ゲスト
(ka0000)
【陶曲】ブラッドスートン・シンフォニー
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/08/04 09:00
- 完成日
- 2017/08/11 02:04
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
自由都市同盟、ヴァリオス近郊。
その海域に、人魚の長老クアルダが住む島があった。
同盟海軍の大型戦艦ルナルギャルド号が浅瀬付近に到着した直後、島の南付近で爆発が起こった。
副艦長ロジャー・ロルドは、海軍の兵士たちを連れて島に上陸すると、合流した魚人族の戦士たちと共に南の祭壇へと向かっていた。
物資輸送の護衛として、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)、ラキ(kz0002)は魔術師協会広報室に所属するハンターたちと同行していたが、まずは海の拠点へと急いだ。
一か月前から、この島に滞在している魔術師たちから聞き込みをするためだ。
大型戦艦ルナルギャルド号は、同盟海域の監視を数カ月前から続けており、物資の輸送も行っていた。ユニットを輸送する場合、一度に20体程度、運ぶことができるため、島には巡回用の魔導トラックが5台、海の拠点に配置されていた。
魔導トラックの運用は、主に海軍の兵士たちが利用していた。
海の拠点には、いくつかの天幕が点在していた。その一つに、魔術師協会広報室から派遣されてきた魔術師たちがいた。
「スコット、また嫉妬のヴォイドが攻めてきたのか?」
マクシミリアンの問いに、魔術師スコットは目を細めて思案した後、こう告げた。
「俺が見たところ、オートマトンの集団と鋼鉄のような巨人だった。オートマトンはざっと見たところ、100体近くはいたな。島の南付近で爆発が起こった後、出現したようだ」
「要するに、異常事態ということだな?」
「そういうことになる。何者かが、また島の祭壇を狙っていることは確かだよ」
スコットの言葉を聞き、ルナルギャルド号に乗ってやってきたハンターたちは、すぐさま南の祭壇へと急行した。
●
そして、辿り着いた頃には、祭壇の周囲にはオートマトンの集団が群がっていた。
「エバーグリーンから来たのかな?」
ラキが一歩、足を踏み込むと、光の檻が発生して、移動不能になってしまった。
「なにこれー、罠なのっ?!」
マクシミリアンが罠の発生した地面をロングソードで叩き斬ると、ラキは身動きが取れるようになり、後退した。
「マクシミリアン、助かったよ。ありがとう。……あっ、白い仮面の男が、祭壇の中へ入っていったよ!」
ラキが叫ぶと、男の姿は消えて、オート・パラディンGが3体、出入り口に出現した。
「どうやら、祭壇の周辺にいるオートマトンたちはヴォイド化されているようだな。白い仮面の男……カッツォ・ヴォイか? ヤツはエバーグリーンへ行ったという噂があったが、戻ってきたということか」
周囲を警戒するマクシミリアン。
光の檻は、ハンターたちの侵入を遅らせる罠かもしれなかった。
「このまま、正攻法で陸上から攻める手もあるが……」
「……あのね、クアルダさんから聞いたけど、海中から侵入する経路もあるらしいよ。人魚たちは普段、そのルートから祭壇の中へ出入りしているって」
ラキがそう言うと、マクシミリアンは真顔で応えた。
「そうか。なら、ラキは海中から祭壇の内部へ侵入してくれ。俺は、地上から祭壇の内部へ入るからな」
当然とばかりに言い切るマクシミリアン。
「えっ? 待って……それってもう、決定事項なの? んー、人魚さんたちのためだ。あたしも、できるだけのことはやってみるよ」
そう言って、ラキは南の浅瀬にいる人魚クアルダの元へと走った。
「また、この石を使う機会があるなんて」
クアルダは、海涙石に秘術を施すと、ハンターたちに手渡した。
「これを持っていれば、海中でも少しだけ長く呼吸できるようになります。祭壇までのルートは、私がご案内しますね」
人魚の秘術によって施された海涙石は、不思議なことに、幻獣や機械系ユニットに騎乗したり、同行している状態なら、海中でも呼吸できるようになるのだ。リーリーも海中で呼吸できるようになるが、どうやら泳ぐのは苦手のようだ。
「あたしは、ユニット無しで、クアルダさんに同行するよ。海涙石を使って、泳いでみたいから」
ラキの前向きな姿勢に、クアルダは内心、とても心強かった。
こうして、「陸上から攻める班」と「海中から侵入する班」に分かれて、祭壇の内部へと侵入することになった。
カッツォ・ヴォイ(kz0224)の狙いは、おそらく『コーラル』という鉱石だろう。人魚の島に、古来から祭られている鉱石だ。
「さて、古き時代から伝わる鉱石の味は、どんなものだろうかね。……楽しみだ」
カッツォはステッキを持ち、ゆっくりとした足取りで、祭壇の奥へと歩いていた。
■解説■
「陸上から攻める班」の初期位置、祭壇の入口から100メートル離れた場所からスタート。祭壇の周囲には、特定地点に足を踏み入れた者に発動する罠が設置されており、光の檻による移動不能のBSを与える
罠は、カッツォの支配下にいるヴォイドには無効
地上班には、マクシミリアンが参戦
「海中から侵入する班」は、人魚の長老クアルダが水先案内人になって、秘術を施した海涙石を貸し出してくれる。海中での呼吸時間は、15分。幻獣、機械系ユニットの騎乗または同行も可能
海中班には、ラキが生身で参戦
自由都市同盟、ヴァリオス近郊。
その海域に、人魚の長老クアルダが住む島があった。
同盟海軍の大型戦艦ルナルギャルド号が浅瀬付近に到着した直後、島の南付近で爆発が起こった。
副艦長ロジャー・ロルドは、海軍の兵士たちを連れて島に上陸すると、合流した魚人族の戦士たちと共に南の祭壇へと向かっていた。
物資輸送の護衛として、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)、ラキ(kz0002)は魔術師協会広報室に所属するハンターたちと同行していたが、まずは海の拠点へと急いだ。
一か月前から、この島に滞在している魔術師たちから聞き込みをするためだ。
大型戦艦ルナルギャルド号は、同盟海域の監視を数カ月前から続けており、物資の輸送も行っていた。ユニットを輸送する場合、一度に20体程度、運ぶことができるため、島には巡回用の魔導トラックが5台、海の拠点に配置されていた。
魔導トラックの運用は、主に海軍の兵士たちが利用していた。
海の拠点には、いくつかの天幕が点在していた。その一つに、魔術師協会広報室から派遣されてきた魔術師たちがいた。
「スコット、また嫉妬のヴォイドが攻めてきたのか?」
マクシミリアンの問いに、魔術師スコットは目を細めて思案した後、こう告げた。
「俺が見たところ、オートマトンの集団と鋼鉄のような巨人だった。オートマトンはざっと見たところ、100体近くはいたな。島の南付近で爆発が起こった後、出現したようだ」
「要するに、異常事態ということだな?」
「そういうことになる。何者かが、また島の祭壇を狙っていることは確かだよ」
スコットの言葉を聞き、ルナルギャルド号に乗ってやってきたハンターたちは、すぐさま南の祭壇へと急行した。
●
そして、辿り着いた頃には、祭壇の周囲にはオートマトンの集団が群がっていた。
「エバーグリーンから来たのかな?」
ラキが一歩、足を踏み込むと、光の檻が発生して、移動不能になってしまった。
「なにこれー、罠なのっ?!」
マクシミリアンが罠の発生した地面をロングソードで叩き斬ると、ラキは身動きが取れるようになり、後退した。
「マクシミリアン、助かったよ。ありがとう。……あっ、白い仮面の男が、祭壇の中へ入っていったよ!」
ラキが叫ぶと、男の姿は消えて、オート・パラディンGが3体、出入り口に出現した。
「どうやら、祭壇の周辺にいるオートマトンたちはヴォイド化されているようだな。白い仮面の男……カッツォ・ヴォイか? ヤツはエバーグリーンへ行ったという噂があったが、戻ってきたということか」
周囲を警戒するマクシミリアン。
光の檻は、ハンターたちの侵入を遅らせる罠かもしれなかった。
「このまま、正攻法で陸上から攻める手もあるが……」
「……あのね、クアルダさんから聞いたけど、海中から侵入する経路もあるらしいよ。人魚たちは普段、そのルートから祭壇の中へ出入りしているって」
ラキがそう言うと、マクシミリアンは真顔で応えた。
「そうか。なら、ラキは海中から祭壇の内部へ侵入してくれ。俺は、地上から祭壇の内部へ入るからな」
当然とばかりに言い切るマクシミリアン。
「えっ? 待って……それってもう、決定事項なの? んー、人魚さんたちのためだ。あたしも、できるだけのことはやってみるよ」
そう言って、ラキは南の浅瀬にいる人魚クアルダの元へと走った。
「また、この石を使う機会があるなんて」
クアルダは、海涙石に秘術を施すと、ハンターたちに手渡した。
「これを持っていれば、海中でも少しだけ長く呼吸できるようになります。祭壇までのルートは、私がご案内しますね」
人魚の秘術によって施された海涙石は、不思議なことに、幻獣や機械系ユニットに騎乗したり、同行している状態なら、海中でも呼吸できるようになるのだ。リーリーも海中で呼吸できるようになるが、どうやら泳ぐのは苦手のようだ。
「あたしは、ユニット無しで、クアルダさんに同行するよ。海涙石を使って、泳いでみたいから」
ラキの前向きな姿勢に、クアルダは内心、とても心強かった。
こうして、「陸上から攻める班」と「海中から侵入する班」に分かれて、祭壇の内部へと侵入することになった。
カッツォ・ヴォイ(kz0224)の狙いは、おそらく『コーラル』という鉱石だろう。人魚の島に、古来から祭られている鉱石だ。
「さて、古き時代から伝わる鉱石の味は、どんなものだろうかね。……楽しみだ」
カッツォはステッキを持ち、ゆっくりとした足取りで、祭壇の奥へと歩いていた。
■解説■
「陸上から攻める班」の初期位置、祭壇の入口から100メートル離れた場所からスタート。祭壇の周囲には、特定地点に足を踏み入れた者に発動する罠が設置されており、光の檻による移動不能のBSを与える
罠は、カッツォの支配下にいるヴォイドには無効
地上班には、マクシミリアンが参戦
「海中から侵入する班」は、人魚の長老クアルダが水先案内人になって、秘術を施した海涙石を貸し出してくれる。海中での呼吸時間は、15分。幻獣、機械系ユニットの騎乗または同行も可能
海中班には、ラキが生身で参戦
リプレイ本文
自由都市同盟、人魚の島。
南の祭壇は、すでにカッツォ・ヴォイ (kz0224)に占拠されていた。
「アルス、今回もお前がアタッカーだ。期待してるぜ」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は戦況を楽しむように、敵の動向を窺い『危険な挑発』により琥珀色に輝くオーラを浮かべながら、VOIDオートマトンたちを引き寄せていた。イェジドのバルツァーは主のエヴァンスを乗せて、周囲を慎重に警戒していた。
「今回も……というのが気になるけど、まあ、いいわ。カッツォ・ヴォイには、妹が世話になったようだから、姉としては御礼参りしておきたいわね」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)は魔法少女まじかる☆あるすん(R7エクスシア)の操縦席から、モニターで祭壇周囲を確認し、『イニシャライズオーバー』の結界を張り巡らせる。
これでR7エクスシアの周囲にいる仲間たちは、光の檻に引っかかることが少なくなる。罠に引っかかったとしても、すぐに抜け出すこともできるようになった。
「まァ、念には念をいれておくか」
シガレット=ウナギパイ(ka2884)は、前衛にいるボルディア・コンフラムス(ka0796)に『レジスト』を施した。
「おっし、準備はOKだな。行くぜ、ヴァン!」
ボルディアはイェジドのヴァーミリオン(愛称、ヴァン)に騎乗して、「まじかる☆あるすん」と足並みを揃えて、祭壇の入口を目指して駆け抜け、立ちはだかるVOIDオートマトンを魔斧「モレク」で斬り裂き、消滅させていく。
コントラルト(ka4753)もまた、「まじかる☆あるすん」と並ぶように前進していきながら、『ファイアスローワー』を扇状に撒き散らし、周囲に群がるVOIDオートマトンを焼き払っていく。
ユキウサギは主人のコントラルトを守るため、『紅水晶』の結界を張り、接近してきたVOIDオートマトンを移動不能にしていく。
VOIDオートマトンたちはアサルトライフルを構え、敵や味方も関係なく、目の入った者に狙いを定めて、弾丸を放っていた。
「同士撃ちか。だったら、こっちも派手に暴れてやるか!」
イェジドのバルツァーは光の檻に引っかかり、移動不能になってしまったが、騎乗していたエヴァンスは自由に戦うことができた。愛用のグレートソード「テンペスト」を構え、『薙ぎ払い』を駆使して前面にいるVOIDオートマトンたちを刃の餌食にしていく。攻撃を喰らった敵は、一瞬にして消滅していった。
バルツァーは脚に絡まる光の檻を噛み千切ると、移動できるようになった。
前方では、髑髏のペイントをした刻令ゴーレム「Volcanius」が砲撃の準備を整えていた。
「ほんじゃ、いくぜェ。相棒、正面に向けて煙幕弾を放て」
シガレットは、相棒の刻令ゴーレム「Volcanius」と連携して命じると、『砲撃:煙幕弾』が指示通りに放たれた。VOIDオートマトンに命中すると、その周辺にいる敵も巻き込まれ、煙幕が発生……煙はしばらく空間に留まり、射線と視線を妨害することに成功した。
煙が消え去ると、地獄の底から巨大な髑髏が現れるようなペイントが目立つ刻令ゴーレム「Volcanius」……それはまるで、終末を連想させるような出で立ちであった。
地上班は、確実にVOIDオートマトンの集団を消滅させ、祭壇の入口まで近づくことができた。
●
その頃、海中班は、海涙石を使って泳ぎながら、人魚の長老クアルダの導きで、祭壇内部へと入ることができた。
(……頼むじゃん)
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は隠密で潜み、海中から顔だけ出して、ペットの鼠を使い、『ファミリアズアイ』を念じて、コーラル鉱石の場所を確認していた。
ユグディラのアムは、弱者の本能を発揮して、岩陰に隠れながら警戒のポーズ。
(見つけたじゃん)
ヴォーイはファントムハンドでコーラル鉱石を掴み、引き寄せようと試みたが、浮かび上がった幻影の腕は、ヴォーイの頭上でユラユラと何かを探しているような動作をしていた。
ファントムハンドの対象は『敵』である。幻影の腕は目当てを失い、思い通りには動かなかったのだ。
裏を返せば、コーラル鉱石が『味方』という証拠とも読み取れる。すなわち、ユグディラのアムも『味方』であるから、ファントムハンドで掴むことはできなかった。
(もしかして、コーラル鉱石には精霊が宿っているのかも?)
ヴォーイの様子を見て、ジャック・エルギン(ka1522)は隠密を駆使して、ラキ(kz0002)と一緒にコーラル鉱石が置かれている台座まで接近することができた。
台座の陰に隠れながら、ジャックはバックパックを取り出し、イェジドのフォーコはラキを護衛するように静かに歩いていた。
グリムバルド・グリーンウッド(ka4409)も隠密でなるべく気配を消しながら、ジャックに同行していた。ユキウサギのギルダスは、グリムバルドの様子を気に掛けながらも、周囲を警戒していた。
ジャックはコーラル鉱石を両手で抱えると、バックパックに入れてフォーコの背中に括り付ける。そして、グリムバルドは『加護符』をバックパックに張り付けた。しばらくの間、バックパックは加護が付与される。
……カシャリ。
音のする方向を振り返ると、白い仮面を付けた紳士が立ち尽くしていた。
「これはこれは、覚醒者の皆さん。この場で会えるとは光栄……」
いつの間にか、カッツォ・ヴォイ (kz0224)がジャックたちの前に姿を現した。
「かなり慎重に行動してたんだけどな。それでも俺達の動きに気が付くとは、さすが十三魔ってことか」
ジャックは怒りを押し殺して、発煙手榴弾をカッツォ目掛けて投げつけた。赤い煙が吹き出し、それが合図となり、人魚のクアルダは海中から泳いで逃げ出していった。
「フォーコ、ラキと一緒に先へ行け」
イェジドのフォーコはカタフラクトで二人乗りへの適性を得たこともあり、バックパックを背負ったままでも素早く、その場から離れることができた。
「フォーコくん、待って」
ラキは全速力でフォーコの後を追いかけていく。
ヴォーイは、慌てた様子で岩陰から飛び出し、発煙手榴弾をカッツォに向かって投げた。こちらは白い煙が舞い上がる。
「アムに渡す余裕もないじゃん。自分で投げた方が手っ取り早いじゃん」
アムは『あぶないにゃ!』の術を使い、すぐさま岩陰に隠れてしまった。これも弱者の本能……十三魔が相手では勝ち目はないとアムは判断したのだ。
白い煙に隠れながら、グリムバルドは魔導短伝話で、地上班のボルディアへと連絡する。
「こちらグリムバルド、カッツォ・ヴォイが出現。ただちに祭壇の入口に向かう」
『了解だ。海中班は、俺たちと合流するまで、無茶すんじゃねえぞ』
ボルディアたち地上班は、外部でVOIDオートマトンの集団たちを蹴散らし、少しずつ祭壇の入口に接近していた。
「カッツォに見つかった以上、急いで地上班と合流することに専念する」
グリムバルドが通信を切ると、ユキウサギのギルダスは『煙水晶』を発動させ、青白い魔法の煙を出現させた。
「ギルダス、祭壇の入口へ急ごう」
グリムバルドの言葉に、ギルダスが小さく頷く。
「グリムバルド、地上班との連絡、助かったぜ」
ジャックはバスタードソード「アニマ・リベラ」を構え、前方から押し寄せてくるVOIDオートマトンの群れを『薙払「一閃」』で斬り倒し、道を切り開いていった。
フォーコが噛む動作をすると獣機銃「テメリダーV3」のボタンが押され、弾丸を発射……VOIDオートマトン一体が消滅して、その間をフォーコとラキが駆け抜けていく。
グリムバルドはフォーコの後ろまで移動すると、『ファイアスローワー』を噴射して、背後から迫り来るVOIDオートマトンの群れを焼き払い、消滅させていく。
ヴォーイはようやく発煙手榴弾の一つをアムに渡すことができた。
「今度こそ、頼むじゃん」
ヴォーイは敵の動向に注意しながら、アムに声をかけた。
後ろから、カッツォ・ヴォイが近づいてくる。驚いたアムは、えいやっとばかりに発煙手榴弾を後方へと投げ飛ばした。今度は黄色の煙が立ち登っていた。
●
「ん? オート・パラディンたちが祭壇の中へ入っていくぜェ」
シガレットはオート・パラディンGが一体ずつ入口へと入ってくのに気が付いた。魔杖「ランブロス」を発動体として、シガレットは『ライトニングボルト』を解き放った。
直線上の雷撃が、オート・パラディンGの身体を貫き、2体にダメージを与えることができた。ミオレスカの祈りが届き、雷撃の威力を上げていたのだ。だが、オート・パラディンGはダメージを受けたにも拘わらず、祭壇の奥へと入ってしまった。
「敵にも、情報ネットワークがあるのかねェ?」
「早いとこ、海中班と合流しようぜ。カッツォ・ヴォイの指示で、オート・パラディンGたちは動いている可能性もあるからな」
ボルディアがそう言うと、アルスレーテは「まじかる☆あるすん」の機体から降りた。
「祭壇内部で戦うなら、私も生身で行くわ。と言っても、装備はきっちり揃ってるから安心して」
「なら、私はオート・パラディンGを追いかけるわ。ジャックさんから頼まれたこともあるしね」
コントラルトは、オート・パラディンGの額にある宝石が気になっていたが、ジャックから「宝石に宿っている精霊を助けてやってくれ」と頼まれていたのだ。
「入口に辿り着いたのは良いが、まだ祭壇の周辺にはVOIDオートマトンの群れが残ってるぜ」
エヴァンスの言葉に、シガレットは紙巻煙草を銜えたまま、応えた。
「相棒に残ってもらって、VOIDオートマトンたちを攻撃するようにしておくぜ。俺も中へ行く。幸い、マクシミリアンさんもいるからな。外の雑魚は任せるぜェ。オート・パラディンGは俺達に任せろ」
「良いだろう。VOIDオートマトンなら海軍の兵士でも倒せるからな」
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)は、同盟海軍の兵士を15人ほど連れてきており、その中でも覚醒者は5人いたのだ。
「準備が良いな、シガレット。カッツォ・ヴォイが中にいるなら、俺も行くぜ」
エヴァンスは万が一の場合、バルツァーと協力して臨時の門番を引き受けるつもりでいたが、シガレットの計らいで外部に残っているVOIDオートマトンの集団は、マクシミリアンと海軍の兵士たち、そしてシガレットの相棒である刻令ゴーレム「Volcanius」が祭壇の外で敵と応戦することになった。
「ほんじゃ、相棒は祭壇の入り口付近でVOIDオートマトンたちをライフル「エトランゼ」で射撃だ。弾が切れたらリロードしろよ」
そう言い残すと、シガレットはエヴァンスたちと共に祭壇の奥へと向かっていった。
●
「地上班がこちらに向かってる。それまでの辛抱だ」
グリムバルドは『デルタレイ』を解き放った。三体のVOIDオートマトンが粉々に砕け散り、消滅する。
ギルダスが『紅水晶』を発動させ、周囲にいるVOIDオートマトンたちの通過を封じていく。紅水晶の結界は、敵の動きを封じる技で、味方のハンターたちは結界を通り抜けていくことができた。
フォーコとラキが通り過ぎていくと、ジャックは後方から接近してきたVOIDオートマトン目掛けて、バスタードソード「アニマ・リベラ」を振り回し、『薙払「一閃」』を繰り出した。
攻撃を受けたVOIDオートマトンたちは砕け散り、消滅していく。後方を見遣れば、カッツォ・ヴォイがいる……だが、彼はそれほど急いでいるようには見えなかった。
「なんだか、余裕シャクシャクじゃん」
ヴォーイは逃走を優先しながら、後方にいるカッツォを狙って発煙手榴弾を投げ飛ばした。地面に落ちると、緑色の煙が舞い上がった。
ユグディラのアムも、発煙手榴弾を後方へと投げつけた。紫色の煙が立ち昇り、煙が通路に充満してカッツォの姿が見え難くなった。
ジャックは通路を駆け抜け、フォーコとラキに追いつく。
その時だった。
オート・パラディンGが三体、前方に立ち塞がり、マテリアルレーザーを放ってきた。とっさに回避するジャック。
フォーコはラキを乗せて、スティールステップで回避し、大きく跳躍しながら敵との間合いを取るように移動していく。
グリムバルドは魔導ガントレット「キュベレー」で敵のレーザーを受け止め、ギルダスはアックス「ライデンシャフト零式」でマテリアルレーザーを受け払うことができた。
ヴォーイとアムは敵の射程外にいたこともあり、攻撃は免れたが、後方からカッツォが接近してくるのが見えた。
「ヤバいじゃん。挟み撃ちじゃん」
ヴォーイは覚悟を決め、防御態勢を取った。アムは弱者の本能で素早く危機を察知して身構える。
「グリムバルド!!」
そう叫んだのは、ボルディアだった。
「待たせちまったな」
「無事に連絡が取れて良かった」
グリムバルドは互いに合流できるように、魔導短伝話で自分たちの位置を地上班に知らせていたのだ。
魔斧「モレク」を振り回すボルディア……『砕火』が唸りを上げて、オート・パラディンGに素早い連撃を放つ。それはまるで、炎の獣が敵を咀嚼するように、上下から火炎の幻影が襲い掛かるように見えた。
オート・パラディンGは胴部と脚部をボルディアの砕火に喰われ、軋むように砕け散った。衝撃で頭部も砕け散ったが、額に埋め込まれていた宝石が転がり落ちた。
イェジドのヴァーミリオンは、落ちた宝石を銜えて、ボルディアに寄り添った。
「その宝石、おまえが守ってくれたのか? ありがとな」
「オート・パラディンGに埋め込まれた宝石、やはり何かあるのね」
コントラルトは『ファイアスローワー』でオート・パラディンGを二体、炎で巻き込み、胴部を焼き尽くしていく。
ユキウサギは『紅水晶』の結界を張り、オート・パラディンG一体を移動不能にさせた。
「オート・パラディンGの構造は生物に似てるってことは、機動力を潰せば良いだけだぜ」
エヴァンスは、オート・パラディンGの脚部にある関節に狙いを定めて、グレートソード「テンペスト」による『刺突一閃』で貫いていく。
脚部が貫かれた衝撃で、胴部にも亀裂が走り、爆発……頭部も飛び散り、宝石が転がり落ちた。
バルツァーは幻獣砲「狼炎」で援護射撃をして、エヴァンスを守ることに専念していた。
アルスレーテは、床に落ちていた宝石を拾い、回収していた。
「これはブラッド・ストーンね。この宝石も、カッツォに見つかる前に回収しておくわ」
「敵の残骸は、残らず消滅させた方がいいぜ。カッツォの能力で無機物が融合される恐れもあるからなァ」
シガレットは『ライトニングボルト』を発動させた。隣接したオート・パラディンGに命中すると、直線上にいた別のオート・パラディンGにも雷撃が迸り、二体ともかなりのダメージを受けて爆発し、残骸さえも無くなり、消滅していた。
フォーコがバックパックを背負ったまま、グリムバルドの傍まで移動していた。ラキが慌てて、フォーコの後を追いかけていた。
「フォーコくん、もうすぐジャックも来るからね」
フォーコが立ち止まると、ジャックが走り寄ってきた。
「みんな、気を付けてくれ。カッツォが、こっちに来るぜ」
ジャックはボルディアたちと合流すると、後ろを振り返った。ヴォーイとアムが素早く駆けつけてくるのが見えた。
「なんとか合流できたじゃん」
カッツォは、VOIDオートマトン10体を引き連れて、ハンターたちの前に姿を現した。
「私は援護に廻るわ」
コントラルトは『ジェットブーツ』で飛び込むと『ファイアスローワー』を噴射し、VOIDオートマトン10体を全て焼き払い、消滅させた。
カッツォは素早く回避し、ハンターたちの動向を窺っていた。
「よお、シャイな紳士さんよ。悪いが一度、その仮面の下の笑顔を見てみたくてなぁ!」
エヴァンスが挑発的に叫ぶ。バルツァーは幻獣砲「狼炎」で攻撃をしかけるが、カッツォには命中しなかった。エヴァンスは『魔刃解放』を施したグレートソード「テンペスト」を振り下し、カッツォの胴部に狙いを定めて斬り付けた。
「挨拶代わりだ。遠慮はいらねえよなっ!」
エヴァンスの攻撃が、カッツォに命中する。
「……良かろう」
その瞬間、カッツォのカウンターが素早く発動し、気が付けばステッキがエヴァンスの腹部を貫いていた。
「ぐっ……」
エヴァンスは倒れ込み、腹部から血を流しながらも、懸命に立ち上がろうとしていた。
「申し訳ないが、この仮面の下は見せることはできないのだ。赤髪の勇士よ」
カッツォはそう言った後、フォーコが背負っているバックパックに目を付けた。
それに気付き、シガレットはエヴァンスをバルツァーの背に乗せると、『フルリカバリー』をエヴァンスに施した。血は止まったが、エヴァンスはバルツァーの背中で伏せるように倒れかかっていた。
ジャックは、ラキをこの場から遠ざけるため、フォーコに「ラキの護衛」を頼み、ジャック自身はエヴァンスを庇うように攻撃態勢に入っていた。
フォーコはバックパックを背負ったまま、ラキを連れて祭壇の入口へと移動した。外には「まじかる☆あるすん」の機体があったが、操縦者のいないR7エクスシアは、VOIDオートマトンが放った銃弾により、ダメージを受けていた。
アルスレーテは白兵戦の方がカッツォと戦い易いと考え、少しずつ間合いを詰めていく。
少しでも時間稼ぎになればと、カッツォに問いかけるシガレット。
「よォ、脚本家。舞台は何の演目で、どういうあらすじか、詳しく教えてくんねェか?」
「……舞台は、人魚の島。……私は『コーラル』という鉱石を探しているのだよ。そして、おまえたちが苦しむ姿を演出したいと思っているのだ」
「なんつー悪趣味だ。だがな、テメェが嫌って言うまで付き合ってやるよ!」
ボルディアは鉱石を守るため、『マッスルトーチ』を放出した。体内のマテリアルが光を放ち、ボルディアの肉体美が輝きを増した。
「ほほう、素晴らしい肉体の輝きではないか。演出としても素晴らしい」
何やら真面目に感心しているカッツォ。
「嫌というより、喜んでるわね」
コントラルトは『デルタレイ』を発動させ、カッツォの腕を狙い撃つが、回避されてしまう。
アルスレーテは『縮地瞬動』でカッツォに接近すると『朱雀連武』を繰り出し、三回の連撃がカッツォの胴部に炸裂した。
カッツォは二つの連撃を回避し、三度目の拳が胴部に命中……アルスレーテの聖拳「プロミネント・グリム」は命中すれば、かなりの威力だった。
「今のは、さすがに効いたよ」
カッツォはアルスレーテの攻撃を受けた刹那、ステッキでカウンターを繰り出した。
「?!」
アルスレーテは『明鏡止水』で、回避したような動きのカッツォに隣接し、攻撃を仕掛けるが、カッツォのカウンターの方が早かった。アルスレーテの胴部にステッキが貫き、血飛沫が舞った。『長姉の意地』で受けたダメージをそのまま、カッツォにお見舞いするアルスレーテ。
だが、さらにカッツォのカウンターがアルスレーテに襲い掛かり、その反動で床に叩きつけられた。
「……災厄の十三魔、伊達じゃ……ない…わね」
アルスレーテの全身は、激しい痛みにより、立ち上がることさえできなかった。
「この私を相手に、ここまで付いてきたのは、おまえが初めてだ。顔だけは覚えておこう」
相も変わらず、冷めた声のカッツォ。
グリムバルドは『エナジーショット』を解き放ち、アルスレーテの回復を試みたが、彼女の怪我を癒すことまではできなかった。
ギルダスは『紅水晶』の結界を張り巡らせた。
「カッツォ! おまえだけは、絶対に許さねーからなっ!」
ジャックの怒りは頂点に達して、『二刀流』の構えを取ると、刀身が龍鉱石で作られたバスタードソード「アニマ・リベラ」でカッツォに攻撃をしかける。最初の一撃は回避されたが、パリィグローブ「ディスターブ」の拳がカッツォの腹部に叩きつけられた。
またもや、カウンターで返すカッツォ。だが、ジャックは『鎧受け』で身を動かし、カッツォのステッキを受け流した。
「くくく、怒りに満ちた顔、忘れぬぞ。いずれ、龍鉱石の刃も味見してやろう」
カッツォは、そう言い残すと、瞬間移動で、この場から消え去っていった。
初めて聴いた……カッツォの笑い声だけが、脳裏に焼き付いていた。
●
「機体は、外に置いておいて良かったぜェ。もしかしたら、カッツォの無機物融合の触媒にされてたかもしれないからな」
シガレットの予想は鋭い。
「うー、不完全燃焼だぜ。カッツォの野郎、もう少しの所で逃げやがって」
ボルディアが攻撃しようとした間際、カッツォは瞬間移動で姿を眩ましたのだ。
「そんなに落ち込むなって。ボルディアがカッツォの注意を引いてくれたおかげで、フォーコも祭壇の外へ出ることができたからな」
ジャックはそう言いながら、フォーコの頭を撫でた。バックパックには、コーラル鉱石が入っていたが、無事に運び出すことができたのだ。
「ジャックさん、頼まれていた宝石、拾っておいたわ」
コントラルトの手には、直径2センチほどの宝石が一つ。
「アルスレーテも回収してくれてたみたいだぜ。ヴァンが拾ってくれたのと合わせると、全部で三つだな」
ボルディアは、二つの宝石を持っていた。
「三つの宝石を纏めておいて、しばらく様子を見てみようぜ」
ジャックの勘が当たっていれば、精霊が姿を現すはずだった。
……。
不安が過った。今までの感覚とは違うようにも感じた。
時間はかかったが、宝石に罅が入ると、男性の姿をした精霊が現れた。
だが、かなり弱っているようにも見えた。
『……ヒトの子たちよ。私は、もうすぐ消える……その前に、伝えておきたいことがある』
消える? まさか……皆に緊張が走った。
『残念だが、完全に歪虚化されたものは、闇に落ちる。以前、助かった精霊たちは、魂が歪虚化される前に身体の一部が消滅したからだ』
精霊の言葉に、コントラルトは固唾を飲んだ。
「助かった精霊もいるのね? あなたは消えてしまうの? 何故?」
『私の身体はカッツォの支配下で機械と融合され、闇の浸食が進み過ぎているのだ。自我さえも闇に落ちれば、それこそ完全に歪虚化して、元に戻る術はない。私の身体は……自然に消滅するだろう。媒体の機械兵器が破壊されてしまったからな』
「間に合わなくて、すまねえ」
ジャックが哀しげに呟く。
『そんなことはない。消える前に、ヒトの子らに会えて、良かった。私の身体が消えても、魂はアメンスィ様のいる大地に帰る……、その波動は、アメンスィ様にも伝わるだろう』
宝石が、砂のように砕け散り、海風に乗って、散っていった。
●
島の浅瀬に、波が揺らめいていた。
「コーラル鉱石も反応がないじゃん?」
ヴォーイは、コーラルにも精霊が宿っているのではと思っていた。
「クアルダ、俺は……」
ジャックはバックパックからコーラル鉱石を取り出して、浅瀬にいる人魚のクアルダに見せた。
しばらくコーラルを見つめるクアルダ。
「あら、コーラル様、気配を消すのに集中してるわ。それで、カッツォから隠れてたのね」
クアルダが魚人族の戦士たちを呼び寄せ、コーラル鉱石をジャックから受け取った。
「アリガト、コーラル様、無事ダッタ」
「そっか。それでカッツォも、コーラルを探し回っていたってことか」
ジャックは安堵の溜息をついた。
グリムバルドも、一安心していた。
「もし、コーラルが精霊として姿を現していたとしたら、カッツォにも簡単に奪われていたことだろうな」
わざわざ祭壇を占拠したのは、コーラルの気配を探すためとも考えられる。
ボルディアはヴァーミリオンに騎乗して、アルスレーテを自分の前に乗せていた。
「二人乗りに調整しておいて良かったぜ。これでアルスレーテも、船まで連れていけるからな」
「ボルディア、ごめんなさいね」
アルスレーテは重体だったため、思うように動けなかったのだが、どうやらボルディアが祭壇の外まで連れてきたようだ。
「まじ☆ある輸送は、海軍の兵士たちに頼んでおいたぜェ。万が一、カッツォに機体が操られたら、相棒の炸裂弾で粉砕してやるつもりだったがな」
シガレットは、そのような状況まで想定していたが、実際に読み通りになっていたら「まじかる☆あるすん」は、どうなっていたことだろう。
バルツァーは、怪我を負ったエヴァンスを気遣うように、ゆっくりと歩いていた。
「アルスの攻撃、見事だったよな。さすがのカッツォも、冷や汗の一つは掻いてたかもな」
エヴァンスがそう言うと、バルツァーは相槌を打つように、尻尾を二回、大きく振っていた。
南の祭壇は、すでにカッツォ・ヴォイ (kz0224)に占拠されていた。
「アルス、今回もお前がアタッカーだ。期待してるぜ」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は戦況を楽しむように、敵の動向を窺い『危険な挑発』により琥珀色に輝くオーラを浮かべながら、VOIDオートマトンたちを引き寄せていた。イェジドのバルツァーは主のエヴァンスを乗せて、周囲を慎重に警戒していた。
「今回も……というのが気になるけど、まあ、いいわ。カッツォ・ヴォイには、妹が世話になったようだから、姉としては御礼参りしておきたいわね」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)は魔法少女まじかる☆あるすん(R7エクスシア)の操縦席から、モニターで祭壇周囲を確認し、『イニシャライズオーバー』の結界を張り巡らせる。
これでR7エクスシアの周囲にいる仲間たちは、光の檻に引っかかることが少なくなる。罠に引っかかったとしても、すぐに抜け出すこともできるようになった。
「まァ、念には念をいれておくか」
シガレット=ウナギパイ(ka2884)は、前衛にいるボルディア・コンフラムス(ka0796)に『レジスト』を施した。
「おっし、準備はOKだな。行くぜ、ヴァン!」
ボルディアはイェジドのヴァーミリオン(愛称、ヴァン)に騎乗して、「まじかる☆あるすん」と足並みを揃えて、祭壇の入口を目指して駆け抜け、立ちはだかるVOIDオートマトンを魔斧「モレク」で斬り裂き、消滅させていく。
コントラルト(ka4753)もまた、「まじかる☆あるすん」と並ぶように前進していきながら、『ファイアスローワー』を扇状に撒き散らし、周囲に群がるVOIDオートマトンを焼き払っていく。
ユキウサギは主人のコントラルトを守るため、『紅水晶』の結界を張り、接近してきたVOIDオートマトンを移動不能にしていく。
VOIDオートマトンたちはアサルトライフルを構え、敵や味方も関係なく、目の入った者に狙いを定めて、弾丸を放っていた。
「同士撃ちか。だったら、こっちも派手に暴れてやるか!」
イェジドのバルツァーは光の檻に引っかかり、移動不能になってしまったが、騎乗していたエヴァンスは自由に戦うことができた。愛用のグレートソード「テンペスト」を構え、『薙ぎ払い』を駆使して前面にいるVOIDオートマトンたちを刃の餌食にしていく。攻撃を喰らった敵は、一瞬にして消滅していった。
バルツァーは脚に絡まる光の檻を噛み千切ると、移動できるようになった。
前方では、髑髏のペイントをした刻令ゴーレム「Volcanius」が砲撃の準備を整えていた。
「ほんじゃ、いくぜェ。相棒、正面に向けて煙幕弾を放て」
シガレットは、相棒の刻令ゴーレム「Volcanius」と連携して命じると、『砲撃:煙幕弾』が指示通りに放たれた。VOIDオートマトンに命中すると、その周辺にいる敵も巻き込まれ、煙幕が発生……煙はしばらく空間に留まり、射線と視線を妨害することに成功した。
煙が消え去ると、地獄の底から巨大な髑髏が現れるようなペイントが目立つ刻令ゴーレム「Volcanius」……それはまるで、終末を連想させるような出で立ちであった。
地上班は、確実にVOIDオートマトンの集団を消滅させ、祭壇の入口まで近づくことができた。
●
その頃、海中班は、海涙石を使って泳ぎながら、人魚の長老クアルダの導きで、祭壇内部へと入ることができた。
(……頼むじゃん)
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は隠密で潜み、海中から顔だけ出して、ペットの鼠を使い、『ファミリアズアイ』を念じて、コーラル鉱石の場所を確認していた。
ユグディラのアムは、弱者の本能を発揮して、岩陰に隠れながら警戒のポーズ。
(見つけたじゃん)
ヴォーイはファントムハンドでコーラル鉱石を掴み、引き寄せようと試みたが、浮かび上がった幻影の腕は、ヴォーイの頭上でユラユラと何かを探しているような動作をしていた。
ファントムハンドの対象は『敵』である。幻影の腕は目当てを失い、思い通りには動かなかったのだ。
裏を返せば、コーラル鉱石が『味方』という証拠とも読み取れる。すなわち、ユグディラのアムも『味方』であるから、ファントムハンドで掴むことはできなかった。
(もしかして、コーラル鉱石には精霊が宿っているのかも?)
ヴォーイの様子を見て、ジャック・エルギン(ka1522)は隠密を駆使して、ラキ(kz0002)と一緒にコーラル鉱石が置かれている台座まで接近することができた。
台座の陰に隠れながら、ジャックはバックパックを取り出し、イェジドのフォーコはラキを護衛するように静かに歩いていた。
グリムバルド・グリーンウッド(ka4409)も隠密でなるべく気配を消しながら、ジャックに同行していた。ユキウサギのギルダスは、グリムバルドの様子を気に掛けながらも、周囲を警戒していた。
ジャックはコーラル鉱石を両手で抱えると、バックパックに入れてフォーコの背中に括り付ける。そして、グリムバルドは『加護符』をバックパックに張り付けた。しばらくの間、バックパックは加護が付与される。
……カシャリ。
音のする方向を振り返ると、白い仮面を付けた紳士が立ち尽くしていた。
「これはこれは、覚醒者の皆さん。この場で会えるとは光栄……」
いつの間にか、カッツォ・ヴォイ (kz0224)がジャックたちの前に姿を現した。
「かなり慎重に行動してたんだけどな。それでも俺達の動きに気が付くとは、さすが十三魔ってことか」
ジャックは怒りを押し殺して、発煙手榴弾をカッツォ目掛けて投げつけた。赤い煙が吹き出し、それが合図となり、人魚のクアルダは海中から泳いで逃げ出していった。
「フォーコ、ラキと一緒に先へ行け」
イェジドのフォーコはカタフラクトで二人乗りへの適性を得たこともあり、バックパックを背負ったままでも素早く、その場から離れることができた。
「フォーコくん、待って」
ラキは全速力でフォーコの後を追いかけていく。
ヴォーイは、慌てた様子で岩陰から飛び出し、発煙手榴弾をカッツォに向かって投げた。こちらは白い煙が舞い上がる。
「アムに渡す余裕もないじゃん。自分で投げた方が手っ取り早いじゃん」
アムは『あぶないにゃ!』の術を使い、すぐさま岩陰に隠れてしまった。これも弱者の本能……十三魔が相手では勝ち目はないとアムは判断したのだ。
白い煙に隠れながら、グリムバルドは魔導短伝話で、地上班のボルディアへと連絡する。
「こちらグリムバルド、カッツォ・ヴォイが出現。ただちに祭壇の入口に向かう」
『了解だ。海中班は、俺たちと合流するまで、無茶すんじゃねえぞ』
ボルディアたち地上班は、外部でVOIDオートマトンの集団たちを蹴散らし、少しずつ祭壇の入口に接近していた。
「カッツォに見つかった以上、急いで地上班と合流することに専念する」
グリムバルドが通信を切ると、ユキウサギのギルダスは『煙水晶』を発動させ、青白い魔法の煙を出現させた。
「ギルダス、祭壇の入口へ急ごう」
グリムバルドの言葉に、ギルダスが小さく頷く。
「グリムバルド、地上班との連絡、助かったぜ」
ジャックはバスタードソード「アニマ・リベラ」を構え、前方から押し寄せてくるVOIDオートマトンの群れを『薙払「一閃」』で斬り倒し、道を切り開いていった。
フォーコが噛む動作をすると獣機銃「テメリダーV3」のボタンが押され、弾丸を発射……VOIDオートマトン一体が消滅して、その間をフォーコとラキが駆け抜けていく。
グリムバルドはフォーコの後ろまで移動すると、『ファイアスローワー』を噴射して、背後から迫り来るVOIDオートマトンの群れを焼き払い、消滅させていく。
ヴォーイはようやく発煙手榴弾の一つをアムに渡すことができた。
「今度こそ、頼むじゃん」
ヴォーイは敵の動向に注意しながら、アムに声をかけた。
後ろから、カッツォ・ヴォイが近づいてくる。驚いたアムは、えいやっとばかりに発煙手榴弾を後方へと投げ飛ばした。今度は黄色の煙が立ち登っていた。
●
「ん? オート・パラディンたちが祭壇の中へ入っていくぜェ」
シガレットはオート・パラディンGが一体ずつ入口へと入ってくのに気が付いた。魔杖「ランブロス」を発動体として、シガレットは『ライトニングボルト』を解き放った。
直線上の雷撃が、オート・パラディンGの身体を貫き、2体にダメージを与えることができた。ミオレスカの祈りが届き、雷撃の威力を上げていたのだ。だが、オート・パラディンGはダメージを受けたにも拘わらず、祭壇の奥へと入ってしまった。
「敵にも、情報ネットワークがあるのかねェ?」
「早いとこ、海中班と合流しようぜ。カッツォ・ヴォイの指示で、オート・パラディンGたちは動いている可能性もあるからな」
ボルディアがそう言うと、アルスレーテは「まじかる☆あるすん」の機体から降りた。
「祭壇内部で戦うなら、私も生身で行くわ。と言っても、装備はきっちり揃ってるから安心して」
「なら、私はオート・パラディンGを追いかけるわ。ジャックさんから頼まれたこともあるしね」
コントラルトは、オート・パラディンGの額にある宝石が気になっていたが、ジャックから「宝石に宿っている精霊を助けてやってくれ」と頼まれていたのだ。
「入口に辿り着いたのは良いが、まだ祭壇の周辺にはVOIDオートマトンの群れが残ってるぜ」
エヴァンスの言葉に、シガレットは紙巻煙草を銜えたまま、応えた。
「相棒に残ってもらって、VOIDオートマトンたちを攻撃するようにしておくぜ。俺も中へ行く。幸い、マクシミリアンさんもいるからな。外の雑魚は任せるぜェ。オート・パラディンGは俺達に任せろ」
「良いだろう。VOIDオートマトンなら海軍の兵士でも倒せるからな」
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)は、同盟海軍の兵士を15人ほど連れてきており、その中でも覚醒者は5人いたのだ。
「準備が良いな、シガレット。カッツォ・ヴォイが中にいるなら、俺も行くぜ」
エヴァンスは万が一の場合、バルツァーと協力して臨時の門番を引き受けるつもりでいたが、シガレットの計らいで外部に残っているVOIDオートマトンの集団は、マクシミリアンと海軍の兵士たち、そしてシガレットの相棒である刻令ゴーレム「Volcanius」が祭壇の外で敵と応戦することになった。
「ほんじゃ、相棒は祭壇の入り口付近でVOIDオートマトンたちをライフル「エトランゼ」で射撃だ。弾が切れたらリロードしろよ」
そう言い残すと、シガレットはエヴァンスたちと共に祭壇の奥へと向かっていった。
●
「地上班がこちらに向かってる。それまでの辛抱だ」
グリムバルドは『デルタレイ』を解き放った。三体のVOIDオートマトンが粉々に砕け散り、消滅する。
ギルダスが『紅水晶』を発動させ、周囲にいるVOIDオートマトンたちの通過を封じていく。紅水晶の結界は、敵の動きを封じる技で、味方のハンターたちは結界を通り抜けていくことができた。
フォーコとラキが通り過ぎていくと、ジャックは後方から接近してきたVOIDオートマトン目掛けて、バスタードソード「アニマ・リベラ」を振り回し、『薙払「一閃」』を繰り出した。
攻撃を受けたVOIDオートマトンたちは砕け散り、消滅していく。後方を見遣れば、カッツォ・ヴォイがいる……だが、彼はそれほど急いでいるようには見えなかった。
「なんだか、余裕シャクシャクじゃん」
ヴォーイは逃走を優先しながら、後方にいるカッツォを狙って発煙手榴弾を投げ飛ばした。地面に落ちると、緑色の煙が舞い上がった。
ユグディラのアムも、発煙手榴弾を後方へと投げつけた。紫色の煙が立ち昇り、煙が通路に充満してカッツォの姿が見え難くなった。
ジャックは通路を駆け抜け、フォーコとラキに追いつく。
その時だった。
オート・パラディンGが三体、前方に立ち塞がり、マテリアルレーザーを放ってきた。とっさに回避するジャック。
フォーコはラキを乗せて、スティールステップで回避し、大きく跳躍しながら敵との間合いを取るように移動していく。
グリムバルドは魔導ガントレット「キュベレー」で敵のレーザーを受け止め、ギルダスはアックス「ライデンシャフト零式」でマテリアルレーザーを受け払うことができた。
ヴォーイとアムは敵の射程外にいたこともあり、攻撃は免れたが、後方からカッツォが接近してくるのが見えた。
「ヤバいじゃん。挟み撃ちじゃん」
ヴォーイは覚悟を決め、防御態勢を取った。アムは弱者の本能で素早く危機を察知して身構える。
「グリムバルド!!」
そう叫んだのは、ボルディアだった。
「待たせちまったな」
「無事に連絡が取れて良かった」
グリムバルドは互いに合流できるように、魔導短伝話で自分たちの位置を地上班に知らせていたのだ。
魔斧「モレク」を振り回すボルディア……『砕火』が唸りを上げて、オート・パラディンGに素早い連撃を放つ。それはまるで、炎の獣が敵を咀嚼するように、上下から火炎の幻影が襲い掛かるように見えた。
オート・パラディンGは胴部と脚部をボルディアの砕火に喰われ、軋むように砕け散った。衝撃で頭部も砕け散ったが、額に埋め込まれていた宝石が転がり落ちた。
イェジドのヴァーミリオンは、落ちた宝石を銜えて、ボルディアに寄り添った。
「その宝石、おまえが守ってくれたのか? ありがとな」
「オート・パラディンGに埋め込まれた宝石、やはり何かあるのね」
コントラルトは『ファイアスローワー』でオート・パラディンGを二体、炎で巻き込み、胴部を焼き尽くしていく。
ユキウサギは『紅水晶』の結界を張り、オート・パラディンG一体を移動不能にさせた。
「オート・パラディンGの構造は生物に似てるってことは、機動力を潰せば良いだけだぜ」
エヴァンスは、オート・パラディンGの脚部にある関節に狙いを定めて、グレートソード「テンペスト」による『刺突一閃』で貫いていく。
脚部が貫かれた衝撃で、胴部にも亀裂が走り、爆発……頭部も飛び散り、宝石が転がり落ちた。
バルツァーは幻獣砲「狼炎」で援護射撃をして、エヴァンスを守ることに専念していた。
アルスレーテは、床に落ちていた宝石を拾い、回収していた。
「これはブラッド・ストーンね。この宝石も、カッツォに見つかる前に回収しておくわ」
「敵の残骸は、残らず消滅させた方がいいぜ。カッツォの能力で無機物が融合される恐れもあるからなァ」
シガレットは『ライトニングボルト』を発動させた。隣接したオート・パラディンGに命中すると、直線上にいた別のオート・パラディンGにも雷撃が迸り、二体ともかなりのダメージを受けて爆発し、残骸さえも無くなり、消滅していた。
フォーコがバックパックを背負ったまま、グリムバルドの傍まで移動していた。ラキが慌てて、フォーコの後を追いかけていた。
「フォーコくん、もうすぐジャックも来るからね」
フォーコが立ち止まると、ジャックが走り寄ってきた。
「みんな、気を付けてくれ。カッツォが、こっちに来るぜ」
ジャックはボルディアたちと合流すると、後ろを振り返った。ヴォーイとアムが素早く駆けつけてくるのが見えた。
「なんとか合流できたじゃん」
カッツォは、VOIDオートマトン10体を引き連れて、ハンターたちの前に姿を現した。
「私は援護に廻るわ」
コントラルトは『ジェットブーツ』で飛び込むと『ファイアスローワー』を噴射し、VOIDオートマトン10体を全て焼き払い、消滅させた。
カッツォは素早く回避し、ハンターたちの動向を窺っていた。
「よお、シャイな紳士さんよ。悪いが一度、その仮面の下の笑顔を見てみたくてなぁ!」
エヴァンスが挑発的に叫ぶ。バルツァーは幻獣砲「狼炎」で攻撃をしかけるが、カッツォには命中しなかった。エヴァンスは『魔刃解放』を施したグレートソード「テンペスト」を振り下し、カッツォの胴部に狙いを定めて斬り付けた。
「挨拶代わりだ。遠慮はいらねえよなっ!」
エヴァンスの攻撃が、カッツォに命中する。
「……良かろう」
その瞬間、カッツォのカウンターが素早く発動し、気が付けばステッキがエヴァンスの腹部を貫いていた。
「ぐっ……」
エヴァンスは倒れ込み、腹部から血を流しながらも、懸命に立ち上がろうとしていた。
「申し訳ないが、この仮面の下は見せることはできないのだ。赤髪の勇士よ」
カッツォはそう言った後、フォーコが背負っているバックパックに目を付けた。
それに気付き、シガレットはエヴァンスをバルツァーの背に乗せると、『フルリカバリー』をエヴァンスに施した。血は止まったが、エヴァンスはバルツァーの背中で伏せるように倒れかかっていた。
ジャックは、ラキをこの場から遠ざけるため、フォーコに「ラキの護衛」を頼み、ジャック自身はエヴァンスを庇うように攻撃態勢に入っていた。
フォーコはバックパックを背負ったまま、ラキを連れて祭壇の入口へと移動した。外には「まじかる☆あるすん」の機体があったが、操縦者のいないR7エクスシアは、VOIDオートマトンが放った銃弾により、ダメージを受けていた。
アルスレーテは白兵戦の方がカッツォと戦い易いと考え、少しずつ間合いを詰めていく。
少しでも時間稼ぎになればと、カッツォに問いかけるシガレット。
「よォ、脚本家。舞台は何の演目で、どういうあらすじか、詳しく教えてくんねェか?」
「……舞台は、人魚の島。……私は『コーラル』という鉱石を探しているのだよ。そして、おまえたちが苦しむ姿を演出したいと思っているのだ」
「なんつー悪趣味だ。だがな、テメェが嫌って言うまで付き合ってやるよ!」
ボルディアは鉱石を守るため、『マッスルトーチ』を放出した。体内のマテリアルが光を放ち、ボルディアの肉体美が輝きを増した。
「ほほう、素晴らしい肉体の輝きではないか。演出としても素晴らしい」
何やら真面目に感心しているカッツォ。
「嫌というより、喜んでるわね」
コントラルトは『デルタレイ』を発動させ、カッツォの腕を狙い撃つが、回避されてしまう。
アルスレーテは『縮地瞬動』でカッツォに接近すると『朱雀連武』を繰り出し、三回の連撃がカッツォの胴部に炸裂した。
カッツォは二つの連撃を回避し、三度目の拳が胴部に命中……アルスレーテの聖拳「プロミネント・グリム」は命中すれば、かなりの威力だった。
「今のは、さすがに効いたよ」
カッツォはアルスレーテの攻撃を受けた刹那、ステッキでカウンターを繰り出した。
「?!」
アルスレーテは『明鏡止水』で、回避したような動きのカッツォに隣接し、攻撃を仕掛けるが、カッツォのカウンターの方が早かった。アルスレーテの胴部にステッキが貫き、血飛沫が舞った。『長姉の意地』で受けたダメージをそのまま、カッツォにお見舞いするアルスレーテ。
だが、さらにカッツォのカウンターがアルスレーテに襲い掛かり、その反動で床に叩きつけられた。
「……災厄の十三魔、伊達じゃ……ない…わね」
アルスレーテの全身は、激しい痛みにより、立ち上がることさえできなかった。
「この私を相手に、ここまで付いてきたのは、おまえが初めてだ。顔だけは覚えておこう」
相も変わらず、冷めた声のカッツォ。
グリムバルドは『エナジーショット』を解き放ち、アルスレーテの回復を試みたが、彼女の怪我を癒すことまではできなかった。
ギルダスは『紅水晶』の結界を張り巡らせた。
「カッツォ! おまえだけは、絶対に許さねーからなっ!」
ジャックの怒りは頂点に達して、『二刀流』の構えを取ると、刀身が龍鉱石で作られたバスタードソード「アニマ・リベラ」でカッツォに攻撃をしかける。最初の一撃は回避されたが、パリィグローブ「ディスターブ」の拳がカッツォの腹部に叩きつけられた。
またもや、カウンターで返すカッツォ。だが、ジャックは『鎧受け』で身を動かし、カッツォのステッキを受け流した。
「くくく、怒りに満ちた顔、忘れぬぞ。いずれ、龍鉱石の刃も味見してやろう」
カッツォは、そう言い残すと、瞬間移動で、この場から消え去っていった。
初めて聴いた……カッツォの笑い声だけが、脳裏に焼き付いていた。
●
「機体は、外に置いておいて良かったぜェ。もしかしたら、カッツォの無機物融合の触媒にされてたかもしれないからな」
シガレットの予想は鋭い。
「うー、不完全燃焼だぜ。カッツォの野郎、もう少しの所で逃げやがって」
ボルディアが攻撃しようとした間際、カッツォは瞬間移動で姿を眩ましたのだ。
「そんなに落ち込むなって。ボルディアがカッツォの注意を引いてくれたおかげで、フォーコも祭壇の外へ出ることができたからな」
ジャックはそう言いながら、フォーコの頭を撫でた。バックパックには、コーラル鉱石が入っていたが、無事に運び出すことができたのだ。
「ジャックさん、頼まれていた宝石、拾っておいたわ」
コントラルトの手には、直径2センチほどの宝石が一つ。
「アルスレーテも回収してくれてたみたいだぜ。ヴァンが拾ってくれたのと合わせると、全部で三つだな」
ボルディアは、二つの宝石を持っていた。
「三つの宝石を纏めておいて、しばらく様子を見てみようぜ」
ジャックの勘が当たっていれば、精霊が姿を現すはずだった。
……。
不安が過った。今までの感覚とは違うようにも感じた。
時間はかかったが、宝石に罅が入ると、男性の姿をした精霊が現れた。
だが、かなり弱っているようにも見えた。
『……ヒトの子たちよ。私は、もうすぐ消える……その前に、伝えておきたいことがある』
消える? まさか……皆に緊張が走った。
『残念だが、完全に歪虚化されたものは、闇に落ちる。以前、助かった精霊たちは、魂が歪虚化される前に身体の一部が消滅したからだ』
精霊の言葉に、コントラルトは固唾を飲んだ。
「助かった精霊もいるのね? あなたは消えてしまうの? 何故?」
『私の身体はカッツォの支配下で機械と融合され、闇の浸食が進み過ぎているのだ。自我さえも闇に落ちれば、それこそ完全に歪虚化して、元に戻る術はない。私の身体は……自然に消滅するだろう。媒体の機械兵器が破壊されてしまったからな』
「間に合わなくて、すまねえ」
ジャックが哀しげに呟く。
『そんなことはない。消える前に、ヒトの子らに会えて、良かった。私の身体が消えても、魂はアメンスィ様のいる大地に帰る……、その波動は、アメンスィ様にも伝わるだろう』
宝石が、砂のように砕け散り、海風に乗って、散っていった。
●
島の浅瀬に、波が揺らめいていた。
「コーラル鉱石も反応がないじゃん?」
ヴォーイは、コーラルにも精霊が宿っているのではと思っていた。
「クアルダ、俺は……」
ジャックはバックパックからコーラル鉱石を取り出して、浅瀬にいる人魚のクアルダに見せた。
しばらくコーラルを見つめるクアルダ。
「あら、コーラル様、気配を消すのに集中してるわ。それで、カッツォから隠れてたのね」
クアルダが魚人族の戦士たちを呼び寄せ、コーラル鉱石をジャックから受け取った。
「アリガト、コーラル様、無事ダッタ」
「そっか。それでカッツォも、コーラルを探し回っていたってことか」
ジャックは安堵の溜息をついた。
グリムバルドも、一安心していた。
「もし、コーラルが精霊として姿を現していたとしたら、カッツォにも簡単に奪われていたことだろうな」
わざわざ祭壇を占拠したのは、コーラルの気配を探すためとも考えられる。
ボルディアはヴァーミリオンに騎乗して、アルスレーテを自分の前に乗せていた。
「二人乗りに調整しておいて良かったぜ。これでアルスレーテも、船まで連れていけるからな」
「ボルディア、ごめんなさいね」
アルスレーテは重体だったため、思うように動けなかったのだが、どうやらボルディアが祭壇の外まで連れてきたようだ。
「まじ☆ある輸送は、海軍の兵士たちに頼んでおいたぜェ。万が一、カッツォに機体が操られたら、相棒の炸裂弾で粉砕してやるつもりだったがな」
シガレットは、そのような状況まで想定していたが、実際に読み通りになっていたら「まじかる☆あるすん」は、どうなっていたことだろう。
バルツァーは、怪我を負ったエヴァンスを気遣うように、ゆっくりと歩いていた。
「アルスの攻撃、見事だったよな。さすがのカッツォも、冷や汗の一つは掻いてたかもな」
エヴァンスがそう言うと、バルツァーは相槌を打つように、尻尾を二回、大きく振っていた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/30 15:04:02 |
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質問卓 シガレット=ウナギパイ(ka2884) 人間(クリムゾンウェスト)|32才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/08/01 21:00:03 |
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相談卓 アルスレーテ・フュラー(ka6148) エルフ|27才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2017/08/04 02:16:18 |