• 界冥

【界冥】花の少女に祝福を

マスター:紫月紫織

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/05/29 12:00
完成日
2017/06/08 23:07

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●あるひのできごと
 それは初春の小さな出来事。
 帝都の大通りから少し外れたところにある、少し小洒落たフォーチュンショップ、メレミアの店内。
 ハンターズソサエティで修復され、そして目覚めたオートマトンの少女。
 修復パーツを集めてきたハンター達からミモザと名付けられた彼女は、今はクリムゾンウェストのことを学ぶためにソサエティで一般常識を、そしてたまにシルヴァの店のお手伝いをしにやって来るのである。
 そんなミモザの様子が、朝からおかしいと気づいていたシルヴァ。

 三度で推測、五度目で確信、七度目となってついぞシルヴァはミモザを呼び止めた。
 今日はやたらと、ミモザが品出しの際に棚にぶつかるのである。

「ご、ごめんなさい……」

 怒られるかと思ったミモザはおそるおそる、といった様子であったが、シルヴァの反応はそうしたものではなく、どちらかと言えば観察に近い。
 見ればどうにも、まっすぐに歩けていないようだった。

「怒ってないわ、怪我はない? ……どこかおかしいところはない? 目がよく見えないとか、耳が聞こえないとか……足に力が入らない、とか」
「……」

 ふるふる、と首を振るミモザの様子に、不調があるのは間違いないだろうと確信するシルヴァ。

(そうすぐに懐いてくれるとはおもってないけども、不調も隠すようじゃ心配よねぇ……)

 占い師としての観察眼、そして覚醒者としての感覚、その両方が彼女の体に異常があることを確信させている。
 人間ならば速やかに医者に連れて行く所である。

 しかし困ったことがある。

 オートマトンの不調を直すとして、どこへ行けばいい?。

●ハンターズソサエティ オートマトン研究室
 エバーグリーンの調査結果を研究するために仮設された場所である。
 ミモザを連れてそこを訪れたシルヴァ、そして検査の結果判明したのは――

「ふむ、左側の視覚と聴覚が断線しておるようじゃのう」

 初老の博士が色々とチェックした上での診断がこれである。
 どうりで棚にぶつかるわけだ。

 隠し事を言い当てられて申し訳なさそうにしているミモザの頭をそっと撫でて、気にしなくていいと伝えてやる。
 記憶のないミモザにとっては、自分の体のことですら未知のことにほかならないのだ。
 その不安は、出来る限り払拭してやりたいと思う。

「それで、治療は可能なんですか?」
「現状では無理じゃな。対応するパーツがなければ、内部の構造もまだ細かく判明しとらん。じゃが、それを補う外付けのパーツを作るぐらいならなんとかなるじゃろう。……だが問題が一つある」
「問題?」
「外付けのパーツを作るための部品が無い」

 つまり取ってこい、という話なわけである。
 かといって、エバーグリーンは一応危険性のある場所である。
 一人で行く、などという選択肢はないのだが……ハンターに依頼するとなると相応の出費になるわけで、流石にいかんせん気軽に決定できることでもない。
 無論、放っておくなどという選択肢はそもそも存在しないのだが……。

「仕方がないわね、エリクシアにちょっと相談してみるとしましょうか」

●ハンターオフィスにて
「というわけで、なんとかして」

 開口一番に本題へ入るものだからさすがのエリクシアも状況がわからずに閉口せざるをえなかった。
 いつもどちらかと言うとやり込められているシルヴァにとって、数少ないエリクシアを困惑させられる一言であった。

「とりあえず前段階を説明してもらえるかしら?」
「エバーグリーンに行きたいのよ」

 かくかくしかじかうまうまとりとり、まるかいてちょん(説明)。

「なるほど、ミモザちゃんのためというわけですか……ふむ」

 しばし考えた末、ぽんと手を打つエリクシア。
 その表情に、嫌な予感を感じざるを得ないシルヴァである、だがどうせいつも通りその提案に乗ることになるのである。
 何より今は、小さなオートマトンの少女のためという目的もあるのだから。

「そういうことなら一つ、ちょうどいい案件があるわよ」

 パラパラと案件のリストをめくり、目当てのそれを見つけ出したエリクシアはそれをシルヴァへと差し出す。
 受け取ったシルヴァはそれの意図する所を理解したのか、なるほどねと口にした。

「サーバー修復パーツ回収依頼、ね……これに私が手持ちをプラスして依頼内容に少し加える、と」
「そういうこと。ミモザちゃんの修復パーツはそう大量に必要なものでもないでしょう?」

 確かに、頭部に装着する小型ユニットのようなものなら、パーツとしては袋一つ分ぐらいだろうか?
 生きているパーツがどれだけ手に入るかは運であるが、目的とするものがそう違わない以上少し手間が増える程度で済むはずだ。

 お互いに納得し、そういう方向性で話がまとまりかけた時、ミモザが口を開いた。

「あの、私も……エバーグリーンに行ってみたいです」

 そう、珍しく自分の希望を口にするミモザの姿があった。

リプレイ本文

●笑顔の花
 部屋に入ってきた見覚えのある顔ぶれを見て、それまで不安そうにしていたミモザに笑顔が灯った。
「ハァイv ミモザちゃん、シルヴァちゃんっ」
「ロゼおねえちゃんだ」
 一番に飛び込んできたロス・バーミリオン(ka4718)に抱きしめられて、ミモザはちょっと恥ずかしそうだが、ロスはご機嫌な様子で更にぎゅーっと抱きしめる。
 オレンジのリボンで結われた金髪がふわふわと揺れていた。
 その隣ではシルヴァが続けて現れる面々に驚きを隠せない様子でいた。
 現れた面々が一番の理由だろう、殆どが顔見知りであった。
「ミモザさん、先日はどうも。調子の方は、どうですか? あまり良くない……とも聞いていますけれど」
 そう言ってロスの右隣、ミモザの死角となる位置から声をかけた天央 観智(ka0896)に、ミモザはやや大きく首を回す。
 右目で捉えるためにそうなったのだろう、それに気づいてルスティロ・イストワール(ka0252)は少しだけ表情を曇らせた。
「体の調子、は……良くないみたいだけど。気持ちの方はどうだい?」
 ミモザを気遣うようにかけられた言葉に、ミモザは少し考えを巡らせる。
 気持ち、と言われてもまだピンと来ないのかもしれない。
「今の生活が、君にとって楽しいものなら嬉しいんだけど」
 そう続けるルスティロ、集まった三人――いや、四人の顔をそれぞれに見回してミモザはこくこくと頷いてみせ。
「元気、です……シルヴァお姉ちゃんも、よくしてくれてます」
 と答えるのだった。
 いつの間にか現れていた時音 ざくろ(ka1250)を見て、ミモザは少しロスの後ろに隠れるように動く。
「あはは、初めまして。ざくろは、冒険家の時音ざくろ、よろしくね」
「……ざくろ、おねえさん?」
「いや、ざくろ男、男だからっ」
 微笑みかけたざくろの挨拶から一転しての慌てように、小さく笑うミモザだった。

「ふぅん、あれが起動したオートマトンのお嬢さんか」
 少し離れた場所でそんなやり取りを見ていた南條 真水(ka2377)が興味深そうにミモザに視線をやる。
 ところどころ機械のパーツがついている以外、ほとんど人間と差異は見受けられなかった。
「……ちょっと触ってみてもいいかな。肌の質感とか、気にならない……?」
「興味があるなら挨拶ついでに握手でもしてきてはいかがでしょう?」
 そう返すのは隣で博士に必要なパーツを確認していたメアリ・ロイド(ka6633)だった。
 既知の面々が集っている雰囲気に、真水としてもちょっと入りづらかったのかもしれない、そんな空気をなんとなく感じたメアリは真水の手を取り連れ立った。
「ミモザさん、少々よろしいですか?」
「は、はいっ!」
 突如ゆらりとうごめく金髪に、ミモザがびくっと一瞬身をこわばらせた。
 彼女の周囲で音を鳴らしたり、目の挙動を確認したりとメアリの所作は医者のそれに近い。
 その隣で挨拶がてらに握手をしていた真水は内心で彼女の手の感触に驚いていた。
 他のオートマトンとの違いがどれ位あるのかはわからない、だが真水の握るミモザの手は温かく、そして柔らかかった。
 ごく普通の少女のように。
(やぁ、エバーグリーンの技術ってすごいねぇ)
 感銘を受けながら真水は優しくミモザの小さな手を包むのだった。

●危険で貴重な宝箱
 降り立ったエバーグリーンの大地はひどく乾燥して砂だらけで、その今まで見ていた世界とまるで違う光景に、ミモザは驚いて立ち尽くしていた。
「平穏無事に、部品回収等が出来れば……良いんですけれどね」
「壊れた箇所も……ついでに貴女の記憶の手がかりも見つかると良いのですが」
 感慨深げにいう天央とメアリの隣を通り、ルベーノ・バルバライン(ka6752)が前に出て進み始める、都市への入り口にはところどころ機械の残骸が転がっていたが、かなり劣化が進んでいるように見受けられたため一行は止まらずに先へ進む。
 突然の警報音に全員が臨戦態勢に入ったのはその直後だった。
「魔導トラックみたいな音が、四つ。足音が三つ、どうやら危険で貴重な『宝箱』が近づいて来たみたいだね」
 ルスティロの言葉にそれぞれがミモザを中心にかばうように布陣する、程なくして現れたオートマンたちは、朽ちる寸前の体を必死に動かしているように見えただろう。
 タイヤが一部駆動不能となり壁にぶつかりながら近づいてくる個体、元は四足歩行だったであろう、三つの足で胴を擦りながら向かってくる個体。
 いずれも長い月日に晒されたことを否応なく感じさせる。
「ミモザ君、知らないままでいたほうが良いこともある。すでに滅びた世界であるならば、尚更な。だが、それでも君が知りたいと思うのならば、私は出来る限りの助力をしよう」
 決めるのは君だ。
 そう久延毘 大二郎(ka1771)は言う。
 ミモザの前に出て炎を生み出し、それをもってオートマンの足を吹き飛ばしながら。
「まあ、そういうこったな」
 メアリの持つ杖で叩いた場所から電撃が走り、更に一体を無効化する。
「うん、隠すつもりならそもそも連れてこないしね」
 目まぐるしく変わる戦場の中で幾つもの温かい言葉を向けられて、ミモザは正直混乱していた。
 それでも、その小さな胸の中に、確かなものが宿る。
 それは可能性という名の灯火だ。

 程なくして戦闘は終わり、完全に制圧されたそれらは宝箱として開かれることとなった。
 大二郎の案によりカメラアイなどが取り外され、メアリが事前に確認していた必要とされるパーツに近いものが取り出される。
 すべてが終わる頃には、現れた個体すべての活動は停止していた。

●欠片を求めて
 途中に地図を見つけ、三手に別れた。
 その一つ、廃棄処分上に当たりをつけた三人はそこに踏み入って、その光景に愕然とした。
 積み上げられた残骸、その大半がミモザと同じ形状のオートマトンだったのだから。
「……廃棄、か。なるほど……そういうことか」
「なんで……どうして?」
 どういう存在として作られたのか、どう扱われていたのか、その一端を垣間見たルスティロはおぼつかない足取りでそちらへと歩みをすすめる。
 すでに動くこともないオートマトンと、目が合った気がした。
「全てではないにせよ、我々とは違う接し方の側面ということだろうな」
「なーんだか、気に入らないねぇ」
 大二郎の隣で残骸の山を見上げた真水がそんなことを口にした。
 まるでモノのようなその扱いの果てにできた今にも崩れそうな山は、よくわからない苛立ちを彼女に与えていた。
 ルスティロの様子をよそに、大二郎はその残骸の山から必要と思われるパーツ類をあさっていく、オートマトン以外の残骸も多く存在したのは僥倖といったところだろうか。
 カメラと思しきものを見つけ、それらを荷物へと詰め込んでいく。
「……ミモザさんには、ボク達と変わらない心がある、よね?」
「さて、な。心の定義とはなんだ」
 ルスティロの確認するような、不安そうな声に大二郎は問いを返す。
 研究者として、曖昧で漠然とした概念に気軽に返答することはためらわれたのかもしれない。
「心があるって、感じることじゃないかな? 南條さんはそう思うよ」
「ふむ……であれば、ルスティロ君。君がそう思ったのならば、在るのだろう」
 明瞭完結な答え、それが救いとなったのかはわからない。
 けれどルスティロは目の前に朽ちているオートマトンの亡骸を見て小さくつぶやくのだった。
「ゆっくりおやすみ、名も知らない君。でも少しだけ、君の一部を貰って良いかな?」


 時間が止まったような部屋、踏み込んだ三人が最初に感じたのはそんな印象だ。
 レーンの上に並べられた製造中のパーツ、そしてそれを作っていただろうアームが作業途中で止まっていた。
「流石パーツの制作室、これなんか使えそうだよ……残念、製造装置は壊れてるか」
「どうだろうな、動力が止まってるだけかもしれねえぞ」
 嬉々としてパーツ探しを始める二人に、天央は若干出遅れた。
「機導師のお二人は……頼りになりますね」
 出番が無いかもしれないな、と思いつつレーンの流れてくる方を探してみると、パーツとして組み上げる前の部品を発見することができた。
「外付けの補助パーツ……って、どんな物を作る気……なんでしょうかね?」
「補助ってことは、直せないってことかな?」
「オートマトンの、特に頭部はブラックボックスだって博士のジジイは言ってたな」
 レーンの奥、完成品のあった場所から少し大きめのパーツ類を掘り出しながら、二人の言葉にメアリが返す。
「なるほど……だから、補助パーツ……なんですね」
「だな。あー、どれもでけーパーツばっかだな、もうちょっと細かいやつ……」
「あ、向こうの方にあったから持ってくるよ」
 奥のほうのレーンに行くほど細かい部品が揃っていた、それを布に包んで壊れないようにざくろは持ち運ぶ、機導師だけあって流石に心得ている手つきであった。
「そう言えばメアリさん……こんなものがあったんですが」
 そう言って天央が見つけたものを渡すと、メアリはそれがなんなのかすぐに理解した様子だった。
「こいつはパーツ同士をつなぐための金属だな、お持ち帰りだ」
 そう言って笑うメアリにつられて、天央もふふっと笑う。
「見えなかったり動けなかったりするのは不自由だからな……しっかり直してやんねーと」
「だよね! ミモザ今凄く不便だと思うもん、ざくろ放って何ておけないよ!」
「ミモザさんは……幸せ者ですね」


「シルヴァ、ミモザの左側を歩け。俺は前、ロゼは後だ。いいか、ミモザ。見えなくても隣にはシルヴァが、前後には俺たちが居る。安心してついて来い。それと少しでも気になるものがあれば必ず声をかけろ。それも調査対象だ」
 そう言ってさっくり仕切ると倒壊したサーバーを目指し進み始める。
 ロスも特に異論はないのか口を挟むことはなかった。
「あ、ミモザちゃん。そこは崩れそうだからこっちがいいわよ」
 崩れた建物の合間をロスの感覚に頼りつつ、歩きやすそうな場所を見つけて進む先に、倒壊したサーバーがその姿を晒していた。
「……建物がこんなになるまで何したのかしらね。退廃的でとっても素敵だけど住みたくはないわね」
 廃墟特有の人の居た名残、所々に感じる生活感とそれが失われて月日が積み上げた見えない堆積物。
 そうしたものを感じて思わず言葉が漏れた。
 そうしてサーバー前へとたどり着いたところで、休憩を取る間にルベーノからエバーグリーンについての説明があったのだ。
 しきりに頷きながら話を聞くミモザの隣には、感心したように話を聞くシルヴァの姿もあり、お前はハンターだろうと何度かルベーノは突っ込みたかった。
「あなたよく知ってるわねえ」
 関心するロスを前に、ルベーノは当然だろうと胸を張る。
 その様子に、彼の目指す覇道の形が見え隠れしていた。
 そして彼はミモザに手を出して言ってのけたのである。
「ハンターになって、自分で今までの文献を調べてみないか、ミモザ」
 その言葉に、シルヴァとロスがぽかんとした表情をする。
 あまりにも、唐突な一言であった。
「さ、さすがに急すぎる話じゃない?」
「そ、そうよね」
 思わず顔を見合わせるシルヴァとロス、その反応はミモザの可能性を否定する、というよりはそれが出来るのかという疑問のほうが大きかった。
「今すぐに決めろというわけではない。そういう選択肢もある、という話だ。大二郎のやつも言っていただろう? 知りたいと願うならば、助力する、と。そういう話だ」
 二人の間で話を聞くミモザの瞳に、輝きが灯った。

●最終調整
「いやいや、見事なもんじゃ」
 ハンター達の収穫を前にして、博士は感心するように頷いた。
 そこにあるのはまごうことなき宝の山、より分けられてサーバーの補修材料にする分はすでに分別されており、ここに残った材料で補助パーツを作ることになる。
「ちなみに……どんなものを作る……つもりなんでしょうか」
 天央の質問に博士がメガネをキラリと輝かせた。
「無論かっこいいフルフェイスヘルメット――と言うのは冗談で、カチューシャのような形状にすることになった」
 相当反対されたらしくうなだれる博士の、おそらく目論んでいたのであろう最後の同意を得るチャンスは見事に潰えたようだ。
 向けられた幾つかの視線がなんとなく痛そうである。
「折角なら可愛い方が良いではありませんか。女の子ですし」
「そおよ、こーんなに可愛いんだから」
 メアリの言葉にロスが同意する、その向こう側でうーむと唸ってみせて一言
「ギャップ萌えってあると思うんじゃがなー」
 燃えではなく、萌え。
 その言葉に心の距離が若干開いたのか、ミモザをかばうように動く二人だった。

 入れ物は概ねできていたところに回収してきたパーツで仕上げを行い、拡張パーツは程なく完成した。
 やや大振りな、ヘッドホンから耳あてをなくしたようなカチューシャには小さなレンズと集音装置がついていた、だが装飾に隠れてよく見なければそれはわからない程度である。
「ほう、なかなか似合うではないか。うむ、悪くない」
「まったくだな、萌えがどうとか言っておったから心配したが杞憂だったようだ」
 ルベーノと大二郎のが口々に言う、その様子は根幹こそ違えどふたりとも似たようなもので、その様子に周りから思わず小さく笑いが漏れる。
 カチューシャを装着したミモザは少しだけその感覚に戸惑ったのか立ち止まり、周囲を見回す。
 その表情がゆっくりと開き始める花のように変わり、満開になるまでにそう時間はかからなかった。
「どんな具合……なんでしょう、問題はなさそう……ですか?」
 天央の問いにミモザは両手を取ってはしゃいで見せた。
「すっごくよく見えるし、ちゃんと聞こえるの!」
 そう言ってはしゃぐミモザをくるりと向きを変える、
 先に居るのはざくろで、歩いてみろということだろう。
 それに気づいたミモザはざくろのところまで急に走り出して飛びついたのだ。
 先程までのおぼつかなさはどこへやら、である。
「おお、すごいね。何も問題なさそうじゃない!」
「うんっ!」
 はしゃぐミモザの姿を見て、ルスティロは自分の心配が杞憂だろうと感じていた。
 少なくとも、彼女は心配するようなことにはなるまい、と。
「何はともあれ、これで一件落着だねぇ」
 うんうん、とまとめに入る真水、まさかこの直後に爆弾が落ちるとは思っていなかった。
「ねぇねぇお姉ちゃん!」
「う、うん。何?」
 今まで見なかったような高揚しているミモザに若干驚きつつ返事をするシルヴァ。
 彼女からもたらされた言葉は――

「わたし、ハンターになりたい!」

 突然の宣言に一瞬にして室内が騒然となる。
 どうやら、まだまだ騒ぎは続くことになりそうだ。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 7
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 飽くなき探求者
    久延毘 大二郎ka1771
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバラインka6752

重体一覧

参加者一覧

  • 英雄を語り継ぐもの
    ルスティロ・イストワール(ka0252
    エルフ|20才|男性|霊闘士
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 飽くなき探求者
    久延毘 大二郎(ka1771
    人間(蒼)|22才|男性|魔術師
  • ヒースの黒猫
    南條 真水(ka2377
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • Lady Rose
    ロス・バーミリオン(ka4718
    人間(蒼)|32才|男性|舞刀士
  • 天使にはなれなくて
    メアリ・ロイド(ka6633
    人間(蒼)|24才|女性|機導師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
久延毘 大二郎(ka1771
人間(リアルブルー)|22才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/05/29 09:31:28
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/05/25 15:47:12