【奏演】Conductor~謁見~

マスター:風亜智疾

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/07/13 19:00
完成日
2017/07/20 00:56

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 真白のローブを目深に被り微笑みを浮かべた教祖の前に、一人の男が両膝をつき首を垂れる。
「お呼びと伺い参りました、教祖様」
 教祖は微笑みを浮かべたまま、肩に腰掛けるように存在している『モノ』と言葉を交わしていた。
 教祖の肩の上、羽の生えた小さな人型の存在。
 ――それは、教祖へと力を与えているという『精霊』だと、教団では言われている。
 精霊の表情は微笑みのまま変わらない。けれど、その声は確かに教祖には聞こえているのだという。
「……えぇ、そうですね。それが良いでしょう」
 精霊と語る教祖の隣には、長い金の髪を揺らす小柄な碧眼の少女が一人佇んでいる。
 恐らくは、美しい少女なのだろう。
 しかし顔は目と口元以外を覆うように。身に纏うアンティークドレスから見える手足を覆うように。
 少女は包帯で覆いつくされており、肌の露出はほぼなかった。
 精霊が教祖へと力を与えている理由のひとつが、この少女。
 教祖の妹だという存在だった。

 教団に入信したものが知りうる教祖についての情報は数少ない。
 しかも、この廃村を元に作り上げた教団には、信者以外が入ることはない。
 それゆえ、教祖の情報が外に漏れることはなかった。

 ふと、教祖の瞳が眼前の信者へと下りる。
「信心深き者よ、貴方に一つ、試練を与えます」
 柔らかな声の中に潜む、厳かな空気。
「この試練を超えた後、貴方はまた一つ望みへと至ることが出来るでしょう」
「はい、教祖様。いかなる試練をも、喜んでお受けいたします」
 なぜ自分が選ばれたのか。どんな試練なのか。
 そんなことはどうだっていいことだ。
 自分の望みへと、近づくことができるのであれば。
 教祖の力になれるのであれば。

 ――祈り給へ。崇め給へ。敬い給へ。我らが神を。


「この封筒を、自分が出ていった後に開封してほしい」
 ハンターオフィス受付担当のバルトロへと手紙を手渡した、ボロ布を纏ったかのような男はそう言うとわき目もふらずに走り去っていった。
「ったく、もし依頼なら一度ソサエティ本部に送らんとならんのに……」
 既に男の姿は遠く、追いかけることも難しい。
 仕方なく、バルトロは封を開けた。

 ――中には1枚の紙きれと1枚の写真。

「―――っ!!」
 咄嗟にバルトロは紙切れの方を握りつぶす。
 震える拳のその中、握りつぶされた紙切れ――とある絵本の1頁には、塗りつぶされた動物たちの絵と、流れるような文字が綴られていた。


『愚かしくも自らを世界を救う守護者と宣うものに天罰を』
『我は精霊の加護を受けしもの。真に傷つくものたちを救うもの』
『覚悟あらば一度のみ、謁見を赦しましょう。哀れなハンターたちよ』

 写真には、石や木で出来ているであろう多くの狼や鷲のゴーレム、であろうか。
 それらが警戒するように建物の中をうろつく様子が写されていた。


「俺は動けん。ヴェラの護衛がある」
 そもそも、こんなことを本人の耳に入れてしまえば、前を向いて進もうと思いを強くした頑固者の絵本作家が、自身も共に行くと言い始めてしまうかもしれない。
「ヴェロニカ嬢はまだ重要参考人扱いだ。ヘタに動けば余計な疑いが彼女にかかっちまうしな」
 古びたロングストールで覆われた唇を強く噛みしめ、ディーノは唸る。
「……偵察と情報収集、か」
「あぁ、そうなるだろうな」
 どういうつもりなのか、新興宗教の「教祖」とやらは、一度だけハンターと会ってもいいと言ってきたのだ。
 ただし一筋縄では行かないことは、写真を見れば明白で。
 恐らく戦闘は避けられないだろう。
「ディーノ」
「……分かっている。俺からの依頼にすればいい」
 一緒に行くことは出来ない。けれど、他のハンターが向かう手段――依頼を出すことは出来る。
「だがしかしどうする。二手に分かれる必要があるぞ」
「なら、最初から二手に分ければいい。そうだろう」
「つまり、同時進行の別行動依頼だな」
「バルトロ、頼んだ」
「おぅ」
 まるで尾のようにロングストールを翻し、ディーノは絵本作家の元へと戻っていく。
 その後ろ姿を見送ることなく、長い付き合いの案内係は2つの依頼書の作成を始めるのだった。


「どーして急に会ってやろうナンテ思ったんダー?」
「さぁ、どうしてでしょうね。強いて言うのなら、そう……」
 神殿の最奥。きゃらきゃらと甲高い笑い声と、柔らかい声が響いている。
 教祖と呼ばれるものの目的。それは。
 果たしてハンターというものが、どの程度の存在なのかを見極めるためかもしれない。

リプレイ本文

■嗤声
「虎穴に入らずんば虎子を得ず……という状況かな」
 神殿の扉を押し開いた鞍馬 真(ka5819)に続いてメンバーが建物に入った瞬間。
「キャハハ! 本当に来たネ!」
 建物内に反響して響き渡る笑い声。
 響く声に聞き覚えのある神代 誠一(ka2086)は、すっと目を細めつつ無意識に拳を握り締めていた。
 そんな彼の肩を軽く叩いた相棒のクィーロ・ヴェリル(ka4122)は小さく笑って見せ、誠一は同じように小さく口角を引き上げ深く深呼吸を一つ。
「お出迎えでしょうか?」
 しかし声の主は姿を現さない。
 カール・フォルシアン(ka3702)は首を傾げつつも注意深く神殿内を観察する。
 暗くなく、戦闘するにしても『謁見』するにしても光源の心配はしなくてよさそうだ。
「ちょっとボクと遊んでよ。どこを通ってモちゃあんと行くべきトコロにつくヨ」
 言葉に全員の緊張が一気に高まる。
「遊ぶのはいいけれど、一体どうやって遊ぶんだい?」
 問いかけるルスティロ・イストワール(ka0252)に、どこにいるかも分からない声の主は甲高い声で笑いつつ。
「簡単ダヨ! 道が分かれてたり部屋があったりシタラ、そこでいったんストップ! ボクが出す選択肢からひとつ選んでもらうヨ?」
 まるでゲームを楽しむ子供のようだ。内容は物騒この上ないが。
 冷静に会話を聞きつつ、誠一とカールはそう思う。
「僕たちに拒否権はないんだよね?」
 クィーロの微かに呆れた様な声に、甲高い声は盛大に笑って肯定する。
「それじゃはじめ!」

■C1
 罠を警戒して列を決めていたメンバーだが、今のところ特に仕掛けらしい仕掛けは見当たらない。
 注意を怠ることはないが、恐らく罠はないのだろう。
 しばらく真っ直ぐ通路を歩いていると正面に壁。通路は右と左に伸びている。
「まずは一番前のオニーサン? 右でしょーカ。左でしょーカ!」
 指名されたのは先頭を歩いていた真だ。
 ここまで、神殿内を徘徊しているというゴーレムたちには遭遇していない。
「どっちかはアブナイよー? どっちかはオニーサンたちにはラッキー!」
 この言葉を信用できるかはさておき、おそらくはどちらかの道にゴーレムがいるのだろう。
(右か、左か……)
 両方の道を交互に眺めつつ考える真の前。右の通路の先にふわりと黒い影が漂った。
 ――まるで、通せんぼをするように影は道の真ん中から動かない。
「左にしよう」
 自分たちに警告するように道を譲らない影に小さく笑いかけ、真は左を選択する。
「いいのカナァ? イイのかなぁ!?」
「あぁ。私の友人が導いてくれたからね」

■C2
 左の道を進むメンバーの前に、未だゴーレムは姿を見せていない。
 しばらく歩き続ければ、次は正面に巨大な柱の通った道と、右側に部屋に続くのだろう扉が一つ。
「ストーップ! 次は前から二番目のオニーサン! 前でしょーカ。部屋でしょーカ!」
 先ほどの問いに対する選択でゴーレムとの遭遇を回避出来ているのだとしたら。
 ルスティロは柱をじっと見つめる。
 恐らく柱の大きさからして、遠近法を使えばゴーレムくらい隠れられるだろう。
 対して室内はどうか。廊下と違って空間が限られている部屋で、果たしてゴーレムが待機などしているだろうか。
「カーバンクル、どっちだと思う?」
 契約精霊に話しかけるように呟いて、ゆっくりと目を閉じる。
 集中し、聴覚を最大限に研ぎ澄ませ。
 ――カタン、と。室内から物音が響く音が確かにルスティロの耳に届いた。
 事前の情報で、この神殿にいるのは教祖だけであって信者はいない。
 だとすれば。この物音は。
「あぁ、カーバンクル。ここは真っ直ぐ進もう」
 室内に潜んでいるのだろうキメラが立てた物音だと判断して、ルスティロは選択する。
 先頭に立つ真はそれを受けてひとつ頷くと、部屋を開けることなく真っ直ぐに進み始める。
「本当にぃー? ソッチでいいのー?」
 ほんの少しだけ、笑い声のトーンが下がった気がした。

■C3
 次は正面に扉、右に曲がる廊下。
「ジャア三番目の子! 部屋でしょーカ。右でしょーカ!」
 道行マッピングを続ける誠一を手助けするようにペイント弾でマーキングを施していたカールが手を止める。
 次は自分の番らしい。
 ゆっくりと右の廊下を、次に前方の扉を注視するが、どちらも特に変わり映えはない様に感じられる。
「オット! 邪魔はダメだよ最初のオニーサン」
 ふと何か口を開こうとした真に対して、その行動を阻害するように声が響く。
 どうやら一人ひとりに考え選択させるのが、声の主の楽しみ方なのだろう。
 ふむ、と軽く顎に手をやって考えたカールは、扉を選択しておもむろに口を開いた。
「右の廊下は少し狭いので、戦闘になったら都合が悪いかもしれません。なら、まだ部屋の方が追い込んだりすることが出来ますから」
 開け放った扉の向こうで、狼と鷲のゴーレムが5人を睨みつけていた。

 全員が一瞬で覚醒したその直後。
 まず真っ先に行動を起こそうとしたのは鷲だった。
 低い室内をものともせずに低空飛行で先頭に立つ真を追い越して最後尾の誠一の更に後ろを取ろうとする。
「常套手段を易々と見過ごすわけない、だろう!」
 一気に近距離から射出されたワイヤーを避ける余裕など鷲にはなく。
 グンっと引きずりおろすようにするが、やはりゴーレムだけあってそれなりの重量がある。
 ぐっと体勢を低くして足を踏ん張った誠一を飛び越えるように、クィーロが『チャージング』で一気に鷲と誠一の間へと割り込んだ。
「仕方ねぇなっ、っと!!」
 跳躍し、上段から振り上げられた太刀が、今度こそ鷲を宙から叩き落す。
「クィーロ、翼、借りんぜ!」
 そのクィーロの真横を『アクセルオーバー』で一気に加速し、刀に持ち替えた誠一が駆け抜けた。
「しょうがねぇな! じゃあきっちり護らねぇとな! お姫様!」
「誰が姫だ誰が!」
 若草色のオーラに染まる刀が閃く。
 暴れる鷲の爪が深く誠一の体を引き裂こうとするが、見えない「誰か」が誠一の体をぐいと引っ張る様な感覚と共に最低限の切り傷だけで済んだ。
 狙うは地に落ちた鷲の首。とにかく短期決戦で終わらせなければ、今回は体力を消耗すればするだけこちらが不利になる。
 互いを相棒、というだけあって、クィーロと誠一の二人は絶妙なコンビネーションで互いの不足部分を補っていく。
 一気に削ぎ落とされた鷲の首から柔らかな光が毀れ落ちる。
 ほぼ同刻。
 狼と対峙していたメンバーも無事狼を殲滅し終えるのだった。

■C4
 怪我人はカールがスキルを使用して回復させ、次。
 扉を開けた先には、真っ直ぐ続く廊下と、右へ曲がる廊下。
「次のオニーサン……前にもイタよね! さぁ、真っ直ぐでしょーカ、右デショーか!」
 成程声の主は以前のロックパペット戦の時に自分がいたことを覚えていたらしい。
 誠一は二つの通路をじっと観察しつつ、先ほど戦闘したゴーレムたちも分析していた。
(固さはロックパペットとは雲泥の差。今回のゴーレムは随分とすんなり攻撃が通る。大きさのせいか……? それとも別の要因か……)
 そして、何より今回のゴーレムは絵本の頁を持っていなかった。
 戦闘が終わって確認したが、何処にも落ちていなかった。
 深く息を吸って、誠一は集中する。『感覚を研ぎ澄まして感知エリアを広げれば、風が教えてくれる』そう言って自分を送り出してくれた友人を思い出す。
「右にしよう」
 先頭に立つ真が頷いて右折する。
 どうやら正解を導き出したらしい。

■C5
 次は左に曲がる廊下と、正面に扉。
「つまんない。一回しか当たってジャン!!」
 ここで初めて、笑い声の主の声音が変わった。
 どうやらここまで4回の選択で1度しか戦闘にならなかったのが、自分の思惑と違って面白くないらしい。
(まるで子供ですね……)
 カールは冷静に状況を整理する。
「最後は僕かな」
 左か扉か。さっきは室内にキメラがいた。
 二度も同じ状況を作るだろうか?
「僕らなら何が来ても大丈夫かな」
 クィーロは扉を開け放つ。
 正面で唸る狼と鷲のゴーレムを確認して、彼は困ったように小さく笑った。
「あー、ごめん?」
「いや、情報は少しでも多い方がいいからな」
 最初と違い、今度は誠一がクィーロの肩を軽く叩いた。

 先ほどと同じく、鷲はメンバーの後方を取ろうとする。
 恐らく強度は先とそう変わらない。ならば、一撃見舞った後は息の合った二人にひとまず任せよう。
「神代さん、クィーロさん、後は任せます」
 カールはそう判断しデルタレイで飛行中の鷲と狼の双方へとダメージを与える。
 ルスティロは、眼前の狼を見据えた。
「君の尻尾を借りるよ。……ごめんね、番犬君。『おあずけ』だよ」
 スキルによってルスティロの腰から赤く輝くマテリアルで構成された尾が現れる。
 勢いよく狼に向かって伸び、その体を拘束することに成功した。
 ぐぐ、と引っ張られる感覚に抗うルスティロの前で真が魔導剣を手に狼へと駆け込んだ。
 当初の予定ではまず全員で鷲を落として、と考えていたが、先の戦闘で思いのほか敵が脆いことは確認済みだ。
 ならば、上空を飛び去った鷲は後方に任せこちらを早々に落とすが吉だろう。
 『ソウルエッジ』によって強化された剣を振りかぶり、ルスティロによって動きを止められている狼の首目掛けて渾身の力を込めて振り下ろす。
 動物と比べれば固いが、それでもよそうよりも遥かに柔らかく感じるその手ごたえ。
 ごとりと首の落ちた狼と同時に、後方でも鷲が動きを止めていた。

■終点
 扉を開けたその先には、一本の道。分岐点はなく、終着には大きな扉がひとつ。
 恐らくゴーレムとの戦闘は此処までだ。
 全員が無言で歩を進める。
 其々が各々の推測を胸に、扉を開く。

 ――そこには、真っ白なローブを頭から被り肩に小さな何かを乗せた人影と、その隣に佇む包帯塗れのビスクドールのような服装をした少女がいた。

■謁見
「ようこそ。道に迷いませんでしたか? 哀れなハンターたちよ」
 声は高くもなく低くもなく。
 手にした蓄音石を握り締めつつ、誠一はその視線を相手から外さない。
 同じようにカールはさりげなく視線を至る所に向け続ける。
「僕は『長い耳の兎』。御伽作家のルスティロさ」
 ルスティロは首を傾げてみせた。
「どうして、誰かを傷つけるようなことに、彼女の絵本を使ったんだい?」
 ルスティロは自身がそっと背を押した絵本作家を思い出す。
「僕としては、謝ってほしいのだけど」
 彼の言葉に、教祖であろう人はフードから覗く口をおかしそうに釣り上げた。
「あれは、人々に愚かな希望を抱かせるだけのもの。いうなれば悪しきもの」
 ピクリ。その言葉に肩を跳ね上げたのは誰だったか。
「ハンターを恨んでいるのなら、ヴェラの絵本を恨むのは筋違いでは?」
 ルスティロと態と反対側に立っていた誠一の声に、教祖はそちらへと視線を向ける。
 どうやら目は見えているらしい。
「ハンターを是とするものは我々にとって悪です」
 それにしても、と。そこで教祖は肩を震わせる。何がおかしいというのだろう。
「君は教祖なんだよね。ここは何を信仰してるのかな?」
「ハンターを滅ぼすものを」
 それはつまり。まさか。
 思わず全員の背筋に冷たい汗が落ちる。
 そして、クィーロは当初考えていた質問を飲み込んだ。
 これは、見当外れだろうと判断したのだ。
「肩に乗っているのが精霊か? 一体どんな精霊なんだ?」
 ふと問われて、教祖は精霊へと視線を向ける。
「キャハハハハハ! おーしえない!」
「罰を受けるべきハンターに罰を与えられる精霊です」
 ふとそこで、カールは妙な違和感に目を細めた。
 それは、精霊だと自称する者の口元だった。
「それにしても……ヴェラ。ヴェラ、ねぇ?」
 教祖はまるで嘲笑するように誠一へと再度視線を向ける。
「貴方は随分と『ヴェラちゃん』と仲が良いようだ」
 誠一が目を見開く。想像とは違う発言に、脳内で情報がパズルのように再度組みあがっていく。
「貴方は、ディーノも知っていますか。彼だけが心を、色を取り戻してく。それが赦せないのでは?」
 次の瞬間、教祖から夥しい殺気が漏れ出した。
「知っているに決まっている……! だが、あいつだけじゃない。アイツ以外のハンターだってあの時っ……!」
 口調ががらりと変わった。声は低く、まるで呪いの言葉のように吐き棄てられた言葉を遮ったのは。
「おいおいトトー。まだその時じゃナイダロー?」
 精霊と呼ばれているものだった。
「……僕からも一つ、いいですか」
 カールは全ての会話を総合して、一つの核心に至った。
「肩の上の精霊。それはただの人形ですね? 本体は……そちらの女の子でしょうか」
 ぴたり、精霊の動きが止まる。
「教祖……今、トトーと呼ばれていましたね。その方の本心は、先ほどの言葉でしょう。何らかの理由で彼はハンターを恨み、ハンターに助けられたという絵本作家に嫉妬した」
 そこに付けこむものの存在に、カールは思い当たるものがある。
「ゴーレム、つまり無機物を操る力。それは……嫉妬眷属の特徴です」
 長い長い沈黙の後。
「キャハハハ!」
 甲高い嗤い声が、広間に響き渡る。
「だぁいせいかい!」
 つまり、それはカールの告げた言葉が真実であるということに他ならない。
 包帯塗れの少女がまるで三日月のように口の端を引き上げて嗤う。
「ハジメマシテ! 無力なハンター諸君! 僕は『エミーリオ』。嫉妬に属するヨ」
 教祖は被ったローブを取る。
 零れ落ちたのは白い髪。深い緑の瞳は、恨みと妬みで濁り切っている。
「僕はエミーリオと「契約」したもの。トトー」
 つまりこの教団は。
 契約者であるトトーが、嫉妬に属するエミーリオと共に作り上げた、ハンターに対しての恨みを晴らすためのもの。
「何故ヴェラやディーノを恨む」
 蓄音石をさらに固く握りしめ、誠一は唸る様に問いかける。
 そんな彼を嘲笑い、トトーは告げた。
「その者たちはきっかけだが……聞いてみればいい。本人たちに」
 そう言いトトーたちはくるりと背を向けた。
「話は終わり。帰るがいい、愚かなハンター」
 自分が振り向くまでに出ていかなければ、敵をけしかける。
 それはつまり、これ以上話すつもりはないという意思表示だ。
 聞きたいこと、言いたいことはまだ山の様にあったが。
 ハンターたちはその場から離れる以外の選択肢を取ることが出来なかった。
「僕は色んな所でハンターを見て、思ったよ。『彼らは英雄になり得る』『だから僕は……』」
 ルスティロの言葉を途中で止めたのは、彼の真横にいきなり出現した岩の棘。
「帰れ」
 背を向けたまま、教祖は吐き棄てた。

■Conductor
 様々な思いが、様々な事実が交錯する。
 次のステージの幕が、まもなく開く。


 END

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MVP一覧

  • その力は未来ある誰かの為
    神代 誠一ka2086
  • はじめての友達
    カール・フォルシアンka3702

重体一覧

参加者一覧

  • 英雄を語り継ぐもの
    ルスティロ・イストワール(ka0252
    エルフ|20才|男性|霊闘士
  • その力は未来ある誰かの為
    神代 誠一(ka2086
    人間(蒼)|32才|男性|疾影士
  • はじめての友達
    カール・フォルシアン(ka3702
    人間(蒼)|13才|男性|機導師
  • 差し出されし手を掴む風翼
    クィーロ・ヴェリル(ka4122
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/07/10 21:57:35
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/07/08 19:20:43
アイコン 相談卓
神代 誠一(ka2086
人間(リアルブルー)|32才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2017/07/13 16:47:04