• 王臨

【王臨】その意、黎明に告げよ

マスター:ムジカ・トラス

シナリオ形態
イベント
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/03/02 22:00
完成日
2017/03/18 20:32

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●古都にて、二人
「や、まさか、君の方から連絡なんて、ね」
「……」
「君で対処できないようなコトが起こったってコトだよね、一体何が――」
「……“あいつ”が、ヘクス・シャルシェレット。お前を呼べ、と」
「ほう」
 生真面目な、そして、気不味げな声にすぐに想起されたのは――大量に蒐集された刻令ゴーレムの核の光景。おそらくそれが、件の人物が名指しで“自分”を呼ぶ理由として間違いないものだろうと予想がついた。問題は、どうやって“彼”がそれを知ったかだが……それもまた、見当がつく。その理由については、“眼前の人物”から報告を受けていたからだ。

 どうやら、ゴーレムたちを狩りすぎたらしい。

 確信するに至り、男は大げさに額に手を当て、天を仰いだ。
「マジかー。君にも非が無くもない……とも言えなくもないけど、これは……ちょっと予想外だな。これだから情緒が未発達なヤツはイヤなんだ……」
 あー、もう、と男は慨嘆して、最後にこう叫んだ。

「そう来たかー!」



 防衛装置は、夢を見ることはない。完全なる停止状態こそが、彼らの眠り。
 これだけの時間の中を――そして多くを眠って過ごした、この塔の防衛装置達。その存在理由は、『彼』が遺したモノを護ることにある。それ以外の機能を、彼らは有していない。
 彼らは、闘うことができる。地上の如何なる生物よりも勇猛果敢かつ、献身的に己の成すべきを果たすことができる。
 けれど。
 伝承の仕組みにエラーが生じることなく、正統たる王が正当なる手順をもってこの場に現れた時――彼らはその時点で、無意味な存在として遺棄される定めだった。
 複雑極まる術理の代償に、彼らはこの塔を護ることしかできない。護るべきものが無くなったとき、彼らの存在理由もまた、消失する。

 それは美しい論理の式にして、明解極まる帰結。
 ボクと似て、まるで違う在り方だ。

「…………」
 果たして、この行為は間違っているのだろうかと自問する。
 かつてエラーの存在をボクに示したマスターは、はたして、何を思っていたのだろうかと自問する。
 永い時を、ただの一つも問いを抱くことなく過ごしていたことがウソのようだと感じられ、同時に、惜しまれた。
 時間だけは、たくさんあったというのに。

 故に、と。ボクは結ぼう。
 故にボクたちは、抗うのだ。出来ることの全てを以って。
 これは否定じゃない。肯定でもない。

 これは――“ボク達”に定められた、試練、なのだから。


●月夜の王国/決戦場
「はー、これはスゴい」
 とくに忍ぶ様子も無く、ハンター達の間で立ちすくんでいたヘクス・シャルシェレット(kz0015)は唸るほか無かった。
 常識はずれの規模で行使されたはず大魔術に対しての、感嘆であった。
 それは――五体の守護者を召喚せしめた魔術“では無い”。

 この、“世界”だ。

 ヘクスには解る。これが、グラズヘイム王国を映し出した光景であることは。
 その場に立って、草花と夜露の香りを感じ、月光の間を揺蕩うように流れる風を感じるに至れば――此の世界の異常性は際立つものだろう。
 あの狭苦しい塔の中に、広がった世界。それでも、幻覚ではないと断言できるほどの大魔術に、ヘクスは心の底から感嘆を抱いていたのだった。

 そうこうしているうちに、風景が不気味に歪んだ。次の瞬間にはそれも消えている、が……。
「っ、と……」
 目算で三百メートルほど、位置が変じていることに気づく。なるほど、たしかに転移門の感覚に近しかったと思いつつ見渡せば、どうやら飛ばされたのはヘクス一人では無いらしい。大量のハンター達もまた、同時にこのあたりに飛ばされたようである。
 ヘクスはなおも見渡す、が……じきに肩を落とした。
「……まあ、こうなるよねぇ」
 案の定、“彼”とも分断されている。そこに込められた意図を思えば、ヘクスとしては、諦めざるを得ない。
「…………そうやって静かに見つめられても、困るんだけどなぁ。それとも、それだけ明るければ鳥目なんて関係ないのかい?」
 言葉を無くしていたハンター達の中で、いやに目立つ声で呟きつつ、遥か頭上を見上げると、古代の人間であれば――あるいは、敬虔なるエクラ教徒であれば、すぐに膝を折っていたであろう光景が、そこにあった。

 夜闇のこの世界に在って、陽光の如く煌々と輝く大鳥の威容。その身が放つ夜天を切り裂く眩き白光は、その威を示すように雄大に羽ばたいている。
 ――あたかも、“それ”が生きていることを示すように。
 ゆらゆらと揺れるたびに、光の名残が虹色に変じていくのを眺めていると、思わぬ所から返事があった。

「このヴィゾフニルは、ゴーレムですから」

 遥か頭上、大鳥――ヴィゾフニルの、傍らに。ひとつ、小さな影があった。判定人を名乗った“彼”。この古の塔に眠る何かの、番人が、浮いている。
「……」
 その容姿は、ヘクスにとって、傑作と言わざるを得ない。
 なにせ、よく似ているのだ。
 真っ白なドレスシャツを引き締める、茶色のベスト。グレンチェックのパンツにキャスケット帽。足元の厳ついブーツ。たしかにまあ、『彼女』はこのような格好はしないだろうが――その、金色の髪と、強い素質を感じさせる、緑色の瞳が、似ていた。

「……やれやれ」
 と嘯きながら、帽子を抑えて身を縮め、ハンター達の中に紛れようとした、その時のことだった。

「ぶっはっ!」

 『王国貴族シャルシェレット家の現当主』であり『王国最大の港町ガンナ・エントラータの領主』であり『第六商会の主』であり『実はハンター経験者』にして『末席とはいえ王位継承権もある』ところのヘクス・シャルシェレットは、如何なる力によってか集団から弾かれて――具体的には蹴り飛ばされて、集団の輪の外で、孤立した。



 『説明しろ!!!』という暗黙の総意を前に、ヘクスは呆気なく屈した。
「や、僕もよく解ってないけどさ」
 タイム、とヴィゾフニルと傍らの『番人』に告げてハンター達に向き直ったヘクスは、鷹揚に手を広げて、告げる。
「どうやら、僕たちは彼らを怒らせてしまったらしい」
 即座に湧いた『僕たち』ではなくて『僕』の間違いだろ、という突っ込みは無視して、ヘクスは続けた。
「具体的には、ゴーレムを狩り過ぎたんだなぁ。『君たち』が」
「「「…………」」」
「で、そのとばっちりを受けて僕が名指しで呼ばれてさ。おかげさまで、この戦場で一番最悪な戦場に叩き込まれたってわけさ!」
「「「…………?」」」
「いや、あの鳥、どうみてもこの戦場で一番強そうだし……あ、これ以上は本気で知らないよ。だから、そうだな」
 言い募るヘクスを前に、
 ――たまたまヘクスの近くにいたから巻き込まれたのでは?
 という疑問が浮かばないでもないが、この際、置いておこう。

 此の場においては――闘う他に、道は無いのだから。

「じゃ、頑張ろう!!」
 男の爽やかな声が、虚しく、響いた。

リプレイ本文


 広漠なる草原に、影が落ちた。軽く弾むような金属音を曳きながら、金髪の貴公子は息を吐く。
「……美しい。これは、かつての王国の光景か」
 クローディオ・シャール(ka0030)は、無感動な瞳に僅かばかりの感嘆を乗せて、呟く。
「いや、そうじゃなくてな……」
「む?」
 怪訝そうな返答に、思わず声をあげてしまったジャック・J・グリーヴ(ka1305)(以下ジャック・Gと記す)は「いや、いい。俺様が悪かった」とため息混じりに片手を上げた。
「ん……?」
 クローディオは、周囲から突き刺さる奇異な眼差しを気に留めることもなかった。恐らくは、平素から浴び続けているがゆえの鈍麻であろうが、ここまでくると凄まじい。
 凛と立つクローディオの傍らには――自転車があった。ママチャリだ。名を、ヴィクトリアという。
「にぁ……」
 その光景には、ジャック・Gの連れであるユグディラ、ミケも引いた表情である。なにせ、この男は、古の塔の攻略に「連れて行かないなどありえない」と、このママチャリに乗り、ときに担いで迷宮踏破に臨んでいたのだ。

 嗚呼。愚かと天才は紙一重と俗にいうが、君にはママチャリの奇行子の名を授けよう。

 さて。
「……やれやれ、爺になっても退屈せん人生じゃのう」
 数々の戦場を渡り歩いたバリトン(ka5112)にしても、神鳥を模したゴーレムとの一戦もさることながら、斯様な光景は初めて目にするものであったか。
 方や、周囲を見渡して――具体的にはヘクス・シャルシェレットの姿を認めた龍華 狼(ka4940)も
「これはまた……なんと言いますか……」
 しかし、これまた何時ものことであるのだが、その内心では、"金の匂いがプンプンするぜ!"と鼻息は荒い。そんな少年を脇目に見つつ、バリトンはさらに、くつくつと笑った。
「こういう戦場は楽しくていいわね」
 ウェーブの掛かった長い髪を風になびかせたマリィア・バルデス(ka5848)は、周囲の光景――戦場、そして多数の仲間たちの存在を見て、快活と嫣然が混じり合った笑み。派手な戦場は嫌いではない。
「……どれだけの難敵であろうとも乗り越えてみせるさ。今までも、これからも、ヒトはそうやって生きてきたのだから」
 楽しげな面々の中で、冷然と告げる鞍馬 真(ka5819)。緩やかな立ち居振る舞いには――しかし、決死の覚悟がある。
 その隣でしゃがみこんだディーナ・フェルミ(ka5843)の表情もまた、真剣そのものだ。少女は相棒であるユグディラの頬を両手で抑えると、
「怪我するまで戦うことなんて望んでないの、いっぱい歌ってみんなを元気にしてくださいなの、命大事になの……いいの?」
 と、厳命していた。ユグディラは元気いっぱいな様子でにゃにゃ、と両手を上げて応じていた。


「……ちっ」
 ウィンス・デイランダール(ka0039)の胸中は、複雑だった。
 ヴィクトリアを連れ込んだクローディオの勇姿に至高の反逆心を感じて滾る一方で、ヘクスの姿は、そんな胸中を凍えさせる。綯い交ぜになった感情とは裏腹に、膨れ上がってくる何かに不吉な予感を覚え――ウィンスはそこから、目を背け、槍を構えた。
 どのみち、すべきことは変わらないのだから。
「……ヘクス様、ですか」
 ヴァルナ=エリゴス(ka2651)の感傷は、ウィンスのそれとは異なる色があった。
("あの方"もこの戦場にいるはず……ですが、ヘクス様の側に付けられるとは)
 いや、と、頭を振る。たしかに、落胆はある。それでも。
「……王国、ひいては世界の未来の為に全力で挑むのは変わりありません。必ず乗り越えてみせます」
 力強く、そう言ったのだった。

「はっはー……ゴーレムの大物、かぁ」
 こりゃ、ヘクスくんGJって言うべきかな? と、鵤(ka3319)が言えば、その時初めて気づいたように、ブラウ(ka4809)が視線をそちらに向ける。
 向けた直後に少女――というにはいささか実年齢は進んでいるが――の額に、不快気な皺が刻まれた。
「……ヘクスさん、生きてたのね」
 言って、ぷい、と目をそむけた。ヘクスよりも、今はゴーレムに集中せねばならない。
「なーんか、失礼な目にあっている気がするぞ……?」
 そんな状況にヘクスが小首を傾げているさまを見て、ジャック・エルギン(ka1522)(以下、ジャック・E)は頬をかきながら、賛同者を求めて視線を彷徨わせた。似たような胸中と見た二人の少女を見つけて、こぼす。
「王国の事情にゃ疎いんだが、アイツ、敵よりヘイト稼いでね……?」
 アイツ、とはヘクスのことである。応じたのは、東方の剣姫、紅薔薇(ka4766)。少女をして思わず、呆れた目つきになってしまうのは致し方ない。
「……まあのぅ。こればかりは、仕方ないというか、なんというか……」
「そうですね……積もり積もった物があるというか、なんというか……」
 紅薔薇と目があった少女――王国の事情にはそれなりに明るい柏木 千春(ka3061)も、似たような表情で苦笑せざるを得なかった。一応VIPではあるのだが、今更どう突っ込めばいいかわからないほどに、前科がある――と、思われる。

 ――気になってきてみたら、まさかの大トリとは……。
 小鳥遊 時雨(ka4921)はフードを目深に被って胸中でそう呟くと、横目にヘクスを見た。理由その一。死なれたらまあ、困る。その二。先日の探索の件もある。
 それに――と、目立たぬように視線を巡らせた、先。

「鳥型ってなんだか苦手なんだよな……」
「いやー、飛ばれてたら手の出しようがないよねー、あはは」
 迷惑げに言う青年、ラジェンドラ(ka6353)の姿があった。
 ――今は、"まだ"。
 時雨がそう心に決めているとは露知らず、ラジェンドラは隣のラン・ヴィンダールヴ(ka0109)と愚痴にも似た言葉を交わし合っていた。尤も、ランのそれは軽妙な、ともすれば軽薄な響きを多分に含んでいたのだが。
 軽妙軽薄、というならば。
「オヤオヤ。今回もまた大変ソウな感じになっちゃったネ……」
 この男も、そうだろう。アルヴィン = オールドリッチ(ka2378)。もとは帝国貴族であるとは思えないほどに軽やかな言葉を笑んだ口元から生み出し、見やる先には、白色の光をまとう巨大な神鳥。
「神の遣いに鳥と言うのは良くあるパターンらしいケレド、さてコレは誰からの遣いにナルのカナ?」
「……起りを考えれば、悪神、邪神のたぐいではなかろうが……」
 応じたのは、杖を構えたヴィルマ・ネーベル(ka2549)。足元でユグディラのトレーネが角笛を抱えてニャ! と頷いた。多分、意味はわかってはいないのだろう。そんな姿にリリティア・オルベール(ka3054)は笑みをこぼしながら、余裕げに、こう嘯いた。
「どのみち、戦う他に道は無いんです。分かりやすくて良いじゃないですか!」
「はは、脳筋だネー……っと」

 リリティアの言葉がはずんだ、その瞬後のことだった。熱風と熱波が、草原を瞬く間に撫でていく。
 それは、幻影たるこの光景に影響を与えることはなかったが――しかし、ハンター達を等しく撫で焼き、引き裂いて過ぎていく。
「……ひー、こりゃキチィな……!」
 全体攻撃かよ、と、トリプルJ(ka6353)は慨嘆。そうこうする間に、状況が動いている。眼前、神鳥が大きく羽ばたきつつある。
「密集していては危険です! まずは横並びに!」
 周囲のハンター達も、"その多くが"リリティアの言葉に続いて、走りだした。唐突に切って落とされた火蓋に対応する先達にならって、トリプルJも続いて走りだした。
「木偶人形風情が小癪な真似を……バラバラにしてやる!」
 その傍らで、柳眉を釣り上げたコーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)の言葉に、トリプルJは「おっかねぇなあ……」と苦笑しながら、とりあえずの安全地帯を求めて走り出したのだった。


 十色 エニア(ka0370)はリリティアの言どおりに、まずは水平方向へと散っていく。
 ――敵は飛んでいる。この戦場、鍵になるのは……。
 遠距離攻撃を担う、自分たちだ、という自負があった。狙撃を始めるマリィアやヘクス。弓を射るジャック・Eや時雨らの間合いは広い。一方で、魔術師である自分――たち、というべきか――が仕事を成すためには、接近を待つ必要が、ある。
「……脱落者は、ださないよ」
「ハッ! 頼りにしてるぜ!」
 その内にマテリアルを高めながら、エニアがいえば、現状はできることがないボルディア・コンフラムス(ka0796)が獰猛に笑い、その背を叩いた。

「ず、あ! するめ、てめぇ、重てぇな……! ぐうう、腰、が……!」
「何してるの……?」
 ユグディラのするめを背に抱えようとした鵤は、想像以上の重さに苦鳴を上げた。呆れたブラウに、「いやー、熱いんじゃないかっておもったんだけど、ねぇ……」と言いながら、手元の外套「玉藻」を眺める。火属性の熱波をうけて、するめを庇おうとしたらしいが――生憎、抱えて動くには至らない。
「……優しいのね」
「そーいうのじゃないんだけどねぇ……」
 尤も、動かずにその場に立っているだけなら問題はないのだが……とりあえず、動向を見極めることにする。

「……王国の危機、ですか」
 王国各地の様子を思い返しながら、レイレリア・リナークシス(ka3872)がぽつりと呟く。思考するのは、神鳥の出方と対応について。北西部で【参謀】と称された少女にとっては……恐らくはその出自も相まって、この戦場にかける思いは、強いものがある。
 大型の敵。想定されるのは、その体に見合う攻撃手段だ。故に、その後の動き方まで踏まえて遠方に自らの位置をとった。

 そして、振り返ったとき、"それ"を目にした。


 全力で、前へ。
 正面から、神鳥へと進んだのは、"ただ一人"だけ、であった。
 黒髪の少女の身には、煌々たるマテリアルが湧き上がっている。
 疾走。跳躍。そしてまた疾走。全力で走るが、それに倍する速度で"敵"は迫る。
 少女――紅薔薇は、草土を蹴り込むようにして、速度を殺した。
 抜刀し、気息を整える。間合い、残り50メートルと少し。
 瞬目一つせずに、ただ、己の刃を振るうことのみを考え、そして。

 斬った。



 巨大な、あまりにも巨大な蒼き薔薇の幻影。それが、僅かに速度を落としながら突撃してきた神鳥を呑み込んだ。その輪郭がぬらり、と濃くなると、その花弁の縁に――斬撃が、生まれる。
「――硬い。じゃが」
 殷殷たる硬い音が、その強度を物語っていたが、手応えはあった。
 紅薔薇は振るった瞬後には納刀を完了。傍ら、向かってくる神鳥におののきながらも、ユグディラのニャー子が演奏準備に入った。
 続く、一閃は、紅薔薇にとって最高の一撃になる。
 しかし。
 その瞬前に、轟音と、壮烈なる衝撃が紅薔薇とニャー子を襲った。
「――っ!」「にゃ、にゃ……ッ!」
 神鳥の眼前に、マテリアルが弾けたと知覚した瞬後のことだった。紅薔薇達を呑み込んで、炎が舞う。乱れた体を無理やり起こしながら、紅薔薇はニャー子を見やる。存命、ではあるが……。
「このままでは、保たぬなぁ……」
 恐らくは、ともどもに。にも関わらず、いっそ清々しげに少女は笑った。刃はまだ、収められたまま。
 ならば、抜ける。抜く。
「――解放」
 自らが神の剣と名付けた至高の一振りを成すために、紅薔薇はマテリアルを弾けさせた。振るうのは、先程と同じ一閃。しかし、その威は、人の身が振るうとは思えぬほどのもの。
 つと、その身に。
 常とは異なる、助力があった。それは、言いつけ通りに、ニャー子が紡ぐ、奏楽。そこに宿ったマテリアルが――否、それだけではない何かが、紅薔薇の身になお一層の力を授ける。

 振り抜いた。同時に、己の足元が不吉な響きを立てるのを感じ――そこで、紅薔薇の意識が断ち切られた。




「……紅薔薇さん!」
 多くのものにとって予想外なことに、誰かの声が、響いた。

 紅薔薇が、落ちた。人の魔術とは大きく異なる、巨大な土壁に打ち上げられた紅薔薇が、力なく降下していくさまを見送るハンター達ではない。
 だが、届かない。間に合わない。
 位置取りの問題もあった。紅薔薇が、初撃を回避できていられれば、あるいは、違った結果もあったかもしれない。前進の理由を、斟酌できるものもいない。
 いや。ただ一人、前進に気づいていたものは居たのだ。
 ――ぐへ、やっぱやべェ敵じゃねェか……。
 と、脅威度を上方修正している狼である。突出する人間には注意していたが、並走するほどの気合もない。命よりも、金。しかし、金が発生しないならば命をとる。
 しかし、それでも――足を止める理由には、ならなかった。なぜなら。
「――奔れ!」
 あるいは目標とも呼ぶべき鬼子の姿を目の当たりにして、確かに憤怒を宿したウィンスの怒号。その向かう先に、高度を落としていく神鳥の姿があった。
 紅薔薇の刃は、たしかに神鳥に届いていたのだ。地上に落ちた神鳥が、どれだけの間そうしてとどまっているかはわからない。長くはないだろう。だが、好機には違いないのだ。
 狙撃と射撃を行うハンター以外のすべてが、同時に疾走を開始した。紅薔薇が作った好機、そして、情報を、活かすために。

 その中で、一人だけ先行するものがいた。

「今行くぞ、紅薔薇」
 りーん、りーん、と。軽快な鈴の音。後方不注意に配慮する、素晴らしき安全運転。
 ――クローディオ・シャール。ママチャリの奇行種、いや、奇行子は、逸る気持ちを顕すように前傾姿勢になり、全力で立ち漕ぎをしていた。覚醒者の筋力で成す全力疾走故に、ハンター達の倍速で進む。

 おお。罪深きは、絶対空気ぶち壊しマシン、ヴィクトリア。
 火精型と風精型の全体範囲攻撃の中でも守られたがゆえの、破壊的疾走であった。


「お前もう降りろよそれェ!」
 後ろから届いた誰かの声。当然、クローディオは自分の事だとは思いもせずに、疾走を続けたのだった。



「……いや、よそう」
 思わずツッコミをいれそうになったジャック・Eは頭を振って混沌から目をそらした。自らの得物の間合いは、長い。側面を取る形で迂回していた甲斐もあって、屹立した石壁も遮蔽にはならない位置取りであった。
 剛力矢を番える。時雨も同様に、遠間からの射撃に専念する構えらしい。一瞬、ラジェンドラがそちらを気にしている素振りを見せたが、すぐさま振り切って走り出した。
 時雨の表情は、ここからはフードに遮られて、伺えなかった。
 ――どうやら色々、込み入ったことがあるらしい。
 ジャック・Eはそう呑み込んで、弓弦を引き絞る。
「この戦場、徹底して射ちきるぜ」
 移動力に劣る現状、安定して打ち続けることが、肝要と定め――射ち放つ。

「アテが外れちゃったわね……」
 うそぶきつつ、狙撃姿勢を取るマリィア・バルデス(ka5848)。墜落地点の神鳥は魔導狙撃銃アルコルの射程なら、十分に届く範囲だった。
 "マリィアの予想通り"に神鳥は前進してきた。だが、こちらから紅薔薇も動いてしまったため、会敵地点が前方へとずれこんでしまった。
 ううむ、と唸る。唸りつつ、射撃した。どうせ、やることは変わらないのだ。
「……読み合いはまだ、続いてるものね」



 落下地点との位置関係から、ハンター達は紅薔薇と同じだけ、走る必要があった。
 数十秒。石壁を迂回した先で、神鳥がギチギチと不気味な音を上げている。
 真っ先に飛び込んだのは、リリティア・オルベール。神雷もかくやという超加速をみせた。先行する手裏剣をたどるように往き、誰よりも早くその場に到達したリリティアは、神斬の銘を持つ刃を振るう。
 翼を断たんと振るった刃は――しかし、弾かれた。手応えはあるが、断ち切るには、至らない。
「……さすが、守護者を謳うだけのことはありますね……っ!」
 となれば、俄然やる気を出すのが、この女だ。斬れぬものを斬らん、とごく自然に欲する。
 時期に、後続の魔術師、機導師の術が届き始めた――瞬後の、ことだった。
 リリティアの右前方。神鳥の顔が、たしかに動いた。無機質な瞳。無機質な動きなのに、強烈な、意思を覚知する。殺気とは、違う。敵意とも違う、それ。
「来ます……っ!」
 声を張りつつ、リリティアは側方へと飛んだ。超加速の名残のおかげで、回避に成功。しかし、右翼を狙うべく向かってきていたハンター達のうち、半数が放たれた火球に巻き込まれる。
「っと、今行くの……っ!」
 しかし、今度は聖導士の面々が、居た。ディーナ、アルヴィン、千春はそれぞれが巻き込まれない程度の位置を取りながら、治療を開始する。
「ごめんなさい、完全に治療は……」
「十分です。ありがとうございます……っ!」
 今後の動向を見据えて、温存せざるを得ない千春の言葉に、ヴァルナは感謝を告げて、踏み込んだ。彼女にはマテリアルヒーリングの用意もあるからだが、それ以上に、これまでの攻撃でこの戦場の行く末が想像できた。
 ――消耗戦に、なりますね……。
 龍槍を構えつつ、確信した。
「こいつァ特別だぜ。ありがたく喰らいな……ッ!」
 その隣、ラジェンドラが三筋の光条を解き放つと、神鳥のそれぞれの部位を焼き穿つ。同時に、ウィンスが同じ間合いで大きく、強く、踏み込んだ。振るうは槍。けして届き得ぬ間合いだが。
「オオ…………ッ!」
 気勢をあげて、刺突を放つ。己が体と、槍に込められた茫漠なマテリアルが爆ぜ、爆進。右翼側から、氷の幻影を伴った刺突がまっすぐに神鳥の体を貫く。
 視線を転じれば、鵤とブラウが喧々諤々と騒ぎ立てている。
「重てぇ……やっぱ無理だわ」
「なっ……失礼ね!」
 超重量装備の二人を抱えて、通常どおりのジェットブーツの効果は望めなかったか。二人はそのまま至近まで至ると、鵤が片手をブラウの持つ刀へと添えた。
「……っし。いっちょ試してみるかねぇ……いけてくれよ……!」
 鵤はそのまま、超重錬成を"ブラウの刃"に施そうとする。ブラウが得物の変化に備えて大地を踏みしめたのも、柄の間。
「ありゃ……?」
 しかし、機導術がうまく合わない。超重錬成は他人の得物には使えないのだ。すぐに対象を己の得物に切り替えて、「しかたねぇ……!」とそのまま攻撃を振るった。
「……人騒がせね」
 お預けをくらったブラウは呟きながら、いまなら"まだ"神鳥に取り付いているものもいない、と次元斬を一太刀浴びせていると、ユキウサギのグリューンが接近しはじめた鵤とブラウそれぞれに雪水晶を施し始めた。このまま機先をとる――と意識したところで、空振り。スキルの装備し忘れに、ここで気がついた。
「あ……」
 ブラウの頬を薄い汗が頬を伝う眼前で、続く猛攻が繰り広げられようとしていた。
「届いた……っと!」
 軽妙な口調で、ランが往った。得物は豪奢なる龍槍。軽やかな口調と足さばきに比して――その一撃の、重さたるや。二連の刺突が、狙いを違うことなく伏せた神鳥の翼の付け根を撃ち抜く。
「うっは、かったいねー、あはは!」
 新しいおもちゃを買い与えられた子供のようなあどけない声で笑うランは、その異常を噛みしめる。
 ああ、楽しい。ウィンスやブラウ、鵤――その他大勢の猛攻を受けても、この形は崩れない!
「……そう、楽しいものかな」
 対して、真は試作型振動刀で翼の先を斬りつけるが、ゴーレムの体であるからか、羽毛などではありはしない。ソウルエッジを纏わせてもなお、通じないのだから、これは頑強を地で行っているだけなのだろう、と判断せざるを得なかった。
「となれば、必要だから硬いのか、となるが……」
 思索する真に続き、筋骨たくましい女が往く。ボルディア。ランと同じく霊闘士の彼女は、パワーファイターを地で行く女傑だ。
「ワリィけどよ、テメェなんぞにかかずらってる暇ァねえんだよ……ッ!」
 轟々たる声を上げながら、大上段から、大斧を打ち付ける。翼の付け根を断ち切らんと振るわれた殲撃は――しかし、硬質な手応えに遮られた。
 その、瞬後のことだった。
 身じろぎする神鳥の体から、瞬く間にマテリアルが膨れ上がる。それは瞬く間に氷嵐になり、接近していた前衛達を等しく呑み込んだ。中衛、後衛は間合い故に無傷。
 この老人も、そうであった。バリトン。大熊の如き巨体の足元で、ユキウサギが命令を待つ中、険しい顔で神鳥の動勢を見極めようとしていた。
「……攻撃ごとの予兆もない、ときたか」
 攻撃動作を四度確認するに至って、バリトンはそう結論付けた。火球、土壁、雷撃に氷嵐。その属性の中で"どれ"を使い分けるかは、現状不明。眼光、纏光、動作、いずれにも共通点は無い。ただ、マテリアルが収束し、弾けた。それだけだ。
 ――いずれも範囲が桁外れ、と来た。厄介に過ぎるのう。
 さて、その威力は、と、近接の間合いに居た面々を見やる。
 回復手段の無い面々のもとに、ディーナや千春らが駆け寄っていく。「オ、そンナ感じだネ!」と、その二人の同行を見て、アルヴィンは手薄な方向へと移動を始めた。この戦場、聖導士らの働きぶりは実に効率的だ。
「っ、痛ァ……っ」
 ふと、小さな人影がバリトンの傍らへと駆け寄ってきた。身を低くした、狼である。
「……ずりぃ……じゃない、ずるいですよ、あれ! 逃げ場、無いとか……っ!」
 突撃した狼が、氷嵐に巻き込まれた傷を癒やすために傍らに撤退してきたのだと知れた。どうやら、回避すべき空間がなかったがゆえの、直撃だったらしい。凍え、強張った体で追撃を受ける愚を避けるための後退だろうが、なかなかに明敏な判断だ。なぜなら。
「……ん、あれー?」
「ち、回復できねェ……!」
 最前線で、なおも攻撃を重ねようとしたランとボルディアは、己の身の異変に気づいたようだった。氷嵐の影響で、霊呪を編むことが困難になったらしく、術が、発動しなかったのだろう。
「外観でも違いは顕れないうえに、近接すればこの対応、か……ふむ。なかなかに性格の悪い創造主と見た」
 さて、と次いでの刃を見舞おうとしたところで、神鳥に動きが生じた。羽ばたきは大きく、ただの一振り。その一振りで、跳躍した直後に揚力を掴み、その身を上空へと持ち上げていた。



「範囲攻撃が来ます! 八方に散開してください!」
 ヒーリングポーションを浴びるように飲み干しながら、リリティアは声を張った。紅薔薇の行動を止められたわけもないが、自責の念は、ある。
 睨みつける先には、距離を取って悠々と飛翔する神鳥の姿。生き物とは違う。殺気も、殺意も、怒気もない存在に、一人、仲間が喰われた。
 しかし、敵は遥か頭上だ。
「――皆さん、お願いします……!」
 祈るでもなく、縋るでもなく、手裏剣を握り込んだリリティアはそう言った。自らが最も頼みとする得物は、飛翔する神鳥には届かないからだ。
 神鳥の狙いが他の一団へと向いたのを見て、リリティアは周囲を眺め見た。

 前衛、後衛含めて八方向へと分散したハンター達。
 しかし、実際にはそこから外れている面々もいた。

 ―・―

 例えば、時雨。
 フードから覗く視線は、矢よりも鋭く、神鳥を射抜く。その方向が転じるのを見て、足を止めた。
 射程限界。狙いは、十二分。
 ――"彼"は、振り切ったかな。
 立ち位置を定めたと同時に、少しだけ、思考が逸れた。"彼女"の血縁である彼から距離をとることになったのは偶然の結果だが、少なからず望むところでもあった。
「…………今は、ここを」
 短く、言葉にする。
 感傷は、後回しだ。前後に大地を踏みしめ、半身になる。引き絞った弓の先を、神鳥からやや上方へと合わせた。
 猟撃士であり、弓を扱う彼女の間合いは長大の一言に尽きる。狙いも精緻。呼吸を止め――合わせた。眇、と、矢が震えるほどの加速を得て奔る。
 矢の行末をたどることなく、素早く矢を番えて、走った。敵は動き続けてる。時雨も動かなければ、攻撃機会すら、得られないから。
 だから、横合いから届いている視線を振り切るようにして、往く。

 ――ひたすらに距離を図りながら弓撃を重ねる彼女は、極めて明快な戦闘原理を示していた。
 距離を取り、ただ、撃つ。結果として、それは図式に嵌った。機動力は神鳥が勝るが――狙うのは、"固まったハンター達"だ。
 意図したことかはさておき、結果として遊兵となった時雨は狙われることなく、ひたすらに射撃を重ねている。同様の立ち位置に、この戦場における超遠距離攻撃が可能なマリィアや、ジャック・E、すこし距離は劣るが、コーネリアらは、遊撃する神鳥に継続的にダメージを重ねている。
「……この構図、あまり良くないかしら」
 マリィアは狙撃を重ねながら、一つ、呟いた。
 今回の陣形は、負荷分散のためのものだ。後衛、とくに魔法職のための。
 ある意味で、それは正しい。広範囲、高火力、高機動を誇る神鳥に対して、守勢を意識することの是非は問うまでもない。
 なにせ、敵の方から向かってくるのだ。攻撃機会はいずれ、巡る。
「"私達"には関係ないけど、でも……」
 呟くマリィアの背を、冷や汗が落ちていく。
 この戦場を読み解こうとすればするほどに、この流れの先が、分かってしまう。

 盲点だ。接敵機会に"限り"攻撃が可能である、ということ。その意味を、失念していた。
 散った上で包囲するにも、機動力の差が枷となる。なにせ、中央に餌があるでもないから、敵はそこには集まらない。
 さらには、彼らの"射程"は決して長くはないのだ。特に、強力な魔法ほどその射程は短い。
 結果として、攻撃の要たる、魔法職の安全と引き換えに――神鳥に時間を与えることとなった。

 その負荷は、治療を担う聖導士達に、重くのしかかることとなった。



「ヤァ、弓を射る暇もナイとハ……!」
 せっかく弓を持参したというのに、アルヴィンは攻撃に回る機会が乏し。慌ただしく動き回っているうちに、火精、風精それぞれの攻撃は止んでいたが、神鳥の攻撃はいただけない。広範囲に高火力。まとまったダメージを食らう面々の多さに、彼にかぎらず、聖導士は走り回る羽目になっていた。なにせ、足の速さが違うのだ。

 遠景で、神鳥が炎球を放つと、ヴィルマたちの一団が爆炎に飲まれている。
「派手にしてクレるヨネ、ホント……ッ!」
 危機的状況ではないのだろう。だが、誰かが治療に回らねば、神鳥の気が変わったとき――誰かが落ちてしまう。当然、聖導士達も分散しているが、それぞれの持参したスキルに向き、不向きがある。現地にはキコキコとママチャリを漕ぐクローディオが向かっているが、彼は単体治療が主だ。回数にも、限りがある。
 しかし、範囲治療にも難がある。八方、つまり、2ないし3人の集団が散在する現状は、渋い。
 神鳥の攻撃回数が増えることに対して、この陣での対応は――下策ではないのだが――それぞれの射程が、有機的ではない。誰かが狙われた代わりに、誰かが攻撃できるような布陣には、なっていなかった。
 このままでは、消耗戦の末、押し切られる。後衛戦力の崩壊は、戦線の崩壊と同じだ。
 となると、アルヴィンとしても計算せざるを得ない。

 救うべきか、救わざるか。

「私達は、もう十分ですから……」
「ンー……」
 表情とは裏腹に、アルヴィンの胸の裡が冷え込んでいっていることなど露知らず、小柄な少女、レイレリアが言う。
 戦場の、そして聖導士の事情は、理解できているのだろう。それでもそう言う辺り、彼女は――真っ直ぐだ。そう思う。
 ――ケド、なぁ……。
 軽装、そして、持ち込んだ魔術の射程ゆえに、一撃を受けなければ攻撃ができない彼女の傷は、特に重い。だからこそ彼女は、アルヴィンの相棒であるユグディラの治療もついでに受けなければいけない状況なのだ。一方で、アルヴィンとしては、"彼女"を落とすわけには行かない、という計算もある。

「ヨーシ!」
 一瞬の判断で、アルヴィンはフルリカバリーの法術を紡いだ。マテリアルを豊富に含んだ治癒の術が、少女の傷をたちまち癒やす。
「悪いケド、急くネ!」
「はい……お気をつけて!」
 虎の子の法術だが、今は時間を優先した。振り切って走りだすと、その後ろを一緒に走るユグディラが外套をなびかせながら並走。したたたたっ、と軽妙な足音に、アルヴィンは――おそらくは、偽りなく――笑みをこぼす。
「フフ、猫の手モ借りタイ、というノハ、コンナ感じなんだネ」
「にゃっ!」



「こちらに来ます!」
「…………っ」
 ヴァルナの声が響き、ラジェンドラは視線を振り切った。
 "少女"の機動は見事なものだった。危険があるようなら"彼女"を守るために動くつもりだったが、足を動かし続ける彼女との距離は、あまりに遠い。
 八方の一角、そこには、ラジェンドラの他に、エニアとヴァルナがいる。
「エニアさん、ラジェンドラさん……少し、離れてください」
 魔術師であるエニアを護衛するべく、神鳥との間に立ちはだかるヴァルナは、やや距離をとったうえでソウルトーチを発動。敵を誘引し、死守すべき対象――エニアと、ラジェンドラを守るつもりだろう。
「……ありがとう」
 意図を組んで、これまでに見た攻撃方法を踏まえて、10メートルほどの距離を取ったエニアにても、ただ守られるだけ、というのは釈然としない。だからこそ、敵がこちらに向かうと明らかになった段で、マテリアルを編み始めた。
 『Сбор феи』と名付けられた絶技をもって、己の魔術に没入していく。
 エニアの身から溢れ、光燐となったマテリアルがエニアの周囲に漂い始める。美しき紋様にそって妖精たちが舞い、揺れ、跳ねるような光景に、彼自身は気づくことはない。
「――――」
 呟く、というよりも、こぼれた言葉。それに乗せて、エニアの魔術の構成がより強固になっていく。
 それは、直に訪れた。射程限界に、神鳥が掛かった瞬間。その進行方向に重ねるように、魔術を発動。碧々としたマテリアルが、神鳥を中心に爆ぜた。瞬後には、氷雪が吹き荒び、神鳥を飲み込む。エニアに可能な、最大限の一撃は――。
「……え?」
 望外の手応えとともに、結果が刻まれた。

 ――――――――ッ!

 神鳥は、鳴かなかった。しかし、それが内包する茫漠なマテリアルが、確かに、乱れた。
「……効いてる……?」
 怪訝ですらある表情を浮かべたエニアの眼前で、神鳥が姿勢を整えた。形なき"意思"がエニアを貫いた、という錯覚。
 それは同時に、ソウルトーチには影響を受けない、という結果でもあった。あるいは、それを推してなお、エニアを"選んだ"という。
「…………させるか、よ!」
 ラジェンドラが、デルタレイを編む。射程限界、距離40程で放たれた機導術は、彼の火力で放たれればそれだけで十分な火力となる。三条の光が、曲線を描きながら神鳥を貫いた、瞬後のことだった。
 降下。降下。降下。最接近してきた神鳥が、エニアの眼前に迫る。
「させません……っ!」
 その間に、槍と鎧で受けようとするヴァルナの背中が、割って入った。
「ち、ぃ……ッ! 気をつけろ!」
 ラジェンドラの声も、虚しく。降下した神鳥を中心に、氷嵐が吹き荒れた。ヴァルナも、ラジェンドラも――エニアすらも、巻き込んで。



「大丈夫ですか……!」
「悪ぃな、嬢ちゃん! 二人とも、傷が重い!」
 そこに、千春が駆けつけた。
 そのままの勢いで、神鳥は浮上して別な一団へと向かっていく様を目視で確認。神鳥の行く末は、すでに別の一団――ウィンスとジャック・Gに固定されていた。
 治療に専念できる。そう判断して、走って駆けつけたその"瞬後”に、法術を紡ぎあげた。
 ヴァルナは近接時の負傷を引きずっているがゆえのもの。対して、エニアは当たりどころが悪かったか、一撃で余力を持っていかれたか。
「もう少しだけ、頑張ってください……っ!」
 そのまま、自らの裡から引き出された多大なるマテリアルで、まず、エニアを治療することにする。
 瞬く間に傷が癒えて行く中で、身体の自由を取り戻したエニアは、すぐさま、トランシーバーに手を伸ばした。
「……属性、が」
「え……?」
 傷が、痛むのだろう。苦しげな声のまま、エニアは無線に、声を乗せた。
「ヴィルマさん、達を、火炎で攻撃した、あとで……私の魔術が、効いていた」
 推測に過ぎない。けれど、あの時神鳥は、たしかにエニアに反応した。火力に勝るはずのラジェンドラよりも、エニアを狙ったのだ。
 そこに理由があるとすれば。
 恐らくは、偶然に過ぎないそれを。攻撃のめぐり合わせが、この結果を産んだだけである、それを。
「あの鳥、属性が、変わってる。おそらく、自らが攻撃した属性に……」
 エニアは、叩き込むように、そう言った。

 それと、同時のことだった。
 ウィンスとジャック・Gぎゃあぎゃあと騒ぎ立てながら散開する中、その二人を穿つように位置を整えた神鳥が、雷撃で追撃したのは。

 そして。
 ――その瞬後に走った銃弾が、神鳥を、撃ち落とした。



 無線から届いた、属性、という言葉を聞いて、コーネリア・ミラ・スペンサーの内心は、はたして、どのようなものだっただろうか。
 短く、手元の銃を眺めたコーネリアは、神鳥の同行を見守った。エニア達を襲った瞬間の攻撃は、氷嵐であった。
 今ではない。故に、コーネリアは銃を構えたまま、己が身体のマテリアルを収束させ、銃へと込める。
 まだだ。
 まだ。

「来やがった! クソチビはあっちだ! ミケ、テメェはあのクソチビには近寄るなよ! 巻き込まれんぞ!」
「……あァァァン!? パツキンクソ野郎、てめェの大層な銃は飾りかよ! 撃ち落とせ! それとも何か、こんなしなびた塔までわざわざ遊びに来たンですかアァァ!?」
「ハァァァ?! "上等だ”! 俺様がやってやろうじゃねぇか!」
「……おい、それはわざとやっているのか? あ?」

 ……まだだ。
 コーネリアの内奥は揺れない。ぶれない。ただ、神鳥の出方を待つ。

「「ぐあああああっ」」「にあぁぁぁんっ!」

 神鳥が放った雷撃に飲まれた二人と一匹から、同時に悲鳴が上がった。
 その悲鳴に、重ねるように、引き金を引く。

「空を飛べば偉くなれると思い上がるなよ、雑種が。翼をもがれたイカロスは地に落ちるまでだ」
 此度持参した銃は、火属性のもの。マテリアルを十二分に叩き込んだ上で放たれた銃弾は――これまでの交戦で深く傷ついていたであろう神鳥の飛翔を、断ち切った。



「「う、うおおおおおお……ッ!」」「にゃああああ!」
 同時に被弾したウィンスとジャック、ユグディラのミケのもとに、神鳥が墜落してくる。速度の乗っていたところに、これだ。
 二人して別方向へと飛び退いて急降下してきた神鳥を避けると、ウィンス、ジャック・Gは共に距離を取った。得物の都合と、神鳥の攻撃手段を意識してのこと、である。

「おお…………ッ!」
 ウィンスは反転した勢いを履き古したブーツで強引に踏み殺す。そのまま、上段に構えた槍を――貫き、徹した。笹穂の穂先から、青白いマテリアルの放射が伸び、氷結音を奏でながら、神鳥を穿つ。
 ウィンスの反対側に逃れ、ウィンスと同時に反転していたジャックは銃撃を重ねながら、機を図る。
「……ミケ、反対側に回って、俺様が合図したら歌え!」
「にゃーん!」
 ジャック・Gの言葉に従い、ハンドベルを紗蘭と鳴らしたミケはとたたたっ、と神鳥に対して大回りをして走っていく。

 駆け寄ってきているハンター達へと、向かうように。



 八方に散った構えには、意味はあった。墜落した神鳥への――あるいは、殺到というべきそれ。
 対極に位置するものにとっては遠くなるが、超遠距離攻撃をし続けることを採択したハンター以外が、全力で駆け寄る姿。

 大量の魔法。機導術。矢に弾丸。次元を断つ斬撃。そして――リリティア・オルベール。人理を超えた加速で五〇余メートルを急接近した彼女は、息を荒げることもなく、何喰わぬ顔で至近の間合いで攻撃を重ねている。

 そして、彼女も、そうだった。いつ、どこで神鳥が落ちてもいいように待機していた――ディーナ・フェルミと、その相棒であるユグディラ。ハンター達が集いはじめたところに先に待機していた、少女は足元を見た。
「歌えそう?」
「にゃ!」
 ちら、と、傍らのユグディラを見下ろすと、ユグディラは請け負うように大きく頷いた。そのまま、大きく息を吸うと、器用に旋律を奏で始めた。
 森の午睡の前奏曲。ユグディラ達に伝わる、術理のひとつ。
 回復量は多くなくても、最大で十名を超える数を"継続して、治療ができる"。
 それを使うのならば。使うべきは、いつか。

 果たして、ディーナの目論見は、当たった。

 ―――――♪

 前線へと突出してきた前衛達のすべてを包み込む形で、ユグディラの歌が紡がれる。続いて、ディーナも法術を巡らせる。
 じきに、神鳥の攻撃が来る。それは、わかっていた。だから、傷が重いものを優先して、治療にあたる。範囲治療は、その後でいい。
「もう少しなの。頑張るの……っ!」
 そのまま次は、範囲治療へと移る。見れば、後方では後衛術者達の間を、クローディオとアルヴィン、千春が治療して回っている。攻撃に対応できるように、そして、概して脆い彼らを最優先に、治療できるようにだろう。
「…………謳うの!」
「ニャ……ッ!」
 ディーナの声に、ユグディラが応じた――その、直後のことだった。攻撃に奔る前衛達の隙間を縫うように、もう一つ、旋律が紡がれた。
「にゃーーーん!」
 ジャック・Gが連れてきたユグディラ、ミケが、練習曲を紡ぎ始めた。それは、紅薔薇のときと同様の――さらに大きな、波及。
 最接近していたラン、ボルディア、リリティア、ヴァルナ、鵤、狼、真、トリプルJ――これだけの面々が、その旋律に力を得て――往く!
「ら、ァァァ……ッ!」
 旋律が交じり合う中、狼の、少年らしい真っ直ぐな気迫が響く。ボルディアの咆哮が響く。トリプルJとヴァルナ、ランの槍が気勢と共に奔り、リリティアの神斬が、唸った。
「……ここで……!」
 その、"やや後方"、中衛に似た位置に立つのは、レイレリアとラジェンドラ。火炎の魔術を解き放つ――と、たしかに、一撃あたりの感覚が、確かに違うと実感する。同時、ラジェンドラは離れた位置から、高密度の光を指輪の先に紡ぎ上げると、
「今回は全力仕様だ、たっぷり受け取りな」
 といって、解き放った。

 更に後衛から、ヴィルマやジャック、コーネリアらに、復帰したエニア達の攻撃が重なっていく――が。
「来ます!」
 神鳥の頭部に、動きを見た千春が警句と共に、前進した。神鳥の攻撃は、放たれる瞬間まで読めない。いざとなれば――守れるように、と。反射的に駆けていた。
 結果的に、神鳥が紡いだのは氷嵐の術理だった。轟々たるホワイトアウト。神鳥を中心に、前衛達の姿が掻き消える。
「水、となれば……!」
 レイレリアの声が響く。エニアが掴んだ情報をもとに判断すれば、次、放つべきは。

「……皆の者、離れるのじゃ!」
 ヴィルマが声を張ると同時に、一つ、前へ進む。解き放つは紫光。神鳥の全長を覆うには至らないが、それでも、その体躯の中心を捉えたそれは――僅かな間に収束し、神鳥に超重力と超荷重を加えた。グラビティフォールと神鳥のマテリアルがそれぞれに干渉し――前者が、それを押し切った。神鳥のヨリシロ――"駆体"から、ひび割れた異音が響き、溢れた。
 だが。
 神鳥の牙は、折れてはいなかった。

 ――――――――――――――――ッ!

 神鳥は、機械の身体ゆえにか、鳴くことはなかった。
 ただ、その身体から弾けたマテリアルが――ヴィルマと、その間に居る面々を、薙ぎ払う。



「……雷撃でした! 火炎をっ!」
 走り抜けていった光爆を、雷撃と判断したレイレリアは、言いながら、蒼炎を手の上に浮かべると、真っ直ぐに、神鳥へと走らせる。蒼き炎の矢は、神鳥に命中した瞬間、薔薇の花弁の形を模して散った。
「……間違い、ないですね」
 やはり、最適打。手応えに、そう感じていると――今度は、神鳥がレイレリアを狙う気配を、感じた。
「……っ」
 注意を引く意図があったわけではない。ただ、有効火力を発揮しようとしただけだ。
 問題があったとしたら、ただ、一つ。レイレリアは、『距離が、近すぎた』。前衛にも――当然、神鳥にも。魔術師としてもなお、用意した魔術の射程が、短かった。
 状況を理解したレイレリアの双眸に、決意が宿る。

「だめ……っ!」
 同じ立場なら、恐らく、同じ決断をしただろう。
 レイレリアの心情に、だれよりも理解が早く追いついたのは、千春であった。
 故に、千春は反射的に動いていた。けれど。
「……っ!」
 千春と同じ決断をしたからこそ、レイレリアは、後方へ――千春からも、前衛からも離れる方向へと、飛んでいた。その小さな身体が、神鳥が繰り出した火炎球に呑まれて、爆風に煽られるようにして、遥か遠方へと弾き飛ばされていった。



「無事か!」
 雷撃に呑まれ、身をすくめていたヴィルマは、老人の声で我に返った。
「……これ、は……どういうことじゃ?」
 確かに、命中したはずだった。だが、"そうはならなかった"としか思えないほどに、ヴィルマの身体は五体満足を保っている。
 全くの、無傷であった。治療
「……っ! お、おぬし……!」
 だが、その足元に、もう一人――いや、一匹が、居た。体長六〇cmほどの矮躯が、その身体は轟雷に貫かれ、膝をついている。しかし、ピクリとも動かない。
「嘘、じゃ」
 ユキウサギだ、と気づいたヴィルマは、思わず、そう呟いた。胸を過るのは、かつての光景。庇われたのだ。こんな、小さな幻獣に。
「わしの命令じゃ。気にするな」
「…………っ」
 その背を、低く張りのある声が叩いた。渋みのある声だが、どこか、温かい。
 バリトンの、声だった。見上げれば、老人の眼が言葉よりも雄弁に語っていた。
 なぜなら老人は、"仕事"を果たしたユキウサギを誇らしげに見つめているのだから。
「この戦場を勝つために必要だったからのう。こやつもそれを分かっておった」
「…………っ」
 杖を支えに、立ち上がる。「それでこそ、じゃ」という声を振り切るように、ヴィルマはユキウサギの背に手を当てた。引きずり出された感情には、痛みと昏さが同居している。それでも、少女は出来るだけの感謝を籠めて、こう言った。
「……ありがとう、のう」



「飛ぶぞ!」
 だれかの声が響いた。遠方から射撃を重ねながら、ジャック・Eは次の矢を番えながら、吐き捨てた。
「チクショウ、誰か帝国からグリフォン連れてこいっての!」
 それがあれば今の戦場はもっと楽だったろうに! というジャックに、たまたま近くで射撃を重ねていた時雨は小首を傾げつつ、ぽつりと、呟いた。
「……ここまで入れなかったんじゃないかな?」
「あー……」
 と、ジャックが冷や汗を流した、その時。
 前線で、動きがあった。

 飛ぶ、という気配を察したとき、二人はいずれも、神鳥から距離を取っていた。機を図ってもいたのもあるが、ヴィルマの魔術があったからこそ、確実に一手を残すこともできた。
「……お、飛ぶかな?」
「おっしゃァ……!」
 ランとボルディア。共に、祖霊の力を喚起する。現出させたのは巨大な、幻影の腕。二人は同時にその腕を神鳥へと向けた。気配を察知した神鳥が浮上の速度を高める。
 しかし。
「逃さねェよ……!」
 気迫、一発。
「オオオォォオラアアアア……ッ!」
 ボルディアは両足で踏ん張る中、空いた手で龍槍を大地につきたてたランも深く、構えた。
 届く――その、瞬前で、神鳥がボルディアの放った幻影の腕を羽ばたき、回避しようと機動。そこに。
「あはは、つーかまーえたっ!」
 ランの霊呪が、待ち構えていた。マテリアルで構成された腕が神鳥を掴む。と、浮上しかかっていた神鳥が、停滞。しかし――墜落は、しない。
「っ、重い、ね、これ……っ!」
 更には、今もその腕から逃れようと足掻いているらしく、ランの額に滝のように汗が浮かぶ。楽しげな表情とは裏腹に、身体が軋み、筋繊維が裂けていく感触が皮膚を撫でる。馬鹿げた出力で、"浮こう”としているのだろう。
 抵抗する神鳥の眼前から、ランたちへと向けて火球が落ちるが、炎に飲まれたランはさらに霊呪を発動し、その身体を癒し始める。
「根比べ……は、あんまり、好きじゃ、ないんだけど、なぁ……っ!」
 ランは呻くが、停滞した神鳥に殺到する攻撃を目にすれば、幻影の手を解く気持ちのほうが失せていく。やれ。やってしまえ。
 ――できれば、できるだけはやく終わらせてほしいなー……っ!
「……飛ぶのに、翼は要らねえってことかよ……だがなァ!」
 傍ら、ファントムハンドを更に紡ぎ始めたボルディアが気勢を籠めながら、叫んだ。
「俺たちゃ此処で足を止めるわけには行かねェんだ……!」
 二本の腕に絡め取られた神鳥が、降下し始めた。そのまま、引きずり落とす――!


●"彼"の視点
 挑戦者の中には、ボクも知る面々がいた。
 ボクが記憶をみた、エリオット・ヴァレンタイン(kz0025)が知るハンターたち……だけではない。
 "ボク"自身が出会った彼らも、居る。

 ヴィゾフニルの攻撃の間合いの外から壮烈な攻撃を重ねるウィンス・デイランダール。
 刀を振るうたびにヴィゾフニルの全身を不可視の刃で切り裂く、ブラウ。
 魔術師――だろうか。彼らの間に立ち、その身を盾にするヴァルナ=エリゴス。
 各地を奔走し、治療に専念する、柏木 千春。
 あの場で出会い、エリオットを通じて名前を知った、彼らが、居る。
 それは、エリオットの記憶で知る誰よりも――気になる理由が、処理できない。
 彼らの姿を、追ってしまう。

 彼らに限らず、ヴィゾフニルと戦う26人と7匹の戦闘光景が――ボクの中で、処理しきれないエラーになる。 
 一人を除いて、真剣そのもので、必死だ。

 ……彼女は、システィーナ・グラハム(kz0020)は、王ではないというのに。
 彼らは、ただしく臣民でもないというのに。

「………………」
 強大なマテリアルによって構成された腕に地面に引き釣り落とされようとしているヴィゾフニルを、見下ろす。
 "彼ら"ゴーレムは、茫漠な条件式のもとに自律する存在たちだ。
 オートマトン。その存在意義すらも、失われようとしていた、人形たちだ。

「……ヴィゾルニフ」
 気づけば、彼の名を呼んでいた。
「ノーム、サラマンダー、シルフ、ウンディーネ」
 この場を守る、その他の者たちの名を、呼んでいた。

「……君たちは、喜んでいるかな」
 わからない。なんで、こんなことを考えているのか。
 彼らが、この問いに答えるための条件式を、持たないというのに。

 見下ろした先。拮抗していたヴィゾフニルが、降下しはじめた。
 二本目の腕に絡め取られたから、だろうか。

 ああ、と息をつく。

「…………喜んでいるんだろうな」
 爆発的な加速を得るヴィゾフニルの姿に、そんな推測をした。



 中空に停止していた神鳥であったが、ランとボルディアの霊呪に押され、降下し始めた。
「…………もう、少し……っ!」
 ――全身からマテリアルを迸らせる二人の意識は、その直後に絶たれることとなる。
 軋むような、緩やかな降下が反転し、超加速した。飛翔の時と同じ速度で、真っ直ぐに――巨体を用いて、ボルディアとランに迫る。
 交錯まで、身動きを取ることすらもできなかった。
 意識を手放す瞬前に目にした光景は、二人のもとに迫る、二本の足。その先端にある、鋭利で強大な――爪。
 近接勢が待つ地点への降下は、多大なるリスクにほかならない。それでも、リスクを推すと"判断"されたのだろう。突撃した神鳥は、その双爪でボルディアとラン、二人ともどもに串刺しにして、幻影の大地に穿孔をうがった。
「……っ! 死なせないの!」
「わー、こりゃまた……。ボクらも行くヨ!」
「お願いします!」
 絶命に至りかねない一撃。それを救ったのは、至近距離で前衛達の治療にあたっていたディーナだ。一大事とみて、アルヴィンも駆け寄ってくる。
 千春は、レイレリアたちの治療に専念しているため動けない。

「その足を離せ……っ!」
 その他の面々が神鳥へと攻撃を重ねるなか、ソウルエッジを発動した真が、身を低くして疾走り、ヴィゾフニルの足もとへと斬りかかる。鈍く響く異音と共に剣撃が弾かれるが、真は被弾を覚悟してその場に残った。二人が空中へと連れ去られたら、絶命に至ることは想像に難くない。ゆえにこそ、彼は往った。
 果たして――。
 真が固唾を飲んで見守る中、神鳥は飛翔した。
「……確保!」
 すぐに、横たわった二人のもとに走り寄った真は、二人を向かってくるディーナとアルヴィンのもとへと連れて行くべく担ぎ上げる。その鼓動と荒い息遣いを感じ、真は安堵を得た。
 その機動の足かせになるからか、はたまた、命を奪うことまではプログラムされていないのか。
 兎に角、息はある。ならば、救える。だから、真は一刻も早く彼らを治療させるべく、二人を担ぎ走った。



 神鳥は再び、舞い上がった。
「……流石に、そろそろ飽きてきたわよ……!」
 不満げなマリィアの声は、言葉通りの意味ではないのだろう。動向を読む限りにおいて、決して安楽な流れでは、ない。
 そんな声を聞きつつ、足を動かす千春は悠々と空を舞う神鳥を見上げるしかなかった。
 しかし、見続けることは思考停止にほかならない。振り切って、戦場を見渡す。
 誰も彼もが、満身創痍だ。しかし、千春含めた聖導士の面々の必死の治療と、バリトンが連れてきたユキウサギの献身もあり、後衛火力は未だなお保たれている。
 まだ、チャンスは巡り得る。だから、諦めるわけにはいかない。
 しかし。
「……すまない。私はもう……」
「気にすんな、ソレだけ働いたってことじゃねェか!」
 クローディオがスキルを使い尽くし、悄然としている。彼にはもはやヴィクトリアしか残っていない。弓を引くジャック・Gが慰めているが、千春にはクローディオの気持ちが、わかる。
 彼女自身も、もはや余力は無い。治療ができるのも、あと、2度を残すばかり。その間に、削り切れるのか。無機質なゴーレムは、硬質な本体により核の所在も明らかではない。
「…………」
 けれど、これが最適手だと信じたのだ。怯懦しそうになる心を、強引に締め付ける。それは、後でいい。
 今は――前を。
 ヴィゾフニルが反転し、八方に散った仲間の一角へと食らいつかんとする姿を確認して、歩を進めた。



 攻撃姿勢に入っていた神鳥が、不意に体制を崩した。そのまま、通り過ぎていく。
「た、たすかった……! いいじゃん、グリューンくぅん!」
「…………なら、スルメさんにお願いしてくれるかしら。私もそろそろ治療してほしいわ」
「や、それはそれ、これはこれでぇ……」
「…………そう」
 通り過ぎた理由は、ユキウサギのグリューンが貼った紅水晶だ。射線が途切れ、攻撃対象である自分たちを見失ったのだろう、と知る。
「とりあえず、今のうちに……っと!」
 これ幸いと、交錯のさなかにブラウは次元斬を振るい、鵤はアイシクルコフィンを放った――が、これが良くなかった。
 壮烈な火力によって、たちまち存在が露見する。射線が遮られようが、"そこにいる"と分かれば、攻撃の使用もあるのだ。神鳥には、そのための攻撃手段も、あるのだから。
「お?」
「何よ」
「……やっべ、こっち向いてない?」
「あら……」
 その直後、二人と二匹は足元から湧き上がった巨大土壁に打ち上げられることになった。



「きゃあ……っっ!」「うわああああ……っ!」「ニャアアアアア……っ!」「―――――ッ!」

「あそこの旦那らは何やってんだ……」
 打ち上げられた彼らを遠景に眺めたラジェンドラは慨嘆を零した。その傍ら、エニアはマテリアルを集中している。
 神鳥が、向かってきているからだ。
 タイミングは掴んだ。エニアは再び、『ズボールフィー』からの氷嵐を解き放つ。
「これ以上、やらせはしない……」
 今回は、属性をあわせることができなかったが、攻撃機会を無視できなかった。しかし、これで『ズボールフィー』も『ブリザード』も打ち止めだ。
 射程の差から、先手はエニアが取れる。しかし、その直後に攻撃が来るのは致し方ない。必要経費、ですらある。
 だから、エニアはこう言った。
「…………ヴァルナさん、もういいよ」
「え……?」
「君がいたら、巻き込まれるだけだ。今は、力を温存していて」
「そうだな……嬢ちゃんはそこにいな」
 機導術を放った直後のラジェンドラが頷きながら、左方へと移動を開始。エニアも同様に、ヴァルナから離れるように移動していた。
「……っ」
 二人が意図するところがわかり、ヴァルナは息を飲んだ。この戦場では、ヴァルナがどれだけ守ろうとしても、それを成すことが、できない。神鳥の攻撃は、広大な範囲に渡る。彼女が身を晒したところで、それは的を増やすだけの行為でしかない。
 だから、二人は散った。せめて、ヴァルナを巻き込まないように。二人のどちらかだけが、攻撃を受けるように。
「………………なんて、重い」
 自らの寄辺にも近しいところを、削ぎ落とされた心地だった。ヴァルナは、天空より至る神鳥を睨みつけた。憎悪一片だけで、この身を狙ってくれればと。

 ――衝撃は、いつまでたっても襲ってこなかった。
 ただ、攻撃の余波だけが、振動となって微かにその身を揺らした。



 次いで狙われたのは――自称霧の魔女、ヴィルマ・ネーベル。
 覚悟は、できていた。八方に散る際に、神鳥から最も遠方に移動してはみたが、結果はこうなった。
「……ふぅ」
 息を整える。回顧されるのは、ランとボルディアを屠った一撃。身を呈してかばった、ユキウサギの姿。
 頼みの綱として用意したカウンターマジックは、射程が足りずに発動すらできなかった。その結果が、あのユキウサギだと思うと、無念が募る。
「………………せめて、一撃はいれてくれよう」
 火炎の魔術を紡ぐ。一撃を浴びようとも、せめて、と。

 痛みの予感。一撃への不安に、緊張が高まる。
 荒くなる呼吸を気合で落ち着けるが――じきに、神鳥の姿しか見えなくなる。
 魔術を、解き放った。それと同時に、神鳥が超加速。火球を食い破って、巨体がヴィルマのもとへと爆進してきた。

「…………っ!」
 死を、覚悟した。ああ、嫌だ。嫌だ。本当に、嫌だ。死にたくない。
 それでも、一撃は入れた。あとは、他のものが沈めてくれれば……。
 後悔と安堵が滲んだ一瞬の後、衝撃が、ヴィルマの身を叩いた。




 それは、存外に、軽く。
 しかし――想定より早い、衝撃だった。
 だからこそ、ヴィルマは。
「………………っ!」
 瞠目するほか、なかった。神鳥が突撃した先。瞬前までヴィルマが立っていたそこに、真が立っている。ヴィルマを押しのけた代わりに、神鳥の往く機動上に身を晒すこととなった青年が。
 その姿が巨体に覆いかぶされ、ヴィルマの視界から消えた。
「ぐ、っ……!」
 悲鳴が、血反吐を吐いた吐瀉音が、耳朶を打つ。だが、それだけでは終わらなかった。

「気に、する、な……や、れ……」

 血にむせこみながら、湿った声で、真は言った。それは、囁きのような声量でしかなかったけれども――たしかに、ひとときの静寂のうちに、響いた。



「うお、おおおおお……ッ!」
 それを見て、一人の男が往った。両手を高く振り上げ、短距離走者の如く。
 トリプルJだ。
「受け取ったぜえええええええ……ッ!!!」
 否。走り寄っているのは、彼に限った話ではない。だが、彼は他の誰とも違った。
「男は! 度胸ゥゥゥゥゥ……ッ!」
 全長200cmの槍を大地に突き込むようにして、大跳躍。真を串刺しにした直後の神鳥の頭上高くまで飛び上がると、その首筋に張り付いた。
「うおおおおおらああああああああッ!!」
 そのまま、神鳥の首筋を両腕で掴み占めると、脚甲で蹴りつける。

 この時、漢、トリプルJには目論見があった。
 飛びついて、超至近距離に至れば、神鳥は振り払うために氷属性の攻撃をするに違いない、と。
 そして、それが活きるのは今だ、と確信した。そうすれば、ヴィルマは土属性の魔術が打てる。
 だが、それはすなわち――自らも、その範囲に巻き込まれる、ということだ。新人というほどではない実力だとしても、味方の攻撃に巻き込まれて生き残れるほど頑強ではない。
「属性固定できるなら誘爆も誤爆も気にしねぇよ! やれェ!!」
 にも関わらず、それすらも呑み込んでの行動、侠気。必死に叫ぶトリプルJの声が、幻影の大気の中に木霊する。



 この時、トリプルJには二つの誤算があった。
 一つ。ただ一人、火力に乏しいトリプルJが飛びつこうとも、迎撃をするかどうかは定かではないこと。
 この戦場で、神鳥が落とすべきは、後衛火力の面々だ。しかる後に、残る面々を調理すればよいのだから。

 そして、もう一つ。
 神鳥にとって、護らねばならない場所がどこかを、彼は知らなかった。

 果たして――ヴィゾフニルは飛翔を選ばず、反撃を行った。
 トリプルJと、真を呑み込んで、氷嵐が爆ぜる……!


「ず、あ……っ」
 衝撃に、トリプルJは苦鳴と共に、姿勢を崩す。それでも、足だけは首に絡みつき、落下を防ごうとするも――至らない。
 墜落、する。

 けれど。

 それだけでは、終わらない。終われなかった。
「無駄には、せんぞ…………っ!」
 ヴィルマは、重力魔術を解き放つ。紫の光が神鳥を中心に爆ぜ、爆雷となる。同時に、トリプルJと真の意気を汲んだ面々――魔法職、射撃職の面々の攻撃が、降り注ぐ。
 瞬後に前衛が殺到。スキルの残りがない者も、遮二無二、往く。
(…………くそ、核はどこだよ…………っ!)
 そんな中、抜け目なく目を走らせる狼などもいたが、残念ながら、目のつけどころが合わなかった。核の所在はわからぬままに、ただただ、火力を集中して攻撃せざるをえない。
 ウィンスの槍が。エニアの土魔術が。ジャック・Gの銃弾が。ジャック・Eの矢が。
「あれダケ格好付けたんだカラ、死なセル訳にはイカナイよネ……!」
「はい……っ!」
 アルヴィンと千春は最後の治癒術を渦中のトリプルJと真に集中させる。
「ディーナもいるの……!」
 絶命には、至らせるわけにはいかない。逃がす余裕も、隙間もない現状、これしか、できることはない。
 リリティアの刃が。ヴァルナの槍が。マリィアの銃弾が。鵤の巨大化した槍と、ブラウの次元斬が。
「……此処で落ちろ……!」
 コーネリアは怒号と共に、銃弾を撒き散らす。
「あやつよりも武勲をあげねば、示しがつかんからのう……!」
 ためらうことなく、渾身の一振りを放ったバリトンが、呵呵と笑う。
「こいつで、最後だ……!」
 ラジェンドラが、正真正銘最後の機導術を、解き放つ。

 狂奔にも似た、最後の攻勢は――じきに、終わりを迎える。


 顔を上げた神鳥、ヴィゾフニルは。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。



 高く、遠く。
 世界の果てまで届くような、啼き声をあげた。




 それは、世界に夜明けをもたらす啼き声であった。
 遠く、世界の彼方から、光が溢れてくる。夜天を照らす月が変容し――煌々と灯る太陽に、変じたからだ。

「…………終わった、ね」
 遠くからその気配を察知した時雨は、言葉を零した。
 戦闘は、もう終わった。死体に鞭を打つような真似は、彼女には、できなかったから。誰よりも早く、弓を下ろしていた。
「………………これで」
 重く、息を吐いて、その光に身を預けた。



「……っ!」
 終わりの気配に、少年はすぐに視線を転じた。そして、すぐに、見つけた。
「優れた戦士には相応の称賛があって然るべきだと思うが!?」
 銀髪を振り、早口に言い切る。視線の先で、"微笑みクソ野郎(kz0015)"がその名にふさわしく、笑みを浮かべている。
「お、そうだね」
 ぼふ、と。頭に落ちた感触の意味を、少年は理解することができなかった。強引に、視界が下がる。
 しかし、声は響くのだ。
「君は強くなったね。それに、変わったよ。や、本当に。でも……」
 耳もとに、吐息が掛かる。

 ――せっかくの試練なのに、"本気""を出さないのは、良くないな。

 そこで、ウィンスは光に呑まれた。



「……おい、クソヘクス! てめえ、なんでこんな場所に出張ってきやがった!」
 世界が光に呑まれる中、ジャック・Gは肩をいからせながらヘクスのもとへと走った。
 締め上げ、洗いざらい吐き出させる腹積もりで、手を伸ばす。いや、拳を放つ。
 しかし。
「やだー、こわーーい!」
 微笑みクソ野郎こと、ヘクス某は手を振りながら、自ら光に飛び込んでいった。
「なっ……!?」
 そして、ジャック・Gもまた、陽光に溶けゆく世界と共に、何処かへと消えていく――。

 そこで。

 ――ああ、言いそびれちまった。

 お前達塔の住人もこんな偽物の風景じゃねぇ、本物の王国を一緒に見ねぇか、本物の王国を見る為一緒に戦っちゃくれねぇか、と。

 "彼ら"に言うつもりだったのに、機を逸してしまった――と。そんなことを、思った。



 かくして、"古の塔"にまつわる試練は、終わりを迎えた。
 神鳥ヴィゾフニルは、試練の終わりを告げると同時に、幻影の世界に光をもたらした。

 かつての誰かが、憧れを懐き、愛した光景。
 かつての誰かが、かくあれと、願った光景。

 そして、かつての誰かが、それが未来の何者かにとっての光になるように、という。

 ――祝福を込めた、陽光の世界。




 その狭間で、永き時を越え、役目を終えた者たちは、夜の帳に呑まれて消えていった。
 此度の眠りは、永年の眠り。それでも、彼らは役目を"終えることができた”のだ。

 眠りの寸前。彼らは、たしかに、声を覚知した。

 おつかれさま、と。
 彼らが良く知る声が、それぞれの核に滲んで――消えた。

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MVP一覧

  • 魂の反逆
    ウィンス・デイランダールka0039
  • 皇帝を口説いた男
    ラン・ヴィンダールヴka0109
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴka1305
  • 其の霧に、籠め給ひしは
    ヴィルマ・レーヴェシュタインka2549
  • 不破の剣聖
    紅薔薇ka4766
  • (強い)爺
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  • 鞍馬 真ka5819
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミka5843
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJka6653

重体一覧

  • 皇帝を口説いた男
    ラン・ヴィンダールヴka0109
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムスka0796
  • 六水晶の魔術師
    レイレリア・リナークシスka3872
  • 不破の剣聖
    紅薔薇ka4766

  • 鞍馬 真ka5819
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJka6653

参加者一覧

  • フューネラルナイト
    クローディオ・シャール(ka0030
    人間(紅)|30才|男性|聖導士
  • 魂の反逆
    ウィンス・デイランダール(ka0039
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 皇帝を口説いた男
    ラン・ヴィンダールヴ(ka0109
    人間(紅)|20才|男性|霊闘士
  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ミケ
    ミケ(ka1305unit003
    ユニット|幻獣
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 嗤ウ観察者
    アルヴィン = オールドリッチ(ka2378
    エルフ|26才|男性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ユグディラ
    ユグディラ(ka2378unit002
    ユニット|幻獣
  • 其の霧に、籠め給ひしは
    ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549
    人間(紅)|23才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    トレーネ
    トレーネ(ka2549unit002
    ユニット|幻獣
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • The Fragarach
    リリティア・オルベール(ka3054
    人間(蒼)|19才|女性|疾影士
  • 光あれ
    柏木 千春(ka3061
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    スルメ
    するめ(ka3319unit004
    ユニット|幻獣
  • 六水晶の魔術師
    レイレリア・リナークシス(ka3872
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • 非情なる狙撃手
    コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • 不破の剣聖
    紅薔薇(ka4766
    人間(紅)|14才|女性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    ニャーコ
    ニャー子(ka4766unit004
    ユニット|幻獣
  • 背徳の馨香
    ブラウ(ka4809
    ドワーフ|11才|女性|舞刀士
  • ユニットアイコン

    グリューン(ka4809unit001
    ユニット|幻獣

  • 小鳥遊 時雨(ka4921
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • 清冽なれ、栄達なれ
    龍華 狼(ka4940
    人間(紅)|11才|男性|舞刀士
  • (強い)爺
    バリトン(ka5112
    人間(紅)|81才|男性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    ユキウサギ
    ユキウサギ(ka5112unit003
    ユニット|幻獣

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
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    ユグディラ
    ユグディラ(ka5843unit003
    ユニット|幻獣
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レイレリア・リナークシス(ka3872
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2017/02/27 21:22:44
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/02/28 02:50:36