ゲスト
(ka0000)
【魔装】強さの果てに 第4話
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/04/14 07:30
- 完成日
- 2017/04/17 06:22
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
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オープニング
●交差するタグ
ふわゆるの緑髪を後ろにまとめ、紡伎 希(kz0174)は早馬から降り立つ。
ここはレタニケの街から一番近いハンターオフィスの支部だ。
レタニケ領で行われた亜人との戦いは、ひとまず決着がついた。だが、まだ、やり残している事がある。
いや……きっと、“やり残し”こそ、これから解決しなくてはならない事だろう。
「……ネル・ベル様」
希は、かつての主人――ネル・ベル(kz0082)――の名を呟いた。
真っ白で冷たい肌。黒紫の髪と瞳、そして、幾何学模様の美しい角。
「一体、何をなさるつもりなのですか?」
空を仰いで希は問うた。
もちろん、独り言だし、もし、ネル・ベルがこの場に居たとしても答えはしないだろう。
支部に入ると希は依頼書の記入を始めた。
「残された謎を調査しないと……」
記入をしている希に事務員が手紙を持ってきた。
手を休め、それを受け取る希。
「……ソルラ様から?」
送り主の名前を見て、希が声を出した。
グラズヘイム騎士団青の隊所属の騎士ソルラ・クート(kz0096)からの手紙だ。
アルテミス小隊を率いている小隊長でもあり、時折、依頼関係で手紙が届く事があったのだが……。
「これは……依頼? それも、書面上ではなく……ですか」
詳細は直接逢って話したいという。
そして、古都での集合場所に『屋敷』『檻』というキーワードが書かれていた。
そのキーワードは分かる人であれば、ピンと来るだろう。そこまでして逢うという事は――。
「……機密性が高い依頼……一体、何が」
牡丹の事は気になるが、一先ず、亜人の危機は去った。
ハンター達に調査依頼を出す事もあるので、ソルラに話を聞きに行くのも大丈夫なはずだ。
●女将軍の憂鬱
鳴月 牡丹(kz0180)が暇を持て余していた。
希は依頼を出しに行ったまま帰って来ないし、レタニケ領主であるライルは多忙という事で連絡が取れない。
立ち去ろうにも、亜人討伐を祝う祝賀会が予定されており、身動きが全くというほど取れなかったのだ。
「暇だな~。温泉でも行って来ようかな~」
ゴロンゴロンとベット上を転がる牡丹。
しかし、外出して何かあると大変な事になるから、極力、単独での外出は控えるように、希にキツく言われているのを思い出す。
「仕方ないな~。これまでの経過でも見直すかな」
飛び起きると、テーブルに置いてある報告書を手に取った。
幾度かの戦いを経て、亜人勢力を殲滅させた。
だが、謎がいくつか残っている。
「武器の出処、南下の原因、この辺りは観戦報告には欲しいかな」
そういえば――と、別の報告書に牡丹は手を伸ばした。
それは、亜人との戦闘が繰り広げられている間に、別のハンターに出した依頼の報告書だった。
「……なんだろうね」
牡丹の見立てでは怪しいと思う人物は二人。
一人はオキナと呼ばれる人物。もう一人は、ノセヤと呼ばれる王国騎士。
何かを知っている可能性は大いにあるが、接触が可能かどうかは全く見当がつかない。
「なんだか、王国騎士団も忙しいみたいだしね」
黒大公ベリアルとその軍勢が破竹の勢いで進軍しているという。
噂によると戦況は優位らしいが……。
「さすがに、そちらは見させて貰えないよね」
戦場によっては危険な所もあるようである。
しかし、王国の危機という事であれば、観戦している場合でもない。
グラズヘイム王国は東方で居ずらくなった鬼らを引き取った経緯があるだけに、エトファリカ連邦国として、何らかの行動はあった方がいいはずだ。
「まぁ、こればっかりはタイミングもあるしな~。残念」
東方での出来事は牡丹の耳に入っている。
新憤怒王が現れ、将軍自ら出陣する事態になっているいう。
もっとも、牡丹は軽く考えていた。あの将軍が出陣を選ぶという事は十分な勝算があるからだろう。
「……よし、ボクにはボクの出来る事をしよう!」
報告書の束をテーブルに叩きつけ、牡丹は決意する。
そして、V字腹筋を始める牡丹であった――。
ふわゆるの緑髪を後ろにまとめ、紡伎 希(kz0174)は早馬から降り立つ。
ここはレタニケの街から一番近いハンターオフィスの支部だ。
レタニケ領で行われた亜人との戦いは、ひとまず決着がついた。だが、まだ、やり残している事がある。
いや……きっと、“やり残し”こそ、これから解決しなくてはならない事だろう。
「……ネル・ベル様」
希は、かつての主人――ネル・ベル(kz0082)――の名を呟いた。
真っ白で冷たい肌。黒紫の髪と瞳、そして、幾何学模様の美しい角。
「一体、何をなさるつもりなのですか?」
空を仰いで希は問うた。
もちろん、独り言だし、もし、ネル・ベルがこの場に居たとしても答えはしないだろう。
支部に入ると希は依頼書の記入を始めた。
「残された謎を調査しないと……」
記入をしている希に事務員が手紙を持ってきた。
手を休め、それを受け取る希。
「……ソルラ様から?」
送り主の名前を見て、希が声を出した。
グラズヘイム騎士団青の隊所属の騎士ソルラ・クート(kz0096)からの手紙だ。
アルテミス小隊を率いている小隊長でもあり、時折、依頼関係で手紙が届く事があったのだが……。
「これは……依頼? それも、書面上ではなく……ですか」
詳細は直接逢って話したいという。
そして、古都での集合場所に『屋敷』『檻』というキーワードが書かれていた。
そのキーワードは分かる人であれば、ピンと来るだろう。そこまでして逢うという事は――。
「……機密性が高い依頼……一体、何が」
牡丹の事は気になるが、一先ず、亜人の危機は去った。
ハンター達に調査依頼を出す事もあるので、ソルラに話を聞きに行くのも大丈夫なはずだ。
●女将軍の憂鬱
鳴月 牡丹(kz0180)が暇を持て余していた。
希は依頼を出しに行ったまま帰って来ないし、レタニケ領主であるライルは多忙という事で連絡が取れない。
立ち去ろうにも、亜人討伐を祝う祝賀会が予定されており、身動きが全くというほど取れなかったのだ。
「暇だな~。温泉でも行って来ようかな~」
ゴロンゴロンとベット上を転がる牡丹。
しかし、外出して何かあると大変な事になるから、極力、単独での外出は控えるように、希にキツく言われているのを思い出す。
「仕方ないな~。これまでの経過でも見直すかな」
飛び起きると、テーブルに置いてある報告書を手に取った。
幾度かの戦いを経て、亜人勢力を殲滅させた。
だが、謎がいくつか残っている。
「武器の出処、南下の原因、この辺りは観戦報告には欲しいかな」
そういえば――と、別の報告書に牡丹は手を伸ばした。
それは、亜人との戦闘が繰り広げられている間に、別のハンターに出した依頼の報告書だった。
「……なんだろうね」
牡丹の見立てでは怪しいと思う人物は二人。
一人はオキナと呼ばれる人物。もう一人は、ノセヤと呼ばれる王国騎士。
何かを知っている可能性は大いにあるが、接触が可能かどうかは全く見当がつかない。
「なんだか、王国騎士団も忙しいみたいだしね」
黒大公ベリアルとその軍勢が破竹の勢いで進軍しているという。
噂によると戦況は優位らしいが……。
「さすがに、そちらは見させて貰えないよね」
戦場によっては危険な所もあるようである。
しかし、王国の危機という事であれば、観戦している場合でもない。
グラズヘイム王国は東方で居ずらくなった鬼らを引き取った経緯があるだけに、エトファリカ連邦国として、何らかの行動はあった方がいいはずだ。
「まぁ、こればっかりはタイミングもあるしな~。残念」
東方での出来事は牡丹の耳に入っている。
新憤怒王が現れ、将軍自ら出陣する事態になっているいう。
もっとも、牡丹は軽く考えていた。あの将軍が出陣を選ぶという事は十分な勝算があるからだろう。
「……よし、ボクにはボクの出来る事をしよう!」
報告書の束をテーブルに叩きつけ、牡丹は決意する。
そして、V字腹筋を始める牡丹であった――。
リプレイ本文
●大峡谷にて
レタニケ領より北部の森林を越えれば、大峡谷は目の前だ。
昔から亜人の勢力域であった為、好んで住む人も少なく、シェラリンデ(ka3332)とルイトガルト・レーデル(ka6356)は2人で森の中を進む。
「さて……少しでも、情報が分かると良いんだけれど……」
シェラリンデは警戒しながらポツリとそのように呟いた。
大きな樹木の影から亜人が現れても不思議ではない。
「亜人の南下理由が分かれば、な」
下草を払いながらルイトガルトは、何か痕跡が無いか探す。
何らかの要因があって亜人が南下を開始したのではないかとルイトガルトは考えていた。
例えば、強力な外敵の出現や何者かによる示唆――。
「大峡谷から来たのだとすると、たぶん、最初のきっかけは大峡谷地下遺跡のゲートでの戦いになるかな……?」
鬱蒼とした森の先が明るくなっているのを見つめながら、シェラリンデはそんな疑問を口にする。
大峡谷あるいは大渓谷とも呼ばれる王国と帝国の国境線となっている巨大な谷。
その底で繰り広げられた巨大遺跡での戦いは記憶に新しい。ハンターだけではなく騎士や兵士も入り混じり、王国にとっては茨小鬼による北方動乱以来となる王国北部での大規模な軍事行動となった。
亜人の勢力域に影響を与える規模であるのは間違いないはずだ。
「道中の集落では、手掛かりとなる情報は得られなかったから、あとは現地を見るしかない」
「遭遇も難しいかな……」
ルイトガルトの台詞に、シェラリンデは手にした食料に視線を一瞬向けた。
茨小鬼との戦いで彼女はある亜人の件を思い出していた。
炎の力を操るダバデリとの死闘を繰り広げた戦いで、人間側の援軍として現れた亜人の集団。
「ゴグラオやエネミン……直接、話はしなかったけれど……」
別の依頼で彼らに接触しようとしたハンターも居たというが、叶わなかったという。
何か、接触出来る方法か、あるいは、運だったかもしれない。
もっとも、彼らに出会えた所で、こちらの話を聞いてくれるかは別問題ではあるのだが……北方動乱での協同作戦は、茨小鬼という共通の敵がいたからであり、今は昔ながらの敵同士なのだから。
「大峡谷に到着だな」
森を抜けてルイトガルトは崖淵に立った。
谷を駆ける風が不気味な叫び声を上げる。当然の事ながら、谷底に落ちたら即死だろう。
シェラリンデもルイトガルトの横に並んだ時だった。突如として声を掛けられた。
「見たところ、ハンターのようだが、ここに何の用だ」
振り返れば王国兵士が数人。
恐らく、遺跡警備あるいは街道の巡回兵だろうか。
ルイトガルトが丁寧に帝国式の礼儀で一礼する。やましい事は何もしていないので、礼節を持って対応すれば、問題はないはずだ。
「亜人の勢力域について調査している」
ハンターオフィスの依頼書を隊長と思しき人物に手渡す。
「……本物のようだな。呼び止めて悪かった。調査、続けてくれ」
「尋ねても良いだろうか?」
「答えられる範囲であれば」
ルイトガルトの問いからの返しの言葉に、シェラリンデが来た森を指さした。
「亜人の南下に繋がるような事はあったかな?」
「それが原因かどうかは分からないが、老人の覚醒者が亜人を追い払っていたという話はあるな」
「そんなので亜人は南下するのか?」
怪訝な顔を浮かべるルイトガルト。
「追い払われた亜人は、別のテリトリーの亜人勢力に合流する事になる。群れの規模が増えていけば、必然的に勢力域を増やしていくしかない」
「……勢力を広げようとすれば、別の勢力と縄張り争いになる……か」
ルイトガルトの言葉に兵士は頷いた。
「あるいは、縄張り争いを避けて、南下するという事はあり得る」
「その可能性は大いにありそうだね」
推測であるが、一つの答えにたどり着いたようにシェラリンデは感じた。
別の群れを吸収して大きくなったとすれば、捨て駒のような戦術を組まれても可笑しくはない。
「あとは、武器の入手先か……」
「少し前に行商が中古の武具を大量に奪われたという事件があった。先の老人の覚醒者はその始末をしているとな」
レタニケ領に現れた亜人らの中で、強力な武具を持っていたのは一部であった。
残りは使い古した武器を持っていた――となれば、そうした亜人らは、追い立てられ、テリトリーを失った亜人達だった可能性はある。
「ピースが埋まってきた感じだね」
「そうだな。各自が収集した情報をまとめれば、真相が分かるかもしれん」
シェラリンデとルイトガルトは頷き合う。
大峡谷の調査では謎は残ったが、後は仲間達がきっと見つけてくれるはずだ。
兵士達と分かれ、2人はレタニケ領へと戻る。
先に進むルイトガルトの背中を見つめながら、シェラリンデは心の中で呟いた。
(……こちらで負のマテリアルの痕跡は無かった……とすれば、レタニケ領内の方……)
●牡丹と
レタニケ領の北部の集落を回って情報を収集していたイレーヌ(ka1372)は街へと帰って来ると、鳴月 牡丹(kz0180)が滞在している部屋へと足を運んだ。
「やぁ、イレーヌ君!」
扉が勢いよく開き、目を輝かせた牡丹が出てきた。
よほど、暇していたのだろうか。だったら、部屋の中でも掃除すればいいのに、酷い散らかりようだ。
「ちゃんと外に出ず偉いな」
「まるで、ボクが小生意気な小僧みたいな言い方だね」
「冗談だ」
通りで買った肴を掲げる見せたイレーヌ。
ちょうど、小腹も空いてきたところではあるし、牡丹は快く部屋の中にイレーヌを入れた。
「調査はどうだい?」
「私の方はさっぱりだ」
あまりの散らかりようにどこに腰をかけていいか、さっぱり分からない様子で苦笑を浮かべながらイレーヌは牡丹の問いに答える。
襲撃を受けた集落に生き残りは居なかった……いや、居たとしてもどこかに避難したのだろうか。
他の集落でも、これと言った情報は得られなかった。あるとすれば、怪しい武器商人は居なかったという事だろうか。
「ライルが身につけていた鎧と同じものがあるかと思ったのだがな」
「まぁ、豪華な鎧だよね。どことなく危なそうな気がするマテリアルを感じたけど」
「何か知らないのか?」
その問いに両手を上げる牡丹。
「さぁ……でも……歓迎会の時、鎧の話は出なかったかな……あれだけ、豪華な鎧だったのに」
「それは、いつ頃の話だ」
「確か、ほら、あれだ。温泉行った後だよ」
その牡丹の言葉に、レタニケ領での温泉の出来事を思い出した。
あれは色々な意味で凄かったが――そういえば、あの温泉で気になる事があった。
「あの時、雑魔が出現していたが、もしかして、偶然じゃない可能性もあるか」
今なら温泉に行けば何か分かったかもしれない。
雑魔は安易に出現したりしない。マテリアルの汚染等が原因で出現する事はある。掛け流しで綺麗な状態の温泉だったはずなのだが……。
「温泉行く!?」
牡丹が期待の眼差しで尋ねてくるが、さすがに調査時間は迫っているので難しい。
「行きたい所である……が、牡丹は希の許可無く出かけていいのかい?」
「ぐぬぬ……」
悔しそうな牡丹の表情が可笑しく、微笑を浮かべるイレーヌだった。
●【強制】
ライルの鎧について、仲間から忠告を受け取っておいた事にソフィア =リリィホルム(ka2383)は心の中で感謝した。
念の為に警戒していなければ、動揺していただろう。
「貴方が……」
領主の屋敷は静寂に包まれ、その中で彼女が対峙しているのは人型の歪虚だった。
黒紫の髪と瞳、そして、幾何学模様が美しい角を持った歪虚の名は、ネル・ベル(kz0082)。
「ハンターか……思ったより気が付くのが“早かった”な」
「ライルさんは鎧の事を『家に伝わる鎧』と言っていたけど、街で聞き取ったら、そんな事実は無かった」
ソフィアはレタニケの街で調査していた。
その結果、領主であるレフェタルニーケフ家には、代々、伝えられた鎧は無いという事実が判明した。
ライル自身の姿が最近、見られない事。屋敷への出入りは禁止された事。そして――。
「あの豪華な鎧から負のマテリアルが感じられた事と、過去の報告書からたどり着いた……」
鋭い視線をソフィアは歪虚へと飛ばす。
「傲慢――アイテルカイト――の能力、【変容】で、鎧の姿をしていたと」
まさか、ネル・ベル自身がとは思いもしなかったが。
だが、冷静に考えてみれば、特殊な能力を行使出来るのは、それなりに実力のある存在でもある。この歪虚であっても不思議はない。
「よく調べたものだな。私の名はネル・ベル。偉大なる傲慢――アイテルカイト――の者だ。貴様の名を聞いておこう」
「……ソフィア=リリィホルム、だ」
「ソフィアか……覚えておこう。そして、貴様は運が“良かった”な」
その歪虚の言葉にソフィアは身構えた。
「屋敷の出入りが禁止されているのに、私を通したという事は……意味があったと……何のために」
招き入れた事ではなく、なぜ、ネル・ベルがここに居るのか、一体、何を目論んでいるのか。
力を求めたライルを誘導し、亜人征伐を呼びかけたのか。その先に何をさせようというのか。
「レタニケ領と周辺の貴族を巻き込んだ内乱が目的か?」
「惜しい……とだけ、伝えておこうか」
ジリジリと歪虚が迫る。
その動きに合わせソフィアは少しずつ下がった。
トンっと背中が壁にあたる。それでも、グッとネル・ベルを睨み続けるソフィアの耳元で歪虚は囁く。
「強者は命じる。ここに歪虚が居ると言い廻りながら、帰れ」
負のマテリアルの強烈な圧力がソフィアへと襲いかかる。
傲慢――アイテルカイト――の能力【強制】だ。命じるままにその行動を実行する事になる。
そして、【強制】のままに、ソフィアは宿に帰るまで、命じられた事を実行した――。
●古都にて
調査を終えて、ミュオ(ka1308)は喫茶店で一息つきながら、これまでの調査内容をまとめていた。
レタニケ領で亜人が持っていた強力な武器。その出処が分かったからだ。
「目録が無かったのは残念でしたが……」
領主との接触は出来なかったが、幸運にも武器の製造に関わった人物と技術者だという人物に会う事は出来た。
そして、その結果はミュオの推測通りだったのだ。
「茨小鬼との戦いの際、ウィーダの街への支援で送られた武具が、アークエルス産だったと」
そう言いながらメモに書いて行く。
どういう経緯かは、関係者の一人に会いに行った仲間が聞き取ってくれるだろう。
他にも武具に関わっていると思われる港町ガンナ・エントラータで目撃された老人の存在もあるが……。
「亜人が人間の勢力域に入るなら、戦いは避けられない。けど、強力な武器だけでは数が足らないとすれば」
それなら、人の武器を奪う可能性は高い。
そこに関しての情報も、やはり、大峡谷へと向かった仲間が調べてくるだろう。
武具について記したメモをまとめると、ミュオはレタニケ領と近隣について書き始める。
「フレッサ領とブルダズルダ領での噂や事件……」
共にレタニケ領の近隣であるこれらの領地内では歪虚絡みの噂や事件が起こっていた。特にフレッサ領では以前、歪虚と関わりがあったのではないかという噂もあったが、領地経営の改善や、テスカ教団巡礼者との戦い、港町ガンナ・エントラータ郊外で行われたベリアル軍との会戦で功績を残していて存在感を増しているという話もある。
ブルダズルダ領では歪虚や雑魔が街中に出現して惨事になる事があった。その後の領地経営は上手く進んでいないという。
そして、今回の亜人騒ぎだ。
「自然発生にしては出来すぎている――と思うけど……」
誰かが絡んでいる。
そして、ハンターオフィスの報告書から、ある存在が浮かび出てきた。
傲慢の歪虚ネル・ベル。
その目的は何か――なぜ、王国北部で活動しているのか。
「………うーん、後手に回ってますね」
ぬるくなった牛乳に手を伸ばすミュオ。
予防線を張っておく必要があるだろうか。例えば、ライルへアプローチしておくか、あるいは、レタニケの街の住民に注意を促すか。
「やっぱり、後手、ですね……」
お手上げとばかりにミュオは空を仰ぎ見た。
この先、如何なる事が起こってしまうのか、暗く澱んだ空に悪い予感しかしないミュオだった。
●軍師騎士
『刻令術式外輪船』フライングシスティーナ号の一室でライラ = リューンベリ(ka5507)は一人の騎士と会っていた。
友人のつてを頼っての事で、そうでなければ、面会は難しかっただろう。
「……という事が、レタニケ領でありまして、ノセヤ様から見た最近の亜人の動きと歪虚の動きをお聞きしたいのです」
これまでの経緯を包み隠さず説明したライラ。
ノセヤは王国北部の地図を広げ、何やらブツブツ呟きながら指で指していた。
それをライラは微動だにせず、黙って経過を見守っていた。きっと、彼なりの“技法”なのだろう。
ややしてから、ノセヤは席に座った。
「考えられる可能性の一つとして受け取って貰えればと思いますが……」
「はい。ノセヤ様、お願いします」
一言も聞き逃すまいとペンをしっかりと握るライラ。
「強力な武具を手に入れたゴラグオ達の群れは、大峡谷の奥に移動したはずです。当然、元々、そこをテリトリーとしていた亜人と争いになる訳ですね」
「まさか、武具を何らかの取引に?」
「そうです。テリトリーとの交換条件には悪くはないはずです」
時期的には北方動乱が終わった後のはずだ。茨小鬼らの噂は亜人にも広がっていただろう。
強力な力があれば、自分達でも人間と戦えると勘違いする亜人が居ても可笑しくない。
「より豊かな地を求め、力を手に入れた亜人の群れが南下したのでしょう」
「鎧の事はどうでしょうか? ネル・ベルが槍に変化していた事例も御座いますし」
その歪虚の名をノセヤが知らない訳がない。
実は縁深い存在ではあるのだが――。
「恐らく【変容】の能力でしょう。あくまで……私の想像ですが、あの歪虚の性格を見るに、直接、手を下さないと思うのです」
「ライル様が【強制】されていないと?」
「実際は分かりませんが、あの歪虚が王国各地で起こした事件を見ると……問題なのは、“人の心”だと」
ひたすらに力を求めるライルの言葉が頭を過ぎった。
「既に、ネル・ベルにつけ入れられていると?」
「そういう事です」
立ち上がったノセヤに合わせるようにライラも立つと、深々と一礼した。
「レタニケ領で騒ぎがあった際、王国軍の介入や協力は望めるのでしょうか?」
「正直な所、難しいとしか言えませんね。アルテミス小隊のソルラ隊長も作戦行動中なので。一応、本部には声を掛けておきます」
「……お話聞いて下さり、ありがとうございました」
成果は得られた。
だが、それ以上に、焦燥感を覚えるライラだった。
第5話へと続く――。
レタニケ領より北部の森林を越えれば、大峡谷は目の前だ。
昔から亜人の勢力域であった為、好んで住む人も少なく、シェラリンデ(ka3332)とルイトガルト・レーデル(ka6356)は2人で森の中を進む。
「さて……少しでも、情報が分かると良いんだけれど……」
シェラリンデは警戒しながらポツリとそのように呟いた。
大きな樹木の影から亜人が現れても不思議ではない。
「亜人の南下理由が分かれば、な」
下草を払いながらルイトガルトは、何か痕跡が無いか探す。
何らかの要因があって亜人が南下を開始したのではないかとルイトガルトは考えていた。
例えば、強力な外敵の出現や何者かによる示唆――。
「大峡谷から来たのだとすると、たぶん、最初のきっかけは大峡谷地下遺跡のゲートでの戦いになるかな……?」
鬱蒼とした森の先が明るくなっているのを見つめながら、シェラリンデはそんな疑問を口にする。
大峡谷あるいは大渓谷とも呼ばれる王国と帝国の国境線となっている巨大な谷。
その底で繰り広げられた巨大遺跡での戦いは記憶に新しい。ハンターだけではなく騎士や兵士も入り混じり、王国にとっては茨小鬼による北方動乱以来となる王国北部での大規模な軍事行動となった。
亜人の勢力域に影響を与える規模であるのは間違いないはずだ。
「道中の集落では、手掛かりとなる情報は得られなかったから、あとは現地を見るしかない」
「遭遇も難しいかな……」
ルイトガルトの台詞に、シェラリンデは手にした食料に視線を一瞬向けた。
茨小鬼との戦いで彼女はある亜人の件を思い出していた。
炎の力を操るダバデリとの死闘を繰り広げた戦いで、人間側の援軍として現れた亜人の集団。
「ゴグラオやエネミン……直接、話はしなかったけれど……」
別の依頼で彼らに接触しようとしたハンターも居たというが、叶わなかったという。
何か、接触出来る方法か、あるいは、運だったかもしれない。
もっとも、彼らに出会えた所で、こちらの話を聞いてくれるかは別問題ではあるのだが……北方動乱での協同作戦は、茨小鬼という共通の敵がいたからであり、今は昔ながらの敵同士なのだから。
「大峡谷に到着だな」
森を抜けてルイトガルトは崖淵に立った。
谷を駆ける風が不気味な叫び声を上げる。当然の事ながら、谷底に落ちたら即死だろう。
シェラリンデもルイトガルトの横に並んだ時だった。突如として声を掛けられた。
「見たところ、ハンターのようだが、ここに何の用だ」
振り返れば王国兵士が数人。
恐らく、遺跡警備あるいは街道の巡回兵だろうか。
ルイトガルトが丁寧に帝国式の礼儀で一礼する。やましい事は何もしていないので、礼節を持って対応すれば、問題はないはずだ。
「亜人の勢力域について調査している」
ハンターオフィスの依頼書を隊長と思しき人物に手渡す。
「……本物のようだな。呼び止めて悪かった。調査、続けてくれ」
「尋ねても良いだろうか?」
「答えられる範囲であれば」
ルイトガルトの問いからの返しの言葉に、シェラリンデが来た森を指さした。
「亜人の南下に繋がるような事はあったかな?」
「それが原因かどうかは分からないが、老人の覚醒者が亜人を追い払っていたという話はあるな」
「そんなので亜人は南下するのか?」
怪訝な顔を浮かべるルイトガルト。
「追い払われた亜人は、別のテリトリーの亜人勢力に合流する事になる。群れの規模が増えていけば、必然的に勢力域を増やしていくしかない」
「……勢力を広げようとすれば、別の勢力と縄張り争いになる……か」
ルイトガルトの言葉に兵士は頷いた。
「あるいは、縄張り争いを避けて、南下するという事はあり得る」
「その可能性は大いにありそうだね」
推測であるが、一つの答えにたどり着いたようにシェラリンデは感じた。
別の群れを吸収して大きくなったとすれば、捨て駒のような戦術を組まれても可笑しくはない。
「あとは、武器の入手先か……」
「少し前に行商が中古の武具を大量に奪われたという事件があった。先の老人の覚醒者はその始末をしているとな」
レタニケ領に現れた亜人らの中で、強力な武具を持っていたのは一部であった。
残りは使い古した武器を持っていた――となれば、そうした亜人らは、追い立てられ、テリトリーを失った亜人達だった可能性はある。
「ピースが埋まってきた感じだね」
「そうだな。各自が収集した情報をまとめれば、真相が分かるかもしれん」
シェラリンデとルイトガルトは頷き合う。
大峡谷の調査では謎は残ったが、後は仲間達がきっと見つけてくれるはずだ。
兵士達と分かれ、2人はレタニケ領へと戻る。
先に進むルイトガルトの背中を見つめながら、シェラリンデは心の中で呟いた。
(……こちらで負のマテリアルの痕跡は無かった……とすれば、レタニケ領内の方……)
●牡丹と
レタニケ領の北部の集落を回って情報を収集していたイレーヌ(ka1372)は街へと帰って来ると、鳴月 牡丹(kz0180)が滞在している部屋へと足を運んだ。
「やぁ、イレーヌ君!」
扉が勢いよく開き、目を輝かせた牡丹が出てきた。
よほど、暇していたのだろうか。だったら、部屋の中でも掃除すればいいのに、酷い散らかりようだ。
「ちゃんと外に出ず偉いな」
「まるで、ボクが小生意気な小僧みたいな言い方だね」
「冗談だ」
通りで買った肴を掲げる見せたイレーヌ。
ちょうど、小腹も空いてきたところではあるし、牡丹は快く部屋の中にイレーヌを入れた。
「調査はどうだい?」
「私の方はさっぱりだ」
あまりの散らかりようにどこに腰をかけていいか、さっぱり分からない様子で苦笑を浮かべながらイレーヌは牡丹の問いに答える。
襲撃を受けた集落に生き残りは居なかった……いや、居たとしてもどこかに避難したのだろうか。
他の集落でも、これと言った情報は得られなかった。あるとすれば、怪しい武器商人は居なかったという事だろうか。
「ライルが身につけていた鎧と同じものがあるかと思ったのだがな」
「まぁ、豪華な鎧だよね。どことなく危なそうな気がするマテリアルを感じたけど」
「何か知らないのか?」
その問いに両手を上げる牡丹。
「さぁ……でも……歓迎会の時、鎧の話は出なかったかな……あれだけ、豪華な鎧だったのに」
「それは、いつ頃の話だ」
「確か、ほら、あれだ。温泉行った後だよ」
その牡丹の言葉に、レタニケ領での温泉の出来事を思い出した。
あれは色々な意味で凄かったが――そういえば、あの温泉で気になる事があった。
「あの時、雑魔が出現していたが、もしかして、偶然じゃない可能性もあるか」
今なら温泉に行けば何か分かったかもしれない。
雑魔は安易に出現したりしない。マテリアルの汚染等が原因で出現する事はある。掛け流しで綺麗な状態の温泉だったはずなのだが……。
「温泉行く!?」
牡丹が期待の眼差しで尋ねてくるが、さすがに調査時間は迫っているので難しい。
「行きたい所である……が、牡丹は希の許可無く出かけていいのかい?」
「ぐぬぬ……」
悔しそうな牡丹の表情が可笑しく、微笑を浮かべるイレーヌだった。
●【強制】
ライルの鎧について、仲間から忠告を受け取っておいた事にソフィア =リリィホルム(ka2383)は心の中で感謝した。
念の為に警戒していなければ、動揺していただろう。
「貴方が……」
領主の屋敷は静寂に包まれ、その中で彼女が対峙しているのは人型の歪虚だった。
黒紫の髪と瞳、そして、幾何学模様が美しい角を持った歪虚の名は、ネル・ベル(kz0082)。
「ハンターか……思ったより気が付くのが“早かった”な」
「ライルさんは鎧の事を『家に伝わる鎧』と言っていたけど、街で聞き取ったら、そんな事実は無かった」
ソフィアはレタニケの街で調査していた。
その結果、領主であるレフェタルニーケフ家には、代々、伝えられた鎧は無いという事実が判明した。
ライル自身の姿が最近、見られない事。屋敷への出入りは禁止された事。そして――。
「あの豪華な鎧から負のマテリアルが感じられた事と、過去の報告書からたどり着いた……」
鋭い視線をソフィアは歪虚へと飛ばす。
「傲慢――アイテルカイト――の能力、【変容】で、鎧の姿をしていたと」
まさか、ネル・ベル自身がとは思いもしなかったが。
だが、冷静に考えてみれば、特殊な能力を行使出来るのは、それなりに実力のある存在でもある。この歪虚であっても不思議はない。
「よく調べたものだな。私の名はネル・ベル。偉大なる傲慢――アイテルカイト――の者だ。貴様の名を聞いておこう」
「……ソフィア=リリィホルム、だ」
「ソフィアか……覚えておこう。そして、貴様は運が“良かった”な」
その歪虚の言葉にソフィアは身構えた。
「屋敷の出入りが禁止されているのに、私を通したという事は……意味があったと……何のために」
招き入れた事ではなく、なぜ、ネル・ベルがここに居るのか、一体、何を目論んでいるのか。
力を求めたライルを誘導し、亜人征伐を呼びかけたのか。その先に何をさせようというのか。
「レタニケ領と周辺の貴族を巻き込んだ内乱が目的か?」
「惜しい……とだけ、伝えておこうか」
ジリジリと歪虚が迫る。
その動きに合わせソフィアは少しずつ下がった。
トンっと背中が壁にあたる。それでも、グッとネル・ベルを睨み続けるソフィアの耳元で歪虚は囁く。
「強者は命じる。ここに歪虚が居ると言い廻りながら、帰れ」
負のマテリアルの強烈な圧力がソフィアへと襲いかかる。
傲慢――アイテルカイト――の能力【強制】だ。命じるままにその行動を実行する事になる。
そして、【強制】のままに、ソフィアは宿に帰るまで、命じられた事を実行した――。
●古都にて
調査を終えて、ミュオ(ka1308)は喫茶店で一息つきながら、これまでの調査内容をまとめていた。
レタニケ領で亜人が持っていた強力な武器。その出処が分かったからだ。
「目録が無かったのは残念でしたが……」
領主との接触は出来なかったが、幸運にも武器の製造に関わった人物と技術者だという人物に会う事は出来た。
そして、その結果はミュオの推測通りだったのだ。
「茨小鬼との戦いの際、ウィーダの街への支援で送られた武具が、アークエルス産だったと」
そう言いながらメモに書いて行く。
どういう経緯かは、関係者の一人に会いに行った仲間が聞き取ってくれるだろう。
他にも武具に関わっていると思われる港町ガンナ・エントラータで目撃された老人の存在もあるが……。
「亜人が人間の勢力域に入るなら、戦いは避けられない。けど、強力な武器だけでは数が足らないとすれば」
それなら、人の武器を奪う可能性は高い。
そこに関しての情報も、やはり、大峡谷へと向かった仲間が調べてくるだろう。
武具について記したメモをまとめると、ミュオはレタニケ領と近隣について書き始める。
「フレッサ領とブルダズルダ領での噂や事件……」
共にレタニケ領の近隣であるこれらの領地内では歪虚絡みの噂や事件が起こっていた。特にフレッサ領では以前、歪虚と関わりがあったのではないかという噂もあったが、領地経営の改善や、テスカ教団巡礼者との戦い、港町ガンナ・エントラータ郊外で行われたベリアル軍との会戦で功績を残していて存在感を増しているという話もある。
ブルダズルダ領では歪虚や雑魔が街中に出現して惨事になる事があった。その後の領地経営は上手く進んでいないという。
そして、今回の亜人騒ぎだ。
「自然発生にしては出来すぎている――と思うけど……」
誰かが絡んでいる。
そして、ハンターオフィスの報告書から、ある存在が浮かび出てきた。
傲慢の歪虚ネル・ベル。
その目的は何か――なぜ、王国北部で活動しているのか。
「………うーん、後手に回ってますね」
ぬるくなった牛乳に手を伸ばすミュオ。
予防線を張っておく必要があるだろうか。例えば、ライルへアプローチしておくか、あるいは、レタニケの街の住民に注意を促すか。
「やっぱり、後手、ですね……」
お手上げとばかりにミュオは空を仰ぎ見た。
この先、如何なる事が起こってしまうのか、暗く澱んだ空に悪い予感しかしないミュオだった。
●軍師騎士
『刻令術式外輪船』フライングシスティーナ号の一室でライラ = リューンベリ(ka5507)は一人の騎士と会っていた。
友人のつてを頼っての事で、そうでなければ、面会は難しかっただろう。
「……という事が、レタニケ領でありまして、ノセヤ様から見た最近の亜人の動きと歪虚の動きをお聞きしたいのです」
これまでの経緯を包み隠さず説明したライラ。
ノセヤは王国北部の地図を広げ、何やらブツブツ呟きながら指で指していた。
それをライラは微動だにせず、黙って経過を見守っていた。きっと、彼なりの“技法”なのだろう。
ややしてから、ノセヤは席に座った。
「考えられる可能性の一つとして受け取って貰えればと思いますが……」
「はい。ノセヤ様、お願いします」
一言も聞き逃すまいとペンをしっかりと握るライラ。
「強力な武具を手に入れたゴラグオ達の群れは、大峡谷の奥に移動したはずです。当然、元々、そこをテリトリーとしていた亜人と争いになる訳ですね」
「まさか、武具を何らかの取引に?」
「そうです。テリトリーとの交換条件には悪くはないはずです」
時期的には北方動乱が終わった後のはずだ。茨小鬼らの噂は亜人にも広がっていただろう。
強力な力があれば、自分達でも人間と戦えると勘違いする亜人が居ても可笑しくない。
「より豊かな地を求め、力を手に入れた亜人の群れが南下したのでしょう」
「鎧の事はどうでしょうか? ネル・ベルが槍に変化していた事例も御座いますし」
その歪虚の名をノセヤが知らない訳がない。
実は縁深い存在ではあるのだが――。
「恐らく【変容】の能力でしょう。あくまで……私の想像ですが、あの歪虚の性格を見るに、直接、手を下さないと思うのです」
「ライル様が【強制】されていないと?」
「実際は分かりませんが、あの歪虚が王国各地で起こした事件を見ると……問題なのは、“人の心”だと」
ひたすらに力を求めるライルの言葉が頭を過ぎった。
「既に、ネル・ベルにつけ入れられていると?」
「そういう事です」
立ち上がったノセヤに合わせるようにライラも立つと、深々と一礼した。
「レタニケ領で騒ぎがあった際、王国軍の介入や協力は望めるのでしょうか?」
「正直な所、難しいとしか言えませんね。アルテミス小隊のソルラ隊長も作戦行動中なので。一応、本部には声を掛けておきます」
「……お話聞いて下さり、ありがとうございました」
成果は得られた。
だが、それ以上に、焦燥感を覚えるライラだった。
第5話へと続く――。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談所! ソフィア =リリィホルム(ka2383) ドワーフ|14才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/04/13 23:11:32 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/04/09 21:28:53 |