ゲスト
(ka0000)
極大トカゲ雑魔再び
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/02/09 19:00
- 完成日
- 2018/02/14 23:11
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
グラズヘイム王国。
クリムゾンウェストの半島尖端に位置する国家。王都イルダーナを中心とした千年王国なる名を冠する大国だ。
王国は北西にある北萩の島「イスルダ島」を歪虚から奪還すべく、王国は騎士団を中心に戦力を送り込んでいた。
多くの犠牲を伴い、この度ようやくその奪還に成功した状況である。
国内の騎士達は長らくの悲願を達成し、改めて王国内で発生している歪虚、雑魔への対処を行う者も出始めていた。
とある山の山頂付近にいた1体の歪虚。
ドラゴンとも称される威容をした黒い歪虚。強欲の1体であるその名は、グラフという。
「……片手間なのは、いかがなものかとは思うがな」
彼は、この地を自身の実行支配地としてはいるが、常にこの山にいるわけではない。通いのような形でこの地を訪れ、支配領域を広げようとしていた。
なお、この山に放ったトカゲ雑魔達は順調に数を増やし、麓へと活動領域を広げてくれている。麓にいる邪魔な人間どもにも攻撃を仕掛けてくれている。
直に、この地に根を下ろしてもいいだろうとグラフが考えていた矢先のこと。まさか裏から攻めてくるとは。
どうやら相手も本腰を入れて、雑魔どもの駆除に当たり始めているようだ。
「我が領域に立ち入るならば、排除するだけのこと」
態勢を整える為にグラフは空へと飛翔し、山から飛び去っていく。
山の麓の集落は、山に住むトカゲ雑魔達と戦う者達の前線基地となっている。
すでに、この地から集落民が南西の古都アークエルスへと避難して久しい。
山の方角に高い防壁と、周囲を囲むように堀を造り始めており、現状は大体一般的なクリムゾンウェスト男性の腰程度まで掘り進められている。
主に3人のエルフが詰めており、手の空いたハンター達が交替でこの地にやってきており、トカゲ雑魔を討伐といった日々が続いていた。
「このまま護りに徹するわけにもな」
「…………」
皮肉屋のルイスがそんな言葉を呟くのを、アルウェスは聞き逃さない。
なかなか守りの一手に出られないのは、彼が慎重な性格であることも大きい。
エルフというのは元々森と共に住み、変化を是としない種族。アルウェスが保守的であるのも仕方のないことかもしれないが、こうして森を出て戦うからにはそうも言ってはいられない。ルイスの主張はこんなところだ。
「北東から山を登った連中の報告は、聞いているんだろう?」
話によれば、そちら側から山を登ったハンター、聖堂戦士団混成チームがこの山の歪虚と直接対面、わずかだが交戦もしたのこと。
自分達はこうして耐え凌ぐ戦いを考えていたのだが、実際、事態が動いたとあっては黙っているわけにも行かない。
「私もルイスと同じ意見です」
口数の少ないドミニクもアルウェスに告げる。この地に来て数ヶ月。ハンターズソサエティなどから物的支援を受けてはいるものの、精神的に安らぐ暇がなければ、どうにかせねばと考えるのも無理はない。
「ならば、こちらも攻めてみよう」
重い腰を上げたアルウェスは、トカゲ雑魔の領域を狭め、殲滅する為の作戦を彼らは立て始めることにする。
いつもよりもやや多めにハンターを雇い、一部は村の防衛を任せ、残りのメンバーとこちら側から山を登る作戦だ。
偵察はすれど、実際に山を登った事のないエルフ達は、実際の地形などを見ながら調査も兼ねて進むことにする。
実際にこの地へとわざわざやってくる歪虚だ。もしかしたら、山に何か歪虚の目的があるのかもしれない。あるいは、王国を攻める為の足がかりか……。
「ならば、準備を進めよう。敵が降りてこないうちにな」
こちらからも先手を。アルウェスはそうして、出撃の準備を開始したのだった。
グラズヘイム王国。
クリムゾンウェストの半島尖端に位置する国家。王都イルダーナを中心とした千年王国なる名を冠する大国だ。
王国は北西にある北萩の島「イスルダ島」を歪虚から奪還すべく、王国は騎士団を中心に戦力を送り込んでいた。
多くの犠牲を伴い、この度ようやくその奪還に成功した状況である。
国内の騎士達は長らくの悲願を達成し、改めて王国内で発生している歪虚、雑魔への対処を行う者も出始めていた。
とある山の山頂付近にいた1体の歪虚。
ドラゴンとも称される威容をした黒い歪虚。強欲の1体であるその名は、グラフという。
「……片手間なのは、いかがなものかとは思うがな」
彼は、この地を自身の実行支配地としてはいるが、常にこの山にいるわけではない。通いのような形でこの地を訪れ、支配領域を広げようとしていた。
なお、この山に放ったトカゲ雑魔達は順調に数を増やし、麓へと活動領域を広げてくれている。麓にいる邪魔な人間どもにも攻撃を仕掛けてくれている。
直に、この地に根を下ろしてもいいだろうとグラフが考えていた矢先のこと。まさか裏から攻めてくるとは。
どうやら相手も本腰を入れて、雑魔どもの駆除に当たり始めているようだ。
「我が領域に立ち入るならば、排除するだけのこと」
態勢を整える為にグラフは空へと飛翔し、山から飛び去っていく。
山の麓の集落は、山に住むトカゲ雑魔達と戦う者達の前線基地となっている。
すでに、この地から集落民が南西の古都アークエルスへと避難して久しい。
山の方角に高い防壁と、周囲を囲むように堀を造り始めており、現状は大体一般的なクリムゾンウェスト男性の腰程度まで掘り進められている。
主に3人のエルフが詰めており、手の空いたハンター達が交替でこの地にやってきており、トカゲ雑魔を討伐といった日々が続いていた。
「このまま護りに徹するわけにもな」
「…………」
皮肉屋のルイスがそんな言葉を呟くのを、アルウェスは聞き逃さない。
なかなか守りの一手に出られないのは、彼が慎重な性格であることも大きい。
エルフというのは元々森と共に住み、変化を是としない種族。アルウェスが保守的であるのも仕方のないことかもしれないが、こうして森を出て戦うからにはそうも言ってはいられない。ルイスの主張はこんなところだ。
「北東から山を登った連中の報告は、聞いているんだろう?」
話によれば、そちら側から山を登ったハンター、聖堂戦士団混成チームがこの山の歪虚と直接対面、わずかだが交戦もしたのこと。
自分達はこうして耐え凌ぐ戦いを考えていたのだが、実際、事態が動いたとあっては黙っているわけにも行かない。
「私もルイスと同じ意見です」
口数の少ないドミニクもアルウェスに告げる。この地に来て数ヶ月。ハンターズソサエティなどから物的支援を受けてはいるものの、精神的に安らぐ暇がなければ、どうにかせねばと考えるのも無理はない。
「ならば、こちらも攻めてみよう」
重い腰を上げたアルウェスは、トカゲ雑魔の領域を狭め、殲滅する為の作戦を彼らは立て始めることにする。
いつもよりもやや多めにハンターを雇い、一部は村の防衛を任せ、残りのメンバーとこちら側から山を登る作戦だ。
偵察はすれど、実際に山を登った事のないエルフ達は、実際の地形などを見ながら調査も兼ねて進むことにする。
実際にこの地へとわざわざやってくる歪虚だ。もしかしたら、山に何か歪虚の目的があるのかもしれない。あるいは、王国を攻める為の足がかりか……。
「ならば、準備を進めよう。敵が降りてこないうちにな」
こちらからも先手を。アルウェスはそうして、出撃の準備を開始したのだった。
リプレイ本文
●
グラズヘイム王国北東。
山岳地帯にあるとある山の南側に、雑魔と戦うエルフ達を中心としたハンターの小さな前線基地が築かれていた。
元々は100人程度が住む集落だったが、現在集落民は全員、アークエルスへと避難している。
彼らの為にも、いち早くここから見える山に巣食うトカゲ雑魔と、それを引きつける竜らしき歪虚を討伐したいところだが……。
「なかなか戦い甲斐のある相手です。血が騒ぎます」
黒髪をポニーテールとした豊満ボディの多由羅(ka6167)は物腰の丁寧さの奥に、好戦的な本性を持つ様子。
今回参加するハンターの中では唯一ユニットを連れず、生身のみでの参戦。
「よろしければ、私のイェジドで一緒に遊撃をいかがですか?」
それもあって、緋色の髪のオートマトン、冷泉 緋百合(ka6936)が彼女に提案する。
「頼もしいですね。名前はなんというのですか?」
すると、黒髪をポニーテールとした豊満ボディの多由羅(ka6167)が応じた。
「ヴァイスロートです。よろしくお願い致します」
外で、控えていたイェジドが素っ気無くも共闘するのを了承していたようだ。
他のメンバー達は、自律、搭乗の違いはあれ、大型兵器と共に参戦している。
「トカゲどもめ、次から次へと湧いて出てきやがって……。一匹残らず倒しつくす!!」
「護ってるだけじゃ、解決にならないって私も思うもの。敵の本拠地攻めだってニンジャにお任せなんだからっ!!」
際限なく現れる雑魔へ、南護 炎(ka6651) は直情的に怒りを露わにしている。そばでは、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が可愛らしく意気込みを見せていた。
「なんかでけー奴とやらせてくれっていうから、来たんだけれどよー」
今回、敵が巣食う山に攻め込むとあって、大物との戦いを予感していたゾファル・G・初火(ka4407)はややお気楽な印象すら抱かせる。
「あんな歪虚と戦ったら、ワシではどうもならん。もうなんの硬い!」
しかし、一度交戦したディヤー・A・バトロス(ka5743)は大きく首を横に振る。
「今回は見つかる前に帰ろうぞ?」
歪虚は非常に硬い鱗を持っている為、戦うなら最低でもこれをどうにかせねばとディヤーは考えていたようだ。
クオンも、大型のトカゲに対し、CAMでも火力不足を実感していて。
「今回のレポートで対戦車地雷とか125mm砲など、リアルブルーから配備して貰えると嬉しいのですが……」
そんな淡い期待を抱きつつ、ごく普通のリアルブルーの青年といった印象のクオン・サガラ(ka0018)は集落に詰めているエルフの1人、アルウェスと会話する。
「あなた達は小型の対処を願います」
これまでのパターンを見るに、トカゲ雑魔は大型と小型で現れることが多い。
それもあって、クオンは大型、最悪極大には近づかないようにと彼らに依頼していた。
「あと、危なくなったら、私以外のCAMを盾にするように言っておきます」
クオンのCAMは機動型のスラスターを持つ。それゆえに、近づくと危険だからと彼は説明する。
「わかった。よろしく頼む」
アルウェスはそれを了承し、改めてハンター達へと助力を請うのだった。
●
今回の目的は敵の陣地に乗り込み、攻勢に出ること。
ハンター達はある程度作戦について話し合った後、各自雑魔の対策を講じつつ山へと踏み出す。
「エグゼクターカスタムで出るのは、初めてじゃの」
R7エクスシア『ジャウハラ』に搭乗したディヤー。
今回の改造状態では初交戦とあって、本人はおっかなびっくりといった様子だ。
CAMに乗るメンバーがいる中、ルンルンは刻令ゴーレム「Volcanius」のニンタンク『大輪牡丹』に捕まって移動する。
「乗り込むのは敵の領域、十分に注意しておくに越したことは無いもの」
そう言うルンルンは双眼鏡で見回して周囲の様子や敵の接近を警戒し、傾斜を少しずつ上に向かって歩いていく。
登り始めた一行が二合目に差し掛かる頃。
R7エクスシア『FLAME OF MIND』を操り、前に立つ炎が何かに気付く。
「来るぞ!」
正面から向かい来るは、トカゲ雑魔の集団だ。
「『FLAME OF MIND』出撃する!!」
仲間に先んじて、彼はそのまま遠距離攻撃を仕掛けるべく、試作波動銃「アマテラス」に装備を換装する。
「皆さん、前方からの襲撃に備えてください!」
「おっ、おでましじゃん」
ガルガリン「ガルちゃん」のコクピットの中、ゾファルは嬉しそうに敵を見やる。
トカゲ雑魔の中には、CAMに負けない大きさの体躯をした2本足歩行の敵がいるではないか。
「これはまた……でかいですね」
緋百合もまた、イェジドを駆りながら巨大な敵を前方に見て率直な印象を口に出す。
彼女は以前、巨大生物と戦った経験があるが、あのトカゲはそれ以上に大きいのではないかと考える。
「まぁ、敵である事に変わりはありません。何時も通り私が狩って……貴様らが狩られる側だ」
そうして、圧縮したマテリアルを体内に吸収した緋百合は、白炎を撒き散らしながら覚醒する。真紅の髪は白く、肌は褐色に染まっていった。
そのまま、彼女は多由羅と共に、にじりよるように四本足で進む大小トカゲどもの遊撃に回っていく。
敵とは、まだ距離がある。
瞳の色を蒼と紅に変化させた炎は目つきを鋭くして、アマテラスで相手を狙い撃つ。まずは、こちらへと素早く寄ってくる小型狙いだ。
「先手必勝、仲間が到着する前に出来るだけ相手を消耗させちゃうのですニンタンクちゃん。……たーまやー」
同じく覚醒したルンルンもまたゴーレムに指示を出し、多数の敵を巻き込むように大砲から炸裂弾を発砲していく。
それは着弾と共に霰玉となり、トカゲどもの体へと浴びせかかった。
魔導型デュミナス「Phobos」のフライトシステムで一時的に飛行し、クオンはカメラやレーダーを駆使して、敵を確認する。
「今回の敵の編成は、比較的軽装の「偵察隊」といったところでしょうか」
また、彼はできるだけ速やかに周囲の索敵も行う。
監視こそいるかもしれないが、こちらを襲う素振りの敵が今のところ正面の敵軍のみ。
極大を後ろに従える形で、大小2体ずつが迫ってきている。
小型はCAM以外のユニット、そして、今回は徒歩では同行が難しいと判断してゴースロンを駆ってついてきていたエルフ達が下馬してから相手することになりそうだ。
「狙撃の基本は『高い所からでかつ最適な距離から』、なのでですね」
位置取りもこのまま行い、着地したクオンは火器管制システムを起動させつつライフルを構え、大型から狙い撃つ。
後続のメンバー達も続々と覚醒した上で、敵を迎撃する。
敵が敵だけにCAMで火力重視の武装を行うと、どうしても味方を巻き添えにする可能性が出てしまう。
「今回は武器が派手だから、声かけたら退避してね」
高性能照準装置「ベルサーリオ」をメインカメラに被せつつ、深緑のR7エクスシア「エクスシア・TTT」のコクピットの中から、ウーナ(ka1439)が呼びかける。
そして、四肢に幾何学紋様が走らせて、残忍な笑みを浮かべていた。
「わかった。私達はできる範囲で援護させてもらう」
ただ、小型も侮れない相手。身につけた装飾品を輝かせたディヤーはそれを重々承知している。
「奴ら小型といえど、小さいだけで攻撃・拘束手段も充分と来とる。早めに倒さんと厄介なじゃからな!」
そんな建前で臆病さを覆い隠すディヤーは、小型から相手をと考えていた。
対して、全長6mもの極大トカゲ雑魔は、ゾファルはそいつの足止めを買って出てみせる。
「やっぱ雑魔といえども、CAM乗ってドンパチすんならでけー奴とやるに限るじゃん」
格闘専用に強化した愛機のガルちゃんでどこまでできるか。
それを楽しみにしながら、彼女は巨大な敵へと向かっていくのである。
●
相手は、5体のトカゲ雑魔達。
極大の動きはかなり遅いが、ハンターを捕捉したその他の雑魔どもは加速して近寄ってきた。
「みなさーん、ニンタンクちゃんと足止め砲撃しますから、安心して自分の相手に集中しちゃってください!」
ルンルンは仲間達の間を縫って、砲撃を行う。
一方、射撃を行っていた炎は、元々の近接想定を考えて再び武器を換装する。
現状は、極大がやや遅れている。
接近戦に持ち込むまではクオンも砲撃戦に臨み、105mmスナイパーライフルの銃弾を大型へと叩き込んでいく。
ウーナも、今はこちらに迫ってくる大小雑魔の対応が先と判断する。
報告書を思い返すウーナはこれまでの戦いで、飛行、長距離戦は無意味と感じていた為やや前方に布陣していた。
また、極大トカゲは相手を石にする能力がある。
「間合いに入ったね? フィールド展開!」
生身で戦うエルフ達などは特に危険な為、自身の周囲にイニシャライズフィールドを展開して敵の異常攻撃に努める。
イェジドの後ろ側に跨る多由羅は相手よりも先手を取ろうと、大太刀「鬼霧雨」を握る
「さあ、参りましょう!」
「基本、私は多由羅に合わせよう」
ヴァイスロートを駆る緋百合が頷くと、多由羅はすらりと刃を抜いて地面を擦り上げるように敵へと刃を浴びせかける。
刃は摩擦によって燃え上がり、小トカゲの体を焦がす。
緋百合もまた、自身が放つ白炎を練り上げて1本の槍のようにし、それを自らの拳に纏わせて叩きつけて行く。
「行くぞ。みんな!」
聖罰刃「ターミナー・レイ」を両手で握る炎は仲間に呼びかけ、呼吸を整える。その上で彼はスキルトレースを活かし、二連撃を浴びせていった。
その間に、素早い小トカゲだけでなく、大トカゲも迫ってきている。
大トカゲが叩きつけてくる強烈な尻尾での一撃。炎はそれを庇護者の光翼で受け止め、反撃の機会を待つ。
前に出たディヤーは雑魔をエルフ達に近づけさせぬようブロックし、伸びてくる舌を盾で防いでいた。
ややおどおどしていたディヤーだったが、いざ戦いとなれば派手好きが上回り、彼はマテリアルバリアを張りつつ応戦する。
「こやつら小さくて、攻撃が当てづらくてかなわんし、早めに倒して次に参ろうぞ!」
「そうだな」
返事をするエルフのリーダー、アルウェスはその間にエルフ同士で連携して矢と魔法を浴びせかけ、敵の足を狙ってその移動を封じようと動いていた。
そんな仲間達を尻目に、眩いばかりのマテリアルを噴き出すゾファルはフライトシールド「プリドゥエン」の上に機体を載せ、前へと飛び出していく。
まるでサーファーのように飛び出す彼女は、根っからの死地好きらしい。
「格闘専用に強化しまくっている愛機のガルちゃんとジルバを踊るぜー」
狙いは最初から、極大トカゲ雑魔のみ。
敵が大きく息を吸い込む間に、囮となるゾファルは1人、敵へと飛び蹴りをかまし、機先を制しようとした。
そして、彼女はそいつの肩へと飛び蹴りを喰らわせる。
「でか物の総身に知恵が回っているか、俺様ちゃんがためしてやるじゃん」
そのまま交戦に入るゾファルのガルガリン。
極大トカゲは早速炎を吐き掛け、その装甲を焦がして行くのだった。
●
戦いは序盤、2ヶ所に分かれて繰り広げられる。
前方では、ガルガリンに乗るゾファルが6mもある極大トカゲを抑えている。
眼力で睨みつけてくる敵。その視線には相手を石化する力があり、ガルガリンの腕が石と化していく。
だが、ゾファルはシステムと魔導エンジンを再起動させ、ガルガリンの挙動を元に戻す。
その上で、彼女は敵の腕に斬艦刀『雲山』を大きく振り回し、叩き込もうとしていく。
「斬艦刀一振りで立ち向かう俺様ちゃんて、クール」
いきなり胴体を狙うことはせず、ゾファルは敢えて手先、足先の損傷から攻め立てる。彼女は相手の気を引きつつ、この戦いをじっくりと楽しもうと考えていた様子だ。
「あれ、ホントにトカゲ!? 火吹いて石化睨みとか、ドラゴンじゃないの!?」
極大トカゲが暴れる姿を見たウーナが驚きの声を上げてはいたが、ゾファルのおかげもあり、彼女もまずは他のメンバーと共に大小トカゲ雑魔の対処に集中することにする。
こちらを主立って抑えているのは、炎とディヤーだ。
広範囲を移動し、舌を伸ばしてくる小トカゲ。それに、やや力押しで攻めてくる感のある大トカゲ。
連携は余り感じないが、それだけにこちらの油断を誘って手痛いダメージを与えてきたり、機を見て突破しようとしてきたりと、敵の動きに注意を払わねばならぬのが面倒だ。
それを防ぐのと、ダメージを稼ぐ為に、砲撃でニンタンクに足止めをさせるルンルン。
彼女はそのニンタンクから降り、山の傾斜に符を置くことで不可視の結界を張って行く。
そこにうまく大トカゲを誘導できたことで、ルンルンはにこりと笑う。
「ルンルン忍法土蜘蛛の術&畳返し……風下に立ったのがあなたの不覚なのです」
風は関係ないとツッコミを入れるのは、野暮だろうか。
ともあれ、トカゲの足元が泥状に固まり、そいつの動きを止めたのは間違いない。
その大トカゲと動く別の小トカゲ1体が並ぶタイミング。
『エクスシア・TTT』に搭載されたマテリアルライフルの照準を合わせ、複数の敵を纏めて撃破する絶好のチャンスと見たウーナが叫ぶ。
「……よし、今だ!」
砲口から、一直線に発射される紫色の光線。
直線上にいた大小トカゲ1体ずつが射抜かれるのに、ウーナは大きな手応えを感じて。
「いいね。この調子……!」
「ふむ、さすがじゃの」
そんなウーナの操縦に、トカゲどもを抑えるディヤーが目を見張っていた。
大トカゲはなおも足を取られてもがくが、痛みに悶えた小トカゲが大きく口を開いて食らい付いてくる。
ウーナの『エクスシア・TTT』に襲い掛かるそいつの前に、炎の『FLAME OF MIND』が躍り込んで。
「やらせるものかよ!」
彼は勢いに任せて聖罰刃を振り下ろし、さらに高く切り上げる。
身体を裂かれたその小トカゲはだらりと舌を垂らしてうな垂れ、溶ける様に消滅していった。
敵は1体減ったが、依然暴れ狂う敵はCAMだけでなく、目ざとくその後方のエルフ達や、イェジドに乗る2人に舌や尻尾を伸ばしてくる。
ルンルンはそれを出現させたアースウォールで食い止めつつ、時に戦いの手を止めて双眼鏡で観察していた。
「ここを攻略して行くのに役立つ情報が、掴めるかもだもの」
そうして、彼女は時に魔導カメラで前方の撮影などして、何か新たな情報を掴もうとしていたようだ。
その間に、エルフ、ルイスの放つ牽制の矢が小トカゲの足を射抜く。ドミニクもアイスボルトで相手の動きを止めていたようだ。
完全に攻撃を封じることができれば、ディヤーも攻撃に転じる事ができそうだが、事はそううまく運ばない。
今しばらくディヤーは守りに徹することとなりそうだと考えていたところで、ウーナがマシンガンを発射していく。
「こんな隙、見逃すわけないじゃない」
その弾丸の雨によって体にいくつも風穴を開けた小トカゲは、倒れる間もなく消え去っていく。
「パイロット適性とその動き、倣いたいものじゃ」
再び、鮮やかな操縦テクニックを見せ付けたウーナ。ディヤーは思わず舌を巻いてしまう。
そのディヤーの目に張ったのは、遊撃に動くイェジド騎乗の緋百合と多由羅だ。
基本の攻撃の型として、まず黒いポニーテールを揺らす多由羅が納刀の構えから大太刀「鬼霧雨」で斬りかかる。
続き、白炎を揺らめかす緋百合が機械手甲「フラルゴ」を相手に叩き込み、鱗の上から直接体内に痛打を与えていく。
態勢が許せば、ヴァイスロートもマテリアルを込めた牙を突き立て、援護してくれていたようだ。
「ワシも援護に回ろう。不意打ちにはくれぐれも注意するのじゃ」
小型を倒し、機動力の高い相手がいなくなったことあって、ディヤーも攻撃に掛かり始める。
マジックエンハンサーを展開し、精神を集中させてからの氷の矢。それを受けた大トカゲの右前脚が凍りつく。
遊撃を行う2人だが、好機とあれば、存分に攻め立てる。
「多由羅、いけるか?」
「問題ありません、緋百合様」
初めてのタッグとあって、連携がうまくいかぬ部分が多い2人。
ただ、うまくかみ合えば、敵を追い込むことにも繋がる。
緋百合の拳を真横から受けてその身を硬直させた大トカゲへ、多由羅が赤い軌道を残しながら抜刀した大太刀「鬼霧雨」の刃でその鱗を切り裂いていく。
どす黒い血をぶち撒けたそいつは目から光を失い、重い音を立てて倒れた直後にどろりと全身を溶かして行った。
「次……」
雑魔1体を倒した彼女達。
他メンバーが残りの大型を相手にしている最中、前方に目を向けると、孤軍奮闘するゾファルがかなり消耗していることに気付く。
その相手は、極大トカゲ雑魔だ。
「荷が重いとわかっていても……、やはりやり合いたい相手ですね」
そんな多由羅の主張に、逆に邪魔になってしまうのではという考えが緋百合の脳裏に過ぎった。
とはいえ、今回は基本彼女に合わせる形を取ろうとしていたこともあり、緋百合は前方へとイェジドを走らせていくこととなる。
いくらCAMを使っても、1機だけで抑えるには厳しい相手。
それでもゾファルは奮戦し、この戦いを心から楽しんでいた。
「加勢しよう」
緋百合もそれに応じて、極大へと白炎と共に殴りかかる。
極大はそんな彼女達を睨みつけていく。見る者を石と化す魔眼だ。
ただ、ウーナが時折効果が切れぬよう展開するイニシャライズフィールドの効き目は抜群。相手の石化睨みを防ぐのに、大きく貢献していた。
仲間の支援を受け、多由羅は見上げんばかりの体躯を持つ敵に納刀から紅蓮の一刀を見舞う。
相手は炎の蜥蜴ということだが、全く効いていないというわけでもなさそうに見える。
個体差の問題かもしれないが、彼女はそのまま燃え上がる斬撃を浴びせていたようだ。
(はた目には、やみくもに刀振り回しているようだが……)
ゾファルは彼女達の遊撃に頷きつつ、斬艦刀「雲山」で斬り付けつつ挟撃を行う。
手数が増えて楽になったかと思ったのも束の間のこと。もっと打ち合わせすべきだったと、ゾファルはすぐ後悔することとなる。
ほとんど立ち回りを考えずに突っ込む形となった2人は、イェジドもろとも業火に焼かれることとなってしまったのだ。
「あぁっ……!」
「…………っ」
致命打となってしまった一撃に、彼女達は地面に投げ出されるようにして倒れてしまい、しばらく動けなっていたようだった。
●
倒れる仲間がいる中、ハンター達は残る大トカゲを追い込んでいて。
時に、足を取られて動きを止めていた大型雑魔だったが、それでも突っ込み、のしかかってこようとしてくる。
「やぶれかぶれ……といったところですか」
そんな相手を冷静に見つめていたクオンは、ツインカノン「リンクレヒトW2」の引き金を引く。
叩き込まれた砲弾の爆発によって砲弾を浴びた部分が吹っ飛び、口から黒煙を吐き出した大トカゲはその場に消えていった。
問題は、今なお健在の極大トカゲだ。
「ドラゴン……ま、まさかねー?」
恐る恐るといった具合に、ウーナはそいつの討伐へと動く。
「油断ならん相手だな……」
エルフのリーダー、アルウェスがCAMメンバーの後ろから敵を見た。
相手は他の雑魔が倒されたことで、ゾファルから狙いをこちらに移していたようだ。
「トカゲめ、かかって来い!」
そこで、炎が向かい来る敵に呼吸を整えてからの連撃を叩き込むが、流石に多少の攻撃ではビクともしない。
その四肢はゾファルの攻撃によって、かなり痛んではいた。
日の光を受けて煌く牙、そして強靭なアゴでの食らいつきを、炎は大盾で弾きつつ次の攻撃に繋げようとする。
ならばと、敵は力ある睨みでメンバーを石に使用とするが、ウーナが切らすことなくイニシャライズオーバーを起動しており、ハンター達に隙がない。
相手も石化があまり効かないと感じたのか、食らいつきと炎に攻撃を絞ってきていたようだ。
ゾファルもガルちゃんがかなり傷ついていたことを察していたものの、攻めの姿勢を崩さず、渾身の一撃をその脳天に打ち込む。
「そういえば、火を吐くが、火に耐性はあるんか?」
ディヤーは先ほどの多由羅と同じ疑問を抱き、できるだけ仲間を巻き込まぬよう中心を味方のいない空中にし、極大トカゲに火球を放つ。
さらに彼はプラズマボム「ネブリーナ」を発して、2種のスキルの効力を対比する。
「魔力を弾いている様子はないようじゃのう」
物理よりも魔法だと比較的効きそうな印象。ディヤーは今後の敵の攻略の糸口をしっかりと掴んでいたようだ。
「やはり、油断は禁物ですね」
仲間が倒れていることにそんな感想を抱きつつ、クオンも攻撃を続ける。
105mmスナイパーライフルでは通じぬ可能性も考え、ツインカノン「リンクレヒトW2」で弾丸を撃ち込んでいく。
(さすがに、こういったサイズの個体が飛ぶとは考えなくないですがね……)
歪虚は翼を持つが、極大に翼はないことをクオンは確認する。
ともあれ、相手がまた魔眼を使ってくることを警戒しつつ、クオンはツインカノンをリロードしていく。
ゆっくりと動き、前進してくる巨大トカゲ。
ルンルンは事前に地面に張った地縛符に、相手がかかったことを察して。
「今ですニンタンクちゃん、合体忍法炎魔地獄陣!!」
拡声器を使ったルンルンの言葉で、後方に下がっていたニンタンクが火炎弾を発する。
上半身を爆撃された極大トカゲの体が煽られ、ようやく態勢が崩れかけた。
ウーナもここぞと試作電磁加速砲「ドンナー」に換装し、自身の生体マテリアルを使ってエネルギーを満たしていく。
「いっけー!」
発射された電磁砲が極大雑魔の胸部を穿つ。
さすがに2度も強烈な攻撃を立て続けに浴びれば、敵も苦しそうな素振りを見せる。
さらに、ゾファルが幾度目かの渾身の一撃を斬艦刀「雲山」の頭上から振り下ろす。
「なかなかだったじゃんか」
手ごたえは十分と感じたゾファル。
今度はさすがに耐えられず、目から光を失ったトカゲは山の上にその巨体を転がし、潰えていったのだった。
雑魔の群れを撃破し、思った以上にハンター達の負傷が大きい。守られていたエルフ達が傷つくメンバーを介抱する状況だ。
「悪さが見つかる前に帰るぞー!?」
戦いが終わり、我に戻ったディヤーは歪虚出現の可能性を感じ、仲間達に後退を促す。実際、彼は本気で帰りたいとも考えていたのだろう。
極大トカゲの強さをその身で実感しつつも、ハンター達は今回の攻略は断念し、前線基地まで退くことにしたのだった。
グラズヘイム王国北東。
山岳地帯にあるとある山の南側に、雑魔と戦うエルフ達を中心としたハンターの小さな前線基地が築かれていた。
元々は100人程度が住む集落だったが、現在集落民は全員、アークエルスへと避難している。
彼らの為にも、いち早くここから見える山に巣食うトカゲ雑魔と、それを引きつける竜らしき歪虚を討伐したいところだが……。
「なかなか戦い甲斐のある相手です。血が騒ぎます」
黒髪をポニーテールとした豊満ボディの多由羅(ka6167)は物腰の丁寧さの奥に、好戦的な本性を持つ様子。
今回参加するハンターの中では唯一ユニットを連れず、生身のみでの参戦。
「よろしければ、私のイェジドで一緒に遊撃をいかがですか?」
それもあって、緋色の髪のオートマトン、冷泉 緋百合(ka6936)が彼女に提案する。
「頼もしいですね。名前はなんというのですか?」
すると、黒髪をポニーテールとした豊満ボディの多由羅(ka6167)が応じた。
「ヴァイスロートです。よろしくお願い致します」
外で、控えていたイェジドが素っ気無くも共闘するのを了承していたようだ。
他のメンバー達は、自律、搭乗の違いはあれ、大型兵器と共に参戦している。
「トカゲどもめ、次から次へと湧いて出てきやがって……。一匹残らず倒しつくす!!」
「護ってるだけじゃ、解決にならないって私も思うもの。敵の本拠地攻めだってニンジャにお任せなんだからっ!!」
際限なく現れる雑魔へ、南護 炎(ka6651) は直情的に怒りを露わにしている。そばでは、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が可愛らしく意気込みを見せていた。
「なんかでけー奴とやらせてくれっていうから、来たんだけれどよー」
今回、敵が巣食う山に攻め込むとあって、大物との戦いを予感していたゾファル・G・初火(ka4407)はややお気楽な印象すら抱かせる。
「あんな歪虚と戦ったら、ワシではどうもならん。もうなんの硬い!」
しかし、一度交戦したディヤー・A・バトロス(ka5743)は大きく首を横に振る。
「今回は見つかる前に帰ろうぞ?」
歪虚は非常に硬い鱗を持っている為、戦うなら最低でもこれをどうにかせねばとディヤーは考えていたようだ。
クオンも、大型のトカゲに対し、CAMでも火力不足を実感していて。
「今回のレポートで対戦車地雷とか125mm砲など、リアルブルーから配備して貰えると嬉しいのですが……」
そんな淡い期待を抱きつつ、ごく普通のリアルブルーの青年といった印象のクオン・サガラ(ka0018)は集落に詰めているエルフの1人、アルウェスと会話する。
「あなた達は小型の対処を願います」
これまでのパターンを見るに、トカゲ雑魔は大型と小型で現れることが多い。
それもあって、クオンは大型、最悪極大には近づかないようにと彼らに依頼していた。
「あと、危なくなったら、私以外のCAMを盾にするように言っておきます」
クオンのCAMは機動型のスラスターを持つ。それゆえに、近づくと危険だからと彼は説明する。
「わかった。よろしく頼む」
アルウェスはそれを了承し、改めてハンター達へと助力を請うのだった。
●
今回の目的は敵の陣地に乗り込み、攻勢に出ること。
ハンター達はある程度作戦について話し合った後、各自雑魔の対策を講じつつ山へと踏み出す。
「エグゼクターカスタムで出るのは、初めてじゃの」
R7エクスシア『ジャウハラ』に搭乗したディヤー。
今回の改造状態では初交戦とあって、本人はおっかなびっくりといった様子だ。
CAMに乗るメンバーがいる中、ルンルンは刻令ゴーレム「Volcanius」のニンタンク『大輪牡丹』に捕まって移動する。
「乗り込むのは敵の領域、十分に注意しておくに越したことは無いもの」
そう言うルンルンは双眼鏡で見回して周囲の様子や敵の接近を警戒し、傾斜を少しずつ上に向かって歩いていく。
登り始めた一行が二合目に差し掛かる頃。
R7エクスシア『FLAME OF MIND』を操り、前に立つ炎が何かに気付く。
「来るぞ!」
正面から向かい来るは、トカゲ雑魔の集団だ。
「『FLAME OF MIND』出撃する!!」
仲間に先んじて、彼はそのまま遠距離攻撃を仕掛けるべく、試作波動銃「アマテラス」に装備を換装する。
「皆さん、前方からの襲撃に備えてください!」
「おっ、おでましじゃん」
ガルガリン「ガルちゃん」のコクピットの中、ゾファルは嬉しそうに敵を見やる。
トカゲ雑魔の中には、CAMに負けない大きさの体躯をした2本足歩行の敵がいるではないか。
「これはまた……でかいですね」
緋百合もまた、イェジドを駆りながら巨大な敵を前方に見て率直な印象を口に出す。
彼女は以前、巨大生物と戦った経験があるが、あのトカゲはそれ以上に大きいのではないかと考える。
「まぁ、敵である事に変わりはありません。何時も通り私が狩って……貴様らが狩られる側だ」
そうして、圧縮したマテリアルを体内に吸収した緋百合は、白炎を撒き散らしながら覚醒する。真紅の髪は白く、肌は褐色に染まっていった。
そのまま、彼女は多由羅と共に、にじりよるように四本足で進む大小トカゲどもの遊撃に回っていく。
敵とは、まだ距離がある。
瞳の色を蒼と紅に変化させた炎は目つきを鋭くして、アマテラスで相手を狙い撃つ。まずは、こちらへと素早く寄ってくる小型狙いだ。
「先手必勝、仲間が到着する前に出来るだけ相手を消耗させちゃうのですニンタンクちゃん。……たーまやー」
同じく覚醒したルンルンもまたゴーレムに指示を出し、多数の敵を巻き込むように大砲から炸裂弾を発砲していく。
それは着弾と共に霰玉となり、トカゲどもの体へと浴びせかかった。
魔導型デュミナス「Phobos」のフライトシステムで一時的に飛行し、クオンはカメラやレーダーを駆使して、敵を確認する。
「今回の敵の編成は、比較的軽装の「偵察隊」といったところでしょうか」
また、彼はできるだけ速やかに周囲の索敵も行う。
監視こそいるかもしれないが、こちらを襲う素振りの敵が今のところ正面の敵軍のみ。
極大を後ろに従える形で、大小2体ずつが迫ってきている。
小型はCAM以外のユニット、そして、今回は徒歩では同行が難しいと判断してゴースロンを駆ってついてきていたエルフ達が下馬してから相手することになりそうだ。
「狙撃の基本は『高い所からでかつ最適な距離から』、なのでですね」
位置取りもこのまま行い、着地したクオンは火器管制システムを起動させつつライフルを構え、大型から狙い撃つ。
後続のメンバー達も続々と覚醒した上で、敵を迎撃する。
敵が敵だけにCAMで火力重視の武装を行うと、どうしても味方を巻き添えにする可能性が出てしまう。
「今回は武器が派手だから、声かけたら退避してね」
高性能照準装置「ベルサーリオ」をメインカメラに被せつつ、深緑のR7エクスシア「エクスシア・TTT」のコクピットの中から、ウーナ(ka1439)が呼びかける。
そして、四肢に幾何学紋様が走らせて、残忍な笑みを浮かべていた。
「わかった。私達はできる範囲で援護させてもらう」
ただ、小型も侮れない相手。身につけた装飾品を輝かせたディヤーはそれを重々承知している。
「奴ら小型といえど、小さいだけで攻撃・拘束手段も充分と来とる。早めに倒さんと厄介なじゃからな!」
そんな建前で臆病さを覆い隠すディヤーは、小型から相手をと考えていた。
対して、全長6mもの極大トカゲ雑魔は、ゾファルはそいつの足止めを買って出てみせる。
「やっぱ雑魔といえども、CAM乗ってドンパチすんならでけー奴とやるに限るじゃん」
格闘専用に強化した愛機のガルちゃんでどこまでできるか。
それを楽しみにしながら、彼女は巨大な敵へと向かっていくのである。
●
相手は、5体のトカゲ雑魔達。
極大の動きはかなり遅いが、ハンターを捕捉したその他の雑魔どもは加速して近寄ってきた。
「みなさーん、ニンタンクちゃんと足止め砲撃しますから、安心して自分の相手に集中しちゃってください!」
ルンルンは仲間達の間を縫って、砲撃を行う。
一方、射撃を行っていた炎は、元々の近接想定を考えて再び武器を換装する。
現状は、極大がやや遅れている。
接近戦に持ち込むまではクオンも砲撃戦に臨み、105mmスナイパーライフルの銃弾を大型へと叩き込んでいく。
ウーナも、今はこちらに迫ってくる大小雑魔の対応が先と判断する。
報告書を思い返すウーナはこれまでの戦いで、飛行、長距離戦は無意味と感じていた為やや前方に布陣していた。
また、極大トカゲは相手を石にする能力がある。
「間合いに入ったね? フィールド展開!」
生身で戦うエルフ達などは特に危険な為、自身の周囲にイニシャライズフィールドを展開して敵の異常攻撃に努める。
イェジドの後ろ側に跨る多由羅は相手よりも先手を取ろうと、大太刀「鬼霧雨」を握る
「さあ、参りましょう!」
「基本、私は多由羅に合わせよう」
ヴァイスロートを駆る緋百合が頷くと、多由羅はすらりと刃を抜いて地面を擦り上げるように敵へと刃を浴びせかける。
刃は摩擦によって燃え上がり、小トカゲの体を焦がす。
緋百合もまた、自身が放つ白炎を練り上げて1本の槍のようにし、それを自らの拳に纏わせて叩きつけて行く。
「行くぞ。みんな!」
聖罰刃「ターミナー・レイ」を両手で握る炎は仲間に呼びかけ、呼吸を整える。その上で彼はスキルトレースを活かし、二連撃を浴びせていった。
その間に、素早い小トカゲだけでなく、大トカゲも迫ってきている。
大トカゲが叩きつけてくる強烈な尻尾での一撃。炎はそれを庇護者の光翼で受け止め、反撃の機会を待つ。
前に出たディヤーは雑魔をエルフ達に近づけさせぬようブロックし、伸びてくる舌を盾で防いでいた。
ややおどおどしていたディヤーだったが、いざ戦いとなれば派手好きが上回り、彼はマテリアルバリアを張りつつ応戦する。
「こやつら小さくて、攻撃が当てづらくてかなわんし、早めに倒して次に参ろうぞ!」
「そうだな」
返事をするエルフのリーダー、アルウェスはその間にエルフ同士で連携して矢と魔法を浴びせかけ、敵の足を狙ってその移動を封じようと動いていた。
そんな仲間達を尻目に、眩いばかりのマテリアルを噴き出すゾファルはフライトシールド「プリドゥエン」の上に機体を載せ、前へと飛び出していく。
まるでサーファーのように飛び出す彼女は、根っからの死地好きらしい。
「格闘専用に強化しまくっている愛機のガルちゃんとジルバを踊るぜー」
狙いは最初から、極大トカゲ雑魔のみ。
敵が大きく息を吸い込む間に、囮となるゾファルは1人、敵へと飛び蹴りをかまし、機先を制しようとした。
そして、彼女はそいつの肩へと飛び蹴りを喰らわせる。
「でか物の総身に知恵が回っているか、俺様ちゃんがためしてやるじゃん」
そのまま交戦に入るゾファルのガルガリン。
極大トカゲは早速炎を吐き掛け、その装甲を焦がして行くのだった。
●
戦いは序盤、2ヶ所に分かれて繰り広げられる。
前方では、ガルガリンに乗るゾファルが6mもある極大トカゲを抑えている。
眼力で睨みつけてくる敵。その視線には相手を石化する力があり、ガルガリンの腕が石と化していく。
だが、ゾファルはシステムと魔導エンジンを再起動させ、ガルガリンの挙動を元に戻す。
その上で、彼女は敵の腕に斬艦刀『雲山』を大きく振り回し、叩き込もうとしていく。
「斬艦刀一振りで立ち向かう俺様ちゃんて、クール」
いきなり胴体を狙うことはせず、ゾファルは敢えて手先、足先の損傷から攻め立てる。彼女は相手の気を引きつつ、この戦いをじっくりと楽しもうと考えていた様子だ。
「あれ、ホントにトカゲ!? 火吹いて石化睨みとか、ドラゴンじゃないの!?」
極大トカゲが暴れる姿を見たウーナが驚きの声を上げてはいたが、ゾファルのおかげもあり、彼女もまずは他のメンバーと共に大小トカゲ雑魔の対処に集中することにする。
こちらを主立って抑えているのは、炎とディヤーだ。
広範囲を移動し、舌を伸ばしてくる小トカゲ。それに、やや力押しで攻めてくる感のある大トカゲ。
連携は余り感じないが、それだけにこちらの油断を誘って手痛いダメージを与えてきたり、機を見て突破しようとしてきたりと、敵の動きに注意を払わねばならぬのが面倒だ。
それを防ぐのと、ダメージを稼ぐ為に、砲撃でニンタンクに足止めをさせるルンルン。
彼女はそのニンタンクから降り、山の傾斜に符を置くことで不可視の結界を張って行く。
そこにうまく大トカゲを誘導できたことで、ルンルンはにこりと笑う。
「ルンルン忍法土蜘蛛の術&畳返し……風下に立ったのがあなたの不覚なのです」
風は関係ないとツッコミを入れるのは、野暮だろうか。
ともあれ、トカゲの足元が泥状に固まり、そいつの動きを止めたのは間違いない。
その大トカゲと動く別の小トカゲ1体が並ぶタイミング。
『エクスシア・TTT』に搭載されたマテリアルライフルの照準を合わせ、複数の敵を纏めて撃破する絶好のチャンスと見たウーナが叫ぶ。
「……よし、今だ!」
砲口から、一直線に発射される紫色の光線。
直線上にいた大小トカゲ1体ずつが射抜かれるのに、ウーナは大きな手応えを感じて。
「いいね。この調子……!」
「ふむ、さすがじゃの」
そんなウーナの操縦に、トカゲどもを抑えるディヤーが目を見張っていた。
大トカゲはなおも足を取られてもがくが、痛みに悶えた小トカゲが大きく口を開いて食らい付いてくる。
ウーナの『エクスシア・TTT』に襲い掛かるそいつの前に、炎の『FLAME OF MIND』が躍り込んで。
「やらせるものかよ!」
彼は勢いに任せて聖罰刃を振り下ろし、さらに高く切り上げる。
身体を裂かれたその小トカゲはだらりと舌を垂らしてうな垂れ、溶ける様に消滅していった。
敵は1体減ったが、依然暴れ狂う敵はCAMだけでなく、目ざとくその後方のエルフ達や、イェジドに乗る2人に舌や尻尾を伸ばしてくる。
ルンルンはそれを出現させたアースウォールで食い止めつつ、時に戦いの手を止めて双眼鏡で観察していた。
「ここを攻略して行くのに役立つ情報が、掴めるかもだもの」
そうして、彼女は時に魔導カメラで前方の撮影などして、何か新たな情報を掴もうとしていたようだ。
その間に、エルフ、ルイスの放つ牽制の矢が小トカゲの足を射抜く。ドミニクもアイスボルトで相手の動きを止めていたようだ。
完全に攻撃を封じることができれば、ディヤーも攻撃に転じる事ができそうだが、事はそううまく運ばない。
今しばらくディヤーは守りに徹することとなりそうだと考えていたところで、ウーナがマシンガンを発射していく。
「こんな隙、見逃すわけないじゃない」
その弾丸の雨によって体にいくつも風穴を開けた小トカゲは、倒れる間もなく消え去っていく。
「パイロット適性とその動き、倣いたいものじゃ」
再び、鮮やかな操縦テクニックを見せ付けたウーナ。ディヤーは思わず舌を巻いてしまう。
そのディヤーの目に張ったのは、遊撃に動くイェジド騎乗の緋百合と多由羅だ。
基本の攻撃の型として、まず黒いポニーテールを揺らす多由羅が納刀の構えから大太刀「鬼霧雨」で斬りかかる。
続き、白炎を揺らめかす緋百合が機械手甲「フラルゴ」を相手に叩き込み、鱗の上から直接体内に痛打を与えていく。
態勢が許せば、ヴァイスロートもマテリアルを込めた牙を突き立て、援護してくれていたようだ。
「ワシも援護に回ろう。不意打ちにはくれぐれも注意するのじゃ」
小型を倒し、機動力の高い相手がいなくなったことあって、ディヤーも攻撃に掛かり始める。
マジックエンハンサーを展開し、精神を集中させてからの氷の矢。それを受けた大トカゲの右前脚が凍りつく。
遊撃を行う2人だが、好機とあれば、存分に攻め立てる。
「多由羅、いけるか?」
「問題ありません、緋百合様」
初めてのタッグとあって、連携がうまくいかぬ部分が多い2人。
ただ、うまくかみ合えば、敵を追い込むことにも繋がる。
緋百合の拳を真横から受けてその身を硬直させた大トカゲへ、多由羅が赤い軌道を残しながら抜刀した大太刀「鬼霧雨」の刃でその鱗を切り裂いていく。
どす黒い血をぶち撒けたそいつは目から光を失い、重い音を立てて倒れた直後にどろりと全身を溶かして行った。
「次……」
雑魔1体を倒した彼女達。
他メンバーが残りの大型を相手にしている最中、前方に目を向けると、孤軍奮闘するゾファルがかなり消耗していることに気付く。
その相手は、極大トカゲ雑魔だ。
「荷が重いとわかっていても……、やはりやり合いたい相手ですね」
そんな多由羅の主張に、逆に邪魔になってしまうのではという考えが緋百合の脳裏に過ぎった。
とはいえ、今回は基本彼女に合わせる形を取ろうとしていたこともあり、緋百合は前方へとイェジドを走らせていくこととなる。
いくらCAMを使っても、1機だけで抑えるには厳しい相手。
それでもゾファルは奮戦し、この戦いを心から楽しんでいた。
「加勢しよう」
緋百合もそれに応じて、極大へと白炎と共に殴りかかる。
極大はそんな彼女達を睨みつけていく。見る者を石と化す魔眼だ。
ただ、ウーナが時折効果が切れぬよう展開するイニシャライズフィールドの効き目は抜群。相手の石化睨みを防ぐのに、大きく貢献していた。
仲間の支援を受け、多由羅は見上げんばかりの体躯を持つ敵に納刀から紅蓮の一刀を見舞う。
相手は炎の蜥蜴ということだが、全く効いていないというわけでもなさそうに見える。
個体差の問題かもしれないが、彼女はそのまま燃え上がる斬撃を浴びせていたようだ。
(はた目には、やみくもに刀振り回しているようだが……)
ゾファルは彼女達の遊撃に頷きつつ、斬艦刀「雲山」で斬り付けつつ挟撃を行う。
手数が増えて楽になったかと思ったのも束の間のこと。もっと打ち合わせすべきだったと、ゾファルはすぐ後悔することとなる。
ほとんど立ち回りを考えずに突っ込む形となった2人は、イェジドもろとも業火に焼かれることとなってしまったのだ。
「あぁっ……!」
「…………っ」
致命打となってしまった一撃に、彼女達は地面に投げ出されるようにして倒れてしまい、しばらく動けなっていたようだった。
●
倒れる仲間がいる中、ハンター達は残る大トカゲを追い込んでいて。
時に、足を取られて動きを止めていた大型雑魔だったが、それでも突っ込み、のしかかってこようとしてくる。
「やぶれかぶれ……といったところですか」
そんな相手を冷静に見つめていたクオンは、ツインカノン「リンクレヒトW2」の引き金を引く。
叩き込まれた砲弾の爆発によって砲弾を浴びた部分が吹っ飛び、口から黒煙を吐き出した大トカゲはその場に消えていった。
問題は、今なお健在の極大トカゲだ。
「ドラゴン……ま、まさかねー?」
恐る恐るといった具合に、ウーナはそいつの討伐へと動く。
「油断ならん相手だな……」
エルフのリーダー、アルウェスがCAMメンバーの後ろから敵を見た。
相手は他の雑魔が倒されたことで、ゾファルから狙いをこちらに移していたようだ。
「トカゲめ、かかって来い!」
そこで、炎が向かい来る敵に呼吸を整えてからの連撃を叩き込むが、流石に多少の攻撃ではビクともしない。
その四肢はゾファルの攻撃によって、かなり痛んではいた。
日の光を受けて煌く牙、そして強靭なアゴでの食らいつきを、炎は大盾で弾きつつ次の攻撃に繋げようとする。
ならばと、敵は力ある睨みでメンバーを石に使用とするが、ウーナが切らすことなくイニシャライズオーバーを起動しており、ハンター達に隙がない。
相手も石化があまり効かないと感じたのか、食らいつきと炎に攻撃を絞ってきていたようだ。
ゾファルもガルちゃんがかなり傷ついていたことを察していたものの、攻めの姿勢を崩さず、渾身の一撃をその脳天に打ち込む。
「そういえば、火を吐くが、火に耐性はあるんか?」
ディヤーは先ほどの多由羅と同じ疑問を抱き、できるだけ仲間を巻き込まぬよう中心を味方のいない空中にし、極大トカゲに火球を放つ。
さらに彼はプラズマボム「ネブリーナ」を発して、2種のスキルの効力を対比する。
「魔力を弾いている様子はないようじゃのう」
物理よりも魔法だと比較的効きそうな印象。ディヤーは今後の敵の攻略の糸口をしっかりと掴んでいたようだ。
「やはり、油断は禁物ですね」
仲間が倒れていることにそんな感想を抱きつつ、クオンも攻撃を続ける。
105mmスナイパーライフルでは通じぬ可能性も考え、ツインカノン「リンクレヒトW2」で弾丸を撃ち込んでいく。
(さすがに、こういったサイズの個体が飛ぶとは考えなくないですがね……)
歪虚は翼を持つが、極大に翼はないことをクオンは確認する。
ともあれ、相手がまた魔眼を使ってくることを警戒しつつ、クオンはツインカノンをリロードしていく。
ゆっくりと動き、前進してくる巨大トカゲ。
ルンルンは事前に地面に張った地縛符に、相手がかかったことを察して。
「今ですニンタンクちゃん、合体忍法炎魔地獄陣!!」
拡声器を使ったルンルンの言葉で、後方に下がっていたニンタンクが火炎弾を発する。
上半身を爆撃された極大トカゲの体が煽られ、ようやく態勢が崩れかけた。
ウーナもここぞと試作電磁加速砲「ドンナー」に換装し、自身の生体マテリアルを使ってエネルギーを満たしていく。
「いっけー!」
発射された電磁砲が極大雑魔の胸部を穿つ。
さすがに2度も強烈な攻撃を立て続けに浴びれば、敵も苦しそうな素振りを見せる。
さらに、ゾファルが幾度目かの渾身の一撃を斬艦刀「雲山」の頭上から振り下ろす。
「なかなかだったじゃんか」
手ごたえは十分と感じたゾファル。
今度はさすがに耐えられず、目から光を失ったトカゲは山の上にその巨体を転がし、潰えていったのだった。
雑魔の群れを撃破し、思った以上にハンター達の負傷が大きい。守られていたエルフ達が傷つくメンバーを介抱する状況だ。
「悪さが見つかる前に帰るぞー!?」
戦いが終わり、我に戻ったディヤーは歪虚出現の可能性を感じ、仲間達に後退を促す。実際、彼は本気で帰りたいとも考えていたのだろう。
極大トカゲの強さをその身で実感しつつも、ハンター達は今回の攻略は断念し、前線基地まで退くことにしたのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/02/06 08:18:04 |
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相談卓 多由羅(ka6167) 鬼|21才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2018/02/09 09:01:11 |