霧中のゲリラ戦 ~騎士アーリア~

マスター:天田洋介

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
普通
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/11/09 22:00
完成日
2017/11/17 17:49

みんなの思い出

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オープニング

 グラズヘイム王国の南部に伯爵地【ニュー・ウォルター】は存在する。
 領主が住まう城塞都市の名は『マール』。自然の川を整備した十kmに渡る運河のおかげで内陸部にも関わらず帆船で『ニュー港』へ直接乗りつけることができた。
 升の目のように造成された都市内の水上航路は多くのゴンドラが行き来していて、とても賑やかだ。
 この地を治めるのはアーリア・エルブン伯爵。オリナニア騎士団長を兼任する十七歳になったばかりの銀髪の青年である。
 前領主ダリーア・エルブン伯爵が次男である彼に家督を譲ったのは十四歳のとき。すでに闘病の日々を送っていた前領主は、それからわずかな期間で亡くなっていた。
 妹のミリア・エルブンは幼い頃から政において秀才ぶりを発揮している。
 事故と発表された長男ドネア・エルブンの死因だが、実は謀反に失敗して命を落としていた。そのドネアが歪虚軍長アスタロトとして復活。謀反に関与していた元親衛隊の女性ロランナ・ベヒも歪虚の身となって現れた。
 兵器輸送のゴンドラの沈没事件、領地巡回アーリア一行襲撃事件、穀倉地帯における蝗雑魔大量発生等、アスタロト側が企んだ陰謀は、ことごとくハンター達の力添えによって打ち砕かれる。だがこれらの陰謀には搦め手が存在し、ネビロスは運河の湧水個所を狙っていた。歪虚アイテルカイトの尊厳をかなぐり捨てたネビロスだったが、騎士団とハンター達の前に敗北して最後の時を迎える。
 勝利に沸く城塞都市マールの民。アーリアが喜んでいたのも事実だが、振り払ったはずの兄への気持ちは心の奥底でかすかに残った。
 マール城にアスタロトから晩餐への招待状が届き、アーリアはその場へと赴く。そこでのアスタロトの発言はわずかな同情も引いたものの、傲慢に満ちあふれていた。
 不意に転移してきたTNT爆薬の処分についても、ハンター達の尽力によって解決へと導かれる。


 ある日、伯爵地ニュー・ウォルターの北東部に大量の水が溢れだす。ハンター達の協力によって周辺住民の避難は完了。そして湖と化した大地の中央に、突如として城が浮きあがった。
 湖中央に聳える城の上空では、常に歪虚や雑魔が舞っていた。兵や民といった誰もが口々に噂する。あの城の主は歪虚軍長アスタロトだと。
 湖出現からこれまで三度の戦端がひらかれたものの、一進一退の状況でアスタロト側の護りは厚い。陸路で船を湖へと持ち込んだものの、敵城の小島まで辿り着くことは叶わなかった。すべて湖に沈められてしまう。
 湖は歪ながら直径三km円といった広さ。水深は一番深いところで十メートル前後といったところ。アスタロト城は直径六百m円の小島に建てられていた。
 調査結果、様々な事実が判明する。湖底に沈んだ施設を休憩所として、水棲雑魔が哨戒任務をこなしていた。上空からは鳥雑魔が目を光らせている。
 ハンター達はそれらを退けて、投石機の破壊を完遂した。おかげで領地混合軍は、城聳える小島へと上陸を果たす。
 またハンター達がキグルミ姿でA城壁の向こう側へと潜入。罠の存在を明らかにしてくれたおかげで、有利な作戦が立案される。
 突入作戦は順調に推移したが、アスタロト急襲という形の反撃を受けた。ハンター達による奮闘によって、アーリアは命は守られたのだった。


 瞬間移動によって、いつアスタロトが現れるかわからない状況は、アーリアの自由を制限するのに充分な効力があった。急襲こそ成功しなかったものの、脅迫という意図でのアスタロトの目的は達成されたといえる。
 領地混合軍は現在、A城壁とB城壁の狭間を手中に収めている。後はB城壁を突破して城攻めといった段階だが、予期せぬ事態に足止めを食らっていた。
 時間帯によっては湖全体を覆う濃霧によって、三m先すら視認できない状況が続いていたからである。
 別のテントに移された本陣にて、アーリアは作戦会議を開く。到着したばかりのハンター一行にも席は用意されていた。
「何かしらの作為も疑ったが、まず間違いなく濃霧は自然現象だ。土地の気候と湖によって引き起こされたと結論づけられた。これが歪虚の仕業であれば、やりようがあったのだが――」
 アーリアは最近出没し始めた敵についても言及する。
「この濃霧を想定したのか、それとも偶然かはわからないが、蜥蜴雑魔の中に特殊な存在がいるのだ。城を構成する石材に擬態し、さらにめくらましとして周囲に霧を漂わせる能力を併せ持っている。我々は仮に『忍び蜥蜴』と呼んでいるこいつらは、深い霧に包まれた制圧したはずの城壁狭間の地域で、ゲリラ戦を仕掛けてくるのだ」
 アーリアに続いて臣下の騎士からの報告が行われた。騎士、兵士のどちらにも死傷者がでている。霧がいつまで続くかはわからないが、現状を放っておくわけにもいかない。
 アーリアはハンター達に忍び蜥蜴の退治を望んだのだった。

リプレイ本文


 午前中の会議が終わり、ハンター達は一緒に昼食を取りながら話し合う。
「特殊個体の雑魔か……。数がいればもっと有効な手段を打ってくるだろうし、そう多くはなさそうだが。兎も角実態が掴めない以上は確実に排除していかないと」
「この間は好き勝手やられたからな。今度こそこちらのペースを取り戻そう」
 ヴァイス(ka0364)とロニ・カルディス(ka0551)はスープを飲む手を止めて二人で呻った。
(霧の中………はぐれちゃったら大変なんだよ。 はっ!!、これはこれはさりげなくひりょさんと手をつなぐチャンスでは!!)
 パンを口に咥えていた弓月 幸子(ka1749)が、横目でちらりと鳳凰院ひりょ(ka3744)を眺めた。
 鳳凰院は真剣な眼差しで鮭のムニエルにフォークを突き刺す。(こちらから打って出なければ、味方の被害が増えるばかりだな)と心の中で呟きながら。
「濃霧の発生、あるかもしれませんね。アスタロトは、狙っていたのかもしれませんね」
 ミオレスカ(ka3496)が会議で行った質問に、騎士の一人が答えてくれている。現地人よれば、湖出現前存在していた川から以前より霧が発生していたという。それが湖になって大規模になったようだ。
「たまに戦争に参加して歪虚や雑魔とガンガン殺りあいたい時ってありませんかぁ? 島ではしてやられちゃいましたしぃ、欲求不満だったんですよねぇ」
 星野 ハナ(ka5852)はデザートのケーキを満面の笑みで食べ始める。
「今なら明るいし、霧の薄い状態みたい。犠牲者が襲われた辺りを調査して、足跡等の敵の痕跡が残されてないかな? それに襲撃地点の特徴がないか調べておければ思うんだよ」
 時音 ざくろ(ka1250)の言葉を切っ掛けにして、班構成が正式に決められた。
「私は合図のために呼子を用意してもらったの」
 ディーナ・フェルミ(ka5843)は自らの意見を述べた上で、仲間の意見をメモ帳に書き込んでいく。A班はロニ、ヴァイス、星野ハナ、時音。B班はディーナ、ミオレスカ、弓月幸子、鳳凰院と決まった。
 食事が終わってまもなく、二つの班は霧に覆われた城壁間を巡回し始める。ディーナは拠点に残った。救護所で傷兵を手当しながら、襲撃時の状況を教えてもらうために。
 霧は確かに視界を遮っていたが、陽光のおかげなのか一五メートル程度までは見通せた。哨戒任務の兵士や騎士から事情を聞いて、襲われた際のパターンを洗いだしていった。
 事前の情報通り、忍び蜥蜴が出没するのは、ほぼ十割の確率で視界不良が酷い日である。
「誘き出すにしても、わかる事が増えればそれだけ危険を減らせると思って」
 A班の時音は明るいうちに忍び蜥蜴の痕跡を探す。過去に起きた襲撃地点を調査して、共通点を探そうとした。それらしき足跡は確かに残っていて、そこから身長や体重を推測する。一般的な蜥蜴雑魔よりも頭二つ分、小柄だと結論づけられた。
「これ着ていると、どうでしょうか?」
 霧の中、B班ではミオレスカが所有するフォッグクロークの効果が確かめられる。
「視にくいのは確かだよ」
「俺もそう思う」
 弓月幸子と鳳凰院が賛同してくれた。忍び蜥蜴が同様の効果を発揮できるのであれば、普段から見えにくいはず。巡回の際にはその点を考慮に入れる必要があった。


 巡回は暗闇と霧が重なる夜間に行われる。一日目の深夜零時過ぎ。A班が北西の周辺を歩いているときに、霧がより濃くなっていく。
「一寸先は闇と霧か……。これだけ霧が濃いと奇襲を受けた場合は、かなり致命的になりかねないな」
 ランタンを掲げたヴァイスが呟いた。間近を歩いている仲間達の顔が、ようやく判別できる程の霧の夜となる。
(きゃーきゃーきゃー、企んでなかったのにこっちの班は男性ばっかりですぅ! 気分が盛り上がりますよぅ)
 心の中では浮かれながらも、星野ハナはきりっとした表情で任務に当たっていた。ロニの見つめる視線にドキッとしながらも、その意味は理解済み。囮役として、わざとA班から一人ではぐれる合図だ。
(ホシノ、今ざくろ達の絆は結ばれた!)
 時音はファミリアズアイで視界共有したモフロウのホシノを、ロニに同行させる。疲れたふりで石柱にもたれて、ロニ周辺の状況を見守った。
「おい、どこだ?」
「一人は危ないですよぉ?」
 ヴァイスと星野ハナは慌てた様子で、ロニを探す縁起をし続けた。
(気配は感じているのだが、隠れているのか?)
 その頃、ロニは壁沿いに立って耳を澄ませる。魔導ヘッドライトが照らす空間は真っ白な闇。胸元に忍ばせた無線機は、送信側で入れっぱなし。
 視界不良の状況下、小石が転がったような音が耳に届いた。敵だと察して、ロニは無線機を指先で軽く三回叩く。事前に決めたA班集合の合図である。
 突如霧中から現れた刃を避けて、ジャッジメントを発動。ディーナから渡された呼子笛を思いっきり吹いて、仲間達に自身の位置を知らせた。直後、狙撃の銃弾が兜を掠めて石畳の道に銃痕を残す。
(今のところ二体は確実だが、他にも隠れているのか? まさか忍び蜥蜴は俺達と同じようにパーティで行動とは)
 柱の裏に隠れたロニは狙撃の敵も巻き込むつもりで、レクイエムを唄う。モフロウが頭上を旋回している最中、仲間達が駆けつけて攻勢に転じる。
「まとめて屠るからね」
 視界共有を解いていた時音は、ロニの盾になるようにな位置取りで、デルタレイの光条を放つ。蜥蜴雑魔二体を貫いて、振るうメイスで止めを刺した。手の甲につけた灯火の水晶球で状況を確かめる。
(一瞬の隙が命取りか)
 ヴァイスはエルヴィン・アローで参戦。敵が見えた瞬間に矢を放ち、次に備える。出会い頭の戦いによって急速に精神が削られていく。忍び蜥蜴も然る者で、背後からの不意打ちを何度か決められた。味方と鉢合わせのときは、より心臓に悪い。
「これならどうですかぁ?」
 星野ハナは霧の向こうに多くの影を見かけて、地縛符を打った。移動を阻害できたのは蜥蜴雑魔四体。デルタレイで三体を仕留めて、絶火弩でもう一体を始末する。
 忍び蜥蜴と思しき二体は、現れては消えてを繰り返していた。霧を増加させて煙に巻き、さらに目眩まし。周辺の建築物に使われてる石材に擬態して見分けが付きにくい。
「擬態がわからないのなら、こうすればいい! 制圧射撃行くぞ!」
 ヴァイスがロニを護りながら、壁面に向けて等間隔に矢を放ち続ける。攻撃としての意味はなさなかったが、その後に効果が発揮された。擬態は銃痕を再現できずに、砕けたはずの部分が真っ新になっている。
「そこにいたんだね!」
 擬態を見破った時音が聖盾で忍び蜥蜴の剣戟の一打を受けきった。そしてメイスの霊魔撃で倒しきる。
「隠れているのならば、正々堂々と出てこい!」
 セイクリッドフラッシュによる光の波動で、ロニは眩しく輝いた。動きを鈍らせた忍び蜥蜴が霧の中から薄らと浮かびあがった。
 ほんの一瞬だったが、星野ハナは見逃さない。離れた位置の敵をデルタレイの光条で仕留めきる。
「少し手間取ったが、大した被害もない。うまくいったのではないか?」
「そうだな。この経験を元にして、忍び蜥蜴への対処法を磨いていこう」
 ロニとヴァイスは倒した忍び蜥蜴に近寄って確かめる。敵は領地混合軍から鹵獲と思しき武器を携帯していた。
「一般的なものならましだけど、特殊な装備だと厄介かもね。注意しないと」
 時音が塀の上にのぼり、少し薄らいだ霧の向こうを眺める。
「準備万端なので毎日カムヒアですぅ。全ブッコロしてあげますよぅ」
 星野ハナは戦いの手応えがあったようで、満足げな笑顔を浮かべていた。
 霧中での戦いを重ねる度に、対処が洗練されていく。A班における一週間の成果は、忍び蜥蜴九体、蜥蜴雑魔二十五体となった。


 開始から三日目までにB班が遭遇した敵数は四体に留まった。
 そこで四日目夜からの、新たな施策が発案された。これまで敵側に有利すぎて除外してきた迷路区画に立ち入っての、おびき寄せ作戦を決行したのである。
(ほんの少しの油断で、大変なことになりそうなの)
 兵士の恰好に扮したディーナは、口に呼子笛を咥えながら歩を進めていく。キョロキョロと辺りを見回し、同じ道を何度も通り過ぎて、迷子になったのを演出する。
 夜が更けるにつれて霧が濃くなっていき、灯りが届く範囲が真っ白に乱反射。目隠しされているのと大して変わらない状況に陥った。
 道沿いの広葉樹の横を通り過ぎようとしたときに、ディーナは妙案を思いつく。木の根元に立って、両目を閉じて耳を済ませる。
 すでに嫌な雰囲気が漂っていた。
 地面や石敷の道には、風に吹かれてたくさんの枯れ葉が散らばっている。小さいながら明瞭な、複数の枯れ葉が砕ける音が耳に届いて、ディーナは思いっきり呼子笛を吹き鳴らす。即座にセイクリッドフラッシュによる光の波動を周辺に浴びせかけた。
 無線での連絡も交えつつ、四回目の光の波動を発した際に仲間達が駆けつけてくれる。
「続けて撃ちます! これ、当たっても平気ですから!」
 ディーナが叫んですぐに、通りの横壁へ沿いながら輝きが飛んでいく。魔導拳銃に込められた曳光弾の効果だ。輝きの繰り返しだが、雑魔やその影が夜霧の世界にわずかだが浮かびあがる。
(虹色に輝く刀身なら、この霧の中でも少しは目印になるかもしれないな)
 鳳凰院は名刀「虹」を頭上に掲げながら衝撃波を放つ。わずかな間だけだが、霧が押しのけられて周囲の視界が広がった。
 曳光弾との合わせ技で目視できた忍び蜥蜴へと急接近。銃撃を避けながら相手の懐に入って、刀で袈裟斬りに。その刹那、虹色の残像が霧中に軌跡を描く。
(さすがにフォグライトみたいにはならないか。でも少しは見えやすくなったはず)
 リトルファイアを宙に浮かべた弓月幸子は、次に鳳凰院へとウインドガストをかける。そして曳光弾で浮かびあがった蜥蜴雑魔の群れに向けて、ライトニングボルトの稲妻を走らせた。
 想定していたよりも多くの雑魔がこの周辺に潜んでいる。殲滅対象の忍び蜥蜴だけでなく、蜥蜴雑魔も続々と現れた。
(霧が自然現象なら、雑魔はどうやってこっちを……。見えないのなら、きっと音に頼っているんだよ)
 弓月幸子も枯れ葉を踏む足音に気づいた。戦う際の派手な足音は除外し、誰もいないはずの方角からの音を聞き逃さない。
「この方角だよ!」
「了解です!」
 LEDライトの投光で指し示しながら、遠隔攻撃のミオレスカと連携。霧中から現れた忍び蜥蜴の額へと高加速射撃の銃弾が命中。一発で仕留めきった。
 背後から迫った忍び蜥蜴からの攻撃を、鳳凰院は守りの構えで凌ぎきる。隙を作ったように見せかけて、カウンターアタックで忍び蜥蜴を仕留めた戦いもあった。
 ミオレスカが燐光を散らしながら、忍び蜥蜴の不意打ちに耐えきる。銃撃で敵の頭部を吹き飛ばして、ホーリーヴェールをかけてくれたディーナに礼をいう。
 視界不良な状況での混戦のために、誰も無傷とはいかない。ディーナは適宜セイクリッドフラッシュで雑魔達を威嚇して、傷ついた仲間をフルリカバリーで癒やしていった。
「これで……終わったようですね」
 大きく深呼吸をした鳳凰院が鞘へと刀を仕舞う。足元には倒した雑魔がたくさん転がっていた。
「フォッグクロークに似た能力も持っていそうですが、やはりスキル的な能力の組み合わせのようですね」
 ミオレスカは倒した忍び蜥蜴の身体で隠密の原理を検証。擬態については対策を思いつく。派手な色水をかけてしまえば、紛れることは難しくなる。アーリアに高性能な水鉄砲を手配してもらい、その後の戦いで活用することにした。
「ここならA班に無線が届くかも知れませんの」
 ディーナは報告のために無線機を取りだす。その晩のA班側には一体も敵が出現しておらず、どうやらB班側に片寄ったようである。
 帰還の際にも霧は濃くなり、辺りが見えにくくなった。
「俺から離れるなよ」
「うん。はぐれないようにするんだよ」
 しっかりと鳳凰院と手を繋いで、弓月幸子は拠点に帰る。
 B班の一週間における戦果は、忍び蜥蜴十一体に蜥蜴雑魔十八体。
 最終日は霧が濃かったのにも関わらず、A班B班とも敵との交戦はない。蜥蜴雑魔は別として、不意打ちが得意な忍び蜥蜴は、これで出尽くしたと考えられた。


 小島から立ち去る前日、ハンター一行はアーリアと面会した。すでに書面での報告は終えていたが、別れの挨拶も兼ねて口頭で伝える。
「おかげで忍び蜥蜴出現の報告がなくなり、兵や騎士達の被害が減少した。ありがとう」
 アーリアからの感謝として、消費した分のアイテムが補充される。最後にディーナがアーリアと話した。
「軍議に関わることに、口を出すのはお門違いだと分かっているの。でも、アスタロトには転移があって、どこでも飛んできてしまう可能性があるのなら城壁攻略以降は、私達と一緒に最前線で戦った方がいいかもしれないと思うの」
「どこにいても危険ならば、前線こそが安全という考え方か……。確かに一理ある」
 しばし考えた後でアーリアは答える。
「ドネアさんは傲慢だから。見える範囲に貴方が居ると分かっていて、妹さんや他の場所を襲う可能性は少ないと思うの。それに、私達が居て貴方に大怪我させるなんて絶対させないから……ちょっとだけ、考えておいてほしいの」
 そう言い残して、ディーナは仲間達と退室していく。
「城壁を攻めれなかったのは残念だけど、あれを倒したのはきっと意味があると思うんだよ」
「城の奥に潜まれていたのなら、もっと厄介な存在だったかも知れないな」
 湖を渡る船の甲板で、弓月幸子と鳳凰院はアスタロト城が聳える小島を望んだ。
「視界が悪いと精神的にも辛いものがあったな」
「そうした意味で、隙を突かれた兵や騎士も多かったことだろう」
 ヴァイスとロニは船室で軽食を頂きながら、一週間のことを思いだす。
「存分にブッコロできて、楽しかったのですよぅ」
 星野ハナは小島に向けて手を振っていた。
「ホシノのおかげで助かったよ。囮の居場所がすぐにわかったし」
 時音は肩に乗っているモフロウの頭を撫でる。
「城が現れた時から、懸念はしていましたが、想像以上の激戦になりましたね。これ以上、犠牲者が増えなければいいのですが」
 ミオレスカは小島を見つめているディーナに話しかけた。

 霧の日々はそれからも続いたが、永遠に続くはずがない。領地混合軍は総攻撃の準備を着々と整えていた。

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • デュエリスト
    弓月 幸子(ka1749
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 霧の中の刺客を撃破せよ!
ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
人間(リアルブルー)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/11/09 12:45:17
アイコン 【質問】教えてください
ミオレスカ(ka3496
エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2017/11/09 19:33:35
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/11/07 11:39:14