ゲスト
(ka0000)
【MN】赤き大地に魂は還る
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2017/08/03 09:00
- 完成日
- 2017/08/05 07:41
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
火星の戦線は、次第に劣勢となっていった。
この状況に統一連合宙軍首脳部は、火星から勢力圏が失われる危険を予見。
そこで火星の主導権奪還の為、ある作戦を発動させる。
アイオリス作戦。
敵の拠点であるアイオリス高原とアルカディア平原の同時強襲。
二つの重要拠点を叩く事で敵主力にダメージを与えながら、撤退に追い込む。火星の重要拠点を押さえる事が目標とされた。
それは、火星宙域の統一連合宙軍全戦力を賭けた総力戦と称して差し支えなかった。
後にアイオリスの戦いと呼ばれた両軍の激突――。
しかし強襲は失敗。両軍に多大なる被害を出しながら戦線は拮抗する。
これには後世の学者たちも、強襲が露見していたとも、スパイが連合宙軍内に存在していたとも説を唱えている。
そして戦いは、消耗戦になる。
誰もが――そう考えていた。
「艦長! 旗艦トーレス、轟沈!」
「なんだと!?」
艦長は、席から立ち上がった。
アイオリス作戦の旗艦『トーレス』が敵の猛攻を受けて撃破されたのだ。
これは黙視騎士による襲撃が原因なのだが、艦長が預かるSフィールドの『ライアル』にはその情報は伝わらない。
「ええぃ、本部とは繋がらんのか!」
「ダメです。他の艦にも混乱が広がっています」
命令を下していた存在が失われれば、前線には混乱が広がっていく。
そして、それはVOID側にとってチャンスの到来を意味する。
「艦長! Nフィールドのバニスターから救援要請!」
「クルーン、轟沈!」
「エドガーからの通信が途絶えました!」
次々とオペレーターからもたらされる友軍の撃破情報。
VOIDは攻勢へ転じ、Nフィールドで展開していた友軍艦隊へ襲いかかった。
このままでは被害が拡大する。
その事は艦長にも理解はできていた。
だが、迷う艦長は的確な命令を下せずにいた。
葛藤。
それが統一連合宙軍兵士の命を奪い続けている。
『艦長。艦の撤退を進言します』
ブリッジに鳴り響く青年の声。
艦長はその声で現実に引き戻される。
「フェネックか!」
フェネック。
統一連合宙軍第二宇宙機動師団所属、田代誠のあだ名である。
『ソウル・サンクチュアリ(魂の還る聖域)』を率いる誠からの通信で、艦長の顔色に少し赤味が戻った。
『Sフィールドは、もう保ちません。転身してEフィールドから脱出。ダイモス宙域経由で戦線を離脱して下さい』
「分かった。だが、フェネックはどうする?」
『私は問題ありません。他の艦と共に脱出します』
「そうか。周囲の艦にも呼び掛けて撤退しよう。武運を祈る」
通信を終える誠。
ディスプレイに艦長の顔は消え、元の漆黒が現れる。
メインカメラには爆炎に包まれる味方戦艦。
二つに折れ、火星の大地へ降り注ぐ。
これで幾つの命が失われたか。
いや、間もなく自分たちもあの大地へ引かれ落ちるかもしれない。
「私は、大丈夫……か」
誠が上官へ虚偽を口にしたのは、記憶はいつ以来だろうか。
新兵の頃、同期と宿舎を抜け出して怒られた時以来だと記憶している。
本当なら味方艦隊と共に戦線を離脱するはずだが、既に周囲には味方の艦は一つも見当たらない。
すべて、狂気の前に敗れ去った。
残されているのは、ソウル・サンクチュアリの面々だけである。それも燃料は脱出までギリギリといったところか。
周囲に集まりつつある浮遊型狂気は、ソウル・サンクチュアリを取り囲んでいく。
「聞いたな。我々はこれから味方艦隊が戦域を脱出するまで、Eフィールドを死守する」
敵は勢いに乗って攻めてくる。
正直、生き残れる可能性は低い。
それでも彼らはやらなければならない。
多くの仲間の命を守る為。
ソウル・サンクチュアリの名に賭けて。
「隊長として俺から命令する。
死ぬな。最期まで、生きる望みを捨てるな」
●
「未だ抵抗するか、人間」
火星の地にゆっくりと降り立つ黙示騎士。
まるで赤い異形の鎧に身を包む戦士は、ウォーレンと名乗った。
手に握られた大剣が、鈍い輝きを放つ。
「何故、無駄と分かって戦い続ける。抵抗が無駄と分からぬか」
ウォーレンは渇望していた。
本当の戦士とは――自分の前に立つ勇気のある者を。
「分からぬならば、分からせるまで。この地で死に絶えるがいい」
この状況に統一連合宙軍首脳部は、火星から勢力圏が失われる危険を予見。
そこで火星の主導権奪還の為、ある作戦を発動させる。
アイオリス作戦。
敵の拠点であるアイオリス高原とアルカディア平原の同時強襲。
二つの重要拠点を叩く事で敵主力にダメージを与えながら、撤退に追い込む。火星の重要拠点を押さえる事が目標とされた。
それは、火星宙域の統一連合宙軍全戦力を賭けた総力戦と称して差し支えなかった。
後にアイオリスの戦いと呼ばれた両軍の激突――。
しかし強襲は失敗。両軍に多大なる被害を出しながら戦線は拮抗する。
これには後世の学者たちも、強襲が露見していたとも、スパイが連合宙軍内に存在していたとも説を唱えている。
そして戦いは、消耗戦になる。
誰もが――そう考えていた。
「艦長! 旗艦トーレス、轟沈!」
「なんだと!?」
艦長は、席から立ち上がった。
アイオリス作戦の旗艦『トーレス』が敵の猛攻を受けて撃破されたのだ。
これは黙視騎士による襲撃が原因なのだが、艦長が預かるSフィールドの『ライアル』にはその情報は伝わらない。
「ええぃ、本部とは繋がらんのか!」
「ダメです。他の艦にも混乱が広がっています」
命令を下していた存在が失われれば、前線には混乱が広がっていく。
そして、それはVOID側にとってチャンスの到来を意味する。
「艦長! Nフィールドのバニスターから救援要請!」
「クルーン、轟沈!」
「エドガーからの通信が途絶えました!」
次々とオペレーターからもたらされる友軍の撃破情報。
VOIDは攻勢へ転じ、Nフィールドで展開していた友軍艦隊へ襲いかかった。
このままでは被害が拡大する。
その事は艦長にも理解はできていた。
だが、迷う艦長は的確な命令を下せずにいた。
葛藤。
それが統一連合宙軍兵士の命を奪い続けている。
『艦長。艦の撤退を進言します』
ブリッジに鳴り響く青年の声。
艦長はその声で現実に引き戻される。
「フェネックか!」
フェネック。
統一連合宙軍第二宇宙機動師団所属、田代誠のあだ名である。
『ソウル・サンクチュアリ(魂の還る聖域)』を率いる誠からの通信で、艦長の顔色に少し赤味が戻った。
『Sフィールドは、もう保ちません。転身してEフィールドから脱出。ダイモス宙域経由で戦線を離脱して下さい』
「分かった。だが、フェネックはどうする?」
『私は問題ありません。他の艦と共に脱出します』
「そうか。周囲の艦にも呼び掛けて撤退しよう。武運を祈る」
通信を終える誠。
ディスプレイに艦長の顔は消え、元の漆黒が現れる。
メインカメラには爆炎に包まれる味方戦艦。
二つに折れ、火星の大地へ降り注ぐ。
これで幾つの命が失われたか。
いや、間もなく自分たちもあの大地へ引かれ落ちるかもしれない。
「私は、大丈夫……か」
誠が上官へ虚偽を口にしたのは、記憶はいつ以来だろうか。
新兵の頃、同期と宿舎を抜け出して怒られた時以来だと記憶している。
本当なら味方艦隊と共に戦線を離脱するはずだが、既に周囲には味方の艦は一つも見当たらない。
すべて、狂気の前に敗れ去った。
残されているのは、ソウル・サンクチュアリの面々だけである。それも燃料は脱出までギリギリといったところか。
周囲に集まりつつある浮遊型狂気は、ソウル・サンクチュアリを取り囲んでいく。
「聞いたな。我々はこれから味方艦隊が戦域を脱出するまで、Eフィールドを死守する」
敵は勢いに乗って攻めてくる。
正直、生き残れる可能性は低い。
それでも彼らはやらなければならない。
多くの仲間の命を守る為。
ソウル・サンクチュアリの名に賭けて。
「隊長として俺から命令する。
死ぬな。最期まで、生きる望みを捨てるな」
●
「未だ抵抗するか、人間」
火星の地にゆっくりと降り立つ黙示騎士。
まるで赤い異形の鎧に身を包む戦士は、ウォーレンと名乗った。
手に握られた大剣が、鈍い輝きを放つ。
「何故、無駄と分かって戦い続ける。抵抗が無駄と分からぬか」
ウォーレンは渇望していた。
本当の戦士とは――自分の前に立つ勇気のある者を。
「分からぬならば、分からせるまで。この地で死に絶えるがいい」
リプレイ本文
アイオリス作戦の失敗。
責任の追及は行うべきではあるが、今最優先すべきはそれではない。
現時点の最優先事項は火星に残された勇士達を如何に脱出させるべきか、である。
「各機、生存していればこの呼び掛けに応答せよ」
『ソウル・サンクチュアリ(魂の還る聖域)』隊長の田代誠は、高性能CAM「天慶」の操縦席で祈る思いであった。
「こちら、アルバ。ローゼスも健在。今からそちらへ行きますから」
「Meteorのキャリコ。合流すべくEフィールドへ移動中」
アルバ・ソル(ka4189)とキャリコ・ビューイ(ka5044)が誠の声に反応する。
その声に、誠は声無き声をあげる。
まだ、ソウル・サンクチュアリは死に絶えていない。
「いいじゃん、いいじゃん!
面白い展開だよ! ……あ。ウーナ、サブ-1、Sフィールドを飛行中。間もなくEフィールド空域だよ」
可変CAM『サブ-1』でSフィールドからEフィールドへ横断するウーナ(ka1439)。
飛行形態へ変形したサブ-1とはいえ二つの戦域を横断したウーナは、剛胆なのか。それとも怖いもの知らずなのか。
「こっちはEフィールドへ入ったぞ。岩井崎、天慶で突貫開始だ!」
早くもEフィールドへ入った岩井崎 旭(ka0234)の天慶。
ビームマシンガンで段幕を展開しながら、浮遊型狂気を力任せに押し返していく。
「皆、よく生き残ってくれた」
「最初に生きろと命じたのは隊長だ。俺はそれに従っただけだ」
キャリコは手にしたアサルトライフルで友軍機にまとわり付く浮遊型狂気を地上から狙い撃つ。
「そうだったか? なら、改めて命令だ。全員、味方が撤退するまでEフィールドを死守。生きて火星を脱出するんだ」
誠は隊員達へ命令を下す。
「……了解。そういって真っ先に逝くのは無しにしてくださいよ」
アルバは敢えて冗談めいた言い方をした。
生きて帰れ、という命令を下した誠自身に念を押したかったのだ。
それに対して誠は、意図を察したように静かに呟く。
「……笑えない冗談だな」
●
戦域から脱出路となるEフィールドを維持する事で、少しでも将兵を無事に火星を脱出させる。
ソウル・サンクチュアリにとっては損な役回りだ。
それはとても尊い役回りでもある。
「ハロー、こちらメンドーサ。藤堂研司だ」
射撃型CAM「メンドーサ」に乗る藤堂研司(ka0569)。
少し遅れながらもEフィールドへ到着していた。
「研司か。確か、パリスで奮戦していたはずだが……」
「パリスは……やられた。だが、気に病む時間はねぇ。即興コンビで悪いが早速Eフィールドの維持に入らせてもらう」
「アウレール、ザントメンヒェン。到着致しました!」
最期にEフィールドへ駆け込んできたのは、アウレール・V・ブラオラント(ka2531)。
連合宙軍曹長にして、ソウル・サンクチュアリでも最年少の一人。
こういえば聞こえは良いが、アウレールは未だ若い。
「アウレール、お前は若い。ここで残るべきではない。それにその機体は……」
誠は改めてアウレールの機体に目を向ける。
それは新配備されたばかりの新型CAM――PzI-2M『ザントメンヒェン』。
火星周辺宙域での戦力不足を考慮されて開発された新型のモデルであり、機関砲、携帯ロケットランチャー、格闘用ピック付盾を装備。
しかし、蓋を開けてみれば火星工房の乏しい工業力でも量産可能な簡素設計。部品精度も甘く、動作不良も頻繁に発生する。
「隊長、自分はやれます。やってみせます」
「しかし……」
「自分は死ぬ為に来たのではありません。祖国の為、家族の為に来たのであります!」
己の意志でこの火星へ赴いた。
その覚悟と士気は誰にも負けない。
「分かった。だが、危険だと分かれば他の隊員と共に脱出するんだ」
「ハイッ!」
アウレールの覚悟が誠に伝わった瞬間であった。
理解してもらって満足ではあるが、現実はそこまで甘くはない。
「ほらほらっ! サボっている暇はないよっ! S1、突撃っ!」
ウーナのサブ-1がEフィールドへの侵入を目論む浮遊型へガトリングの弾丸を浴びせかける。
既にEフィールドへ逃げ延びた味方艦船は多数。
あの艦船の中に何百人、何千人という人間が必死で撤退している。
恐怖と焦りの中で逃げる艦隊を追いかける――狂気の群れ。
ならば、ウーナがやるべき行動は一つだ。
「側面、いただきっ!」
浮遊型の群れに対して側面から強襲。
機動力を生かしたまま、急接近。ガトリングの雨を降らせた後、ミサイルのトドメを放つ。
銃弾を受けた浮遊型は無残に爆発。
そこへミサイルが破裂する事で周辺の浮遊型も誘爆していく。
だが、狂気の数は圧倒的。すべての狂気を倒すには至らない。
幾つかの浮遊型がウーナのサブ-1を追撃しようとする。
「あぶなーい……なんーて♪ ブースト!」
サブ-1のエンジンが点火。
同時にスピードを上げてサーブ1が加速していく。
置き去りにされる浮遊型。
それはさながら的のような存在であった。
「さて。行こうか、メンドーサ!」
浮遊型が飛ぶ距離は、研司のメンドーサにとってスナイパーライフの射程距離だ。
距離と予測データをチェックした後、ロックオンの表示を映し出す。
「さぁ、始めるか。一暴れだ」
スナイパーライフルが、発射。
衝撃と共に、浮遊型に突き刺さる弾丸。
空に浮かんだ巨大な炎が花となって火星の空を彩った。
●
一方、地上で奮戦する隊員も負けてはいない。
「おらおらおら! 道を開けろってぇんだ!」
岩井崎の天慶は、歪虚CAMに向かってスラスター全開。
歪虚CAMへの一団へと向かって行く。
狙うはバスーカーで友軍艦隊を撃ち落とそうとしている歪虚CAM。
高火力の兵器を持つ敵を黙らせる事が最優先だった。
「させるかよっ!」
放熱型アームソードが歪虚CAMの胴体を捉える。
アームソードの刀身は短いが、高熱を帯びて敵を焼き切る事ができる。
高速移動した天慶にとっては接近戦で最大の威力を発揮する。
岩井崎の前で爆ぜる歪虚CAM。
あっさりと沈む歪虚ではあるが、敵の群れに突撃した岩井崎を周りの敵が逃すはずもない。
「……って、やっぱキツかったか?」
「邪魔だっ!」
岩井崎の視界で派手な爆発。
見れば、紅のエクスシアが放ったマテリアルライフルが浮遊型を捉えていたようだ。
「アルバかっ!」
「反撃開始だ。派手に行こう」
アルバのローゼスは、岩井崎に合わせる形で魔銃「ナシャート」で銃撃を加えた後、バルディッシュによるウィンドスラッシュで歪虚CAMを叩き伏せる。
今は少しでも敵を減らす事が優先。アルバは躊躇する事無く、己の腕を振るい続ける。「ターゲット、インガンレンジ。FOX2FOX2!」
回避を試みる歪虚CAMに対してはキャリコのMeteorが、射程距離ギリギリからマテリアルライフルとマシンガンで弾幕を形成。
歪虚CAMの一団をその場へ釘付けにしていく。
「やる。やってみせる……すべては家族の為に」
アウレールのザントメンヒェンも動き続けながら機関砲を一団へ叩き込んでいく。
防弾性能がお粗末な事はアウレールも分かっている。
反撃を許してはならない。嫌でもアウレールに緊張感が走る。
気付けば岩井崎、アルバ、アウレールによって確実に敵の撃破へと繋げていく。
「……! 弾丸が切れた。現地で調達する」
キャリコは前面に残り僅かのマシンガンを集中して撃破する。
そして、地面に転がった同型のマシンガンからマガジンを抜いて自らのマガジンへと差し替える。
「それでまだ戦えそうか。まだまだ敵はやってくる。もう少し持ちこたえないと……」
「おお? 調子よさそうだな」
アルバの声を遮るように、ウーナの支援をしていた研司は仲間へ通信を入れる。
ソウル・サンクチュアリの面々のおかげで確実に味方の撤退は進んでいる。
Eフィールド維持も難しくはない。そう感じ始めていた。
「皆、生き残ったらとっておきのサラダを振る舞うぜ! 脱出したら一杯やろう!」
「えー! 肉じゃねぇのかよ!」
研司の言葉に岩井崎が文句を入れる。
しかし、研司は大きく頭を横に振る。
「甘いな。ただのサラダだと思うなよ。満足度はアイオリス級だ。
ま、生きて戻ってからのお楽しみだ!」
研司の提案で、瞬間心が安まる隊員達。
だが、彼らは気付いてはいない。
――絶望が、すぐそこまで近づいている事に。
●
「え!? なに?」
異変が起こったのはウーナの目の前であった。
飛び去るはずだった艦船が突然爆発したのだ。
そして、次の瞬間サブ-1へ加わる振動。
「羽虫が調子に乗りおって」
黙示騎士ウォーレン。
旗艦トーレスを含む複数の艦船を単騎で破壊して回った猛者。
そのウォーレンがウーナのサブ-1に取り憑き、バスターソードの切っ先を操縦席に向けている。
「ブースト……嘘、振り切れない!
なんでッ! どうして!?」
困惑するウーナ。
音も無く忍び寄ったウォーレンによって差し向けられる死。
恐怖に歪む顔。
それは恐怖を知らぬ者が、間近に迫る恐怖を知った瞬間でもあった。
「ひっ……や……やだ……死にたくな……ちくしょぉぉぉー!」
叫ぶウーナ。
容赦なく突き刺さるバスターソード。
鮮血に塗れた操縦席。
ウォーレンが飛び去った後、サブ-1は巨大な火球となった。
「ウーナ!
……強敵だ。押さえるぞ!」
「でやがったな! 待ってたぞ!」
岩井崎は天慶のリミッターを解除。スラスターを全開させて急接近。
誠の天慶もそれに合わせてリミッターを解除する。
「滅ぶ定めの者が、未だ抗うか。よかろう」
ウォーレンもこれに対して正面から迎え撃つ。
だが、ここでウォーレンに対して負の感情を抱く者がいた。
「奴は……トーレスを……パリスを、やった奴!
……悪いな、メンドーサ。お前の先輩の弔い合戦、付き合え!」
研司のメンドーサはスナイパーライフルがウォーレンを捉える。
リンクシステムが速度を調整しながらウォーレンの照準に定める。
「ウォーレン……ロックオン。スナイパーライフル、ファイア!」
轟音と共に発射される弾丸。
しかし弾丸はウォーレンの手にしていたバスターソードに突き刺さる。
弾かれた弾丸と共に、ウォーレンはメンドーサに意識を移す。
「勝負に水を差すか」
「何が無駄な抵抗だ! ……パリスの仇を討てずにおめおめと帰れるかぁ!」
スナイパーライフルを再び構える研司。
しかし、ウォーレンの目標は研司へ切り替わる。
「まずい! 岩井崎、追いかけるぞ」
「分かってる。持ってくれよ、天慶!」
●
誠がウォーレンを押さえている間に撤退。
それがソウル・サンクチュアリに下された命令であった。
「ハッチが開く。飛び込むぞ」
Eフィールドを飛び去る味方艦のハッチにMeteorが飛び込んだ。
続いてアルバのローゼスも着艦。後方から追いかけてくる敵を警戒してナシャートを構える。
「味方着艦まで援護する。皆、早く……。
隊長。生きろって命令しているんですから、お願いしますよ」
アルバは誠に話し掛けるが、返事がない。
未だウォーレンと対峙しているのか。
「ザントメンヒェン、着艦します」
アウレールのザントメンヒェンも味方艦に向かってスラスターを全開にする。
残り燃料も十分。機動力を誇るザントメンヒェンなら十分届く距離だ。
――だが。
「スラスターの出力が上がらない!? 何故? 整備不良?」
空中で突如、スラスターの出力が落ち始めたのだ。
故障が多いザントメンヒェン。ここで思わぬ形で不良が発生する。
「大丈夫だ。掴めるか」
キャリコがMeteorの腕を伸ばす。
この距離ならザントメンヒェンが手を伸ばせば十分掴めるはず。
「そうだ。諦めちゃダメだ。これで、これで故郷に帰れる……」
帰還。
そして、懐かしい光景が再び瞼の裏へ浮かぶ。
アウレールの瞳が潤む。
しかし、アウレールがその光景を目にする事はなかった。
「アウレール!」
突如、ザントメンヒェンが爆発したのだ。
その後方では傷付き地面へ転がる歪虚CAM。手にしていたバズーカーがザントメンヒェンを捉えたのだ。
「や、やってくれたな!」
アルバは届かないと分かっていてもナシャートを撃たずにはいられなかった。
●
限界など、既に超えていた。
岩井崎の天慶は地面へと伏し、誠の天慶も右腕を失い左足が制御不能となっていた。
「未だ抵抗するとは、滑稽だな」
ウォーレンにダメージを与えているはずだが、見た目には大きなダメージを負っているようにも見えない。
「ふん。まだ生きていたか」
研司のメンドーサも片腕を失い、リンクシステムに異常を来していた。
直立するのがやっとの状況。それでもウォーレンは容赦せずトドメを刺しに歩み寄る。
「ま、待ってたぜ」
「なに?」
次の瞬間、ウォーレンの後ろから捕縛する誠の天慶。
すぐに振りほどかれる事も予見している。
少しだけその場に足を止められれば良い。
「今だ、やれっ!」
「無策で来ちゃいねぇ……規格が違うが、一発ぐらいは撃てるんだ。
パリスの、研司砲! てめぇも道連れだ!」
スナイパーライフルに集まる膨大なエネルギー。
それを至近距離からウォーレンの体に叩き込む。
「貴様、最初からそれを狙って!」
「撃て、研司!」
「うぉぉぉ!」
放たれたエネルギー。
ホワイトアウト。
いくつかの爆発が、白い光景の中で生まれる。
●
「……大シルチスが墓場なら、洒落てるか……。メシは……残念だった、な……」
岩井崎の前で、研司は息を引き取った。
誠は最期の攻撃で天慶と共にした。岩井崎は天慶が機能停止した為に死亡する事はなかったが、飛び去るウォーレンを見守る事しかできなかった。
「生き残ったって……」
周囲は赤い大地のみ。そして広がる友軍の残骸。
まだ熱を帯びているが、間もなくこの熱も消えていくだろう。
戦士達の魂と共に。
「俺は……」
火星の空。
アイオリス山の向こうから飛来する暗雲。
それは、狂気の一団。それが火星の空を覆い尽くそうとしていた。
●
「生きろって命令して……自分が破らないでくださいよ……」
アルバとキャリコは生き残った。
更なる追撃があったが、マテリアルカーテンを使って盾となる事で味方艦を防衛しきったのだ。
「また、生き残ってしまったか……だが……必ずここに戻ってくるぞ」
「いや、それだけじゃ足りない。俺達は伝えなければならない。
ソウル・サンクチュアリの最期の戦いを」
アルバとキャリコは、崑崙へ向かう味方艦の中で戦いを思い返していた。
味方を逃がす為に最期まで奮戦した仲間達。
多くの仲間が散っていった。
だが、生き残った二人は後世に語り継がなければならない。
彼らが存在した証を。
「そうだな」
キャリコは、小さく呟いた。
責任の追及は行うべきではあるが、今最優先すべきはそれではない。
現時点の最優先事項は火星に残された勇士達を如何に脱出させるべきか、である。
「各機、生存していればこの呼び掛けに応答せよ」
『ソウル・サンクチュアリ(魂の還る聖域)』隊長の田代誠は、高性能CAM「天慶」の操縦席で祈る思いであった。
「こちら、アルバ。ローゼスも健在。今からそちらへ行きますから」
「Meteorのキャリコ。合流すべくEフィールドへ移動中」
アルバ・ソル(ka4189)とキャリコ・ビューイ(ka5044)が誠の声に反応する。
その声に、誠は声無き声をあげる。
まだ、ソウル・サンクチュアリは死に絶えていない。
「いいじゃん、いいじゃん!
面白い展開だよ! ……あ。ウーナ、サブ-1、Sフィールドを飛行中。間もなくEフィールド空域だよ」
可変CAM『サブ-1』でSフィールドからEフィールドへ横断するウーナ(ka1439)。
飛行形態へ変形したサブ-1とはいえ二つの戦域を横断したウーナは、剛胆なのか。それとも怖いもの知らずなのか。
「こっちはEフィールドへ入ったぞ。岩井崎、天慶で突貫開始だ!」
早くもEフィールドへ入った岩井崎 旭(ka0234)の天慶。
ビームマシンガンで段幕を展開しながら、浮遊型狂気を力任せに押し返していく。
「皆、よく生き残ってくれた」
「最初に生きろと命じたのは隊長だ。俺はそれに従っただけだ」
キャリコは手にしたアサルトライフルで友軍機にまとわり付く浮遊型狂気を地上から狙い撃つ。
「そうだったか? なら、改めて命令だ。全員、味方が撤退するまでEフィールドを死守。生きて火星を脱出するんだ」
誠は隊員達へ命令を下す。
「……了解。そういって真っ先に逝くのは無しにしてくださいよ」
アルバは敢えて冗談めいた言い方をした。
生きて帰れ、という命令を下した誠自身に念を押したかったのだ。
それに対して誠は、意図を察したように静かに呟く。
「……笑えない冗談だな」
●
戦域から脱出路となるEフィールドを維持する事で、少しでも将兵を無事に火星を脱出させる。
ソウル・サンクチュアリにとっては損な役回りだ。
それはとても尊い役回りでもある。
「ハロー、こちらメンドーサ。藤堂研司だ」
射撃型CAM「メンドーサ」に乗る藤堂研司(ka0569)。
少し遅れながらもEフィールドへ到着していた。
「研司か。確か、パリスで奮戦していたはずだが……」
「パリスは……やられた。だが、気に病む時間はねぇ。即興コンビで悪いが早速Eフィールドの維持に入らせてもらう」
「アウレール、ザントメンヒェン。到着致しました!」
最期にEフィールドへ駆け込んできたのは、アウレール・V・ブラオラント(ka2531)。
連合宙軍曹長にして、ソウル・サンクチュアリでも最年少の一人。
こういえば聞こえは良いが、アウレールは未だ若い。
「アウレール、お前は若い。ここで残るべきではない。それにその機体は……」
誠は改めてアウレールの機体に目を向ける。
それは新配備されたばかりの新型CAM――PzI-2M『ザントメンヒェン』。
火星周辺宙域での戦力不足を考慮されて開発された新型のモデルであり、機関砲、携帯ロケットランチャー、格闘用ピック付盾を装備。
しかし、蓋を開けてみれば火星工房の乏しい工業力でも量産可能な簡素設計。部品精度も甘く、動作不良も頻繁に発生する。
「隊長、自分はやれます。やってみせます」
「しかし……」
「自分は死ぬ為に来たのではありません。祖国の為、家族の為に来たのであります!」
己の意志でこの火星へ赴いた。
その覚悟と士気は誰にも負けない。
「分かった。だが、危険だと分かれば他の隊員と共に脱出するんだ」
「ハイッ!」
アウレールの覚悟が誠に伝わった瞬間であった。
理解してもらって満足ではあるが、現実はそこまで甘くはない。
「ほらほらっ! サボっている暇はないよっ! S1、突撃っ!」
ウーナのサブ-1がEフィールドへの侵入を目論む浮遊型へガトリングの弾丸を浴びせかける。
既にEフィールドへ逃げ延びた味方艦船は多数。
あの艦船の中に何百人、何千人という人間が必死で撤退している。
恐怖と焦りの中で逃げる艦隊を追いかける――狂気の群れ。
ならば、ウーナがやるべき行動は一つだ。
「側面、いただきっ!」
浮遊型の群れに対して側面から強襲。
機動力を生かしたまま、急接近。ガトリングの雨を降らせた後、ミサイルのトドメを放つ。
銃弾を受けた浮遊型は無残に爆発。
そこへミサイルが破裂する事で周辺の浮遊型も誘爆していく。
だが、狂気の数は圧倒的。すべての狂気を倒すには至らない。
幾つかの浮遊型がウーナのサブ-1を追撃しようとする。
「あぶなーい……なんーて♪ ブースト!」
サブ-1のエンジンが点火。
同時にスピードを上げてサーブ1が加速していく。
置き去りにされる浮遊型。
それはさながら的のような存在であった。
「さて。行こうか、メンドーサ!」
浮遊型が飛ぶ距離は、研司のメンドーサにとってスナイパーライフの射程距離だ。
距離と予測データをチェックした後、ロックオンの表示を映し出す。
「さぁ、始めるか。一暴れだ」
スナイパーライフルが、発射。
衝撃と共に、浮遊型に突き刺さる弾丸。
空に浮かんだ巨大な炎が花となって火星の空を彩った。
●
一方、地上で奮戦する隊員も負けてはいない。
「おらおらおら! 道を開けろってぇんだ!」
岩井崎の天慶は、歪虚CAMに向かってスラスター全開。
歪虚CAMへの一団へと向かって行く。
狙うはバスーカーで友軍艦隊を撃ち落とそうとしている歪虚CAM。
高火力の兵器を持つ敵を黙らせる事が最優先だった。
「させるかよっ!」
放熱型アームソードが歪虚CAMの胴体を捉える。
アームソードの刀身は短いが、高熱を帯びて敵を焼き切る事ができる。
高速移動した天慶にとっては接近戦で最大の威力を発揮する。
岩井崎の前で爆ぜる歪虚CAM。
あっさりと沈む歪虚ではあるが、敵の群れに突撃した岩井崎を周りの敵が逃すはずもない。
「……って、やっぱキツかったか?」
「邪魔だっ!」
岩井崎の視界で派手な爆発。
見れば、紅のエクスシアが放ったマテリアルライフルが浮遊型を捉えていたようだ。
「アルバかっ!」
「反撃開始だ。派手に行こう」
アルバのローゼスは、岩井崎に合わせる形で魔銃「ナシャート」で銃撃を加えた後、バルディッシュによるウィンドスラッシュで歪虚CAMを叩き伏せる。
今は少しでも敵を減らす事が優先。アルバは躊躇する事無く、己の腕を振るい続ける。「ターゲット、インガンレンジ。FOX2FOX2!」
回避を試みる歪虚CAMに対してはキャリコのMeteorが、射程距離ギリギリからマテリアルライフルとマシンガンで弾幕を形成。
歪虚CAMの一団をその場へ釘付けにしていく。
「やる。やってみせる……すべては家族の為に」
アウレールのザントメンヒェンも動き続けながら機関砲を一団へ叩き込んでいく。
防弾性能がお粗末な事はアウレールも分かっている。
反撃を許してはならない。嫌でもアウレールに緊張感が走る。
気付けば岩井崎、アルバ、アウレールによって確実に敵の撃破へと繋げていく。
「……! 弾丸が切れた。現地で調達する」
キャリコは前面に残り僅かのマシンガンを集中して撃破する。
そして、地面に転がった同型のマシンガンからマガジンを抜いて自らのマガジンへと差し替える。
「それでまだ戦えそうか。まだまだ敵はやってくる。もう少し持ちこたえないと……」
「おお? 調子よさそうだな」
アルバの声を遮るように、ウーナの支援をしていた研司は仲間へ通信を入れる。
ソウル・サンクチュアリの面々のおかげで確実に味方の撤退は進んでいる。
Eフィールド維持も難しくはない。そう感じ始めていた。
「皆、生き残ったらとっておきのサラダを振る舞うぜ! 脱出したら一杯やろう!」
「えー! 肉じゃねぇのかよ!」
研司の言葉に岩井崎が文句を入れる。
しかし、研司は大きく頭を横に振る。
「甘いな。ただのサラダだと思うなよ。満足度はアイオリス級だ。
ま、生きて戻ってからのお楽しみだ!」
研司の提案で、瞬間心が安まる隊員達。
だが、彼らは気付いてはいない。
――絶望が、すぐそこまで近づいている事に。
●
「え!? なに?」
異変が起こったのはウーナの目の前であった。
飛び去るはずだった艦船が突然爆発したのだ。
そして、次の瞬間サブ-1へ加わる振動。
「羽虫が調子に乗りおって」
黙示騎士ウォーレン。
旗艦トーレスを含む複数の艦船を単騎で破壊して回った猛者。
そのウォーレンがウーナのサブ-1に取り憑き、バスターソードの切っ先を操縦席に向けている。
「ブースト……嘘、振り切れない!
なんでッ! どうして!?」
困惑するウーナ。
音も無く忍び寄ったウォーレンによって差し向けられる死。
恐怖に歪む顔。
それは恐怖を知らぬ者が、間近に迫る恐怖を知った瞬間でもあった。
「ひっ……や……やだ……死にたくな……ちくしょぉぉぉー!」
叫ぶウーナ。
容赦なく突き刺さるバスターソード。
鮮血に塗れた操縦席。
ウォーレンが飛び去った後、サブ-1は巨大な火球となった。
「ウーナ!
……強敵だ。押さえるぞ!」
「でやがったな! 待ってたぞ!」
岩井崎は天慶のリミッターを解除。スラスターを全開させて急接近。
誠の天慶もそれに合わせてリミッターを解除する。
「滅ぶ定めの者が、未だ抗うか。よかろう」
ウォーレンもこれに対して正面から迎え撃つ。
だが、ここでウォーレンに対して負の感情を抱く者がいた。
「奴は……トーレスを……パリスを、やった奴!
……悪いな、メンドーサ。お前の先輩の弔い合戦、付き合え!」
研司のメンドーサはスナイパーライフルがウォーレンを捉える。
リンクシステムが速度を調整しながらウォーレンの照準に定める。
「ウォーレン……ロックオン。スナイパーライフル、ファイア!」
轟音と共に発射される弾丸。
しかし弾丸はウォーレンの手にしていたバスターソードに突き刺さる。
弾かれた弾丸と共に、ウォーレンはメンドーサに意識を移す。
「勝負に水を差すか」
「何が無駄な抵抗だ! ……パリスの仇を討てずにおめおめと帰れるかぁ!」
スナイパーライフルを再び構える研司。
しかし、ウォーレンの目標は研司へ切り替わる。
「まずい! 岩井崎、追いかけるぞ」
「分かってる。持ってくれよ、天慶!」
●
誠がウォーレンを押さえている間に撤退。
それがソウル・サンクチュアリに下された命令であった。
「ハッチが開く。飛び込むぞ」
Eフィールドを飛び去る味方艦のハッチにMeteorが飛び込んだ。
続いてアルバのローゼスも着艦。後方から追いかけてくる敵を警戒してナシャートを構える。
「味方着艦まで援護する。皆、早く……。
隊長。生きろって命令しているんですから、お願いしますよ」
アルバは誠に話し掛けるが、返事がない。
未だウォーレンと対峙しているのか。
「ザントメンヒェン、着艦します」
アウレールのザントメンヒェンも味方艦に向かってスラスターを全開にする。
残り燃料も十分。機動力を誇るザントメンヒェンなら十分届く距離だ。
――だが。
「スラスターの出力が上がらない!? 何故? 整備不良?」
空中で突如、スラスターの出力が落ち始めたのだ。
故障が多いザントメンヒェン。ここで思わぬ形で不良が発生する。
「大丈夫だ。掴めるか」
キャリコがMeteorの腕を伸ばす。
この距離ならザントメンヒェンが手を伸ばせば十分掴めるはず。
「そうだ。諦めちゃダメだ。これで、これで故郷に帰れる……」
帰還。
そして、懐かしい光景が再び瞼の裏へ浮かぶ。
アウレールの瞳が潤む。
しかし、アウレールがその光景を目にする事はなかった。
「アウレール!」
突如、ザントメンヒェンが爆発したのだ。
その後方では傷付き地面へ転がる歪虚CAM。手にしていたバズーカーがザントメンヒェンを捉えたのだ。
「や、やってくれたな!」
アルバは届かないと分かっていてもナシャートを撃たずにはいられなかった。
●
限界など、既に超えていた。
岩井崎の天慶は地面へと伏し、誠の天慶も右腕を失い左足が制御不能となっていた。
「未だ抵抗するとは、滑稽だな」
ウォーレンにダメージを与えているはずだが、見た目には大きなダメージを負っているようにも見えない。
「ふん。まだ生きていたか」
研司のメンドーサも片腕を失い、リンクシステムに異常を来していた。
直立するのがやっとの状況。それでもウォーレンは容赦せずトドメを刺しに歩み寄る。
「ま、待ってたぜ」
「なに?」
次の瞬間、ウォーレンの後ろから捕縛する誠の天慶。
すぐに振りほどかれる事も予見している。
少しだけその場に足を止められれば良い。
「今だ、やれっ!」
「無策で来ちゃいねぇ……規格が違うが、一発ぐらいは撃てるんだ。
パリスの、研司砲! てめぇも道連れだ!」
スナイパーライフルに集まる膨大なエネルギー。
それを至近距離からウォーレンの体に叩き込む。
「貴様、最初からそれを狙って!」
「撃て、研司!」
「うぉぉぉ!」
放たれたエネルギー。
ホワイトアウト。
いくつかの爆発が、白い光景の中で生まれる。
●
「……大シルチスが墓場なら、洒落てるか……。メシは……残念だった、な……」
岩井崎の前で、研司は息を引き取った。
誠は最期の攻撃で天慶と共にした。岩井崎は天慶が機能停止した為に死亡する事はなかったが、飛び去るウォーレンを見守る事しかできなかった。
「生き残ったって……」
周囲は赤い大地のみ。そして広がる友軍の残骸。
まだ熱を帯びているが、間もなくこの熱も消えていくだろう。
戦士達の魂と共に。
「俺は……」
火星の空。
アイオリス山の向こうから飛来する暗雲。
それは、狂気の一団。それが火星の空を覆い尽くそうとしていた。
●
「生きろって命令して……自分が破らないでくださいよ……」
アルバとキャリコは生き残った。
更なる追撃があったが、マテリアルカーテンを使って盾となる事で味方艦を防衛しきったのだ。
「また、生き残ってしまったか……だが……必ずここに戻ってくるぞ」
「いや、それだけじゃ足りない。俺達は伝えなければならない。
ソウル・サンクチュアリの最期の戦いを」
アルバとキャリコは、崑崙へ向かう味方艦の中で戦いを思い返していた。
味方を逃がす為に最期まで奮戦した仲間達。
多くの仲間が散っていった。
だが、生き残った二人は後世に語り継がなければならない。
彼らが存在した証を。
「そうだな」
キャリコは、小さく呟いた。
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ソウル・サンクチュアリ会議! 藤堂研司(ka0569) 人間(リアルブルー)|26才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/08/03 06:07:07 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/08/01 09:20:55 |
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依頼質問スレ キュジィ・アビトゥーア(kz0078) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2017/08/02 06:31:15 |