【碧剣】雪原を血に染めよ、碧なるもの

マスター:ムジカ・トラス

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,800
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/04/23 09:00
完成日
2017/05/08 01:28

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 ハンス青年の死は、ハンター達から伝えられることとなった。
 窮地を拓くべく送り出された青年の死は、冬の村に暗い影を落とすこととなる。身近な人物が、変わり果てた死体――さらには歪虚にすら身を落とし、ハンターに牙を剥いたという事実が、彼らを打ちのめしていた。

 それは、いずれ我らもあのようになるのだ、という想像をせずにはいられない悲報であった。

 騎士団の救援は望めず、"相手"は虎視眈々と村を狙っているに違いない。闇夜の向こうに、獣達の荒い吐息が幻聴となって響く。
 篝火の向こうに横たわる夜が静寂に染め上げられるなか、村に残った人間たちは、眠れぬ夜を過ごすことになった。



 ――しかし。
 ハンターたちはまだ、諦めてはいなかった。
 当然の帰結だ。彼らには闘う手段があるのだから、諦める道理も、ない。

「――道中で、こいつには言ったが」
 ロシュ・フェイランドは傍らの人物を指し示したのち、冷然とした眼差しのまま、告げた。
「私は、村人を死兵とする以外に抗う道はないと考えている」
 しん、と。夜の静寂に緊張が広がった。「そうなるだろうな」と、誰かが言うと、ロシュはそのまま、腕を組んだ女性へと視線を巡らせる。
「歪虚と化したハンスの実力は、どうだった?」
「大したことねェな。膂力は雑魔らしく増していただろうが、それだけだ」
 肩をすくめた女がそういうと、シュリ・エルキンズは思案げに呟く。
「……けれど、奇襲をする知恵はあったんですよね?」
 その知恵は、雑魔のそれとは一線を画する動きだ。それは疑念であると同時に、懸念でもある。
「それが知恵なのか、命令なのか、という点が、鍵だと思うのですが……」
「俺もそう思うけど、その区別は難しいね。命令を受けた上でそう判断するのを知恵、というなら、どちらにしても多少の知恵はあると言えるけど」
 いつ出撃となってもいいように全身鎧を着込んだ少女の言葉に、中性的な顔立ちのハンターが応じた。
「問題は、村人を死兵にする、という意図だよ」
 銀髪の少女が、ロシュを射抜くように見つめた。
「私たちだけで手が足りないかもしれないにしても、やりようは……」
「無い、と私は見ている。たとえ貴様らが一騎当千の猛者であったとしても、怯える子羊を飢えた獣たちから守り切るなど不可能だ」
「……違いねえな」
 壁に背を預けて暖炉に身を寄せていた銀髪の偉丈夫の静かな声が、いやに大きく室内に響いた。
「この村では籠城は望めそうもない。柵はある。補強も出来る限りしたが、雑魔相手なら弱く見積もっても2−3撃は持たないだろうな」
「小さい村だ。やむを得んが……」
 戦う、という一点において、答えは出ていた。
 ならば、どのようにして、というところを詰めていくうちに――朝が来た。



 夜明けを告げる陽光は、長い夜に苦しんだ人々にとっては安堵の象徴足り得るものだった。
 それだけ、目に見えぬ恐怖の影たるや凄まじかったのだろう。日の熱が大地を温めるまでは時間がかかろうが、眩き光はそれだけで縋るように武器を携えた者たちの緊張を溶かした。


 大量の獣の群れが、村を包囲せんと向かってきている、との知らせが届いたのは、それから三十分後のことであった。




 目覚めてすぐに、衝動がこみ上げてきた。
 ぞぶり、と。そいつは意識の裡で、嗤った。

 これは良い。こいつは良い。はっきりしてきた。わかってきた。状況が飲めてきた。これはどういうことだ。一度は全てを喪い、永年の眠りについた。そう思っていた。

 ――嗚呼。そうか。そういうことか。

 ならば。

 『ソレ』はその権能を余さず発揮する。放射する。

『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』。


 ――歪虚を、殺せ。

 そいつは。
 『――――』の名を持つソレは、高らかに哄笑をあげた。意思の芽生えを、誕生になぞらえるのならば、産声というべきもの。

 清冽ですらあるマテリアルの波濤が、雪原を呑み込んだ。
 それは高らかに、その場の生きとし生けるものの激情を、励起した。



 大地の響きが、雪上を伝って村まで届く。
 破滅の足音だ。大群というには心もとないが、村一つを潰すには十分な、獣達の群れ。
「――これ、は」
 しかし、村のそこかしこで狂奔する影があった。
 悲嘆にくれていた村人たちが、気づけば目を血走らせ、憤怒に濁った目で柵から身を乗り出すようにして歪虚達を睨みつけている。

「歪虚を殺せ!」
「一匹でも多く殺してやる!」
「武器を出せ!」

 そんな声が村の各所で上がっていた。
「こんな……」
 守るべき、と定めていた人々の豹変に、シュリは驚嘆せざるを得ない。明らかに、異常だった。恐怖が人を狂わせるのか。自分たちが滞在することを選んだことは、それらの恐怖を払うには不十分だったのか。現状を拒否するあまりに、無謀を冒してしまっているのだろうか。
 思考の遠くに、何かが過る。過去の光景が、おぼろげに揺れるような感触は――じきに、消えた。
「…………何かほかに、出来ることがあったのかな」
 そう、呟くにとどまる。
 考えるべきことは多いのに、惨状と呼ぶべき情景に、シュリは後悔を抱かずにはいられない。この状況に、何か歯止めを掛けられたのかもしれないのだから。
 けれど。
「…………」
 愛剣である碧剣を、抜いた。幸い、敵の足は遅い。
 "敵"の編成の意図も、見えてきた。村人たちが逃げようと思えば、転移門がある街へと続く南方しかない。それを塞ぐように大型の獣が配されているのだろう。ハンター達ごと向かって来れば数を托んで抑え、逆に、他方に機動力に秀でた"兵種"をおき、動き次第でこちらの喉元を食い破るつもりだ。
「……そのためには」
 "死兵にする"という、ロシュの言葉がちらついていた。幸か不幸か、当の村人たち自身が、その流れに沿う様相を呈している。
 それでも、個別に挑むのは愚策だ。
「…………あの人たちと、連携をしないといけない」
 じりじりと、胸中に火が灯る。焦りか、戦場に対する期待か。武者震いのように、精神が高揚するのを感じている。
 護れるのか、と、自問する。戦うことを選んだ彼らも、戦えずに避難所で震えるはずの彼らも。

「…………護ってみせる」
 碧剣の冷たい感触を感じながら、そう呟いた。

リプレイ本文


 "敵"の訪れは、轟きとなって地を鳴らした。四方を取り囲むように配された群れは、わずかばかりの静止を見せた。
 獣の姿をした破壊の使者は、かつては森の中に在った共存者たちの姿でもあった。
 人の軍もかくや、と言わんばかりの整列を示した軍勢は整然と走り出す。
 緩やかな加速は、確たる速度に至る――雪上を奔る地鳴りが、村へと届く。

「…………来ます」
 北方。柏木 千春(ka3061)が、短伝話へと呟いた。その視線が、左側方の柵外へと流れた。
 そこでは、神城・錬(ka3822)は柵外で身を伏せている。震えを抑えるように時折身が強張ることは気がかりであったが、千春は傍ら――村人たちへと、振り返る。
「円陣は、極力崩さないようにしてくださいね。それから、無理はなさらぬように……怪我をしたら、ちゃんと下がってくださいね」
「ああ……!」
 眦を釣り上げて、憤怒に顔を歪めた村人たちは、それぞれに得物を手にしている。こちらには十九名の村人がいた。そのうち五名が矢を持つ、狩りの経験者である。門を背負う形で円陣を汲んだ彼らは、千春の"提案"を受け入れていた。射手を守り、突破を防ぐほうが"効率的"である――という理を受けた結果である。
 過るものがあって、不意に心が騒いだ。南西の方向に目を向ける。
「………………」
 ――出来ることは、したつもりだ。それでも、この戦場にこびりついた懸念を、晴らすことができないでいた。


「……嗚呼、面倒臭ぇ……」
 ヴォルフガング・エーヴァルト(ka0139)は反射的に胸元を探って、慨嘆を零した。膿んだ戦場の気配と煙草の不在に嫌気を覚えずにいられない。
 傍らの村人一八名は、敵の接近を今か今かと待ち構えている。突出を避けるだけの知性はあるらしいが、所詮は興奮し、血に飢えた素人だ。期待はさほどしてはいない。
「本当、厄介な……」
 村人たちからやや離れた位置に立つヴォルフガングの傍らで、龍華 狼(ka4940)が呟いた。寒そうに身を竦める少年の姿に、ヴォルフガングは微かに、目を細める。
 感心ではない。ただ、使えるやつが居るという、一つの材料に対するささやかな安堵が溢れた。
 ――この戦場と言う名の隔離病棟で憎悪と言う熱病に、誰も彼もが罹患する。
 村人たちの興奮は、ヴォルフガングにとっては不吉な流行り病に相違ない。そこをいくと、冷静に見える――少なくとも、この戦場に対する"評価"が適切に見える――狼の存在は、有難い。
 此処から先は、生き残るための戦いだ。使えるものは、なんだって使う。
「この戦場、どう見る?」
 敵が十二分に近づくまで、特別にすることもないヴォルフガングは狼にそういうと、彼はちらりと村人たちを振り返り、曖昧な表情で呟きを返した。
「……やれるだけの事はやりましょう」
「違いねぇな……」
 結局のところ、それだけしか、ない。"時"が来れば、その時に果たすべきを果たすまでだ。


「だ、大丈夫ですか?」
「…………」
 シュリ・エルキンズの声に、マーゴット(ka5022)は上手く、返事ができなかった。
 いつから、だろうか。解らない。ただ、苦しい。胸の奥で、マーゴット自身にも了解できない"何か"が、渦巻いている。心配げに言葉をかけるシュリの気遣いが――その優しさが、胸を引き裂かんばかりに、荒れ狂う。
「大丈夫、だよ」
「……なら、いいんですけど……」
 それらを何とか呑み込んで言葉にすると、シュリは身を引いた。心配げな視線のまま、迫る敵群へと目をやり、呟いた。
「無理は、しないでくださいね」
 しゅらり、と。シュリは碧剣を抜く。青々と輝く剣の光がいやに妖しく光るのを見たマーゴットは、自らの手元に、視線を落とす。
 これから、ここは戦場になる。そう実感すると、不意に思考が研ぎ澄まされた。心の裡を渦巻くそれが何なのかをはっきりと理解する。
 紅く燃え盛る、燎原の炎のような――激情だった。
 それは、紛れもなく"力"でもある。切り払い、屠り、抉り、殺すための。
 ――守ろう。シュリとは、違うやり方で。
 だれをというのは、彼女の中ではもう明らかになっていて。
 手にした妖刀の重さに、そんなことを思った――その時だった。

『交戦開始するよ!』



 ジュード・エアハート(ka0410)は短伝話にそう叩き込むと、引き絞った弓を、解き放つ。
 龍弓「シ・ヴリス」から放たれた矢は高く、鋭い音とともに140メートルほどの位置の熊型歪虚に突き立つ。超長距離狙撃からの、強力無比な狙撃を、熟練の猟撃士が外すはずもない。
 狼を最前衛に、熊型が後詰として迫るこの戦場で、優先すべきは着実に敵を減らすことだ。元が大型生物なためか、他の戦域よりも数が少ないように見えるとはいえ、ここの敵はその分、重たい。
 次の矢を番えながら再度の射撃に備えるジュードは、"敵"の動きの変化に気づいた。
「……散開、してる」
 これをジュードは、足を鈍らせてでもその対応を選んだ、と見た。明らかに超長距離からの狙撃と、範囲攻撃を警戒したと。
 歪虚の知性は概して、元となった素体に影響を受けるものだ。"獣"がする判断とは思えない。
「皆、気をつけて。やっぱり、指揮官は居る……と思う! ただの獣だと思ったら、痛い目みるかも!」
 短伝話に再び言い切って、二度目の矢を放つ。これで、一匹の熊型が沈んだ。それを確認しながら、前方のロシュに声を張る。
「ロシュくん、前に出過ぎ!」
「――此処でいい。いちいち煩いぞ!」
 『殺られる前に殺る』べく、銃を持つ村人を前衛が援護する形を村人たちに依頼したが、ロシュはそれを拒み、銃所持の"壁"とは異なる役回りを選び、ごくごく軽度であるが、突出していた。
 そこでジュードと同じように矢を放ち、最前の狼型を屠ったロシュの背中は、頑なであり――同時に、歓喜に満ちていた。
 その心情は、ジュードが知るロシュとは、少しばかり異なる。けれども――。
「……もーっ」
 散開こそしたももの全速力で疾走する獣達を相手にする限り、ただひたすら射撃だけで倒し切ることは困難だということは解っている。しかし、治療手段が乏しいこの戦場での接近戦は、後に熊型が控えることを踏まえると極力、避けたいところだった。
 特に、こちら側に来た村人たちでは、太刀打ちできまい。歪虚化した動物の強さはハンスの例を踏まえればさほど変わってはいないだろうが、地力が違い過ぎる。
 同時に、ロシュがもう一匹の熊型を落とした。残り――四八。

 削り、きれるだろうか。
 ――護りきれる、だろうか。
 思考を過るのは、一人の少年だ。商人の性としては決して正しくはないのだろうが――そこを、勘定してしまう。
「無理はしないでよ……!」
 祈るように。また、ロシュをたしなめるように声を張りながら、三度、矢を放った。


 北方。周囲の雪原に、身を隠すに適した場所はなかったが、マテリアルそのものを鎮める形で、隠密を図る。
 その身体は、ひどく、震えていた。
 雪原の寒さに、ではない。湧き上がる衝動が、理性と軋みあっているがゆえだ。
 手元の刀を意識する。これは、"あの時"の刀とは、違う。無様には折れることはない。この体も、かつてとは違う。身動きが取れないまま、果てた己とは――違う。違うのだ。
「…………」
 なのに、後悔と憎悪が、止まらない。歯の根が震え、手が血の気を失うほどに握りしめられる。
 あの獣達は、"あの時"の歪虚ではない。ああ。なのに。
 ――俺は、この怒りを、正当化しようとしている。
 錬は、孤独に、その時を待っていた。

 ―・―

 敵が迫る。僅かな隆起に身を隠した錬は、動かない。風切る矢音が、幾重にもなる。村人たちは憎悪を吐き出すように、ひたすらに矢を射る。
 死ね、死ね、死ね、と。口々に叫ぶ姿が、心に響く。
「…………」
 しかし、それを取り上げることは、できない。計算として、彼らには奮戦してもらわなければ、この戦場はもたない。
 それも――此処まで、か。距離が詰まる。村人たちの更に前方に立つ千春へと向かって、小型動物たちが波濤のごとく迫る。
 その姿は、先日目にした獣と近しいものだ。
 鱗のような肌が所々にまじり、体躯の骨は一部が歪み、露出し角や牙のように突き出て、身体のそこかしこに"茨"が絡みついている。
 千春は、身を晒すように、一歩前へと踏み込んだ。
「此処は……通しません……!」
 数の暴威を前に、無謀な突貫と"見えるように"。
 敵の最前列と、自らが触れ合う瞬間に、紡いでいた法術を解き放った。少女の身体から、聖光が破裂するように膨れ上がり、迫っていた歪虚を薙ぎ払う。黒波の敵の群れに、直径10メートルの穴が開く、が。
「…………っ!」
 千春はすぐに、歯噛みせざるを得なくなった。いや。驚愕を飲み込むために、戦場で意識を研ぎ澄ますために、努めて意識を凝らした。

 獣達が、千春を、"迂回"している。

 一瞬の内に想起されたのは、千春たちを眺め、発見されたと同時に"逃げ出した"獣の光景だった。
「………っ、錬、さん!」
 千春だけでは、止められない。声を張ったその眼前で、村人たちへと、獣達が迫る。
 その横合いから駆け出した錬が、最前に居た獣を切り払う。そして――続く獣たちの突撃に錬が呑みこまれた光景が、飛び込んできた。


 ――エゲツねぇなあ……。
 狼はそんなことを思いながら、刃を振るう。
 西側。遠距離攻撃を選ばなかったヴォルフガングと狼のペアの戦場は、すぐに血なまぐさい総力戦へとなだれ込んだ。
 それも、その筈だ。ヴォルフガングは――『村人たちを餌にした』。

 少なくとも、結果はそうなった。
「ら、ァ……ッ!」
 村人たちへと突貫してくる獣達の横合いから、ヴォルフガングの刺突一閃が奔る。試作振動刀からマテリアルの光芒が伸び、二体の獣が餌食となった。しかし、敵も数が多い。すぐに空隙は詰まる。ヴォルフガングは止まらない。囲いを護るべく槍を持った村人に飛びつこうとする獣たちを、薙ぎ払う。
「脆ェ!」
 狼はヴォルフガングの気勢を聞きながら、刀を振るいつつ、後方に声を張る。
「強力は敵はこちらで引き受けます。皆さんは囲いに止まってる敵を狙ってください!」
 言いつつ、獣の動きを探る。"敵"は現状、囲い側――つまりは、村人たちへと突撃している。さらには、こちらを厭うように距離を取ってすら、いる。
「疾……ッ!」
 傍らを走り抜けようとした獣を断ち切るが、多くの獣が囲いへと向かっていく。ダメだ。止まらない。
 この方針は、ある意味で正解と言えた。敵は、強力な個体であるハンターよりも、貧弱な村人を狙うことで数の利を広げようとしている。
「…………っ、しくった、かな……!」
 獣を屠ることは簡単だった。だが、押されている。相対し、敵の動きに晒されて初めて、理由がわかった。
 "攻撃範囲"が、足りない。
 ヴォルフガングが手にする振動刀も、狼の日本刀も、いずれも間合いが短い。いかに範囲攻撃を振るおうとも多量の敵を相手取るには、何よりもそれが足りなかった。
「……なるほど、な」
 狼と同じ結論に至り、ヴォルフガングはぽつりと呟いた。
 だとすれば――。
 冷たく凍る思考の中でそんなことを、思った。
 村人たちが口々に叫びながら銃を撃ち、切り結ぶ気配が響き渡るのを感じ取りながら、ヴォルフガングは妙に、口元の寂しさを覚えた。


 西方は、血に染まりつつあった。
「――っ、だめだ……っ!」
 シュリの声が響く。盾で鹿の突撃を抑えたシュリの悲痛な叫びが響く。手にした剣が碧光となって走るが、足りない。ヴォルフガングたちと同じ理由だ。よく切れる剣も、匠な剣技も、"届かなければ"意味がない。
「マーゴットさん……!」

 こちらでは、機先はマーゴットが抑えた。腰に構えた妖剣を振るったマーゴットは次元ごと獣達を断ち切る。一太刀で9匹の獣が飲み込まれた、が――問題は、その"射程"にあった。最大で16メートル。その距離を全速力で潰す獣たちを止める手立ては、残念ながらありはしなかった。
 当然、獣たちは真っ直ぐに迫ってきた。他所の戦域と同様に、"村人"を狙う獣たちの進軍を、真っ向から受け止める形になる。
 シュリは、獣たちに揉まれながら奮闘していた。
 しかし、だ。
 戦線は、不器用な円を刻む形となった。

「……死なせ、ない……!」
 シュリの声が、届いているのか。赤い幻影を纏うたマーゴットは熱に浮かされたような表情で妖剣を煌めかせる。ざんざんばらりと、獣たちを切り裂き続ける。
「あの子は、シュリだけは……!!」
「……、く……っ!」
 マーゴットはシュリを護るように立ち回っていた。己の心の裡から湧き上がる衝動に突き動かされるように、ただただ、盲目的に。一心不乱な立ち回り故にか、凄まじい勢いで死体が連ねられ、歪虚の常で消えていく。
 しかし、その動きは歪になる。何故か。
 十分に近づいた獣たちは、マーゴットと村人、双方を狙ったのだ。戦場の矛となるマーゴットと、最も脆く柔らかい、村人たちを。
 シュリは選択を強いられていた。どちらを、護るべきかを。しかし、マーゴットも、村人たちも、止まらない。
 一人の村人が鹿の角に腹を突き破られた。「死ね……ェ!」血と憎悪を吐き散らしながら、村人は鹿の首元にナイフを突き立て、事切れる。
「うわあああああああ……ッ!」
 届かなかったことに、絶叫した。食い破られそうになっていた戦線に突撃し、剣を振るい、2匹を屠った。足りない。足りない。全然、足りない……!
「マーゴットさん、僕はいいですから……彼らを……!」
「…………護るんだ」
 獣に突かれ、噛みつかれ、血を流しながら、マーゴットは凍てついた眼差しで刃を振るい続けた。


 突撃する瞬前、紅く明滅する錬の視界の中で獣たちは奇妙な動きを見せていた。
 僅かな停滞。突撃が僅かに鈍ったのだ。それは、錬にとっては好機に他ならず――往った。最大加速で、最前列に在る3人の小型獣を切り払った、が。
「ぐ、ぁ……!」
 そこからが、地獄だった。突撃を終えた瞬後、獣たちが錬の元へと殺到したのだ。
 何故、と思考することはなかった。小さくとも鋭い爪牙が深く食い込む激痛が、さらなる激情の炎となって爆ぜる。
「あ、あ、あ、……ッ!」
 紅く染まる雪を踏みしめながら、奔った。柵さえ超えれば、この小型な獣たちは追ってこれないという判断をする余地がまだ残っていた。
 超える。超えて、殺す。殺しきってやる。殺意に染まった意識の中で、身体を動かし続ける。

 ―・―

 錬の奇襲は失敗。更に、突出した千春を、獣たちは狙わなかった。
 その判断のもと、千春はすぐに後退を選ぶ。過去の光景がちらつく。そう。そうだった。
「"あれ"が獣の思考ではないってことに、気づいていたはずなのに……!」
 ただの獣程度の知性だと錯覚していた。これは歪虚だ。しかも、統制が取れた歪虚だった。
 百匹の獣は、二百の目で錬の隠密を見破っていたのだ、と推測する。だだっ広い雪原での隠密は、いかにスキルを使ったとしても限界があった。結果として、錬は多数の歪虚に組み付かれ、激痛に吠え立てている。
 しかし、状況は錬にとっては幸運で――一方で、千春にとっては不幸な結果となっていた。
 敵は、村人と錬の双方へと別れたのだ。
「……っ!」
 しかしこれは想定できていた。瞬時の判断で村人の方へと向う。村人たちの至近で放たれた二度目の聖光は、彼らへと殺到していた獣たちを実に効率よく薙ぎ払った。それは、過程が違えどもヴォルフガングがとった戦法と同様の形。
 激痛に叫ぶ錬が刃を振るい、自らにまとわり付いた獣を串刺しにする。村人たちは憤怒に狂い、獣たちに得物を振るい矢を放っている。
 僅かにのこった統制が乱れたら、終わりがくる。錬の治療に向うにも、敵の波は止まらない。聖光の間合いでは、位置取りを少しでもずらせば殺到した敵に村人たちが食いつぶされてしまう。
 今は未だ、その"損耗"を、許容できない。
「…………、突出は、避けてください! 隊列は保って、二対一を維持して!」
 逡巡したのは、一瞬だった。気分が、高揚している。何が適切かを見極めた千春はこう言い放った。
「大丈夫です、そのほうが効率的に、殺せます……!」


 南方。狼たちの進撃を最初に浴びたのは、突出していたロシュ・フェイランドであった。弓から大剣へと持ち替えたロシュは、なぎ払いの一撃でその先陣を削ぎ殺す。
「ロシュ君、さがって! 長く動けたほうが、その分敵を多く……!」
「断る!」
 ――この……分からず屋……ッ!
 即答に、ジュードの胸中に怒りが湧き上がる。
「私が下がれば、奴らが死ぬ!」
 背中から返った声は、自明の理を告げるものだった。
 狼型の足は村人のそれよりも早い。寄り付かれないように下がりながら攻撃する手段を取ったとしても限界はある。肉の壁となって立つ村人たちでは少なからず犠牲を出すだろう。ロシュが残らなければ、じきに前衛が先に落ち、弾幕が維持できなくなる。
「今は"手"が要る! 敵を殺せ、ジュード・エアハート。貴様らも歪虚を殺せ、死兵ども! 撃て!」
 轟々たるマテリアルをその身から放ちながら、ロシュは憤怒の形相で敵を見やった。その背から、十の銃弾が狼達の身体を撃ち抜いていく。生き残った狼が、壁となった村人に飛びかかるが、突き立てられた斧や槍によって絶命する。
「あー、もう…………!」
 この"形"を組んだのはジュードだった。だからこそ、この戦域の危険性も重々理解していた。殺られる前に殺らなければ、この戦場は詰んでしまうことを。
 ロシュの頑迷さに折れたのではない。ロシュの意思が……本音が、透けて見えた。
 ――捻くれてるんだから……!
 だから、ジュードは弓を構えた。一匹でも多く殺すために。可及的速やかに、現状を乗り切るために。
「熊型が来る。銃の皆はそっちを撃って! ソレ以外の皆は狼を! 俺も手伝うから!」


 ――戦況は、良くはねぇ、か。
 飛び込んでくる経過連絡を確認しながら、ヴォルフガングは胸中でぼやいた。
 突破を図ろうとした鹿型の背を、魔導拳銃「イグナイテッド」で追撃する。銃撃は、突出した鹿型の大腿部を穿ち、ふらついた鹿型は村人たちに纏われ、槍で突かれて絶命した。
「ヴォルフガングさん、どうしますか……?」
「さて、な」
 銃撃のために振り向いていたところで後ろから届いた狼の声に、ヴォルフガングは短く返すほかない。
 村人たちの損耗はヴォルフガングの想定を超えていた。殲滅が追いつかなかった結果として、生き残った村人たちは僅か三名だけだ。
 それも――。
「残念ながら、敵は待っちゃくれねぇ」
「……ですよね」
 死ぬだろう、という新たな想定がある。こればかりは戦闘方針と戦力の計算の結果だ。よほどのことが無い限り揺るがないだろう。
 狼の言葉は、言外に、「次は僕達ですよ」と告げている。先程の解答もソレを踏まえての言葉だった。さて、どうしたものか。
 幸い、敵は脆い。こちらも、村人たちは脆いが、"幸い"、意気は軒昂だ。護りながら戦闘すれば、三人分の働きはしてくれるだろう。
「…………」
「どうした?」
 その時、狼が怪訝そうな顔をしていることに気づいた。
「え、あ、なんでもないですよ! ただ……辛い状況だな、って!」
 狼は慌てた様子でそういいながら、思考する。
 ――またあの状態か……? 
 "素人"が知人の死に怯えを抱かないという、異常にすぎる現状は、これまでの経過と良く似ていた。
 つまりは――学生徒たちの時と半蔵戦。
 ――唯一両方にいたのはシュリだけ……トリガーはシュリが持っている?
 懸念する狼をよそに、ヴォルフガングは村人たちへと振り返る。どのみち、この場では保たない。後逸する敵の数も増えてきており、突破されるのは時間の問題だ。
 故に、声を張る。
「後退しながらの戦闘に切り替える! このまま引き込んで殺し尽くすぞ!」
 村人三人が頷いた、その時のことだった。

『マーゴットさんが……!』
 シュリの悲痛な声が、響いた。


「……、マーゴットさん!」
 シュリの声が、耳朶を打つ。

 ――聞こえてる。聞こえてるよ。シュリ。

 またひとつ、獣を屠った。さらに、もうひとつ。
 じくじくと、胸が痛む。シュリには、前を向いていて欲しい。"私"には、できないことだから。
 斬るよ。殺すよ。

 ――だから、笑っていて。

 只管に、切り続ける。そうしなければ生きられない私にとって、それが――。

 ―・―

 シュリが止めた相手を切り殺していく。マーゴットの奮戦ぶりは、見事の一言に尽きた。
 しかしそれは、その身を犠牲にして初めて成り立つ攻勢だった。
 シュリにしても、彼女以上に身を守る術に乏しく刻々と死んでいく村人を護ることを優先せざるを得ず、彼女を護る立ち回りができない。
 村人を犠牲にできないシュリの弱さと、シュリを優先したマーゴットの願い。
 ほんの僅かなズレに過ぎなかったそれが――今、致命的な結果となっていた。
 シュリが気づいた時には、マーゴットの傍らに、獣が迫っていた。
「ぁ、……」
 切り続けていたマーゴットの足が、突撃してきた鹿型を受け止めきれず――ついに止まった。
「、う、あ、あ……ッ!」
 殺到する獣たちを一度は切り捨てたマーゴットだったが、更に続いた連撃を、交わしきれない。柔らかな肌を牙が貫く。角が穿つ。アカイロが、爆ぜるように散っていく。
「シュ、リ……」
「――――マーゴットさん!!!」
 マーゴットに最接近していた獣たちを切り払ったシュリは、少女の身体を引き寄せた。シュリの耳元に、掠れた声が響く。

「笑っ、て、いて……死なない、で……」


 東西の二戦線が後退を開始したという知らせに、南方のジュードは苦い思いを噛み潰すしかない。
 北方の千春は、敵の侵攻を抑えることに手一杯で錬に治療を施せないと聞いている。
 そして、こちらも――。
「ロシュくん!」
「……まだ、だ……っ!」
 ロシュの苦しげな声が、響いた。"こちら側"は銃の射程の短さゆえに、熊型の接近を待つ必要がある。それでも、十丁をこちらにあてたのだ。一射につき一体を屠ることが可能になっている。懸念であった熊型への対策として、良く機能していた。
 狼型と相打ちになった前衛の村人は居たものの、被害としてはかなり少ない。
 ――このままなら、此処は、いける。
 ロシュが相対する熊型に矢を打ち込みながら、今後の算段を立てる。マーゴットが落ちた現状、"撤退"が見えてくるのは致し方ない。それでも、退路である南方を抑えられたことに、まずは安堵する。損切りはできた、という商人としての安堵だ。
 残る懸念は――ロシュの負傷状況と、もう一つ。限界が見えてきているロシュは、恐らくジュードと同じことを考え、今もなお意地を通している。
 それが、"いつ"来るか、というのが懸念だった。
 明らかに、知性がある行動をしている敵だ。浸透を果たした現状で、敵がどう動くか、といえば――。

『ちィ……ッ! 浸透した獣たちが俺たちを無視して散った! 挟撃されるぞ!』
 通信機の向こうから、ヴォルフガングの知らせが届いた。


 挟撃の知らせ。つまり、敵が北と南の双方へと散った、という知らせだ。

 北方でそれを聞いた千春は、選択を強いられた。背負った村人たちの生命か、"撤退"にかからぬ為に、錬の治療を急ぐかを。振り返った錬の視界に、村人たちの後方から迫る歪虚の姿が飛び込んできた。判断よりも前に、走り出していた。殺さなければ、殺される、と。
 西方で、シュリは歪虚たちの浸透を見届けるしかなかった。安全な所にマーゴットを預けるまでシュリは身動きが取れない。南方へと歪虚たちを追う村人たちを背に、走る。
 東方で、ヴォルフガングは静かに決意を固めた。戦術的な敗北が濃厚な現状で、誰かが身を切らねばならない、と。狼は小さく、苛立たしげに舌打ちを零す。
 南方で、ジュードはロシュを見た。視線が絡み合う。ロシュは歯を食いしばると、ジュードが止める間もなく目を血走らせて『前方』の熊型へと切りかかった。

 歪虚め! と、随所で怒号が響いた。


「―――――――っ!」
 村の中央へと到達したシュリは、待ち望んでいたハンターたちの姿を認めると緊迫した表情を微かに緩めた。
 ヴォルフガングと、狼だ。歪虚たちの姿は無い。本当に、南北へと散っているのだ。
「マーゴットさんをお願いします!」
 背負ったマーゴットを預けようとするシュリは、急くようにそう言った。南方へと向かった村人たちの元へと急がなくてはいけない。
「待て、シュリ」
 ヴォルフガングの声が、それをとどめた。振り返ると、ヴォルフガングの手が、その懐で虚しく揺れたところだった。

「撤退だ」
「……え……?」

 ヴォルフガングの隣。周囲を警戒している狼へと視線を送るが、返ったのは冷たい光だった。首を振る狼を否定するように、シュリは再び、ヴォルフガングを見つめる。
「冗談、ですよね……? なんで、こんな時に」
「――時間がねぇ。理解しろ」
「村の人たちはどうするんですか! おいて行くなんて、できない……!」
「錬とロシュが深手を負った。錬は千春が治療したが、ロシュが間に合わねぇ」
「……千春、さんは」
 撤退を、受け入れたんですか。言外の問いに、ヴォルフガングはただ、頷きを返した。
「…………っ」
 シュリの顔色が、蒼白に転じた。理解できない現実を、許容できない。
 何故、と、答えを求めている少年が、それでも問いを発することができないでいる姿に、ヴォルフガングは軽く瞑目した。
「此処は持たん。マーゴットも、錬も――ロシュも死ぬ可能性がある。退くぞ」
「――嫌だ」
 シュリは首を振り、背負ったマーゴットの手を握りしめながら、後ずさる。
「嫌だ! 嘘だ! 撤退なんて……ッ! そんなこと……!!!」
「……シュリさん」
 狼の、静かな声が、凍えた村に落ちた。そこから滲む微かな苛立ちに、シュリは気づかない。ただ、答えを求めるように、狼を見つめた。
「シュリさん……護るとは、それだけの力を身につけた者が使う言葉です」
 その瞬間のことだった。注意が逸れた瞬間にヴォルフガングが突進し、マーゴットを背負っているがゆえに無防備な胴へと、重い一撃を見舞う。
「いや、だ……」

「――実力も伴わない者ではただの驕りです。それだけは夢々忘れない様に」


「面倒臭ぇ……」
 ヴォルフガングの慨嘆が、重く響いた。人非人の仕事と割り切っては居るが、罪悪感が無いわけではない。ただ、呑み下しているだけのことだ。
 力なくシュリの上に倒れ込んだマーゴットを狼に託すと、自らはシュリを抱えあげた。そこに。
「――千春さん」
「…………」
 千春が、駆け込んできた。狼の声に応えることができない千春は、錬を背負っている。その表情は、覆い隠そうとしてもなお、拭えぬ強張りがある。

 ――あの時。
 千春は、判断を下せなかった。
 解っている。あの段階で、袋小路に落ち込んでしまっていたことは。
 敵は、千春を狙わなかった。そして、錬と村人の命を測り比べる天秤を、持っていなかった。
 いや、無意識に村人の命を優先してしまった。錬と、村人。一人と、十余人。
 結果として、挟撃をさばききれなかった錬が落ちてしまった。
「……っ」
 現状の帳尻をあわせる手段が、浮かばない。護るのだ、という意思が、硬く拘縮してしまっている。
 残らなくちゃ、という言葉は浮かぶ。それでも、身体が動かない。
「わ、わた、し……」
 何も、できない。
 崩れ落ちそうになっていた、その時、狼は微かに首を振って、こう告げた。
「行きましょう。ジュードさんが退路を維持してます」


「――っ!」
 銃弾を放ち続けながら、一人、また一人と死んでいく戦場を、支え続ける。足元で力なく流血に沈んだロシュを庇うように、村人たちへと殺到する狼型をさばき続ける。
 ポーションをロシュの方へと手渡しつつ、叫んだ。
「死ぬんじゃないよ、ロシュくん……!」
 各戦域で、少しずつ敗北した。この戦域については、勝利を納めていた――筈だった。ロシュが落ちたのは、挟撃で崩れる前に熊型の排除を――退路を確保するために無理を通した結果だ。
 だから、撤退してくるハンターたちが、挟撃してきた獣たちの向こうから向かってくるのをみて、安堵と――深い後悔を、ジュードは抱いていた。

 倒れ伏したロシュを見た"彼ら"は逃げないと言った。それどころか、逃げてくれ、とも言ったのだ。
 歪虚を倒したこの場の村人たちは、
 ロシュが示した意地が叶えられなかったことが――今はただ、苦い。


「追っては来ない、ですね……千春さん、シュリさんたちの治療は……?」
「――済みました。もう、行けます……」
 後方を警戒していた狼の言葉に、治療を行っていた千春が頷きを返す。その瞳に落ちる影には、狼は今は触れないことにした。身の安全の確保を優先したい。
「……何か、見える?」
 双眼鏡で村の様子を伺っていたヴォルフガングに、ジュードは囁くように尋ねた。千春に配慮してのことだったが、ヴォルフガングは僅かに首を振るのみ。良からぬモノを、見たのだろう。今は教えなかったその判断を信じ、ジュードは淡く、息を零した。

「ったく、いけすかねぇぜ……」
 帰路の最中、ヴォルフガングは一人、慨嘆した。
 胸中に宿る光景。獣たちに効率よく蹂躙された村はきれいなままであったが――その中を彷徨う、"人々"の影が、脳裏に焼き付いていた。

依頼結果

依頼成功度普通
面白かった! 12
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハートka0410
  • 光あれ
    柏木 千春ka3061

重体一覧

  • 元凶の白い悪魔
    マーゴットka5022

参加者一覧

  • Stray DOG
    ヴォルフガング・エーヴァルト(ka0139
    人間(紅)|28才|男性|闘狩人
  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 光あれ
    柏木 千春(ka3061
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • 良き羅針盤
    神城・錬(ka3822
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 清冽なれ、栄達なれ
    龍華 狼(ka4940
    人間(紅)|11才|男性|舞刀士
  • 元凶の白い悪魔
    マーゴット(ka5022
    人間(蒼)|18才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ジュード・エアハート(ka0410
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2017/04/22 18:35:59
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/04/22 07:30:05
アイコン 【質問卓】
龍華 狼(ka4940
人間(クリムゾンウェスト)|11才|男性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2017/04/20 23:18:15