山巣食う歪虚の勢力圏は

マスター:なちゅい

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~7人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/11/13 22:00
完成日
2017/11/19 18:22

みんなの思い出

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オープニング


 グラズヘイム王国。
 クリムゾンウェストの半島尖端に位置する国家。王都イルダーナを中心とした千年王国なる名を冠する大国だ。
 現在、王国は西部の歪虚との交戦に尽力している。
 北西にある北萩の島「イスルダ島」を歪虚から奪還すべく、王国は騎士団を中心に戦力を送り込んでいた。
 ただ、それでも戦況は良いとは言えない。それもあって、王国内の中で発生している歪虚、雑魔に対処できないことも多々ある。

 国土の大半が平野となだらかな丘陵からなるグラズヘイムにおいて、王国北東部は珍しい山岳地帯である。
 その中のとある山に歪虚が住み着き、麓にまで雑魔が勢力を伸ばしてきていた。
 ハンターズソサエティの依頼を受け、3人の男性エルフが山の麓の集落にて、雑魔との交戦を繰り返している。
 討伐以来を受けたハンターが駆けつけることはあれど、クリムゾンウェストには多くの依頼が出回っており、なかなかこちらに割く人手も出せぬ状況。
 無人となった麓の集落で防壁を築くエルフ達は攻め来る雑魔と一進一退の攻防を繰り広げながらも、山に巣食う歪虚を牽制することしかできないでいた。
「これでは、さすがに山を登るとはいかないな……」
 エルフのリーダー、猟撃士のアルウェスが溜息をつく。
「日々の食事には事欠かないが、硬直状態なのはたまらんな」
 同じく、猟撃士のルイスが悪態づいた。
 マテリアルに敏感なエルフ達は、負のマテリアルとずっと接し続けるのは苦しい。生活の糧は得られども、日々ストレスと隣り合わせといったところか。
「……そろそろ、進展が欲しいところですね」
 魔術師のドミニクがぼそりと、他2人に訴えかける。
 ハルトフォート砦などは長期の間歪虚との攻防を続けていたというが、こちらには身を守る為の砦などありはしない。雑魔が群れをなして襲ってくれば、この集落なぞ放棄する他ない。
「せめて、敵の戦力がわかればな……」
「逆サイドもどうなっているか、気になるところだな」
 そういえばと、エルフ達は考える。
 王国内にあるこの山から古都の方向……南西側は雑魔を抑えてはいるが……。
 山岳地帯の北東側はそれほど距離を置かずして湖に接しており、その手前に1つ漁村があったはずだが……。
「できるなら、早いうちにハンターソサエティに増援を依頼して、調べておきたいな」
 アルウェスはそう考え、増援に訪れていた別のハンターに救援依頼を提出を願うのだった。

リプレイ本文


 グラズヘイム王国北東、山岳地帯。
 集まったハンター達は改めて事情を聞き、様々な思いを口にした。
「懸念事項は増えたが、見過ごせる話ではない」
 先日、山の麓にある集落での雑魔退治に参加していたジーナ(ka1643)。その際、被害に遭って命を落とした人々を弔ってきている。
「死者は安らかにあるべきで、救える命は救う。近隣に生存する村があるなら、助けるのは当然の話だ」
 現在、彼女は仲間達と共に、その時と同様に魔導アーマー「プラヴァー」、タロンでその集落へとやってきている。今回はかなりの距離を歩くことになる為、地形判定プログラムでプラヴァーの足回りを補強することも忘れない。
「こっちも大変そうね」
 やってきたカーミン・S・フィールズ(ka1559)は、グリフォンに騎乗しての参加。ハルトフォート砦防衛にも彼女はこのグリフォンと共に参加していたと言う。
「戻ったら戻ったで、本土もヤバいじゃん……。ほんと、どっからこんなに湧いてくるんだろ?」
 こちらは、王国北西、イスルダ島奪還戦に参加していたウーナ(ka1439)は、オファニムタイプ『Re:AZ-L』に搭乗してやって来ていた。
 調査メインの依頼ということで、搭乗タイプのユニットを持ち込むメンバーが多い。
 オファニムは移動速度に難がある反面、火力は充実している。交戦は避けられぬ状況である為、『Re:AZ-L』は大いに活躍してくれることだろう。
「……調査依頼か。聞いたところによるとリザードが生息しているとのことだが」
 こちらも、グリフォン『月影』に乗ってきていた榊 兵庫(ka0010)。
 自身に何ができるかと常に考える兵庫は、この依頼でもなすべきことを見つけたようで。
「敵についての情報収集は重要だからな。俺も尽力させて貰おう」
「こっちはリザードの雑魔? 強欲系の歪虚? ま、それも調べるのも今回のお役目よね」
 カーミンはそんな想像を巡らす。依頼としては敵の活動領域の調査だが、それが分かれば文句なしと言える。
「大量の蜥蜴雑魔ですか……」
 こちらも、ワイバーンのシエルに乗って参戦のヴァルナ=エリゴス(ka2651)。
 雑魔が単に群れているのか、それとも指示を出す何者かがいるのかで対応が変わる、とヴァルナは考えを口にしていたが。
「いずれにせよ、巣を見つけない事には終わりは見えませんね」
「この山岳地帯は同盟との国境にも近いからな。街道が封鎖でもされたら商売人も困るってもんだ」
 自由都市同盟出身のジャック・エルギン(ka1522)は、イェジドの「フォーコ」を駆ってやって来ている。故郷に近づく脅威を黙って見てはいられなかったのだろう。
「早く終わらせる為にも、しっかり調べておきませんと」
 ヴァルナはこの事態の収拾の為、できる限りの敵情報の把握をと意気込みを見せていた。
 また、魔導トラックを集落に停めていたレオナ(ka6158)は、集落に詰めて作業を行うエルフ達と接触して彼らの懸念事項を確認して行く。
「大本の対処をしない限り、この前線も動かないというわけですね」
 ある程度状況を把握したレオナは、エルフ達に薬が必要かどうかと尋ねた。
「申し出は嬉しいが……」
 しかし、彼らもハンターにそんな負担を強いることはできないと、その申し出を拒否する。
 だが、見かねたカーミンがそこにやってきて、砦なき砦での戦いを繰り返すエルフ達へと強引にヒールポーションを手渡す。
 人が死ぬのは嫌だと感じたからこそ、彼女はエルフ達を放っては置けなかったのだ。
「疲れも溜まってるんだろうし、無理はしないで」
 その上で、カーミンは仲間と共に仕事に取り掛かり始める。
「なるべく早く戻りますので」
 レオナはエルフ達へと声をかけ、魔導トラックへと乗り込んでいった。


 さて、移動を開始するメンバー達はユニットと共に集落外に一旦集まる。
 歪虚が巣食う山は集落の前方にそびえているわけだが、一行は勢力図を調べるべく、その山の麓を北東まで麓を回りこんで移動することとなる。
 問題は左右どちらから回り込むか、だが。
 エルフ達は森での戦闘に長けてはいるのだろうが、退路となる南側の雑魔相当も兼ねてとカーミンのみ右側ルートを主張する。
 だが結局、ジャック、レオナなどの意見もあって、一行は多数決で左ルートを迂回して行くことに決めた。
「さて、荒っぽくなる事必至ですが、空の旅と参りましょうか、シエル」
 一声嘶くシエルは、ヴァルナを乗せて飛び上がる。
「んじゃ出発するか。頼むぜ、フォーコ」
 イェジドの背をぽふぽふと叩き、ジャックはその背に跨った。
 そのジャックと、魔導トラックを運転するレオナ、助手席のカーミンが先行する。
 ジャックはフォーコに浮遊、移動を任せ、時折双眼鏡で眺めつつマッピングを行う。イェジドにも嗅覚を活かして敵の出現を警戒させていた。
 カーミンもトラックを操縦するレオナの提案を聞きながら、マッピングセットでしっかりと地図を作成する。魔導カメラで地形の撮影などして、できる限り詳細な資料作成に努めていた。
 なお、彼女は同伴していたグリフォンをトラックについてこさせる。戦闘態勢だけは取らせぬようにした上で、それ以外は自由にさせていたようだ。
 基本、レオナは運転に集中する形だが、外にパルムのマイリを出し、できるだけ範囲で情報を集める。
 メンバー達は斜面に散見される屯す雑魔の群れを見ながら、先へと進むことになる。……高空で飛来する影が見えたのは、気のせいだろうか。
 それよりやや先を行くのは、兵庫、ジーナだ。
 2人はトランシーバー、魔導スマートフォンといった通信機器のチャンネルをオープンにしつつ、それぞれの手段で調査に当たる。
 魔導アーマー「プラヴァー」のタロンに乗るジーナはその足を活かし、仲間から先行する。搭載した魔導レーダー「アイステーシス」を全方向に働かせ、ジーナは情報収集に努めていた。
 兵庫はグリフォン、月影に騎乗し、飛翔の翼を使って空から偵察を行う。
 双眼鏡を覗きこむ兵庫。山にはちらほらとリザード雑魔の姿が見受けられるが、さすがに遠い。
 それについては、同じく上空をシエルで舞う後続のヴァルナも双眼鏡で確認していた。彼女も調査という認識の為に手を出さずにいる。
 また、斜面には木々に紛れ、巨大な敵の姿が見えた。それに、ヴァルナは驚きを隠せない。
「あれは……」
「こりゃまた……」
 兵庫もその姿を捉えていた。中には、事前情報にない6、7m級の雑魔の姿も……。
 残念ながら、歪虚の姿をヴァルナも兵庫も確認できなかった。自分達と同じ大きさで見えないのか、それとも不在なのか……。
「前方に注意を!」
 その時、ジーナの声がして前方に目を向けるハンター達。
 そこには2体のリザード雑魔が山から降りてきており、のそりのそりと自身の活動領域を広げようとしていた。
「チッ、南を抑えてる分がこっち側に出てきたかよ」
 地を駆けるジャックは先行班として、移動を優先させたいのだが……。
 一行は十分に余力のある状態。しかも、後続のことを考えれば、進路の妨げとなるため叩いておきたいところ。兵庫、ジーナの2人はその排除の為に飛び出していく。

 相手は2体。
 全長2mほどのリザード雑魔どもは、ハンター達を見つけて素早くにじり寄ってくる。
「穴を開けるのは得意だ。タロン、各部マテリアルエンジン全開!!」
 加速を高めて全身するジーナは、魔導エンジンを十分に稼動させる。
 脚部ローラーから発するオーラはまるで、光の翼を纏ったようにも見えた。
 そして、髪と瞳に淡いマテリアルの光を帯びさせたジーナは目の前の雑魔目掛けて接近し、炎の如きオーラを叩き込んでいく。
 直ぐ後ろのレオナが運転する魔導トラック組は迂回して敵を避け、フォーコに乗るジャックもまたこの場を素早く駆け抜けて、この場をやり過ごすことにする。
「お願いします」
 レオナは仲間達に告げ、トラックを走らせる。イェジドもそれに続いた。
 そして、入れ替わるように、後ろからオファニムに搭乗したウーナ、そしてワイバーン、シエルに乗るヴァルナがやってくる。
「歪虚戦力を削れるだけ削る。これもう、ゲームじゃないけどサバゲーだね」
 エネルギーの節約を考え、ウーナは徒歩で歩いてきていたが、敵の出現を受けて飛行して急行してきた。彼女は変則二挺拳銃となった右腕で、リザード雑魔を照準内に捉える。
(ブレスとかはないようだし……)
 赤く輝く幾何学的な模様を四肢に走らせたウーナは距離を取り、内蔵したプラズマライフル「イナードP5」を発射する。直接攻撃を受けないようにして、消耗を避ける狙いだ。
「敵には遠距離攻撃手段がない以上、こちらに被害が及ばぬようにするにはこれが効率的だからな」
 微かに全身に血を滲ませた傷痕を浮かび上がらせた兵庫も月影の背から和弓「懸巣」に矢を番え、渾身の力で雑魔達の体を射抜いていく。
 確かに、基本的なリザード雑魔達の攻撃は舌、のしかかりといった近距離攻撃だ。
 だが、その舌が厄介で、雑魔となった影響なのか、移動と共に伸ばすことで射程距離にまで及ぶことがあった。
 それによって、兵庫、ウーナは敵の射程を測りつつ、攻撃を加えて行く。
 生身で戦えば厄介な雑魔だが、この場にいるのはユニットを同行させた歴戦のハンターだ。
 全身に淡い黄金の燐光を纏ったヴァルナは伸びる舌を対処しながらも、ロングボウ「センティール」と矢に生体マテリアルを込めていき、射放つ矢でリザードの体を貫いていく。
 伸びる舌をできる限り避けながら、ウーナはライフルを掃射する。
 弾丸を浴びた雑魔はかき消すように消えて行く。一息ついたメンバー達は取り急ぎ、先行するメンバーを追うことにした。

 その後、リザードとの交戦は2体と1度、3体と1度発生する。
 4人のハンターがリザードを抑える間に、先行の3人が先に進み、調査を進める。リザードは2戦目は山へと逃げ帰ってしまったが、程々に雑魔を駆除しつつ山の裏側、北東の湖の畔を目指す。
 3戦目の雑魔と交戦するハンター達は、先行班からの連絡を受けることとなる。
「湖畔の集落に雑魔が向かっています」
 それは、トラックを運転していたはずのレオナからだ。そして、前方から赤いキノコ型の魔導信号弾が発射された。
 度重なる戦いに、埒が明かぬとシエルから降りて戦っていたヴァルナ。
 星剣「アルマス・ノヴァ」で最後のリザードの首を叩ききった直後に、彼女はキノコ型の雲を見て。
「予断は許さぬ状況のようですね」
「そのようだな」
「急ぎましょう」
 剣を鞘に収めた後でヴァルナは兵庫と示し合わせ、それぞれ空を飛んで急行する。
 ウーナ、ジーナもまた機体を操縦し、全速力で信号弾の真下を目指すのだった。


 先行して湖畔の集落へと到着していたレオナ、カーミン、ジャックの3人。
 彼らは到着してほとんど経たないうちに、山から異質なマテリアルの流れを感じることとなる。
 山から下りてきたのはやはりトカゲの群れ。しかしながら、その内の1体は他の個体の倍近い大きさがあった。
「くっ……、まだ来るの?」
 トラックから降りていたカーミンは、グリフォンへと騎乗して空を舞っていた。その上で、彼女は敵の数を確認する。
「敵は……5体、手前の敵の足止めを」
 彼女はジーナ、ジャックへと呼びかけ、腕から直接数条の光を回路状に走らせつつ、エルヴィン・アローを手にした。
「歪虚が山の麓近くまで降りてきていたから、集落も狙っているかもしれないと考えてはいましたが……」
 先ほど立ち上っていたキノコ雲は、レオナの魔導トラックから発せられたシグナルバレットだ。
 レオナが集落民の避難の為に下がると、ジャックがフォーコと共にリザード雑魔どもの前に立ち塞がった。
「さあ来やがれ、トカゲ野郎。俺らが相手してやんぜ!」
 ジャックは体内のマテリアルを燃やし、炎のようなオーラを纏って敵の注意を自身に引き付けようとする。
 さらに、灼熱した金属のように変色させた瞳でジャックは視界の端に避難を始めるレオナを捉えながら、フォーコにブロッキングを行わせて目の前のトカゲどもを威嚇した。
 続き、カーミンも同時に3本の矢を射掛けていくが、敵の動きは素早い上、長く伸ばす舌が非常に危険だ。ぼやぼやしていると集落民に被害が及びかねない。
 集落へとトラックを走らせるレオナはトラックから魔法の煙を発生させ、集落前方に展開する。これで少しでも避難の時間が稼げればいいが……。
 空中から襲うカーミン、そして、地面で敵を抑えるジャックとフォーコ。 だが、幻獣と共に戦うとはいえ敵の方が多く、苦しい状況だ。
 襲い来るリザード雑魔はにじり寄り、メンバー達にのしかかり、舌で縛りつけてくる。
 さらに、大きいリザードが全身を回転させるようにして尻尾を強く撃ちつけてきた。そのダメージは決して小さくはない。
 レオナの住民の避難はまだ続いている。ジャック、カーミンは何とか戦線を持たせ、時間を稼ぐ。
 そこに風の魔法が巻き起こり、小型の竜巻が雑魔を包みこむ。
 空中からやってきたグリフォンより兵庫が降り立ち、体内のマテリアルを燃やし始めた。
「また新手か。面倒な連中だな」
「全くですね」
 降り立ってきたヴァルナもシエルから降り立つ。彼女は相棒に自身の死角をカバーするよう位置取らせていたようだ。
 また、ある程度の住民の避難を進めたレオナが参戦してくる。
 森の香りを漂わせるレオナは、色とりどりの葉の幻影を自らの周囲に舞わせる。腕の護法籠手より符を展開した彼女は、仲間達を包んで守りを高めていった。
 徐々にハンター側は戦力が整いつつある状況だが、それでもまだ雑魔の勢いが勝る。
 これまで交戦していた人型サイズならばまだ対処もできていたが、倍の体躯のリザード雑魔によるのしかかり、食らいつきの威力は大きい。
 だが、それまで戦線を支えていたメンバーに代わる形で、「プラヴァー」のタロンを操るジーナが飛び込んできた。
「……今回は好き勝手にはさせるか」
 すでに交戦が開始されていることもあり、ジーナは自身の動きをトレースして、螺旋槍「骨喰」で手前の敵の体を薙ぎ払っていく。
 そして、最後に駆けつけてきたのは、オファニムを操縦するウーナだ。
「集落まで辿り着いたら……と、もう祭りが始まってる! 派手に行かしてもらうよ!」
 ウーナも温存してきたフライトシステムで宙を舞い、さらにスキルによって自身を飛行戦闘に適応させた彼女は「Re:AZ-L」の二挺拳銃を発砲した。
 素早く発砲させた一発がリザード雑魔に命中し、その身体を吹き飛ばす。
 チームメンバーが勢揃いしたところで、ハンター達は攻勢を掛ける。後ろの集落を、そして、人々を守る為に。


 集落民は湖側に避難し、固唾を呑んでハンター達の勝利を願う。
 襲い来るリザード雑魔は、生ある者を皆喰らうつもりだ。どのみち、ハンター達が負けることがあれば、自分達は助からないと察していたのである。
 もちろん、ハンター達に負ける気などさらさらない。
 「Re:AZ-L」に搭載した火器管制システムを活かし、ウーナは敵に対する命中補正を受けて敵を空から狙い撃つ。
 メンバーが揃ったとはいえ、リザードはハンターの囲いを抜けて集落を目指そうとする個体もいた。
 ウーナはその前に立ちはだかり、1体ののしかかりを抑える。その衝撃はわずかであるが、操縦席にも及ぶ。
 狙い済まして銃撃乱舞する彼女。惜しむらくは「プラズマグレネード」をぶちかますのが難しく、使い損ねたことだろうか。
 ジーナも人命が最優先だと考え、敵を集落の方向へと通すまいと身を張った。操縦席がむき出しになっており、雑魔の攻撃が彼女自身も含めて強く打ち付けてくる。
「これしき、手間暇かけて改装したタロンなら……」
 愛機に絶対の信頼を置くジーナはその敵目掛け、連続して切りかかっていった。
 仲間と連携を意識し、敵をフリーにさせぬよう攻撃する兵庫も月影から降り、日本刀「白狼」でアクロバティックに切りかかってみせ、リザードの頭へとこれでかと渾身の一撃を喰らわせていく。
「……月影。そのトカゲを存分に蹴散らしてやれ!」
 兵庫の指示を受け、存分に暴れる月影も素早い動きでトカゲに爪を引っかいていたようだ。
 そして、そこで急降下してきたカーミンのグリフォン。雑魔の手前に降り立つことで、敵を大きく山際へと吹き飛ばす。
「この敵、抑えて。あなたならやれるでしょ?」
 喜ぶカーミンはグリフォンへと呼びかけると、地面に着地したカーミンは3本の矢を番えて同時に射掛けて行く。
(正直、まだ慣れているとは言いがたいですが……)
 奏唱士としてはまだまだ未熟だと感じていたヴァルナだが、敵が固まっているのを見計らって歌を歌って見せる。
 その上で、生体マテリアルを伝達して強化した星剣で敵を切り裂いていく。素早く突き出す突きは、小と大、2体の雑魔の体を貫いた。
 そこで、ジャックが口笛を吹く。
「フォーコ、向こうに回れ。挟み撃ちにすんぞ!」
 戦いの激化に伴い、赤く変色させた髪から火の粉にも似たマテリアルを舞わせたジャックが両サイドからフォーコと狙い撃つ。
 フォーコの魔導銃と、ジャックの構えるスペルボウ「フェリメント」から同時に射放たれた3本の矢。両サイドから貫かれた雑魔は奇怪な叫びを上げて消えて行く。
 戦う仲間をレオナは支えながらも、時に符による結界を張って敵を焼き払う。
 前線で戦うジーナも挟まれる形となっており、それによって突破口を見出す。スラスターで加速した彼女は、脚部に魔導エンジンの出力を高めて突撃する。
 すれ違いざまにジーナは槍で切り裂くと、そいつは固い鱗を切り裂かれて消え失せた。
 逆側の1体は兵庫が「白狼」で敵の頭を刻む。マテリアルで強化した刃は見事に雑魔を塵へと化してしまう。
 残りは大型リザード1体。そいつは他の雑魔と共にハンターの攻撃の巻き添えになっていたはずだが、まだ倒れる素振りはない。
 そのくらいつきはかなりの体力を奪われる。マテリアルで加速するカーミンはリロードした矢を素早く射掛け、「Iron mango」も併用して敵の体に爆発を巻き起こす。
 ここまでくれば、後は押し切るのみ。
 ヴァルナは敵の尾を切り落とそうと意識し、シエルに奇襲させたことで、絶好の攻撃チャンスを得て星剣で渾身の一撃を振り下ろす。
 ジャックもまた生命力をマテリアルに変え、バスタードソード「アニマ・リベラ」に纏わせて見上げるほどに大きなリザードに斬撃を見舞う。
 レオナが投げ飛ばす符が稲妻となって敵の頭上に落下すると、ウーナは敵の頭上を取る。敵が尻尾を振り上げてくるものの、彼女は二挺拳銃で相手を撃ち抜き、大型雑魔を蜂の巣にしてトドメをさした。
 倒れ伏した直後に、消え行く大型リザードを目にしていたヴァルナ。
「それにしても、大きい蜥蜴というと以前出会った角トカゲを思い出しますね」
 やむをえず、角をへし折ってしまったそうだが、元気にしているでしょうかと、彼女は遠くに想いを馳せていたのだった。


 攻めくるリザードを撃破すると、新手が攻め込んでくる様子は見られない。敵もこちら側に勢力を伸ばすのに慎重になったということだろうか。
 ともあれ、ハンター達は集落に戻った住民と接触し、状況を確かめることとする。
「生活もあるし避難のタイミングは任せるけど、歪虚の群れが勢力を増してるよ」
 ウーナは、できる限り避難を促そうとする。1度に100人全員は無理でも、子供達だけなら先に避難はできると。
「むう……」
 集落の長は唸りこむ。先祖代々受け継ぐこの地を放棄するか、それとも雑魔の侵攻に怯えて暮らすか。その決断に戸惑っていたのだ。
「再出現の可能性は無ではありません。防御を固めるか、他へ避難されるかご検討を」
 雑魔の襲撃に際して怪我をした村人へ、レオナは救急セットで手当てをしながら、この地の伝承を聞く。
 なんでも、近場の山は彼らにとって、後方の湖と共に命を育む大切な場所だったという。
「雑魔によって汚され、我々も困惑するばかりでして……」
 レオナは耳にしたその話を、メンバー達と共有するよう努めていたようだ。
 兵庫も、救急セットでの手当てを行い応急処置を行う。重傷者がいないことが不幸中の幸いだろうか。
「雑魔もさほど削れてないしな。一応、連中も山に引っ込んだようだが……」
「……リザード狩りだけで済みそうにないな」
 ジャックの言葉に、ジーナが気になることを思い出す。
 仲間達が見た山の巨大な敵影、そして、空を飛んでいた何者かの影。
 雑魔の掃討は、一筋縄ではいきそうになさそうだ。

 メンバー達はその後、山の麓の逆側を通って帰ることとなる。
 依頼としては半周でもよかったが、カーミンは元々1周する予定でグリフォンを温存していたとのこと。
 彼女は余力のあるメンバーと共に雑魔2体と交戦するが、やはり、メンバーのスキルの消費などもあり、帰りはほぼ交戦を避けて戻っていった。
 程なく砦の集落まで戻った一行。
 レオナも資料を纏め、確認することにする。資料には、勢力範囲と敵の行動パターン、群れの成し方などを記載する。
 また、思った以上に伸びる舌が長く、飛び掛ってからであれば射撃武器での攻撃すら捉えてくることがあるなど、注意点もしっかりと抑えていた。
 ジャックもまた資料作成に際し、エルフ達へと報告を行う。
 やはり、敵は山をほぼ勢力内に置き、周囲にその範囲を伸ばそうとしているようだ。
 メンバー達はその後、ハンターズソサエティを通し、王国にもこの事態を伝える為の資料を纏めて提出する。
「向こうの雑魔も退けたが、いつまで続くか……な」
「そうか……」
 エルフのハンター、アルウェスがジャックの報告に頷く。
「今回は助かった。今後の作戦立案に活かさせてもらう」
 自分達だけでは得られぬ情報に、エルフ達は感謝の言葉を口にする。
 とはいえ、戦いはこれから。山に巣食う歪虚を倒す為に、ハンター達は状況を整える為に動くのだった。

依頼結果

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MVP一覧

  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズka1559

重体一覧

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ツキカゲ
    月影(ka0010unit005
    ユニット|幻獣
  • 青竜紅刃流師範
    ウーナ(ka1439
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    ラジエル
    Re:AZ-L(ka1439unit003
    ユニット|CAM
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    フォーコ
    フォーコ(ka1522unit001
    ユニット|幻獣
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズ(ka1559
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • ユニットアイコン
    フィデル
    グリフォン(ka1559unit002
    ユニット|幻獣
  • 勝利への開拓
    ジーナ(ka1643
    ドワーフ|21才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    タロン
    タロン(ka1643unit002
    ユニット|魔導アーマー
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    シエル
    シエル(ka2651unit004
    ユニット|幻獣
  • 遊演の銀指
    レオナ(ka6158
    エルフ|20才|女性|符術師
  • ユニットアイコン
    魔導トラック
    ヴィリー(ka6158unit001
    ユニット|車両

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ジャック・エルギン(ka1522
人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/11/13 21:41:40
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/11/09 06:09:11