ゲスト
(ka0000)
土の下のデュミナス
マスター:馬車猪

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/03/21 19:00
- 完成日
- 2018/03/27 17:59
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●不明CAM
オフロード仕様の魔導軽トラが走っている。
目的地は王国僻地。
聖遺物の保守という名目の墓掃除をするため、新人ハンターが剥き出しの荷台に乗っていた。
「のどかだよねー」
「ねー」
「あんたら少しは緊張感をっ」
癇癪を起こしかかった新米ハンターを、直前までのんびりしていたはずの新米ハンターが無言で制した。
素早いハンドサイン。
視線を向けずに手鏡で覗くと、そこには全高8メートルに達する人型があった。
「CAM?」
「魔導型デュミナスっぽいけどちょっと違うね」
もう1人が魔導短伝話を使って誰何する。
反応無し。
トランシーバーに持ち替えて再度誰何すると、初めて気づいたかのように大げさな身振りで振り返るのが見えた。
「拙っ」
「リーダー敵だ!」
所属不明のCAMが、105mmスナイパーライフルをこちらに向けた。
魔導軽トラが急加速しつつスモークを展開。
砲口から轟音が響いた直後、軽トラの2メートル右に105ミリ弾がめり込んだ。
「嘘、どうして」
「銃架借りるよ」
子供のように小柄な新人が、空の銃架へアサルトライフルをセットする。
「そんな小さな銃じゃ当たらないわよ!」
「うんそうだね。使う機会がないのが一番なんだけどねー」
軽トラが大きな半円を描く。
この付近には民間人はいない。
重装備も持って来ていないので、ここは逃げてハンターズソサエティーに報告すべき場面だ。
「でちゃったよー」
軽トラの30メートル前方で、土の中に身を伏せていたCAMが体を起こした。
105mmスナイパーライフルもCAM用のアサルトライフルを持っていない。
武器は唯一、両手で構えた分厚いスコップのみ。
2発目の105ミリ弾が飛来する。
進路を大きく変える余裕はなく、運転手はスコップCAMのぎりぎりを走り抜けるのを選んだ。
人間用アサルトライフルが軽快に弾を吐き出す。
スコップCAMは回避を試みるが失敗。
得物による防御にも失敗して土色の機体に3発の銃弾がめり込んだ。
ほとんど効いていない。恐ろしいほどの速さと力強さで巨大スコップが構えられる。
「ひぃっ」
新人ハンター1人がへたり込む。
アサルトライフルの新人は無言で盾を引き寄せ、タイミングを計って前へ突き出した。
スコップが空気を断ち割る。
人間の首がある高さをほぼ水平に一閃。
運転席側のドアをスクラップにしただけでは止まらず盾に激突。滑らかな盾表面に受け流され大きく空ぶる。
「リーダー生きてる?」
「先生方の指導に比べれば温いわ。飛ばすからしっかり掴まってて」
風の吹き込む運転席でアクセルを踏み込むと、所属不明機との距離が一気に開く。
2機とも追って来てはいるが、その速度はハンターが使うCAMと比べると低速だった。
●1月前の黒蜥蜴
丸一日かけて掘った穴が実にあっさりと崩れた。
美しくも禍々しい竜鱗はすっかり泥まみれ。
土が翼にも張り付いて鬱陶しい。
『マテリアルの匂いはするんだがなァ』
災厄の十三魔として知られる竜型歪虚が、器用に腕を振るって土を飛ばす。
分厚い装甲を紙のように裂く爪と爪の間に、墓所の副葬品らしい剣があった。
肩をすくめる。
これ以上は時間の無駄だ。
本気ブレスで土を吹っ飛ばせば聖遺物が露出するかしれないが、その場合消費マテリアルが得られるマテリアルを上回る。
『まァいい』
鱗と鱗の間から何かの装甲片を取り出す。
マテリアルを注いで穴に投げ入れる。するとそれは土砂を支配下に置き大きな人型を形作った。
『適当に掘っておけ』
剣を投げ捨てる。
土製CAMのコクピットハッチが開く。
シートベルトが触手のごとく伸び、剣に巻き付きコクピットへ回収した。
四肢に力が満ちる。
土が強靱なスコップに変化しCAM型歪虚の手に収まる。
土製CAMが嬉々として穴掘りを始め、つまみ食いを夢見て聖遺物を探し始めた。
ガルドブルムはこの場を任せて飛び去り、その後土製CAMのことを忘れてしまうのだった。
●討伐依頼
「所属不明のCAMが発見されました。高確率で歪虚です」
オフィス職員による説明は転移装置の前で行われていた。
「形状はデュミナスに酷似しています。はい、魔導化される前のデュミナスです」
酷く渋い顔をする整備員が何人もいる。
燃料不足で苦しんだ時期を思い出しているのだ。
「装備は大型スコップまたは105mmスナイパーライフルに見える何か。前者を装備した機体が前衛です」
小型ホワイトボードを持ったパルムが手書き地図を見せてくれる。
射撃戦装備の機体が丘に立てこもっている。
スコップ装備の機体は周囲で警戒したり丘で何かを掘ったりと、好き勝手に動いてまとまりがない。
「現地は昔の墓地らしいですが」
歪虚退治最優先。
墓を全て破壊しても問題ないと、職員が力強く断定する。
「目標はCAMとしては低速です」
大きな穴を掘れる力は破壊工作に向いている。
105mmスナイパーライフルは攻城兵器並の射程を持つ。
1機でも逃がせば、地域全体が窮地に陥る可能性すらある。
「決して逃がさないよう、お願いいたします」
これ以上無い真剣な表情で、オフィス職員が深く頭を下げた。
オフロード仕様の魔導軽トラが走っている。
目的地は王国僻地。
聖遺物の保守という名目の墓掃除をするため、新人ハンターが剥き出しの荷台に乗っていた。
「のどかだよねー」
「ねー」
「あんたら少しは緊張感をっ」
癇癪を起こしかかった新米ハンターを、直前までのんびりしていたはずの新米ハンターが無言で制した。
素早いハンドサイン。
視線を向けずに手鏡で覗くと、そこには全高8メートルに達する人型があった。
「CAM?」
「魔導型デュミナスっぽいけどちょっと違うね」
もう1人が魔導短伝話を使って誰何する。
反応無し。
トランシーバーに持ち替えて再度誰何すると、初めて気づいたかのように大げさな身振りで振り返るのが見えた。
「拙っ」
「リーダー敵だ!」
所属不明のCAMが、105mmスナイパーライフルをこちらに向けた。
魔導軽トラが急加速しつつスモークを展開。
砲口から轟音が響いた直後、軽トラの2メートル右に105ミリ弾がめり込んだ。
「嘘、どうして」
「銃架借りるよ」
子供のように小柄な新人が、空の銃架へアサルトライフルをセットする。
「そんな小さな銃じゃ当たらないわよ!」
「うんそうだね。使う機会がないのが一番なんだけどねー」
軽トラが大きな半円を描く。
この付近には民間人はいない。
重装備も持って来ていないので、ここは逃げてハンターズソサエティーに報告すべき場面だ。
「でちゃったよー」
軽トラの30メートル前方で、土の中に身を伏せていたCAMが体を起こした。
105mmスナイパーライフルもCAM用のアサルトライフルを持っていない。
武器は唯一、両手で構えた分厚いスコップのみ。
2発目の105ミリ弾が飛来する。
進路を大きく変える余裕はなく、運転手はスコップCAMのぎりぎりを走り抜けるのを選んだ。
人間用アサルトライフルが軽快に弾を吐き出す。
スコップCAMは回避を試みるが失敗。
得物による防御にも失敗して土色の機体に3発の銃弾がめり込んだ。
ほとんど効いていない。恐ろしいほどの速さと力強さで巨大スコップが構えられる。
「ひぃっ」
新人ハンター1人がへたり込む。
アサルトライフルの新人は無言で盾を引き寄せ、タイミングを計って前へ突き出した。
スコップが空気を断ち割る。
人間の首がある高さをほぼ水平に一閃。
運転席側のドアをスクラップにしただけでは止まらず盾に激突。滑らかな盾表面に受け流され大きく空ぶる。
「リーダー生きてる?」
「先生方の指導に比べれば温いわ。飛ばすからしっかり掴まってて」
風の吹き込む運転席でアクセルを踏み込むと、所属不明機との距離が一気に開く。
2機とも追って来てはいるが、その速度はハンターが使うCAMと比べると低速だった。
●1月前の黒蜥蜴
丸一日かけて掘った穴が実にあっさりと崩れた。
美しくも禍々しい竜鱗はすっかり泥まみれ。
土が翼にも張り付いて鬱陶しい。
『マテリアルの匂いはするんだがなァ』
災厄の十三魔として知られる竜型歪虚が、器用に腕を振るって土を飛ばす。
分厚い装甲を紙のように裂く爪と爪の間に、墓所の副葬品らしい剣があった。
肩をすくめる。
これ以上は時間の無駄だ。
本気ブレスで土を吹っ飛ばせば聖遺物が露出するかしれないが、その場合消費マテリアルが得られるマテリアルを上回る。
『まァいい』
鱗と鱗の間から何かの装甲片を取り出す。
マテリアルを注いで穴に投げ入れる。するとそれは土砂を支配下に置き大きな人型を形作った。
『適当に掘っておけ』
剣を投げ捨てる。
土製CAMのコクピットハッチが開く。
シートベルトが触手のごとく伸び、剣に巻き付きコクピットへ回収した。
四肢に力が満ちる。
土が強靱なスコップに変化しCAM型歪虚の手に収まる。
土製CAMが嬉々として穴掘りを始め、つまみ食いを夢見て聖遺物を探し始めた。
ガルドブルムはこの場を任せて飛び去り、その後土製CAMのことを忘れてしまうのだった。
●討伐依頼
「所属不明のCAMが発見されました。高確率で歪虚です」
オフィス職員による説明は転移装置の前で行われていた。
「形状はデュミナスに酷似しています。はい、魔導化される前のデュミナスです」
酷く渋い顔をする整備員が何人もいる。
燃料不足で苦しんだ時期を思い出しているのだ。
「装備は大型スコップまたは105mmスナイパーライフルに見える何か。前者を装備した機体が前衛です」
小型ホワイトボードを持ったパルムが手書き地図を見せてくれる。
射撃戦装備の機体が丘に立てこもっている。
スコップ装備の機体は周囲で警戒したり丘で何かを掘ったりと、好き勝手に動いてまとまりがない。
「現地は昔の墓地らしいですが」
歪虚退治最優先。
墓を全て破壊しても問題ないと、職員が力強く断定する。
「目標はCAMとしては低速です」
大きな穴を掘れる力は破壊工作に向いている。
105mmスナイパーライフルは攻城兵器並の射程を持つ。
1機でも逃がせば、地域全体が窮地に陥る可能性すらある。
「決して逃がさないよう、お願いいたします」
これ以上無い真剣な表情で、オフィス職員が深く頭を下げた。
リプレイ本文
●250メートルのツッコミ
その小規模遺跡は、街に近ければ寂れた観光名所になれたかもしれない。
「おぉ、随分作ったな」
グリフォン【アストラ】に跨がるグリムバルド・グリーンウッド(ka4409)が目を細めた。
元は草原だった場所には掘り返された跡が多数ある。
「確かにこれは放っておくのはマズイだろうな」
そんな危険地帯を左右から包囲する形で、負の気配を垂れ流すデュミナスが6機と5機。
白兵戦装備と遠距離戦装備をバランス良く組み合わせた部隊なのだが、本人達は隠れているつもりでも空から見ると丸見えだった。
「広範囲に散らばっているから掃除は大変そうだが」
これだけでも十分な脅威だが敵総数はこれの倍を超える。
遺跡だか墓所だか分からない丘に、ざっと見て十数機のデュミナスが何かの作業をしているのだ。
「前は雪製のデュミナスとの戦いだったが、今回は土製か。もはや何でもありだな」
アバルト・ジンツァー(ka0895)が操縦桿に力を込める。
魔導型デュミナス【Falke】が足を止めて姿勢を変更。
8メートルに達する大型砲を斜め上へ向けた。
魔導エンジンが生み出す豊富なエネルギーがプラズマキャノンに供給され、ただの砲弾に非常識な加速を与える。
空気を裂いて飛び土製デュミナスに着弾。
土色の装甲がひび割れ大型スナイパーライフルが腕から転げ落ちた。
歪虚はこの時点でようやく、待ち伏せが見破られているのに気づいた。
無手のデュミナスが素人臭い動きでライフルを拾い、別のライフル装備機2機が105ミリスナイパーライフルに酷似した砲をハンターへ向ける。
「撃ち合いがお望みか。いいぜ、付き合ってやる」
赤いエクスシアによる砲撃と歪虚デュミナス2機の狙撃はほぼ同時。
どちらも狙いは十分だが射撃後の動きが違いすぎる。
土色のデュミナスの動きはどうしようもなく鈍かった。
プラズマで加速された砲弾を避けきれず、かなり厚いはずの装甲を大きく凹まされてしまう。
対するR7【トライアンフ】は速いだけでなく動きが鋭い。
105ミリ弾の片方をただの横移動で軽々避け、もう1発は近接武器で弾いてみせる。
「やってることはアレなんだが」
奥の丘で穴掘りをするCAM型歪虚と、おそらく同型が埋まっている湿った土を見比べレイオス・アクアウォーカー(ka1990)が肩をすくめる。
懲りない歪虚による第2撃。
トライアンフは今度はドリルに持ち替え器用に受け流して見せた。
「あのCAMの火力があれだけ揃うとシャレにならんな」
厚い装甲も兼ね備えたトライアンフにとっては低火力。
だが一般的なCAMにとっては無視できない火力であるし、戦場後方で待機中の魔導軽トラにとっては一撃即擱座の超大火力だ。
「ここで仕留めるためにも逃げ足は奪わせてもらうぞ」
機体による射撃サポートを切る。
クリムゾンウェストで磨いた技術で以て狙いをつけ、意識の引き金と指先の引き金を同時に引いた。
確率論で当てるはずの兵器が狙撃手の得物として動く。
砲弾としては大きくはない弾が、兵器としては細すぎる土色の膝を見事に打ち抜いた。
デュミナス型歪虚が体勢を崩す。
CAMらしい頑丈さは健在でしぶとく第3射を放つが、壊れた足では後退しながら撃つことも逃げ出すことも不可能だ。
「俺の出番がねぇぜ」
ハンドアックスというには分厚すぎる斧を構え、別のエクスシアが歪虚部隊へ走っている。
スコップ装備のCAM3機が進路上に現れるがまだ距離がある。
微かに気を抜いてしまったデュミナス型に、斜め45殿角度で雷が降り注ぐ。
この歪虚達は見た目通りの土属性だ。
高威力の雷が装甲を貫通した後、消滅するまで5割増しの威力で中を焼いた。
「2発でいけるな」
グリムバルドに横向きのGがかかる。
接触すれば相棒もろともすり下ろされかねない地面が横に流れ、グリムバルドを狙おうとしても射程内に捉えられず慌てるCAM型が2機見える。
「気を付けていくか、アストラ」
若いグリフォンがこくりとうなずき、油断無く回避と移動を継続した。
アバルトがプラズマキャノンを酷使する。
設計時に想定された実に2倍の速度で砲撃を行い、足が無事なデュミナスにひたすら弾を当て続ける。
この歪虚はCAMに迫るほど頑丈だ。
だがFalkeとは違い回避運動は雑で受け防御のための装備もない。
見る見る装甲を失い内部が剥き出しに。
そこに雷が命中して中身のないコクピットごと上半身を消し飛ばされた。
「それで穴でも掘ってたか?」
トリプルJ(ka6653)が皮肉っぽく口角をつり上げた。
土にまみれたスコップを同時に観て、斧装備のエクスシアを我が身と同様に操る。
「残念だったな!」
振り下ろされるスコップの狙いが素直すぎる。
わずかに速度を落とすだけで全ての斬撃を空振りさせる。
そして、機体の重さと速度をのせて超々重斧を横に一閃。
刃のつくる面での攻撃は非常に避けにくく、見た目以上に身軽な歪虚3機に直撃。
うち1機は衝撃に耐えきれずに内側から崩れるように土へ戻っていった。
「こっちはこれで終わりか」
荒れ狂う雷から辛うじて生き残ったデュミナスにトライアンフの砲撃が止めを刺す。
「CAM型を使って墓荒らしかよ。そうまでして一体何を探してやがるんだか」
レイオスは丘の方向に呆れた視線を送り、慣れた動作で再装填を終えた。
●防衛網崩壊
長距離砲装備CAM2に白兵戦特化CAM3。
クリムゾンウェストの伝統的表現で言い換えると、重装甲自走投石機2体とサイクロプス級3体になる。
「むぅ」
バリトン(ka5112)が厳つい顔に困惑を滲ませる。
大重量の105ミリ弾が左右に着弾して土砂を吹き上げる。
その土砂は、バリトンを乗せるイェジドに当たるどころが汚すこともできない。
「最近、比較的ぬるい敵とばかり戦っておったからな、ここらで一つ気合を入れなおそうと」
したのじゃがなと残念そうにつぶやき、異様な厚みの刃を軽々と構えた。
フンと息を吐き出しながら斬龍刀を振るうと、斬撃の威力が30メートル近く飛んで土製CAM複数を切り刻む。
この歪虚達は受けも回避もなっていない。
戦歴に相応しい力を保つバリトンにとって、強大なはずの歪虚部隊も手応えのない敵に過ぎなかった。
「わたしにとっては危険な敵なのだけどね」
中破状態の土製歪虚を、風の属性を保つ矢が2本貫いた。
矢の来た方向を探ろうとするが、存在のための力を使い尽くして前のめりに倒れて土に戻る。
「2発耐えられる気しないし」
105ミリの砲口がこちらに向く気配を察知。
八原 篝(ka3104)は魔導二輪を駆り戦場の外側へ向かう。
CAM型歪虚は見た目よりずっと素早く向き直り、しかし大きな体とスナイパーライフルが地面にぶつかり姿勢を崩す。
本体と同じく土で出来たスラスターに光が灯る。
そこから噴き出す勢いは予想よりはるかに弱かったけれども、全高8メートルの巨体を立て直す程度のことはできた。
「この調子で強化されると飛行能力に届くか」
バリトンがさらに近づき近接戦闘の間合いへ。
馬鹿馬鹿しいほど大きく重いスコップを躱して高速な反撃の刃を返す。
それを脅威と判断したスナイパーライフル装備機が距離を取ろうとし、篝への警戒が一気に低下した。
「あいつらの親玉とは戦いたくないわね。護衛機ありだと命がいくつあっても足りない」
ママチャリ状の二輪の速度を落として攻撃再開。
スナイパーライフルよりは射程が短いとはいえ、CAMの足では追いつけない距離から届く弓でサンダーアローをご馳走する。
十分な威力と圧倒的な手数によって、土製デュミナスの前衛はあっという間に戦闘力を失おうとしていた。
リーリー【瑞那月】が軽快に駆けている。
鞍どころか武器すら持たない軽装だ。
それ故に速く、またリーリーらしく回避の技も高水準。
高速で振り回されるスコップの下をくぐり抜け、絶妙な時間差で突き出された2本目スコップを跳び越える。
すると障害物がなくなる。
後ひと駆けすれば、近接戦闘用装備を持たないデュミナス型歪虚に追いつける。
「西方の歪虚は酷く偏っていますね」
金の瞳を保つ鬼が微かな困惑と、それを塗りつぶせる濃さの殺意を表に出す。
多由羅(ka6167)が鞘を払う。
刃の長さは身の丈の倍ほどもある。
これだけ大きく重いと他の重装備は選択し辛い。
斬魔刀を除けば驚くほど軽装備の多由羅は、リーリーと共にスナイパーデュミナスへ近づき、追い抜いた。
「でも」
多由羅の唇が妖艶な弧を描く。
瑞那月が急角度で旋回。
土製デュミナスのほとんど足下で、地面に触れる高さから斬魔刀「祢々切丸」が半円を描く。
刃に後れて赤い軌道が宙に浮かび、ぴったり1秒遅れでデュミナスの太股から腰にかけて亀裂が入った。
「手応えは十分」
歪虚がライフルを捨てた。
両手の指を組んで、力任せに鬼とリーリーに振り下ろす。
斬魔刀が鞘に収まり微かな音を立てる。
戦の中で生じたマテリアルが刃に注ぎ込まれ、もう一度解き離れたときには斬魔というより魔物じみた光を帯びていた。
「私達の力を示しましょう」
瑞那月の走りが摺り足に変わる。
受けと防御を捨てた瑞那月には脅威である拳をぎりぎりで避け、衝突する寸前まで歪虚に近づく。
艶のある唇から艶めかしくすらある吐息が零れる。
剣先が音を置き去りに一閃。
胸部装甲の奥にある、座席とHMDを両断した。
黒々とした髪が多由羅の背からリーリーへ流れる。
傷口から負のマテリアルを噴き出し、土製CAMが仰向けに倒れて地響きを立てた。
「手応えのない」
優美と武を兼ね備えた姿勢のエクスシアが、完全に無傷のまま銃撃を行っていた。
長距離射撃戦に特化して中距離以下に向いていない機体では手は出せず、CAMとしては平凡な速度と近接兵器しか持たない機体では近づくこともできない。
「あの竜とて、流石にそうそう埋まりはしないでしょうし……」
足は使わずマテリアルの翼で横移動。
土製CAMが距離を詰めようとしても、スナイパーライフルの射程に捉えようとしても、ヴァルナ=エリゴス(ka2651)によって常に間合いを外される。
「墓荒らしをしているとなると、副葬品のマテリアルが狙い……でしょうか? いずれにせよ、死者の安寧を妨げる輩を野放しにはしておけませんね」
大破機に止めを刺し小破状態の機体削りに移る。
数は同程度でも質の差は圧倒的だ。
最初は5機いた歪虚は呆気ないほどあっさり撃ち減らされ、最後は複数の刃により全滅した。
『準備完了』
トランシーバーからの音声と雑音は半々だ。
高位歪虚や軍団規模の歪虚が出没する戦場と比べると非常に温い。
「こちらも準備は整いました」
『了解。2、1、敵増援を確認』
ヴァルナだけでなく、どのハンターのHMDにも変わった反応はなかった。
「このタイミングで動く?」
北のハンター集団から一人離れて走る篝は、困惑1割呆れ9割の息を吐く。
スキルで一時的に強化された視覚が、土の微かな動きをぎりぎりで捉えていた。
ぎりぎりでも一度気づいた後は簡単だ。
丘周辺の歪虚に対する軽快は他の面々に任せ、掘り起こした跡の目立つ土へ並の検査機器を上回る知覚を集中させる。
「地面の中から敵が奇襲仕掛けてくるパターンと予想はしたけど」
一見無造作に矢を放つ。
地面の浅い場所まで上がって来ていた歪虚は、薄い土を抜いた風属性矢により浅くない傷を負う。
7カ所の土が弾けて同数のCAMが現れる。
どれも無傷で両手に構えたスコップは禍々しく陽光を跳ね返す。
ハンターが丘を攻めているときにこうしていたら、多少の奇襲効果もあったかもしれない。
アバルト機が足を止めて向きを変える。
丘から迎撃や牽制の105ミリ弾が飛んでくると予測していたのに1発も来ない。
「あの練度では合流させても問題ない気もするが」
発砲。
強烈な弾が先頭のスコップ持ちを横殴りにする。
己のマテリアルを使って高速再装填を行いながら、FCSを酷使して連続射撃。
FCSが根を上げたときには土製CAM1機が残骸になり、残りの6機が丘の近くまで迫っていた。
「もう何体か削って……ふむ」
リーリーを駆る鬼の武者が、単騎で大型歪虚部隊に立ち塞がった。
鬼基準では特に大柄でもなく装備も刀を除けば酷く軽装だ。
これなら勝てると判断したスコップCAM7機が、押し合いへし合いしながら多由羅目がけて突進する。
「共に死ぬには――足りません」
落胆の吐息を1つ。
リーリーが肩をすくめるような気配で数歩後退すると、目測を誤った土製CAM6機が大重量スコップを空振りさせた。
空振りでなかった1機も長大な刃に受け流されてろくにダメージを与えられない。
反撃の斬撃はスコップとは比較にならないほど速くて鋭く、既にいくつか被弾した土製デュミナスの太股を深く抉った。
リーリーが丘とは逆の向きに後退する。
全力で走れば追い付けはするが、移動しながら攻撃するには遠すぎる距離だ。
真っ当に運用されれば少領1つなら落とせるはずの戦力が、たった1人と1頭に翻弄され引きずり回される。
「これを狙わない訳にもなぁ」
カードを5実体化させたグリムバルドが、無防備なスコップCAMを見下ろし一瞬戸惑う。
『気にせずスコアを稼げ。歪虚はいくらでもいる』
「りょーかい」
グリムバルドが放したカードが雷に変わる。
風属性に弱く、盾すら持たず、しかも背中を見せている土製デュミナスには躱すことも防ぐこともできない。
5つの雷が5つの大型歪虚を射貫く。
擬似的な回路が焼かれて小規模な火災が発生。
予備の回路に切り替えてCAMらしいしぶとさを見せるが、余裕は完全に失われ被弾即擱座しかねないほど追い詰められる。
「ハンターも何でもありだな」
空を飛んで自然災害じみた術を操るなど、リアルブルーで軍人稼業をしていたときには想像をしたことすらなかった。
敵も味方もなんでもありになったとしても、アバルトが出来ることは変わらないしそもそも変わる必要もない。今の技術で戦場を動かせる。
リーリーを追っていたデュミナスが恐怖に負けて逃げ出した。
Falkeにバルディッシュを持たせる。
CAM基準では小ぶりの手斧サイズだが威力は十分だ。
Falkeの横を通り抜けようとする土製CAMへ刃をめり込ませ、アバルト機の存在を強く印象づける。
スコップが高々と振り上げられた。
威力はバルディッシュを上回っているので、殴り合いなら勝てるとでも思ったのだろう。
案外鋭い斬撃を危なげ無くバルディッシュで受けて、アバルト機は距離はとらずにぐるりと土製CAMの回りを移動した。
スコップが再び振りかぶられることはなかった。
直前までアバルト機がいた空間を風属性の矢が通り抜け、CAM型のコクピットに突き刺さる。
擱座後崩壊を確認してすぐアバルト機が向きを変えると、5つの雷に処理される歪虚と生き残りに止めを刺す鬼の武者が見えた。
「……好んで潜んで居るのならば、其処を墓場としていつまでの其処にいると良い」
4連のカノン砲を丘以外の方向に向ける。
湿った土に淡々と砲弾を浴びせると、3射目で土の奥から半壊歪虚が飛び出す。
「問題はここからだ」
刃と矢であっさり狩られたデュミナス型歪虚から視線を外し、改めて丘に向き直る。
「面倒な地形だ」
武装をプラズマキャノンに切り替え引き金を引く。
塹壕から上半身だけを出している人型に見事当たるが、CAMの頑丈さをコピーされた歪虚は戦闘能力を失わずに防戦を続けていた。
●戦いの丘
歪虚も馬鹿ではない。
最後の伏兵の足が止まった時点で敗北を悟り撤退を決断した。
が、丘を降りる一歩を踏み出す前に南北からハンターに攻め込まれていた。
肉と岩が打ち合う重い音がする。
壊れたのは肉ではなく、岩で造られた大型歪虚だ。
バリトンがスコップを跳ね上げた動きから突きに繋げる。
斬龍刀「天墜」が胸部装甲を貫き、土製CAMの脊椎に当たる箇所を破壊。
歪虚はただの土砂に戻って地面に散らばる。
イェジドが強引に前進。
綺麗な毛が泥にまみれるのを気にせず、逃げようとした新手を激しく威嚇し身を竦ませる。
「城攻めとはなぁ!」
バリトンが軽くウィンクをして泥が目に入るのを回避。
穴だらけというより迷路じみた場所で、正面から土製歪虚を攻め立てる。
別方向から攻め込むレイオスの前に、2体のデュミナスが立ち塞がる。
その後ろからはスナイパーライフルを構えた機体がレイオス機を狙い、2体のスコップ装備機も場所の狭さを活かして避けづらい刺突を仕掛けてくる。
が、当たらない。
足場が悪いのにトライアンフは素晴らしく巧みに避け、それだけでなく精度も威力も増した一撃を土製歪虚にお見舞いする。
「残念だがオレはロングレンジよりクロスレンジの方が得意なんだよ」
赤い刃が装甲を切り裂く。
肘関節を破壊し、逆側の装甲を壊し、速度を緩めず斜め後ろにいたデュミナスのコクピットにめり込んで止まる。
レイオスの息は少しだけ乱れている。
人機一体の副作用であり消耗が激しい。それでも消耗仕切る前に決着がつく確信があった。
紫色の光が2体の歪虚を貫く。
半秒遅れて亀裂が生じて負のマテリアルが漏れる。
「個体差が大きいですね」
1体は濡れた砂のように崩れるがもう1体はかなり形を保っている。
漏れるマテリアルの量にも差があった。
後はレイオスに任せて浮上を開始。
地上に比べると動きが鈍い機体に、105ミリ弾が連続で襲いかかる。
どちらも躱せない。
なので剣状態のポレモスSGSで打ち落とす。
「興味があること以外は気にもしない。力はともかく性質はあの竜そのものですね」
ヴァルナが柳眉を逆立てている。
散々掘り返された丘のあちこちに、遺跡或いは墓地のものらしい石材が散乱している。
浮力を弱めて機体を前傾。
各関節の角度を調節して速度の上乗せと狙いの修正を行う。
「消えなさい」
はるか高みから死を命じる。
風とそれ以外の何かで輝く刃が2体のデュミナスを貫通、倒れることすら許さずその場で消滅させた。
「おいおい何だこりゃ、歪虚のバーゲンセールかあ!?」
2体の土製歪虚と同時に斬り結びながら、トリプルJが楽しげに笑う。
エクスシアは土まみれだが装甲は無事だし関節部分の消耗も軽微だ。
巧みに斧を扱いスコップを受け、少々のダメージは分厚い装甲で受け止め斧でお返しする。
2連続の斧が土製デュミナスの上半身をずたずたに。
入れ替わりに3機目が前進してくるより速く、もう1機を巻き込み青龍翔咬波をぶっ放す。
機嫌良く戦うと同時にトリプルJは冷静に戦場を捉えている。
ハンター側の圧倒的優勢だ。
しかし敵の位置が全て判明している訳ではない。
「派手に暴れて引きつける、ってな」
乗用車サイズの石材が転がり落ちてくる。
スコップCAM2つを巻き込むコースだが、このままやられるよりはましだと考えたのだろう。
「あめぇんだよ」
デュミナス背部に石材がめり込んだタイミングで、大きく振りかぶった態勢から斧を振り回す。
エクスシアの大きさが武器になり、デュミナスの大きさが急所と化す。
パーツが砕かれ、接合部が引きちぎられ、風雨でダメージを負った石材が粉砕されて白い煙を発生させる。
「次はどいつだ?」
逆向きに斧を旋回させ止めを刺し、煙の中から飛んできた105ミリ弾を首を傾けるだけで躱す。
「場所を教えてくれてありがとうよ」
山盛りの落とし穴が待ち受ける丘頂上に踏み込む必要は無い。
プラズマキャノンによる砲撃に持ち込み、斧を盾として使いダメージを減らす。
自分の体を治癒する要領でマテリアルを機体に流す。
ほぼ無傷まで回復したR7に気付き、スナイパーライフルCAMの思考が絶望一色に染まった。
●お仕事完了
「茶でも持ってくるべきだったかな」
グリムバルドが額の汗を拭った。
目に見える場所に歪虚の姿はないが、元遺跡の元穴だらけの丘には薄く負の気配が漂っている。
「あれか?」
怪しい土に雷を打ち込む。
2度、3度の浴びせると手応えがあり、地面が陥没すると同時に負のマテリアルが吹き上がる。
「ちょっと……かなり時間がかかりそうだな」
ちらりと東を見る。
掃除道具とエクラ教グッズを魔導軽トラの荷台に詰め込んだ新人ハンター達が、微妙に冷や汗をかきながらこちらを見ていていた。
「あの子達本当に新人? 軍人じゃなくて?」
聖堂教会出身の新人である。みっちり教育されている分練度が高いのだ。
「このまま引き継いでもいけそうだけどね」
雷を撃つ、撃つ、撃つ。
たまに当たりはするしまだまだ残弾に余裕はあるが、そろそろ討伐を完了させたい。
「承知しました。あの辺りですね」
ヴァルナはトランシーバー片手に操縦桿を動かしている。
105ミリ弾による迎撃はない。
土の中にスナイパーライフルと一緒に隠れている可能性はあるものの、ライフルと一緒に土から這い出て攻撃するには1分以上がかかるはずだ。
「順に撃ち込みますので離れてください。……崩れるかもしれませんし」
半ば放棄されているとはいえ長い歴史のある遺物に、容赦なくマテリアルビームを撃ち込んでいく。
東で見守る新人が面白い顔になっている。
ヴァルナはくすりと笑い、事前に教えられた周波数にあわせた。
「先人の加護により見事歪虚を討ち果たすことができました、という程度の修辞は出来るようになりなさい。この程度の被害なら許されます」
『ご指導ありがとうございます!』
相手は緊張でガチガチだ。
若くても超ベテランに話しかけられれば当然の反応かもしれない。
土煙が上がる。
半ばで折れたスコップを手に、上半身が焼かれた歪虚が幽鬼の如く現れる。
空からの紫の光が容赦なく貫く。
別の穴からもデュミナス型歪虚が這いだし、強力なハンターがいない東に向け必死に走る。
「これで終わり」
雷を背後から直撃。
既に十分傷ついた板歪虚には耐えることが出来ず、ただの土に戻って自ら開けた穴の中へ降り注ぐのだった。
「……だよね?」
歪虚の不在を確認するのに、ハンター総出で30分の時間が必要だった。
「はいお祈り終了!」
「石棺元に戻すからマスクと手袋っ」
新人達が熱心に仕事をしている。
「と、盗掘ー!?」
「ちげーよ」
トリプルJは、新人とは比較にならない手際で掃除と修復を行う。作業前と後で記録を残すのも忘れない。
「先史的な遺物や遺構は大好物な訳よ、俺様。ただの墓でもこのまま放置ってのはね」
実際、今彼が手を出さないと数十年単位で放置されかねなかった。
拙い部分もあるが聖堂教会式の儀式が行われ、負の気配が薄くなっていく。
掃除は始まったばかりだが、元が墓っぽい遺跡だったことが分かる程度には穏やかな雰囲気だ。
「結局を探してやがるんだか」
作業を手伝っていたレイオスが、だいたい元に戻った小さな墓を見下ろす。
「歪虚の目的か。破壊か殺人のどちらかじゃと……どうしたイルザ」
イェジドが興味を示した場所の瓦礫を退けると、ずいぶん古い造りの兜が出てきた。
「副葬品か」
微かなマテリアルを感じる。
本当に微かで、バリトン達の装備の方がマテリアルの気配が濃い。
「歪虚も強くなることに貪欲ということか」
負けるつもりは欠片もない。
バリトンは闘志を新たにして新人達を見守るのだった。
その小規模遺跡は、街に近ければ寂れた観光名所になれたかもしれない。
「おぉ、随分作ったな」
グリフォン【アストラ】に跨がるグリムバルド・グリーンウッド(ka4409)が目を細めた。
元は草原だった場所には掘り返された跡が多数ある。
「確かにこれは放っておくのはマズイだろうな」
そんな危険地帯を左右から包囲する形で、負の気配を垂れ流すデュミナスが6機と5機。
白兵戦装備と遠距離戦装備をバランス良く組み合わせた部隊なのだが、本人達は隠れているつもりでも空から見ると丸見えだった。
「広範囲に散らばっているから掃除は大変そうだが」
これだけでも十分な脅威だが敵総数はこれの倍を超える。
遺跡だか墓所だか分からない丘に、ざっと見て十数機のデュミナスが何かの作業をしているのだ。
「前は雪製のデュミナスとの戦いだったが、今回は土製か。もはや何でもありだな」
アバルト・ジンツァー(ka0895)が操縦桿に力を込める。
魔導型デュミナス【Falke】が足を止めて姿勢を変更。
8メートルに達する大型砲を斜め上へ向けた。
魔導エンジンが生み出す豊富なエネルギーがプラズマキャノンに供給され、ただの砲弾に非常識な加速を与える。
空気を裂いて飛び土製デュミナスに着弾。
土色の装甲がひび割れ大型スナイパーライフルが腕から転げ落ちた。
歪虚はこの時点でようやく、待ち伏せが見破られているのに気づいた。
無手のデュミナスが素人臭い動きでライフルを拾い、別のライフル装備機2機が105ミリスナイパーライフルに酷似した砲をハンターへ向ける。
「撃ち合いがお望みか。いいぜ、付き合ってやる」
赤いエクスシアによる砲撃と歪虚デュミナス2機の狙撃はほぼ同時。
どちらも狙いは十分だが射撃後の動きが違いすぎる。
土色のデュミナスの動きはどうしようもなく鈍かった。
プラズマで加速された砲弾を避けきれず、かなり厚いはずの装甲を大きく凹まされてしまう。
対するR7【トライアンフ】は速いだけでなく動きが鋭い。
105ミリ弾の片方をただの横移動で軽々避け、もう1発は近接武器で弾いてみせる。
「やってることはアレなんだが」
奥の丘で穴掘りをするCAM型歪虚と、おそらく同型が埋まっている湿った土を見比べレイオス・アクアウォーカー(ka1990)が肩をすくめる。
懲りない歪虚による第2撃。
トライアンフは今度はドリルに持ち替え器用に受け流して見せた。
「あのCAMの火力があれだけ揃うとシャレにならんな」
厚い装甲も兼ね備えたトライアンフにとっては低火力。
だが一般的なCAMにとっては無視できない火力であるし、戦場後方で待機中の魔導軽トラにとっては一撃即擱座の超大火力だ。
「ここで仕留めるためにも逃げ足は奪わせてもらうぞ」
機体による射撃サポートを切る。
クリムゾンウェストで磨いた技術で以て狙いをつけ、意識の引き金と指先の引き金を同時に引いた。
確率論で当てるはずの兵器が狙撃手の得物として動く。
砲弾としては大きくはない弾が、兵器としては細すぎる土色の膝を見事に打ち抜いた。
デュミナス型歪虚が体勢を崩す。
CAMらしい頑丈さは健在でしぶとく第3射を放つが、壊れた足では後退しながら撃つことも逃げ出すことも不可能だ。
「俺の出番がねぇぜ」
ハンドアックスというには分厚すぎる斧を構え、別のエクスシアが歪虚部隊へ走っている。
スコップ装備のCAM3機が進路上に現れるがまだ距離がある。
微かに気を抜いてしまったデュミナス型に、斜め45殿角度で雷が降り注ぐ。
この歪虚達は見た目通りの土属性だ。
高威力の雷が装甲を貫通した後、消滅するまで5割増しの威力で中を焼いた。
「2発でいけるな」
グリムバルドに横向きのGがかかる。
接触すれば相棒もろともすり下ろされかねない地面が横に流れ、グリムバルドを狙おうとしても射程内に捉えられず慌てるCAM型が2機見える。
「気を付けていくか、アストラ」
若いグリフォンがこくりとうなずき、油断無く回避と移動を継続した。
アバルトがプラズマキャノンを酷使する。
設計時に想定された実に2倍の速度で砲撃を行い、足が無事なデュミナスにひたすら弾を当て続ける。
この歪虚はCAMに迫るほど頑丈だ。
だがFalkeとは違い回避運動は雑で受け防御のための装備もない。
見る見る装甲を失い内部が剥き出しに。
そこに雷が命中して中身のないコクピットごと上半身を消し飛ばされた。
「それで穴でも掘ってたか?」
トリプルJ(ka6653)が皮肉っぽく口角をつり上げた。
土にまみれたスコップを同時に観て、斧装備のエクスシアを我が身と同様に操る。
「残念だったな!」
振り下ろされるスコップの狙いが素直すぎる。
わずかに速度を落とすだけで全ての斬撃を空振りさせる。
そして、機体の重さと速度をのせて超々重斧を横に一閃。
刃のつくる面での攻撃は非常に避けにくく、見た目以上に身軽な歪虚3機に直撃。
うち1機は衝撃に耐えきれずに内側から崩れるように土へ戻っていった。
「こっちはこれで終わりか」
荒れ狂う雷から辛うじて生き残ったデュミナスにトライアンフの砲撃が止めを刺す。
「CAM型を使って墓荒らしかよ。そうまでして一体何を探してやがるんだか」
レイオスは丘の方向に呆れた視線を送り、慣れた動作で再装填を終えた。
●防衛網崩壊
長距離砲装備CAM2に白兵戦特化CAM3。
クリムゾンウェストの伝統的表現で言い換えると、重装甲自走投石機2体とサイクロプス級3体になる。
「むぅ」
バリトン(ka5112)が厳つい顔に困惑を滲ませる。
大重量の105ミリ弾が左右に着弾して土砂を吹き上げる。
その土砂は、バリトンを乗せるイェジドに当たるどころが汚すこともできない。
「最近、比較的ぬるい敵とばかり戦っておったからな、ここらで一つ気合を入れなおそうと」
したのじゃがなと残念そうにつぶやき、異様な厚みの刃を軽々と構えた。
フンと息を吐き出しながら斬龍刀を振るうと、斬撃の威力が30メートル近く飛んで土製CAM複数を切り刻む。
この歪虚達は受けも回避もなっていない。
戦歴に相応しい力を保つバリトンにとって、強大なはずの歪虚部隊も手応えのない敵に過ぎなかった。
「わたしにとっては危険な敵なのだけどね」
中破状態の土製歪虚を、風の属性を保つ矢が2本貫いた。
矢の来た方向を探ろうとするが、存在のための力を使い尽くして前のめりに倒れて土に戻る。
「2発耐えられる気しないし」
105ミリの砲口がこちらに向く気配を察知。
八原 篝(ka3104)は魔導二輪を駆り戦場の外側へ向かう。
CAM型歪虚は見た目よりずっと素早く向き直り、しかし大きな体とスナイパーライフルが地面にぶつかり姿勢を崩す。
本体と同じく土で出来たスラスターに光が灯る。
そこから噴き出す勢いは予想よりはるかに弱かったけれども、全高8メートルの巨体を立て直す程度のことはできた。
「この調子で強化されると飛行能力に届くか」
バリトンがさらに近づき近接戦闘の間合いへ。
馬鹿馬鹿しいほど大きく重いスコップを躱して高速な反撃の刃を返す。
それを脅威と判断したスナイパーライフル装備機が距離を取ろうとし、篝への警戒が一気に低下した。
「あいつらの親玉とは戦いたくないわね。護衛機ありだと命がいくつあっても足りない」
ママチャリ状の二輪の速度を落として攻撃再開。
スナイパーライフルよりは射程が短いとはいえ、CAMの足では追いつけない距離から届く弓でサンダーアローをご馳走する。
十分な威力と圧倒的な手数によって、土製デュミナスの前衛はあっという間に戦闘力を失おうとしていた。
リーリー【瑞那月】が軽快に駆けている。
鞍どころか武器すら持たない軽装だ。
それ故に速く、またリーリーらしく回避の技も高水準。
高速で振り回されるスコップの下をくぐり抜け、絶妙な時間差で突き出された2本目スコップを跳び越える。
すると障害物がなくなる。
後ひと駆けすれば、近接戦闘用装備を持たないデュミナス型歪虚に追いつける。
「西方の歪虚は酷く偏っていますね」
金の瞳を保つ鬼が微かな困惑と、それを塗りつぶせる濃さの殺意を表に出す。
多由羅(ka6167)が鞘を払う。
刃の長さは身の丈の倍ほどもある。
これだけ大きく重いと他の重装備は選択し辛い。
斬魔刀を除けば驚くほど軽装備の多由羅は、リーリーと共にスナイパーデュミナスへ近づき、追い抜いた。
「でも」
多由羅の唇が妖艶な弧を描く。
瑞那月が急角度で旋回。
土製デュミナスのほとんど足下で、地面に触れる高さから斬魔刀「祢々切丸」が半円を描く。
刃に後れて赤い軌道が宙に浮かび、ぴったり1秒遅れでデュミナスの太股から腰にかけて亀裂が入った。
「手応えは十分」
歪虚がライフルを捨てた。
両手の指を組んで、力任せに鬼とリーリーに振り下ろす。
斬魔刀が鞘に収まり微かな音を立てる。
戦の中で生じたマテリアルが刃に注ぎ込まれ、もう一度解き離れたときには斬魔というより魔物じみた光を帯びていた。
「私達の力を示しましょう」
瑞那月の走りが摺り足に変わる。
受けと防御を捨てた瑞那月には脅威である拳をぎりぎりで避け、衝突する寸前まで歪虚に近づく。
艶のある唇から艶めかしくすらある吐息が零れる。
剣先が音を置き去りに一閃。
胸部装甲の奥にある、座席とHMDを両断した。
黒々とした髪が多由羅の背からリーリーへ流れる。
傷口から負のマテリアルを噴き出し、土製CAMが仰向けに倒れて地響きを立てた。
「手応えのない」
優美と武を兼ね備えた姿勢のエクスシアが、完全に無傷のまま銃撃を行っていた。
長距離射撃戦に特化して中距離以下に向いていない機体では手は出せず、CAMとしては平凡な速度と近接兵器しか持たない機体では近づくこともできない。
「あの竜とて、流石にそうそう埋まりはしないでしょうし……」
足は使わずマテリアルの翼で横移動。
土製CAMが距離を詰めようとしても、スナイパーライフルの射程に捉えようとしても、ヴァルナ=エリゴス(ka2651)によって常に間合いを外される。
「墓荒らしをしているとなると、副葬品のマテリアルが狙い……でしょうか? いずれにせよ、死者の安寧を妨げる輩を野放しにはしておけませんね」
大破機に止めを刺し小破状態の機体削りに移る。
数は同程度でも質の差は圧倒的だ。
最初は5機いた歪虚は呆気ないほどあっさり撃ち減らされ、最後は複数の刃により全滅した。
『準備完了』
トランシーバーからの音声と雑音は半々だ。
高位歪虚や軍団規模の歪虚が出没する戦場と比べると非常に温い。
「こちらも準備は整いました」
『了解。2、1、敵増援を確認』
ヴァルナだけでなく、どのハンターのHMDにも変わった反応はなかった。
「このタイミングで動く?」
北のハンター集団から一人離れて走る篝は、困惑1割呆れ9割の息を吐く。
スキルで一時的に強化された視覚が、土の微かな動きをぎりぎりで捉えていた。
ぎりぎりでも一度気づいた後は簡単だ。
丘周辺の歪虚に対する軽快は他の面々に任せ、掘り起こした跡の目立つ土へ並の検査機器を上回る知覚を集中させる。
「地面の中から敵が奇襲仕掛けてくるパターンと予想はしたけど」
一見無造作に矢を放つ。
地面の浅い場所まで上がって来ていた歪虚は、薄い土を抜いた風属性矢により浅くない傷を負う。
7カ所の土が弾けて同数のCAMが現れる。
どれも無傷で両手に構えたスコップは禍々しく陽光を跳ね返す。
ハンターが丘を攻めているときにこうしていたら、多少の奇襲効果もあったかもしれない。
アバルト機が足を止めて向きを変える。
丘から迎撃や牽制の105ミリ弾が飛んでくると予測していたのに1発も来ない。
「あの練度では合流させても問題ない気もするが」
発砲。
強烈な弾が先頭のスコップ持ちを横殴りにする。
己のマテリアルを使って高速再装填を行いながら、FCSを酷使して連続射撃。
FCSが根を上げたときには土製CAM1機が残骸になり、残りの6機が丘の近くまで迫っていた。
「もう何体か削って……ふむ」
リーリーを駆る鬼の武者が、単騎で大型歪虚部隊に立ち塞がった。
鬼基準では特に大柄でもなく装備も刀を除けば酷く軽装だ。
これなら勝てると判断したスコップCAM7機が、押し合いへし合いしながら多由羅目がけて突進する。
「共に死ぬには――足りません」
落胆の吐息を1つ。
リーリーが肩をすくめるような気配で数歩後退すると、目測を誤った土製CAM6機が大重量スコップを空振りさせた。
空振りでなかった1機も長大な刃に受け流されてろくにダメージを与えられない。
反撃の斬撃はスコップとは比較にならないほど速くて鋭く、既にいくつか被弾した土製デュミナスの太股を深く抉った。
リーリーが丘とは逆の向きに後退する。
全力で走れば追い付けはするが、移動しながら攻撃するには遠すぎる距離だ。
真っ当に運用されれば少領1つなら落とせるはずの戦力が、たった1人と1頭に翻弄され引きずり回される。
「これを狙わない訳にもなぁ」
カードを5実体化させたグリムバルドが、無防備なスコップCAMを見下ろし一瞬戸惑う。
『気にせずスコアを稼げ。歪虚はいくらでもいる』
「りょーかい」
グリムバルドが放したカードが雷に変わる。
風属性に弱く、盾すら持たず、しかも背中を見せている土製デュミナスには躱すことも防ぐこともできない。
5つの雷が5つの大型歪虚を射貫く。
擬似的な回路が焼かれて小規模な火災が発生。
予備の回路に切り替えてCAMらしいしぶとさを見せるが、余裕は完全に失われ被弾即擱座しかねないほど追い詰められる。
「ハンターも何でもありだな」
空を飛んで自然災害じみた術を操るなど、リアルブルーで軍人稼業をしていたときには想像をしたことすらなかった。
敵も味方もなんでもありになったとしても、アバルトが出来ることは変わらないしそもそも変わる必要もない。今の技術で戦場を動かせる。
リーリーを追っていたデュミナスが恐怖に負けて逃げ出した。
Falkeにバルディッシュを持たせる。
CAM基準では小ぶりの手斧サイズだが威力は十分だ。
Falkeの横を通り抜けようとする土製CAMへ刃をめり込ませ、アバルト機の存在を強く印象づける。
スコップが高々と振り上げられた。
威力はバルディッシュを上回っているので、殴り合いなら勝てるとでも思ったのだろう。
案外鋭い斬撃を危なげ無くバルディッシュで受けて、アバルト機は距離はとらずにぐるりと土製CAMの回りを移動した。
スコップが再び振りかぶられることはなかった。
直前までアバルト機がいた空間を風属性の矢が通り抜け、CAM型のコクピットに突き刺さる。
擱座後崩壊を確認してすぐアバルト機が向きを変えると、5つの雷に処理される歪虚と生き残りに止めを刺す鬼の武者が見えた。
「……好んで潜んで居るのならば、其処を墓場としていつまでの其処にいると良い」
4連のカノン砲を丘以外の方向に向ける。
湿った土に淡々と砲弾を浴びせると、3射目で土の奥から半壊歪虚が飛び出す。
「問題はここからだ」
刃と矢であっさり狩られたデュミナス型歪虚から視線を外し、改めて丘に向き直る。
「面倒な地形だ」
武装をプラズマキャノンに切り替え引き金を引く。
塹壕から上半身だけを出している人型に見事当たるが、CAMの頑丈さをコピーされた歪虚は戦闘能力を失わずに防戦を続けていた。
●戦いの丘
歪虚も馬鹿ではない。
最後の伏兵の足が止まった時点で敗北を悟り撤退を決断した。
が、丘を降りる一歩を踏み出す前に南北からハンターに攻め込まれていた。
肉と岩が打ち合う重い音がする。
壊れたのは肉ではなく、岩で造られた大型歪虚だ。
バリトンがスコップを跳ね上げた動きから突きに繋げる。
斬龍刀「天墜」が胸部装甲を貫き、土製CAMの脊椎に当たる箇所を破壊。
歪虚はただの土砂に戻って地面に散らばる。
イェジドが強引に前進。
綺麗な毛が泥にまみれるのを気にせず、逃げようとした新手を激しく威嚇し身を竦ませる。
「城攻めとはなぁ!」
バリトンが軽くウィンクをして泥が目に入るのを回避。
穴だらけというより迷路じみた場所で、正面から土製歪虚を攻め立てる。
別方向から攻め込むレイオスの前に、2体のデュミナスが立ち塞がる。
その後ろからはスナイパーライフルを構えた機体がレイオス機を狙い、2体のスコップ装備機も場所の狭さを活かして避けづらい刺突を仕掛けてくる。
が、当たらない。
足場が悪いのにトライアンフは素晴らしく巧みに避け、それだけでなく精度も威力も増した一撃を土製歪虚にお見舞いする。
「残念だがオレはロングレンジよりクロスレンジの方が得意なんだよ」
赤い刃が装甲を切り裂く。
肘関節を破壊し、逆側の装甲を壊し、速度を緩めず斜め後ろにいたデュミナスのコクピットにめり込んで止まる。
レイオスの息は少しだけ乱れている。
人機一体の副作用であり消耗が激しい。それでも消耗仕切る前に決着がつく確信があった。
紫色の光が2体の歪虚を貫く。
半秒遅れて亀裂が生じて負のマテリアルが漏れる。
「個体差が大きいですね」
1体は濡れた砂のように崩れるがもう1体はかなり形を保っている。
漏れるマテリアルの量にも差があった。
後はレイオスに任せて浮上を開始。
地上に比べると動きが鈍い機体に、105ミリ弾が連続で襲いかかる。
どちらも躱せない。
なので剣状態のポレモスSGSで打ち落とす。
「興味があること以外は気にもしない。力はともかく性質はあの竜そのものですね」
ヴァルナが柳眉を逆立てている。
散々掘り返された丘のあちこちに、遺跡或いは墓地のものらしい石材が散乱している。
浮力を弱めて機体を前傾。
各関節の角度を調節して速度の上乗せと狙いの修正を行う。
「消えなさい」
はるか高みから死を命じる。
風とそれ以外の何かで輝く刃が2体のデュミナスを貫通、倒れることすら許さずその場で消滅させた。
「おいおい何だこりゃ、歪虚のバーゲンセールかあ!?」
2体の土製歪虚と同時に斬り結びながら、トリプルJが楽しげに笑う。
エクスシアは土まみれだが装甲は無事だし関節部分の消耗も軽微だ。
巧みに斧を扱いスコップを受け、少々のダメージは分厚い装甲で受け止め斧でお返しする。
2連続の斧が土製デュミナスの上半身をずたずたに。
入れ替わりに3機目が前進してくるより速く、もう1機を巻き込み青龍翔咬波をぶっ放す。
機嫌良く戦うと同時にトリプルJは冷静に戦場を捉えている。
ハンター側の圧倒的優勢だ。
しかし敵の位置が全て判明している訳ではない。
「派手に暴れて引きつける、ってな」
乗用車サイズの石材が転がり落ちてくる。
スコップCAM2つを巻き込むコースだが、このままやられるよりはましだと考えたのだろう。
「あめぇんだよ」
デュミナス背部に石材がめり込んだタイミングで、大きく振りかぶった態勢から斧を振り回す。
エクスシアの大きさが武器になり、デュミナスの大きさが急所と化す。
パーツが砕かれ、接合部が引きちぎられ、風雨でダメージを負った石材が粉砕されて白い煙を発生させる。
「次はどいつだ?」
逆向きに斧を旋回させ止めを刺し、煙の中から飛んできた105ミリ弾を首を傾けるだけで躱す。
「場所を教えてくれてありがとうよ」
山盛りの落とし穴が待ち受ける丘頂上に踏み込む必要は無い。
プラズマキャノンによる砲撃に持ち込み、斧を盾として使いダメージを減らす。
自分の体を治癒する要領でマテリアルを機体に流す。
ほぼ無傷まで回復したR7に気付き、スナイパーライフルCAMの思考が絶望一色に染まった。
●お仕事完了
「茶でも持ってくるべきだったかな」
グリムバルドが額の汗を拭った。
目に見える場所に歪虚の姿はないが、元遺跡の元穴だらけの丘には薄く負の気配が漂っている。
「あれか?」
怪しい土に雷を打ち込む。
2度、3度の浴びせると手応えがあり、地面が陥没すると同時に負のマテリアルが吹き上がる。
「ちょっと……かなり時間がかかりそうだな」
ちらりと東を見る。
掃除道具とエクラ教グッズを魔導軽トラの荷台に詰め込んだ新人ハンター達が、微妙に冷や汗をかきながらこちらを見ていていた。
「あの子達本当に新人? 軍人じゃなくて?」
聖堂教会出身の新人である。みっちり教育されている分練度が高いのだ。
「このまま引き継いでもいけそうだけどね」
雷を撃つ、撃つ、撃つ。
たまに当たりはするしまだまだ残弾に余裕はあるが、そろそろ討伐を完了させたい。
「承知しました。あの辺りですね」
ヴァルナはトランシーバー片手に操縦桿を動かしている。
105ミリ弾による迎撃はない。
土の中にスナイパーライフルと一緒に隠れている可能性はあるものの、ライフルと一緒に土から這い出て攻撃するには1分以上がかかるはずだ。
「順に撃ち込みますので離れてください。……崩れるかもしれませんし」
半ば放棄されているとはいえ長い歴史のある遺物に、容赦なくマテリアルビームを撃ち込んでいく。
東で見守る新人が面白い顔になっている。
ヴァルナはくすりと笑い、事前に教えられた周波数にあわせた。
「先人の加護により見事歪虚を討ち果たすことができました、という程度の修辞は出来るようになりなさい。この程度の被害なら許されます」
『ご指導ありがとうございます!』
相手は緊張でガチガチだ。
若くても超ベテランに話しかけられれば当然の反応かもしれない。
土煙が上がる。
半ばで折れたスコップを手に、上半身が焼かれた歪虚が幽鬼の如く現れる。
空からの紫の光が容赦なく貫く。
別の穴からもデュミナス型歪虚が這いだし、強力なハンターがいない東に向け必死に走る。
「これで終わり」
雷を背後から直撃。
既に十分傷ついた板歪虚には耐えることが出来ず、ただの土に戻って自ら開けた穴の中へ降り注ぐのだった。
「……だよね?」
歪虚の不在を確認するのに、ハンター総出で30分の時間が必要だった。
「はいお祈り終了!」
「石棺元に戻すからマスクと手袋っ」
新人達が熱心に仕事をしている。
「と、盗掘ー!?」
「ちげーよ」
トリプルJは、新人とは比較にならない手際で掃除と修復を行う。作業前と後で記録を残すのも忘れない。
「先史的な遺物や遺構は大好物な訳よ、俺様。ただの墓でもこのまま放置ってのはね」
実際、今彼が手を出さないと数十年単位で放置されかねなかった。
拙い部分もあるが聖堂教会式の儀式が行われ、負の気配が薄くなっていく。
掃除は始まったばかりだが、元が墓っぽい遺跡だったことが分かる程度には穏やかな雰囲気だ。
「結局を探してやがるんだか」
作業を手伝っていたレイオスが、だいたい元に戻った小さな墓を見下ろす。
「歪虚の目的か。破壊か殺人のどちらかじゃと……どうしたイルザ」
イェジドが興味を示した場所の瓦礫を退けると、ずいぶん古い造りの兜が出てきた。
「副葬品か」
微かなマテリアルを感じる。
本当に微かで、バリトン達の装備の方がマテリアルの気配が濃い。
「歪虚も強くなることに貪欲ということか」
負けるつもりは欠片もない。
バリトンは闘志を新たにして新人達を見守るのだった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/03/17 19:14:20 |
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作戦卓 多由羅(ka6167) 鬼|21才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2018/03/21 16:53:29 |