• 繭国

【繭国】ヘザーの戦乙女チャレンジ!

マスター:坂上テンゼン

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/07/19 15:00
完成日
2017/07/25 04:31

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●今一番王国でホットなウワサ
 王国歴1017年6月、王都イルダーナに一つの噂が電撃のように駆け巡った。

 情勢の不安定な昨今であれば強力な歪虚の出現、はたまたそれに対抗する新兵器の完成、相応しい噂はそういうものであっただろう。しかし、これに限ってはそうではなかった。



『ヴィオラ・フルブライト(kz0007)が大精霊プラトニスをぶん殴った』



 ……それが、噂の概要である。



 そして。

「私を弟子にしてくれ!」
「…………」
 色々経緯をすっ飛ばしてだが、その噂が広まった結果、ヘザー・スクロヴェーニ(kz0061)がヴィオラに頭を下げている。
 仕事で色々忙しいヴィオラを探し回っての末、聖堂戦士団宿舎の前でようやく追いついてのことだった。時刻は既に夕方になっていた。
「己の拳を高めたいんだ。
 噂に名高きヴィオラの拳、是非とも参考にさせてもらいたい!」
 まあ広まりますよね、と心中で溜め息をつきながらヴィオラは頭を掻く。
 ヘザーの戦闘スタイルは格闘技をベースとしている。そのため件の大精霊を拳で殴打した事件について大いに感銘を受けたのであった。




 ヘザーの申し出は叶えられた。

「戦乙女の死の教練(デスロード・トゥ・ヴァルキュリア)」にヘザーの参加も認められたのである。

 さらに……

●ギルド街・某所
「一言ぐらい相談せぬかーッ!」
「私は前からお前たちを鍛えたいと思っていたぞ」
 ヘザー率いるギルド『愉愚泥羅(ユグディラ)』のメンバーも同様に参加が決まった。
「ヴィオラ……戦乙女の指導だぁ?!」
「田舎に帰らせていただきます」
「OK、ハンターは今日で廃業だ。故郷に帰ってパン屋でも始めるとするさ……」
「俺……No.1ホストになる夢が……!」
 口々にその場から逃れようとするメンバー達。
「逃がさん! この発令はすべての事柄に優先する!」
 ヘザーはギルド拠点の出入り口に陣取り、誰一人逃すことはない構えだ。

「おい、ヘザー」
「何だジャガー!」
「ジャガーって言うな俺はヤーグだ。その件はともかくとして、エリオットが言ってる黒の隊に入らなくていいのか? 王女様を護るにはその方が」
「私はエリオットの下にはつかん」
「……………………」
 お前はそれどころじゃないだろ、的なもって行き方で話をごまかそうとしたが、ヤーグ・アルシュガルは何度目かの無力感を味わっただけだった。

「……傲慢」
「それは私達の敵の名だアハズヤ!」
「一度、ヘザーは倒された方がいい」
 指で拳銃を作って撃つシスター服の女、アハズヤ・ナルガイ。
 猟撃士ではない。聖導師である。
「大体その格好でヴィオラを否定できまい!」
「私は筋肉使わない……」
「これから使え」

「わらわは筋肉とかつくのはイヤじゃあ!」
 リアルブルー出身・戦国時代の姫マニアの細川閃姫は女として訴えた。
「閃姫……君があの変態ストーカー(最強)に太刀打ちするには……己を鍛えるしか道はないと知れ!」
 対するヘザーは前振りも過程もすっ飛ばして結論だけ提供した。
「はっ! …………………………………………………………………………い、嫌じゃーっ!」
「一瞬考えたなッ!! ならば妥協の余地はあると言うことよーッ!」

「ヘイ! ブラザー&シスター! ヘナチョコなディスカッションはここまでにしよーぜ!」
「むっ? 何奴……ッ!」
「ヘッド! 俺にゃ異論はないぜ! ゴー・オン・ザ・デスロード……どこへだろーと連れて行ってくれ!」
 ヘザーをヘッドと呼んだのは、スキンヘッドにイチゴヤドクガエルのタトゥーを入れサングラスをかけた男。練筋協会の大胸筋矯正ギプスを装着し、超重装備・過大集積魔導機塊「イノーマス」を肩に担いだ……筋肉に目覚めし男子!
「君かフロッグ! よく言ってくれた!」
 フロッグは灼熱のスマイルと荒ぶる上腕二頭筋をもってヘザーに応える。
 その瞬間、誰もが悟った。なぜだか説明はできないが理屈ではなく心で理解したのだ……。
 ――この流れからは逃れられないと。




 かくしてヘザー一行は地獄の黙示録もとい戦乙女の死の教練にその身を投じた……。



「PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT! PT!……」


 そして数週間が過ぎた……。
 その日ヘザーと一行はヴィオラに呼び出されたのである。


「この数日間、本当によく頑張りました」
「セッセイ!」
 ヘザー一行は誰からともなく返事は「セッセイ!」と返すようにしていた。
「これまでの鍛錬を終えて、自信はつきましたか?」
「セッセイ! 自信がつきました! 私は強くなったと思います!」
 師匠にへりくだった口調でヘザーは応える。
「本当に、そうでしょうか?」
「え――」
「あなた達に試練を与えます」
 そうしてヴィオラはヘザー達から視線を外し、ある一点を指した。
「この者達と戦いなさい」

 そこには――

リプレイ本文

●ヴィオラ曰く
「この者達と戦いなさい」

 そこには――

 両肘を高く上げ、両手は首の付け根で重ね、上体をやや反り気味にしつつ右脚を左脚の前に重ね、緑の目で思い切りヘザーを見下したセレス・フュラー(ka6276)の姿があった。

 ヘザーは一目で理解した。

 これは『試練だ』と。

 もっとも、解ったのは古の塔・風の試練に挑んだヘザーとセレスの他、夢路 まよい(ka1328)、仁川 リア(ka3483)、ミコト=S=レグルス(ka3953)、リツカ=R=ウラノス(ka3955)らだけで、その他の面々にはサッパリ解らない。

「たえられるか、ひとのこらよーーー!」
 まよいが同じポーズになって便乗した。わからない人たちのわからない具合がさらに増した。

「何だかわかんないけどそれで通じ合う仲ってことはわかった!」
 藤堂研司(ka0569)は納得した。
「何だかわかんないけど……強敵と戦えるならいいわ!」
 葉桐 舞矢(ka4741)は歓喜の表情を見せる。
「何だかわかんないけど、よろしくね! あたしはアーシャ!」
 アーシャ(ka6456)は元気よく挨拶をした。
「「「よろしくお願いしますッ!」」」
 愉愚泥羅の面々から、よく揃った挨拶が返ってきた。

「おっと! 私達を忘れて貰っちゃ困るな」
「ヘザーさん達の修行の仕上げのお相手が必要と聞いてっ、参上致しましたっ!」
 リツカとミコトが名乗りを上げる。
「ヘザー、必死の猛特訓したんだって聞いたよ。それじゃあ最後の壁として、僕も修行の成果見せてあげるよ」
 リアもまた自信に満ちた態度を見せる。
「どうやら修行したのは私達だけではないようだな。
 私達の力、見せてやろう!」
 へザーにとってかれらは何度も共に戦った仲間達である。これからも並び戦っていけることを示したい所だった。

「よくぞ来た! より強き肉体を目指すヒトの子らよ!」
 太くたくましい声が、重厚な存在感と共に現れた。プラトニスがそこにいた。
「このプラトニスが、お主らの戦いを見届けようぞ」
 ヴィオラの傍らに立つ。ハンター一行とへザー達の中間だ。
「さあ、準備をするがいい」

 双方、戦闘陣形を組む。武器はカバーや鞘などで殺傷力を低めている。

 やがて準備完了のサインが出た。

「では……始めい!」

●第一次節制戦争
 愉愚泥羅はヘザーを中心に何人かが固まり、両サイドにヤーグとフロッグ、後方に閃姫という布陣だ。
 一方ハンター一行は、両サイドにリアとリツカ、後方に研司とまよい、後は中心に固まっている。
 双方似通った陣形である。

「これが猟撃士の三段撃ちだ!」
 最初に動いたのは研司。
 へザー目掛けて威嚇射撃、牽制射撃を撃ち、さらに周囲を巻き込んでフォールシュートを放つ。タイミングが異なるゆえ、可能な芸当だった。
「せっせ~い!」
 さらにまよいがブリザードを仕掛ける。へザー周辺が冷気で覆われた。
「……手応えが変!」
 どうにもヘザーの辺り、何かに阻まれた感触がある。
 後衛二人の初撃に続き、前衛が一気に距離を詰める。
 セレスがへザーの正面に立った。舞矢、アーシャ、ミコトもいるが、へザーの両脇は闘狩人二人に固められ、集中攻撃はできない。
 ブリザードの影響が残るへザーにセレスが鞭を放った。それはへザーの腕に巻きつく。
「捕まえた!」
 鞭は左手だ。右手には剣がある。
「インファイトなら歓迎だぞ!」
 へザーは鞭の巻きついた左手を引きしめ、拳を固めた。
 その周囲で風が渦巻き、力強いマテリアルが体中から発された。
 魔術師がウインドガストを、フロッグが攻性強化を施したのだ。
「行くよ、ヘザーさん!」
 繰り出すセレスの剣――
 しかし、それは白い燐光が発され弾かれた。
(ホーリーヴェール……!)
「右ストレェェート!」
 それが何なのか気づいた時には、ヘザーの拳が鳩尾に食い込んでいた。
「不甲斐ない奴らでな。皆、私に働けという」
 セレスは体勢を崩した。
 ヘザーは別の目標を探そうとするが、すぐにセレスに視線を戻す。
 左腕に巻きついた鞭が引かれたからだ。
「次は避けて見せる……」
 セレスはゆっくりと体を起こし、構え直した。


 一方で舞矢は旋棍で闘狩人の1人と打ち合っていた。剣と盾を構えた闘狩人は守りの構えを維持することを意識しており、舞矢は決定打を与えることができない。攻撃には的確に対応し、カウンターを仕掛けてくる。
「同じ読みとはね……」
 戦場で長く立つことを念頭に置いた舞矢と同じ方向性の戦術だった。
「そういうことなら多撃必倒の信念を見せつけるしかないわね。倒れるまで全力で殴るのみよ!」
「セッセイ! 受けて立とう!」
 闘狩人の男は熱く応える。
 剣と棍が、盾と棍がぶつかり合う。
「どちらが先に倒れるか――勝負ッ!」
「セッセェェェェェェイ!」


 アーシャはもう一人の闘狩人と打ち合っていた。機動性に優れたアーシャは常に動き回り、相手の移動を阻止、常に有利な位置取りを試みる戦法で、有利に戦いを続けていた。
「はっはっはァ!」
 突然闘狩人が笑った。屈強な男だ。
「何がおかしいの?!」
「良い腕だ娘。しかしこの俺はリーダーの護衛の一人に過ぎん」
 ヘザーの呼び方は統一されていないようだ。
「どういう事?!」
「集団戦での戦いには役割があると言う事よッ。この俺は何を隠そう――『ここで倒れるまで立って居れば良い』!」
「!?」
「それが役割分担という奴だッ」
「……あ、捨て駒ってことね!」
「そういう言い方をするなああ」
 しかし、その捨て駒のせいで突出した敵を袋叩きにすることはできないでいるのだった。


「アハズヤさん、その、得物――」
「私は啓示を受けた」
 アハズヤはミコトに相対していた。
 重々しいヘビーメイスを下段に構えて。
「――筋肉を使えと」
「それ、キャラがっ!」
 シスター服でライフルをぶっ放す悪堕ち時代からのキャラ付けを見ているミコトだった。
 今は鈍器を振り回すSister Actである。
 不意にメイスが何かに弾かれ、アハズヤの手元から落ちた。
「よしっ命中! って、あれ?」
 研司が武器を狙撃した。しかしアハズヤはすぐ手元に落ちたそれを持ち直す。
 重すぎて飛ばない。
 アハズヤは一糸乱れぬメイスファイティングの構えをとる。
「ホーリーヴェール、止めてもらいますっ!」
「駄目よ」
 アハズヤもヘザーと闘狩人がすぐ近くにおり、包囲は難しい。
 だからといってフリーにはできない。ミコトは打ちかかった。


「覚えてるぜ。やさぐれてた俺達をバイクで追い回したりしてたよな」
 ヤーグが相対するのはリツカ。
 互いに遊撃の構えを見せていた所が目に留まった。
「すっかりチンピラは卒業したねえ~」
「おかげさんで、なっ!」
 ヤーグが両手剣を振りかぶる。リツカは軽いフットワークで避け、ボディに爪の一撃を打った。
 ヤーグの巻き打つ反撃を避け、距離を取るリツカ。そこから拳銃を抜き撃つ。
 ペイント弾が弾けて派手に咲く。実弾でなくとも衝撃はある。致命傷に至らないというだけだ。
 機動力で疾影士が勝る、と見られたが、リツカはその場から飛び退かなくてはならなかった。
 ヤーグが衝撃波を飛ばしてきたからだ。
「俺だって、伊達に苦労はしてないんだぜ」
「さてはこの人……苦労人気質!」
「よくいつもヘザーについて行けてるな。俺なんか振り回されてばっかだよ……」
「元気だして! えっと……ジャガー、さん?」
「ジャガーって言うなっつーの!」


 フロッグは集団から離れて遊撃に回っていた。そこに金色のオーラを纏い、残像を残して迫る者がある。
 リアであった。
「最初からクライマックスで行くよ!」
「悪ぃな……俺はこの戦場で一人だけを相手にしねえ」
「なにっ?!」
 フロッグは足から猛烈なマテリアルを放出した。
「筋肉ステーーーーップ!」
「ジェットブーツだろそれ!」
 フロッグはリアを跳び越える。
 そして着地。ミコト、アーシャ、舞矢、セレスを視界に納める。
 魔導機械が音を立て、光を発した。そして炎が噴き出る。
「起動……ファイアスローワー!」
 炎は勢いをもって、ハンター一行の前衛を包み込んだ。
「無視しないでよね!」
 リアはフロッグの背中に武器を叩きつける。
 だが、フロッグは止まらない。
「なら、これでも無視できるかな!」
 リアの肉体が金色のオーラを発した。
「炎刃翼纏、人斬りの才、呪術の才を同時発動してのスキル攻撃……『多重才覚』。
 これぞ才を繋げし『技』の境地――

 ――多重・炎刃暴食!!」 

 リアの武器が紫色の炎を纏った。それは猛獣の姿へと変じ、フロッグに襲いかかる。

「オォゥ、こいつァ……! 四つのスキルを一度に……!?」
「時間が経つほど不利になるよ、きみ」
「だったらなおさら……務めを果たすぜ!」
「そう、なら僕の『技』で仕留めるまでだ」


 桜吹雪が舞った――閃姫の覚醒によるものだ。
「矢の雨を降らせようぞ!」
 無数の矢をつがえた弓を上空に向けて引く。
 敵後方を狙った制圧射撃だ。
「むぅ~……」
 それを受けてまよいは思うように魔法攻撃を行えずにいた。
「こいつはいけねえ!」
 研司がまよいの元に駆けつける。
 閃姫は続け様に多くの矢をつがえ、制圧射撃しようとする。
「さーて!」
 研司は己の名を冠した魔導砲を天に向けた。
 続け様に砲が轟く。

「なん……じゃと……?」
 閃姫が目を剥く。
 研司は、向かってくる矢をEEEで全て撃ち落とした。
「これでやっと遊べるね♪」
 フリーになったまよいが、ブリザードを放つ。狙いはへザーの周辺だ。
「おのれ……だがわらわの制圧射撃は三枠ある!」
「そんなの、ブリザードが四回撃てれば十分よ!」
「…………」
「決着を付けるぞ、閃姫さん!」
「来い、藤堂研司!」
「私はー?」
 後衛同士の熱い闘いが、とにかく始まった。

●急転
 強化されたヘザーを相手にセレスは劣勢を強いられていたが、ブリザードの威力もあってヘザー側のダメージも低くはない。
 二人とも荒い息を吐いていた。
 ヘザーが突然左腕に巻きついた鞭を掴んだ。好機と見たセレスは一撃を繰り出す。それは右肩に命中したが、ヘザーは鞭を解いた。セレスは間髪を入れず連撃を仕掛けようとする。
 剣がヘザーを打った……かのように見えた。
 すり抜けた。残像だ。
 ヘザーが残像を残して駆ける、と思った時にはセレスは鳩尾に拳を受けていた。
 弾かれるような動きで、次の瞬間には舞矢の正面にいる。
 反応する間もなく、鳩尾に拳を叩き込まれる。
 被害はアーシャにも及んだ。三人は同じように一撃を喰らい、膝をつく。アクセルオーバーしてのアサルトディスタンス――全て右ストレートだったのは拘りか。へザーは反対側に移動した。
「ヘッド、加勢するぜ!」
 その隣に、ジェットで跳躍したフロッグが並んだ。
「逃がさないよ!」
 リアが追ってくる。
 その寸前を衝撃波が通り過ぎた。
「乱戦なら俺も混ぜろ……!」
 ヤーグが、距離を縮めていた。
「おっと、させないよ!」
 リツカは阻止すべく回り込む。
 一方、アハズヤのフォースクラッシュが大地を穿った。ミコトは持ち前の素早さでこれを避けたが、土煙でアハズヤを見失う。
 アハズヤは上から急襲してきた。反動で飛び上がっていたのだ。得物は持っていない。ミコトに掴みかかって地面に叩きつける。
 そして、至近距離でのフォースクラッシュ。地面が振動する。

 敵味方が入り乱れた。
 ここから魔術師のライトニングボルト、フロッグの内側からのファイアスローワー、ヤーグの薙ぎ払い等により、愉愚泥羅がやや優勢となった。

 だというのに――

「――なぜ笑うの」
 アハズヤは組み敷いたミコトが笑うのを見た。
「こういうことですよっ!」
 ミコトが右手を伸ばした。
 その先には、へザーがいる。

 ファントムハンドでへザーの脚を掴んだ。
 そして引っ張る。へザーは抵抗するが、舞矢が旋棍で反対側の脚を払った。
 へザーはミコトに引っ張られ――
 アハズヤにぶつけられた。
 へザーはよろめく。

 ――隙だらけだ。
「皆! 今だッ!」
「いってみよー☆」
 好機とばかりに声をあげたのは研司。牽制射撃を仕掛ける。同時に、まよいのアイスボルトが胴体に炸裂した。
 へザーは反撃・回避の機会を失う。そこに――
「右ストレェェート!!!」
 一瞬で間合いを詰めたリツカが、へザーの鳩尾に拳を叩き込んだ。
「がはッ……!」
 自らの得意技――リツカも馴染みの――を受け、へザーは腰を折る。
「あたしは……風を超える!」
 突っ込んできたセレスが脇腹を払って通り抜け、
「間に合えぇーー!」
 舞矢が左右の旋棍でへザーを挟むようにして打つ。ヘザーが棒立ちになった。
「セッ・セェェェェイ!」
 そこにアーシャが全身でぶつかるような突きを放った。
「これで……フィニッシュだ!」
 倒れたヘザーに、フロッグの得物を三角飛びの要領で蹴ったリアが武器ごと突っ込んで追い打ちをかけた。

 ヘザーは倒れ、完全に沈黙した。
「ヘッドぉぉぉーーー!!!」
 フロッグが叫ぶと起き上がろうとしたが、叶わない。
「急に標的を変えたな……」
「合体攻撃はロマンだからな!」
 驚き顔のヤーグに研司が簡潔に説明した。
「さあ、どうするの! リーダーは倒れたみたいだけど続ける?!」
 アーシャが凛とした声で言った。
 愉愚泥羅の何人かが顔を見合わせる。
「続行じゃ! このままで終われぬ!」
 閃姫が言った。
「そう来なくっちゃBrothers & Sisters!
 宴はこれからよ! Let's go on the DEATH ROAD!!」
 舞矢が拳を突き上げ、戦闘は再開された。


 とはいえ、愉愚泥羅はへザーを攻撃の起点として想定していたので、そこからの流れは圧倒的にハンター優勢に進み……


「それまでい!」
 やがて、プラトニスが終了を告げた。



●結果
 ヴィオラが告げた判定は『ハンター勝利』。
「なぜ負けたかわかりますか」
 ヴィオラはヘザーに問う。ヘザーは答えられなかった。
「あなたは派手な所ばかり見て、根本的な所を疎かにしていたのです。
 私がプラトニス様を殴れた事は結果にすぎない。それを成したのは偏に……普段の鍛錬。
 結果はその付属物。
 結果が出せたから強いのではない。地道な積み重ねが人を強くするのです。わかりますか」
 ヘザーは黙って頷いた。
「では、基礎訓練」
 愉愚泥羅の面々は驚愕の表情を見せたが、悔しさもあるのか、「セッセイ!」と返し、訓練を始めた。
「我輩も行くぞ!」
 闘いを見届けた興奮からか、プラトニスも喜々として訓練に加わる。
 そして走り込みを始めた……。

「お疲れ様でした」
 その場に残されたハンター達に、ヴィオラが頭を下げる。
「よろしければ、また訓練に付き合って下されば幸いです」
 そして、訓練に打ち込む愉愚泥羅の姿を共に眺める。

「PT! PT! ……」

 真っ青な夏の空の下、掛け声が響き渡る……

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MVP一覧

  • 龍盟の戦士
    藤堂研司ka0569
  • 大地の救済者
    仁川 リアka3483
  • コル・レオニス
    ミコト=S=レグルスka3953

重体一覧

参加者一覧

  • 龍盟の戦士
    藤堂研司(ka0569
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 大地の救済者
    仁川 リア(ka3483
    人間(紅)|16才|男性|疾影士
  • コル・レオニス
    ミコト=S=レグルス(ka3953
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士
  • スカイラブハリケーン
    リツカ=R=ウラノス(ka3955
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 双棍の士
    葉桐 舞矢(ka4741
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 風と踊る娘
    通りすがりのSさん(ka6276
    エルフ|18才|女性|疾影士
  • 孝純のお友達
    アーシャ(ka6456
    エルフ|20才|女性|舞刀士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/07/15 13:17:40
アイコン 相談卓
通りすがりのSさん(ka6276
エルフ|18才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2017/07/19 08:34:44