げ臭い匂いに気がついたイレーヌの言葉にルイトガルトが冷静に応えた。
 ライル達と合流するまでの間、集落を走っている際中に水場の位置を確認していたからだ。亜人が腹いせに放火した場合を想定していたのだが、大きな意味があったようだ。

●戦い終えて
 炎はすぐに消し止められた。
 亜人共は逃げ去り、今は倉庫の中へと全員が入る。
「この村で起きたことは想像できます。きっと、私の村のように……」
 ライラが言葉を濁す。
 倉庫の中には集落の人間と思われる者が数名。兵士と思われる者が数名、吊るされていたり、転がっていた。
 激しく痛めつけた跡もある。それらを埋葬する為、丁寧に布で包むんでいくライラ。
「此度は……死体が多い、か?」
 遺体を一つ一つ確認しながらルイトガルトは呟いた。
 痛めつけられた傷は拷問――ではないだろう。拷問の場合は相手に苦痛を与えるが、ここにある遺体はどれも、苦痛というよりかは恨みを晴らす、あるいは、残虐な行為を楽しむという事で傷つけられているようにも見える。
(……私と、私の血と、私の家名は、絶対に許さぬ)
 感情を表に出さずにルイトガルトは心の中で怒りの声をあげた。
 この様な死に様があってはならないはずだと。
 一方、ミュオは逃げ遅れて捕らえられた亜人を縛り上げていた。
「教えてもらうのが一番……と思いましたが、言葉が通じないですね」
 亜人は何かキーキー叫んでいるだけだった。
「やっぱり、情報がなにもかも足りてないです」
 ミュオは困ったような顔を浮かべる。
 これまでと今回、亜人側の戦術は、囮と別働隊を巧みに使っていた。
 想定していた内容と少し違うが、亜人が囮を使って罠を仕掛けて来た事に変わりはない。ハンター達の機転で事なきを得た形だが、ライルと兵士だけなら、罠に嵌っていただろう。
「次も、同じ可能性はありますね」
 二度あることは……とも言う。
 亜人は全てを倒しきれていないのだ。再び戦う機会はあるはず。
 その時、倉庫に牡丹が姿を現す。しかし、何か浮かない顔をしていた。
「どうした? 煙臭いのか?」
 イレーヌの質問に牡丹は首を横に振った。
「いやね、なんだか、異質なマテリアルを感じるからさ」
「そういえば、前の時も似たような感じだったな」
 牡丹の台詞にイレーヌも思い出すように言った。
 視線をシェラリンデへと向ける。その視線に気がつき、彼女は重々しく口を開く。
「以前感じた、マテリアルの残滓。亜人達が持つ属性武具から、亜人以外の歪虚や堕落者の関与なども疑ってはいるけど……」
 だから、人間の死体を使ったり、ゾンビ化した何かが出てくるかもしれないと思った。
 だが、実際はそんな存在は出現していない。
「それじゃ、浄化できるか試してみよっかな」
 マテリアルを集中させながら、ソフィアが機導術を行使する。
 機導浄化デバイスを用いた浄化術だ。カートリッジに異質なマテリアルが吸収されていく。
「あれれ?」
 ソフィアは首を傾げた。確かに、異質なマテリアルは吸収・封印できた。
 だが、術が切れると同時に、異質なマテリアルは再び感じられるのだ。その意味を彼女は熟考する――『機導浄化術・白虹』は、マテリアル汚染を由来としたものにしか効果はなく、新たな発生を防ぐだけだ。
 術を行使している間、術は正常に作動した。術が止まったら、異質なマテリアルが感じられたという事は、この場に、異質なマテリアルを放出する何かが――。
(ライルさんの鎧?)
 見たところ、ただの豪華な全身鎧にしか見えないのだが。如何にも、貴族が好みそうな絢爛な装飾品が眩しい。
 疑惑の視線に気がついたのか気がつかないのか、ライルのフルヘルムが外れ、素顔を見せた。特に慌てているような雰囲気は感じられない。
「皆さん、ありがとうございました。一時はどうなるかと思いましたが」
 戦闘で疲れたのだろうか、ライルの表情には陰りが見えるが、亜人に勝ったという喜びも見て取れる。
「見事な戦いぶりだった」
 ルイトガルトの褒め言葉に照れるようにライルは後頭部を掻いた。
 お世辞にも戦上手とは言えないだろう。亜人の必死の攻撃は、彼に何回も届いた。だが、その尽くを彼の全身鎧が防いでいたからだ。
 それも戦い方の一つといえば、一つではあるが……。
「良かったよ、ライル君。直接、君の戦いを見られなかったのは残念だけど」
 結果的にみれば勝利なのだ。牡丹が嬉しそうに彼の肩を叩く。
「僕はまだまだ強くならないといけないと感じた戦いでした」
「その心意気が大事」
 ドヤ顔でお姉さんぶる牡丹にライルは苦笑を浮かべた。
 が、それも一瞬の事、すぐに眉間に皺を寄せ、ライルは遺体の一つに視線を向ける。
「知り合い?」
 首をカクっと横に倒し、ソフィアが尋ねた。
 そうでなければ、忠告を聞かずに倉庫に飛び込みはしないだろう。
「父と一緒に行動していた兵士長です……」
 ライルの父は亜人討伐の際、敵の罠に掛かって行方不明だ。
 その父と行動を共にしていた兵士長がここで死んでいた。最初の合戦時に亜人に捕まったのだろう。
「周囲を探索するにしても、亜人を先に殲滅しなくては」
 悔しそうに言葉を発するライル。もしかして、父や兵士の生き残りが、居る……かもしれないが、日数を考えると絶望的だろう。せめて、遺体だけでも見つけておきたい所だ。
 彼は視線を亜人が持っていた槍へと向ける。今回の戦いの戦利品とも言える。
 その槍は属性武器であった。また、酷使されている様子ではあるが、どちらかというと新しく感じられる。
「別の集落が襲われる可能性もありますし」
「確かに、他にも、普通と違う武具を持った亜人が居たね」
 戦いを思い出しながらシェラリンデが言う。対峙した亜人が持っていた盾の守りは堅かった。
 亜人は今回もそれなりの数を倒しただろう。
 だが、この一帯にどれだけの亜人が居るか分からないので安心はできない。
「強力な武具を持った亜人は敗走しています」
 ミュオの言う通りだ。
 倉庫を囲んでいた亜人らは散り散りに逃げた。その為、追撃しても、その全てを追う事はできなかったのだ。
 もし、ここまで計算の事であれば、亜人らはそもそも逃げる事を前提としていたのかもしれない。
「亜人は集落で集めた物資を何処へ運ぶ気だったのでしょう?」
 そんな疑問をライラは呟く。
 外には亜人が残していった物資が残ってある。その中身は、衣服や金目の物も混じっていたが、主に食料だった。押車を引いた跡は残っていたので、少しずつでも運んでいたかもしれない。
「調査すれば、どこに運んでいたか分かるかもしれませんね」
「そこが敵の拠点という事もありえるな」
 ミュオとルイトガルトの二人の言葉に兵士らが顔を見合わせ、倉庫の外へと出て行った。
 どこまで足跡が残っているか確認しに行ったのだろう。
「よし! それじゃ、次は亜人の拠点へ攻め込むよ!」
 牡丹が一人、無駄に元気だった。


 壊滅した集落を奪還したライルとハンター達。
 その後の調査で亜人の住処と思われる場所を見つけ出す事に成功したライルは、亜人討伐を決意するのである。


 第3話へと続く――。


●『◆ラッドキー』
(まだ足りない。僕には彼女らのような圧倒的な強さが。もっと強くならないと――)

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    ドワーフ|13才|男性|闘狩人
  • 白嶺の慧眼
    イレーヌ(ka1372
    ドワーフ|10才|女性|聖導士
  • 大工房
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    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 【魔装】花刀「菖蒲正宗」
    シェラリンデ(ka3332
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • 【魔装】猫香の侍女
    ライラ = リューンベリ(ka5507
    人間(紅)|15才|女性|疾影士
  • 戦場に疾る銀黒
    ルイトガルト・レーデル(ka6356
    人間(紅)|21才|女性|舞刀士

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ソフィア =リリィホルム(ka2383
ドワーフ|14才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/02/24 23:51:58
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/02/21 23:19:35