そして、己が愚者であると知る

マスター:植田誠

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/03/12 19:00
完成日
2017/03/25 15:46

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 褒められて、嬉しかった。だから頑張った。そしたらもっと褒めてくれた。
 でも、気づくと褒めてくれなくなった。みんなは凄いと言ってくれるのに。
 きっと僕は……見捨てられたんだ……


 ハンターたちや帝国兵に先駆けて、クロウは廃工場にたどり着いていた。歪虚の本拠地と目されている場所だ。途中でバイクを乗り捨て、ゾンビたちから姿を隠しながらたどり着いたそこに、求めている人物がいると信じて。
 この時クロウの中にあったのは、義務感と、責任感。
(俺のせいで、ハルトは道を間違えてしまった。そして、俺の兄のせいでその道を取り返しのつかないところまで進んでしまった。だから……)
「……俺が始末をつけなきゃならねぇよな」
 そう思い、やっとの思いで出会えた後輩は、もはや人の形すら成していなかった。
 剣機リンドヴルム。機械とゾンビ、二つの首を持つ双頭の歪虚。よく見ると、その中央……双頭の付け根に当たる部分に人、らしきものが見える。それがハルトの体だと気づくのに、そう時間はかからなかった。
「ハルト……お前……」
「来ると思ってましたよ、先輩。どうです、凄いでしょ?」
 その声が、自分の知る後輩のものだっただけに、後悔の念はより大きいものとなった。
「思考能力が低いこいつに、僕というブレーンが乗り込んで……その戦闘力は飛躍的に上がりました。ズィルバーさんのとこに戻れないのはちょっと哀しいですけどね。こうやって戦ってズィルバーさんの邪魔になる人を排除するのもまぁ有りかなって思うんですよ」
「お前は……」
 楽し気に説明を続けていたハルトに、クロウはやっと言葉を絞り出す。
「お前は、それでいいのか?」
「構いませんよ」
 クロウの言葉に、ハルトは間を置かず答えた。
「僕の力を認めてくれるなら……褒めてくれるなら、何だっていいんですよ!」
 ハンターたちがトラックで突っ込んできたのは丁度その時だった。


 エルウィンと対峙するフリッツは考える。目の前の相手が何者なのかを。軍の密偵か、通りすがりのハンターか……
「……あるいは、噂の絶火隊というやつか?」
「それに関して俺は答えることは出来ねぇな。でも、それとは無関係に……お前は俺を知っているだろ?」
「知らないと言っているはずだが、耳が遠いようだな」
「自分じゃそういうつもりは無いんだが……いやはや年は取りたくないもんだねぇ」
 そういいながら、エルウィンは上から下へ、大きく腕を振る。すると、腕の先に光の剣が構築される。機導剣だ。だが、エルウィンのそれは通常の物とは違い、一瞬で消えることなくその場にとどまる。
「……貴様、その技は!!」
 それを見たフリッツは急に動揺し、思わず後ずさる。
「ば、馬鹿な……確かに……確かに殺したはずだ!!」
「ようやく気付いたか? いやはや遅いんじゃないか?」
「……それで、敵討ちでもしようということか?」
 さすがに、すぐに冷静さを取り戻した様子のフリッツに対し、エルウィンは答えた。
「確かに、相棒の分や部下の分……返したい借りは山ほどあるが、そういうのは若いのにぶん投げさせてもらってるんでね。ただ、立場的にも帝国の人間が無駄死にしていくのを放っておくわけにはいかない。そういうわけで、ちょっとおせっかいを焼いたってわけだ」
「なるほどな……だが、もうそのおせっかいとやらを焼く必要はない」
「ほぉ、なぜだい?」
「ここで殺すからだ!」
 そう叫び、フリットが突進してくる。
(あいつらがうまくやってくれたおかげで、帝国兵もほぼ無傷で到着する。あの中に何がいても、ハンターの質と、帝国兵の数で押し切れる。後は俺がこいつを抑えれば勝ちってな)
 エルウィンはそう心中でつぶやき、機導剣を構えた。


「さぁ、用意はいいですか?」
 ハルトが声を張り上げる。同時に、見覚えのある魔導機械が周囲に展開していく。分かっていたことだ。戦わなければならないということは。
「お前を認めてやることは、出来ないな」
 自己のために能力を使う錬金術師は、確かにいる。錬金術教導団はその典型だ。彼らは自分たちの思想のために、錬金術を用いている。
「錬金術は、それが戦う力であれ何であれ、人のために行使されなければいけない」
 それをハルトに教えそこなったのは、クロウ自身の落ち度だ。いや、クロウは知っていると思っていたのだ。自分によく懐いていたハルトならば、自分の言う錬金術師とはどういう存在かを。
「ちょっと骨が折れそうだが、それをお前に分からせてやる!」
 負けじと声を張り上げたクロウ。その背には、駆け付けたハンターたちの姿があった。
「……逃げる気は、無さそうだな。ホントはカッコよく俺一人でケリをつけると言いたいとこだが、ちっと厳しそうだ。悪いが、力を貸してもらうぜ!」

リプレイ本文


「おいおーい、随分愉快な姿になってんじゃねえのぉ。やっだーマジこわぁーい」
「これを一人でなどと……厳しい処の騒ぎではございますまい……」
 鵤(ka3319)は軽い口調で、マッシュ・アクラシス(ka0771)はどこか呆れたような口調で目の前の敵……剣機と半ば融合した剣機リンドヴルムを評した。
「はい、よくできました。まっかせなさい!」
「あんたの因縁なんだからね。手伝ってあげるから、きちんと片付けなさいよ!」
 その剣機と対峙していたクロウにそう答えたドロテア・フレーベ(ka4126)とロベリア・李(ka4206)は武器を構える。
「準備良いな、いくぜ!」
 ボルディア・コンフラムス(ka0796)が煙幕手榴弾を投擲。まずはこれで敵の目をくらます作戦だ。投げた際ボルディアが顔をしかめる。ケガによる痛みが原因だ。
(こんなナリでも、俺は俺に出来る事するだけってな……)
 尤も、これ以上の深入りは避けるのが肝要だ。すぐさまボルディアは後退。
「あーなんか、すっかり再生怪人みたいになっちゃって……あん時殺し損ねたのがいけなかったか」
 リカルド=フェアバーン(ka0356)はそう呟きながらも早速ハルトの顔面に向け牽制射撃。
「今度は確り、殺してやる」
 剣機は片首を盾にするようにこれを防ぐ。直撃は取れなくとも牽制としては十分。これで手榴弾から注意をそらせればしめたもの。だが、そう何事もうまくいくわけではない。
「え?」
 退くボルディアの横顔をかすめるように何かが飛んできた。それが煙幕手榴弾だと気づいたのは数瞬後だ。
 煙幕手榴弾はすぐに煙が広がるような兵器ではない。そのため、煙が広がる前に手榴弾自体を蹴り飛ばしたのだ。
 尤も、予定が多少狂ったからといって大筋の動きは変わらない。
「けけけ剣機が相手なんて、し、死んじゃうよ!」
 水流崎トミヲ(ka4852)はファイアボールを壁に叩き込む。破壊成功。思ったより脆いのかもしれない。そのまま声を上げる。
「こ、こんなところにいられるか! 僕は拠点に帰るよ!?」
 そういって退避。もちろんほんとに逃げるわけではない。範囲火力持ちがどこから攻撃してくるか分からない。そういう状況を作るのが目的だ。
「長い付き合いになりましたけれど、そろそろ決着をつけたいですわね」
 離脱するトミヲの背を見送り、日下 菜摘(ka0881)は剣機を見据える。
 そして、煙幕が多少視界を邪魔したものの、その離脱する様子をハルトもしっかりと見ていた。
「なるほど、そう来るんだ」
 そのつぶやきを聞いたものはいない。


「とにかく、相手の手数が多すぎるわ。ここは帝国軍の援軍を待つまでやり過ごすのが次善の策ってところかしら」
 自身は剣機の側面へ回り込みながら、ロベリアが状況を見て呟く。
 剣機は後退していく。
 包囲されるのを恐れてのことだろうか。無論それだけではない。機導砲と毒を打ち出し牽制してくる。さらに、砲型が大きく広がるように展開している。一網打尽にされるのを恐れてのことだろうか。
「いい感じに意識を割いてくれてるみたいだが……もう少しこっちも気にしてもらいたいな」
 剣型の魔導機械を攻撃しつつ、リカルドは距離を維持する。
(リカルドさんが向こうに動くなら……)
 マッシュはリカルド同様攻撃が届く距離を維持しつつも、リカルドとは逆方向に動き一網打尽になるのを避けるようにする。その時、剣機の片首はしっかりとマッシュの方を向いていた。
「狙いはこっちですか」
 剣機の攻撃は基本口から出す。なので、ある程度の能力があれば初撃を躱すのは難しくない。だが、回避したところを猛毒弾で追撃される。こちらは躱すのが難しい。直撃を受ける。
「問題ありません」
 だが、すぐさま菜摘がピュリフィケーションを使用して、毒を治療する。行動範囲を菜摘から援護が可能な位置にしていたのが功を奏した。
「助かります」
「一分一秒でも長く皆さんを戦場に立たせ続ける事、それがわたしに課せられた責務ですから」
 菜摘は続けざまにヒールを使用してマッシュを万全の状態に戻す。
「好きに攻撃させるわけにはいかないわ!」
 攻撃を妨害するためにドロテアが接近。
(可哀想な子みたいだけど、同情してる余裕は無いのよね)
 あっさりと間合いに入る……が、すぐに離脱。剣型がドロテアの頬をかすめる。
「っ……思ったより警戒してくれてるみたいね」
 頬から流れるかすかな血を指でぬぐい、再度ドロテアは飛び込んでいく。
 これを援護するように動く鵤。剣型を銃撃し、確実に排除していく。
(錬金術に関する考え方は同意してやる)
 人のために、と主張するクロウ。それに対し己のために力を振るうハルト。どちらかといえば鵤の理念はハルトに近いようだ。だが、だからこそ……
「おっさんのために死んでくれや」
 それが己の信念によるものか、それとも報酬として請求する火酒のためかは分からないが、その行動がハルトを倒すためのものであることに変わりはない。
「援護するわ!」
「あぁ、分かってる」
 ドロテアを援護するように動くのはロベリアも同様。クロウから攻性強化を受けた状態でデルタレイを使用。狙いは剣型。これで数を減らせればドロテアの負荷は格段に減るはずだ。
 だが、大外を取っている砲型による牽制射撃。これにより狙いが甘くなる。
 剣型を意識しすぎた結果、砲型への対処が甘くなった。これが味方への大きな被害を招くことになる。
 機導砲による攻撃。今度は菜摘がその攻撃の中心に位置する。
(先ほどの治療ですか……)
 菜摘の回復能力を厄介だと判断された結果だ。
 猛毒弾が直撃すればピュリフィケーション、砲型の同時攻撃にはフルリカバリーで対処するが、攻撃の密度が高い。
「まずい!」
「ったく……つくづくめんどくせえバケモノに変化しやがって」
 回復手を守ろうとマッシュ、リカルドも牽制するが、そうはさせまいと再度の機導砲。躱すしかない。
「……易々と沈みは……!」
 盾で防御して耐えていた菜摘だったが、その盾を打ち破り、剣型がそのまま菜摘に突き刺さり、爆発。
 衝撃で地面を転がる菜摘。そのまま動かなくなる。
「くっ……傷の具合を確かめたいところですが……」
 起き上がってこない。これ以上の戦闘は困難だろう。ここから先被弾は許されない。
「ふむ……」
 表情によるブラフを混ぜた行動を考えていた鵤は、この時敵の動きが妙だと気づいた。攻撃しながらであるため緩やかではあるが、どんどん後退している。もうすぐ壁にたどり着く。
(包囲しようとするこっちに対しあえて壁を背負うことでそれを避ける手か?)
 片手には常にトランシーバーを持ち、それで外に出たトミヲに連絡をしていた。その時、脳裏にある考えが浮かんだ。
(トミヲ君を警戒していないはずはない。その場合最も面倒なのは……予期せぬ方向からの痛打。とすると姿が見えない状況は避けたいはずだよねぇ)
「……読めた! トミヲ君! 壁をぶっ壊してくれ!!」
 鵤がトランシーバーに叫ぶのと、トミヲの魔法によって壁が吹き飛んだのはほぼ同時。トミヲも鵤と同じ結論に達したようだ。
「みんな! 急いで脱出するんだ!!」
 そして、剣機が尾の剣を振るい背部の壁をたたき切ったのも同時だった。そのまま剣機は壁を突き破り外へ。
 即興で考えられたハルトの策。トミヲが壁を吹き飛ばし外に出たのを見て思いついたものだ。
「トミヲが外にいるなら自分も外に出ればいいってことか……そして次は当然……」
 ロベリアの予測通り、ハルトは砲型と機導砲で廃工場自体を攻撃。中のハンターをそのままつぶしてしまおうとする。ハンターたちは、すぐさま脱出していった。


「さってと……瓦礫で押しつぶされちゃったかな?」
 すっかり崩れ落ちた廃工場を見て、ハルトが笑みを浮かべる。
 だが、ハルトはまだ気づいていない。今まさに、ハンターたちが反撃の態勢を整えていることに。
「崩れた瓦礫でこっちの目標をつけにくい。これはチャンスだ、頼んだぜ!」
 不意に、多数の銃撃がハルトの砲型魔導機械を襲い、破壊する。
 この時すでに帝国兵の一部が到着していた。ボルディアの指示を聞き支援攻撃を開始する。
「退避しろ! 当たったら一発だぞ!!」
 ボルディアは声を上げる。痛みに耐え、戦闘で役に立てない分を取り返そうと。無論そのまま放置はしていない。ハルトはそちらに攻撃の手を向けようとする。
「逃げたと思ったろ? 残念でした!」
 だが、それを制したのはついにその火力を解放したトミヲの攻撃。
 危険度は言うまでもなくこちらの方が上だ。そちらへ向け攻撃を行う。
「ヒャアアア!!!?」
 ファイアボールを打ち込むと同時に横っ飛び。機導砲が掠める。さらに猛毒弾。こちらは直撃。やはり2つの範囲攻撃を同時に躱すのは難しい。だが……トミヲに毒の影響はないようだ。トミヲの抵抗力が勝ったと見える。
「こうなりゃとことん行くしかねぇよな」
 トミヲが再度のファイアボール。
 それを盾形を集め防ごうとするハルト。だが、着弾前に鵤が側面からアイシクルコフィンを打ち込む。
「デカい分、当てやすいのはいいことね」
 ロベリアがデルタレイでさらにダメージを重ねる。
 さらに、こちらもうまく脱出していたドロテアがハルトの視界にその身を晒す。
「さしずめ、第2ラウンドってとこかしら?」
 その様子を、リカルドとマッシュが瓦礫に身を隠しながら見ていた。こちらには意識が向いていないようだ。
「……仕掛けるなら今だな」
 リカルドはマッシュに目配せし、そのまま瓦礫に身を隠しながら剣機の後ろに回り込む。狙いは剣の尾だ。マッシュはその意図を察し、それを援護するためタイミングを計る。
「昂ぶれ! 僕のDT魔力!」
 トミヲが3度目のファイアボール。さらに、増加した帝国兵の援護射撃で各種魔導機械が数を減らす。
「一気に手数が減ってきたわね。こうなればもうこっちのものよ」
 ロベリアが呟き再度攻撃。
 数による優位が覆り、ハルトは一気に劣勢に。だが、個としての強さは未だハルトの方に分がある。その力を少しでも削がなければ、帝国兵の方にも犠牲が出る。それをさせるわけにはいかない。
「さぁ、我慢比べと洒落込もうか」
 リカルドが、ついに剣の尾。その根元に接近した。周辺への対応に追われその存在に気付かなかったハルト。そのすきを突き、龍の型による渾身の一撃を打ち込む。一撃必殺の攻撃。だが、剣機の耐久力を前にそれは叶わない。
 リカルドが再度上段に構えた時、剣の尾もまた外敵を排除するためその切っ先を向けた。
「勝負どころですね。行きますよ!」
 そこに、マッシュが踏み込みつつ脚部を攻撃。ソウルエッジを付与した渾身の薙ぎ払い。切断には至らないが態勢を崩すには十分だ。
 剣の尾はリカルドを傷つける。無理な態勢からの一撃は浅い……はずだが、鎧は大きく切り裂かれる。かなりのダメージ、まともに喰らえば致命傷だ。
 再度振り下ろされる剣の尾。それと同時に、リカルドの刀も振り下ろされる。
「相打ち、か……上等だ」
 剣の尾はリカルドの腹部を完全に刺し貫いていた。だが、その根元は剣機の胴から切り離された。リカルドはその一撃で意識を失った。
 この時、ハルトは撤退を考えた。だが、それをさせるハンター達ではない。
「こうなったら……もう詰みなんじゃねぇかな?」
 鵤が翼ごと再度のアイシクルコフィンで貫く。これで飛ぼうとする剣機の行動を抑制することに成功する。
「逆の足もいただきますよ!」
 マッシュが再度の薙ぎ払いで追撃。これで態勢を保てなくなった剣機、その中心となるハルトに対しドロテアが鞭を手放して突撃。その眼の前に最後の盾型。これを回避しようと……いや、回避せず突っ込む。
「させるかよ!」
 ジェットブーツを利用した。そこから突き出されたのはクロウの拳だ。
「うぉぉ!?」
 盾型をぶん殴ったクロウ。当然攻勢防壁を受けたかのように弾かれるが、その代りにドロテアの道は開かれた。
「君は一人、あたし達には仲間がいる。よく解ったでしょ?」
 構築された光の剣が、剣機に飲み込まれたハルトを突き刺す。
「教訓を生かす機会をあげられないのが残念ね」
 ドッジダッシュを使いすぐさまその場を離れる。
「間抜けな声上げちゃって……しまらないわね、まったく」
 弾かれたクロウを、同じくジェットブーツを利用して移動したロベリアがキャッチ。
「今度こそ貫いて見せる……僕の、DT魔力で!」
 ドロテアが離脱するとともに、トミヲが火焔紋を使用。さらに帝国兵たちがボルディアの号令で集中攻撃。
「止めだ! 全弾撃ち込め!!」
 もはや剣機を守る魔導機械は無く、銃撃に晒された剣機は咆哮を上げ、その場に倒れた。


 戦いは終わった。攻撃の余波で飛んだ瓦礫などで帝国兵にも多少の怪我人が出たが、ともかく終わった。
 リカルドは絶対安静の状態で後送。未だ意識の戻らない菜摘、ケガの状態が思わしくないボルディアも同様だ。だが、命に別状は無さそうだ。
「首を落とす……までも無いようですね」
 マッシュの言う通り、剣機の方は砂のように崩れ落ちていく。
(それは、あの子も一緒みたいね……)
 同じように砂のように崩れていくハルトを見下ろすドロテア。そこに、ハンターたちが集まってきた。
「クロウ……あんたが……」
 そういってロベリアがクロウを促す。クロウは動かなくなった剣機に近寄り、ハルトの目の前までやってくる。
「自信あったんですけど、先輩、達には敵わないな……」
 ハルトが口を開く。弱弱しく、擦れた声が、もう長くないことを表していた。
「ハルト……お前は……」
 何か言おうとして、クロウは口をつぐんだ。クロウが何を思ったのか。それはハンター達には分からない。だが……
「……最期まで、手厳しいな……でも……それが先輩、らし……い……」
 その様子を見たハルトは、最後にそう呟いた。どこか懐かしむような笑みを浮かべながら、その身は塵となって消えた。
「……許せよ」
 風に吹かれ散っていくそれを追うように顔を上げたクロウ。その眼に光るものが見えた。
「……くっそぉ」
 トミヲの心中に渦巻くのはどんな感情だろう。ハルトが誰かのために動けばよかった。そうすれば、きっと誰かと同じように、ハルト自身も救われただろうに。
「腹立つなぁ!」
 その、救われた誰かは、ハルトを思いそう声を上げた。
 かくして、クロウとその後輩ハルト・ウェーバーとの戦いは幕を閉じることとなる。
 未だ教導団を殲滅するには至っていないが、その戦力が大きく削がれたことに変わりはないだろう。
「……やれやれ。折角勝ったのに気分が沈んじまったな。おごりはまた日を改めてかね」
 疲れを見せながらも、軽い口調で呟く鵤。仲間たちを見るその眼は、どこか冷めたものだった。

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MVP一覧

重体一覧

  • ……オマエはダレだ?
    リカルド=フェアバーンka0356
  • 冥土へと還す鎮魂歌
    日下 菜摘ka0881

参加者一覧

  • ……オマエはダレだ?
    リカルド=フェアバーン(ka0356
    人間(蒼)|32才|男性|闘狩人
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 冥土へと還す鎮魂歌
    日下 菜摘(ka0881
    人間(蒼)|24才|女性|聖導士
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • 燐光の女王
    ドロテア・フレーベ(ka4126
    人間(紅)|25才|女性|疾影士
  • 軌跡を辿った今に笑む
    ロベリア・李(ka4206
    人間(蒼)|38才|女性|機導師
  • DTよ永遠に
    水流崎トミヲ(ka4852
    人間(蒼)|27才|男性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 剣機は錬金術の夢を見るか?
ボルディア・コンフラムス(ka0796
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2017/03/17 22:29:37
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/03/11 23:56:28