ゲスト
(ka0000)
歪虚の巣食う山の麓で
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/10/26 19:00
- 完成日
- 2017/11/02 21:47
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
グラズヘイム王国。
クリムゾンウェストの半島尖端に位置する国家。王都イルダーナを中心とした千年王国なる名を冠する大国だ。
現在、王国は西部の歪虚との交戦に尽力している。
北西にある北萩の島「イスルダ島」を歪虚から奪還すべく、王国は騎士団を中心に戦力を送り込んでいた。
ただ、それでも戦況は良いとは言えない。それもあって、王国内の中で発生している歪虚、雑魔に対処できないことも多々ある。
国土の大半が平野となだらかな丘陵からなるグラズヘイムにおいて、王国北東部は珍しい山岳地帯である。
この場所を歩いていたのは、3人のエルフの青年達だった。
2人は弓を携えた猟撃士。そして、1人はロッドを携える魔術師。
彼らは出稼ぎの為にハンターとして登録し、各地を回って人々の依頼に応えていた。
半年ほど前、彼らは故郷であるリンダールの森に発生した植物雑魔、ヤギ雑魔の討伐に尽力していた。
故郷を守り通した彼らは再び出稼ぎの為、ハンター家業に身を置いている。
森でひっそり住むエルフ達はそのままでも十分暮らしてはいけるが、若いエルフは見聞を広げ、自らの技量を高める為、そして、故郷に少しでも良い暮らしをさせられるようにと、こうして森の外へと出ているのだ。
ハンターとして活動するのであれば、あらゆる依頼をこなすことになるが、クリムゾンウェストにおいては歪虚、雑魔の被害が深刻だ。基本的には、彼らはそれらの討伐依頼を行うこととなる。
「……あれがそうか」
エルフを率いるリーダー、金髪の長髪を靡かせたアルウェスが呟く。
「歪虚が巣食う山……だな」
「不気味なこと、この上ないですね」
同じく弓を持つ銀の短髪のルイスと、黒髪を肩まで伸ばしたドミニクが頷いた。
彼らが見上げるのは、所々岩肌が露出し、枯れた木々が生えた山。
明らかに負のマテリアルに包まれたこの場所に、マテリアルに敏感なエルフ達は戦慄を覚えてしまう。
例えるなら、どす黒い塊に威圧されるような……。それに触れれば、確実にその身を病んでしまうような、そんな感覚。
「ともあれ、今は麓の集落だ」
ハンターズソサエティに出された依頼書によると、依頼内容は、集落を襲ったトカゲ雑魔どもの討伐。
山に住み着く歪虚達は麓にまで活動範囲を広げてきている。なんでも、鋭い爪を持つ雑魔となったトカゲ数体が襲撃された集落に住み着いたのだとか。
すでに、襲撃された住民達は無事な者は、古都アークエルスまで退避。
敵が何体いるかわからない以上、出来る限りの情報を得て後続のハンター達に託すだけ。
ただ、物陰から1体、また1体と現れる雑魔はエルフ達を目ざとく見つけ、見つけた餌は逃がすまいとにじり寄ってくる。
「少しばかり、分が悪すぎやしないか?」
ルイスは弓を手にしつつ、たらりと頬から汗を垂れ流す。
彼らも歪虚との経験を持つ歴戦のハンターではある。一度に相手するのが自分達と同数以上であれば、さすがにエルフ達も分が悪いと判断していた。
「直にハンターが合流するはずだ。我々は状況把握と牽制に努めればいい」
アルウェスの言葉に、ドミニクが頷く。向かい来る3体の雑魔に対し、彼らは後退しつつ増援を待つのである。
グラズヘイム王国。
クリムゾンウェストの半島尖端に位置する国家。王都イルダーナを中心とした千年王国なる名を冠する大国だ。
現在、王国は西部の歪虚との交戦に尽力している。
北西にある北萩の島「イスルダ島」を歪虚から奪還すべく、王国は騎士団を中心に戦力を送り込んでいた。
ただ、それでも戦況は良いとは言えない。それもあって、王国内の中で発生している歪虚、雑魔に対処できないことも多々ある。
国土の大半が平野となだらかな丘陵からなるグラズヘイムにおいて、王国北東部は珍しい山岳地帯である。
この場所を歩いていたのは、3人のエルフの青年達だった。
2人は弓を携えた猟撃士。そして、1人はロッドを携える魔術師。
彼らは出稼ぎの為にハンターとして登録し、各地を回って人々の依頼に応えていた。
半年ほど前、彼らは故郷であるリンダールの森に発生した植物雑魔、ヤギ雑魔の討伐に尽力していた。
故郷を守り通した彼らは再び出稼ぎの為、ハンター家業に身を置いている。
森でひっそり住むエルフ達はそのままでも十分暮らしてはいけるが、若いエルフは見聞を広げ、自らの技量を高める為、そして、故郷に少しでも良い暮らしをさせられるようにと、こうして森の外へと出ているのだ。
ハンターとして活動するのであれば、あらゆる依頼をこなすことになるが、クリムゾンウェストにおいては歪虚、雑魔の被害が深刻だ。基本的には、彼らはそれらの討伐依頼を行うこととなる。
「……あれがそうか」
エルフを率いるリーダー、金髪の長髪を靡かせたアルウェスが呟く。
「歪虚が巣食う山……だな」
「不気味なこと、この上ないですね」
同じく弓を持つ銀の短髪のルイスと、黒髪を肩まで伸ばしたドミニクが頷いた。
彼らが見上げるのは、所々岩肌が露出し、枯れた木々が生えた山。
明らかに負のマテリアルに包まれたこの場所に、マテリアルに敏感なエルフ達は戦慄を覚えてしまう。
例えるなら、どす黒い塊に威圧されるような……。それに触れれば、確実にその身を病んでしまうような、そんな感覚。
「ともあれ、今は麓の集落だ」
ハンターズソサエティに出された依頼書によると、依頼内容は、集落を襲ったトカゲ雑魔どもの討伐。
山に住み着く歪虚達は麓にまで活動範囲を広げてきている。なんでも、鋭い爪を持つ雑魔となったトカゲ数体が襲撃された集落に住み着いたのだとか。
すでに、襲撃された住民達は無事な者は、古都アークエルスまで退避。
敵が何体いるかわからない以上、出来る限りの情報を得て後続のハンター達に託すだけ。
ただ、物陰から1体、また1体と現れる雑魔はエルフ達を目ざとく見つけ、見つけた餌は逃がすまいとにじり寄ってくる。
「少しばかり、分が悪すぎやしないか?」
ルイスは弓を手にしつつ、たらりと頬から汗を垂れ流す。
彼らも歪虚との経験を持つ歴戦のハンターではある。一度に相手するのが自分達と同数以上であれば、さすがにエルフ達も分が悪いと判断していた。
「直にハンターが合流するはずだ。我々は状況把握と牽制に努めればいい」
アルウェスの言葉に、ドミニクが頷く。向かい来る3体の雑魔に対し、彼らは後退しつつ増援を待つのである。
リプレイ本文
●
グラズヘイム王国北東部。
なだらかな平原地帯の多いこの国においては、珍しい山岳地帯。この地へと数人のハンター達が向かっていた。
その全員がユニットを駆っているが、2人がグリフォンへと騎乗して宙を飛び、現場の村へと急行していた
「このタイミングで歪虚の進出? ……合流急いだほうがいいかもな」
やや可愛らしい見た目だが、これでも機導師として活動する少年発明家のレオーネ・インヴェトーレ(ka1441) 。彼は白毛白羽毛の『ネーベル』に乗り、先行して偵察を行う心積もりだ。
「村人さん達の為にも、雑魔を村に居座らせる訳にはいかないもん!」
こちらも一見女性にも似た外見の時音 ざくろ(ka1250)。蒼い世界にて暴れまわっていた者の名を冠したグリヴォン『J9』に騎乗し、レオーネを追う。
地上からは、大型兵器へと搭乗した残りのメンバー達が向かう。
「あちらを立てれば、こちらが立たずということでしょうか」
魔導トラックを運転するレオナ(ka6158)は、エルフハイム出身のエルフだ。
すでに現場に向かったエルフ達は、自分達の故郷を歪虚から守ったと言う。そちらの事件は無事解決したと言うのに、被害に遭った人々がいたと言うのはなんともやるせない。
「……事前情報では、住民のうち無事な者の退避は終了しているとのことだが」
赤い髪と髭の男、アバルト・ジンツァー(ka0895)は万が一に備え、レオナと同じく魔導トラックを走らせる。その荷台に積まれた医療品などは、この地から逃げられずにいる……かもしれない住人に備えて用意したものだ。
「元凶よりも、まずは目先の仕事だな」
やや彼らから遅れる形で地面を滑るように、魔導アーマー「プラヴァー」の『タロン』で移動していく白髪のドワーフ、ジーナ(ka1643)は緑の瞳で前方に見えてきた村を見つめる。
奥にある山に巣食う歪虚は気になるものの、今はこの地にやってきたエルフの救出が先だと、ジーナは魔導エンジンを吹かせた。
山の麓とあって、この地域にあった地形プログラムで足回りを補強したタロンを操作するジーナはスペルスラスターとスラスターダッシュを併用し、急行していく。
(早く、元の暮らしに戻れますように)
銀髪を持つレオナは避難した住人達が平穏を取り戻せるようにと、小さく祈りつつ、トラックを走らせた。
さらに後ろ、3体のCAMが仲間を後ろから追う。
魔導型デュミナス『Phobos』に乗り、フライトフレーム「アディード」を利用し、飛行して追いかけるのは、黒髪の青年クオン・サガラ(ka0018)だ。
(実戦で少し乗ってそれ以来ですし、それが人型となると……)
クオンはリアルブルーにいたとき、宇宙飛行士の訓練生時代にジェット機を必修科目として運転した経験が多少ある。折角、飛行可能なCAMが用意できたこともあり、慣れないことだからと彼は感覚を掴む為に実戦投入することにしていた。
地上からは、ガルちゃんことガルガリン「スパニヤード」に乗る長身の少女、ゾファル・G・初火(ka4407)が歩を進めている。
事前に得た情報では、山を埋め尽くすほどのリザード雑魔の群れが相手と把握してしまっていた彼女は、操縦席にて嬉々としていた。
「雑魔が集落を襲撃ですか」
こちらは、赤髪のオートマトン、T-Sein(ka6936)。
集落で何か見つかるかもしれないと考えていた彼女も「R6M3a魔導型デュミナス改」……通称オファニム『ヴァルキューレ』に乗ってこの場へとやってきていた。
「よくある話と言えばそうですが、やはりこう実際に現場へと来るとやるせないですね」
カメラを通して見た前方の奥には、雑魔によって荒らされ、無人と化した村がT-Sein(ka6936)にも見えた。
遠目に見ても、明らかに人の営みが感じられない集落。そして、違和感とも呼べるほどにマテリアルが淀んでいるような感覚を覚える。
「……感情は置いといて、まずはエルフと合流しましょう。話はそこからです」
すでに、この地へとエルフのハンターが数人向かっていると言う。T-Seinはそう仲間へと促し、現場となる村へと急ぐのだった。
●
村の上空へと一足早くたどり着いたグリフォン組2人。
「……飛行型歪虚はないよな?」
レオーネは念の為と敵の出現に警戒しつつ、先にこの地にやってきているはずのエルフ達の姿を探す。
空で村の様子を双眼鏡で偵察するざくろ。彼は旋回するように村を見回し、この場にいる敵を確認する。
「視認できる範囲の敵は4、位置は……既に戦ってる人がいるから、ざくろ達で支援に入っておくね」
レオーネの力で通信機器の機能、交信距離を拡張させたトランシーバーでざくろは他のメンバーへと状況、戦況を伝え、すぐさま降下して行く。
地上、集落内では、全長2メートルもあるリザード雑魔3体から逃げる男性エルフ達の姿があった。なお、もう1体が物陰にいたのを、ざくろは見逃すことなくしっかりとチェックしている。
「直にハンターが合流するはずだ」
リーダー、アルウェスが呼びかけつつ、相手へと牽制の一矢を放ち、再び後方へと逃げる。
シャアアァァ……。
他2人、ルイスとドミニクも弓と魔法で応戦してはいたが、リザード達はまるで意に介する様子もなくにじり寄ってくる。
果たしてどれだけ持つのか。アルウェスが脂汗を流すところへ、グリフォンに乗る2人がその場へと飛び込んでいく。
「見つけた! アルウェスさんたちだよな? 応援に来た、このまま援護する!」
レオーネは呼びかけ、仲間達へと正確な位置と戦況を伝える。
「ここはざくろ達に任せて! まずは、後から来る仲間達に状況の説明を頼むよ」
ざくろもはエルフ達へと声をかけた後、向かい来るトカゲ達の前方へと急降下すると同時に風の魔法を纏う。着地の瞬間に巻き起こる爆風はトカゲどもに衝撃と斬撃を同時に与えて、その巨躯を後方へと吹き飛ばしていった。
「ここから先は、絶対通さない!」
敵に向けて叫ぶざくろ。リザードどもはすぐに態勢を整え、再びハンター達へと近づいてくる。
「すぐ仲間たちも合流する! もうちょっとだけ持ち堪えてくれ!」
この後続くはずの仲間達の存在をレオーネもまた示唆し、風の魔法によって発生させた小型の竜巻を雑魔達へと浴びせかけた。
「……わかった」
3人で示し合わせたエルフ達は現状のまま、攻撃を行いながら後退することにしていたようだ。
そこへ、魔導トラック組、アバルトとレオナがやってくる。
トラックに乗車したまま、30mmアサルトライフルでリザードへと射撃を仕掛けるアバルトは、トランシーバーで仲間の状況を確認したまま、敵との距離を維持していた。
一方で、レオナは戦闘の妨げにならぬ位置でトラックから下車し、エルフ達と接触する。
「大丈夫ですか、無理せずトラックの裏に隠れてください」
「援軍、感謝だ」
「これはまた麗しい美女の救援だな」
やってきた同族であるエルフの姿を目にして、アルウェスは笑って返礼し、ルイスが口笛を小さく鳴らす。
「トカゲの動きで何か注意がありましたら、皆に周知を願います」
レオナがさらにエルフ達へと呼びかけると、ドミニクが振るったロッドから氷の矢を飛ばし、アルウェスがハンター達と通信を試みていたようだった。
しばし、交戦するハンターとエルフ。そこへ、魔導アーマーを操るジーナが到着する。
「……間に合ったか」
ジーナもまた、機体をエルフとリザードの間に割り込ませていく。
そこで、彼女はエルフ達からの通信を聞きつつ、魔導レーダー「アイステーシス」を稼動させ、集落の状況把握に努めていた。
シャアアアアアアッ!!
だが、そこへジーナのタロンを狙いに定めたリザード雑魔1体が襲い来る。
トカゲは長い舌で、タロンを縛りつけてくる。その衝撃は少なからず操縦席がむき出しになっているジーナにも及ぶ。
とはいえ、魔神装甲「タイラント・レギス」で自身を包むジーナ。十分に対策を練ってきていた彼女は、後続の到着まで耐え凌ぐことにしていた。
程なくして。
真紅の格闘専用CAM、ガルガリン「スパニヤード」の操縦席から何かを見つけたゾファルはにやりと笑う。
「かわいいかわいいトカゲちゃん、俺さまちゃんのガルちゃんと遊んでくれよ~」
特攻してきた彼女はリザード雑魔をぼてくり回す……つまりは相手をフルボッコにする気満々だったが、目の前の敵はガルガリンの半分もない大きさでしかない。
「ちっちぇートカゲちゃんだなぁ、これは楽勝かんなー」
ゾファルは鎧袖一触、すれ違った敵目掛け、豪快に魔導剣「テルブリンカー」を振り回して狙ったトカゲへと斬撃を浴びせかけていく。
さらに、T-Seinがヴァルキューレで前線に飛び込みつつ、プラズマライフル「イナードP5」を発砲し、トカゲどもを牽制する。
すでに、エルフ達が後ろに下がっていることもあり、ハンター達は雑魔対処に集中し始めていた。
「あまり……、このような光景が普通になっても困るのですが」
クオンは改めて村の惨状を目にして悲観する。ただ、マテリアルと歪虚が表裏一体だとするならば。彼は「Phobos」を操作し、ツインカノン「リンクレヒトW2」を構えて。
「……まあ、やるしかないですね」
そうして、クオンは砲弾を発射し、雑魔へと叩き込むのだった。
●
リザード雑魔はハンター達へと牙を向き、のしかかり、あるいは舌で縛りつけ、殴打を行う。
生身で戦うならば強敵だっただろうが、メンバー達は乗ってきたユニットを存分に活かして応戦を行う。
「これでもくらえ……必殺デルタレイ!」
仲間達が揃うまではと、1体の雑魔の攻撃を引きつけていたざくろ。
彼はホーリーメイス「レイバシアー」で空中に光の三角形を描き、その頂点から光線を飛ばして3体のリザード達の体を貫いていく。
レオーネは仲間との伝達役となりながらも、幻獣の口の噛む動作でしっかりと獣機銃「テメリダーV3」のボタンを押し、トカゲへと銃弾を叩き込んでいく。
敵が列を成して近づいてくるタイミング。ジーナは敵へと有効打を浴びせられるとその一瞬を見逃さない。
「……好都合だ。各部マテリアルエンジン、出力全開!」
スラスターダッシュ、スペルスラスターを合わせて利用したジーナは敵の真横へと位置取り、敵に向かって突撃を繰り出す。
タロンの足元から発するオーラが光の翼を纏ったようにも見えた直後、ついにトカゲ1体が鳴き声を上げて地に倒れ、黒い霧のように爆ぜ飛んでいった。
戦場で暴れていたゾファルもまた、リザード雑魔どもの気を引く。
生身であれば、相手のほうがやや大きい相手だが、ガルガリンを駆るゾファルにとっては小さい相手。
「逃げられないようには注意するジャン」
体格差のおかげで、雑魔の方が小回り効きそうだということもある。その為、ゾファルは油断など一切行わずに立ち回っていく。
流れるように魔導剣「テルブリンカー」で相手を切り刻まんとしていた彼女だが、渾身の一撃を乗せた一撃でさらに襲い掛かる。
「チェストォ!! 斬」
だが、トカゲは素早い。それを飛びのくようにして避けたのに、ゾファルは不適に笑って追撃を行う。
後方からカノン砲を発射して仲間を援護するクオン。その手前で、こちらも射撃を行うT-Seinがトカゲの舌を出来る限り避けようと動く。
いかに高機動のCAMとはいえ、体格差が大きいこともあって避けるのが難しい部分もあり、その衝撃はわずかだがコクピットにも及ぶ。
シャアアアアアアッ!!
ギロリと目を輝かせながらも、自身よりも大きい相手を威嚇しようとするリザード雑魔。
仲間に気を取られている隙に。レオナは敵から距離をとりながらもタロットを使って防壁を展開し、その直後に別のタロットを宙に投げ飛ばし、稲妻を発する。
それに灼かれた1体が全身を焦がし、力尽きてその身を崩していく。レオナの後方にいたエルフ達は、その同胞の姿に思わず見とれていたようだった。
アバルトもまた魔導トラックで距離を詰め、もう1体へとアサルトライフルの弾丸を撃ちこむ。
一撃離脱を心がけるアバルトだったが……、さすがに物陰から近づく敵には対処が遅れてしまう。
「新手、きます……」
「くっ……」
仲間へと呼びかけるレオナ。メンバー達がそちらへと注意を走らせる中、小さく舌打ちしたアバルトはトラックを操作し、この場からの離脱を試みる。
見れば、家屋から壁を壊して新手が1体姿を見せており、こちらへと舌をのばしてきているではないか。
「……あいにくと正面から渡り合うつもりはない。殴り合いたいならば、二足歩行組と存分にやり合ってくれ」
狙われてしまった為、アバルトはターボブーストを使って一気にその場から離脱し、敵を振り切っていく。
家屋の中から、そして、家の陰から飛び出す新手のリザード雑魔2体。おそらく、仲間がハンターと交戦しているのを察して飛び出してきたのだろう。
ハンター達はさらにその応戦を迫られる。いち早くクオンがそちらへと応戦を開始し、全速力で割って入っていく。
飛行の為の時間は限られていることもあり、ある程度低高度にいた彼は確実に敵を叩こうと、その背後からその2体を同時に照準内に入れてカノン砲を発射する。
シャアアアアアッ……!
砲弾でそれぞれその身を貫かれ、痛みに悶えるリザード達。
T-Seinもまた、仲間の索敵情報を活かして動いていた。増援という形で現れる敵を素早く対処せねばと、彼女は魔銃「ダウロキヤ」を構え、敵を撃ち貫く。
「援護は任せてくれ!」
レオーネも新手を自由にさせまいと、すぐさまそちらへと小型の竜巻を発生させて行く。
ハンター達の素早い対処もあり、雑魔達はタジタジになりながらもにじり寄ってくる。
思った以上に体力のある相手だが、すでに2体倒していることもあり、ハンター達は変わらず敵の対処を続けて行く。
「超機導パワーオン! 弾けとべっ」
新手を仲間に任せていたざくろは、エルフ達の守りからそのまま応戦を続ける。のしかかろうとしてくる敵を、ざくろは聖盾「コギト」で弾き飛ばそうとする。
シャ、アアァァ……。
態勢を崩したリザードは、息がかなり切れてきていた。
ようやく追い込んだ相手へ、ざくろは懐中時計「星読」へと増幅したマテリアルを込めて。
「超機導機関フル出力、すべてを凍てつかせ機導の力、ハイパーフリージングレイ!」
彼は前方へと青白く輝く冷凍光線を発射する。
それによって、刹那凍りつくリザード雑魔。そいつは完全に動きを止め、砕けるように散っていった。
さらに、その光線は新手の1体も捉えていた。その身を硬直させた敵へ、ジーナが飛び込んでいき、猛然と引き出した野生の力を魔導アーマーへとトレースし、雑魔へとラッシュを打ち込んでいく。
徐々に戦意を失いかけていたリザード雑魔。ハンター達に背を向けた瞬間を、戦いの最中にエルフから情報を得ていたゾファルは見逃さない。
ガルガリンの手にする魔導剣は敵の体へと深々と突き刺さり、貫通する。
シャアアアア…………。
それに耐え切れず、リザード雑魔は叫び声を上げて爆ぜ飛んだ。
「やっぱ、楽勝だったジャン」
ゾファルは満面の笑みを浮かべ、残りの敵の掃討にかかる。
すでに、最後の1体は仲間達が追い込んできていた。
レオナは仲間達へとタロットを飛ばし、仲間達が敵に対するイニシアティブを取ることができるようにと援護する。
それを受けたのは、真っ先に新手へと飛び込んでいたクオンだ。
白兵戦に臨んでいた彼はリザードの舌を受け止めながらも、試作CAMブレード「KOJI-LAW」でそいつの体を寸断する。
シャアアアアアァァァ……。
真っ二つに切り裂かれたリザードは身悶えすることすらできず、この世から姿を消していったのだった。
●
5体のリザード雑魔を倒したハンター達はエルフ達と一度合流し、改めて落ちついた状況で話を始める。
「よく戦えてたよな、あのでっかいの相手に」
「お前達の乗ってきた物の方が大きいじゃないか」
レオーネは消え去ったリザード雑魔を指してエルフ達へと話すと、皮肉屋のルイスがそう言葉を返す。
多少は場が和む一行だったが、村の状況を見れば、笑ってばかりもいられない。
「村にいたのは、こいつらで全部なのかな?」
「そのはずだ。一通り確認はしたからな」
さらに、レオーネがアルウェスと村の状況確認をし、それを情報共有したメンバー達は村の探索を始める。
レーダーを全開にしつつ、辺りを調べるクオン。ゾファルも仲間の助けを得て、残党がいないかと索敵を行う。
レオナはマッピングセットを使い、簡易地図を作りながら呟く。
「山の歪虚の気配がなくならないうちは村へ帰れませんね」
この場所の雑魔を倒したところで……。前にそびえる山からは異様な雰囲気が漂っており、住民達が安心して生活できる状況には程遠い。
「そうだな……」
同行するアルウェスが相槌を打つ。レオナはエルフ達と一緒に行動し、パルムのアイリや、犬のアニーに周囲の警戒を任せつつ、民家を1軒ずつ回っていた。
「やはり……か」
状況的に生存者は絶望的だろうと、レオーネも踏んではいた。
思っていたとおり、集落の所々に雑魔に襲われたと見られる遺体がいくつかあり、メンバー達は1体ずつ回収していくことになる。
(心境的なのもあるし、剣機の時みたくアンデッドにされたりするとまずいからな)
レオーネはその輸送に当たり、まずはアバルトへと頼むことにする。
「すいません、よろしくお願いします」
「……生き残っているかもしれないという微かな希望を持っていたんだが、やはりか」
アバルトはそれらの遺体を布でくるみ、ざくろ、クオンらと丁重に輸送し、自身のトラックの空いたスペースに載せて行く。ジーナも「カスタムタイプ:ストーク」を活かした操縦で、慎重に遺体を回収していた。
――運んできた医療品などが無駄になってしまった。
回収した12人の遺体を見下ろし、アバルトは考える。軍人時代には何度も経験したことだが、やはりやりきれないものがあると。
「仇は取ったからね」
「お疲れ様でした」
手合わせするざくろ。移送を手伝っていたT-Seinも黙祷を捧げてから、仲間に労いの言葉をかける。彼女はそのままオファニムの上に登り、しばらく何か思うことがあったのか遠方を見つめていた。
「この遺体を、速やかに遺族や知り合いの元へ返してやるべきだろう」
アバルトはそう仲間へと伝え、さらに提案を続ける。
「幸か不幸かこの集落に人は居ないのだし、詳細な調査は次回に持ち越しても良いのではないか?」
ある程度、探索を行い山に歪虚らしき影がいるのは間違いないと皆確信する。だからこそ、アバルトも早期の撤退を提案した。
途中まで仲間のボディガードを買って出ていたゾファルは自身のガルガリンのそばで昼寝をしていたが、やはり彼女も他の敵の存在には気づいていたようだ。
「そうだな。正直言って居心地の悪い場所に長居は無用だ」
ジーナが同意し、他のメンバーからも異論は出ない。撤退が決まれば、メンバー達は手早くこの場から離脱準備を整えた。
「アルウェスさん方もよろしければ、トラックにどうぞ」
レオナはそうして、エルフ達に自身の魔導トラックに乗るよう促す。皆がユニットに乗り込んだところで、ハンター達は一斉にこの村から離れていった。
住民が安心できる状況には程遠い。
再び雑魔の掃討作戦が展開されることを信じ、メンバー達は避難した住民がいるはずの古都「アークエルス」を目指すのである。
グラズヘイム王国北東部。
なだらかな平原地帯の多いこの国においては、珍しい山岳地帯。この地へと数人のハンター達が向かっていた。
その全員がユニットを駆っているが、2人がグリフォンへと騎乗して宙を飛び、現場の村へと急行していた
「このタイミングで歪虚の進出? ……合流急いだほうがいいかもな」
やや可愛らしい見た目だが、これでも機導師として活動する少年発明家のレオーネ・インヴェトーレ(ka1441) 。彼は白毛白羽毛の『ネーベル』に乗り、先行して偵察を行う心積もりだ。
「村人さん達の為にも、雑魔を村に居座らせる訳にはいかないもん!」
こちらも一見女性にも似た外見の時音 ざくろ(ka1250)。蒼い世界にて暴れまわっていた者の名を冠したグリヴォン『J9』に騎乗し、レオーネを追う。
地上からは、大型兵器へと搭乗した残りのメンバー達が向かう。
「あちらを立てれば、こちらが立たずということでしょうか」
魔導トラックを運転するレオナ(ka6158)は、エルフハイム出身のエルフだ。
すでに現場に向かったエルフ達は、自分達の故郷を歪虚から守ったと言う。そちらの事件は無事解決したと言うのに、被害に遭った人々がいたと言うのはなんともやるせない。
「……事前情報では、住民のうち無事な者の退避は終了しているとのことだが」
赤い髪と髭の男、アバルト・ジンツァー(ka0895)は万が一に備え、レオナと同じく魔導トラックを走らせる。その荷台に積まれた医療品などは、この地から逃げられずにいる……かもしれない住人に備えて用意したものだ。
「元凶よりも、まずは目先の仕事だな」
やや彼らから遅れる形で地面を滑るように、魔導アーマー「プラヴァー」の『タロン』で移動していく白髪のドワーフ、ジーナ(ka1643)は緑の瞳で前方に見えてきた村を見つめる。
奥にある山に巣食う歪虚は気になるものの、今はこの地にやってきたエルフの救出が先だと、ジーナは魔導エンジンを吹かせた。
山の麓とあって、この地域にあった地形プログラムで足回りを補強したタロンを操作するジーナはスペルスラスターとスラスターダッシュを併用し、急行していく。
(早く、元の暮らしに戻れますように)
銀髪を持つレオナは避難した住人達が平穏を取り戻せるようにと、小さく祈りつつ、トラックを走らせた。
さらに後ろ、3体のCAMが仲間を後ろから追う。
魔導型デュミナス『Phobos』に乗り、フライトフレーム「アディード」を利用し、飛行して追いかけるのは、黒髪の青年クオン・サガラ(ka0018)だ。
(実戦で少し乗ってそれ以来ですし、それが人型となると……)
クオンはリアルブルーにいたとき、宇宙飛行士の訓練生時代にジェット機を必修科目として運転した経験が多少ある。折角、飛行可能なCAMが用意できたこともあり、慣れないことだからと彼は感覚を掴む為に実戦投入することにしていた。
地上からは、ガルちゃんことガルガリン「スパニヤード」に乗る長身の少女、ゾファル・G・初火(ka4407)が歩を進めている。
事前に得た情報では、山を埋め尽くすほどのリザード雑魔の群れが相手と把握してしまっていた彼女は、操縦席にて嬉々としていた。
「雑魔が集落を襲撃ですか」
こちらは、赤髪のオートマトン、T-Sein(ka6936)。
集落で何か見つかるかもしれないと考えていた彼女も「R6M3a魔導型デュミナス改」……通称オファニム『ヴァルキューレ』に乗ってこの場へとやってきていた。
「よくある話と言えばそうですが、やはりこう実際に現場へと来るとやるせないですね」
カメラを通して見た前方の奥には、雑魔によって荒らされ、無人と化した村がT-Sein(ka6936)にも見えた。
遠目に見ても、明らかに人の営みが感じられない集落。そして、違和感とも呼べるほどにマテリアルが淀んでいるような感覚を覚える。
「……感情は置いといて、まずはエルフと合流しましょう。話はそこからです」
すでに、この地へとエルフのハンターが数人向かっていると言う。T-Seinはそう仲間へと促し、現場となる村へと急ぐのだった。
●
村の上空へと一足早くたどり着いたグリフォン組2人。
「……飛行型歪虚はないよな?」
レオーネは念の為と敵の出現に警戒しつつ、先にこの地にやってきているはずのエルフ達の姿を探す。
空で村の様子を双眼鏡で偵察するざくろ。彼は旋回するように村を見回し、この場にいる敵を確認する。
「視認できる範囲の敵は4、位置は……既に戦ってる人がいるから、ざくろ達で支援に入っておくね」
レオーネの力で通信機器の機能、交信距離を拡張させたトランシーバーでざくろは他のメンバーへと状況、戦況を伝え、すぐさま降下して行く。
地上、集落内では、全長2メートルもあるリザード雑魔3体から逃げる男性エルフ達の姿があった。なお、もう1体が物陰にいたのを、ざくろは見逃すことなくしっかりとチェックしている。
「直にハンターが合流するはずだ」
リーダー、アルウェスが呼びかけつつ、相手へと牽制の一矢を放ち、再び後方へと逃げる。
シャアアァァ……。
他2人、ルイスとドミニクも弓と魔法で応戦してはいたが、リザード達はまるで意に介する様子もなくにじり寄ってくる。
果たしてどれだけ持つのか。アルウェスが脂汗を流すところへ、グリフォンに乗る2人がその場へと飛び込んでいく。
「見つけた! アルウェスさんたちだよな? 応援に来た、このまま援護する!」
レオーネは呼びかけ、仲間達へと正確な位置と戦況を伝える。
「ここはざくろ達に任せて! まずは、後から来る仲間達に状況の説明を頼むよ」
ざくろもはエルフ達へと声をかけた後、向かい来るトカゲ達の前方へと急降下すると同時に風の魔法を纏う。着地の瞬間に巻き起こる爆風はトカゲどもに衝撃と斬撃を同時に与えて、その巨躯を後方へと吹き飛ばしていった。
「ここから先は、絶対通さない!」
敵に向けて叫ぶざくろ。リザードどもはすぐに態勢を整え、再びハンター達へと近づいてくる。
「すぐ仲間たちも合流する! もうちょっとだけ持ち堪えてくれ!」
この後続くはずの仲間達の存在をレオーネもまた示唆し、風の魔法によって発生させた小型の竜巻を雑魔達へと浴びせかけた。
「……わかった」
3人で示し合わせたエルフ達は現状のまま、攻撃を行いながら後退することにしていたようだ。
そこへ、魔導トラック組、アバルトとレオナがやってくる。
トラックに乗車したまま、30mmアサルトライフルでリザードへと射撃を仕掛けるアバルトは、トランシーバーで仲間の状況を確認したまま、敵との距離を維持していた。
一方で、レオナは戦闘の妨げにならぬ位置でトラックから下車し、エルフ達と接触する。
「大丈夫ですか、無理せずトラックの裏に隠れてください」
「援軍、感謝だ」
「これはまた麗しい美女の救援だな」
やってきた同族であるエルフの姿を目にして、アルウェスは笑って返礼し、ルイスが口笛を小さく鳴らす。
「トカゲの動きで何か注意がありましたら、皆に周知を願います」
レオナがさらにエルフ達へと呼びかけると、ドミニクが振るったロッドから氷の矢を飛ばし、アルウェスがハンター達と通信を試みていたようだった。
しばし、交戦するハンターとエルフ。そこへ、魔導アーマーを操るジーナが到着する。
「……間に合ったか」
ジーナもまた、機体をエルフとリザードの間に割り込ませていく。
そこで、彼女はエルフ達からの通信を聞きつつ、魔導レーダー「アイステーシス」を稼動させ、集落の状況把握に努めていた。
シャアアアアアアッ!!
だが、そこへジーナのタロンを狙いに定めたリザード雑魔1体が襲い来る。
トカゲは長い舌で、タロンを縛りつけてくる。その衝撃は少なからず操縦席がむき出しになっているジーナにも及ぶ。
とはいえ、魔神装甲「タイラント・レギス」で自身を包むジーナ。十分に対策を練ってきていた彼女は、後続の到着まで耐え凌ぐことにしていた。
程なくして。
真紅の格闘専用CAM、ガルガリン「スパニヤード」の操縦席から何かを見つけたゾファルはにやりと笑う。
「かわいいかわいいトカゲちゃん、俺さまちゃんのガルちゃんと遊んでくれよ~」
特攻してきた彼女はリザード雑魔をぼてくり回す……つまりは相手をフルボッコにする気満々だったが、目の前の敵はガルガリンの半分もない大きさでしかない。
「ちっちぇートカゲちゃんだなぁ、これは楽勝かんなー」
ゾファルは鎧袖一触、すれ違った敵目掛け、豪快に魔導剣「テルブリンカー」を振り回して狙ったトカゲへと斬撃を浴びせかけていく。
さらに、T-Seinがヴァルキューレで前線に飛び込みつつ、プラズマライフル「イナードP5」を発砲し、トカゲどもを牽制する。
すでに、エルフ達が後ろに下がっていることもあり、ハンター達は雑魔対処に集中し始めていた。
「あまり……、このような光景が普通になっても困るのですが」
クオンは改めて村の惨状を目にして悲観する。ただ、マテリアルと歪虚が表裏一体だとするならば。彼は「Phobos」を操作し、ツインカノン「リンクレヒトW2」を構えて。
「……まあ、やるしかないですね」
そうして、クオンは砲弾を発射し、雑魔へと叩き込むのだった。
●
リザード雑魔はハンター達へと牙を向き、のしかかり、あるいは舌で縛りつけ、殴打を行う。
生身で戦うならば強敵だっただろうが、メンバー達は乗ってきたユニットを存分に活かして応戦を行う。
「これでもくらえ……必殺デルタレイ!」
仲間達が揃うまではと、1体の雑魔の攻撃を引きつけていたざくろ。
彼はホーリーメイス「レイバシアー」で空中に光の三角形を描き、その頂点から光線を飛ばして3体のリザード達の体を貫いていく。
レオーネは仲間との伝達役となりながらも、幻獣の口の噛む動作でしっかりと獣機銃「テメリダーV3」のボタンを押し、トカゲへと銃弾を叩き込んでいく。
敵が列を成して近づいてくるタイミング。ジーナは敵へと有効打を浴びせられるとその一瞬を見逃さない。
「……好都合だ。各部マテリアルエンジン、出力全開!」
スラスターダッシュ、スペルスラスターを合わせて利用したジーナは敵の真横へと位置取り、敵に向かって突撃を繰り出す。
タロンの足元から発するオーラが光の翼を纏ったようにも見えた直後、ついにトカゲ1体が鳴き声を上げて地に倒れ、黒い霧のように爆ぜ飛んでいった。
戦場で暴れていたゾファルもまた、リザード雑魔どもの気を引く。
生身であれば、相手のほうがやや大きい相手だが、ガルガリンを駆るゾファルにとっては小さい相手。
「逃げられないようには注意するジャン」
体格差のおかげで、雑魔の方が小回り効きそうだということもある。その為、ゾファルは油断など一切行わずに立ち回っていく。
流れるように魔導剣「テルブリンカー」で相手を切り刻まんとしていた彼女だが、渾身の一撃を乗せた一撃でさらに襲い掛かる。
「チェストォ!! 斬」
だが、トカゲは素早い。それを飛びのくようにして避けたのに、ゾファルは不適に笑って追撃を行う。
後方からカノン砲を発射して仲間を援護するクオン。その手前で、こちらも射撃を行うT-Seinがトカゲの舌を出来る限り避けようと動く。
いかに高機動のCAMとはいえ、体格差が大きいこともあって避けるのが難しい部分もあり、その衝撃はわずかだがコクピットにも及ぶ。
シャアアアアアアッ!!
ギロリと目を輝かせながらも、自身よりも大きい相手を威嚇しようとするリザード雑魔。
仲間に気を取られている隙に。レオナは敵から距離をとりながらもタロットを使って防壁を展開し、その直後に別のタロットを宙に投げ飛ばし、稲妻を発する。
それに灼かれた1体が全身を焦がし、力尽きてその身を崩していく。レオナの後方にいたエルフ達は、その同胞の姿に思わず見とれていたようだった。
アバルトもまた魔導トラックで距離を詰め、もう1体へとアサルトライフルの弾丸を撃ちこむ。
一撃離脱を心がけるアバルトだったが……、さすがに物陰から近づく敵には対処が遅れてしまう。
「新手、きます……」
「くっ……」
仲間へと呼びかけるレオナ。メンバー達がそちらへと注意を走らせる中、小さく舌打ちしたアバルトはトラックを操作し、この場からの離脱を試みる。
見れば、家屋から壁を壊して新手が1体姿を見せており、こちらへと舌をのばしてきているではないか。
「……あいにくと正面から渡り合うつもりはない。殴り合いたいならば、二足歩行組と存分にやり合ってくれ」
狙われてしまった為、アバルトはターボブーストを使って一気にその場から離脱し、敵を振り切っていく。
家屋の中から、そして、家の陰から飛び出す新手のリザード雑魔2体。おそらく、仲間がハンターと交戦しているのを察して飛び出してきたのだろう。
ハンター達はさらにその応戦を迫られる。いち早くクオンがそちらへと応戦を開始し、全速力で割って入っていく。
飛行の為の時間は限られていることもあり、ある程度低高度にいた彼は確実に敵を叩こうと、その背後からその2体を同時に照準内に入れてカノン砲を発射する。
シャアアアアアッ……!
砲弾でそれぞれその身を貫かれ、痛みに悶えるリザード達。
T-Seinもまた、仲間の索敵情報を活かして動いていた。増援という形で現れる敵を素早く対処せねばと、彼女は魔銃「ダウロキヤ」を構え、敵を撃ち貫く。
「援護は任せてくれ!」
レオーネも新手を自由にさせまいと、すぐさまそちらへと小型の竜巻を発生させて行く。
ハンター達の素早い対処もあり、雑魔達はタジタジになりながらもにじり寄ってくる。
思った以上に体力のある相手だが、すでに2体倒していることもあり、ハンター達は変わらず敵の対処を続けて行く。
「超機導パワーオン! 弾けとべっ」
新手を仲間に任せていたざくろは、エルフ達の守りからそのまま応戦を続ける。のしかかろうとしてくる敵を、ざくろは聖盾「コギト」で弾き飛ばそうとする。
シャ、アアァァ……。
態勢を崩したリザードは、息がかなり切れてきていた。
ようやく追い込んだ相手へ、ざくろは懐中時計「星読」へと増幅したマテリアルを込めて。
「超機導機関フル出力、すべてを凍てつかせ機導の力、ハイパーフリージングレイ!」
彼は前方へと青白く輝く冷凍光線を発射する。
それによって、刹那凍りつくリザード雑魔。そいつは完全に動きを止め、砕けるように散っていった。
さらに、その光線は新手の1体も捉えていた。その身を硬直させた敵へ、ジーナが飛び込んでいき、猛然と引き出した野生の力を魔導アーマーへとトレースし、雑魔へとラッシュを打ち込んでいく。
徐々に戦意を失いかけていたリザード雑魔。ハンター達に背を向けた瞬間を、戦いの最中にエルフから情報を得ていたゾファルは見逃さない。
ガルガリンの手にする魔導剣は敵の体へと深々と突き刺さり、貫通する。
シャアアアア…………。
それに耐え切れず、リザード雑魔は叫び声を上げて爆ぜ飛んだ。
「やっぱ、楽勝だったジャン」
ゾファルは満面の笑みを浮かべ、残りの敵の掃討にかかる。
すでに、最後の1体は仲間達が追い込んできていた。
レオナは仲間達へとタロットを飛ばし、仲間達が敵に対するイニシアティブを取ることができるようにと援護する。
それを受けたのは、真っ先に新手へと飛び込んでいたクオンだ。
白兵戦に臨んでいた彼はリザードの舌を受け止めながらも、試作CAMブレード「KOJI-LAW」でそいつの体を寸断する。
シャアアアアアァァァ……。
真っ二つに切り裂かれたリザードは身悶えすることすらできず、この世から姿を消していったのだった。
●
5体のリザード雑魔を倒したハンター達はエルフ達と一度合流し、改めて落ちついた状況で話を始める。
「よく戦えてたよな、あのでっかいの相手に」
「お前達の乗ってきた物の方が大きいじゃないか」
レオーネは消え去ったリザード雑魔を指してエルフ達へと話すと、皮肉屋のルイスがそう言葉を返す。
多少は場が和む一行だったが、村の状況を見れば、笑ってばかりもいられない。
「村にいたのは、こいつらで全部なのかな?」
「そのはずだ。一通り確認はしたからな」
さらに、レオーネがアルウェスと村の状況確認をし、それを情報共有したメンバー達は村の探索を始める。
レーダーを全開にしつつ、辺りを調べるクオン。ゾファルも仲間の助けを得て、残党がいないかと索敵を行う。
レオナはマッピングセットを使い、簡易地図を作りながら呟く。
「山の歪虚の気配がなくならないうちは村へ帰れませんね」
この場所の雑魔を倒したところで……。前にそびえる山からは異様な雰囲気が漂っており、住民達が安心して生活できる状況には程遠い。
「そうだな……」
同行するアルウェスが相槌を打つ。レオナはエルフ達と一緒に行動し、パルムのアイリや、犬のアニーに周囲の警戒を任せつつ、民家を1軒ずつ回っていた。
「やはり……か」
状況的に生存者は絶望的だろうと、レオーネも踏んではいた。
思っていたとおり、集落の所々に雑魔に襲われたと見られる遺体がいくつかあり、メンバー達は1体ずつ回収していくことになる。
(心境的なのもあるし、剣機の時みたくアンデッドにされたりするとまずいからな)
レオーネはその輸送に当たり、まずはアバルトへと頼むことにする。
「すいません、よろしくお願いします」
「……生き残っているかもしれないという微かな希望を持っていたんだが、やはりか」
アバルトはそれらの遺体を布でくるみ、ざくろ、クオンらと丁重に輸送し、自身のトラックの空いたスペースに載せて行く。ジーナも「カスタムタイプ:ストーク」を活かした操縦で、慎重に遺体を回収していた。
――運んできた医療品などが無駄になってしまった。
回収した12人の遺体を見下ろし、アバルトは考える。軍人時代には何度も経験したことだが、やはりやりきれないものがあると。
「仇は取ったからね」
「お疲れ様でした」
手合わせするざくろ。移送を手伝っていたT-Seinも黙祷を捧げてから、仲間に労いの言葉をかける。彼女はそのままオファニムの上に登り、しばらく何か思うことがあったのか遠方を見つめていた。
「この遺体を、速やかに遺族や知り合いの元へ返してやるべきだろう」
アバルトはそう仲間へと伝え、さらに提案を続ける。
「幸か不幸かこの集落に人は居ないのだし、詳細な調査は次回に持ち越しても良いのではないか?」
ある程度、探索を行い山に歪虚らしき影がいるのは間違いないと皆確信する。だからこそ、アバルトも早期の撤退を提案した。
途中まで仲間のボディガードを買って出ていたゾファルは自身のガルガリンのそばで昼寝をしていたが、やはり彼女も他の敵の存在には気づいていたようだ。
「そうだな。正直言って居心地の悪い場所に長居は無用だ」
ジーナが同意し、他のメンバーからも異論は出ない。撤退が決まれば、メンバー達は手早くこの場から離脱準備を整えた。
「アルウェスさん方もよろしければ、トラックにどうぞ」
レオナはそうして、エルフ達に自身の魔導トラックに乗るよう促す。皆がユニットに乗り込んだところで、ハンター達は一斉にこの村から離れていった。
住民が安心できる状況には程遠い。
再び雑魔の掃討作戦が展開されることを信じ、メンバー達は避難した住民がいるはずの古都「アークエルス」を目指すのである。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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作戦相談 レオーネ・インヴェトーレ(ka1441) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/10/26 18:37:14 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/10/23 17:52:59 |