おしえてタングラム4

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/11/08 19:00
完成日
2014/11/16 06:06

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 リゼリオにある帝国ユニオンAPV。今日も今日とてとっちらかった建屋に入ってきたハンターの視界にタングラムの背中が見える。
 ユニオンにある大きな掲示板にはAPVを通じてオフィスに出されている依頼についての注釈やハンター同士の交流の為のチラシが貼り出されている。
 ユニオンリーダーがズボラだからなのか、古いチラシの上に無理に上張りされたチラシが風に揺れている。タングラムはそこに新たなピンを突き刺し肩を叩いていた。
「はー。最近運動不足で肩が凝っているようですねぇ……」
 ハンターは歩み寄り声をかける。タングラムは振り返ると笑みを作り。
「こんにちはですね。今日はいい天気で過ごしやすいので、たまにはこういう雑務もしようかと思ってですね……ん? このチラシですか?」
 タングラムが手にしていたチラシを指差す。どうやら帝国軍からの依頼のようだが、どうもハンターだけに向けられたものではないようだ。
「これは帝国国内ではびこる犯罪者を拿捕する為に時折発行されている指名手配書です。山賊海賊テロリストと、国内には人間のお尋ね者も多いですからねぇ」
 先日行われた皇帝選挙、そして剣機襲来を機に帝国は今テロリストの検挙に力を入れ始めていた。
 以前であればハンターにこういった仕事はできるだけ回さないようにという暗黙のルールがあったが、先の剣機戦での活躍を認め、人手不足を補う為にこういったチラシが配られるようになったのだ。
「帝国国内を拠点にしている賞金稼ぎに配布している物らしいですが、APVにも並べる事になったようですね」
 似顔絵と共にその賞金首がどのような罪を犯したのか、そしてどのくらいの脅威を持っているのかが端的に記されている。そのチラシの一つを手にとったハンターにタングラムは頷き。
「一般人にとってはともかく、ハンターならばそう難しくはない依頼かもしれませんね。腕に覚えがあるのなら、強い相手に挑むのもアリですけどね」
 賞金首は人間だけに留まらない。協力な歪虚には賞金が付けられることもある……が、基本的にそういった手合は師団を上げて挑む物。必然、ここまで降りてくる仕事は小悪党の退治がメインになる。
「ただ、賞金首の中には覚醒者でも手こずるようなヤツも混ざっているので注意するのですよ。テロリストの中には元師団関係者もいますしね。そういった連中は非覚醒者出会ったとしても場数を踏んでいる分手強いのです」
 考えこむハンター。タングラムは腰に手を当て苦笑を浮かべる。
「ハンターは本来人間相手ではなく、歪虚と戦う為の傭兵です。君たちはその成り立ちからして中立であり、こういった仕事はお門違いかもしれませんね。人間相手に剣を振る事自体を嫌う子もいるでしょうから、無理に引き受けるものではないのですよ」
 そんな忠告を受け取りつつハンターは手配書と共に依頼書を手にとった。
 人の世情が荒れればそれだけ歪虚の付け入る隙も増す。殺す為ではなく正しく導く為にこうした役割を任される事もあるだろう。
 タングラムは歩き出したハンターの背に小さく手を振り見送る。その手に握られた手配書は、そう大した仕事ではないはずだったから……。



「いつまで祈っているつもりだ、キアラン?」
 夜の森に月明かりが差し込む。長い髪にドレス姿のその人物は首から下げた小さな木彫を握り締め光を浴びていた。
 まるで少女のようなのだから、少女と形容する事に何ら問題はない。少女はゆっくりと目を開き、作り物のように美しい笑みを浮かべる。
「君には聞こえないのかい? この森の痛み、悲しみ……。きっと怒ってるんだ。そうに違いない」
「私にはそういう資質は無いからな」
 黒いフードで全身を覆った男の声。少女は木彫の飾りを首から引きちぎると、木の幹に鋭く突き刺す。
 まるで何かの目印のように、或いは儀式のように。少女はマントを羽織り、ぬかるんだ地面に突き刺してあった弓を抜いて歩き出す。その足元には泥にまじり、倒れた人間の血が染み込んでいた。
「三流だな。こそこそ隠れて密猟をする程度の事しか出来ない連中だ。実に他愛もない」
「エルフハイムはともかく、帝国軍はどうして彼らを取り締まらないのだろうね?」
「興味がないのさ。奴らにとって森はただの資源だ。それ以上も以下もない」
 にっこりと笑みを浮かべて歩く少女がふと足を止める。眼下には小さな山小屋が幾つかあり、そこには松明の明かりが揺れている。山を根城にする族、すなわち山賊の居城なのだが、そこへ向かう幾つかの影が見えたのだ。
「あれは……人間?」
「賊の類か? 私にはこの距離では見えん」
「仲間なら隠密行動はしないだろうね。となると軍人か、或いはハンターってやつかな」
「ビンゴブック片手にピクニック気分の守銭奴か。劣等種め」
「少し様子を見よう」
「見てどうする」
「決まってるでしょ? エルフなら見逃すけど、人間なら殺す」
 風が吹き少女の髪を揺らす。まるでそれを合図としたように、物陰からは次々と黒ずくめの人影が立ち上がろうとしていた。

リプレイ本文

 情報によれば山賊の拠点となる山小屋は三つ。一番奥に最も大きな小屋が一つ、その手前、左右に二つ小さめの小屋が配置されている。
「お、奥の小屋にボスとお宝を貯めこんでるから、そこに二十人近く詰めてるが、手前には住人もいねぇ。見張りは交代で三人だ」
 小屋を遠巻きに眺める草陰に二人の山賊が倒れていた。そして三人目の巡回は今、シャトン(ka3198)に羽交い締めにされている。
「落とし穴とか猪用の罠とかさ……目立つ小屋があるなら、やってるだろ?」
「大した罠はないが、決まった手順で入れば安全だ。俺たちぁあんまり物覚えよくねぇから、安全な道を作ってんだ」
 ふんふんと何度か頷くシャトンの手にはジャマダハルの刃が光る。首筋に当てられた恐怖から逃れようとする山賊に仲間意識はあまりないのか、喋りは流暢だ。
「も、もういいだろ! 約束通り……うごっ!?」
 適当な所で山賊を気絶させたシャトンの様子にエハウィイ・スゥ(ka0006)は乾いた笑みを浮かべる。
「うわー、かわいそ……」
「自業自得だ。無法に生きると決めた以上、約束を反故にされても文句は言えんな」
 フンと鼻を鳴らすアウレール・V・ブラオラント(ka2531)。坂斎 しずる(ka2868)は肩を竦め。
「それにしても仲間の事をあっさり売るなんてね。こんな小物が蔓延っているようでは、帝国の治安は想像以上に荒れているって事なのかしら。それともこっちじゃ当たり前?」
「小悪党を帝国の全景の様に語られるのは心外だが、不届き者が跋扈している現状は認めざるを得ないな……」
 溜息混じりに零すアウレール。鳴神 真吾(ka2626)は気絶した山賊達を木に括りつけ。
「しかし、人間相手は複雑だぜ。小悪党とわかっていてもな」
「うん……。今更だけど、ちょっとしんどいかな。こう見えても私、他者を導く巫女見習いだし……」
「気に病む必要はないぞ。賊を拿捕し更生させるのだからな」
 微妙な様子の真吾とエハウィイにあっけらかんと言い放つアウレール。ユノ(ka0806)はへらりと笑い。
「そうそう。反省までは期待してないけど、悪行の分は働いて返してもらわないとね。だから、殺すなって話なんでしょー?」
「……そうだな。何か、気ぃ使わせて悪かったな。ありがとよ」
 笑みを返す真吾。エハウィイも腹は座ったが……。
「それはそれとして、寒いし暗いし眠いし、もうお家帰りたい……」
 ぽつりと呟く。それを聞き逃さなかったシュネー・シュヴァルツ(ka0352)がいつの間にか側に立ち。
「わかる」
 と、力強く頷いた。その時、二人にしかわからない、なにかこう、共鳴的な背景が広がっていく……。
「お家って、最高よね……」
「働いたら負けかなって思ってる」
「負けなんだよね……きっと……」
「私達は、みんな敗者なんだ……」
 どんよりしたようなキラキラしたような空気にシャトンは腕を組み。
「どーいう状況だ、アレ」
「そろそろ仕掛けないと見張りが戻らないので不審がられるねぇ。先を急ごうかぁ?」
 ヒース・R・ウォーカー(ka0145)が二人の肩を叩き、いよいよ山賊捕獲作戦が開始された。



 ハンター達は人員を二つに分割し班を作った。まずは手前の小さな小屋から制圧するのが妥当だろうと言う話になり、二つの班が同時に攻略を開始する事になった。
 まずはB班。スリープクラウドを有するユノがいるこちらの班は、まずは魔法を小屋の中に流し込んでから制圧を行う。
 夜中という事もあり元々寝ている者も数名居た。睡眠魔法の煙が流れこんでも山賊はしばらく気付かず、起きて酒を飲んでいた者達がうとうとし始め初めて異常を察知する。
 突然の事に対応出来ない山賊の一人に駆け寄り、シュネーが口を抑え、鳩尾に肘を打ち込んで気絶させる。更にアウレールが奥へ進み、まだ起きている山賊へと襲いかかった。
「煙だ! 毒か何かだぞ!」
 慌てながら襲撃に対応しようとする山賊達だが、全くどうにも出来ない。シュネーとアウレールは次々に山賊を蹴散らしていく。
「帝国の富を不当に略取し治安を揺るがす不届き者共。命が惜しくば無駄な抵抗は諦める事だ」
 とりあえず手斧でアウレールに襲いかかってみるが防がれる。シュネーを狙っても避けられ、カウンターで蹴っ飛ばされるだけだった。
 仲間意識が薄いので逃げ出そうとする輩も居たが、裏口から駆け出そうとした所に突然ロッドが出てきて足を掬われる。派手に転倒した山賊の背に跨がり、エハウィイは息を吐いた。
「自分でやっといて何だけど、思った以上に効果的だったねー」
 あっけらかんと笑うユノ。混乱状態、かつ数が多くても結局一対一で戦うしかない狭い屋内に置いて山賊に為す術はなかった。物凄くあっさり、B班は拿捕に成功する。
「はいおーしまいっと。これで目覚めても動けないでしょー」
 山賊たちはユノの提案で一つの部屋に縛られ、まとめて転がされる事になった。出入口は当然塞いであるので、まず脱出できないだろう。
「縄で縛られ暗がりに押し込められた男達……ほほぅ、これは中々エロい気がしますな。うすいほんがあつくなりますな」
「薄い……何?」
 首を傾げるシュネー。ユノはバリケードでもある木箱の上に腰掛け、A班へと連絡を取った。

『というわけですごくあっさり終わったけど、そっちはどうー?』
「流石にそっち程じゃないが、滞りないねぇ」
 短伝片手に山賊の斧をかわし、鞘に収めた太刀を鳩尾に打ち込むヒース。
 A班は魔法がないので無難に奇襲を仕掛けた。とは言え普通に考えて山賊は手も足も出ない。
「警告は一度、大人しく捕まるなら命は保証する。抵抗する場合は保証できないのであしからず、と」
「悪いが逃すわけには行かないんでな……!」
 雷を纏った掌底を軽く打ち込み山賊を吹っ飛ばす真吾。彼は窓を背にし、山賊の逃亡を阻止している。
 となると正しい出口から出るしかないのだが、その前にはヒースとシャトンが待ち構えている。
「暗いのは厄介だな……めんどくせぇ。おい、かかってくるのは構わねぇが、手元が狂っても文句は言うなよ?」
 目を細めだるそうに山賊を睨むシャトン。シャマダハルで敵の剣を打ち払い、蹴りでふっ飛ばし気絶させる。
 倒れた山賊を縛りつけるヒース。粗方片付いたのを確認し、三人は一箇所に集まる。
「寝込みを襲って一方的にはっ倒すのは、ちょいと気が引けるぜ」
「無警戒過ぎだね、コイツら」
 真吾とシャトンがそれぞれ感想を呟く中、ヒースは短伝で制圧完了を報告しようとし……そこで小屋の外からしずるの声が聞こえた。
「……待って。何……? 何か様子がおかしいわ」
 しずるは制圧中外で警戒を続けていたのだが、三つ目の大きな小屋から数人の人影が近づいてくるのに気づいたのだ。
「襲撃に気づかれた感じでもないけど……一旦合流して、対策を――」
 次の瞬間、パリンと硝子の割れる音が聞こえた。シャトンと真吾の目の前を横切り、小屋の中の柱に突き刺さったのは矢だった。
 その矢の存在に気づいた直後、光が瞬き部屋の中に爆風が広がっていった。



「……爆発音?」
 聞こえる筈のない音にシュネーが顔を上げる。
「うん? 何か変な匂いがしない?」
 首を傾げるエハウィイ。直ぐにユノが正体に気づいたのは、単純に“同じ手”だったからだ。
「毒だよ! 早く外に!」
「ユノ殿!」
 ユノの肩を掴んで引き寄せるアウレール。その背後から迫っていた刃を受け、襲撃者を押し返す。
「え? どういう状況……ひぃ!?」
 エハウィイの頬をかすめた矢が通路に突き刺さる。見れば正面と裏口、両方から何者かが攻め込みハンターを挟撃しようとしている。
「攻めてこない……?」
「ここに留めて毒の効果を待っている! 突破するしかない!」
 背中合わせに構えたアウレールとシュネー。アウレールは敵の意図に気付き傷を承知で敵に突っ込み活路を得る。なんとか外に出た四人を待ち構えていたのは別の襲撃者の追撃であった。
 レイピアの一撃を受けたアウレールだがシュネーが反撃に動き刃を交える。その動きは山賊とは比べるべくもない。
「早い……この動き、私と同じ……」
「覚醒者か」
 襲撃者の男は背後へ跳ぶと二刀を構える。更に二人のフードで顔を隠した人物がハンターを囲んだ。

「……っつぅ。行き成りご挨拶だな、ったく」
 矢に爆薬を括っただけの単純な攻撃だが部屋にいたハンター、山賊全員が傷を負ってしまった。飛び起きたシャトンへ刃が振り下ろされるが、真吾が機導砲で牽制、敵を下がらせた。
「悪ぃ、助かった」
「ギリギリ盾を構えられたんでな……しかしどういう連中だ、こりゃ?」
「どこの誰かは知らないけど、イレギュラーを歓迎するとしようかぁ」
 頭を振りながら立ち上がるヒース。部屋の中には既に三人の襲撃者が、それぞれ短剣を光らせている。
「山賊って風貌じゃねぇな。アンタらには用はないんだ。オレ達も邪魔したくねぇし、邪魔しないでもらいたいね」
「ここにいるって事はそっちも山賊目当てか? だったら俺達は敵じゃない!」
 しかしシャトンや真吾の言葉を無視し、襲撃者は襲い掛かってくる。
「聞く耳持たず、かぁ」
 刃を抜くヒース。一方、小屋の外ではしずるが地に膝を着いていた。爆発に気を取られた隙に背後からナイフをつきつけられたのだ。
「お姉さん達、山賊って感じじゃないよね。どちら様なのかな?」
 背後に密着しているので、背格好が小さい事、髪が長い事もわかる。花のような香りも少女を連想させるが――。
「あなたの方こそ何者なのかしら? 手配書にあなたの事は書いてなかったけれど?」
「……“その手配書”にはね。でも似たような物かな。そういう君達は賞金稼ぎかな?」
「ハンターよ。あなた達は何? 危害を加えるなら容赦はしないわ」
「強がっちゃって、可愛いね。この状態からどうやって僕に危害を加えるのかな?」
 耳元で囁きながらナイフを首筋に食い込ませる少女。次の瞬間、遠巻きに放たれた風の刃が側を通過した。
 その瞬間、しずるは手元から滑らせたライトを光らせ背後を照らす。更に肘で少女の腹を打ち、拘束から逃れる。
「余計な手助けだったー?」
「まさか……ありがとう、ユノ!」
 すぐさまナイフを抜き少女のナイフに合わせる。
「君、火薬の匂いがするね?」
「そういうあなたもね」

「あっちを助けるのもいいけど、前前!」
 エハウィイの声に従い黒ずくめの短剣をかわすユノ。シュネーはダーツで腕を狙い、敵を退かせる。
「どうして襲ってくるの……? あなた達は何者?」
「貴様らに名乗る名はない」
 二刀流の男はシュネーの言葉を一刀。ユノはそれでも懲りずに笑顔で語りかける。
「僕達は山賊を捕らえるお仕事に来ただけだから……喧嘩はヤダな☆」
「ワタシテキジャナーイ。ナニモワルイコトシテナーイ」
 小刻みに震えながら片言で喋るエハウィイ。しかし男は容赦なく斬りかかり、アウレールが間に入って刃をぶつける。
「貴様ら人族と話す事は何もない」
「ご覧の通り、僕はエルフなんだけどなー?」
「貴様はエルフではない」
 まさかの言葉に目を丸くするユノ。男は二刀を交差させ、鋭く敵意を露わにする。
「人とつるむエルフは最早同族にあらず。命が惜しくば逃げ出すが良い」
「あなた達エルフに迷惑をかけない様、人間の側で対処しに来たんです。ここで争わず、エルフ側が介入するなら先ずソサイエティ通して……!」
「そんな小綺麗な輩ではないのだろう? “犯罪者”め」
 シュネーの発言は尤もだが、それは相手がまともなエルフならばの話だ。だが目の前の相手は普通のエルフには思えない。
「より良い世界の為に……死ね、人間」
「エルフ……貴様らの“自分達さえ良ければ”というその発想が、私は心底気に入らないッ!」
 二人は笑みを浮かべ刃を交える。丸く収まりそうにない状況にユノは溜息を零した。

「ったく、邪魔だ!」
 連続で拳銃の引き金を引くシャトン。部屋の中にいる敵は覚醒者ではないらしい。
 銃撃を受けた敵は血を流し、素早く撤退していく。敵の離脱を確認すると真吾は窓辺に駆け寄り。
「外だ! しずるが襲われてる!」
 窓を開け放ち飛び出す真吾とそれに続く二人。しずるはナイフで敵の少女と打ち合っていたが、状況は互角に見える。
「まともにやってるって事は、相手は覚醒者かそれに準ずる存在、だねぇ?」
「冷静に分析してる場合じゃないぜ!」
 機導砲を打ち込み敵を牽制する真吾。シャトンが拳銃を撃つが、少女はナイフでそれを弾く。
「曲芸かよ」
 更にヒースが接近と同時に抜刀、一閃すると少女は背後に飛び背負っていたショートボウを構える。
「炸裂弾頭よ!」
 しずるの声に反応し大きく背後へ飛ぶヒース。その足元が爆炎で吹き飛ぶ。黒煙が晴れると少女は弓を下ろし笑っていた。
「強いね。全員精霊の加護があるんだ」
「ヒース・R・ウォーカー。ボクは名乗った、お前はどうする?」
「残念、お尋ね者なのでこれにて失礼するよ。頭に血が昇ったバカも拾わないとだしね」
 にこりと取り出した小さな玉が爆ぜると同時に煙を撒き散らす。
「引き上げるよ」
 少女のような声が聞こえ、二刀流の男は舌打ちする。少女は去り際に何故か小屋に向かって矢を放った。直後、窓の内側で跳ねた炎の光で意味を理解する。
「火矢……あの部屋は、山賊の人たちがくんずほぐれつ……!?」
 慌てるエハウィイ。シュネーは直ぐに駆け出し、火の上がり始めた小屋に飛び込んでいった。



「大丈夫? 火傷した所、診せて」
 バリケードを取り除き部屋に入るには時間がかかったが、火災はさほど広がらずに済んだ。
 炎の中に飛び込んで消火にあたったシュネーが負傷したものの、山賊に死者は出なかった。炸裂弾を受けた方も命に別状はない。しかし……。
「やはりというか、三つ目の小屋は全滅だったねぇ」
 ヒースの報告に俯くシュネー。ヒールをかけるエハウィイも複雑な表情だ。怪我をした山賊たちの治療は出来るが、死んでは助けられない。
「全く物騒な奴。オレ達が何をしたって言うのかね」
「問答無用だったからな。話し合いで解決できれば一番なんだが……」
 溜息を零すシャトンと真吾。ユノは努めて明るく声を上げる。
「でもさー、あれ、声が“お兄さん”だったよねー?」
「ん……まあ、そうね」
 意図を理解したのは密着したしずるだけだった。首を傾げつつシャトンは頭を掻き。
「ま、ともかくこれで全員なんだろ? さっさと引き上げよう」
「そうだな。また奴らが戻ってくるかもしれないし」
 頷く真吾。傷を傷を庇って立ち上がろうとするシュネーにエハウィイは笑顔で手を差し伸べる。
「ヒースさん、何してるのー?」
「いやねぇ。いい月だと思ったのさぁ」
 首を傾げるユノに笑みを返しヒースは歩き出す。森から立ち去る人間達、その様子を遠巻きに月と、そして一人の人影が見つめていた……。

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参加者一覧

  • もえもえきゅん
    エハウィイ・スゥ(ka0006
    人間(紅)|17才|女性|聖導士
  • 真水の蝙蝠
    ヒース・R・ウォーカー(ka0145
    人間(蒼)|23才|男性|疾影士
  • 癒しへの導き手
    シュネー・シュヴァルツ(ka0352
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 無邪気にして聡明?
    ユノ(ka0806
    エルフ|10才|男性|魔術師
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ヒーローを目指す者
    鳴神 真吾(ka2626
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • シャープシューター
    坂斎 しずる(ka2868
    人間(蒼)|26才|女性|猟撃士
  • 小さな望み
    シャトン(ka3198
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/11/07 16:42:50
アイコン 依頼相談所
ヒース・R・ウォーカー(ka0145
人間(リアルブルー)|23才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/11/08 18:13:55