ゲスト
(ka0000)
トライアングル・ストライフ
マスター:坂上テンゼン

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/10/31 22:00
- 完成日
- 2014/11/04 06:46
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ある村の若者の証言
村から西には大きな山が聳え立っていて、毎日夕方になるとその山めがけて大きな夕日が落ちて行くのを子供の頃から見てきました。
その山には、それはそれは恐ろしい巨人が住んでいるから近づいてはいけないよと、昔から村のお年寄りの人達から聞かされてきました。
それが現実だったということを知ったのは、つい最近のことでした。
ある日の朝のことです。牧場に作業しに行くと、そこには私達が世話している牛以外のものがいました。
それは、あぐらをかいて座っている人に見えました。こんな朝早くに何をしているんだろうと思って近づこうとすると、思ったより遠くにいることに気がつきました。
それは、私よりはるかに大きな……巨人だったのです。
巨人は牛をちょうど捕まえたところでした。私達が丹精込めて育てている牛です。
巨人は斧を持っていましたが、そんなもの使わずに、素手で牛を引き裂きました。血が飛び散り、巨人が赤く染まりました。そして、素手で肉を引きちぎって食べ始めるではありませんか。
私達の牛を食べられたことは腹立たしいことでしたが、恐ろしくって止めようなどとは到底思えませんでした。
だから私は遠巻きにそれを眺めていました。
それを見て気づいたことがあります。巨人は身体中傷だらけで、まだ癒えきっていない傷も少なくありませんでした。
巨人は牛を食べ終わると、ずっと寝ていました。
そして夕方まで起きませんでした。
夕方といったのは、それ以外にも特別なことがあったのです。
牧場は村の外側にあり、柵に囲まれています。その外側には荒野が広がっていますが、夕日を背に浴びて、いくつかの影が村に向かって来るのを家の窓から見ました。
何だろうと思って外に出て確かめに行くことにしました。
牧場について驚きました。なんと巨人が起きて歩いていたのです。
巨人は村の外から来た何かに向かって歩いていました。その手には斧が握られていました。
私はこれから何が起こるのか知らなくてはいけないと思い、そっと後をつけました。
巨人は村に近づく複数の影の方に向かっていくと、突然天に向かって咆哮をあげました。
そして、一気に駆け寄ると、そのうちの一体を斧で斬りつけました。
斬られた瞬間に見ました――それはシルエットこそ人間に似ていましたが、醜く崩れたような顔をしており、牙が長く、皮膚も酷く汚れた色をしていました。
三体いたそれらのうち斬られた一体は黒い塵になって消えていきました。他の二体はそれを見て、慌てて逃げて行きました。
それがいなくなると、巨人は牧場へと戻って、眠ってしまいました。
村の人にそのことを話してみたら、その醜いものはオークという歪虚だそうです。
巨人がいなければ村は歪虚に襲われてしまったでしょう……でも巨人のせいで歪虚が村にやってきたのでしょうか?
●シンキングタイム
「……つまり巨人は正義の味方なわけか?」
「そんなわけないでしょう」
依頼人の村の若者から詳細を聞いたハンター・ヘザーの疑問に、ハンターオフィスの女職員は溜息をつきながら答えた。
「巨人……ジャイアントはおそらく食料を求めて村の家畜に手を出しただけです。傷だらけだったと言っていたでしょう、十中八九こいつは元々の住処をオークに追われたんですよ。その時負った傷を癒すために村では静かにしてるんでしょう。だからオークを憎んでて当然。人間のために戦ってるわけがありません。そんなこともわからないんですかやめて下さい抱き締めるのは私にそんな趣味はない」
「イセリナは可愛いのに性格が残念だ」
「あなたに好かれたくありません」
ヘザーは残念そうに職員の肩に絡み付けていた腕を離した。
「ならジャイアントとオークを殺し合わせればいいのか?」
「そう簡単にはいきません。オークというのは歪虚ですから、ジャイアントが殺されれば後で歪虚になってしまいます。それにジャイアントは住処を追われたのなら、オークのほうが戦力が上でしょう。単純な考えでは歪虚を増やすのは止められません何するんですかなんでキスするんですかハンターを呼びますよ!」
「……」
ヘザーはイセリナに息がかかるほど顔を近づけたが、ゆっくりと顔を離して真面目な表情に戻った。補足しておくとハンターはもう呼んでいる。
「この場合、どうすれば村を助けられるんだ?」
「それは皆で考えてください。
私の仕事じゃありませんから」
「ふうむ……」
ヘザーは救いを求めるように、集まったハンター達に視線を向けた。
村から西には大きな山が聳え立っていて、毎日夕方になるとその山めがけて大きな夕日が落ちて行くのを子供の頃から見てきました。
その山には、それはそれは恐ろしい巨人が住んでいるから近づいてはいけないよと、昔から村のお年寄りの人達から聞かされてきました。
それが現実だったということを知ったのは、つい最近のことでした。
ある日の朝のことです。牧場に作業しに行くと、そこには私達が世話している牛以外のものがいました。
それは、あぐらをかいて座っている人に見えました。こんな朝早くに何をしているんだろうと思って近づこうとすると、思ったより遠くにいることに気がつきました。
それは、私よりはるかに大きな……巨人だったのです。
巨人は牛をちょうど捕まえたところでした。私達が丹精込めて育てている牛です。
巨人は斧を持っていましたが、そんなもの使わずに、素手で牛を引き裂きました。血が飛び散り、巨人が赤く染まりました。そして、素手で肉を引きちぎって食べ始めるではありませんか。
私達の牛を食べられたことは腹立たしいことでしたが、恐ろしくって止めようなどとは到底思えませんでした。
だから私は遠巻きにそれを眺めていました。
それを見て気づいたことがあります。巨人は身体中傷だらけで、まだ癒えきっていない傷も少なくありませんでした。
巨人は牛を食べ終わると、ずっと寝ていました。
そして夕方まで起きませんでした。
夕方といったのは、それ以外にも特別なことがあったのです。
牧場は村の外側にあり、柵に囲まれています。その外側には荒野が広がっていますが、夕日を背に浴びて、いくつかの影が村に向かって来るのを家の窓から見ました。
何だろうと思って外に出て確かめに行くことにしました。
牧場について驚きました。なんと巨人が起きて歩いていたのです。
巨人は村の外から来た何かに向かって歩いていました。その手には斧が握られていました。
私はこれから何が起こるのか知らなくてはいけないと思い、そっと後をつけました。
巨人は村に近づく複数の影の方に向かっていくと、突然天に向かって咆哮をあげました。
そして、一気に駆け寄ると、そのうちの一体を斧で斬りつけました。
斬られた瞬間に見ました――それはシルエットこそ人間に似ていましたが、醜く崩れたような顔をしており、牙が長く、皮膚も酷く汚れた色をしていました。
三体いたそれらのうち斬られた一体は黒い塵になって消えていきました。他の二体はそれを見て、慌てて逃げて行きました。
それがいなくなると、巨人は牧場へと戻って、眠ってしまいました。
村の人にそのことを話してみたら、その醜いものはオークという歪虚だそうです。
巨人がいなければ村は歪虚に襲われてしまったでしょう……でも巨人のせいで歪虚が村にやってきたのでしょうか?
●シンキングタイム
「……つまり巨人は正義の味方なわけか?」
「そんなわけないでしょう」
依頼人の村の若者から詳細を聞いたハンター・ヘザーの疑問に、ハンターオフィスの女職員は溜息をつきながら答えた。
「巨人……ジャイアントはおそらく食料を求めて村の家畜に手を出しただけです。傷だらけだったと言っていたでしょう、十中八九こいつは元々の住処をオークに追われたんですよ。その時負った傷を癒すために村では静かにしてるんでしょう。だからオークを憎んでて当然。人間のために戦ってるわけがありません。そんなこともわからないんですかやめて下さい抱き締めるのは私にそんな趣味はない」
「イセリナは可愛いのに性格が残念だ」
「あなたに好かれたくありません」
ヘザーは残念そうに職員の肩に絡み付けていた腕を離した。
「ならジャイアントとオークを殺し合わせればいいのか?」
「そう簡単にはいきません。オークというのは歪虚ですから、ジャイアントが殺されれば後で歪虚になってしまいます。それにジャイアントは住処を追われたのなら、オークのほうが戦力が上でしょう。単純な考えでは歪虚を増やすのは止められません何するんですかなんでキスするんですかハンターを呼びますよ!」
「……」
ヘザーはイセリナに息がかかるほど顔を近づけたが、ゆっくりと顔を離して真面目な表情に戻った。補足しておくとハンターはもう呼んでいる。
「この場合、どうすれば村を助けられるんだ?」
「それは皆で考えてください。
私の仕事じゃありませんから」
「ふうむ……」
ヘザーは救いを求めるように、集まったハンター達に視線を向けた。
リプレイ本文
●非日常的な風景
朝が来た。
牧場特有の家畜の匂いがする中、上泉 澪(ka0518)は、昇ってきた朝日に目を細めた。
「平穏、ですか……」
そう独りごつ。
この田舎に求められているものはそれだけだったが、今やそれは動かなければ手に入れられないものだ。
――村に居着いたジャイアント。
――村を発見した歪虚。
その二つによって、村に平穏は失われていた。
ハンター達は、牧場で巨人を遠巻きに眺められる場所に陣取っていた。
巨人は眠っている。遠くからでは岩にしか見えなかった。
「人々の悩みの種は取り除かなくてはならない……それが王女殿下の御意志。だから、私は剣を取るんだ」
「素晴らしいぞ、イーディス!」
雑談の中で話す流れになった戦う理由について、イーディス・ノースハイド(ka2106)は語った。ヘザー・スクロヴェーニは興奮してイーディスの手を取ろうとする。
「ヘザーさん。イーディスさんにそれ以上近づかないでください」
それを、シェリア・プラティーン(ka1801)が険しい表情と声で制した。
「またやってんのか……んなことしてると男とだけ組ますぞ」
シェリアの向こうから、ティーア・ズィルバーン(ka0122)が冷めた視線を送ってくる。
「待て、君達の中の私はどれだけ見境がないんだ!?」
「事実だろうがこのスケベ百合が」
「イーディスさん、この人に近づくと妊娠しますよ」
「妊娠はしない、女なんだから。というか基本的に私は王女殿下ひとすじだ!」
「それもどうかと……」
結局、ヘザーから遠ざかるイーディスだった。
『歪虚の影響下に置かれたモノはマテリアルを喪失し、死に至った生物は新たな歪虚となる』
ラスティ(ka1400)は全員が集まった時を見計らって、皆に知らせた。それは巨人を歪虚に殺させてはいけない理由だった。
「で、どうするのじゃ!?」
イグナート・セヴェル(ka3376)がでかい声で問うた。
「巨人がオークに倒される前に、オレ達でオークを倒すんだ」
「なるほどな! そっちを仕留めるのか。解った! そうと決まればワシの上腕二頭筋が火を吹くぞ!」
「その後、巨人をどうするかだが」
「考える事は任す! ワシは筋肉使うのが仕事じゃ」
肩を露出したイグナートが、見事な上腕二等筋を誇示した。
ラスティや他のメンバーは打ち合わせを続けたが、イグナートはその間ずっとポージングを繰り返していた。
●オークの襲撃
日が上がりきった頃、突然、村の一角が騒がしくなった。
人々の騒ぐ声と、何かを打ち鳴らす音が聞こえてくる。
「まさか――?!」
ハンター達が気づいたその時、空気が動いた。
巨人が、腰を上げていたのだ。
巨人は斧を手に、音のする方向へと向かう。
「反対側に現れたのかッ」
巨人にばかり注目していたのは誤算だった。歪虚が巨人だけを狙う道理はなく、巨人も人間も等しく奪うべき正のマテリアルを持つ存在なのだ。
以前巨人から敗走したオークがいるのだから、人間の村の存在はすでに知られていた。
ハンター達は、走った。
村人達が逃げていた。
肌が爛れたようなオークどもが下卑た笑みを浮かべながら、武器を振り上げて村人たちを追っている。
歪虚は略奪は行わない。奪うのは命のみだ。
「くっ、仕方ねぇな」
ランアウトを駆使していち早くたどり着いたティーアとヘザーは、分散して狩りに興じるオークの一体の前に立ちはだかる。
白濁した目がティーアを睨み、攻撃的な声をあげた。
オークの剣が鈍い光を放ち、振り下ろされる。
ティーアは風に舞う木の葉のような動きでそれを避けると、サーベルで斬りつけ、再び距離を取った。
「チッ、浅いか」
「こちらも行くぞ!」
加えてヘザーもジャマダハルの刃を突き出す。オークはそれに反応し、反撃こそしなかったもののそれをいなした。
攻めに転じる状況ではない。ティーアはそう読んだ。近くにいたオーク二体が、二人の方へと向かってくる。
「おい。持ちこたえるぞ」
「承知した」
ティーアとヘザーは、避ける体勢で迫り来る敵を向かい撃った。
二人目のオークの襲いかかる刃をティーアはいなし、ヘザーもまた別のオークの攻撃を避けた。
さらに別のオークが気づき、二人の方を見る。
ティーアとヘザーは退路を確保するように位置取った。
囲まれはしなかったが、計三体のオークが次々と刃を繰り出してくる。
ティーアとヘザーも、無傷では済まなかった。
オークが身の毛もよだつ声を上げる。目の前の命を汚し、冒涜するがために。
「今だ、逃げろ!」
ティーアが合図する。
二人は後ろに跳躍し距離を取ると、背中を向けて走った。
ヘザーは視界の端に巨大な影を認める。
追おうとするオークの一体に、銃弾が飛んだ。
――そして、別の一体に巨大な影が躍りかかる。
轟音を立てて振るわれる斧の一撃がオークを叩き飛ばした。
そこには――聳える様な大男がいた。
「よし、作戦を立て直す」
オークに銃口を向けたラスティが言った。その周囲には硝煙が立ち上っていた。
ハンター達はオークに直接向かわずに、迂回した。
一方巨人は、オークと戦いを始めていた。
ハンター達が取った作戦は、巨人と戦うオークを背後から攻撃するというもの。
もっとも、オークを殲滅するまで巨人が持ちこたえられねば、作戦は失敗に終わる。
「……持ちこたえろよ」
ラスティは巨人に向けて、防御障壁を張った。
オークの攻撃範囲から逃れるため、急ぎ移動しなくてはならなかった。
だが意思の統一は十分になされている。
少し時間は食ったが、オークの背面に回ることに成功した。
現在、巨人には四体のオークが向かっていた。
それ以外の四体が、ハンター達の前に立ちはだかる。
「数に頼るなど筋肉が足りん証拠じゃあ!」
イグナートが吼えた。その両手に握られた黄金のハンマーが、不敵に輝いた。
その横にはイーディスが並んだ。細身だがしかし、その態度は高圧的だ。
「キミ達のような低級な雑魔程度に私の守りを突破出来る訳が無いさ、そうでない事を証明したいならかかってくるといい」
オーク達にも挑発の意図は伝わったらしく、猛り狂う声をあげて威嚇してくる。
今にも襲い掛かってきそうだ。ティーアがすぐ横に並ぶシェリアに声をかけた。
「んじゃ、フォロー宜しくなお嬢ちゃん」
「その呼び方は止めて下さいませ!」
ティーアの転移時にいろいろあった奇縁から、シェリアにとって彼は未だ接し方を決めかねる男だった。
ティーアのほうは何かと気にかけているのだが……。
オークが動いた。イーディスが前に出る。盾を前面に構え半身になり、無防備な面積を可能な限り減らした守りの構えで迎え撃つ。
思い切り振り下ろされたオークの斧が、火花を散らして弾かれる。
「――言ったはずだ。突破できないと」
その側面から、高速で回り込む影があった。
袈裟懸けに振り下ろされる、全長170cmの斬馬刀。澪だ。その巨大な刃には祖霊の力が込められていた。
刃はオークの胴体に深々と食い込み、すぐさま絶命せしめた。
「さあ、行くぜッ! 遅れるなよ!」
ティーアが駆けた。進行方向にいるオークの一体めがけ、側面に回り込んで棍棒を持つ腕を狙っての一撃を見舞う。
その一撃は過たず腕を傷つけた――が、それでも闘志は折れなかったのか、オークはなおも棍棒を振り上げようとする。
だがその場所にはシェリアがいた。盾を構えている。
棍棒の一撃を防ぎ、なお一歩踏み込んでシールドバッシュを喰らわせる。そしてティーアと並び、互いの死角を補うようにして立つ。
――白銀の剣と白金の盾。
その二人の視界には、巨人と戦うオークの姿があった。
「聖剣よ! 光の刃となれ!!」
シェリアの剣『アルマス』が白く輝いた。それは次なる戦いのための力だ。
さらに別のオークに向けて、ラスティの銃が火を噴く。それは脚を貫き、体勢を崩させた。そこにハンマーを振り上げたイグナートが迫った。
「ふぬおおおおおおおおお!!!」
血走る眼。躍動する筋肉。魂を込めた一撃がオークを強打し、その身を弾き飛ばした。
ハンターは短期決戦を望んでいた。それというのもジャイアントの命という制限時間が存在するからだ。だがオークも簡単には抜かせはしない。
残った一体が槍を振り上げ、挑みかかった。
だがその前に立ちはだかる影がある。
「お前の相手は私だ!」
ヘザーが右拳を向け、宣戦した。
澪、ティーア、シェリアが先行し、巨人と戦うオークに切り込んだ。残りのメンバーはそのまま交戦を続ける。
巨人は傷だらけではあったが、オーク四体を相手に互角の戦いを見せていた。
(とはいえ、安心できる状況じゃない)
澪が斬馬刀を構え、オークの一体に近づいた。
「ヤァァァーーーーッ!」
普段の落ち着いた雰囲気から想像できない闘志をむき出しにした大音声をあげる。
オークが思わず澪を見た。
――その目は人にあらざる歪虚すら肝を冷やすほどに力に満ちていた。
直接攻撃ではないブロウビートだったが、効果はあった。
その隙を巨人は見逃さず、オークの頭蓋を斧で両断した。
「隙だらけでしてよっ!」
シェリアが別の一体を側面から襲い掛かる。
白く輝く剣が奔り、血を流した。
だがオークは剣を構えなおし、反撃に出ようとした。
その瞬間、その腕が、斬り飛ばされる。
上からティーアが斬撃を繰り出したのだ。
四体のうち二体を倒した今、状況は有利だった。
戦力の分断に成功した上、巨人と挟み撃ちという形にする戦法が旨く行ったのだ。
やがて最初の四体が全て倒され、残った巨人にかかるオークも倒された。
●巨人の選択
オークはすべて無に帰った。
遺されたハンター達と巨人が向かい合う。
巨人の表情からは、何を考えているのかは窺い知ることはできなかった。しかし、緊張状態を解いているようには少なくとも見えなかった。
シェリアが一歩前に出た。
「おい!」
ティーアが止めようとする。しかし、
「動物だって心を込めて語りかければ意思は通じる物ですわ。きっと巨人だって……」
「言葉の通じる相手じゃないって!」
シェリアはティーアにかまわず、剣を収め、身振り手振りを加えながら語りかけた。
「わたくしどもに敵意はありません! あなたの敵は倒されました。しかしここは人間の土地です。どうかこのまま山へとお帰り願えませんでしょうか」
巨人はシェリアを見た。
そして、
「ティーアさん!」
次の瞬間、シェリアの目に入ってきたのは傷ついたティーアだった。そして自身は地に伏しており、ティーアに庇われたらしかった。
「だから言ったんだがなあ」
見れば巨人は斧を構えて臨戦態勢をとっている。あまりに攻撃が早く、そして強力だったのでシェリアには何をしたのかわからなかったのだ。
「かすり傷だ」
ティーアは立ち上がり、剣を握ると巨人へと向き直った。
しかし、左肩からのおびただしい出血が、地面を汚した。
「それじゃぁ、銀獣の狩りをはじめるとしますか」
シェリアは、そう言ったティーアの肩を掴んだ。
見ればその顔は真っ赤になっており、恥とも怒りともとれない表情が浮かんでいる。
そしてシェリアは拳を握ると、殴る代わりに、ヒールをかけた。
「それだけの筋肉を持ちながらなぜ戦う?!」
イグナートは巨人に呼びかける。良き筋肉の持ち主として共感できるものがあるかもしれぬと、自らも筋肉を誇示してみたが、攻撃は止めてこない。
むしろ敵意を感じた。
「こうなったら止むを得んさ」
ラスティが銃を撃つ。
強力な威力を誇る魔導拳銃であるが、その弾丸を受けてなお巨人は丸太のような腕を振るってくる。
「この守りが崩せるかどうか……!」
ほぼ全身を覆い隠す大盾を手に、イーディスが前に出る。
「ぐうっ……」
袈裟懸けに振り下ろされた斧が盾にぶつかり、激しい音がした。
イーディスは衝撃で体勢を崩し、膝をつく。
「まだまだ、この程度で崩れはしない……」
「無理をなさらず。こちらはまだ行けます」
と、澪。オークとの戦いのダメージも、自己治癒で回復している。
強く踏み込み、横薙ぎの斬馬刀の一撃を見舞った。
それは巨人のわき腹に食い込み、苦悶の声をあげさせる。
しかし巨人は反射的に、空いた左手で澪の頭を掴んだ。
「おのれ、離さぬか!」
踏み込んでのイグナートの槌の一撃が、巨人の膝を強打した。
巨人の体が揺らぎ、澪は脱出に成功する。
再び構えなおす巨人。
その正面に、ティーアが立っていた。
巨人は痛む足を踏み込み、斧を振り上げ、必殺の一撃を叩き込もうとする。
斧が轟音をたててティーアに迫る。
紙一重の距離で、ティーアの姿が瞬時に動いた。
それはさながら肉食獣が襲い掛かるように、巨人の懐へと突っ込み、胸板に剣を叩き付ける。
刃が皮を引き斬り、おびただしい血が噴出す。
巨人は、膝をついた。
一方ティーアは攻撃の反動で体勢をやや崩す。
そこに、膝をついたままで、巨人が斧を振り上げようと――
――だが、攻撃は成り立たなかった。
側面から近づいたラスティが、最大出力のエレクトリックショックを食らわせたのだ。
全身を震わせ、巨人は斧を落とし、自らもその場に崩れ落ちた。
●人と巨人の境界
ハンター達は包囲しつつ巨人が体の自由が利くようになるのを待った。
やがて巨人は重々しく上半身を上げた。
「歪虚は倒した。山へ、帰れ」
ラスティがあくまでも威圧的に言った。
「無意味な殺生はしない」
イーディスは剣こそ収めていたものの、盾はまだその手にあった。
巨人は二人を見比べると、威圧的でありつつも攻撃してこないことから意図を悟ったのか、ゆっくりと立ち上がると、斧を引きずって山のほうへと歩いて行った。
その後、澪の提案で村にとどまり、万が一巨人が戻って来た時のことを考え、数日に渡って警護することになった。
この事は村人たちの心を大きく安堵させ、ハンター達は大いに感謝された。
結局、巨人は村に現れることは無かった。
巨人の気持ちは誰にもわからなかったが、簡単に食料が手に入る村は巨人にとって居心地は悪くない場所であったと考えられる。
しかし、強い人間がいるということを知ったのだから、今後手を出す可能性は減ったとも考えられる。
人と巨人の住む世界は境界線によって分けられている。
それゆえに――昔から、村では山に近づいてはいけないと言い伝えられてきたのだ。
「それよりも……」
ヘザーは仲間達に言った。
「山に住む巨人が住処を追われ、人里に降りてくるほど、歪虚が増えてきているという事のほうが問題だ。
私達はこれからも、さらに忙しくなるのかもな。
それでも……戦い続けてくれるよな?」
ヘザーは夢想する。
かれらとともに、強大な敵と戦う、そう遠くない未来を。
朝が来た。
牧場特有の家畜の匂いがする中、上泉 澪(ka0518)は、昇ってきた朝日に目を細めた。
「平穏、ですか……」
そう独りごつ。
この田舎に求められているものはそれだけだったが、今やそれは動かなければ手に入れられないものだ。
――村に居着いたジャイアント。
――村を発見した歪虚。
その二つによって、村に平穏は失われていた。
ハンター達は、牧場で巨人を遠巻きに眺められる場所に陣取っていた。
巨人は眠っている。遠くからでは岩にしか見えなかった。
「人々の悩みの種は取り除かなくてはならない……それが王女殿下の御意志。だから、私は剣を取るんだ」
「素晴らしいぞ、イーディス!」
雑談の中で話す流れになった戦う理由について、イーディス・ノースハイド(ka2106)は語った。ヘザー・スクロヴェーニは興奮してイーディスの手を取ろうとする。
「ヘザーさん。イーディスさんにそれ以上近づかないでください」
それを、シェリア・プラティーン(ka1801)が険しい表情と声で制した。
「またやってんのか……んなことしてると男とだけ組ますぞ」
シェリアの向こうから、ティーア・ズィルバーン(ka0122)が冷めた視線を送ってくる。
「待て、君達の中の私はどれだけ見境がないんだ!?」
「事実だろうがこのスケベ百合が」
「イーディスさん、この人に近づくと妊娠しますよ」
「妊娠はしない、女なんだから。というか基本的に私は王女殿下ひとすじだ!」
「それもどうかと……」
結局、ヘザーから遠ざかるイーディスだった。
『歪虚の影響下に置かれたモノはマテリアルを喪失し、死に至った生物は新たな歪虚となる』
ラスティ(ka1400)は全員が集まった時を見計らって、皆に知らせた。それは巨人を歪虚に殺させてはいけない理由だった。
「で、どうするのじゃ!?」
イグナート・セヴェル(ka3376)がでかい声で問うた。
「巨人がオークに倒される前に、オレ達でオークを倒すんだ」
「なるほどな! そっちを仕留めるのか。解った! そうと決まればワシの上腕二頭筋が火を吹くぞ!」
「その後、巨人をどうするかだが」
「考える事は任す! ワシは筋肉使うのが仕事じゃ」
肩を露出したイグナートが、見事な上腕二等筋を誇示した。
ラスティや他のメンバーは打ち合わせを続けたが、イグナートはその間ずっとポージングを繰り返していた。
●オークの襲撃
日が上がりきった頃、突然、村の一角が騒がしくなった。
人々の騒ぐ声と、何かを打ち鳴らす音が聞こえてくる。
「まさか――?!」
ハンター達が気づいたその時、空気が動いた。
巨人が、腰を上げていたのだ。
巨人は斧を手に、音のする方向へと向かう。
「反対側に現れたのかッ」
巨人にばかり注目していたのは誤算だった。歪虚が巨人だけを狙う道理はなく、巨人も人間も等しく奪うべき正のマテリアルを持つ存在なのだ。
以前巨人から敗走したオークがいるのだから、人間の村の存在はすでに知られていた。
ハンター達は、走った。
村人達が逃げていた。
肌が爛れたようなオークどもが下卑た笑みを浮かべながら、武器を振り上げて村人たちを追っている。
歪虚は略奪は行わない。奪うのは命のみだ。
「くっ、仕方ねぇな」
ランアウトを駆使していち早くたどり着いたティーアとヘザーは、分散して狩りに興じるオークの一体の前に立ちはだかる。
白濁した目がティーアを睨み、攻撃的な声をあげた。
オークの剣が鈍い光を放ち、振り下ろされる。
ティーアは風に舞う木の葉のような動きでそれを避けると、サーベルで斬りつけ、再び距離を取った。
「チッ、浅いか」
「こちらも行くぞ!」
加えてヘザーもジャマダハルの刃を突き出す。オークはそれに反応し、反撃こそしなかったもののそれをいなした。
攻めに転じる状況ではない。ティーアはそう読んだ。近くにいたオーク二体が、二人の方へと向かってくる。
「おい。持ちこたえるぞ」
「承知した」
ティーアとヘザーは、避ける体勢で迫り来る敵を向かい撃った。
二人目のオークの襲いかかる刃をティーアはいなし、ヘザーもまた別のオークの攻撃を避けた。
さらに別のオークが気づき、二人の方を見る。
ティーアとヘザーは退路を確保するように位置取った。
囲まれはしなかったが、計三体のオークが次々と刃を繰り出してくる。
ティーアとヘザーも、無傷では済まなかった。
オークが身の毛もよだつ声を上げる。目の前の命を汚し、冒涜するがために。
「今だ、逃げろ!」
ティーアが合図する。
二人は後ろに跳躍し距離を取ると、背中を向けて走った。
ヘザーは視界の端に巨大な影を認める。
追おうとするオークの一体に、銃弾が飛んだ。
――そして、別の一体に巨大な影が躍りかかる。
轟音を立てて振るわれる斧の一撃がオークを叩き飛ばした。
そこには――聳える様な大男がいた。
「よし、作戦を立て直す」
オークに銃口を向けたラスティが言った。その周囲には硝煙が立ち上っていた。
ハンター達はオークに直接向かわずに、迂回した。
一方巨人は、オークと戦いを始めていた。
ハンター達が取った作戦は、巨人と戦うオークを背後から攻撃するというもの。
もっとも、オークを殲滅するまで巨人が持ちこたえられねば、作戦は失敗に終わる。
「……持ちこたえろよ」
ラスティは巨人に向けて、防御障壁を張った。
オークの攻撃範囲から逃れるため、急ぎ移動しなくてはならなかった。
だが意思の統一は十分になされている。
少し時間は食ったが、オークの背面に回ることに成功した。
現在、巨人には四体のオークが向かっていた。
それ以外の四体が、ハンター達の前に立ちはだかる。
「数に頼るなど筋肉が足りん証拠じゃあ!」
イグナートが吼えた。その両手に握られた黄金のハンマーが、不敵に輝いた。
その横にはイーディスが並んだ。細身だがしかし、その態度は高圧的だ。
「キミ達のような低級な雑魔程度に私の守りを突破出来る訳が無いさ、そうでない事を証明したいならかかってくるといい」
オーク達にも挑発の意図は伝わったらしく、猛り狂う声をあげて威嚇してくる。
今にも襲い掛かってきそうだ。ティーアがすぐ横に並ぶシェリアに声をかけた。
「んじゃ、フォロー宜しくなお嬢ちゃん」
「その呼び方は止めて下さいませ!」
ティーアの転移時にいろいろあった奇縁から、シェリアにとって彼は未だ接し方を決めかねる男だった。
ティーアのほうは何かと気にかけているのだが……。
オークが動いた。イーディスが前に出る。盾を前面に構え半身になり、無防備な面積を可能な限り減らした守りの構えで迎え撃つ。
思い切り振り下ろされたオークの斧が、火花を散らして弾かれる。
「――言ったはずだ。突破できないと」
その側面から、高速で回り込む影があった。
袈裟懸けに振り下ろされる、全長170cmの斬馬刀。澪だ。その巨大な刃には祖霊の力が込められていた。
刃はオークの胴体に深々と食い込み、すぐさま絶命せしめた。
「さあ、行くぜッ! 遅れるなよ!」
ティーアが駆けた。進行方向にいるオークの一体めがけ、側面に回り込んで棍棒を持つ腕を狙っての一撃を見舞う。
その一撃は過たず腕を傷つけた――が、それでも闘志は折れなかったのか、オークはなおも棍棒を振り上げようとする。
だがその場所にはシェリアがいた。盾を構えている。
棍棒の一撃を防ぎ、なお一歩踏み込んでシールドバッシュを喰らわせる。そしてティーアと並び、互いの死角を補うようにして立つ。
――白銀の剣と白金の盾。
その二人の視界には、巨人と戦うオークの姿があった。
「聖剣よ! 光の刃となれ!!」
シェリアの剣『アルマス』が白く輝いた。それは次なる戦いのための力だ。
さらに別のオークに向けて、ラスティの銃が火を噴く。それは脚を貫き、体勢を崩させた。そこにハンマーを振り上げたイグナートが迫った。
「ふぬおおおおおおおおお!!!」
血走る眼。躍動する筋肉。魂を込めた一撃がオークを強打し、その身を弾き飛ばした。
ハンターは短期決戦を望んでいた。それというのもジャイアントの命という制限時間が存在するからだ。だがオークも簡単には抜かせはしない。
残った一体が槍を振り上げ、挑みかかった。
だがその前に立ちはだかる影がある。
「お前の相手は私だ!」
ヘザーが右拳を向け、宣戦した。
澪、ティーア、シェリアが先行し、巨人と戦うオークに切り込んだ。残りのメンバーはそのまま交戦を続ける。
巨人は傷だらけではあったが、オーク四体を相手に互角の戦いを見せていた。
(とはいえ、安心できる状況じゃない)
澪が斬馬刀を構え、オークの一体に近づいた。
「ヤァァァーーーーッ!」
普段の落ち着いた雰囲気から想像できない闘志をむき出しにした大音声をあげる。
オークが思わず澪を見た。
――その目は人にあらざる歪虚すら肝を冷やすほどに力に満ちていた。
直接攻撃ではないブロウビートだったが、効果はあった。
その隙を巨人は見逃さず、オークの頭蓋を斧で両断した。
「隙だらけでしてよっ!」
シェリアが別の一体を側面から襲い掛かる。
白く輝く剣が奔り、血を流した。
だがオークは剣を構えなおし、反撃に出ようとした。
その瞬間、その腕が、斬り飛ばされる。
上からティーアが斬撃を繰り出したのだ。
四体のうち二体を倒した今、状況は有利だった。
戦力の分断に成功した上、巨人と挟み撃ちという形にする戦法が旨く行ったのだ。
やがて最初の四体が全て倒され、残った巨人にかかるオークも倒された。
●巨人の選択
オークはすべて無に帰った。
遺されたハンター達と巨人が向かい合う。
巨人の表情からは、何を考えているのかは窺い知ることはできなかった。しかし、緊張状態を解いているようには少なくとも見えなかった。
シェリアが一歩前に出た。
「おい!」
ティーアが止めようとする。しかし、
「動物だって心を込めて語りかければ意思は通じる物ですわ。きっと巨人だって……」
「言葉の通じる相手じゃないって!」
シェリアはティーアにかまわず、剣を収め、身振り手振りを加えながら語りかけた。
「わたくしどもに敵意はありません! あなたの敵は倒されました。しかしここは人間の土地です。どうかこのまま山へとお帰り願えませんでしょうか」
巨人はシェリアを見た。
そして、
「ティーアさん!」
次の瞬間、シェリアの目に入ってきたのは傷ついたティーアだった。そして自身は地に伏しており、ティーアに庇われたらしかった。
「だから言ったんだがなあ」
見れば巨人は斧を構えて臨戦態勢をとっている。あまりに攻撃が早く、そして強力だったのでシェリアには何をしたのかわからなかったのだ。
「かすり傷だ」
ティーアは立ち上がり、剣を握ると巨人へと向き直った。
しかし、左肩からのおびただしい出血が、地面を汚した。
「それじゃぁ、銀獣の狩りをはじめるとしますか」
シェリアは、そう言ったティーアの肩を掴んだ。
見ればその顔は真っ赤になっており、恥とも怒りともとれない表情が浮かんでいる。
そしてシェリアは拳を握ると、殴る代わりに、ヒールをかけた。
「それだけの筋肉を持ちながらなぜ戦う?!」
イグナートは巨人に呼びかける。良き筋肉の持ち主として共感できるものがあるかもしれぬと、自らも筋肉を誇示してみたが、攻撃は止めてこない。
むしろ敵意を感じた。
「こうなったら止むを得んさ」
ラスティが銃を撃つ。
強力な威力を誇る魔導拳銃であるが、その弾丸を受けてなお巨人は丸太のような腕を振るってくる。
「この守りが崩せるかどうか……!」
ほぼ全身を覆い隠す大盾を手に、イーディスが前に出る。
「ぐうっ……」
袈裟懸けに振り下ろされた斧が盾にぶつかり、激しい音がした。
イーディスは衝撃で体勢を崩し、膝をつく。
「まだまだ、この程度で崩れはしない……」
「無理をなさらず。こちらはまだ行けます」
と、澪。オークとの戦いのダメージも、自己治癒で回復している。
強く踏み込み、横薙ぎの斬馬刀の一撃を見舞った。
それは巨人のわき腹に食い込み、苦悶の声をあげさせる。
しかし巨人は反射的に、空いた左手で澪の頭を掴んだ。
「おのれ、離さぬか!」
踏み込んでのイグナートの槌の一撃が、巨人の膝を強打した。
巨人の体が揺らぎ、澪は脱出に成功する。
再び構えなおす巨人。
その正面に、ティーアが立っていた。
巨人は痛む足を踏み込み、斧を振り上げ、必殺の一撃を叩き込もうとする。
斧が轟音をたててティーアに迫る。
紙一重の距離で、ティーアの姿が瞬時に動いた。
それはさながら肉食獣が襲い掛かるように、巨人の懐へと突っ込み、胸板に剣を叩き付ける。
刃が皮を引き斬り、おびただしい血が噴出す。
巨人は、膝をついた。
一方ティーアは攻撃の反動で体勢をやや崩す。
そこに、膝をついたままで、巨人が斧を振り上げようと――
――だが、攻撃は成り立たなかった。
側面から近づいたラスティが、最大出力のエレクトリックショックを食らわせたのだ。
全身を震わせ、巨人は斧を落とし、自らもその場に崩れ落ちた。
●人と巨人の境界
ハンター達は包囲しつつ巨人が体の自由が利くようになるのを待った。
やがて巨人は重々しく上半身を上げた。
「歪虚は倒した。山へ、帰れ」
ラスティがあくまでも威圧的に言った。
「無意味な殺生はしない」
イーディスは剣こそ収めていたものの、盾はまだその手にあった。
巨人は二人を見比べると、威圧的でありつつも攻撃してこないことから意図を悟ったのか、ゆっくりと立ち上がると、斧を引きずって山のほうへと歩いて行った。
その後、澪の提案で村にとどまり、万が一巨人が戻って来た時のことを考え、数日に渡って警護することになった。
この事は村人たちの心を大きく安堵させ、ハンター達は大いに感謝された。
結局、巨人は村に現れることは無かった。
巨人の気持ちは誰にもわからなかったが、簡単に食料が手に入る村は巨人にとって居心地は悪くない場所であったと考えられる。
しかし、強い人間がいるということを知ったのだから、今後手を出す可能性は減ったとも考えられる。
人と巨人の住む世界は境界線によって分けられている。
それゆえに――昔から、村では山に近づいてはいけないと言い伝えられてきたのだ。
「それよりも……」
ヘザーは仲間達に言った。
「山に住む巨人が住処を追われ、人里に降りてくるほど、歪虚が増えてきているという事のほうが問題だ。
私達はこれからも、さらに忙しくなるのかもな。
それでも……戦い続けてくれるよな?」
ヘザーは夢想する。
かれらとともに、強大な敵と戦う、そう遠くない未来を。
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作戦相談 ラスティ(ka1400) 人間(リアルブルー)|20才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/10/31 21:51:19 |
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質問卓 イーディス・ノースハイド(ka2106) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/10/29 23:55:42 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/27 07:47:50 |