一点集中 ~騎士アーリア~

マスター:天田洋介

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/12/10 15:00
完成日
2017/12/23 08:21

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

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オープニング

 グラズヘイム王国の南部に伯爵地【ニュー・ウォルター】は存在する。
 領主が住まう城塞都市の名は『マール』。自然の川を整備した十kmに渡る運河のおかげで内陸部にも関わらず帆船で『ニュー港』へ直接乗りつけることができた。
 升の目のように造成された都市内の水上航路は多くのゴンドラが行き来していて、とても賑やかだ。
 この地を治めるのはアーリア・エルブン伯爵。オリナニア騎士団長を兼任する十七歳になったばかりの銀髪の青年である。
 前領主ダリーア・エルブン伯爵が次男である彼に家督を譲ったのは十四歳のとき。すでに闘病の日々を送っていた前領主は、それからわずかな期間で亡くなっていた。
 妹のミリア・エルブンは幼い頃から政において秀才ぶりを発揮している。
 事故と発表された長男ドネア・エルブンの死因だが、実は謀反に失敗して命を落としていた。そのドネアが歪虚軍長アスタロトとして復活。謀反に関与していた元親衛隊の女性ロランナ・ベヒも歪虚の身となって現れた。
 兵器輸送のゴンドラの沈没事件、領地巡回アーリア一行襲撃事件、穀倉地帯における蝗雑魔大量発生等、アスタロト側が企んだ陰謀は、ことごとくハンター達の力添えによって打ち砕かれる。だがこれらの陰謀には搦め手が存在し、ネビロスは運河の湧水個所を狙っていた。歪虚アイテルカイトの尊厳をかなぐり捨てたネビロスだったが、騎士団とハンター達の前に敗北して最後の時を迎える。
 勝利に沸く城塞都市マールの民。アーリアが喜んでいたのも事実だが、振り払ったはずの兄への気持ちは心の奥底でかすかに残った。
 マール城にアスタロトから晩餐への招待状が届き、アーリアはその場へと赴く。そこでのアスタロトの発言はわずかな同情も引いたものの、傲慢に満ちあふれていた。
 不意に転移してきたTNT爆薬の処分についても、ハンター達の尽力によって解決へと導かれる。


 ある日、伯爵地ニュー・ウォルターの北東部に大量の水が溢れだす。ハンター達の協力によって周辺住民の避難は完了。そして湖と化した大地の中央に、突如として城が浮きあがった。
 湖中央に聳える城の上空では、常に歪虚や雑魔が舞っていた。兵や民といった誰もが口々に噂する。あの城の主は歪虚軍長アスタロトだと。
 湖出現からこれまで三度の戦端がひらかれたものの、一進一退の状況でアスタロト側の護りは厚い。陸路で船を湖へと持ち込んだものの、敵城の小島まで辿り着くことは叶わなかった。すべて湖に沈められてしまう。
 湖は歪ながら直径三km円といった広さ。水深は一番深いところで十メートル前後といったところ。アスタロト城は直径六百m円の小島に建てられていた。
 調査結果、様々な事実が判明する。湖底に沈んだ施設を休憩所として、水棲雑魔が哨戒任務をこなしていた。上空からは鳥雑魔が目を光らせている。
 ハンター達はそれらを退けて、投石機の破壊を完遂した。おかげで領地混合軍は、城聳える小島へと上陸を果たす。またハンター達がキグルミ姿でA城壁の向こう側へと潜入。罠の存在を明らかにしてくれたおかげで、有利な作戦が立案される。
 突入作戦は順調に推移したが、アスタロト急襲という形の反撃を受けた。ハンター達の奮闘によって、アーリアは命は守られた。
 B城塞突破の機会をうかがう領地混合軍だが足止めを食らう。気候によって湖全体に濃霧が発生したのである。
 特殊な能力を持つ雑魔によってゲリラ戦を仕掛けられたものの、ハンター達の力を借りて撃退。霧が晴れる機会を待つアーリアであった。


「霧が晴れるのは、いつなのだ?」
 アーリアはB城壁の向こうに聳えるアスタロト城を見あげる。
 濃霧の日々は今も続いていた。その間、領地混合軍を率いるアーリアが単に手をこまねいていた訳ではなかった。
 霧に紛れて、小島外縁からA城壁内へと木製軌道二路を施設。さらに破壊した敵側の投石機を修理すべく、新規のマテリアル機関を搬入。二基が直っていつでも動かせる状態にある。
 B城壁の頑丈さは理解した上で、放つのは石ではなく鉄杭だ。こちらも充分な量を確保済みであった。
 ハンター一行が到着した三日後、濃霧が突然として薄れていく。
「この機会を逃すわけにはいかない!」
 アーリアが檄を飛ばして軍が動いた。
 陽が暮れるまで約一時間の暮れなずむ頃、戦いの火蓋は切って落とされたのだった。

リプレイ本文


 撓る投石機のアームが鉄杭を投擲。弧を描きながらB城壁へと命中。同時に凄まじい轟音が響き渡った。薄れていく霧の最中、これが戦いの号令となる。
 移動済みの投石機二基は威力を維持するために、B城壁から八十m程度の距離に固定された。二基同時の三投目の後、B城壁近くの路面に突如として地下階段口が複数出現。まるで蟻が巣穴から這い上がるように、次々と敵雑魔が姿を現す。
 領地混合軍、そしてハンター達も動きだした。十数分前には穏やかだった霧深き一帯が、今は見透しのよい戦闘の坩堝と化している。
 上空から翼を広げた雑魔が続々と飛来。混合軍の兵や騎士達が投石機を護るために銃や弓で狙い撃つ。
「アーリア……貴方が前線に出たら、上から攻める敵に対処する人も、守りが薄くなった場所に人の差配をする人も居なくなるの。そちら側はみんなが絶対落とさせないから……領主の務めを果たしてほしいの」
 ディーナ・フェルミ(ka5843)がアーリアに言葉をかけてから戦闘へと赴く。
 ハンター一行は二手に分かれていた。
 左投石機の防衛に就いたのはミオレスカ(ka3496)、ディーナ、南護 炎(ka6651)の三名だ。
 右投石機の防衛はヴァイス(ka0364)、ロニ・カルディス(ka0551)、弓月 幸子(ka1749)、鳳凰院ひりょ(ka3744)、玄武坂 光(ka4537)の五名。指揮を執るアーリアも近くに控えている。
「アーリアがいっていた時間、投石機をフル稼動できれば何とかなると思うの! そうすればきっと――」
「空中の敵は他が対処してくれる。俺達は目の前の敵に専念しよう! 壁破壊までなんとしてももたせる!」
 ディーナと鳳凰院の叫びが全員の耳に届いた。押し寄せる雑魔の群れは、まるで荒れ狂う波のよう。その間にも、投石機二基から放たれた鉄杭がB城壁を穿っていく。
(どうか日没まで持ってくれ…)
 再び霧が濃くなったのなら、同士討ちを避けるために作戦を中止せざるを得ない。アーリアの賭けは始まったばかりであった。


 左投石機を護るハンター達が最前線に立つ。
「みなさん、アスタロトが突然に現れるかも知れません。気をつけてくださいね」
 ミオレスカはシャープシューティングにて一所に留まった上で、ロングボウを構える。迫り来る雑魔集団の先頭に狙い定めて弦を引き、矢を放った。リトリビューションによる光の雨によって、石像に似た巨大雑魔の両足が止まって倒れ込む。多くの蜥蜴雑魔が下敷きになって潰されていく。二射目は先頭グループの大蛇雑魔に命中。蛇行の中途で停止させて、敵側の進みに更なる停滞をもたらした。
「撤退の必要性が出たら、合図をお願いするの。私は前の敵しか見えないから。その時は投石器をすぐ使えなくするのもお願いするの」
 ディーナはそうミオレスカに言い残して前進する。
「これらの投石機を壊させはしない!!」
 南護炎もディーナと一緒に敵が方角へと駆けていった。
 通路の一部は事前に逆茂木等で狭められていた。順当に通過するためには一列になるしかないのだが、強引に障害物を乗り越えようとする敵個体も見かけられる。だがそれは想定内。ミオレスカの矢がそれらの企みを阻む。
 ディーナと南護炎は、狭められた通りから抜けだそうとする雑魔等と対峙した。
「ここより先には進ませないの!」
 ディーナがセイクリッドフラッシュを連続使用。大勢の雑魔に光波動を浴びせかけて、体力を削いでいく。ミオレスカが放ったフォールシュートによる矢の雨も重なり、敵側の消耗はかなりのものになる。逆茂木の狭間から抜けだした時点で、雑魔の殆どは足元をふらつかせていた。
「雑魔め、わらわら湧いてきやがって、いったい残らず叩っ斬ってやる!!」
 南護炎が聖罰刃を握りしめて突進。足元がおぼつかない雑魔の首を次々と刎ねていく。消耗が少ない個体とやり合うときには、剣心一如や気息充溢を使う。集団と対峙するときには、縦横無尽の斬りつけでまとめて屠った。雑魔が左投石機まで辿り着く前にすべてを退ける。
「助かった」
「どう致しましてなの」
 南護炎の怪我が深刻になる前に、ディーナはフルリカバリーで回復させた。こうして防衛の戦闘が続けられる。
 ミオレスカは戦いの途中にヘッドセットで、右投石機側担当のヴァイスとやり取りしていた。「右側の状況ですが、あちらも敵の勢いが凄まじいようです。ですが、投石機には近づかせてはいないとのことです!」重要な情報については、大声でディーナと南護炎にも伝えられる。
 敵側の攻撃は猪突猛進だけに留まらなかった。一旦引いて傷ついた同胞を回復し、再進撃を仕掛けてきたのである。また一部の雑魔がナタなどの道具を用いて、逆茂木を撤去し始めた。
「雑魔側にも指揮官がいるようなの」
「知恵のある敵は厄介だが、まだ戦える。これからだ」
 投擲の鉄杭によって崩れた城壁面は、まだわずかだけ。背中を合わせながら会話したディーナと南護炎は、戦闘に集中するのだった。


 B城壁周辺の階段口と右投石機を繋げる通りは二本ある。それぞれに柵等の障害物が設置されており、窮屈な道幅を通らなければならない雑魔側は、停滞を余儀なくされていた。
「想像した通りだな。これならば」
 ロニが放ったプルガトリオによる闇の刃が数多くの雑魔に突き刺さり、その場へと縫い止める。遠方からの攻撃にも怯まず、さらにセイクリッドフラッシュを唱え、聖なる輝きを敵集団に浴びせかけていく。
「空中の敵は他が対処してくれる。俺達は目の前の敵に専念しよう! 壁破壊までなんとしてももたせる!」
 鳳凰院は足の速い雑魔を優先的に討伐。行く手を塞ぎ、ときに追いついては斬り捨てていった。カウンターアタックも織り交ぜて、右投石機まで敵を近づけさせない。
 弓月幸子は柵の一部として建ててあった小屋にこっそりと忍び込んだ。事前に魔導二輪が隠してある。
(ボクも頑張るんだよ。投石器にはあんまりいい思い出が無いんだけどね)
 状況を判断し、ここぞというときにグラビティフォールを詠唱。ロニの闇の刃と合わせて、多くの雑魔を身動きできなくさせた。その上で唱えたのがファイアボール。放たれた火球が地下階段口を含めて大きく膨らみ、雑魔等を包み込む。爆散によって多くの雑魔をただの亡骸に。わずかに生き残った雑魔等に気づかれたので、魔導二輪で仲間達の元へと帰還する。
「たった今、雑魔の群れがこちらの攻撃によって撤退していった。そちらの様子はどうだ?」
 監視と連絡役を務めていたのはヴァイスだ。左投石機側担当のミオレスカと連絡を密にして、状況の掌握に努める。
 雑魔側が進路として使っている二本の通りは途中で一本となり、右投石機へと至っていた。合流地点で戦えば、まとめて屠ることは可能。しかし遠方で叩こうとすると、離れているせいで効率的な範囲攻撃は難しい。
 弓月幸子による奇襲は、一度だけ通用する機会だった。雑魔側を引き寄せなければまとめて倒せないジレンマが、防衛のための大きな障害となる。
 双眼鏡で覗いたヴァイスが敵側を目視。(巨大な雑魔は輸送車代わりか。少しは頭が回るようだな)一旦退いた雑魔だが、今度は左右の通りに一体ずつ、巨大な石像雑魔が姿を現した。
 どちらの輸送個体も、つい先程までB城壁の一部として擬態していた。四つ足の内部に蜥蜴雑魔十数体が乗りこんでいく。範囲攻撃を仕掛けても、内部まで威力が届くのかわからなかった。非常にゆっくりだが、柵等の障害物を押し潰しながら近づいてくる。
「この状況……仕方がない。障害物が一掃される前に、あの二体を倒さなければ」
 不慮の事態にアーリアも一時的に参戦。A輸送個体に対するのはロニとアーリア。B輸送個体への対処は玄武坂光、弓月幸子、鳳凰院の三人だ。一部の騎士もアーリアと共に援護を行う。
 ロニはプルガトリオでA輸送個体の四つ足を縫い止めた。「あの動き……鈍いのはそういうことか。どうやらそれぞれの足は独立していているようだ。まるで二人三脚のように」呟いたロニがレクイエムも発動。随行する蜥蜴雑魔も含めて、夢の中へと誘っていく。
 アーリアが風の刃をいくつも飛ばし、ついにA輸送個体の額に亀裂が入る。
 ロニのライトニングボルトによる雷撃で、亀裂はさらに広がった。塀の上から跳んだアーリアが額に剣先を突き立てると、A輸送個体の頭部が粉々に崩れ落ちた。
 横倒しになったA輸送個体は四つ足をばたつかせるだけで、その場から移動できなくなる。
 B輸送個体への攻撃も、同時に進行していた。
「味方はいないようだね」
 弓月幸子がファイアーボールを爆散させて先制を打った。「この技ならきっと中の蜥蜴雑魔にも効くはずだよ!」引き続き放ったグラビティフォールによって、B輸送個体が止まって苦しみだす。
 駆けだしていた鳳凰院を援護射撃したのは、玄武坂光である。
(俺は他の連中に比べりゃ、戦力としては…な。その分出来ることはさせてもらうさ)
 そう心の中で呟きながら、玄武坂光は野生の瞳を輝かせた。「こいつはとっておきの鉛玉だ、食らいやがれっ!」魔導銃「グランディネ」で、B輸送個体の頭部を狙い撃つ。周囲を見張っていたヴァイスからの情報により、伏兵の雑魔も片付けていく。鳳凰院がB輸送個体との距離を縮めてからは、持ち替えた二丁拳銃で随伴の蜥蜴雑魔と対峙した。
「俺は誰も失うわけにはいかない! 掛け替えのない仲間達を」
 鳳凰院はB輸送個体が放った爪攻撃をカウンターアタックで受けとめながら、反撃の刃を輝かす。 敵の頬に名刀「虹」を突き立てると、そのまま宙へと持ちあげられた。B輸送個体が首を振り回しても、刀の柄をしっかりと握りしめて耐え続ける。
 チャンスをうかがって、鳳凰院が首の背へと降り立つ。全力を込めて斬りつけると亀裂が走り、頭部が落下して粉々に砕け散った。
 頭部を失ったB輸送個体は路面に腹をつけて動かなくなる。倒した二つの輸送個体は、それぞれの通りを塞ぐ障害物と化した。柵等の障害物はまだ半分以上残っており、蜥蜴雑魔の進撃は辿々しいものとなる。それでも蜥蜴雑魔等は執拗に右投石機目指して迫ってきた。
「領主さんよぉ、人気者だな。オラっ、お前ら。用件があるならアポ取ってから出直して来なっ!」
 玄武坂光の魔導銃が火を噴いて、蜥蜴雑魔の米神に大穴を開ける。
「無理を承知で来てくれた俺の仲間達を、これ以上傷つけさせない!」
 鳳凰院は弓矢でヴァイスを狙い定めていた蜥蜴雑魔を袈裟切りに。接近するのが難しくなったためか、雑魔側が遠隔武器を多用するようになっていた。
「最後の花火なんだよ!」
 弓月幸子が魔導二輪で障害物と化したB輸送個体の側まで近づいた。即座に遠方の雑魔集団へとファイアーボールを叩き込む。地下階段口からのぼってきたばかりの雑魔も含めて、膨らむ爆散の火球で包み込んだ。
「まとめて倒せた。次は――」
 ロニは一条に伸びるライトニングボルトで敵を貫いた後、フルリカバリーで仲間達の傷を癒やした。
「アーリア、ここから眺める限りもう少しだ。鉄杭が後十本も当たれば崩壊するはず」
「わかった。投石機の損傷はわずかで十分に動く。今の状態を持たせられれば、我々の勝ちだ」
 ヴァイスは報告をアーリアだけでなく、仲間全員に伝えた。B城壁下方に積まれていた石材が剥がれ落ちて、貫通寸前である。
 崩れるまであと少しだとアーリアは心の中で呟いたのだった。


 ハウンドバレットを撃ち尽くしたばかりのミオレスカが、無線連絡を受け取る。「右側からの情報によれば、もう少し、もう少しです。城壁の崩壊はもうすぐです!」即座にディーナと南護炎に向かって声を張りあげた。
「あとはフルリカバリーが一回分だけだけど、がんばるの」
 ディーナが南護炎に最後のホーリーヴェールをかける。
 心眼で銃撃を打ち払った南護炎は、両肩を上下させて大きく呼吸した。「何匹斬ったかわからないが、まだまだ大丈夫」だと笑いながら。
 通りには消失途中の、雑魔の絨毯が敷かれていた。騎士達による援護射撃も行われていたが、絶対的な火力が足りずに押され気味である。それでも退くわけにはいかないと左担当のハンター達は力を振り絞った。
「それ以上は……、進ませないですよ!」
 ミオレスカの制圧射撃によって雑魔集団の足が止まる。その隙に乗じて南護炎は縦横無尽で斬り飛ばしていく。
「こちらでも敵を抑えたの!」
 ディーナが使ったプルガトリオによって、たくさんの雑魔が路面へと縫い付けられた。南護炎の剣戟にミオレスカの銃撃も加わって、周辺の蜥蜴雑魔は一掃される。しかし、別口の新たな雑魔の群れが迫ってきた。
「ミオレスカさん、例の作戦、お願いなの!」
「任せてです!」
 ディーナに頼まれたミオレスカが火矢を放つ。それは遠方に放置されていた荷車の油壺へと命中。大量の油を路面にまき散らしながら、炎が広がっていった。
「ヴァイスさん、わかりました。みなさん、撤退です! アーリアさんが撤退の合図をだしたそうです!」
 ヘッドセットに手を当てたミオレスカが大声を振り絞る。
「ここまでなの!」
「死にフラグは折るためにある!」
 それを聞いたディーナと南護炎は転進。ミオレスカと騎士数名も加わって、全速力でその場から立ち去る。
 左投石機には爆薬が仕掛けられていた。最後の鉄杭投擲を行った直後、爆発の炎へと包まれる。
 ハンター三人が走りながら後方へと振り返った。最後の鉄杭がB城壁に当たって崩れていく。二十m幅の柱間の石壁が、まるで積み木崩しのように。
 すでに薄暗い夕闇の景色だったが、完全に日が落ちて暗闇へと包まれる。まもなく薄らと漂っていた霧が濃くなり、雑魔も含めてすべてを覆い隠した。
 左側担当の者達は右担当の一同と合流を果たす。
「エルブン伯爵、微力ながらお力になれたのなら幸いです」
「城壁の崩壊はこの目でしかと見届けたよ。南護殿のおかげでもある」
 南護炎とアーリアが言葉を交わした。
 続いてアーリアは「心配してくれたのに約束を守れなかった」とディーナに声をかける。さらに、その場にいた全員へと話しかけた。
「これでアスタロト城への突入が容易くなった。早く次の機会が来ればよいのだが。すべては霧次第だ」
 アーリアが望んだ方角にはB城壁があるはずだが、闇と霧によって覗えない。
 崩れた城壁をわずかな日数で修復するのは不可能である。確実に前進した手応えを感じ取ったハンター一行とアーリアだった。

依頼結果

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MVP一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディスka0551
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミka5843

重体一覧

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • デュエリスト
    弓月 幸子(ka1749
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 『俺達』が進む道
    玄武坂 光(ka4537
    人間(紅)|20才|男性|霊闘士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 覚悟の漢
    南護 炎(ka6651
    人間(蒼)|18才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 投石機を守り抜け!
ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
人間(リアルブルー)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/12/10 14:52:02
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/12/10 14:47:29