• 界冥

【界冥】『紅の刑事SP──幻蒼機導隊』

マスター:韮瀬隈則

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/08/11 09:00
完成日
2017/08/31 19:01

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 警視庁地下の白プレートの一室。昼行灯課長と新人婦警の私が常勤の、一見すれば左遷部署。
 古めかしい特殊扉の向こうが異世界だなんて、いったい誰が信じるだろう。けれど、私は何度も何度も、たった120分しかこの地球に滞在できない彼らがVOIDと戦い事件を解決する姿を見てきた。
 警視庁捜査0課。
 未知の敵や怪奇現象を扱う、特殊警察部隊。
 非公式に設立された0課の主な所属刑事たちは、『覚醒者』!
 特命を受けクリムゾンウェストより転移した彼らは、120分という限られた時間のなか、数々の難事件を解決してゆくのだ。
 この事件も……これからも!


「由香の状況は?」
「変わらず、だ。未だ歪虚の手の内だろう」
 妹夫婦の忘れ形見である新人婦警。彼女が歪虚の手に落ちてからも、老刑事の表情は変わらず渋面のままだ。対する昼行灯、彼女の上司である捜査0課課長の顔は普段の無能ぶりが嘘のように厳しい。いや、もともとこちらが彼の本性なのだろう。
 彼女──森山由香が覚醒者刑事らを追って現場に飛び込み、黒幕と目される歪虚に拉致されて既に60分が経とうとしている。覚醒者刑事達が召還されてすでに100分……。
 中型狂気の追跡の果て、ここ採石場に待ち受けていたのは小型狂気の群れ。群れ。群れ。
 規模からしてクラスタではない。誰かが、おそらくは傍観者として狂気以外の歪虚が描いたトラップの構図だろう。現在のところ、直接の干渉が出来ない彼らの意図は観察、と思われた。
「間に合わない……クソッ」
 銃を手に駆け出す昼行灯を老刑事が止める。
「落ち着け。あの日を繰り返す気か? それとアレが動くぞ」
 遠い過去、由香が遺児となったあの日、無念の再来。タイミングをあわせるかのように極秘裏の噂となっていたあの部隊が動く。

 ──幻蒼機導隊。

 幻獣とCAMを駆る覚醒者と強化人間(スペリオル)の混成部隊。
 VOID侵攻が拡大する状況を受け、試験的に各国警察組織が地球統一連合軍と連携体制で構築する、高機動戦闘組織だ。
 その最初の先例となる隊こそが、東京に配置された幻蒼機導隊である。


 【この番組はフィクションです】



「いやぁ、好調好調、絶好調! イイじゃん! 『紅の刑事』今度は映画化だろ? 次のシーズン続投と後継新番組の番宣もかねて、SP番組で景気良くいきたいトコロだね!」
 ……はぁ。と曖昧な笑みでしかし、追従の動作はギョーカイ特有のテンションで、制作会社の偉い人へ頷く企画屋2名。
 ここはとある番組制作会社の企画室。深夜帯の人気刑事番組『紅の刑事』が生まれた一室である。

 もともとネタに困った企画屋2名がでっちあげた頭の悪い企画、本物の転移者異世界者を起用した『覚醒者刑事モノ』が、なぜか上層部に支持され、ソサエティの協力をとりつけ、高視聴率をたたき出してはや半年。シリーズ継続に、映画化に、SP特番に、とメデタイ話が続いているが、企画屋2名の困惑は相変わらずだ。
 その原因がこの、制作会社の偉い人、である。

「『紅の刑事』とね、先日出してもらった同時間枠の後番組『機動隊モノ』ね。シームレスに繋ぎたいからさ、SP番組でいっしょの話にしちゃおうと組んできたんだよ!」
 ……。……マジかっ!?
 また通っちゃったのだ。頭の悪い企画が。しかも──
 紹介するよ、と引き合わされたのが、青い目の軍人さんだったから深刻さがマシマシである。
 ホリー・フォレスター。
 彼は本物の強化人間で、元英海軍あがりの地球統一連合軍軍属にして広報官で、自らTV出演も任務としている。今回は幻蒼機導隊隊長役を務めるよう派遣された。……などと紹介され、外堀どころか内堀まで艦砲射撃で一気に埋められた状態が、いま現在なのだ。

(勘ぐっちゃいけないトコロまでが、この企画に関わってる気がするよ、シンちゃん)
(シッ! 消されるよバンちゃん。誰に消されるかも考えちゃダメだ)
 そんな2名をよそに、偉い人の戯言は続く。
「紅の刑事のピンチにね、駆けつけるんだよ、幻蒼機導隊が! 瀕死の刑事達、迫るタイムリミット……そこに響く駆動音と幻獣の咆哮。新たな対VOID事件の幕開けを感じさせつつ、紅の刑事達の反撃で事件解決。イイ! 自分で言っててイイ感じだよ!」
 ベタである。なんとなく昭和テイストすら漂う。
「そういうことだからよろしく頼むよ!」
 偉い人のイイ笑顔と、軍属の惚れ惚れするような敬礼の余韻を残して、企画室のドアは閉められた。

 顔を見合わせる企画屋2名。もうやることは決まっていた。
「またハンターの皆さんに丸投げしちゃえばいいよね!」
「うん! 演技だけじゃなく、脚本演出も任せちゃえばいいよ! あの軍属さんともうまくやってくれるって!」
 「「ってわけでクミちゃーん。オフィスに依頼だしといてー」」


 かくして。
 またもや演技どころか脚本演出コミコミで、さらに強化人間との共演までハンターに丸投げされたTVドラマ企画が、ハンターオフィスに掲載された。
 台本作成まではクリムゾンウェストのオフィスの一室で。リアルブルーでは持参の脚本を数時間(なんと! 半日未満だ!)で撮るハードスケジュール。
 しかも今回は、2番組合同企画にしてユニット運用というオマケつき。
 それでも構わない演者求む!!


リプレイ本文


 盛夏の東京都下。
 私鉄の駅に降り立ち、智里(穂積 智里)はバス停に向かう。地場産業を営む祖父母の家へ行くには、待合所の裏手で1時間に1本のバスを待たなければならない。
(ふぅ……)
 小さなハンカチで汗を拭い、智里は時刻表を睨む。やっぱり事前連絡が要るか?
 深呼吸してスマートフォンのTV電話を立ち上げた。
「おじいちゃん、おばあちゃん……智里だよ! APVのお仕事で撮影しにこっちに来てて、半日だけ自由時間がとれたの」
 ……やっぱり留守録になってしまった。
「出番はちょっとなんだけれどスタッフロールにもでるんだよ。……っと、あのねっ、いま駅前のバス停だけど、都合悪そうだしお手紙おいて帰るから。会うのはまた今度ね」
 留守録は苦手だ。スマートフォン相手に四苦八苦する智里の肩を乱暴に掴む者が居た。
「……誰? ……ッ!!」
 驚愕する智里に、異形の影が覆いかぶさり──


 ──そして世界は暗転する。


「科捜研の連中も来てるって? 手回しがいいな、アクラシス。ついでに俺の机でオファニムの塗装が途中なの、埃除け頼んどい……いやなんでもないです」
 ヴィリー(ヴィリー・シュトラウス)が警察車両助手席で、アクラシス(マッシュ・アクラシス)の運転に耐えている。今日はまだマシなほうだ。後部座席には老刑事のほか、昼行灯こと0課課長が鎮座している。
「演習所見学の予定がVOID事件遭遇とはな……」
 アクラシスの横でヴィリーも頷く。警察車両3台仕立てて、対テロ特化型ドミニオンの改修見学。お偉方の意図を探る気はないが、某プラモメーカーの新作が楽しみとは、真面目なアクラシスには言えないなとヴィリーは思う。
「由香ちゃんは?」
「新人2人と先行している。運転は相方がいるから大丈夫のはずだ」
 えぇー? というヴィリーの顔は、アクラシスにお見通しだろう。野生児の姿も見えないが、やはり新人の車に同乗か?
「住民退避完了だそうだ」
 後部座席で老刑事がアクラシスへ報告する。相変わらず不機嫌そうに睨んでいるのは上空。

 0課刑事達が警察車両を採石場へ向ける10分前。
 演習場に程近いバス車庫裏で発生した殺人事件。
 映像プロの若手女性が他殺死体となって発見。遺体には人間離れした力で開いた大穴……。
 異変に気付いた巡回警官の目前で、車庫の天井を突き破り上空へ浮遊する異形──VOIDだ。
 異形を見せ付けるかのようにゆっくりと上昇する様子を、複数の防犯カメラに刻み付けて、憎々しく低速で向かう先は郊外採石場と推測された。

 新人刑事2名と野生児がいきり立ったのには理由がある。
 浮遊するVOID触手にかかえられ、地上を睥睨する人影3つ。
 数日前──、新宿御苑において大量殺人の黒幕をなしていた3体の歪虚。警察車両に転送された画像を見るや飛び出した新人組車両を追い、由香と彼女の相棒は、アクラシスの運転する車両のだいぶ先を採石場へと進んでいる。
「気に食わんな……」
 おまえもか。とヴィリーはアクラシスを横目で見る。
「歪虚がツルんでいる。直接的な手出しはできないはずだが、ろくでもない企みがあるってこった」
 だから僕の古巣の科捜研呼んだんだろ、とヴィリーは連絡待ちの端末をかざす。
(それだけじゃない……課長とおやっさんに頼みごとをするべきかを私は迷っている)
 アクラシスの脳裏に、ブリーフケースに納められた『彼ら』の極秘資料……。

 刑事達が召還されて既に60分。
 これが、今──紅の刑事達が採石場で『彼ら』と邂逅した現在から、40分前の出来事である。



 如月 優(ユウ)の苦悶の声が、採石場に響き渡る戦闘音に混ざる。
「すみません、ガンジさん。私が車両から離れなければ、由香は……」
 襲い来る小型VOIDを睨み、霊氷剣「コキュートス」を振るう。不意を突かれなければ……いや、詮無いことだ。多勢に無勢は変わりはしない。
 中型浮遊VOIDを追って辿り着いた採石場で後方支援位置に就いた、ハズだった。当の中型VOIDが忽然と消え、歪虚3人の姿も見失って、次の瞬間、無数の小型VOIDに取り囲まれた。──伏兵。さらには中型VOID自体が小型VOIDの集合体であったのか。由香をかばい、応戦に車外へでた優に一斉に襲い掛かるVOIDと交戦後──警察車両ごと由香の姿はなく、優自身は重傷に喘いでいた。
「相棒……失格です」
「自分を責めンな、如月! あいつらの思うツボだ。……イリス! 居るんだろう? 勝負を今度こそつけようじゃねぇか!」
 野生児、ガンジ(道元 ガンジ)。すでに新米刑事の面影はない。
 怒りに叫ぶのは、因縁の歪虚の名……。
 2週間前、アイツは六本木高層ビルで爆散して果てたはずだ。いや──あのとき、アイツの顔は笑っていた。その視線の先いたのは由香、ではなかったか?
「そろそろアクラシス達の車が到着すッはずだ。如月ッ、現状を報告ッ。課長と車両退避のついでにお前は逃げ……」
 全部は言わせなかった。
 優はガンジと背中合わせに、吶喊してきたVOIDを斬り伏せる。
「ガンジ先輩が個別撃破されるのも、あいつの思うツボ……ですよねッ!?」
 先輩──ガンジの因縁の相手。嫉妬の歪虚。


 嘲笑う声が聞こえる。
 キヅカ(キヅカ・リク)とミカ(ミカ・コバライネン)。罠に嵌った二人に容赦なく狂ったように。
「クソッ! さっさと姿を見せろッ!」
「落ち着け、キヅカ。お嬢様はああみえて恥ずかしがり屋だ。しかし隠れているのに俺たちへのアピールは猛烈だな」
 キヅカがいきり立つのは、数日前、彼の目前で新宿御苑の白バラを鮮血に染めた歪虚が相手だからだ。浮遊歪虚上に立つ彼女につられ、みすみす伏兵に囲まれた自身への怒りからだ。
 新人刑事──。
 CW帝国領侵攻のおり、面識こそ無かったものの同方面部隊に所属していた二人は、着任すぐに意気投合した。
 息のあった名コンビ。
 それが、かの歪虚の気に障ったものか?
「どこに隠れているんだ?」
 キヅカは採石場のひときわ大きい岩石とその裂け目を睨む。僅かな違和感……。
 僕は諦めがわるいんだ。──キヅカの普段の口癖だ。
 また1匹。キヅカの聖機剣「ローエングリン」が迫るVOIDを消し、聖盾剣「アレクサンダー」でミカを護る。ミカの機導杖「トリスメギストス」はキヅカへ吶喊するVOIDを灼き、シールド「プレシオン」がキヅカの攻撃機会を増やす。
 俺もこうみえて意地汚さに定評があってね? ──ミカがキヅカの口癖に付け加えるいつもの掛け合い。
「そういえば、キヅカ。お前さん、好物は最後までとっておくほう?」
 ミカの懸念。スキルの弾切れと自身らの時間切れ。
 横目で、アクラシス達の警察車両が到着し、即、上司2名が離脱するのを確認する。
 即、攻勢反転といかないのは由香の失踪だ。狙うはこちらの消耗ということか?
「給食の好物は真っ先に食べて、おかわりを積極的にねらっていくスタイルだよッ。ミカ」
 ミカの軽口の効果か。キヅカに度胸が戻ってくる。
「同じスタイルかぁ……じゃ、竜田揚げ争奪戦のライバルだな」
 対女歪虚──。見つけたら一気呵成にしとめにかかる。どちらが仕留めるかは恨みっこなし。だ。
 乱れた呼吸を整え、キヅカは各自のスキルを慮る。もっとも確実でもっとも強いコンビ技。叩き込まねばならぬのだ。この哄笑の持ち主に……。


 由香救出と歪虚討伐のため、戦力温存を強いられる彼らに、時間の壁がせまってゆく。
 全ての警察車両が採石場に到着し、小型VOIDとの戦闘開始から既に20分。
 刑事達が召還されて、すでに100分が過ぎようとしていた──。


 優が膝から崩れ落ちる。
 振るう腕がVOIDを仕留め損ない、斬り払った体勢から復帰することは……できなかった。
「だいじょうぶです! それより由香をお願い!」
 庇うガンジを押しとどめ、気丈に笑う。笑って半身を気力で起こして剣を構える。
「警察車両ごと隠せる場所があるはずだ。そこに森山が居る。あいつとともにッ!」
 ガンジの自慢の鼻がクンッと鳴る。黒色オオカミのように。
「邪魔すんなッ」
 吶喊してきた小型VOIDを戦籠手「炎獄」で掴み、群れを成す数体めがけて叩きつける。
 じり……と。接敵位置がバラけていたはずの刑事6名が、採石場中心部に集まってゆく。
「ガンジ先輩。この小型が涌いてくる元ですけど、アレ……あの大岩じゃねぇかと」
 俺の元整備屋としての勘なんですがね? ミカが顎をしゃくる。
「僕が歪虚なら、あそこに砲台を置く。僕が歪虚なら、包囲し消耗を待って焼き払う」
 帝国で何度も喰らった手だ。キヅカの歯を食いしばる軋み。
 射程角に彼ら、刑事達がまるまる収められている。
 答えるように、ヴィリーの神罰銃「パニッシュメント」が、また刑事達の動線を狭めに来るVOID群を弾く。続いて、ヴィリーの古巣、科捜研から転送されてきた音声ファイルの再生……

『この程度の手間で狂気の上前をはねて、実入りが見込めるとなりゃ上々だ。世界を渡る面倒考えても悪くない』
『ハハハッ! もっと俺とヴァンを楽しませてくれる相手も居そうだしな』
『お声がけの甲斐があったというもの。現在の我らは傍観以上の力は持ちませんが、絶望が我らを招くよう仕向ければ邪神の後ろ盾を得られるはず。そのための舞台です……』
 くすくす。笑い声が重なる。
 智里の祖父母への留守録。彼女の悲鳴のあとに、歪虚の企み……

「やつらの勢力拡大の企てが録音されていた」
 ヴィリーの声が珍しく剣呑だ。
 そして──
「皆、すまない……」
 アクラシスが振り絞るように、ただ一言。


 どこかでギリリと作動音が響く。
 歪虚が仕掛けた砲台が、刑事達を一挙に射程におさめ、トリガーを絞る音……
 もうひとつ、いやふたつみっつ……



 気がつけば、車外をとりまく七色の光。
「おひさしぶりですね、0課の刑事さん?」
 身が竦んだ。助手席に座る黒衣の等身大アンティークドール。
 私はこの人形を知っている。0課が初めてRBで遭遇した狂気以外の歪虚。
 ──嫉妬のイリス(エルバッハ・リオン)。
(でも……! 2週間前に私はみんなが、高層ビル最上階でこの人形を砕いたのをこの目で見たはず)
「不思議でもなんでもありません。あの建物のなかで人形の展示会が行われていました。身代わりを用意するのは簡単でしたよ?」
 淡々と。私の心を読んだかのようにイリスは話す。
「ここは何処? 狙いはなに?」
「採石場、とやらですよ? 釣った魚は逃がさず友釣りの餌にしませんとね」
 0課はそんな卑怯な手に屈しはしない、と、睨んで、けれど……
「ッ!!」
 続いた言葉に恐怖して。
「その抵抗が激しいほど、あえなく散る絶望はどれほど負の感情に染まるのでしょうか? 深く静かに浸透し、刑事の手に負えない犯罪となって我々歪虚が蔓延る絶望は? 蒼の世界のマテリアルの力が強大であるほど、人の負の感情が我らにも力をあたえると気付きませんか?」
「……」
「あなたがた自身が、我々……歪虚を招きいれるのです」
 イリスはそう付け加えて、微笑む。
「はじまったようです。すぐに終わりのときを向かえるのですけれどね……」


 イリスが森山由香を意識し始めたのはいつのことだったろう。気がつけば0課刑事たちのそばに居た。
 力も無いくせに、異世界の刑事達をサポートする姿が気に障った。
(その能天気さがいっそ嫉ましいこと)
 だからイリスは彼女を攫ったのかもしれない。



 ギリリ……と何かが軋み、すぐに鳴動へと変わる。
 大岩とその背後の崖に刻まれた亀裂が揺らぐ。どの歪虚だろう。騒音の中でも響く哄笑。
 虹色の、悪意と狂気に満ちた閃光が岩を模した迷彩から漏れ、向けられた砲口が圧倒的熱量を放つ。
 そして──

 鳴動はさらにひとつ。またひとつ。
 刑事達を嘲笑う哄笑をかき消すかのように、さらに獣の咆哮が重なった。
 複数の対抗射撃が敵砲口へとむかい、灼熱の弾頭を対消滅せしめる。


「な? なんだ?」
 ガンジの狼の耳が勢いよく跳ね上がる。聞き間違えようも無い。あの駆動音と咆哮は……!
 優の痛みにかすむ目は、信じられない者を見た驚きで見開かれた。あの鳴き声はリーリー。イェジドも居るはずだ。蒼の世界に居るはずも無い獣たち。
「すまない。私の独断だ。私の責任において、特務小隊特殊機導チーム……幻蒼機導隊への出動を要請した。皆の責任ではない……ッ」
 アクラシスが、あのいつも沈着冷静に警察組織との橋渡しをやってのける、アクラシスが、苦渋の叫び。
 対VOID犯罪の専門組織の一員としての自負。それよりも、現状戦力拡大を選択して戦術的暴力装置たる幻蒼機導隊の助力を仰いだ。しかも幻蒼機導隊は未だ非公開。予定されていた演習見学こそが、導入実証演習であったという事情ももつ。
 皆が非力というわけではない。彼らがでしゃばったわけでもない。私が、私が……。
「良い判断だ。眼福だしな」
 ヴィリーがアクラシスの肩を叩いた。おまちかねの攻勢反転の時間だ、新人君たち。ヴィリーのウインクの先には、キヅカとミカ。


「ぁああ? ンだこらぁ! 乱入すんなら俺だって暴れていいよなぁ? あぁン!?」
 不意に響きわたる胴間声。
 揺れる岩壁が、フッと消えた。
 そこに有ったモノは、砲台の役を負っていた異形の水棲生物じみた巨岩と、居並ぶ歪虚、歪虚、歪虚。
 狂気の眷属とは違う。おそらくは嫉妬のイリスに呼ばれた紅世界からの傍観者達──。
 ひときわ目だつ赤髪の女が闖入者と0課刑事に向かって騎乗するVIODを駆り立て、巨斧を大きく大きく振るう。
 大きな衝撃!
「ボルディア! また会ったな!」
 ははッ! あはははははッ!
 狂ったようなボルディア(ボルディア・コンフラムス)の哄笑が止み、多脚VOIDと巨斧の乱舞が止まる。ゆっくり周囲をねめつけて、ボルディアの視線は一点で止まる。
「お嬢様のお出ましだぞ、よかったなキヅカ」
 小さくキヅカの陰に隠れてボルディアにむかいヤッホーっと手を振るミカと、ボルディアに負けじと叫ぶキヅカ。数日前の虐殺事件で、彼女に対峙した0課新人刑事。
「ほぉう、俺の名を覚えていたか。んじゃ、経文代わりに唱えて逝きやがれぇ。いくぞヴァン!」
 ははッ!
 眷属としての力が削がれようと暴れようはあるってことだぜ、はははッ!
 ヴァンと名付けた灼熱に輝くVOIDを駆り、喰らえと再度、今度はキヅカとミカ、二人だけに向けられた、戦闘形態狂気ごとの衝撃波。炎を纏う攻撃に自立攻撃可能なVOIDを載せて威力拡大する、乱戦の天才ボルディア。
(キヅカの阿呆。もっと孤立化させてからじゃないのか、おい。前もVOID混じり犠牲者混じりの攻撃喰らっただろう?)
 あほー。あほー。ミカがキヅカへの罵倒交じりに、叩きつけられるVOIDを捌く。連携するキヅカが囁く作戦に、ミカの罵声はアホからドアホに格上げされる。
(このまま懐に突っ込むか突っ込ませれば、ボルディアの周囲に残るのは僕達だけだ……)


 キヅカとミカの迷作戦の暫く前──。


「あー、うん。総員突撃。幻蒼機導隊はこれより対VOID戦に参戦、人質奪還支援作戦を遂行せよ」
 隊長機は開発原点である対テロリズム仕様を高めた警察機構塗装のドミニオン、その改二。軽い咳払いののち、イギリス英語訛りの号令が発せられる。既に──(VOID砲は彼らの射撃において対消滅している)吶喊中である現状で発せられた命令。つまりそれは、彼らの初戦が当初予定と相違し、救急要請に応えたものであることへの再認識がゆえ、である。
 その隊長機を背に、幻蒼機動導隊所属ハンターの乗機はもう遠い。
「フォレスター隊長、てっきり先陣きってのご参戦かと?」
 ドミニオン改二に併走するダークグレイ塗装のRB仕様デュミナスから、皮肉めいた問い。
「あー。フム。アオツキ査察官の前ゆえ、と疑われましたら心外。管制機の用意が間に合いませんでしたので。ォホン」
 なかなか食えぬ海軍上がりだ。連合宙軍の監察官カグヤ・アオツキ(クオン・サガラ)は、強化人間であるホリー・フォレスターを評した。英海軍時代は部下の前面に立つ性格だと報告書にはあったものだが。
(……コードネーム、ブルーメタル。このデュミナスがセンサー特化と見抜きましたか)
 幻蒼機導隊試験導入プロジェクトのうち連合宙軍に課せられた任務を彼はどこまで感づいているのかと、アオツキは内心案じはじめる。警察機構、である意味。その監察官として自分が派遣された意味、である。
「宜しい。非干渉が原則でしたが……管制役はいたしかたありません。が、現状、幻蒼機導隊がこの実力とは評価に値しませんな」
 辛辣、である。
 が、返された言葉に引き攣ったこめかみを、管制を彼に託し前線へ躍り出たフォレスター隊長に見られなかったのは幸いだった。
「我々、スペリオルがハンターとの共闘で真っ先に沈んでは困る。寄る辺無きハンターの戦略的バックアップとしてある意味で『生殺与奪を担保』するのは、彼らに一番近しく連携するスペリオルであるのだから。……でありますな? 監察官?」


「まだだ。ボルディア……ッ!」
 斃れたキヅカが、剣を支えに立ち上がってゆく。
 あちゃー、と盾に隠れるミカとは対照的に、ボルディアの顔は上機嫌の高みだ。
「どうしたヒーロー様よぉ。まさかこれで終わりじゃぁねぇよなぁ? もっと俺を楽しませてくれるンだよなぁ? ヴァンにやられてそれっきり、かぁ?」
 直前、ボルディアの騎乗するVIODが放つ威圧的な衝撃音が、ズタボロの新米刑事二人を限界まで弄んでいる。
 くくく。俺ぁ猫科だからよぉ、オモチャ見ると散々いたぶった挙句ポイ捨てしたくなるんだよぉ。ぎゃははははぁ!
 紅く、紅く、戦場に揺れる紅く輝く髪。残酷な美しさのボルディアの髪。
(ああ、あの人だ……あの人も戦場で紅い髪を揺らして、そして、どんな苦境にも何度も立ち上がって、歪虚と戦ってきていた。そして僕はその姿をずっと追っていたんだ……)
 キヅカの目が遠く遠く、ボルディアの髪を追う。
 小さく「綺麗だ」と呟く。「……ああ」とミカが応える。
「これでっ最後だぁ!」
 ボルディアが今度は自分の力だけで、「モレク」という名の巨斧を振りかぶる。逆光のボルディアが纏う煌めき。
「……美しい。その姿も綺麗だ」
 ミカが今度は盾を構えることなく、まっすぐにボルディアを見つめる。声を張り上げたわけでなく、しかし間違いなくボルディアに届く声で。
 ……? ……!?
「……へ?」
 間の抜けた、というより人間味あふれる顔で、ボルディアは静止する。歪虚としての自分を忘れた、素直な彼女の心のままで。
「綺麗だよ」
 もう一度、キヅカに賛同してミカが呟く。すぅと深呼吸して、さらに言葉をつむぐ。
「ヴァン……!」
 チュッ♪ と投げキッスをボルディア騎乗のVOIDに送り踵を返す。
 ……? ……!? ……!!!!!
「きさっ貴様ぁっ! ミカとか言ったな貴様ッ! コロスッ! コロスコロスコロス! ミカァァ!」
 おちょくられたと気付くボルディアの目に映るのは、既にミカだけだ。
 コロスコロス! 我を忘れた激怒の追跡。ミカを追うボルディアの横腹を巨大な、あまりに巨大な大剣が薙ぎ払った。
「破邪……一閃! 還れ。還って来いボルディア……」
 VOIDから落ちたボルディアは、信じられない目で大剣の主、キヅカを見る。
「還れって、貴様になにが……」
「帝国の紅き獣王。戦場で行方不明となった幻獣部隊のエース、ボルディア……」
 僕もあの戦場に居た。もう一人の赤い髪、憧れの人ボルディア。
「還れ! 帰れ! 還って来い!」
 何度も叫ぶキヅカも、黙れと打ち消すボルディアも、すでに武器は持っていない。己の拳だけの応酬。
「煩い! 貴様になにがわかる。エースとはなんだ。追い求めるべき力とは何か。わからない、わからねぇんだよ!」
 やがてボルディアの視界は暗転する。



 時を遡り、歪虚の迷彩がとけボルディアが戦端を切ったと時を同じくして──。

「ほう。雑魚狂気どもの掃討にデカブツ人形を持ち出すか。そういえば、物見遊山ついでに撒餌に小娘をひねった時に姿を見せてしまったが、俺様がデカブツの布石になってしまったかな?」
 気だるげなぼやき。
 欠伸交じりに、岩石に擬態していた巨大水棲型VOIDの頭頂に横たわり、その巨漢はつまらなさそうに背後に控える同じ顔の金属像に、行ってこいと顎をしゃくる。
「J2、このJ1様に歯向かう愚者をスクラップにしてやれ」
 キラキラとその身を輝かせ宙を舞う。金属的な衝撃音と重量感を響かせて着地した放射状の痕跡を残し、J2と呼ばれた巨漢と同じ顔の人形は一路、J1(トリプルJ)の指差す相手へ疾走する。


「軍ではなく警察組織、それが我が幻蒼機導隊の立ち位置ですか。対VOIDを災害ではなく犯罪と位置づける。その根拠をまさか『人権』とすれば、いささかぞっとしない話ですね」
 一路、CAMを駆る幻蒼機導隊の2機編隊。
 極端な射撃戦仕様を誇る魔導型デュミナスは、歴戦の損壊跡も生々しく105mmスナイパーライフルの狙いを巨大水棲型VOID砲門より微動だにさせていない。
 かのパイロット、天央(天央 観智)は、つかめぬ距離感に僅かに苛立ちをにじませて、もう一機の反応を窺った。
「まさにその懸念であろうともよ! ミグのこの機体、ドミニオン導入理由がまさにそれよ! 我がハリケーン・バウ・Cよ、懐かしいか赤の世界は……」
 ザザ……と雑音が無線に混ざるのは、改修を重ねた旧型機の最初期ドミニオン警察仕様機パイロット、ミグ(ミグ・ロマイヤー)がコンソールを撫で擦っているからだろう。
「対暴力組織即応特務小隊。その流れを汲むとは公然の秘密。つまりは……人間社会へのVOID介入への対応、そういうことであろうよ!」
 ミグ機の機関砲「ゴルペアール」が大口径の砲弾をばら撒いた。もとより命中精度は求めていない。敵突入角の減速意図か。応えて天央機が即座に二丁拳銃のひとつ30mmガトリングガンで、地を這い駆ける金属人形を牽制し、随伴する小型VOIDを弾きとばす。
「そう、丁寧にゴミとりをせずとも、良いぞ!」
 ミグ機の振るう試作CAMブレード「KOJI-LAW」が超音波振動を周囲に響かせ、金属人形──J2を掠める。
 ……っち。外したか。スピーカからミグの舌打ち。
「お互い、微妙にやりにくい……ですか?」
 二丁拳銃というのは、本来、天央のスタイルではない。何よりやりにくいのは、メインウェポン、VIOD砲台の砲撃を対消滅させて以来、銃口を向け続けているかの巨大水棲型VOIDならびにその頭上との両立、だ。背に撥ね上げた盾こそが、天央のCAM運用の要、である。
 再度、ミグがブレードを振るう。J2の片脚が弾け飛び、しかし…残る片脚で跳躍したJ2は、両手を鞭のようにしならせてミグ機の懐に潜り込み取り付いた。……狙い? 明白だ。
 ──自爆。
「ふんっ。構わぬわ! この歴戦のハリケーン・バウ・C。無法者に取り憑かれた程度で躊躇するものではない!」
 良いか、この機体はな、ミグの愛機となる前に特務小隊所属機であったのよ。元のパイロットもミグも、暴徒に集られようと血路を拓く戦術は、むしろ得意としておるわ!
 はンッ! 独り言とともに美少女が荒い鼻息をつく。引退時に譲り受けた機体とともに老パイロットの癖が伝染ったのよ、と天央は幻蒼機導隊結成ミーティングで聞いている。
 やりにくさは少し解消した。天央機は巨大水棲型VOID、いやその頭頂に座する巨人へ切り込みをかけるミグ機を追う。
「自走式野砲モード、行きますか。いやそのまえに、スナイプ一撃……か」
 スコープに捕らえた巨人の表情。余裕綽々なその顔が、追い詰められた者のそれに変わるのを見るのは小気味よいことだろう。
 天央は無責任なテロ扇動者が嫌いだ。自由な校風、自由な研究。長くはない学生時代を謳歌したのは何年前のことだろう。研究室ごとテロリズムの嵐に沈められるまで、僕は研究の徒でいられた。今は──幻蒼機導隊の一員だ。自由と、本当の協調を掴むそのときまで。
(間違いない。J1と名乗った彼は『怠惰』か。ミグ機前に引きずり出すタイミングは、ガラクタの自爆間際……)
 距離270……いやすこし寄った、か。銃の取り回しの悪さは頓着しないことにした。
「ほう。突っ込んでくるか命知らず。素直にJ2討伐に手間取っとれば、この狂気……MIOの砲撃で蒸発させてやったものを。後生大事に時限爆弾抱え込んでくるたぁな」
 天央はJ1の唇を読む。ミグ機の脚に取り付くJ2の金属色が偏光に変わり、周囲のVOIDがミグ機機動を妨害せんとばかりに引き寄せられてゆく。
「降りてくるンじゃ、このデカブツめがっ!」
 群がるVOIDを一気に薙ぎ、ミグ機のスピーカ最大音量ががなる。巨人の隠せないほくそ笑み。
 それが驚愕と怒りに変わったのは、銃声とともにミグ機脚部装甲ごと天央が金属人形J2を弾き飛ばした故。だ。
 ご苦労! とばかりにミグ機の超音波振動音が、周囲の騒音を抑えて響く。
 J2の爆発へ巻き込まれた小型VOIDの軋みに、天央が放つ連射音。
 だが、それをかき消したのは……
「こちらの大地の揺れも心地よいものだな」
 巨人の質量を遙かに上回る、大地の鳴動。轟音を響かせ大地に降り立つJ1は、ゆっくりとゆっくりと、揺れる大地の感触を楽しむように足を進める。
 その先に崩れ揺らぐ台地に試作ブレードを杖に突き刺し、機関砲を巨人顔面に向けるミグ機。さらに天央機。
「なんじゃこいつ。見かけ以上の質量、なのか?」
「複数体……だと? まさかそんな!」
 ミグ機の弾丸がJ1の顔面を舐めてあえなく弾かれ落ちる。局部的に偏光に覆われた色彩に見覚えがあった。天央はJ2の破片を探し、それが巨人顔面を覆う装甲に転用されていることを確認する。
「んー。まぁそういうことでな。残念ながら我ら三位一体のJ1・J2・J3を倒すことはお前らには不可能ということだ」
 小ばかにしたような巨人の笑い。
「残念、残念、ああ残念……」
 時間切れだ。付け加えるように声だけを残し、3倍の質量を持つ巨人は消えた。



 ボルディアに続き、三位一体の巨人の一形態……金属人形が、0課刑事と幻蒼機導隊にむかった直後のこと──。

 虹色の光が洩れる。岩石の塊……いや、VOIDの仮の揺籃、あぶくのように小型VOIDを排出する水棲装甲の隙間から。
『紅い、運河、枯れ果てて。青い、星で、蟹たる我は、燻せ、燻せ……』
 断片的な単語が光の中をあふれて流れてゆく。それは宇宙開発に乗り出し火星への道行きで果てた、労働者達と工作船の夢の欠片だった。VOIDとの遭遇の中、行方不明となった多脚工作ユニットなど数えきれるものでない。
 ギィ……と装甲が軋む。工作船の意識は光とともに脈動しては薄れてゆく。ハサミ型の工作アームを地に突き刺して、泡吹く主砲から光線砲を射出して、それから身体が痒く崩れ落ちる気がしてならない。──自壊? ああ、違う。腹の中に孕んだ個体、CAMとかいう仔が居たはずだ。
 Movable infantry object……かつてMIO(ミオレスカ)と呼ばれた軍事工作船は、そのとき明確に自身の目の前の敵を認識した。最後の力を全て、掃討に費やさねば。
 主砲にエネルギーを集める。敵だ敵だ、目標は敵だ。

「……森山?」
 ヴィリーのスマートフォンに再度の着信。
 決死の覚悟で現状の中継を試みたものだろう。雑音が酷く様子は知れず、しかし──元科捜研職員のカンが告げていた。ノイズの増減と連動するナニカ。
「何処だ、このノイズにシンクロする事象……! おい、まさか、あのデカブツか!」

 幻蒼機導隊隊長フォレスター機、ホットスパー。機銃の突入支援先へ、共にリーリーを駆り0課刑事達の元へ向かってくる、ステラ(ステラ・レッドキャップ)と神火(龍堂 神火)の姿があった。
「由香ちゃんはあのVOIDの中だ……」
 ヴィリーはスクラップと化した新人刑事組の警察車両に取り付く。無線もスピーカも生きている! 最大音量でがなりたてれば、最速のリーリーより先行する気か0課の野生児……ガンジが走り始めていた。
(あンの単細胞ッ……)


「幻蒼機導隊、龍堂、スピルガ、突撃します! ……さぁ一緒に行くよ、スピルガ」
「同じく。ステラ、アザリー。要救はどこだ? 退避支援を行な……あ? 人質があン中ぁ? てか世界陸上目指してるバカは0課刑事か、おい!」
 口調だけ聞けば、紅いフードコートを纏う可憐な美少女と、凛々しく口を引き結び手綱を握り締める少年、どちらが発した台詞かはわかるまい。
「ステラさん、0課の追加連絡です? あのVOIDから発生するノイズ……鎌倉クラスタ同様の機器への干渉を行うものです」
 どうする? 神火の窺うような目が判断を仰ぐ意図ではなく、既に『同行と連携の同意』なのに気付くと、ステラもにぃっっと悪そうな笑みをたたえて答える。
「決まってるぜ。予定変更! リーリーなら行ける。0課の連中をあのデカブツの中までデリバリーだ」
 既に、二人の会話を待たず、スピルガとアザリー、両リーリーの脚は0課刑事を拾うべくそのピッチを上げている。
(僕は専守防衛。アクラシスと野生児頼むよ)
 ヴィリーのハンドサイン。
 未だ0課刑事達周囲に群がる、小型VOIDの群れを蹴散らして、神火の相棒スピルガがけたたましく威嚇の咆哮をあげる。新たな敵の闖入に、本能的な反応だろう、小型VOID半数が反転、迎撃態勢をとる。
「跳べッ! スピルガ!」
 これこそまさに、神火の戦術通り。臆病をおして勇ましく威嚇する相棒の性格に、注意を惹かれない敵はいまい。不意をつかれ反射で振り向く相手など、飛び越えてしまえば無防備な背中を曝すだけのこと──。
「『その亀は、動く火山だ』……結界の中に背中を曝したVOIDの負けだよ」
 カードによって作り出された結界で灼けるVOIDに構わず、今度はスピルガが跳躍の勢いでアクラシスに群がるVOIDを蹴散らす。
「助かる……!」
「スピルガの脚なら、砲撃に曝されジャミング中であっても、人質のところまで駆け抜けられます。ガサツな走りは勘弁してください」
 暴れ馬ならぬ暴れ鶏。二人乗りの見知らぬ同乗者を振り落とさん勢いで、神火とアクラシスを背にスピルガは跳んで走る。

「そこの狼少年ッ、この赤頭巾が目に入らねぇか! 同乗しなけりゃ狩るぞ! ……じゃねぇ、刑事さん☆ アザリーで私とタンデムしましょ♪」
 うふっ(暗黒微笑)★
 ステラのケープが深紅の旗のようにはためく。ガンジ追跡途中、寄せ来るVOIDに悪態をつき、裏腹にブリっ娘丸出しでウインクを放つ。時折混ざるのは「メルヴイルM38-SP」の射撃音だ。ひらりひらり。青白い鶏冠に赤いマント。そこに……
 MIOの狂ったセンサーが反応した。「敵だ敵だ敵だ!」と。
 ステラの位置からでもわかる、MIOに残る今だ健在な全ての銃口が向けられる気配!
「っぶねぇ!」
 咄嗟にアザリーの腹を蹴り跳躍させた。マントを放った。自身は地に転がった。目標の分散回避をねらって……
「あ、あんた大丈夫か?」
「やっと気付いたな狼野郎。アザリー、無事だろ。コイツを拾ってオレの仇討ちに吶喊して来い」
 クソ、肋骨数本イったか? 少し焦げたマントを拾い、痛みを堪える笑みはいつも以上に凶悪だ。何言ってんだよ、とガンジがステラを抱え上げ、今度は庇うようにタンデムすれば、ますます悪態が激しくなった。
(こういうの慣れねぇのがまだまだだぜ……)
「すまん。俺を庇って、マント血で汚しちゃったな」
「なに、血染めは元からよ。アザリー上出来だ! 晩飯はおまえの好物三昧だ!」
 アザリーが群体を構築して迫るVOIDを蹴散らす。銃の乱射で落せなかった1匹を、ステラに貼り付く手前でガンジが握りつぶす。良い気分だ。今夜はオレも祝杯をあげようか。


「仕方ないですね。人質を救うため──ですから」
 溜息交じりでアオツキ査察官は、未だ熱いツインカノン「リンクレヒトW2」の言い訳をする。
 数秒前。ステラ目掛けてMIOから放たれようとする一斉射を、管制機にも不釣合いなアオツキ機の装備が発射阻止に動いた。
「あー、フムン、査察官は督戦隊ではなかったのですか?」
 言ってくれる! フォレスター機こそその装備はなんなのだ!?
(「艦砲しか撃ったことがありませんので」と嘯くような代物だからな……未完成のスペリオルをカヴァーする兵装実験も兼ねているわけか)
「それよりも見ろ。巨大VOIDの外装が剥げ落ちて、中の何者かが出てくる……」
 アオツキは、今まで0課課長らの護衛にあたってきた残る機導隊員の用兵をフォレスターに促す。自らが前線に躍り出て、幻蒼機導隊と肩を並べVOIDを討ちたい衝動を抑えるのに、護衛役を代わるという自らの提案は残念ながら適案にすぎた。



 MIOはゆっくり自壊してゆく。
『もう良いのです。残る目的はあと1つ』
『こっちも目標が見つかったわぁ』
 内包してきた誰かたちが言う。かつての乗員、ではないのだろう。
 老いた蟹のように最後の脱皮を終えた水棲VOID、いや軍事工作船MIOは最後の負のマテリアルを放ち──消えた。


「あっは! 見たことが顔があると思えば、小菊にヴァイスがミンチになりに来たのねぇ?」
 MIOの消滅光に目を覆った0課刑事と機導隊員を、何者かの魔術的エネルギーレールガンが襲う。本気ではないのは次の台詞で自ら暴露する。
「人質直衛なんて退ぁい屈。アナタ達、例の幻蒼機導隊スカウト受けたんだぁ? じゃあ……アナタ達で遊ばせてもらうわぁ!!」
 光が消え、現れたのはTechnology Transition Test-model……R7エクスシア先行型の面影を残す触手に覆われた歪虚CAM。レールガンを向ける先には同じくR7エクスシア。
 それまでCAMごと気配を消していた幻蒼機導隊R7エクスシアが、一挙にその強烈な殺気を発した──。
「ウーナ、久しぶり。そしてさようなら」
 機動のウーナ(ウーナ)、旋風の小菊(奈義 小菊)。半年前にウーナが乗機ごとVOIDに鹵獲されて、小菊は士官学校以来の親友を失った。コックピットにいまも貼られている学生時代に二人でとった写真。
 もう一枚、その横に、薬指の指輪を誇らしげにかざすウーナと赤毛金瞳の青年。ヴァイス(ヴァイス)──。
「究極の遠距離恋愛だわねぇ」
 幸せなころ、夢見るようにウーナは小菊にのろけたものだ。
 崑崙で出会い恋に落ちた。ウーナは赤の世界に渡り蒼の世界で消息を絶った。今度はヴァイスが世界を渡った。
「ウーナ。人質のお守りとはご苦労だったな。で? それがどうした」
 深紅のイェジドがひらり、と小菊とウーナの間に割り入る。背にはヴァイス。表情はあくまでクールにしてニヒル。照れた写真の面影は、無い。

 ウーナのニヤニヤ笑いの気配が消えた。
 コックピットの中が窺えるなら、VOIDに侵食された彼女が狂気の激情に突き動かされる顔が見えただろう。
「あはン! そう。アナタ達は”そう”なのね? でも、他の刑事さんたちは”どう”かしらぁ?」
 幾多の触手を纏った、アシンメトリの機体をずらす。かろうじて触手の隙間から覗く警察車両は、虹色の残滓を帯びて中は見えない。
 どちらを撃とうか? 魅せ付けるように銃口が車両と刑事達を行き来する。
「それがどうした。と言った」
「特に問題はない」
 未だ無名の小菊機、深紅の体躯を示す名のヴァイスのグレン。彼らは止まるはずも無かった。
 0課刑事達の回避と吶喊を阻みに、残る小型VOIDが生身の彼らへ一気に押し寄せる。「好都合だ」と小菊の呟きの直後、スラスターを噴かせた小菊機が刑事へ向かうVOIDを撥ね、十文字槍「人間無骨」で薙ぎ払う。早く行け、と外部信号。僅かに残る小型VOIDに、刑事達を追わせるつもりもない。
「この機体に集れば、万が一にも勝てるかも知れぬぞ?」
 淡々と、しかし大胆な挑発。言葉にではなく追跡を阻む位置へ割り入った小菊機に、VOIDが取れるのは一斉攻撃のみ。一身に雑魚を引き受けてしまえば、別に手間取っても構いはしないのだが。と、小菊は思案する。1匹、3匹……VOIDが斬られ落ち消える。その一方でウーナの銃口の気配を探り続ける。
「やはり歪虚の思い通りにはさせん!」
 再度スラスターを噴かす。取り付くVOIDが衝動で浮く。小菊自身の得意技、回転するような大槍の捌きそのままに、小菊機は十文字槍を振るう。落ちる、落ちる、落ちるVOID。やはり一刻も早くウーナの元に行かなくては! 旋風の小菊、この私が!

「……フ、0課の力はそんな程度か?」
 長く、長く、人質との接触を阻むように、ウーナの歪虚CAMからのびる幾多の触手。
 MIOの小型VOID生成機構を取り込んで、かつて美しかったウーナ機TTTは、その姿を蔓生物を纏う異形に変えていた。
 リーリー隊に同乗するアクラシスとガンジへ襲い来る触手を、ヴァイス騎グレンの獣爪が切り裂く。
 鼻で笑い、0課に触手迎撃は不要、と挑発交じりで言い放つ。
(止まっているヒマがあると思うな)
 すれ違うステラと神火の敬礼に軽く日本指を振って答え、抗議の声を上げるガンジを無視して、今度は彼らリーリー隊と併走し駆ける。
「おい、あいつの銃口が人質を……」
「だから、だ」
 前途になおも濃く、触手と触手と触手。なおも言い募るガンジが伸ばす篭手を弾くように、ヴァイスの構えた七支槍「大雀」が黒炎を迸らせた。
 ちりり、と植物の焼ける臭い。直進する高熱の炎の刃にきりさかれた触手は、再生も伸張も叶わず力尽きて地に落ちる。──再度! 新たな触手が作る壁に咲き誇る毒の花。
「効かんな、ウーナ」
 ヴァイスの槍が最高温を示す蒼炎を帯びる。
 艶やかな華は黒く黒く、触手の壁ごと焼け落ちてゆく。そこにできるのは一本の、人質へと続く道!
 彼の真意を把握したアクラシスが、ガンジとステラ、神火に吶喊続行を促す。
「はン! ヴァイス、人質なんかよりアナタから先に引き裂いてあげる」
 ──弄ぶ様に狙いを刑事と人質とで揺れ動いていたウーナ機の「オブジェクティフMC-051」が、リーリー隊の進攻経路を切り開くヴァイス一人のみへ向けられた。

「相変わらず彼にお熱だな」
 アクティブスラスターの残数全てを使い、小菊機がウーナ機に迫っていた。
 キン! と、小菊機が逆手にもつ十文字槍がライフルの銃口を弾き上げる。
「小菊ゥ……」
 ウーナを襲った感情は、激怒か、それとも──。
 内蔵兵装のハッチを開きマシンガンの連射を浴びせる。けれど、ウーナ機の懐に入った小菊機は、かざした槍をフェイントにエンハンサー機動からの脚払いで応えた。
「……!?」
 触手を引き摺って転倒するウーナ機の受身を、触手を焼き払い阻止したのは、跳躍するグレンの背のヴァイスが放つ黒炎。どう、と地響きをたてウーナ機が倒れる。CAM時代の名残だろう、脱出装置がいまはもう歪虚に侵された主人を逃がす。
「ダメ! 見ないで……ヴァイス、小菊、あたしを見な……」
 生身を曝す。変わり果てた歪虚の姿。ウーナは初めて動揺し、懇願し……世界に呼び戻されて消えた。

「帰るぞ、グレン」
 ヴァイスはそれ以外語らない。
「今度こそ……ウーナ」
 小菊機はウーナ機が朽ちて消えた跡に立ち尽くす。
 二人が幻蒼機導隊のスカウトを受けたのは、ただただ、ウーナのため。



 触手と小型VOIDに阻まれていた警察車両が、採石場の一角にたたずんでいる。
 その数メートル上空。
 心底つまらなさそうに。西洋人形の無表情さで嫉妬のイリスが浮かんでいた。片腕には、気を失った──由香。
「森山ッ!」
 リーリー隊、アザリーとスピルガに同乗したアクラシスとガンジが叫ぶ。
「なぜ人質のために死ななかったのですか? 無力感と絶望に苛まれ、惨めに果てなかったのです? 我ら歪虚よりも七つの大罪の申し子にふさわしい人間のくせに……」
 イリスの周囲を緑色の風が舞う。地獄の番犬を思わせる低い唸りが、空気を威圧感の塊に換える。攻撃結界の形成、だろうか。
(ステラさん、神火さんも。一気にイリスの懐に飛び込んで、即、散開してください。私はイリスに飛び掛る囮となります)
 何言ってるんだ!? 目をむく二人にアクラシスは言う。
「範囲攻撃に風穴をあけます。あとはガンジが人質を……」
 つまり、退路確保がリーリー隊の役目!
「スピルガ! 臆さず突っ込むよ!」
「アザリー! 帰路はデリケートに運べよ?」
 自身も満身創痍のこの身が辛いからな、とステラが苦笑し、神火は《装火亀ブラストルガ》の召還符残弾をありったけセットする。結界に結界をぶつけ、退路を築く!

「森山を返せ!」
 森山はドジの俺を励ましてくれた。
 森山はいつも笑って見送ってくれた。
 森山はおかえりっていってくれた。
 森山、森山、森山……!
「俺は紅の刑事だ。護りたい人のため歪虚を追い詰める、それが俺の誓いなんだ!」

 リーリーから飛び降り、結界の風に身を切り裂かれるアクラシスの陰から、ガンジがイリスに飛びかかる。
 ガンジの拳が振りかざされた、そこに……
「つまらない。本当につまらない」
 由香が突き飛ばされ、ガンジはあわてて抱きとめる。
 なんとか着地して見上げれば、逆光のイリスの表情は少し悔しそうで寂しそうで。そのまま、彼女の足元から伸びる漆黒の狼のシルエットに包まれ──消えていった。


 0課刑事達と幻蒼機導隊隊員は短い握手をかわす。
「由香……良かった!」
 優と由香が抱き合って泣いている。たくさん話したいことがあるのに、残る時間はあと数秒しかない。

「あ、ン。幻蒼機動隊初出動任務、完了」
 フォレスター機の簡潔な報告の後、アオツキ機の記録は終了した。



「え? 伝言サービスに仲介頼んだときの、撮ってたんですか?」
 智里がVTRを見て叫ぶ。ここはオフィスのシアター室だ。
「使う使う。巨大化できなきゃ周りを小さく、ってリハの映像も加工してたぜ」
「わたしの提供映像もガッツリ使用されましたね」
「休憩室で重体のケアしてる時もカメラ回ってるなと思ってたんですよ」
 うんうん。トリプルJとクオンとユウが頷く。限られた映像リソースゆえだろう。

「俺達はバンク映像で回想シーン炸裂だったぜ!」
「ガンジさんのアレは妄想シーン扱いだそうですよ?」
 レギュラーのガンジに同じくエルバッハのツッコミが入る。

「ボルちゃん可愛いっ☆」
「……ッ! コロス!」
 ミカがボルディアに〆られている横で、キヅカが悩んでいる。
「次回、CAMで機導隊に配属予定が、ウチのユグディラつれて来いって。お茶汲みのとき何したんだよ……あいつ」

「特務小隊シリーズ、知らんのか? ミグは大ファンでな、監督に挨拶に行ったら元隊員役を貰っての!」
「いえ、ボクはあの……当時は研究室漬けでTVはサッパリ……」
 ミグの熱心な布教に天央はタジタジだが……。
「それ。スポンサーがプラモ屋でね。渋いのを出すんだ、これが」
「ヴィリーさん、すっかり役に影響もらいましたね」
 TV漬けでなくとも、ヴィリーとアクラシスのように役に板がつくものである。

「いやぁ、因縁設定が生えた生えた! ……あれ、どうしたの?」
「役作りとはいえペアリングなんて、恋人に許してもらえるか不安だぜ」
 ウーナが、ニヒル一転顔面蒼白のヴァイスを覗き込む。小菊も様子を窺い淡々と励ます。
「そうか。大変だな」「そうか。複雑だな」「そうか。幸せだな」

「ロケ弁、美味しかったですね。おやつのカード付スナック、持ち帰りたかったです」
「アザリーの飯まで豪華だったぜ。オレに病院食ってのは勘弁してほしかったけどな」
 神火とステラが食品スポンサー万歳と歓声を上げれば…。
「蟹光線の作者、食べ物繋がりでお玉な機体の名前にお似合いだとおもったのに……」
 ミオレスカが次回こそは料理人役でとVTRに誓う。


 紅の刑事1st最終話は高視聴率を叩きだし、幻蒼機導隊も好調なすべりだしをみせた。

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参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    フォボス
    Phobos(ka0018unit001
    ユニット|CAM
  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ペリグリー・チャムチャム
    ペリグリー・チャムチャム(ka0038unit004
    ユニット|幻獣

  • ミカ・コバライネン(ka0340
    人間(蒼)|31才|男性|機導師

  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    グレン
    グレン(ka0364unit001
    ユニット|幻獣
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ハリケーンバウユーエスエフシー
    ハリケーン・バウ・USFC(ka0665unit002
    ユニット|CAM
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    イェジド
    ヴァーミリオン(ka0796unit001
    ユニット|幻獣
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • ユニットアイコン
    マドウガタデュミナス
    魔導型デュミナス射撃戦仕様(ka0896unit003
    ユニット|CAM
  • 青竜紅刃流師範
    ウーナ(ka1439
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    エクスシア・トリニティ
    エクスシア・TTT(ka1439unit002
    ユニット|CAM
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    ガルム
    ガルム(ka2434unit001
    ユニット|幻獣
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    シルバーレードル
    シルバーレードル(ka3496unit001
    ユニット|CAM

  • 奈義 小菊(ka5257
    人間(蒼)|14才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    タイプケイエーバージョンフォグ
    KA-Fog(ka5257unit001
    ユニット|CAM
  • Rot Jaeger
    ステラ・レッドキャップ(ka5434
    人間(紅)|14才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    アザリア
    アザリア(ka5434unit001
    ユニット|幻獣
  • 九代目詩天の想い人
    龍堂 神火(ka5693
    人間(蒼)|16才|男性|符術師
  • ユニットアイコン
    スピルガ
    スピルガ(ka5693unit001
    ユニット|幻獣
  • 今日を笑顔で全力!
    道元 ガンジ(ka6005
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • BravePaladin
    ヴィリー・シュトラウス(ka6706
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • 無垢なる守護者
    ユウ(ka6891
    ドラグーン|21才|女性|疾影士

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エルバッハ・リオン(ka2434
エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/08/11 07:47:57
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/08/11 07:24:03