愉悦のアスタロト ~騎士アーリア~

マスター:天田洋介

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
普通
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/01/16 19:00
完成日
2018/01/27 19:28

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

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オープニング

 グラズヘイム王国の南部に伯爵地【ニュー・ウォルター】は存在する。
 領主が住まう城塞都市の名は『マール』。自然の川を整備した十kmに渡る運河のおかげで内陸部にも関わらず帆船で『ニュー港』へ直接乗りつけることができた。
 升の目のように造成された都市内の水上航路は多くのゴンドラが行き来していて、とても賑やかだ。
 この地を治めるのはアーリア・エルブン伯爵。オリナニア騎士団長を兼任する十七歳になったばかりの銀髪の青年である。
 前領主ダリーア・エルブン伯爵が次男である彼に家督を譲ったのは十四歳のとき。すでに闘病の日々を送っていた前領主は、それからわずかな期間で亡くなっていた。
 妹のミリア・エルブンは幼い頃から政において秀才ぶりを発揮している。
 事故と発表された長男ドネア・エルブンの死因だが、実は謀反に失敗して命を落としていた。そのドネアが歪虚軍長アスタロトとして復活。謀反に関与していた元親衛隊の女性ロランナ・ベヒも歪虚の身となって現れた。
 兵器輸送のゴンドラの沈没事件、領地巡回アーリア一行襲撃事件、穀倉地帯における蝗雑魔大量発生等、アスタロト側が企んだ陰謀は、ことごとくハンター達の力添えによって打ち砕かれる。だがこれらの陰謀には搦め手が存在し、ネビロスは運河の湧水個所を狙っていた。歪虚アイテルカイトの尊厳をかなぐり捨てたネビロスだったが、騎士団とハンター達の前に敗北して最後の時を迎える。
 勝利に沸く城塞都市マールの民。アーリアが喜んでいたのも事実だが、振り払ったはずの兄への気持ちは心の奥底でかすかに残った。
 マール城にアスタロトから晩餐への招待状が届き、アーリアはその場へと赴く。そこでのアスタロトの発言はわずかな同情も引いたものの、傲慢に満ちあふれていた。
 不意に転移してきたTNT爆薬の処分についても、ハンター達の尽力によって解決へと導かれる。


 ある日、伯爵地ニュー・ウォルターの北東部に大量の水が溢れだす。ハンター達の協力によって周辺住民の避難は完了。そして湖と化した大地の中央に、突如として城が浮きあがった。
 湖中央に聳える城の上空では、常に歪虚や雑魔が舞っていた。兵や民といった誰もが口々に噂する。あの城の主は歪虚軍長アスタロトだと。
 湖出現からこれまで三度の戦端がひらかれたものの、一進一退の状況でアスタロト側の護りは厚い。陸路で船を湖へと持ち込んだものの、敵城の小島まで辿り着くことは叶わなかった。すべて湖に沈められてしまう。
 湖は歪ながら直径三km円といった広さ。水深は一番深いところで十メートル前後といったところ。アスタロト城は直径六百m円の小島に建てられていた。
 調査結果、様々な事実が判明する。湖底に沈んだ施設を休憩所として、水棲雑魔が哨戒任務をこなしていた。上空からは鳥雑魔が目を光らせている。
 ハンター達はそれらを退けて、投石機の破壊を完遂した。おかげで領地混合軍は、城聳える小島へと上陸を果たす。またハンター達がキグルミ姿でA城壁の向こう側へと潜入。罠の存在を明らかにしてくれたおかげで、有利な作戦が立案される。
 突入作戦は順調に推移したが、アスタロト急襲という形の反撃を受けた。ハンター達の奮闘によって、アーリアは命は守られた。
 B城塞突破の機会をうかがう領地混合軍だが足止めを食らう。気候によって湖全体に濃霧が発生したのである。
 特殊な能力を持つ雑魔によってゲリラ戦が仕組まれたものの、ハンター達の力を借りて撃退。ようやく霧が晴れたとき、投石機の修理等、事前の準備を整えていた領地混合軍は攻撃開始する。B城壁の一角を崩して突破口を開いたのだった。


 濃霧は未だアスタロト城の小島周辺を覆い続けている。
 その間に拠点にて、幾度となく作戦会議が開かれた。臣下達から突撃の具申が行われたものの、アーリアは首を縦に振らなかった。
(アスタロトの出方が気になる……。何か企んでいるのでは)
 アーリアを倒すために転移してきた以降、アスタロトは姿を現していない。B城壁の維持は、敵側にとって重要案件だったはず。加勢の素振りすらしなかった態度は不可解といわざるを得なかった。
 三日前から朝夕の時間帯を除けば比較的、霧の薄い日が続いている。ハンター一行も昨日から待機済みだ。
 再びハンター達に斥候を任せようとの案もでたが、それはアーリアによって退けられた。向かう先は敵戦力が集中する城内であり、あまりにも危険だというのがその理由である。
「アスタロトも策を練っているはず。敵の手中へ飛びこむとしても、視界が遮られていては対処のしようもない。……日中で、霧が晴れた天候ならば、悪辣な罠が仕掛けられていても挑むべきだろう。そこまでは待て、待つのだ」
 アーリアの説得に苦虫を潰したような表情をした臣下達であったが、その機会は早くに訪れる。二日後の昼頃に霧が晴れて、遠くまで見通せるようになった。
 突撃が開始されて、崩したB城塞の下に積み上がる瓦礫の山を兵や騎士達が駆けのぼる。
(おかしい……)
 アーリアは報告を耳にして訝しんだ。想像していたよりも敵雑魔の数が少なく、難なくB城壁を突破できたからだ。まるで先の激しい戦闘が嘘だったかのように。
「滑稽だな。皆の者!」
 唐突に天空から声が届いた。逆光の輪郭はまさしくアスタロト。その言葉はアーリアへと投げかけられる。
「アーリアよ。我と対したいのではないか? なら、自らこの城の最上階まで這い上がって来い。怖じ気づいて、他の者を寄越すのならそれもよかろう。どうであれ、楽しみにしておるぞ」
 アスタロトは笑い声を残し、城へと姿を消していった。

リプレイ本文


「アスタロト、一体何を考えているのでしょうか? アーリアさんも、これ以上彼と話すこともないと思いますが」
「だがわざわざ招待してくれたんだ。思惑があるにしても、俺は応えてやらねばと思うが」
 ミオレスカ(ka3496)とロニ・カルディス(ka0551)はアスタロトが城内に戻っていた直後、アーリアへとふり向く。
「……どのような罠が仕掛けられていようとも、ここは向かわねばならぬ」
 鋭い視線を放つアーリアが、自らの意思を強い口調で周囲の一同へと告げた。
「そこまで覚悟が決まっているなら止める気はない、一緒に行こうアーリア。だが、あんたや俺達と軍を分断させるのが目的の可能性もある。万が一に備えて指揮伝達は徹底しておいてくれよ」
 ヴァイス(ka0364)の返答に、アーリアがわずかながら表情を緩ませる。
「ハンターの皆、城の最上階に辿り着くために、どうか力を貸して欲しい」
「エルブン伯爵に指一本触れされはしない! 必ず護ってみせる!!」
 アーリアの頼みを深く受けとめた南護 炎(ka6651)は声を張りあげた。
「以前に投石器を黙らせたときからずいぶんと立つが、まだくすぶってたんじゃな」
「アスタロトが何を企んでいるか知らないけど、行くしかないんだよ」
 B城壁周辺で繰り広げられる戦闘を横目で眺めたミグ・ロマイヤー(ka0665)と、弓月 幸子(ka1749)が言葉を交わす。
(何故、アーリアを挑発するような行動を取った? 単なる余裕? それとも、どうしてもアーリアを最上階へ来させたい理由があるのか?)
 鳳凰院ひりょ(ka3744)は、上空で愉悦の表情を浮かべていたアスタロトを思いだした。
「アーリアはアスタロトの意図を確認するためにも、城に行くべきだと思うの。でも私は……どうして今頃アスタロトがこんなこと言い出したのか、不安なの。ごめんなさい――」
 ディーナ・フェルミ(ka5843)は、これからどうしたいのかをアーリアに伝えた。城塞都市マールにいるミリアの元へ行きたいと。
「アスタロトはアーリアの努力を嘲笑いたい人だと思うの。自分ならもっと簡単にできたと、優秀だったと貶したい人だと思うの」
 心配げなディーナにアーリアが「ミリアを頼む」といって、掌を肩へと乗せる。「上るよりも下るほうが大変かも知れない」と言い残し、ディーナは城と反対の方角へと駆けていった。


 ライトニングボルトの輝きが飽和し、槍を手に迫る蜥蜴雑魔等が稲妻によって串刺しとなる。
「しかし絶対数が少ないな。確かに楽だが、この状況は嫌な予感がする」
 ヴァイスは倒した雑魔が崩れて黒い塵と化していく様子を眺めながら呟いた。
「確かにおかしい……。最上階でアスタロトと話せたのなら、色々と問い質したいところだ」
 頭上を仰いだロニがシャドウブリットの黒塊を飛ばす。高所から仲間を狙っていた蜥蜴雑魔弓兵に命中。激しく姿勢を崩して落ちていく。
 B城壁の瓦礫の山を越え、庭を突っ切って城内へ。すでに味方の騎士や兵の多くも到達しており、アスタロト側との戦闘が繰り広げられていた。
「俺は南護炎、歪虚を断つ剣なり!」
 階段を見つけた南護炎は剣心一如を使いつつ、敵の直中へと飛びこむ。二連之業による連続の攻撃でうねる蛇型雑魔の首を刎ねて、そのまま陣取り露払いを始める。
(城内にはそれなりに敵がいるようですね。手応えは感じませんけど)
 ミオレスカが妨害射撃を付与して銃撃。仲間に振りおろされようとしていた敵の剣を銃弾で弾いた。「敵の東側防御、薄くなりました」戦闘のために仲間が少々散ってしまっても、ヘッドセットを被っていれば連携に支障はなかった。
「ま、こういうこともあろうかと思うていたのじゃ。ここはミグに任せるがよい」
 攻性防壁で守りを固めたミグは、過大集積魔導機塊「イノーマス」を稼動。強固に閉じられた鉄扉を攻撃した。火花を散らせながら次々と凹ませていき、数分後には拉げさせて弾きとばす。
「こういう所には四天王とか復活怪人とかいるんだよ。警戒しないと」
 弓月幸子はウィンドガストを鳳凰院にかけ直した。そして振り返り、階段下方から追いかけてくる敵集団に向かってライトニングボルトを輝かせる。
 鳳凰院は窓辺へと近づいて和弓を構えた。狙い定めた矢で翼竜雑魔の頭蓋を貫いて、迫り来るまでに倒しきる。
 はじめは折り返し階段だったが、途中から螺旋階段となった。阻む雑魔を倒しながら上り続けていく。アーリアも剣を振るって足止めの雑魔に刃を突き立てた。
「アスタロト……どこにいる?」
 アーリアは静かに敵首魁の名を呟く。兄だった頃の名は心の中に留めて。
 石積みの壁へと叩きつけられた雑魔が黒煙のような塵と化して散っていった。上階へと進む度に襲ってくる敵の数は減っていた。そうであってもハンターとアーリアの一団は警戒を緩めない。特別編成された騎士小隊が追いかける形で殿を務めている。
 響き渡る石階段をのぼる音。最上階へと繋がる飾り立てられた扉の前には、甲冑型の巨体雑魔二体が陣取っていた。
 ヴァイスと弓月幸子の雷撃が、それぞれの甲冑雑魔の胴体を貫いた。ロニはシャドウブリット、ミオレスカは銃撃で遠隔攻撃。鳳凰院の衝撃波が双方に決まったところで、アーリアと南護炎が一体ずつ仕留めきる。
 ミグは閉じられた扉へと近づいて、即座に打撃を開始。二十cmにも及ぶ分厚い鋼鉄の扉を無理矢理にこじ開けたのだった。


「ようこそ。下等な者共よ」
 貴族趣味が溢れた最上階。アスタロトは奥まった玉座へと腰かけていた。
 壁に飾られた絵画は、どれもアスタロトを中心に描かれたもの。一枚を眺めたヴァイスが「悪趣味な……」と吐き捨てるように呟く。水路が張り巡らされているところから、一目で場所がマールだとわかる。まるで地獄を切りとったかのように、歪虚や雑魔によって民衆が虐殺されている絵だ。
「その場に這いつくばって、許しを請え。といいたいところだが、まあいい。そこらの椅子に座っても構わぬぞ」
 けたたましく笑うアスタロトにいわれても、誰一人として座る者はいなかった。
「アーリアを始末するには、手緩いやり方といわざるを得ない。まるで我々をこの場に引きつけておきたいかのようだ。……何を企んでいるのだ?」
 真っ先に目が合ったロニがアスタロトへと問いかける。
「余興に過ぎぬのだが、黒伯爵としては愉快な騒動が始まる前に是非、ロクデナシな伯爵のご尊顔を眺めておきたくてな。陽動とは心外だな。そんなことをせずとも、我はこの領地を取り戻す所存だ」
 鼻で笑うアスタロト。ロニの次はミオレスカが睨みつけた。
「以前も訊こうとしましたが、ロランナさん達、あなたのために犠牲になった人のことを、どう思っているのですか?」
「知れたこと。すべては我の野望達成の礎に過ぎぬ。まあ、感謝はしておるぞ。これから始まる盛大な宴のために、時間稼ぎをしてくれたのだからな」
 ミオレスカは迷う。最上階のどこかに雑魔が隠れているのかも知れないが、今のところアスタロト一人しか見かけられない。魔導拳銃のグリップに手をかけつつ、状況を見守った。
 ヴァイスはアーリアがガウスジェイルの範囲にいることを確かめてから、一歩前にでた。
「アーリアをこの場所まで呼んだ理由はなんだ? 決着をつけるため……ではなさそうだが」
 ヴァイスは話しながら、ここに至るまでの敵布陣を脳裏で反すうする。アーリアを追い詰める勢いが非常に希薄だった。まるで目前にいるアスタロトの態度のように。
「それは、この真下こそがこれから始まる宴の中心に他ならぬからだ。その意味はいずれわかるであろう。絶望を感じながらな」
 笑いをかみ殺しながらアスタロトが語る。
「なおのこと、アスタロトよ。弟であったエルブン伯爵を苦しめるとはどういう了見だ?! 一体何が目的なんだ?!」
 南護炎が問うと、アスタロトは高笑いを最上階の隅々まで響かせた。
「よい、よいぞ! その真っ直ぐな物言い! そうだ、我を排除しようとしたものはすべて泥にまみれながら苦しめばよいのだ! 簡単には殺さぬよ。楽しみが減ってしまうからな」
 ミグは仲間達が相対している間に連結通話を使って、アスタロトが歪虚になった経緯をアーリアから教えてもらう。その上で彼女も質問を投げかける。
「そなたについては『黒男爵』と呼ばせてもらうことにしようかのう。ところで黒男爵、先程からの戯れ言を聞いていると、最終的にはアーリアが統治する伯爵地を奪うのが目的と考えてよいのかえ?」
「些末なことはあるが、そうではない。ニュー・ウォルターは元々は我が領地ぞ。伯爵を名乗るアーリアは我から伯爵地を奪った奸賊に過ぎぬ。奪うのではなく、奪還するというのが正しい物の見方だ」
「なるほどのう。歪虚の拠点にでもするつもりかえ?」
「知れたこと」
 アスタロトの口が軽くなるようミグはおだてながら聞きだそうとする。
「先程ロランナ、つまりネビュロスの話題がでていたが、今はどうなのだ? 腹心の姿はどこにも見当たらないが? そこまでの大口を叩いておいて、まさか雑魚しか従えてないなんていわないよな、アスタロト」
 鳳凰院は今後の戦いにおいて横やりを入れられる危惧を感じていた。それを見破るために挑発と鎌をかけてみる。
「そうか。我が腹心の姿を見えぬか? とっくの昔に晒しているはずだが。だがお前の目が節穴であっても恥じる必要はない。それだけ我が偉大なだけなのだから」
 アスタロトから小馬鹿にされても、鳳凰院は動じずに目配せをした。機が熟してきたと感じたからだ。
「私がここに来たのは、敵に背中を向けるわけにはいかなかったからだ。戦う覚悟はとうの昔にできている。アスタロトよ。決着をつけるというのならば、この場で受けて立とう」
「そう焦るな、アーリアよ。今日の我は機嫌がよいのだ。すべての段取りが整い、憎き仇がこうして雁首を揃えている。もうすぐ始まる阿鼻叫喚の地獄絵図を思い浮かべれば、震えるほどに心地よい。目前の端正な顔が歪み、崩れて、泣き叫ぶ姿が脳裏に浮かぶのだ」
 アーリアはアスタロトの挑発にのることなく、冷たい眼光を注ぎ続けた。アスタロトの喋りが終わりかけたとき、一同は動きだす。
「いろんな場所に飛べる力があるのに、どうしてわざわざ遠回りなことをしているのかな?」
 弓月幸子は射程延長した上でアースウォールを使おうとしたが取りやめていた。城の最上階には大地がないからだ。その代わり、ライトニングボルトでアスタロトの逃げ道を遮るように牽制した。
「我が使う転移のことか? 戯れの余興にはもってこいだろうよ」
 アスタロトが玉座から立ちあがったとき、遠隔の手段を持つ全員が攻撃を仕掛ける。
 ヴァイスはアーリアにガウスジェイルをかけて反撃に備えた。しかしアスタロトは笑い声の余韻を残し、一瞬のうちに姿を消してしまう。
「なんか傲慢らしくないよね、こういうふうに戦うの」
 不満げな弓月幸子が頬を膨らませる。
「逆説的にだが、傲慢のアイテルカイトが、このような真似をしたということは……はったりではないという証左ともいえる」
 鳳凰院は弓月幸子と話し終わってから、アーリアへとふり向く。そのとき窓の向こう側で、黄色い城征圧の狼煙が立ちのぼっていた。
「……すべてが終わったようだが、おそらくはそうではないのだろう。どのような企みが仕掛けられていようとも、対応できるようにしておかなければ」
 アーリアは窓外を眺めながら呟いた。
「何かを起こす気は十分に感じられたな」
「あれがはったりとは思えないな」
 ロニはフルリカバリーで、ヴァイスの減っていた生命力を回復させる。
「何だかんだといいながら、お喋りな奴であったのう。いくらかは何をしようとしているのか、類推できそうじゃて」
 ミグも眼下を見下ろした。城から逃げようとしている雑魔の掃討作戦が軍によって行われようとしている。
「アーリアさん、アスタロトは謀略を立てているでしょうが、私達がいます。大丈夫ですから」
「ありがとう、ミオレスカ殿。とても心強い」
 ミオレスカが差しだした手を、アーリアは両手で握りしめて感謝する。
「あの、人を小馬鹿にした態度、断じて許せん!」
 南護炎は非常に憤慨していた。視界に入った、つい先程までアスタロトが腰かけていた玉座を真っ二つに両断するのだった。


 城攻め開始の直後、ディーナはアーリアから拠点守護を任された騎士に手紙を預ける。湖を渡って小島から出立。愛馬エクウスで一日半の復路を駆け抜けて、マール城のミリアの元を訪ねた。
「どうなされましたの? ディーナ様」
「嫌な予感がしてたまらなかったの。ミリアさまの近辺とニュー・ウォルターに異変が起きていなかったか、教えて欲しいの」
 ミリアに事情を伝えながら、ディーナはひとまずほっと胸をなで下ろした。アスタロト配下による、ミリア誘拐の可能性も脳裏の片隅にあったからだ。
 アスタロト城の小島攻略に、かなりの兵力が割かれている。しかし城塞内を護るために必要な人員も温存されていた。
 ここ半年の間に雑魔絡みの問題は一件のみだ。歪虚崇拝者の摘発についても一件だけ。どちらも事件発生後ではなく、領民から通報があっての対処である。城塞内に隠れていたのを退治、または逮捕されていた。
「深読みすれば……城塞内の監視でもしていたのかも知れませんね」
「監視……、そうだとすればどういう意味が……あるの?」
 ミリアとディーナはアスタロトの思惑を想像してみたものの、答えまでは辿り着けなかった。その後ディーナは愛馬と共にマール周辺を探索。明るく暮らす領民達の姿を再確認しただけで、不安が感じられる場面には遭遇しなかった。
 半日後、アーリアからの早馬の便りが届く。その文には城の最上階でアスタロトとどのようなやり取りをしたのかが認められていた。
「これから何かが起こるの? しかもあの小島で?」
 手紙を読み終えたディーナは不安で仕方なかった。

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重体一覧

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • デュエリスト
    弓月 幸子(ka1749
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 覚悟の漢
    南護 炎(ka6651
    人間(蒼)|18才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン アーリア様護衛相談
ミオレスカ(ka3496
エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2018/01/16 11:02:34
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/01/16 00:37:16