ゲスト
(ka0000)
【幻洞】逆襲のヴォイドレディ
マスター:猫又ものと

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/02/23 22:00
- 完成日
- 2017/03/05 12:37
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●新たなる手
「まったく。お前達は、本当にだらしないねぇ」
トーチカ・J・ラロッカは部下のモグラコンビに説教中だった。
ドワーフの第二採掘場へ突貫したまでは良かったが、ハンターの前にトーチカ一味は敗走。デブモグラのセルトポも、ノッポモグラのモルッキーも痛い目を見て逃げ帰ってきたのだ。
「もうそんな事言ったって、相手も結構やりますのよ」
「でも、おいは知ってる。姐さんもやられて逃げ帰ってきたでおます」
セルトポの一言でトーチカは、一瞬固まる。
実は当のトーチカもハンターの前に手酷くやられて撤退していたのだ。
つまり、自分の事を棚に上げて盛大にモグラコンビを説教していた事になる。
「うるさいうるさい、うるさーーいっ! あたしの事はどうだっていいのよ! それよりモルッキー、どうするのよ?」
「そーですなー。敵もかなり強いですからねぇ。こうなったら思い切って今月のビックリドッキリプランと言っちゃいましょう」
モルッキーは腕を組みながら、不敵な笑みを浮かべる。
その横で首を捻るセルトポ。
「プラン? なんでおます? プリンの仲間でおますか?」
「プランよ、プラン。計画って意味よ。……で、どーするのよ。モルッキー」
トーチカはワクワクしながらモルッキーを見つめている。
三馬鹿から炸裂する作戦なのだからロクでも無い代物なのだが……。
「全国の女子中学生の皆さーん。注目っ! なんと、我が一味の切り札『ロックワン』を先行させて一気に敵陣を蹂躙しちゃいまーす!」
「おおっ! それならあたし達も余裕で勝てそうじゃないのさ!」
モルッキーの案にトーチカは喜んだ。
トーチカが使役している大型グランドワーム『ロックワン』。
あの巨体が作った地底路を通ってトーチカ達はやってきたのだが、ついにロックワンを前面に押し出す案をとってきたという訳だ。
「あれ? でも、ロックワンっておい達が遺跡を……」
「こら、セルトポ! 誰が聞いているか分からないんだから、余計な事を言うんじゃないよ! この前も言ったじゃないか。忘れたのかい?」
トーチカは慌ててセルトポの口を塞ぐ。
三馬鹿は三馬鹿なりに何かしら意図を動いているようなのだが……。
「敵に勝つにはこれしかりませんわね。どうされます、姐さん?」
モルッキーは、トーチカに視線を移す。
それを受けてトーチカは力強く立ち上がる。
「決まってるじゃないのさ。すぐにロックワンを呼び寄せて進軍だよ。お前達っ、遅れるんじゃないよ!」
「あいあいさー!」
モグラコンビは、横に並び揃って敬礼。
こうして連合軍と三馬鹿の新たなる戦いが始まろうとしていた。
●ロックワンの進軍
「時間もありませんので単刀直入に言います。皆さんには『ロックワンバスター』発動までの時間を稼いで戴きたいのです」
現れたハンター達に前触れもなく切りだした辺境要塞管理者のヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)。
辺境の軍人でもある彼はこういった緊急事態にも慣れているのか、涼しい顔をしている。
「『ロックワンバスター』って何です?」
「おや。説明していませんでしたっけ。大型グランドワーム『ロックワン』を撃破する為の兵器ですよ。イニシャライザーのエネルギーを砲身に集めて発射する……まあ、超大型機動砲だと思って戴ければ間違いありません」
「それを発射するまでに時間がかかるってことか?」
「あの大きさのグランドワームを一撃で屠れるようなエネルギーを貯めるんでしょう? 時間がかかっても仕方ないんじゃないかしら」
「勿論、時間稼ぎにはそういった理由もあるんですが……もう1つ大きな理由があるんですよ」
ため息交じりに言うヴェルナーに首を傾げるハンター達。
ロックワンバスターの動力として採用されたのは先日ヨアキム(kz0011)が開発したQSエンジンの上位版『チューダエンジン』。
QSエンジンより大型であることからエネルギー供給量も多いとされ、幻獣王チューダ自ら歯車を回してエネルギーを溜める手筈だったのだが……。
そう。あの丸くて、暇さえあれば食っちゃ寝してる幻獣王である。
歯車を回し始めて30秒でダウンしてしまったのだ。
それ故に、チューダが回復する時間が必要となり……。
それ、予測できたっていうかそもそもチューダを使ったこと自体が構造の欠陥だったのではないか?
――と、その場にいたハンター達は思ったが。誰も口にせず。
チューダだから仕方ない、という結論に至るあたり彼らは優しいのかもしれない。
「理由は分かった。具体的に時間稼ぎっていうのは何をすればいいんだ?」
「ロックワンを直接叩いて、可能な限りダメージを与えて下さい」
「……はい?」
「……それって可能なの?」
「撃破は出来ないでしょうが、アレだけの図体ですから攻撃は当たるでしょう」
ぽかんとするハンター達にさらりと答えるヴェルナー。
『ロックワン』は超巨大なグランドワームだ。それが通過した場所は、歪虚達が侵攻ルートして利用可能な程には大きい。
ただのグランドワームとはいえ、その大きさは脅威だ。
大型のユニットに騎乗して立ち塞がっても簡単に止められるものでもないだろう。
「問題のロックワンなんですが、地下を迷走していましてね。あちこちに開けた穴から、顔を出したり地面に潜ったりを繰り返しています。顔を出した時に攻撃すればダメージを与えられるでしょう」
「モグラたたき……」
「グランドワームですよ? モグラではありません」
「いや、リアルブルーにそういうゲームがあってな……」
「そうなのですか。それでは要領を掴んで戴くのも早そうですね。あとは宜しくお願いしますね」
涼しい顔で無茶振りをするヴェルナーに、ハンター達は頷いた。
●逆襲のヴォイドレディ
時折起きる地震はロックワン進撃の証。
その元を辿り、ロックワンの出現ポイントに向かったハンター達は白い禍々しい巨大なウォームと……ソファーにだらしなく身を投げ出した女歪虚に出会った。
「お前はトーチカ……!」
「お前達、この間はよくもやってくれたね! 今日はこの可愛い相棒、ロックワンも一緒さ! タダで帰れると思ったら大間違いだよ!! さあ! ロックワンやーーっておしまい!」
キセルを振って指示を出すトーチカ。
ロックワンは少し首を擡げると、穴に顔をひっこめる。
「ちょ、ちょっとロックワン何やってんのさ! そっちじゃないだろ!? まっすぐお行き、まっすぐだよ!」
「トーチカってロックワン制御してるって言ってなかった?」
「……あれ、制御出来てるっていうんですかね」
「微妙なとこだな……」
顔を見合わせるハンター達。
状況はどうあれ、やることは一つだ……!
「ロックワンに可能な限りダメージを与えつつ、トーチカを追っ払う……! 行くぞ!!」
「まったく。お前達は、本当にだらしないねぇ」
トーチカ・J・ラロッカは部下のモグラコンビに説教中だった。
ドワーフの第二採掘場へ突貫したまでは良かったが、ハンターの前にトーチカ一味は敗走。デブモグラのセルトポも、ノッポモグラのモルッキーも痛い目を見て逃げ帰ってきたのだ。
「もうそんな事言ったって、相手も結構やりますのよ」
「でも、おいは知ってる。姐さんもやられて逃げ帰ってきたでおます」
セルトポの一言でトーチカは、一瞬固まる。
実は当のトーチカもハンターの前に手酷くやられて撤退していたのだ。
つまり、自分の事を棚に上げて盛大にモグラコンビを説教していた事になる。
「うるさいうるさい、うるさーーいっ! あたしの事はどうだっていいのよ! それよりモルッキー、どうするのよ?」
「そーですなー。敵もかなり強いですからねぇ。こうなったら思い切って今月のビックリドッキリプランと言っちゃいましょう」
モルッキーは腕を組みながら、不敵な笑みを浮かべる。
その横で首を捻るセルトポ。
「プラン? なんでおます? プリンの仲間でおますか?」
「プランよ、プラン。計画って意味よ。……で、どーするのよ。モルッキー」
トーチカはワクワクしながらモルッキーを見つめている。
三馬鹿から炸裂する作戦なのだからロクでも無い代物なのだが……。
「全国の女子中学生の皆さーん。注目っ! なんと、我が一味の切り札『ロックワン』を先行させて一気に敵陣を蹂躙しちゃいまーす!」
「おおっ! それならあたし達も余裕で勝てそうじゃないのさ!」
モルッキーの案にトーチカは喜んだ。
トーチカが使役している大型グランドワーム『ロックワン』。
あの巨体が作った地底路を通ってトーチカ達はやってきたのだが、ついにロックワンを前面に押し出す案をとってきたという訳だ。
「あれ? でも、ロックワンっておい達が遺跡を……」
「こら、セルトポ! 誰が聞いているか分からないんだから、余計な事を言うんじゃないよ! この前も言ったじゃないか。忘れたのかい?」
トーチカは慌ててセルトポの口を塞ぐ。
三馬鹿は三馬鹿なりに何かしら意図を動いているようなのだが……。
「敵に勝つにはこれしかりませんわね。どうされます、姐さん?」
モルッキーは、トーチカに視線を移す。
それを受けてトーチカは力強く立ち上がる。
「決まってるじゃないのさ。すぐにロックワンを呼び寄せて進軍だよ。お前達っ、遅れるんじゃないよ!」
「あいあいさー!」
モグラコンビは、横に並び揃って敬礼。
こうして連合軍と三馬鹿の新たなる戦いが始まろうとしていた。
●ロックワンの進軍
「時間もありませんので単刀直入に言います。皆さんには『ロックワンバスター』発動までの時間を稼いで戴きたいのです」
現れたハンター達に前触れもなく切りだした辺境要塞管理者のヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)。
辺境の軍人でもある彼はこういった緊急事態にも慣れているのか、涼しい顔をしている。
「『ロックワンバスター』って何です?」
「おや。説明していませんでしたっけ。大型グランドワーム『ロックワン』を撃破する為の兵器ですよ。イニシャライザーのエネルギーを砲身に集めて発射する……まあ、超大型機動砲だと思って戴ければ間違いありません」
「それを発射するまでに時間がかかるってことか?」
「あの大きさのグランドワームを一撃で屠れるようなエネルギーを貯めるんでしょう? 時間がかかっても仕方ないんじゃないかしら」
「勿論、時間稼ぎにはそういった理由もあるんですが……もう1つ大きな理由があるんですよ」
ため息交じりに言うヴェルナーに首を傾げるハンター達。
ロックワンバスターの動力として採用されたのは先日ヨアキム(kz0011)が開発したQSエンジンの上位版『チューダエンジン』。
QSエンジンより大型であることからエネルギー供給量も多いとされ、幻獣王チューダ自ら歯車を回してエネルギーを溜める手筈だったのだが……。
そう。あの丸くて、暇さえあれば食っちゃ寝してる幻獣王である。
歯車を回し始めて30秒でダウンしてしまったのだ。
それ故に、チューダが回復する時間が必要となり……。
それ、予測できたっていうかそもそもチューダを使ったこと自体が構造の欠陥だったのではないか?
――と、その場にいたハンター達は思ったが。誰も口にせず。
チューダだから仕方ない、という結論に至るあたり彼らは優しいのかもしれない。
「理由は分かった。具体的に時間稼ぎっていうのは何をすればいいんだ?」
「ロックワンを直接叩いて、可能な限りダメージを与えて下さい」
「……はい?」
「……それって可能なの?」
「撃破は出来ないでしょうが、アレだけの図体ですから攻撃は当たるでしょう」
ぽかんとするハンター達にさらりと答えるヴェルナー。
『ロックワン』は超巨大なグランドワームだ。それが通過した場所は、歪虚達が侵攻ルートして利用可能な程には大きい。
ただのグランドワームとはいえ、その大きさは脅威だ。
大型のユニットに騎乗して立ち塞がっても簡単に止められるものでもないだろう。
「問題のロックワンなんですが、地下を迷走していましてね。あちこちに開けた穴から、顔を出したり地面に潜ったりを繰り返しています。顔を出した時に攻撃すればダメージを与えられるでしょう」
「モグラたたき……」
「グランドワームですよ? モグラではありません」
「いや、リアルブルーにそういうゲームがあってな……」
「そうなのですか。それでは要領を掴んで戴くのも早そうですね。あとは宜しくお願いしますね」
涼しい顔で無茶振りをするヴェルナーに、ハンター達は頷いた。
●逆襲のヴォイドレディ
時折起きる地震はロックワン進撃の証。
その元を辿り、ロックワンの出現ポイントに向かったハンター達は白い禍々しい巨大なウォームと……ソファーにだらしなく身を投げ出した女歪虚に出会った。
「お前はトーチカ……!」
「お前達、この間はよくもやってくれたね! 今日はこの可愛い相棒、ロックワンも一緒さ! タダで帰れると思ったら大間違いだよ!! さあ! ロックワンやーーっておしまい!」
キセルを振って指示を出すトーチカ。
ロックワンは少し首を擡げると、穴に顔をひっこめる。
「ちょ、ちょっとロックワン何やってんのさ! そっちじゃないだろ!? まっすぐお行き、まっすぐだよ!」
「トーチカってロックワン制御してるって言ってなかった?」
「……あれ、制御出来てるっていうんですかね」
「微妙なとこだな……」
顔を見合わせるハンター達。
状況はどうあれ、やることは一つだ……!
「ロックワンに可能な限りダメージを与えつつ、トーチカを追っ払う……! 行くぞ!!」
リプレイ本文
――ずもーーーーん。
地下採掘場へと繋がるうす暗い通路。巨大グランドワーム『ロックワン』の出現ポイントに駆け付けたハンター達。
彼らがそれぞれライトを点灯して、まず見えたのはぶち抜かれた大穴。
そこから顔を出していたのは、まさにそんな妙な効果音を背負っていそうな巨大なミミズのような歪虚だった。
「お、大きいですね……」
「ほへー。サンドワームじゃなくてロックワームなのん? 何食べたらこんなに大きくなれるのかなぁ」
円らな目をさらに丸くする羊谷 めい(ka0669)。
いやいや。待ってミィナ・アレグトーリア(ka0317)さん。歪虚はごはん食べてもでっかくならないですから!
「やだー! もーー! キモイ! もうちょっと可愛くなれないの!?」
「歪虚に可愛らしさを求めるのはちょっと難しいんじゃないかのう」
黒い魔導アーマーで予備光源を設置していたクレール・ディンセルフ(ka0586)に、ヴィルマ・ネーベル(ka2549)からツッコミが入る。
突如現れたグランドワーム。すわ戦闘開始かと思ったところで、ひょっこりと女歪虚が顔を出した。
「お前達! この間はよくもやってくれたね! 今日と言う今日はギャフンと言わせてやるよ! 覚悟おし!」
「おやおや、現れましたか。てっきり、また迷子になったのだと思っていたんですがね」
「迷子になんてなるわけないだろ! ロックワンが向かう先があたしの行先さ!」
「……それって要するに自分じゃ行先を決められないってことですよね?」
フフンと笑うトーチカ・J・ラロッカに容赦なく事実を突きつける狭霧 雷(ka5296)。
ラン・ヴィンダールヴ(ka0109)が人懐こい笑みを浮かべて彼女を覗き込む。
「あ、君がトーチカちゃんかなー? ねえねえ、君。ハンター側に来る気とかないー?」
「はぁ? あんた何言ってるんだい? あたしは歪虚だよ?!」
「ん? 出来れば可愛い子とは敵対したくないなーって。ねえ、誠一君?」
「そう、ですね……。それについてはコメントを差し控えますね」
「わたしもノーコメントで……」
物腰は柔らかいが有無を言わさぬ笑顔を浮かべる神代 誠一(ka2086)とぽつりと呟くめい。
トーチカはハッキリ言って誠一の好みではない上、好きな女性のタイプは? と聞かれたら迷わず『恋人ですね』と答えるリア充だし、めいも『うわぁ……何この人……』と絶賛ドン引き中なのだが、本人にハッキリ言わないのはきっと彼らの優しさだ。多分。
「怠惰の魔人型歪虚は、みんなこんな恰好をしているのでしょうか……?」
何だかめいさんの中で誤解が広がってるみたいですが、怠惰眷属に限らずこんな格好した歪虚の方が珍しいのでそこだけは勘違いしないであげてください!
問題の女歪虚はそれにも気づかず、頬を赤らめてもじもじしていた。
「そ、そんな……出会ったばっかりなのにプロポーズとか……! 困っちゃう……! でもあたしにはビックマー様がいるから……!」
「そっかー。残念だなー。気が変わったらいつでも言ってよ。あはは」
気にする様子もなく笑うラン。斜め上にぶっとんだ会話に、クレールがブチ切れた。
「ちょっと待ちなさいよ! 何でそうなるのよ馬鹿なの!?」
「誰が馬鹿だよ! ……ってあんたはこの間の小娘……! あたしがモテるからって嫉妬かい? 醜いねぇ」
「なによ!! BBAよりマシでしょ!! ちょっと褒められたからって調子に乗ってバッカみたい!!」
「馬鹿馬鹿連呼するんじゃないよ! 馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ!」
「BBAに馬鹿って言われても痛くも痒くもありませーーーん!」
「キイイイイイ!!」
地団駄を踏むトーチカ。グランドワームを観察していたミィナがあっ! と声をあげてトコトコと寄って来る。
「あっ! トーさんこの間ぶりなのーん! ロックワンが居たから見えなかったのん」
「誰が父さんだよ!」
「え。トーチカさんだからトーさんなのん!」
「あんたの父親になった覚えはないっての!」
「むー、トーさんがダメならカーさんでどうかなぁ?」
「未婚なのに子持ちにしないでおくれな!!」
「あははは! BBAにはお似合いの名前じゃないの?」
「じゃあトーチさん! トーチさんはどう?」
「やーい! トーチ! 松明BBA!」
「お黙り!!」
ギャーギャーと言い合うクレールとミィナ、トーチカ。
それに微妙な目線を送るヴィルマの横で、蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)がキセルを咥える。
「面白いくらい引っかかりよるの……」
「……相も変わらず、懲りぬ女人よのう」
「……歪虚にも色々いるが、こいつは何と言うか……」
「一言で言うと阿呆じゃな」
「これもバタルトゥの女難有るが故じゃとすれば、ほんに中々の色男じゃと言うてやるにのう?」
「……さすがにこれは俺のせいではない筈……」
きっぱりと断じるヴィルマ。紫煙を吐き出し、くすくすと笑う蜜鈴。相変わらずの仏頂面のバタルトゥ・オイマト(kz0023)からげんなりとした雰囲気を察して、彼女はもう一度くつりと笑い……。
「キイイイイ! どいつもこいつも馬鹿にして! ロックワン! やーーーーっておしまい!!」
聞こえてくるトーチカの黄色い声。
今回もなし崩しに戦闘始まっちゃうみたいですよ!
「これはこれは。有象無象と良く群れたものよな」
「ふむ……最初から本気を出してきたかのう」
トーチカの指示で現れたパペットマンに鋭い目線を向けるヴィルマ。
わらわらと現れた泥人形は、あっと言う間に地面を埋め尽くす程になり……蜜鈴はキセルの代わりに緑色の宝石があしらわれたナイフを構える。
「この数はヴィルマと妾ではちょっと手に余るのう。ミィナ、バタルトゥ。泥人形の処理を手伝うておくれ」
「分かったのん!」
「構わぬが……ロックワン対応に当たらなくて良いのか……?」
「機体はロックワンに集中させたい。それに……おんしの強さは知っておるが、怪我をさせたとあってはおんしを慕う者達に妾が叱られてしまう故のう?」
「……蜜鈴。それは要らぬ心配だ……」
素直に頷くミィナ。くつりと笑う蜜鈴にちらりと目線をやると、バタルトゥは双剣を構えて走り出す。
「ヴェルター! ロックワンやパペットマンの攻撃が来たら避けるのじゃ!」
「ジジもお願いなのん!」
イェジドに指示を出すヴィルマとミィナ。主を背に乗せた狼たちが誇らしげに咆哮する。
「莉邏はアレを集めておいで。……おんしの駿脚じゃ、大丈夫じゃとは思いよるが捕まらぬ様にの?」
主に撫でられ、目を細める莉邏。純白に色とりどりの飾り羽をもつリーリーは、蜜鈴の期待に応えるように大地を蹴り……飛び出したのはパペットマン達の前。
いくら数が多いとはいえただの泥人形。移動速度もリーリーのそれとは比にならない。
莉邏はまるでよちよち歩く赤子をおびき寄せるように細かく移動を繰り返して……。
「……冷たき女王の腕。包む御手より舞うは氷華。想いの槍に貫かれ、大地に脚を結ぶが良い」
「風を司りし精霊。来たれ雷。我が声に応えよ!」
「天に輝く雷さん、ピカっとやっちゃってくださいなのん。お願いしまーす」
蜜鈴とヴィルマ、ミィナの詠唱。舞い上がる冷気の嵐。飛来する2本の雷。
リーリーによって集められていたパペットマン達を面白いように蹴散らして行く。
「よし、もう一撃……おっと!」
「きゃああ!? 落ちるかと思いましたのん」
突如ぐらりと揺れたイェジドの身体。ヴィルマとミィナはバランスを崩しそうになり慌てて体勢を整える。
どうやら討ち漏らした泥人形が足元まで迫っていたらしい。
2体のイェジドは縋りついて来ようとするパペットマンを避けて踏み潰す。
「さっすがジジ! 頼りになるのん!」
「うむうむ。良い子じゃの、ヴェルター。その調子で頼むぞえ」
主達の声に、短く鳴いて応える狼達。
そこにまた、蜜鈴のリーリーが戻って来る。
「おぬしら! 第二波の用意じゃ! 撃て!」
続く蜜鈴の詠唱。ヴィルマとミィナもそれに続いて……冷気と稲妻の嵐がパペットマンを飲み込む――!
「きゃっ……」
「めいさん、大丈夫ですか!?」
「はい。大丈夫です……!」
心配そうな誠一に即答するめい。
ロックワンの頭に押されて傾いだ彼女のR7エクスシア。慌てて重心を下に持っていってバランスを取る。
同じくR7エクスシアに騎乗している誠一。助け起こそうかと構えたが、彼女の咄嗟の行動に安堵のため息を漏らし、目の前の巨大なウォームに鋭い目線を送る。
大きな穴から覗く巨大なミミズ。泥にまみれた白っぽい顔が光に浮かび上がって生理的嫌悪感を呼び起こす。
――穴から出ているのは顔だけ。
それでもあの大きさだ。本体まで含めたらどれだけの大きさになるのだろう……。
眉間に皺を寄せる誠一。クレールも同じことを想像して……想像するのを放棄したくなったらしい。プルプルと首を振る。
「あー! キモい! やっぱりキモい!」
「同感ですね」
「じゃあさっさと退散してもらおっかー」
頷く雷。ランは金色の物体を手に、大きく振りかぶり……。
どっせーーい!!
だらしなく開いたロックワンの口にカランカラーンという派手な音を立ててジャストインする物体。
グランドワームはそれをぎょっくんと飲み込むと、ずるりと音を立てて首を引っ込める。
「ランさん、今のベルですか?」
「そ。ベル飲み込んだら動いた時に音しないかなって。ダメで元々、少しでも聞こえたらラッキー程度だけどねー」
「こらー! ロックワン何してんだい! 隠れてないであいつらを押し潰すんだよー!」
めいの問いにあははと笑って答えるラン。そこに聞こえるトーチカの金切り声。しかしロックワンが戻って来る様子はない。
「ロックワン、案の定トーチカの指示聞かないみたいですね」
「指示の通りに動いてくれた方が楽だったんですがね」
呆れが混じる雷の声。誠一の言う通り、トーチカの指示通りに動いてくれた方が誘導し易かったに違いない。
だってほら。トーチカちょろいですし?
魔導レーダーを起動し、ディスプレイに目を走らせるクレール。
隠れたロックワンの反応を目を皿のようにして探す。
そしてランも野生の動物霊の力を宿らせ、聴覚を大幅に上昇させ――。
聞こえるのはユニットの機動音。どこかから滴る水の音。
パペットマンの足音と囁くような詠唱……。
戦いを繰り広げる仲間達の声をBGMに、更に集中するラン。
鐘の音は聞こえない。が、微かに聞こえてくる地鳴り。
これはそう。ロックワンが移動する音――!
「僕から10時の方向! 来るよ!」
「めいさんの近く! 構えて!」
「……! 分かりました!」
ランとクレールの声にハルバードと盾を構えるめい。
岩が崩れる音がして、ロックワンがひょこっと顔を出す。
その瞬間を狙って槍を穿つめい。クレールもハルバードを構え、ヤタガラスを駆りグランドワームに迫る。
――仲間のうち2人がロックワンを抑え、残りが攻撃をする段取りだった。
開いた口につっかえ棒宜しく槍を立てれば、口内に直接ライフルがぶち込める……!
グランドワームとて口内はさほど強くないはず。
そんな見立てで動いていたのだが……予想外の事態が起きた。
ばくり。
「ギャアアアアア! 腕! ヤタガラスの腕食われたあああああ!!」
「クレールさん……!」
クレールの悲鳴に青ざめるめい。
ロックワンの口に槍を突っ込んだまでは良かった。
けど腕ごと噛り付くとか聞いてない!!
1つめの誤算が、ロックワンの口は予想より大きく、槍が丸のみできてしまったこと。
そしてもう1つの誤算が……思えば地中をがりごり噛み砕いて進むようなヤツだ。
口の中もそれなりに硬いよ! うわーーーん!!
「口が! 歯がキモイ!! 装甲が剥げるううううう!!」
「む……いけません。このままではクレールさんの腕がもげてしまいますね」
「いえあの。この場合はクレールさんじゃなくてヤタガラスでは……!」
「あはは。雷君面白いねー。今助けるよー」
さらっと物騒なことを言う雷に慌ててツッコむめい。ランも笑いながら龍槍を手にする。
腕を噛まれた黒い魔導アーマーを赤いデュミナスとR7エクスシア、桃色の髪の痩身の男性が救いだそうと躍起になっている。
その光景を努めて冷静に見ていた誠一は、ある事実に気づいた。
――クレールのヤタガラスに食いついている限り、ロックワンは動けないのではないか?
仲間が密集している以上、彼らを巻き込むような攻撃は出来ない。
ヤタガラスの機体ダメージも気になるが、これは大きなチャンスだ……!
「クレールさん! そのままちょっと我慢できますか!?」
「ええっ!? どうするの!?」
「殴ります」
きっぱり。断言した誠一。その顔にはやけに爽やかな笑みが浮かんでいる。
――あ。誠一さんの殺意マシマシですね、これ。
何だか怒らせたらアカン人を怒らせたような気がしますよ!
「皆さん、くれぐれも銃器は使わないでください! ヤタガラスにダメージが行ってしまうので!」
「あはは。見て見てー。この子表面硬いけど頭結構ぶよぶよしてるよ! 刺すより鈍器で殴った方が効くかな!」
「目とか、そういう弱そうなところ狙ってみるというのは……?」
「その辺は各位工夫しましょう。では行きますよ!」
「あああ! もう! こうなったら出来る限りここで食い止めるよ!」
R7エクスシアでマテリアルソードを構える誠一に笑いながら槍でロックワンの顔を突くラン。
盾でぶんなぐる決意をしためいに、雷が巨大なペンチを振り被る。
そして、クレールはどうやら腹を括ったらしく、衝撃に耐えられるようにヤタガラスを安定する姿勢に保ち――。
という訳でみんなー!
ロックワンの頭、タコ殴りチャレンジ! はーじまーるよー!
……その頃。蜜鈴とヴィルマ、ミィナはパペットマンに上手いこと対応して大分数を減らすことに成功していた。
「お前達! よくもあたしのパペットマンを……! ちょっと強いからって調子に乗るんじゃないよ!!」
「おぬしの自慢の泥人形も数が減ってしまったのう? どうじゃ。降参するなら許してやらんこともないがのう」
「何言ってんだい! まだまだこれからだよ!」
「……のう、トーチカ? おんしまだ懲りて居らなんだかえ?」
ふふふと笑うヴィルマの横でパチリと扇を鳴らす蜜鈴。さすがにその音を覚えていたのか、トーチカの目が泳ぐ。
「トーチさん、いい加減にするですの。悪い子はめっ! なのん!」
「おだまり! 悪いことするのが歪虚の仕事なんだよ!」
ミィナに猛然と言い返すトーチカ。彼女のソファーを支えるパペットマンをまじまじと見てヴィルマは首を傾げる。
「それにしてもおぬしの作る泥人形は面白いのう」
「妾もそう思っておったところじゃ。主であるおんしに忠実、且つ多様な使い道が有りよる。泥人形を作ってみたいんじゃが作り方にコツはあるのかえ?」
「ん? んんー。コツっていうか……ただ『出て来い!』って思うと出てくるものなのさ。あたしに与えられた贈り物みたいなもんだね」
「そうかえ。こういった人形は制御する核のようなものを用意するのが一般的じゃがこやつらは違うのじゃな」
「ああ、サイズが大きい子を作る時はそういうのがあった方が生成は早いね。ま、なくても何とかなるけどねえ」
蜜鈴にも褒められ、フフンと笑うトーチカ。つるつると口を滑らせる彼女に、ヴィルマも質問をぶつける。
「ほーぅ。流石じゃのう。それにしてもこれだけの数の泥人形じゃ。隊列を組ませて真っ直ぐ歩かせたりは難しいのじゃろ?」
「やだねえ。あたしを誰だと思ってんのサ。そんなの朝飯前だよ!」
言われるがままにパペットマン達を呼び寄せて、一列に並べてみせるトーチカ。
お行儀よくトコトコと歩き出した彼らに、ヴィルマは容赦なく雷撃をぶつける。
「はい、ごくろうさま。徒労じゃったのぅ……クク……」
「あああ! 何すんのさ! あんたあたしを騙したね!?」
「こんな手に引っかかる方が悪いのじゃ。そなたの部下の……モルッキーじゃったか。アレと先日戦ったが変態じゃったのう。部下が部下ならその上に立つ親玉も親玉じゃな。そなたは……さしずめ露出狂かえ?」
「おだまり小娘! 乳臭いガキが偉そうにいいい!!」
ヴィルマの挑発に地団駄を踏むトーチカ。その瞬間シュッという音と共に過る風の刃。
見ると、今まで静かだったミィナが怒気を発していて……。
「だーーーれーーーがーーー小娘ですのん!」
「誰ってあんたたt……」
「しゃーらっぷ! 黙るですのん! うちの仲間を馬鹿にしたら許さないのん! ピンチの時に助けに来てくれない大きいクマさんだか、びっくりしたクマさんだかと一緒にしないで欲しいのん!」
「はぁ!? あんたこそビックマー様を馬鹿にするんじゃな」
「うるさいのん! だーれーがーチビですのん! ちょっとそこに座るですのん!!」
鋭い風を足元に叩きつけるミィナ。
いやいや。誰もチビなんて言ってませんが……。
「……ふむ、欲しい情報は手に入れた。もう用は無い。ミィナ、ヴィルマよ。好きにして良いぞ?」
「了解ですのん! 懲らしめてやりますのん!!」
「さて、お仕置きタイムと行こうかのう」
パチンと扇を鳴らす蜜鈴。ゴゴゴゴ……と怒りのオーラを発するミィナとフフフフ……と氷のような笑みを浮かべるヴィルマ。
という訳でみんなー!
トーチカのハイパーお仕置きタイム! はーじまーるよー!
「あははは! あはははは!!」
「閉鎖空間での高機動戦闘のはずがとんでもない泥試合ですね……!!」
「あああああ! 揺れるうううううう!!」
何故か爆笑しているランにペンチで手あたり次第にフルボッコする雷。ガコンボコンという殴打音の中にクレールの叫びが響く。
「大丈夫ですか!?」
「厳しかったら言ってくださいね!!」
「大丈夫うううううう!!」
気遣いを見せる誠一とめいに空いている方の手を降って見せる彼女。
仲間達がボコボコとロックワンの頭を叩く度に感じる衝撃。
いくら表面が硬いとはいえ、連続で叩き込まれる衝撃は辛いのか、何度か頭を引っ込めようとするロックワン。
が、その度にヤタガラスと、それを支える仲間達とで綱引きよろしく引っ張り合いになって思うようにいかない。
……ヤタガラスの腕を離せばいいのだが、そこは虫。
低知能ゆえの弊害かそれに気づかないようで……。
再び頭を引っ込めようとするロックワン。幾度目かの引っ張り合いに、ヤタガラスの機体が悲鳴をあげる。
「ごめん! ロックワンの足止め、あと1回が限界! そろそろ腕もげる!!」
「そろそろ勝負賭けにいきますかね……! 誠一さん! めいさん! 口こじ開けます! 後頼みます!」
「よし、行くよ!!」
「了解です!」
「気を付けて下さいね!」
クレールの声に応えるようにロックワンの口に食らいつく雷とラン。誠一とめいも、来るべきその瞬間に備える。
ペンチと槍をグリグリと押し付ける2人。隙間から無理矢理突っ込んで……。
「ぐぬぬぬ! おーーーもーーーいーーーーー!!」
歯を食いしばるラン。生身で巨大なウォームと渡り合っているのだからこの優男なかなか強いです!
雷もペンチをこじ入れるが、口はなかなか開かず……。
そこで彼はぴこーん! と思いついた。
――私の持ってる獲物、ペンチですし。歯の1本でも抜いてやればいいんじゃないですかね。
わあああ! 鬼がいるうううう!!
迷わず実践する雷。残念ながら歯は抜けなかったが痛かったらしい。
ヤタガラスの腕と槍、ランが投げ込んだベルをペッと吐き出した。
「よし! 開きました!」
雷の合図と同時に巻き起こる一陣の風。現れる葉の幻影。周囲が闇に包まれる。
「皆さん今のうちに離脱を! めいさん、お願いします!!」
誠一の支援を受けて一気に離れる仲間達。めいはライフルを構えて……。
「行きまーーーーす!!」
溢れる力の奔流。ライフルから放たれたマテリアル弾がロックワンに直撃する――。
額に弾を食らい、頭を揺らすグランドワーム。
ギ……ギギ……!
「……今のはロックワンの悲鳴、ですかね」
「多分ねー。これで引き下がってくれるといいんだけど」
少し離れた場所で汗を拭う雷に、のんびり答えるラン。
ロックワンは食らった一撃が痛かったのか、頭を擡げると思い切りよく方向転換をして……穴の中に消えて行く。
尻尾をこちらに向けたということはもう戻って来る気は更々ないのだろう。
「ちょっと! ロックワンどこ行くのさ!!」
「さて、ロックワンは逃亡したようですが、あなたは……おっと」
「あははは。トーチカちゃんセクシーだねえ」
残された女歪虚に声をかけようとして慌てて目を反らした誠一。ランにまじまじと見つめられて、トーチカは涙目で身体を隠す。
何でって……ミィナとヴィルマに風の刃つきの正座説教食らって、元々少なかった服の面積がもっと減っていたので。
「嫁入り前の身体を何度も何てことすんのさあああ!!」
「小悪党は、だいたい爆発オチとお仕置きがまっているのじゃよ」
「トーチさんこそ反省するですの!」
「やーいやーい! 正座説教食らってやんの! ばーかばーか!!」
「キイイイイ!!」
「…………」
ヴィルマとミィナ、クレールに煽られて地団駄を踏むトーチカ。
蜜鈴のパチン、という扇の音にビクーーーーーッ! とすると、覚えておいで! と捨て台詞を吐いて慌ててパペットマン達に指示を飛ばし、ソファーごとロックワンが出て行った穴へと消えて行った。
「……いやはや。相変わらずですねえ」
「ほんにのう。さあ、今回はこれにて終いじゃ。戻って風呂じゃ、風呂」
「ギャアアアアア! ヤタガラスの装甲ひしゃげてるううう!! 松明ババア許さないんだからああああ!!」
「むー。もうちょっと背が欲しいのはほんまの事なんよね……。大人っぽくなりたいなぁ……」
その背を見送り、呆れたように呟く雷に頷く蜜鈴。
クレールの怒りの咆哮とミィナの呟きが、地下通路に木霊した。
こうして、ハンター達はロックワンにダメージを与え、トーチカを撃退することに成功した。
その後紆余曲折あったものの、ロックワンバスターも無事に起動し……巨大なグランドワームは光と共に消え去り、辺境ドワーフ達に訪れた未曾有の危機は見事回避されたのだった。
地下採掘場へと繋がるうす暗い通路。巨大グランドワーム『ロックワン』の出現ポイントに駆け付けたハンター達。
彼らがそれぞれライトを点灯して、まず見えたのはぶち抜かれた大穴。
そこから顔を出していたのは、まさにそんな妙な効果音を背負っていそうな巨大なミミズのような歪虚だった。
「お、大きいですね……」
「ほへー。サンドワームじゃなくてロックワームなのん? 何食べたらこんなに大きくなれるのかなぁ」
円らな目をさらに丸くする羊谷 めい(ka0669)。
いやいや。待ってミィナ・アレグトーリア(ka0317)さん。歪虚はごはん食べてもでっかくならないですから!
「やだー! もーー! キモイ! もうちょっと可愛くなれないの!?」
「歪虚に可愛らしさを求めるのはちょっと難しいんじゃないかのう」
黒い魔導アーマーで予備光源を設置していたクレール・ディンセルフ(ka0586)に、ヴィルマ・ネーベル(ka2549)からツッコミが入る。
突如現れたグランドワーム。すわ戦闘開始かと思ったところで、ひょっこりと女歪虚が顔を出した。
「お前達! この間はよくもやってくれたね! 今日と言う今日はギャフンと言わせてやるよ! 覚悟おし!」
「おやおや、現れましたか。てっきり、また迷子になったのだと思っていたんですがね」
「迷子になんてなるわけないだろ! ロックワンが向かう先があたしの行先さ!」
「……それって要するに自分じゃ行先を決められないってことですよね?」
フフンと笑うトーチカ・J・ラロッカに容赦なく事実を突きつける狭霧 雷(ka5296)。
ラン・ヴィンダールヴ(ka0109)が人懐こい笑みを浮かべて彼女を覗き込む。
「あ、君がトーチカちゃんかなー? ねえねえ、君。ハンター側に来る気とかないー?」
「はぁ? あんた何言ってるんだい? あたしは歪虚だよ?!」
「ん? 出来れば可愛い子とは敵対したくないなーって。ねえ、誠一君?」
「そう、ですね……。それについてはコメントを差し控えますね」
「わたしもノーコメントで……」
物腰は柔らかいが有無を言わさぬ笑顔を浮かべる神代 誠一(ka2086)とぽつりと呟くめい。
トーチカはハッキリ言って誠一の好みではない上、好きな女性のタイプは? と聞かれたら迷わず『恋人ですね』と答えるリア充だし、めいも『うわぁ……何この人……』と絶賛ドン引き中なのだが、本人にハッキリ言わないのはきっと彼らの優しさだ。多分。
「怠惰の魔人型歪虚は、みんなこんな恰好をしているのでしょうか……?」
何だかめいさんの中で誤解が広がってるみたいですが、怠惰眷属に限らずこんな格好した歪虚の方が珍しいのでそこだけは勘違いしないであげてください!
問題の女歪虚はそれにも気づかず、頬を赤らめてもじもじしていた。
「そ、そんな……出会ったばっかりなのにプロポーズとか……! 困っちゃう……! でもあたしにはビックマー様がいるから……!」
「そっかー。残念だなー。気が変わったらいつでも言ってよ。あはは」
気にする様子もなく笑うラン。斜め上にぶっとんだ会話に、クレールがブチ切れた。
「ちょっと待ちなさいよ! 何でそうなるのよ馬鹿なの!?」
「誰が馬鹿だよ! ……ってあんたはこの間の小娘……! あたしがモテるからって嫉妬かい? 醜いねぇ」
「なによ!! BBAよりマシでしょ!! ちょっと褒められたからって調子に乗ってバッカみたい!!」
「馬鹿馬鹿連呼するんじゃないよ! 馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ!」
「BBAに馬鹿って言われても痛くも痒くもありませーーーん!」
「キイイイイイ!!」
地団駄を踏むトーチカ。グランドワームを観察していたミィナがあっ! と声をあげてトコトコと寄って来る。
「あっ! トーさんこの間ぶりなのーん! ロックワンが居たから見えなかったのん」
「誰が父さんだよ!」
「え。トーチカさんだからトーさんなのん!」
「あんたの父親になった覚えはないっての!」
「むー、トーさんがダメならカーさんでどうかなぁ?」
「未婚なのに子持ちにしないでおくれな!!」
「あははは! BBAにはお似合いの名前じゃないの?」
「じゃあトーチさん! トーチさんはどう?」
「やーい! トーチ! 松明BBA!」
「お黙り!!」
ギャーギャーと言い合うクレールとミィナ、トーチカ。
それに微妙な目線を送るヴィルマの横で、蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)がキセルを咥える。
「面白いくらい引っかかりよるの……」
「……相も変わらず、懲りぬ女人よのう」
「……歪虚にも色々いるが、こいつは何と言うか……」
「一言で言うと阿呆じゃな」
「これもバタルトゥの女難有るが故じゃとすれば、ほんに中々の色男じゃと言うてやるにのう?」
「……さすがにこれは俺のせいではない筈……」
きっぱりと断じるヴィルマ。紫煙を吐き出し、くすくすと笑う蜜鈴。相変わらずの仏頂面のバタルトゥ・オイマト(kz0023)からげんなりとした雰囲気を察して、彼女はもう一度くつりと笑い……。
「キイイイイ! どいつもこいつも馬鹿にして! ロックワン! やーーーーっておしまい!!」
聞こえてくるトーチカの黄色い声。
今回もなし崩しに戦闘始まっちゃうみたいですよ!
「これはこれは。有象無象と良く群れたものよな」
「ふむ……最初から本気を出してきたかのう」
トーチカの指示で現れたパペットマンに鋭い目線を向けるヴィルマ。
わらわらと現れた泥人形は、あっと言う間に地面を埋め尽くす程になり……蜜鈴はキセルの代わりに緑色の宝石があしらわれたナイフを構える。
「この数はヴィルマと妾ではちょっと手に余るのう。ミィナ、バタルトゥ。泥人形の処理を手伝うておくれ」
「分かったのん!」
「構わぬが……ロックワン対応に当たらなくて良いのか……?」
「機体はロックワンに集中させたい。それに……おんしの強さは知っておるが、怪我をさせたとあってはおんしを慕う者達に妾が叱られてしまう故のう?」
「……蜜鈴。それは要らぬ心配だ……」
素直に頷くミィナ。くつりと笑う蜜鈴にちらりと目線をやると、バタルトゥは双剣を構えて走り出す。
「ヴェルター! ロックワンやパペットマンの攻撃が来たら避けるのじゃ!」
「ジジもお願いなのん!」
イェジドに指示を出すヴィルマとミィナ。主を背に乗せた狼たちが誇らしげに咆哮する。
「莉邏はアレを集めておいで。……おんしの駿脚じゃ、大丈夫じゃとは思いよるが捕まらぬ様にの?」
主に撫でられ、目を細める莉邏。純白に色とりどりの飾り羽をもつリーリーは、蜜鈴の期待に応えるように大地を蹴り……飛び出したのはパペットマン達の前。
いくら数が多いとはいえただの泥人形。移動速度もリーリーのそれとは比にならない。
莉邏はまるでよちよち歩く赤子をおびき寄せるように細かく移動を繰り返して……。
「……冷たき女王の腕。包む御手より舞うは氷華。想いの槍に貫かれ、大地に脚を結ぶが良い」
「風を司りし精霊。来たれ雷。我が声に応えよ!」
「天に輝く雷さん、ピカっとやっちゃってくださいなのん。お願いしまーす」
蜜鈴とヴィルマ、ミィナの詠唱。舞い上がる冷気の嵐。飛来する2本の雷。
リーリーによって集められていたパペットマン達を面白いように蹴散らして行く。
「よし、もう一撃……おっと!」
「きゃああ!? 落ちるかと思いましたのん」
突如ぐらりと揺れたイェジドの身体。ヴィルマとミィナはバランスを崩しそうになり慌てて体勢を整える。
どうやら討ち漏らした泥人形が足元まで迫っていたらしい。
2体のイェジドは縋りついて来ようとするパペットマンを避けて踏み潰す。
「さっすがジジ! 頼りになるのん!」
「うむうむ。良い子じゃの、ヴェルター。その調子で頼むぞえ」
主達の声に、短く鳴いて応える狼達。
そこにまた、蜜鈴のリーリーが戻って来る。
「おぬしら! 第二波の用意じゃ! 撃て!」
続く蜜鈴の詠唱。ヴィルマとミィナもそれに続いて……冷気と稲妻の嵐がパペットマンを飲み込む――!
「きゃっ……」
「めいさん、大丈夫ですか!?」
「はい。大丈夫です……!」
心配そうな誠一に即答するめい。
ロックワンの頭に押されて傾いだ彼女のR7エクスシア。慌てて重心を下に持っていってバランスを取る。
同じくR7エクスシアに騎乗している誠一。助け起こそうかと構えたが、彼女の咄嗟の行動に安堵のため息を漏らし、目の前の巨大なウォームに鋭い目線を送る。
大きな穴から覗く巨大なミミズ。泥にまみれた白っぽい顔が光に浮かび上がって生理的嫌悪感を呼び起こす。
――穴から出ているのは顔だけ。
それでもあの大きさだ。本体まで含めたらどれだけの大きさになるのだろう……。
眉間に皺を寄せる誠一。クレールも同じことを想像して……想像するのを放棄したくなったらしい。プルプルと首を振る。
「あー! キモい! やっぱりキモい!」
「同感ですね」
「じゃあさっさと退散してもらおっかー」
頷く雷。ランは金色の物体を手に、大きく振りかぶり……。
どっせーーい!!
だらしなく開いたロックワンの口にカランカラーンという派手な音を立ててジャストインする物体。
グランドワームはそれをぎょっくんと飲み込むと、ずるりと音を立てて首を引っ込める。
「ランさん、今のベルですか?」
「そ。ベル飲み込んだら動いた時に音しないかなって。ダメで元々、少しでも聞こえたらラッキー程度だけどねー」
「こらー! ロックワン何してんだい! 隠れてないであいつらを押し潰すんだよー!」
めいの問いにあははと笑って答えるラン。そこに聞こえるトーチカの金切り声。しかしロックワンが戻って来る様子はない。
「ロックワン、案の定トーチカの指示聞かないみたいですね」
「指示の通りに動いてくれた方が楽だったんですがね」
呆れが混じる雷の声。誠一の言う通り、トーチカの指示通りに動いてくれた方が誘導し易かったに違いない。
だってほら。トーチカちょろいですし?
魔導レーダーを起動し、ディスプレイに目を走らせるクレール。
隠れたロックワンの反応を目を皿のようにして探す。
そしてランも野生の動物霊の力を宿らせ、聴覚を大幅に上昇させ――。
聞こえるのはユニットの機動音。どこかから滴る水の音。
パペットマンの足音と囁くような詠唱……。
戦いを繰り広げる仲間達の声をBGMに、更に集中するラン。
鐘の音は聞こえない。が、微かに聞こえてくる地鳴り。
これはそう。ロックワンが移動する音――!
「僕から10時の方向! 来るよ!」
「めいさんの近く! 構えて!」
「……! 分かりました!」
ランとクレールの声にハルバードと盾を構えるめい。
岩が崩れる音がして、ロックワンがひょこっと顔を出す。
その瞬間を狙って槍を穿つめい。クレールもハルバードを構え、ヤタガラスを駆りグランドワームに迫る。
――仲間のうち2人がロックワンを抑え、残りが攻撃をする段取りだった。
開いた口につっかえ棒宜しく槍を立てれば、口内に直接ライフルがぶち込める……!
グランドワームとて口内はさほど強くないはず。
そんな見立てで動いていたのだが……予想外の事態が起きた。
ばくり。
「ギャアアアアア! 腕! ヤタガラスの腕食われたあああああ!!」
「クレールさん……!」
クレールの悲鳴に青ざめるめい。
ロックワンの口に槍を突っ込んだまでは良かった。
けど腕ごと噛り付くとか聞いてない!!
1つめの誤算が、ロックワンの口は予想より大きく、槍が丸のみできてしまったこと。
そしてもう1つの誤算が……思えば地中をがりごり噛み砕いて進むようなヤツだ。
口の中もそれなりに硬いよ! うわーーーん!!
「口が! 歯がキモイ!! 装甲が剥げるううううう!!」
「む……いけません。このままではクレールさんの腕がもげてしまいますね」
「いえあの。この場合はクレールさんじゃなくてヤタガラスでは……!」
「あはは。雷君面白いねー。今助けるよー」
さらっと物騒なことを言う雷に慌ててツッコむめい。ランも笑いながら龍槍を手にする。
腕を噛まれた黒い魔導アーマーを赤いデュミナスとR7エクスシア、桃色の髪の痩身の男性が救いだそうと躍起になっている。
その光景を努めて冷静に見ていた誠一は、ある事実に気づいた。
――クレールのヤタガラスに食いついている限り、ロックワンは動けないのではないか?
仲間が密集している以上、彼らを巻き込むような攻撃は出来ない。
ヤタガラスの機体ダメージも気になるが、これは大きなチャンスだ……!
「クレールさん! そのままちょっと我慢できますか!?」
「ええっ!? どうするの!?」
「殴ります」
きっぱり。断言した誠一。その顔にはやけに爽やかな笑みが浮かんでいる。
――あ。誠一さんの殺意マシマシですね、これ。
何だか怒らせたらアカン人を怒らせたような気がしますよ!
「皆さん、くれぐれも銃器は使わないでください! ヤタガラスにダメージが行ってしまうので!」
「あはは。見て見てー。この子表面硬いけど頭結構ぶよぶよしてるよ! 刺すより鈍器で殴った方が効くかな!」
「目とか、そういう弱そうなところ狙ってみるというのは……?」
「その辺は各位工夫しましょう。では行きますよ!」
「あああ! もう! こうなったら出来る限りここで食い止めるよ!」
R7エクスシアでマテリアルソードを構える誠一に笑いながら槍でロックワンの顔を突くラン。
盾でぶんなぐる決意をしためいに、雷が巨大なペンチを振り被る。
そして、クレールはどうやら腹を括ったらしく、衝撃に耐えられるようにヤタガラスを安定する姿勢に保ち――。
という訳でみんなー!
ロックワンの頭、タコ殴りチャレンジ! はーじまーるよー!
……その頃。蜜鈴とヴィルマ、ミィナはパペットマンに上手いこと対応して大分数を減らすことに成功していた。
「お前達! よくもあたしのパペットマンを……! ちょっと強いからって調子に乗るんじゃないよ!!」
「おぬしの自慢の泥人形も数が減ってしまったのう? どうじゃ。降参するなら許してやらんこともないがのう」
「何言ってんだい! まだまだこれからだよ!」
「……のう、トーチカ? おんしまだ懲りて居らなんだかえ?」
ふふふと笑うヴィルマの横でパチリと扇を鳴らす蜜鈴。さすがにその音を覚えていたのか、トーチカの目が泳ぐ。
「トーチさん、いい加減にするですの。悪い子はめっ! なのん!」
「おだまり! 悪いことするのが歪虚の仕事なんだよ!」
ミィナに猛然と言い返すトーチカ。彼女のソファーを支えるパペットマンをまじまじと見てヴィルマは首を傾げる。
「それにしてもおぬしの作る泥人形は面白いのう」
「妾もそう思っておったところじゃ。主であるおんしに忠実、且つ多様な使い道が有りよる。泥人形を作ってみたいんじゃが作り方にコツはあるのかえ?」
「ん? んんー。コツっていうか……ただ『出て来い!』って思うと出てくるものなのさ。あたしに与えられた贈り物みたいなもんだね」
「そうかえ。こういった人形は制御する核のようなものを用意するのが一般的じゃがこやつらは違うのじゃな」
「ああ、サイズが大きい子を作る時はそういうのがあった方が生成は早いね。ま、なくても何とかなるけどねえ」
蜜鈴にも褒められ、フフンと笑うトーチカ。つるつると口を滑らせる彼女に、ヴィルマも質問をぶつける。
「ほーぅ。流石じゃのう。それにしてもこれだけの数の泥人形じゃ。隊列を組ませて真っ直ぐ歩かせたりは難しいのじゃろ?」
「やだねえ。あたしを誰だと思ってんのサ。そんなの朝飯前だよ!」
言われるがままにパペットマン達を呼び寄せて、一列に並べてみせるトーチカ。
お行儀よくトコトコと歩き出した彼らに、ヴィルマは容赦なく雷撃をぶつける。
「はい、ごくろうさま。徒労じゃったのぅ……クク……」
「あああ! 何すんのさ! あんたあたしを騙したね!?」
「こんな手に引っかかる方が悪いのじゃ。そなたの部下の……モルッキーじゃったか。アレと先日戦ったが変態じゃったのう。部下が部下ならその上に立つ親玉も親玉じゃな。そなたは……さしずめ露出狂かえ?」
「おだまり小娘! 乳臭いガキが偉そうにいいい!!」
ヴィルマの挑発に地団駄を踏むトーチカ。その瞬間シュッという音と共に過る風の刃。
見ると、今まで静かだったミィナが怒気を発していて……。
「だーーーれーーーがーーー小娘ですのん!」
「誰ってあんたたt……」
「しゃーらっぷ! 黙るですのん! うちの仲間を馬鹿にしたら許さないのん! ピンチの時に助けに来てくれない大きいクマさんだか、びっくりしたクマさんだかと一緒にしないで欲しいのん!」
「はぁ!? あんたこそビックマー様を馬鹿にするんじゃな」
「うるさいのん! だーれーがーチビですのん! ちょっとそこに座るですのん!!」
鋭い風を足元に叩きつけるミィナ。
いやいや。誰もチビなんて言ってませんが……。
「……ふむ、欲しい情報は手に入れた。もう用は無い。ミィナ、ヴィルマよ。好きにして良いぞ?」
「了解ですのん! 懲らしめてやりますのん!!」
「さて、お仕置きタイムと行こうかのう」
パチンと扇を鳴らす蜜鈴。ゴゴゴゴ……と怒りのオーラを発するミィナとフフフフ……と氷のような笑みを浮かべるヴィルマ。
という訳でみんなー!
トーチカのハイパーお仕置きタイム! はーじまーるよー!
「あははは! あはははは!!」
「閉鎖空間での高機動戦闘のはずがとんでもない泥試合ですね……!!」
「あああああ! 揺れるうううううう!!」
何故か爆笑しているランにペンチで手あたり次第にフルボッコする雷。ガコンボコンという殴打音の中にクレールの叫びが響く。
「大丈夫ですか!?」
「厳しかったら言ってくださいね!!」
「大丈夫うううううう!!」
気遣いを見せる誠一とめいに空いている方の手を降って見せる彼女。
仲間達がボコボコとロックワンの頭を叩く度に感じる衝撃。
いくら表面が硬いとはいえ、連続で叩き込まれる衝撃は辛いのか、何度か頭を引っ込めようとするロックワン。
が、その度にヤタガラスと、それを支える仲間達とで綱引きよろしく引っ張り合いになって思うようにいかない。
……ヤタガラスの腕を離せばいいのだが、そこは虫。
低知能ゆえの弊害かそれに気づかないようで……。
再び頭を引っ込めようとするロックワン。幾度目かの引っ張り合いに、ヤタガラスの機体が悲鳴をあげる。
「ごめん! ロックワンの足止め、あと1回が限界! そろそろ腕もげる!!」
「そろそろ勝負賭けにいきますかね……! 誠一さん! めいさん! 口こじ開けます! 後頼みます!」
「よし、行くよ!!」
「了解です!」
「気を付けて下さいね!」
クレールの声に応えるようにロックワンの口に食らいつく雷とラン。誠一とめいも、来るべきその瞬間に備える。
ペンチと槍をグリグリと押し付ける2人。隙間から無理矢理突っ込んで……。
「ぐぬぬぬ! おーーーもーーーいーーーーー!!」
歯を食いしばるラン。生身で巨大なウォームと渡り合っているのだからこの優男なかなか強いです!
雷もペンチをこじ入れるが、口はなかなか開かず……。
そこで彼はぴこーん! と思いついた。
――私の持ってる獲物、ペンチですし。歯の1本でも抜いてやればいいんじゃないですかね。
わあああ! 鬼がいるうううう!!
迷わず実践する雷。残念ながら歯は抜けなかったが痛かったらしい。
ヤタガラスの腕と槍、ランが投げ込んだベルをペッと吐き出した。
「よし! 開きました!」
雷の合図と同時に巻き起こる一陣の風。現れる葉の幻影。周囲が闇に包まれる。
「皆さん今のうちに離脱を! めいさん、お願いします!!」
誠一の支援を受けて一気に離れる仲間達。めいはライフルを構えて……。
「行きまーーーーす!!」
溢れる力の奔流。ライフルから放たれたマテリアル弾がロックワンに直撃する――。
額に弾を食らい、頭を揺らすグランドワーム。
ギ……ギギ……!
「……今のはロックワンの悲鳴、ですかね」
「多分ねー。これで引き下がってくれるといいんだけど」
少し離れた場所で汗を拭う雷に、のんびり答えるラン。
ロックワンは食らった一撃が痛かったのか、頭を擡げると思い切りよく方向転換をして……穴の中に消えて行く。
尻尾をこちらに向けたということはもう戻って来る気は更々ないのだろう。
「ちょっと! ロックワンどこ行くのさ!!」
「さて、ロックワンは逃亡したようですが、あなたは……おっと」
「あははは。トーチカちゃんセクシーだねえ」
残された女歪虚に声をかけようとして慌てて目を反らした誠一。ランにまじまじと見つめられて、トーチカは涙目で身体を隠す。
何でって……ミィナとヴィルマに風の刃つきの正座説教食らって、元々少なかった服の面積がもっと減っていたので。
「嫁入り前の身体を何度も何てことすんのさあああ!!」
「小悪党は、だいたい爆発オチとお仕置きがまっているのじゃよ」
「トーチさんこそ反省するですの!」
「やーいやーい! 正座説教食らってやんの! ばーかばーか!!」
「キイイイイ!!」
「…………」
ヴィルマとミィナ、クレールに煽られて地団駄を踏むトーチカ。
蜜鈴のパチン、という扇の音にビクーーーーーッ! とすると、覚えておいで! と捨て台詞を吐いて慌ててパペットマン達に指示を飛ばし、ソファーごとロックワンが出て行った穴へと消えて行った。
「……いやはや。相変わらずですねえ」
「ほんにのう。さあ、今回はこれにて終いじゃ。戻って風呂じゃ、風呂」
「ギャアアアアア! ヤタガラスの装甲ひしゃげてるううう!! 松明ババア許さないんだからああああ!!」
「むー。もうちょっと背が欲しいのはほんまの事なんよね……。大人っぽくなりたいなぁ……」
その背を見送り、呆れたように呟く雷に頷く蜜鈴。
クレールの怒りの咆哮とミィナの呟きが、地下通路に木霊した。
こうして、ハンター達はロックワンにダメージを与え、トーチカを撃退することに成功した。
その後紆余曲折あったものの、ロックワンバスターも無事に起動し……巨大なグランドワームは光と共に消え去り、辺境ドワーフ達に訪れた未曾有の危機は見事回避されたのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
ロックワン撃退大作戦! クレール・ディンセルフ(ka0586) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/02/23 16:05:34 |
|
![]() |
【質問卓】確認事項 蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009) エルフ|22才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/02/19 16:22:15 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/02/18 23:35:12 |