ゲスト
(ka0000)
山真珠が欲しい女装家と少女の覚悟
マスター:君矢

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/12/09 19:00
- 完成日
- 2017/12/22 05:00
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
また、山に歪虚が出たらしい。
去年、シェノグ族はディーナーという歪虚に生存を脅かされていた。
それをハンターたちに退治してもらって、やっと平和になったと安堵していたのに、また、彼らの生活と生業の場である山に怪しい歪虚の影が見え隠れしているという。
もう、去年のように怯えた暮らしをしたくないという部族民の思いから、再び出現した歪虚を討伐してもらうようにハンターオフィスに依頼を出したのは、つい先日のことだった。
シェノグ族の村の広場、数人の女性たちが立ち話に興じていた。話題と言えば、近頃目撃される歪虚らしい影とそれを退治しにきたハンターについてだった。
「早く安心したいわねぇ」
「ハンターの皆さんに任せておけば大丈夫ですよ」
歩いていたところを立ち話に引っ張り込まれたツアンプ・シェノグ(kz0170)は相槌を打つ。
「こう、いつまで歪虚に怯えなくちゃいけないんだろうねぇ」
「やっと、安心して暮らしていたのに、また歪虚が出たんじゃ生活もままらないよ」
「戦える人がいれば違うんだろうけどさ」
何気ない会話に、ツアンプの表情が曇る。
自分に戦う力があればいいのにと思うのはこういう時だ。
部族を守っていきたいと思うのにその力がないことにツアンプは落ち込んでしまう。
「なぁに、ツアンプちゃん。落ち込んだ顔をして!」
「そうそう、ツアンプはよくやっているよ。歪虚が出るのは誰のせいでもないしねぇ」
「毎回、ハンターオフィスまで依頼を出しに遠出してくれているんだ。歪虚のことはハンターに任せるのが一番だよ」
と、気に病んでいるツアンプをみんなではげましている時だった。
「ねぇ、山真珠って知らなぁい?」
立ち話に興じているツアンプたちに、耳慣れない声がかかった。
ツアンプが振り返ると、見慣れない美しい金髪の少女たちが立っていた。
少女はまるで、どこかの姫君のような服を身にまとっていている。
その後ろには、メイドを従えた執事の身なりの男が控えている。
「あの、あなた方はいったい……?」
「僕は山真珠を探してこんな山にまで来たんだけど、全然見つからなくって。人に尋ねた方が早いと思ったんだ。山真珠、知らない?」
少女の青い瞳には強い意志が感じられた。
「真珠!? 何言っているんだい、ここは山の中だよ!」
女性が何をいているんだこの子は。という表情をした。
「幻の真珠なんだって、ここの山にあるっていうから探しに来たんだ。フフッ。きっと素敵な真珠なんだろうね。早く僕の胸を飾りたいなぁ」
少女はここにはないものを見つめるように言う。
「知らないよ、そんなもの。担がれたんじゃないのかい」
女性が少女の言葉を否定する。
「そう、じゃぁ、あなたはいらないわ。ユベール」
「はい。アンリ様」
アンリの後ろに控えていたユベールは持っていた剣で男性を切って捨てる。
声にならない悲鳴を上げて女性は倒れた。女性の体の下から血だまりが広がる。
「みんな、逃げて!」
ツアンプが叫ぶ。
シェノグ族の女性たちは悲鳴を上げて逃げる。
逃げ遅れたツアンプともう一人をメイドたちが乱暴に拘束した。
「山真珠を知っている人が現れるまであなたたちは人質ね」
アンリと呼ばれた少女は、メイドたちに命令してツアンプたちに剣を突き付けて拘束する。
「早く、山真珠がほしいなぁー。山真珠の情報でもいいの。早くしないと人質たちで遊んじゃおうかしら」
アンリは、広場にあったベンチ代わりに置いてあった丸太にユベールにシルクのひざ掛けをかけさせ優雅に座る。
「それにしても山って嫌ねぇ。見て、こんなに靴が泥だらけ。おまけにこんな丸太に僕を直接座らせるなんて……」
靴をつん、と差し出しながらアンリは山歩きの愚痴をブツブツと言っている。
「次は柔らかなクッションをお持ちいたしましょう」
ユベールは、レースの華やかなハンカチで靴の泥を拭いながら答えた。
メイドたちはツアンプたちを後ろ手に拘束し、剣を首筋に突き付けてくる。
「……っう」
ツアンプは地面に押さえつけられながら、女性が血だまりの中で呼吸を止めていく様子を茫然と見ていた。
また、部族の大切な仲間が失われてしまう。
いつだって歪虚が現れれば、ハンターがシェノグ族を助けてくれる。
でも、犠牲は出てしまう。
ツアンプは、歪虚の非道な行いを、ハンターの手助けを、いつもいつも、見ていることしかできなった。
部族を守りたいと思っているのに、いつも部族民の命は指の隙間からこぼれるようにツアンプの前から消えていってしまうのだった。
山に出現する歪虚を退治してほしいという依頼を受けて山を捜索していたハンターたちは、今日はめぼしい成果を上げられずに村へ引き返してきた時だった。
「なにか、雰囲気がおかしくないか?」
「そういわれれば、確かに」
出発した時と違う剣呑な雰囲気に首をかしげるハンターたちの前に、シェノグ族が一人走りこんできた。
「助けてくれ、歪虚が突然村の広場に現れて人質を取っているんだ!」
去年、シェノグ族はディーナーという歪虚に生存を脅かされていた。
それをハンターたちに退治してもらって、やっと平和になったと安堵していたのに、また、彼らの生活と生業の場である山に怪しい歪虚の影が見え隠れしているという。
もう、去年のように怯えた暮らしをしたくないという部族民の思いから、再び出現した歪虚を討伐してもらうようにハンターオフィスに依頼を出したのは、つい先日のことだった。
シェノグ族の村の広場、数人の女性たちが立ち話に興じていた。話題と言えば、近頃目撃される歪虚らしい影とそれを退治しにきたハンターについてだった。
「早く安心したいわねぇ」
「ハンターの皆さんに任せておけば大丈夫ですよ」
歩いていたところを立ち話に引っ張り込まれたツアンプ・シェノグ(kz0170)は相槌を打つ。
「こう、いつまで歪虚に怯えなくちゃいけないんだろうねぇ」
「やっと、安心して暮らしていたのに、また歪虚が出たんじゃ生活もままらないよ」
「戦える人がいれば違うんだろうけどさ」
何気ない会話に、ツアンプの表情が曇る。
自分に戦う力があればいいのにと思うのはこういう時だ。
部族を守っていきたいと思うのにその力がないことにツアンプは落ち込んでしまう。
「なぁに、ツアンプちゃん。落ち込んだ顔をして!」
「そうそう、ツアンプはよくやっているよ。歪虚が出るのは誰のせいでもないしねぇ」
「毎回、ハンターオフィスまで依頼を出しに遠出してくれているんだ。歪虚のことはハンターに任せるのが一番だよ」
と、気に病んでいるツアンプをみんなではげましている時だった。
「ねぇ、山真珠って知らなぁい?」
立ち話に興じているツアンプたちに、耳慣れない声がかかった。
ツアンプが振り返ると、見慣れない美しい金髪の少女たちが立っていた。
少女はまるで、どこかの姫君のような服を身にまとっていている。
その後ろには、メイドを従えた執事の身なりの男が控えている。
「あの、あなた方はいったい……?」
「僕は山真珠を探してこんな山にまで来たんだけど、全然見つからなくって。人に尋ねた方が早いと思ったんだ。山真珠、知らない?」
少女の青い瞳には強い意志が感じられた。
「真珠!? 何言っているんだい、ここは山の中だよ!」
女性が何をいているんだこの子は。という表情をした。
「幻の真珠なんだって、ここの山にあるっていうから探しに来たんだ。フフッ。きっと素敵な真珠なんだろうね。早く僕の胸を飾りたいなぁ」
少女はここにはないものを見つめるように言う。
「知らないよ、そんなもの。担がれたんじゃないのかい」
女性が少女の言葉を否定する。
「そう、じゃぁ、あなたはいらないわ。ユベール」
「はい。アンリ様」
アンリの後ろに控えていたユベールは持っていた剣で男性を切って捨てる。
声にならない悲鳴を上げて女性は倒れた。女性の体の下から血だまりが広がる。
「みんな、逃げて!」
ツアンプが叫ぶ。
シェノグ族の女性たちは悲鳴を上げて逃げる。
逃げ遅れたツアンプともう一人をメイドたちが乱暴に拘束した。
「山真珠を知っている人が現れるまであなたたちは人質ね」
アンリと呼ばれた少女は、メイドたちに命令してツアンプたちに剣を突き付けて拘束する。
「早く、山真珠がほしいなぁー。山真珠の情報でもいいの。早くしないと人質たちで遊んじゃおうかしら」
アンリは、広場にあったベンチ代わりに置いてあった丸太にユベールにシルクのひざ掛けをかけさせ優雅に座る。
「それにしても山って嫌ねぇ。見て、こんなに靴が泥だらけ。おまけにこんな丸太に僕を直接座らせるなんて……」
靴をつん、と差し出しながらアンリは山歩きの愚痴をブツブツと言っている。
「次は柔らかなクッションをお持ちいたしましょう」
ユベールは、レースの華やかなハンカチで靴の泥を拭いながら答えた。
メイドたちはツアンプたちを後ろ手に拘束し、剣を首筋に突き付けてくる。
「……っう」
ツアンプは地面に押さえつけられながら、女性が血だまりの中で呼吸を止めていく様子を茫然と見ていた。
また、部族の大切な仲間が失われてしまう。
いつだって歪虚が現れれば、ハンターがシェノグ族を助けてくれる。
でも、犠牲は出てしまう。
ツアンプは、歪虚の非道な行いを、ハンターの手助けを、いつもいつも、見ていることしかできなった。
部族を守りたいと思っているのに、いつも部族民の命は指の隙間からこぼれるようにツアンプの前から消えていってしまうのだった。
山に出現する歪虚を退治してほしいという依頼を受けて山を捜索していたハンターたちは、今日はめぼしい成果を上げられずに村へ引き返してきた時だった。
「なにか、雰囲気がおかしくないか?」
「そういわれれば、確かに」
出発した時と違う剣呑な雰囲気に首をかしげるハンターたちの前に、シェノグ族が一人走りこんできた。
「助けてくれ、歪虚が突然村の広場に現れて人質を取っているんだ!」
リプレイ本文
ハンター達は山から戻り、静寂に包まれた村を歩いていく。
「何かあったのかな」
朝はあんなに賑やかだったのにとフォル(ka6216)は言った。
「出発する前はみんな日常生活を送っていたのに」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)は村の様子を観察しながら言った。
ハンター達の元へ、シェノグ族の女性が走り寄ってくる。
「何がありましたか。ゆっくりで構いません。お話下さいますか」
レイ・T・ベッドフォード(ka2398)が女性にやさしく話を促した。
女性は村の広場に歪虚が現れて人質を取っていると言う。
「くそ! よりによって外道の居場所はこっちだったか!」
藤堂研司(ka0569)は拳を手のひらに打ち付けて怒りを露わにする。
「……間に合いませんでしたか」
レイはこれを予期していたのか、目を伏せていった。
「よくわからないけど、人質をどうにかしないとね。あんまり刺激しても危険かな」
ルナ・レンフィールド(ka1565)は女性の話を聞き、さっそく人質解放のための作戦を考える。
「歪虚の排除も必要だけど、まずは人質の安全、だな」
ユリアン(ka1664)が提案する。
「よろしくね」
フォルはカードデッキから符を一枚取り出して意識を集中する。
式神に変化した符は、ふわりと浮遊して木の陰に隠れながら飛んでいく。
シェノグ族から聞き取り書いた村の配置図を頼りに、歪虚から身を隠して進むためのルートの確認や、広場で人質を取っている歪虚の一団の様子の確認と式神を使って確認したいことはいくつもある。
念がとぎれないように、見ている事を忘れないようにフォルは集中した。
「ツアンプ(kz0170)さんたちは今のところ無事だけど……」
人質の様子にフォルは胸を痛めた。
情報をフォルは忘れないうちにとマッピングセットに書き起こした。
「隠れやすいルートは、これだな」
ユリアンは、マップを指でなぞりながら奇襲のためのルートを考える。
「俺はこの家と木を利用させてもらおうか」
研司はユリアンの後ろからのぞき込むようにして言った。
全員が見ると、フォルはマップを奇襲担当に手渡す。
「連絡はこれでしよう」
ユリアンはルートをカーミンと共有すると、魔導スマートフォンの短伝話機能をルナの端末と会わせた。
レイとフォルは人質を取っている歪虚たちの正面に立った。
フォルは、血だまりの中に倒れている死体を目にして硬直した。
「お美しい方。いくつか質問をお赦しいただけますか?」
レイは心当たりがあるので、と言いって慇懃に一礼した。
「いいわよ。綺麗な人間は大好き」
「アンリ様、相手はハンターです。気を許してはいけないかと」
気安い様子のアンリをユベールは諫める。
「アンリさん。山真珠をお探しとか。どこでどの様に情報を聞いたのでしょうか」
レイは質問する。
「どこかで宝石商を捕まえて聞き出したのよね?」
「さようです」
言いながらユベールは周囲に視線を油断なく配っている。
「この山に山真珠は確実にあると、そう言う情報なのですね」
「でも見つからないし。人間に聞こうって」
「そうですか」
レイは沈思しつつゆっくりとアンリと会話し奇襲組が移動する時間を稼ぐ。
擬態マントを羽織った研司は村の中を走った。
「この家だ」
狙いを付けていた家を発見すると壁歩きを使用して屋根の上へ躍り出る。屋根から隣接している木の枝に慎重に移動した。葉に隠れるように身を潜めた研司は広場を双眼鏡で観察した。
広場の歪虚は研司に気がついていない。
「犠牲者を増やすわけにはいかねぇ、気取られないよう……。潜伏からの狙撃でカタをつける!」
強い決意を秘めながら研司は自信の名前を冠した銃、研司砲に特殊雷撃弾を装填する。
研司は研司砲を構え、双眼鏡をのぞき込みながら仲間からの合図をまった。
「時間稼ぎはうまくいっているようだな」
ユリアンとカーミンは村を大きく迂回して歪虚たちの死角に移動している。
「急いだ方がいいわね」
カーミンはユリアンに答えると千日紅を使用する。全身をマテリアルで包むと肉体を加速させた。
カーミンは広場を観察する。血だまりに倒れている女性が一人。あの女性は朝見送ってくれた一人。その人が目の前で死ぬ。
あるのはただ「届かぬこと」への哀しみ。……自身の非力と、所詮私はここでは他人なのだからカーミンは思いを胸の中に沈めた。
「状況はどうだ。歪虚はこちらには気が付いていないようだな」
「時間稼ぎは上手くいっているようね」
茂みに隠れて様子をうかがっているカーミンに追いついたユリアンが小声で聞く。
「……少女はともかくあの執事の視線。動いてないとはいえ油断はできない。同業者?」
「そうだな。油断のない視線の動き。俺たちと同じだろうな。……準備はいいか?」
ユリアンは広場に陣取る歪虚たちを観察しながら言った。敵はメイド姿の歪虚が5体に、踏ん反り返っている歪虚と執事然とした歪虚。
「もちろん。いいわ」
ユリアンの問いかけにカーミンは不敵に笑みを作って応じる。
ユリアンは魔導スマホのマイク部分を軽くたたいてルナに合図を送る。
二人はグラジオスとナイトカーテンを使用し合図に備えた。
「山真珠、特徴が分かれば占えるよ。特徴、教えて?」
レイが考え込む隣で、フォルは符を取り出し占ってみると強調する。
「何かない? 色は? この山にあるんだよね?」
他にもシェノグ族は山真珠だと知っているのか、貴重な物なのか、と細かく質問をしてフォルも時間を稼ぐ。
「所詮占いでしょ」
「僕の占術はよく当たるよ。調べてみるから人質を放してもらえないかな」
フォルの要求にアンリは嫌な顔をした。
「不確かな情報で解放させるつもり?」
「ええ、ですのでまず、『お一人』だけを。情報に満足いただけたら残る一人の解放を検討いただけたら」
「そう、どちらか選ばせてあげるわ」
レイの駆け引きに、思案顔のアンリは言う。
レイはツアンプの目を見た。貴女が先か、後か。その『意志』を尊重したい。取り押さえられているツアンプもしっかりとレイの目を見返しかすかにうなずいた。
「では、そちらの女性を先に」
レイは選ぶ。
「ユベール」
「はい」
ユベールはメイドに指示を出して解放させる。
「その宝、力の源集めて生まれるもの。草木の民は知らず。別の名を聞く」
フォルは、占いの結果を披露する。
レイはちらりと周囲に視線を走らせる。奇襲組は到着しただろうか。もう少し時間稼ぎが必要だろうか。
「ここはシェノグ族という部族の村です。多数の薬草を扱う彼らが知らない「物」かつ「真珠」からは連想されないもの。その生活圏から離れた位置に眠る鉱石や結晶、真珠から連想されにくい植物の果実や種子のことではないでしょうか」
「それで?」
具体的ではない情報にアンリはイライラし始めた。
「交渉はどうでしょうか」
交渉組の後ろで、隠れながら様子を伺っていたルナは、クレセントリュート「Suite」を抱え、タクティカルヘッドセットに耳を澄ませている。
交渉組の様子を見守りながら、自分が出ていくタイミングを慎重に見計らう。
ルナの役割は、奇襲の合図だしだった。タイミングを間違えば作戦が狂ってしまう。
「ちょっと雰囲気が悪くなってきたね」
出た方がいいだろうかと思っていた時だ。ユリアンからの合図があった。
「さあ、演奏の始まりだよ!」
ルナは、シャラン! とリュートを奏で広場の注目を集めながら歩いた。
「次は余興で気を引こうって?」
アンリが言う。
「もう、その人達を傷つける理由は無いはずですよ?」
ルナは敵意を見せずに笑顔で演奏しながら歩いた。あくまでも自然体で人質に近づいていく。
「大丈夫だよ」
軽快なリュートの音に驚いて目を見開いているツアンプと目が合ったルナは優しく微笑んで彼女を安心させた。
「情報も無いし? これ以上付き合う理由もないわね」
アンリのイライラもピークに達した時だった。
「さあ、奏でましょう! 狂詩曲「赤の謳歌」!」
ルナの奏でる曲が変わる。奏でる旋律が赤い光となって広場にあふれ出した。
「合図確認! ぶっ放つ!」
研司は木の上で研司砲を打った。
遠射を加えたリトリビューションが広場の歪虚を襲う。
「当たれぇ」
未警戒の状態で打ち込めるチャンスはこの初撃だけ。
メイドの腕、メイドの脚!
ユベールとアンリの喉!
敵の指示を出す部位を潰せ! と研司は気合とに引き金を引く。
「アンリ様!」
「一足遅ぇ!」
寸前で気が付いたユベールが警戒を飛ばすが、リトリビューションの一撃はアンリとメイドたちを捉えていた。
アンリの喉は捉えられなかったが、脚を貫いた。
「さぁ、私が相手です!」
レイは現界せしものを使用する。黒々とした霞のような幻影を身に纏った姿は巨大化する。
メイドたちは、突然現れた幻影に反応して構えた。
「人質を傷つけずに引きはがせるかしら」
カーミンは考える。なぜ歪虚はわざわざ人の形を模倣するのか。まあお陰で非力な私でも構造上の弱点を衝けるとカーミンは蒼機剣「N=Fフリージア」を構え、広場の歪虚たちへ急速接近する。
「ツアンプさんを離せ!」
ユリアンは茂みから身を躍らせると舞羽風と羽流風を使い一気に間合いを詰めて人質を取っているメイドに切り込む。
アンリは傷つけられた増悪で接近してくるハンターたちを捉えると魔術を唱える。
「タチェット! 黙って!」
アンリの動きを注意して見ていたルナはアンリの魔術に対してカウンターマジックを唱える。
「僕を黙らせるって?」
アンリは抵抗する。
「……くっ」
冷気と共に襲ってくる眠気にユリアンはStar of Bethlehemを握りしめて耐えた。
「これならどう!」
前線に出てきたルナは、アンリに向かってライトニングボルトを放つ。
「アンリ様を守りなさい!」
ユベールはメイドたちに命令を出す。
「あらオジサマ、お嬢様以外のお相手はなさらないの?」
カーミンはアンリの対応を味方に委ねると、ユベールを全力で抑えにかかった。油断できる相手ではない。
「さあ、どちらを受けてくれるのかしら?」
カーミンがユベール相手に用意した手は、二刀。うち一刀は鞭形状に変じるもの。柔よく剛を制すように変幻自在に動いて相手を翻弄する。
メイドたちは、ツアンプを引きずりながらアンリの盾になるように移動した。
「あなたたちの相手はこの私!」
移動するメイドに向けてルナはライトニングボルトを放とうとすると、メイドはツアンプを盾に取るように行動する。
「……!」
メイドの行動にルナは一瞬躊躇する。
「私のことにかまわないで!」
ツアンプは叫んだ。
「ヒロインにでもなったつもり!?」
アンリの何かを刺激したらしい。アンリはツアンプの髪を掴むと平手打ちをした。
衝撃に涙をこぼしたツアンプはキッ、とアンリを睨みとっさに腰にあった鞭を引き抜き振るう。
「もう歪虚なんかに、部族を、私たちを好きになんかさせません! 私も部族を守るんです!」
でたらめに放った一撃はアンリの頬にわずかに傷をつけた。
「僕の顔に傷をつけたなぁ!」
アンリは顔をゆがめてツアンプをにらむ。
ツアンプの叫びを聞いたカーミンは一瞬、彼女が光を放ったようにも見えた。そう思っただけかもしれないが、カーミンは確かにツアンプの覚悟を受け取った。
「……ようこそ、こちら側へ。届かぬ寂しさを味わう世界へ」
カーミンは千日紅で加速すると、ガーベラを使用しツアンプとアンリの間に割って入り、オンシジュームを振るってアンリを下がらせる。
「今のうちです! 逃げて」
ルナは、ツアンプに向かってメイドが剣を振り下ろすところを割って入ってパリィグローブ「ディスターブ」で受け止める。
ディスターブは一瞬、マテリアルの障壁を生み出し、メイドの剣を確実に受け止めた。
「大丈夫?」
瑞鳥符を投げたフォルがツアンプとメイドの間に割って入って盾になる。
「人質への危害は加えさせん!」
研司は弓に持ち替えると、人質に追いすがるメイドに全身全霊の力を込めてEEEを打ち込み攻撃を妨害する。
「ツアンプさん、お願いしても、良いかな? 絶対行かせないから」
ユリアンは逃れたツアンプに人質だった女性と共に下がるように言った。
ツアンプは後ろに下がる。
ユリアンは、下がる人質の二人をその身で庇うとそのまま、仲間たちの後ろまで一旦下がった。
「山真珠は植物だよ! 残念でしたー!」
フォルは人質の安全が確保されたのを見て、山真珠の「ネタバラシ」をする。ここはシェノグ族にとって大切な場所だ。二度とアンリたちの来ないようにしたいと思った。
「貴族サマ、アンタも蝶よ花よと謳われたことはない? 本当のことを言ってくれる人材は大切にすべきよ?」
山真珠といえば物の喩え、例えば鵯上戸みたいな実を表すことが多いとカーミンは考えている。
「追いかけさせません」
レイは、逃げる人質を狙うメイドにファントムハンドを使って引き寄せると、《すこはや》を振るって攻撃する。
そして、人質たちを自分自身の影に背負うように攻撃からかばった。
「さすがに位置はバレているか」
研司は、壁歩きを使用し別の高所へと移動し、研司砲に弾を装填する。複数のハンターを同時に相手にして全てを警戒しきれるものではない。再びリトリビューションを打ち込むべく様子を伺った。
激怒しているアンリとなだめるユベールを見て、今がチャンスだと研司砲を構える。
「狙いは頭部! 吹き飛べぃ!」
「アンリ様!」
狙撃を警戒していたユベールはアンリを突き飛ばす。
「アンリ様。ここは引きましょう」
「逃がさないぞ!」
ユリアンは羽流風を使って、アンリに迫り攻撃するが割って入ったユベールに防がれた。
「お前らの顔覚えたからな! 絶対に許さないからなぁ!」
叫び散らすアンリを抱えてユベールは撤退する。
ハンターたちは追いかけようとするが残ったメイドたちが立ちふさがる。がメイドたちではハンターの敵ではない。難なく倒した。
「……彼らは、また来るでしょうね。備えるのならば――微力ながら、力を尽くしますよ、それが、どのような形でも」
ぼんやりと戦闘のあとを見ているツアンプにレイは話しかけた。
ツアンプは微かにうなずく。
「人ひとりが持てる力は小さいよ。力を尽くしても命は零れていく。判断を間違えれば尚簡単に。後悔はより深くなる。でも、僅かでも可能性があるなら、少しでも良い方向を目指して、足掻くしかないんだ。諦め、きれないんだ……」
ユリアンもまた話しかけた。それはツアンプへというよりも、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
ツアンプの横にフォルが座り背中をポンポンと撫でる。
「寂しい時悔しい時怒ってる時、お母さんが頭をこうしてくれたんだ」
フォルは背中をなで続けた。
「何かあったのかな」
朝はあんなに賑やかだったのにとフォル(ka6216)は言った。
「出発する前はみんな日常生活を送っていたのに」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)は村の様子を観察しながら言った。
ハンター達の元へ、シェノグ族の女性が走り寄ってくる。
「何がありましたか。ゆっくりで構いません。お話下さいますか」
レイ・T・ベッドフォード(ka2398)が女性にやさしく話を促した。
女性は村の広場に歪虚が現れて人質を取っていると言う。
「くそ! よりによって外道の居場所はこっちだったか!」
藤堂研司(ka0569)は拳を手のひらに打ち付けて怒りを露わにする。
「……間に合いませんでしたか」
レイはこれを予期していたのか、目を伏せていった。
「よくわからないけど、人質をどうにかしないとね。あんまり刺激しても危険かな」
ルナ・レンフィールド(ka1565)は女性の話を聞き、さっそく人質解放のための作戦を考える。
「歪虚の排除も必要だけど、まずは人質の安全、だな」
ユリアン(ka1664)が提案する。
「よろしくね」
フォルはカードデッキから符を一枚取り出して意識を集中する。
式神に変化した符は、ふわりと浮遊して木の陰に隠れながら飛んでいく。
シェノグ族から聞き取り書いた村の配置図を頼りに、歪虚から身を隠して進むためのルートの確認や、広場で人質を取っている歪虚の一団の様子の確認と式神を使って確認したいことはいくつもある。
念がとぎれないように、見ている事を忘れないようにフォルは集中した。
「ツアンプ(kz0170)さんたちは今のところ無事だけど……」
人質の様子にフォルは胸を痛めた。
情報をフォルは忘れないうちにとマッピングセットに書き起こした。
「隠れやすいルートは、これだな」
ユリアンは、マップを指でなぞりながら奇襲のためのルートを考える。
「俺はこの家と木を利用させてもらおうか」
研司はユリアンの後ろからのぞき込むようにして言った。
全員が見ると、フォルはマップを奇襲担当に手渡す。
「連絡はこれでしよう」
ユリアンはルートをカーミンと共有すると、魔導スマートフォンの短伝話機能をルナの端末と会わせた。
レイとフォルは人質を取っている歪虚たちの正面に立った。
フォルは、血だまりの中に倒れている死体を目にして硬直した。
「お美しい方。いくつか質問をお赦しいただけますか?」
レイは心当たりがあるので、と言いって慇懃に一礼した。
「いいわよ。綺麗な人間は大好き」
「アンリ様、相手はハンターです。気を許してはいけないかと」
気安い様子のアンリをユベールは諫める。
「アンリさん。山真珠をお探しとか。どこでどの様に情報を聞いたのでしょうか」
レイは質問する。
「どこかで宝石商を捕まえて聞き出したのよね?」
「さようです」
言いながらユベールは周囲に視線を油断なく配っている。
「この山に山真珠は確実にあると、そう言う情報なのですね」
「でも見つからないし。人間に聞こうって」
「そうですか」
レイは沈思しつつゆっくりとアンリと会話し奇襲組が移動する時間を稼ぐ。
擬態マントを羽織った研司は村の中を走った。
「この家だ」
狙いを付けていた家を発見すると壁歩きを使用して屋根の上へ躍り出る。屋根から隣接している木の枝に慎重に移動した。葉に隠れるように身を潜めた研司は広場を双眼鏡で観察した。
広場の歪虚は研司に気がついていない。
「犠牲者を増やすわけにはいかねぇ、気取られないよう……。潜伏からの狙撃でカタをつける!」
強い決意を秘めながら研司は自信の名前を冠した銃、研司砲に特殊雷撃弾を装填する。
研司は研司砲を構え、双眼鏡をのぞき込みながら仲間からの合図をまった。
「時間稼ぎはうまくいっているようだな」
ユリアンとカーミンは村を大きく迂回して歪虚たちの死角に移動している。
「急いだ方がいいわね」
カーミンはユリアンに答えると千日紅を使用する。全身をマテリアルで包むと肉体を加速させた。
カーミンは広場を観察する。血だまりに倒れている女性が一人。あの女性は朝見送ってくれた一人。その人が目の前で死ぬ。
あるのはただ「届かぬこと」への哀しみ。……自身の非力と、所詮私はここでは他人なのだからカーミンは思いを胸の中に沈めた。
「状況はどうだ。歪虚はこちらには気が付いていないようだな」
「時間稼ぎは上手くいっているようね」
茂みに隠れて様子をうかがっているカーミンに追いついたユリアンが小声で聞く。
「……少女はともかくあの執事の視線。動いてないとはいえ油断はできない。同業者?」
「そうだな。油断のない視線の動き。俺たちと同じだろうな。……準備はいいか?」
ユリアンは広場に陣取る歪虚たちを観察しながら言った。敵はメイド姿の歪虚が5体に、踏ん反り返っている歪虚と執事然とした歪虚。
「もちろん。いいわ」
ユリアンの問いかけにカーミンは不敵に笑みを作って応じる。
ユリアンは魔導スマホのマイク部分を軽くたたいてルナに合図を送る。
二人はグラジオスとナイトカーテンを使用し合図に備えた。
「山真珠、特徴が分かれば占えるよ。特徴、教えて?」
レイが考え込む隣で、フォルは符を取り出し占ってみると強調する。
「何かない? 色は? この山にあるんだよね?」
他にもシェノグ族は山真珠だと知っているのか、貴重な物なのか、と細かく質問をしてフォルも時間を稼ぐ。
「所詮占いでしょ」
「僕の占術はよく当たるよ。調べてみるから人質を放してもらえないかな」
フォルの要求にアンリは嫌な顔をした。
「不確かな情報で解放させるつもり?」
「ええ、ですのでまず、『お一人』だけを。情報に満足いただけたら残る一人の解放を検討いただけたら」
「そう、どちらか選ばせてあげるわ」
レイの駆け引きに、思案顔のアンリは言う。
レイはツアンプの目を見た。貴女が先か、後か。その『意志』を尊重したい。取り押さえられているツアンプもしっかりとレイの目を見返しかすかにうなずいた。
「では、そちらの女性を先に」
レイは選ぶ。
「ユベール」
「はい」
ユベールはメイドに指示を出して解放させる。
「その宝、力の源集めて生まれるもの。草木の民は知らず。別の名を聞く」
フォルは、占いの結果を披露する。
レイはちらりと周囲に視線を走らせる。奇襲組は到着しただろうか。もう少し時間稼ぎが必要だろうか。
「ここはシェノグ族という部族の村です。多数の薬草を扱う彼らが知らない「物」かつ「真珠」からは連想されないもの。その生活圏から離れた位置に眠る鉱石や結晶、真珠から連想されにくい植物の果実や種子のことではないでしょうか」
「それで?」
具体的ではない情報にアンリはイライラし始めた。
「交渉はどうでしょうか」
交渉組の後ろで、隠れながら様子を伺っていたルナは、クレセントリュート「Suite」を抱え、タクティカルヘッドセットに耳を澄ませている。
交渉組の様子を見守りながら、自分が出ていくタイミングを慎重に見計らう。
ルナの役割は、奇襲の合図だしだった。タイミングを間違えば作戦が狂ってしまう。
「ちょっと雰囲気が悪くなってきたね」
出た方がいいだろうかと思っていた時だ。ユリアンからの合図があった。
「さあ、演奏の始まりだよ!」
ルナは、シャラン! とリュートを奏で広場の注目を集めながら歩いた。
「次は余興で気を引こうって?」
アンリが言う。
「もう、その人達を傷つける理由は無いはずですよ?」
ルナは敵意を見せずに笑顔で演奏しながら歩いた。あくまでも自然体で人質に近づいていく。
「大丈夫だよ」
軽快なリュートの音に驚いて目を見開いているツアンプと目が合ったルナは優しく微笑んで彼女を安心させた。
「情報も無いし? これ以上付き合う理由もないわね」
アンリのイライラもピークに達した時だった。
「さあ、奏でましょう! 狂詩曲「赤の謳歌」!」
ルナの奏でる曲が変わる。奏でる旋律が赤い光となって広場にあふれ出した。
「合図確認! ぶっ放つ!」
研司は木の上で研司砲を打った。
遠射を加えたリトリビューションが広場の歪虚を襲う。
「当たれぇ」
未警戒の状態で打ち込めるチャンスはこの初撃だけ。
メイドの腕、メイドの脚!
ユベールとアンリの喉!
敵の指示を出す部位を潰せ! と研司は気合とに引き金を引く。
「アンリ様!」
「一足遅ぇ!」
寸前で気が付いたユベールが警戒を飛ばすが、リトリビューションの一撃はアンリとメイドたちを捉えていた。
アンリの喉は捉えられなかったが、脚を貫いた。
「さぁ、私が相手です!」
レイは現界せしものを使用する。黒々とした霞のような幻影を身に纏った姿は巨大化する。
メイドたちは、突然現れた幻影に反応して構えた。
「人質を傷つけずに引きはがせるかしら」
カーミンは考える。なぜ歪虚はわざわざ人の形を模倣するのか。まあお陰で非力な私でも構造上の弱点を衝けるとカーミンは蒼機剣「N=Fフリージア」を構え、広場の歪虚たちへ急速接近する。
「ツアンプさんを離せ!」
ユリアンは茂みから身を躍らせると舞羽風と羽流風を使い一気に間合いを詰めて人質を取っているメイドに切り込む。
アンリは傷つけられた増悪で接近してくるハンターたちを捉えると魔術を唱える。
「タチェット! 黙って!」
アンリの動きを注意して見ていたルナはアンリの魔術に対してカウンターマジックを唱える。
「僕を黙らせるって?」
アンリは抵抗する。
「……くっ」
冷気と共に襲ってくる眠気にユリアンはStar of Bethlehemを握りしめて耐えた。
「これならどう!」
前線に出てきたルナは、アンリに向かってライトニングボルトを放つ。
「アンリ様を守りなさい!」
ユベールはメイドたちに命令を出す。
「あらオジサマ、お嬢様以外のお相手はなさらないの?」
カーミンはアンリの対応を味方に委ねると、ユベールを全力で抑えにかかった。油断できる相手ではない。
「さあ、どちらを受けてくれるのかしら?」
カーミンがユベール相手に用意した手は、二刀。うち一刀は鞭形状に変じるもの。柔よく剛を制すように変幻自在に動いて相手を翻弄する。
メイドたちは、ツアンプを引きずりながらアンリの盾になるように移動した。
「あなたたちの相手はこの私!」
移動するメイドに向けてルナはライトニングボルトを放とうとすると、メイドはツアンプを盾に取るように行動する。
「……!」
メイドの行動にルナは一瞬躊躇する。
「私のことにかまわないで!」
ツアンプは叫んだ。
「ヒロインにでもなったつもり!?」
アンリの何かを刺激したらしい。アンリはツアンプの髪を掴むと平手打ちをした。
衝撃に涙をこぼしたツアンプはキッ、とアンリを睨みとっさに腰にあった鞭を引き抜き振るう。
「もう歪虚なんかに、部族を、私たちを好きになんかさせません! 私も部族を守るんです!」
でたらめに放った一撃はアンリの頬にわずかに傷をつけた。
「僕の顔に傷をつけたなぁ!」
アンリは顔をゆがめてツアンプをにらむ。
ツアンプの叫びを聞いたカーミンは一瞬、彼女が光を放ったようにも見えた。そう思っただけかもしれないが、カーミンは確かにツアンプの覚悟を受け取った。
「……ようこそ、こちら側へ。届かぬ寂しさを味わう世界へ」
カーミンは千日紅で加速すると、ガーベラを使用しツアンプとアンリの間に割って入り、オンシジュームを振るってアンリを下がらせる。
「今のうちです! 逃げて」
ルナは、ツアンプに向かってメイドが剣を振り下ろすところを割って入ってパリィグローブ「ディスターブ」で受け止める。
ディスターブは一瞬、マテリアルの障壁を生み出し、メイドの剣を確実に受け止めた。
「大丈夫?」
瑞鳥符を投げたフォルがツアンプとメイドの間に割って入って盾になる。
「人質への危害は加えさせん!」
研司は弓に持ち替えると、人質に追いすがるメイドに全身全霊の力を込めてEEEを打ち込み攻撃を妨害する。
「ツアンプさん、お願いしても、良いかな? 絶対行かせないから」
ユリアンは逃れたツアンプに人質だった女性と共に下がるように言った。
ツアンプは後ろに下がる。
ユリアンは、下がる人質の二人をその身で庇うとそのまま、仲間たちの後ろまで一旦下がった。
「山真珠は植物だよ! 残念でしたー!」
フォルは人質の安全が確保されたのを見て、山真珠の「ネタバラシ」をする。ここはシェノグ族にとって大切な場所だ。二度とアンリたちの来ないようにしたいと思った。
「貴族サマ、アンタも蝶よ花よと謳われたことはない? 本当のことを言ってくれる人材は大切にすべきよ?」
山真珠といえば物の喩え、例えば鵯上戸みたいな実を表すことが多いとカーミンは考えている。
「追いかけさせません」
レイは、逃げる人質を狙うメイドにファントムハンドを使って引き寄せると、《すこはや》を振るって攻撃する。
そして、人質たちを自分自身の影に背負うように攻撃からかばった。
「さすがに位置はバレているか」
研司は、壁歩きを使用し別の高所へと移動し、研司砲に弾を装填する。複数のハンターを同時に相手にして全てを警戒しきれるものではない。再びリトリビューションを打ち込むべく様子を伺った。
激怒しているアンリとなだめるユベールを見て、今がチャンスだと研司砲を構える。
「狙いは頭部! 吹き飛べぃ!」
「アンリ様!」
狙撃を警戒していたユベールはアンリを突き飛ばす。
「アンリ様。ここは引きましょう」
「逃がさないぞ!」
ユリアンは羽流風を使って、アンリに迫り攻撃するが割って入ったユベールに防がれた。
「お前らの顔覚えたからな! 絶対に許さないからなぁ!」
叫び散らすアンリを抱えてユベールは撤退する。
ハンターたちは追いかけようとするが残ったメイドたちが立ちふさがる。がメイドたちではハンターの敵ではない。難なく倒した。
「……彼らは、また来るでしょうね。備えるのならば――微力ながら、力を尽くしますよ、それが、どのような形でも」
ぼんやりと戦闘のあとを見ているツアンプにレイは話しかけた。
ツアンプは微かにうなずく。
「人ひとりが持てる力は小さいよ。力を尽くしても命は零れていく。判断を間違えれば尚簡単に。後悔はより深くなる。でも、僅かでも可能性があるなら、少しでも良い方向を目指して、足掻くしかないんだ。諦め、きれないんだ……」
ユリアンもまた話しかけた。それはツアンプへというよりも、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
ツアンプの横にフォルが座り背中をポンポンと撫でる。
「寂しい時悔しい時怒ってる時、お母さんが頭をこうしてくれたんだ」
フォルは背中をなで続けた。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/12/07 21:52:11 |
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救助相談所 フォル(ka6216) 鬼|10才|男性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2017/12/09 11:35:49 |