【初夢】雪と太陽~迷いの森の喫茶店~

マスター:DoLLer

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2018/01/10 15:00
完成日
2018/01/16 23:25

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 迷いの森はいつでも真夜中。
 だけど決して真っ暗ではありません。お空にはお月様がニコニコ黄色い明かりを届けてくれます。たくさんの木々には妖精さんが光の粉を取らして飛んでいるし、木々に実る果実は淡く色とりどりに照らしてくれます。地面では、ほら。妖精の粉を受けたキノコがぽんっと笠を開きます。ちょろちょろ流れる小川はそんな明かりをいくつも運んでキラキラ輝き眩しいくらい。
 そんな森のど真ん中で、喫茶店『月の雫亭』はひっそり営業をしています。
 大きな樫の木のうろ二つから、煌々灯りが漏れていて、その間にある大きな口に見えるのが入り口の扉です。
 ゆっくり扉を開けると、扉から伸びたスズランが、チリリン、リリンとかわいらしい音を立てて皆さんの来訪を知らせます。

「やあ、特別な日にようこそ」
 長い髪を一つにくくったマスターはとっても喜んであなたを迎え入れてくれました。
 今日は特別な日だったっけ?
「今日は真っ白雪の日だよ。そのまま綿あめのように口にするのもよし、混ぜてクリームにするもよし、外の木々のように何かにまぶして飾るもよし」
 ああ、なるほど。雪の日なのか。
 窓から外を見ると、影絵の中でヒョウが駆け回るようにして、しんしんと雪が降り注いでいます。
「ホワイトナイト、だね」
 店員さんは感慨深げに言いましたが、あなたは少し心配です。ちょっと雪の勢いが強すぎて、どんどん黒が塗りつぶされていきます。
「ああ、これはいけないぞ。ホワイトナイトじゃない、白夜がくるぞ」
 お店の奥、テーブル席にぎゅうっと詰まるようにして座る燕尾服と背高棒を被った熊さんが言いました。
「ええ、ホワイトナイトでしょう」
「このままじゃホワイトアウトだよ。雪じゃが雪でもない、よく見てごらん」
 熊さんの言う通りに窓に降り積もった雪に目を凝らしてみると、チラチラ目が痛くなります。輝いてる。
「まぶしい」
「そりゃそうさ、外の木々にまぶさっているのは、太陽の子どもだもの。いずれ太陽だらけになってしまう」
 これが全部太陽に成長するのかな。そう思うとゾッとしました。夏はとても外に出歩けなくなって汗はだらだら、ダラけてしまいそう。
「それにここは迷いの森。まぶしくなったら迷わない森(don't a maze)ってしまうよ。驚きもなくなってしまう(don't amaze)」
「それは大変」
 マスターも困り顔。
「太陽の子たちに眠ってもらわないと」
「どうしよう」
「どうしよう」
 みんなで顔を見合わせました。が、その視線はどうもあなたに集まっている気がします。
「ここは白馬の騎士様にご登場かな」
「ホワイトナイトからやってきたんですものね」
 ええ!?
 びっくりするあなたにマスターは言います。
「雪がだと思ったものが太陽になったのですから、太陽の一日(Sun's day)も少しの発想でおやすみ(Sunday)に変えることができますよ」
 とは言われてみたものの。
 はてさて、どうしましょうか。

リプレイ本文

●Maze Minuet(迷って出会って)
「ああ、眩しい位の色。いけない、どうしても彼が浮かんでしまうわね」
 いつだって甘酸っぱい恋心(may million years)。高瀬 未悠(ka3199)さんは蛍雪の景色を眺めてぽつりと言いました。
「そりゃ迷う暗いトコだからな。いいじゃないか、どうしたって枯れも沈みもしない」
 そう言って返したラティナ・スランザール(ka3839)さんですが、彼だってこんなに光輝く太陽の子を見ればぼんやり大好きなお嫁様を思わずにはいられません。
「うちの嫁さんもある意味太陽の子だからな」
「ふふふ、羨ましい言葉ね。泣かせたら承知しないわよ」
 それはお嫁様(wife)のほう? それとも一面広がっている(wide)ほう?
 未悠さんにお願いするわね、と言われて輝く空の下に出てラティナさんは頭を悩ませました。
「やっぱり寝かしつけるのが一番かな」
 シーツを被って、透き通るランプ明かりの中で目と目を合わせてしなだれかかり。そんなことを思い出しながら、やり方を考えていると何かが一滴、ラティナの頭にポトリと垂れてきます。
「な、なんだぁ」
 見れば静かに覗いていた月が恥ずかしがるように黄色く潤んでいます。
「これ、ハチミツだね。ハネムーンのこと考えてたのかい?」
 お料理大好きシャーリーン・クリオール(ka0184)は、続けて垂れ落ちる雫を一すくいしてペロリ。そうしてラティナの顔を覗き込むものですから、ラティナは顔真っ赤にしてしまいました。
「分かったわ、今寝かせてあげること(sleeps now)で、雪として眠るの(sleep snow)ね」
 代わりに声を上げてくれたのはリアリュール(ka2003)さんです。豊かな銀髪をぐいと結い直して、軽く喉を鳴らして声の調子を整えます。
「声を整える時にはハチミツがいいよ。さあ、ミード(mead)を召し上がれ」
「なるほど、意味があると(mean)、話も整いますね」
 シャーリーンさんがハチミツをすくって作ってくれたお酒をリアリュールさんは軽く口にしました。そうしてまた喉を鳴らすと、今度は鳥の囀るような声。
「それでは」
 と言って、くぐってきた両開きの扉の左側をもう一度開けました。
 が。
「まぶし……っ」
 さすがは太陽の子たち。積もり積もって、もはや目を開けられません。これでは夜を明かしてしまいます。
 思わず立ち尽くすリアリュールさんを後ろから腕を引くのはユリアン(ka1664)さん。リアリュールさんを喫茶店の中に引き戻すと、お母さんが言い含めるようにして語り掛けます。
「無理しちゃいけない。太陽の子も間違ってないという気持ちでね。張り合わずに勝手口から行くといいんじゃないかな」
「光(light)は正しい(right)。なるほど、了解しました(all right)」
 ユリアンさんの指し示す右(right)側の扉を開けてみると。今度はどことなく落ち着いて見えます。
「ここからなら大丈夫みたい」
 ようやく穏やかになった景色を見てみると、雪のように降り積もった太陽の子は本当にたくさんいます。どこまで声が届くかわかりませんが、まずは一声。
「Hush a bye baby(おやすみなさい)」
 その一声だけで、足元の子供たちはふっと明かりが消え始めます。
「成功しましたね。良かった」
 様子を伺っていたマリエル(ka0116)さんは軽く爪先立ちてして宝珠を掲げると、ハチミツ酒を造っていた蒸気が渦をまいて綿あめのように集めます。それを吐息(bress)を吹きかけます。
「悪い事(bad)はおやすみ(bed)」
 ふんわり祝福(bless)すると、綿あめはどんどん濃縮されてマシュマロのようなお布団が完成しました。
「凛々しい騎士様(knight)にはなれそうもありませんけれど、ふわふわの夜(night)をお渡しすることはできるかもしれません」
 そうして眠ってしまった太陽の子をやさしく包むと、太陽の子はもうぐっすり、すやすや雪に変わっています。
「子守唄で寝かせて、それから布団をかけてやれば、雪に戻るってことか。これなら良い夜(good night)を呼べそうだな」
「さすがは素敵な騎士様(good knight)ね。それじゃあ、布団をかける役と歌う役に分かれましょう」
 ラティナさんと未悠さんが顔を見合わせて頷きます。

●Many Method(色んなやり方)
「♪我は大地 あらゆる生命の豊穣の源」
 ラティナさんの低くふくよかなファルセットと共にバイオリンの音色が大地を駆け抜けると、太陽の子たちは輝くのをやめて、歌に聞き入ります。そこにマリエルさんがマシュマロお布団を順々にかけて……。
「あ、どうしましょうか。踏まないと向こうまでいけませんね」
 足元までいっぱいの子供たちです。これでは先に進めず失敗してしまいそう。
「大丈夫。音色は空をかけていくから」
 ユリアンさんがハーモニカを取り出すと、ラティナさんの演奏に合わせて吹くと、音色はキラキラ輝いて、子供たちの上を葺いていくではありませんか。
「わっ、すごい。ユリアンさん、ありがとうございます」
 マリエルさんは音に乗って、太陽の子たちを踏まないように空をかけ、雲のお布団をかけていきます。これでたくさんの子供たちを雪に戻すことができました。ですが草の影、木の上にはまだたくさんの子供たちがいます。
 ラティナさんの声は低いから、音も空まで届かないのかな。
 そこでリアリュールさんがトランペットを取り出して、音色に起伏を与えます。
「スイング、スイング。想いを歌いましょう」
 軽快な音色はユリアンさんのハーモニカの音色を上下に跳ねさせます。
 マリエルさんも嬉しくなって、高い音色にジャンプ、ジャンプ。次々と順序よくお布団をかけていきますが、調子が良すぎて今度はお布団が足らなくなってきてしまいました。
「♪汝は太陽 あらゆる生命を生む万物の源」
 立ち止まるマリエルさんを届けるようにラティナさんは大きな声を轟かせます。
 その言葉に未悠さんはっと気づきました。
「そうね。空は太陽も月も星も雲も。それから風も。いっぱいあるわ。マリエル、少し待っててね。飛び切りのお布団を準備するわ。ユリアン、リアリュール。飛び切りの音色をお願いするわ」
 未悠さんも音色に飛び乗りますが空まではなかなか届きそうにありません。
 飛び切りの、と言われてユリアンさんは困ってしまいました。ハーモニカは飛び切りの音を出すと、切れ切れの音しか出ずに、未悠さんはなかなかうまく乗ることができません。
「こういうのは伯母さんの得意分野なんだけどな」
 ユリアンさんの伯母さんや月の彼女ならきっと月まで届くような歌声があるかもしれませんが、ユリアンさんにはとても出せそうにありません。
「音は出せなくても、風は出せるるわ。飛び切り高くまでいけるんじゃないかしら」
 リアリュールさんはトランペットを下ろすと、今度は自転車を用意してきました。軽く車輪(while)をくるると回すとつむじ風(whirl)が生まれます。思議と色んな手段を講じる(Misty mixer)リアリュールさんにみんな驚きです。
「それだ、ありがとう、リアリュールさん」
 風ならユリアンさんのお手の物。
 リアリュールさんがせい、の。と車輪を回すと、強いつむじ風が巻き起こり、ユリアンさんは軽々飛び乗り、悪戦苦闘する未悠さんに手を差し伸べます。
「あ、一気に行こうか」
「任せて」
 巻きあがる風で一気に夜のカーテンまでたどり着くとユリアンさんはつむじの内側を蹴って蹴って、どんどん飛び上がっていきます。
 そして夜のカーテンが手の届く場所まで行きつくと、風と光の刀で一閃しました。カーテンは大きく裂けて、上に詰まっていた星たちと帳が一斉に降り注いできます。
「白く霞む空を見てたら、不安になるもの。だからね。夜は取り戻させてもらうわね。さあ、夜(NIGHT)よ」
 続いた未悠さんが降り落ちる夜を空中で飛んで切り裂きました。
「網(Net)のように広がれ」
 夜の切れ端はまず網のように広がり、
「親友(Initimate)のようにつながれ」
 次に切った切れ端とつながりさらに大きく広がります。
 このまま行け大きな布団になるでしょう。
「贈り物(Gift)をしましょう。希望(Hope)と誠実(Truth)を」
 千々の帳は再び重なり合って、ふわりと大地全部を覆いました。
「♪我は汝に安らぎを与えん」
 ラティナの歌声が帳を優しくふくよかにします。
 気が付けば外は右から見なくても眩しくなくなっています。どうやらみんな雪になってしまったようです。
「……ちょっと照れるな」
 新婚気分(Marry Merrily)を込めたラティナはバイオリンの頭で髪をこりこり。やり切りましたがどうにも恥ずかしい気分が抜けません。さて太陽の子はどうなったのか、メロディから飛び降りてマリエルさんは帳の下を覗き込みました。
「わっ」
 その下は宝石のように輝いています。だって綺麗な言葉と、輝く想いと、星に包まれたのだもの。
「蛍雪っていうくらい、雪も眩しいものなんだね。太陽の子であっても、雪であっても天に返した方がいいのだね」
 シャーリーンさんは言いました。だって夜も星も全部落ちちゃったんですもの。
「でも大丈夫。家の妖精に頼めばすぐさ」
 シャーリーンさんはお料理の道具をまだ揺蕩う音楽に乗せて振りまきます。
「バターがベター。砂糖は甘い記憶で代用しようかね。まごまご悩むは閉じ込めて卵に。それから小麦をばっさりと」
 辺りはたちまちいい香り。シャーリーンさんが希望の光を使ってほんのり焼き目をつけるのですから更にです。未悠さんはもう食べたくてうずうずしています。
「駄目ですよ。贈り物(Gift)を食べると食いしん坊(Gluttony)って言われちゃいますよ?」
「うう、我慢ね。我慢」
 とは言え、焼きあがるまでのこの時間がなんと長い事か。
 それを見たユリアンさんはくすりと笑い、一輪小菊を拾い上げ、ゆるゆると歌います。
「小菊(Mum)の香りは母さん(Mam)の匂い
 狂おしい(Mad)日々で作られた(Made)今日を
 さあ作ろう(Make) おいしいお菓子(Cake)を」
 思わず聞き入ってしまううちに、天も地も混ぜられた外はすっかり美味しいブラウニーケーキになりました。
「ブラウニー、ブラウニー。片付けておくれ。でないと茶色でなくて、炭になってしまうよ」
 シャーリーンさんが語り掛けるとぽこぽこ、ケーキの隙間から家の妖精(ブラウニー)が表れてお手伝いを始めます。
「さあ、準備はいいかな」
 シャーリーンさんがフライ返しを持って地面と空の隙間に差し入れました。
「せえのっ」
 ぐるん!
 落ちた大地は空に、降った太陽の子は天に、雪はキラキラ舞い上がって星空に帰ります。
「はい、仕上げ」
 シャーリーンさんが粉砂糖をまくとそれは天の川になりました(Milk Maker)。

●Merry Mercy(ほろ酔いの優しさ)
 迷いの森の喫茶店はいつでも真夜中。
 でも真っ暗ではありません。空を見上げればタルトタタンのリズムにのせて、粉砂糖の天の川、ブラウニーケーキの夜空が広がっています。
「甘ったるい……」
 ホットワインで一息ついたラティナさんですが、甘い香りに胸いっぱいです。
「ラティナさんの気持ちが多分に詰まっていると思うのだけれど」
 リアリュールさん時折降ってくる星砂糖を手に取り、コーヒーに溶かし込みながら言いました。
「月の子たちはどうしているかしら。コーヒーみたいに苦いばかり人生なのかしら」
 窓際に座る未悠さんは特に大きな光を窓から見上げつつ、大好きな彼と彼女の姿を思い浮かべました。いつも周りは暗くて、寂しいのかも。
「ココアかもしれませんよ」
 ウェイトレスに変身したマリエルさんはココアを差し出しながら、微笑みました。
 ちょっとした気遣い(Mild mite)に従って月を見上げてみると、月はなんとも至福の顔にもみえます。
「そうね。ありがとう、マリエル」
「マリエルさん、おれにも一つ。カフェモカにホイップと星型のマシュマロ一つのせてもらえるかな」
 物思いにふける未悠さんを気遣うようにユリアンさんのオーダーしました。
「それにしてもユリアンのハーモニカ、上手だったなぁ。なにか秘訣でもあるのか」 
「甘いも苦いも半分ずつ。かな」
 ラティナさんの問いかけにユリアンさんはホイップが熱々のモカに溶けていく様子を眺めながら答えました。
 それにきっと、月の調べが手伝ってくれたから、かな。
「マスター、ここはいつまでやっているだろう。店じまいまで……いていいかな」
 ユリアンさんはぼやけた視界を目でこすりながら問いかけました。
「迷わなくなった時が、仕舞い時ですから、それまでは、いつでもいつまでも、どうぞごゆっくり」


 あれ、こんなところで寝てる?
 年忘れの会なのに、自分を忘れちゃいけませんよ。

 誰かの声が聞こえます。それからそっとかけられる温かい布の感触。
 迷いの森の朝はもうしばらく来そうにありません。

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MVP一覧

  • 抱き留める腕
    ユリアン・クレティエka1664
  • よき羊飼い
    リアリュールka2003

重体一覧

参加者一覧

  • 聖癒の奏者
    マリエル(ka0116
    人間(蒼)|16才|女性|聖導士
  • 幸せの青き羽音
    シャーリーン・クリオール(ka0184
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 抱き留める腕
    ユリアン・クレティエ(ka1664
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • よき羊飼い
    リアリュール(ka2003
    エルフ|17才|女性|猟撃士
  • シグルドと共に
    未悠(ka3199
    人間(蒼)|21才|女性|霊闘士
  • 光森の絆
    ラティナ・スランザール(ka3839
    ドワーフ|19才|男性|闘狩人

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/01/09 10:02:16