1ラウンド

マスター:電気石八生

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/04/10 07:30
完成日
2018/04/12 19:00

みんなの思い出

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オープニング

●至界
 訪れるべき春、未だその先触れすらも見せぬ辺境北部の奥地。
 蕎麦すらも芽吹くことない不毛の地の内により、ふつふつと沸き出すものがあった。
 それは石の奥に隠れ、紛れ、散っていた黄金だ。細かな欠片は互いを求めて寄り集まり、やがてひとつの形を成して地上へと顕われた。
「かくて妾、此の地へと至れり」
 髪先からつま先に至るまで、その肢体のすべてが黄金でこしらえられた女――怠惰がぎちり、その硬き頬に笑みを刻む。
 怠惰でありながら、その背丈は人のそれと変わらない。しかし、そのにおいは色濃く、巨体と変わらぬ気圧をまとっていた。
「在り様に引きずられるはどこにあれ、何と成っても変わりはせぬか。……ま、倦まぬ程に勤しもうぞ」
 緩慢にその身を伸ばし、黄金の眼をゆるくすがめる。
 怠惰として顕現した彼女はその本能に侵され、本来の性質を損なっていた。しかし、まあ、在り様に魂が馴染めばもう少し自在に動けるだろう。それまでは無理せずゆるりと参ろうか。
「……どうあるにせよ、こちらで名乗る名を決めておかねばならぬわな」
 そも、名に意味と意義を求める嗜好はない。どうせこの黄金とて、本体ならぬ依り代なのだから。
 ありものの名でかまわない。体を表わす名であればそれでいい。
「ゴヴニアとせぬ」
 リアルブルーの神話のひとつに語られる、鍛冶神ゴブニュ。それを適当に女性名らしくしただけの名ではあったが、鉱石を繰る彼女を表わすには適当であろう。
「さ、エールを掲げて石の縁結び、存分に戯れようぞ」
 女――ゴヴニアはふと小首を傾げ。
「いや、挨拶ごときに存分な時をかけるは面倒よな」

●招待状
 ノアーラ・クンタウのソサエティ、その一角に集ったハンターは、なんとも言えない目で彼を見やる。
「アタシ別にハゲてるわけじゃねぇからね!? 剃ってるだけなんだからねぇ!?」
 ちがう。そこじゃない。
 依頼の受付担当者である彼――ゲモ・ママという禿頭の黒人男が見事なまでにオネェだから、ついつい見てしまうだけのことなのだ。
「おとといまで北の果てに出向してたんだけどさぁ、やったら寒ぃでしょ? 負けてらんねぇわーって、全身毛刈りしちゃったのよねぇ……あとはもうやせ我慢の毎日よぉ。ほら、1回剃ったのに生やしちゃったら、負けた感じでしょ?」
 盛大にため息をつくゲ「アタシのこたぁママって呼んでくれるぅ!?」……ママ。
 彼はなにやら達観した目を巡らせてハンターたちを見やり。
「本題。ウチのシマに怠惰が1匹出たわ。ご大層に招待状まで送ってくれちゃってね」
 彼が示した招待状に書きつけられた内容は以下のとおり。

 差出者は、旅路を経てこの地へ至ったという怠惰で、名はゴヴニア。
 これからの遊び相手となるハンターたちと挨拶を交わしたい。敵同士、言の葉よりも刃弾で為すが道理であろう。
 ただし、長々と絡み合うのは面倒。ゆえに10秒と区切らせてもらう。
 ゴヴニアが使うのは両手に持った2枚の盾と電撃。10秒の間、ゴヴニアの胴か頭に一撃を与えられればハンターの勝ち。守りきれればゴヴニアの勝ちとする。

「自分の体は金でできてるって、わざわざのご通達よぉ。ってこた、金の特性ってのを持ってるんでしょうねぇ。……しっかし10秒って! これまたずいぶん急がせてくれんじゃないの!」
 ママはくねくね憤り、地団駄を踏んで、はたと平静を取り戻す。
「どこまで信用できるか知らないけど、怠惰だからね。ウソつくとか面倒なこたしねぇでしょ。こっちが考えるのは盾こじ開けて一発ぶっ込む! それだけよぉ」
 そして見事なワンツーを見せ、にやり。
「アンタたち、ヤッチマイナー!」

リプレイ本文

●開幕
 夜空は厚雲に包み隠され、月も星も見えはしない。
 風雨に汚された大振りな岩が転がる荒野の中、ゴヴニアは黄金の瞳を開き。
「来やったか」

●4秒
「キヤッテやったじゃーん!?」
 ゾファル・G・初火(ka4407)が、自らの胴に巻きつけた魔導ライト「おでこぺっかりん☆」をスイッチオン。
 このライト、元は魔導アーマー用の装備である。茫漠の闇を無慈悲に斬り裂き、ゴヴニアの黄金を世界に晒す。
 自分で自分の遺言書にサインするたぁおもしれぇ歪虚じゃん。……気に入ったぜ? お望みどおり、バラバラにぶちまけてやろうじゃんよ!」
「ならば来よ」
 黄金で造られた肢体を護るべく、両の手に鈍色の円盾が顕われた。
 が、ゾファルは攻め込まない。ライトの光でゴヴニアを縫い止め、猛る笑みを頬に刻む。
「焦んなよ。10秒間、きっちり楽しもうじゃん?」
「先手必勝! いくよっ!」
 ゾファルの言葉を継いだステラ=ライムライト(ka5122)が、岩陰に身を潜めたまま、八相に構えた魔剣「ストームレイン」を斬り下ろした。
 水と風との魔力を乗せた次元斬が行く手を塞ぐ岩をすり抜け、直ぐに飛んでゴヴニアの在る空間を断つ――
「えっ!?」
 ゴヴニアは右の盾の表面に逆巻くマテリアルを吹き払うばかりであった。
「守りが堅いなら盾ごと叩き斬っちゃえ! とはいかないかぁ……なら!」
 燐光の軌跡を引き、ステラが駆ける。
 彼女の真骨頂は接近戦にこそある。たとえこれ以上の攻撃ができずとも、剣の間合に入ってさえいれば。
「できることはある、よね!」

 その言葉が終わるより早く、道元 ガンジ(ka6005)はゴヴニアの右側から突っ込んでいた。
「よっぽど強ぇって自信あるんだろーけどよ、ハンターなめんじゃねーぜ!?」
 黒髪黒瞳の少年であったはずの体から噴き上げるマテリアルの奔流! 霊呪奥義・現界せしものの発動が霊闘士としての真の姿を呼び覚まし、速やかにその身を2メートル越えの巨体を持つ黒き人狼へと変えた。
「自信ではない。在るように有るばかりよ」
 ゴヴニアはガンジの突撃を止めるべく盾を向けたが。
 それこそはガンジの待ち受けていたもの。
 ――よーく見えるぜ。始まっちまえば10秒かもしんねーけどよ、始まるまではたっぷり時間、あったもんなぁ!
 ゾファルがしかけるまでの間に発動しておいた野生の瞳が、彼の眼に狼霊の守護を与えていた。守るばかりの盾の軌道を見切るなど、簡単だ。
「命冥加に握ってやがっと痛ぇ目見るぜ!?」
 盾の裏へかけた指を縁に沿って滑らせ、“重さ”を加える。
 それによってゴヴニアの重心が傾き、自重を持ってより大きく崩れた。
 最少の力で敵を崩す、柔能制剛であった。
 しかし。
「示し合わせが足りておらぬわ。汝ばかりで崩せるかよ」
 踏みとどまったゴヴニアは黒狼を引き剥がしにかかった。
「逃さねぇ――!」
 こらえるガンジ。戦籠手「炎獄」でその体を掴むことができれば、熱に弱い黄金を溶かせるかもしれない。そのためにも盾の守りを越えなければ。
 と。
「あいさつに来たんだってな金怠惰っ! わたしはイヴという者だ! こんばんははじめまして憶えとけーっ!!」
 ステラ、ガンジとは逆側の、ゴヴニアの左側面に潜んでいたイヴ(ka6763)。岩を支えにアサルトライフル「ファナーリクL37」を突き出し、引き金を引き絞った。
 標的はゾファルのライトで照らし出され、さらにはガンジが取りつかれている。もっともゴヴニアは怠惰だから、それらを避ける手間を惜しんでいるだけなのかもしれないが――ともあれ、エイミングで澄ませた射撃は外さない。
 1,2,345678――エイミングで澄ませた制圧射撃がゴヴニアの足元で爆ぜる。いくらか黄金が削れた後、左の盾が落ちてきてその弾を弾いたが、かまわない。傷つけるよりも頭を開けるのが狙いだから。
 慎重を重ねてここに位置取ったのだ。ゴヴニアの体自体を盾に、味方へのフレンドリーファイヤを防ぐために。後に続く仲間が間合に踏み込み、有効打を叩き込んでくれることを信じ、弾倉が空になるまで引き金を引き続けるだけだ。
「よし!」
 ゴヴニアの意識が逸れた隙をつき、ガンジはその右の盾を激しく揺さぶりにかかった。右の盾を抑えられれば、残るハンターはそれだけ左の盾に集中できる。
 難しいこたぁよくわかんねぇけどよ、体の張りかたってやつだけはよく知ってんだよ!

「右から左から、忙しい」
 ため息を漏らすゴヴニア。その左の盾が金身の中央へスライドし、ガギリ! 甲高く濁った悲鳴をあげた。
「馬もなく竜騎兵気取りか?」
 ランス「イルベガン」の穂先で盾を強くこじりながら、ンレ(ka7142)は食いしばった歯の間から声音を絞り出す。
「ゴヴニア……貴き黄金を怠惰の霞へ堕としたおまえに価値などない。さっさと砕け散り、汚れた金山を晒すがいい!」
 その体を包む鱗は冷めた青緑。しかし、レヴァイアタンの生まれ変わりを称する彼女の誇りとマテリアルの熱とを映して鮮やかに燃え立つ。
「気迫に力が追いついておらぬ。退け」
「ならば退かせてみるがいい――!」
 右腕に思いきり体重をかけてランスを押し込む一方、ンレは左手で先にゆるめておいたミネラルウォーターの口を開けた。そのまま、自分の足元へ撒く。
 そしてゴヴニアの右盾を抑えるガンジに視線を送った。ここは私に任せて離れろ。
 対してガンジは不敵に牙を剥く。かまわねぇ、やっちまえ!
 陸にも戦士はいるのだな。ンレは濡れた荒野を強くにじり、体を固定した。
 身動きを邪魔され、苛立っているのだろう? 電撃を撃つならばこの機をおいてほかにあるまい。さあ、撃ってこい。そのためにわざわざ“避雷針”を立て、雷を流すための水を撒いたのだからな。
 雷は直流であり、ある一方へ流れていずれ消える。この水はまさに、ランスとンレとを伝う雷を導く呼び水となるはずだ。
 海という広大な水域に生きてきたンレは、そのことを経験則で知っていた。
 ――私は未熟なれば、技ならぬ体をもって止めてみせる!

●6秒
「覚悟を決めた嬢ちゃんをただ見ていては、“獣”の意地が通らぬわ!」
 老いたる深みと猛りの張りとを備えた声音が響き渡り、バリトン(ka5112)の巨体が戦場へと躍り込む。
「ゾファルの嬢ちゃん、すまぬがわしのほうが速かったな」
「ち、かっこいいとこ持ってかれちまったじゃん――!」
 一歩遅れて駆け込み来るゾファルへ言い置き、バリトンは加速。
「死に急ぐこともなかろう、老骨」
 ゴヴニアの息を「はん!」、魔剣「ストームレイン」を脇に構えた彼は、突き出した分厚い肩で吹き飛ばした。
「老骨が若人より先に死ぬは必定! が、この荒野、死に場所にはちと寂しかろう!」
 バリトンが担うは盾を抑えられたゴヴニアが撃つであろう雷の受け役である。それをこなすためのあらゆる想定は、この戦場へ立つ前に終えていた。今の状況は、その最後の想定内――盾の抑え込みが不十分であるとき。
 ならばわしのすべきは、汗をかいて怠惰に盾を使わせることよ。
 ンレのランスをいなして動いたゴヴニアの左盾に肩を叩きつけ、踏んばらせる。
 そこに生じた隙間へ魔剣を滑り込ませて斬り上げ、ひねりを加えて斬り下げた。
「その盾、勝手に攻撃を防ぐようだ。ならばこの二連之業も避けられまい」
 斬り下げた刃で盾を押し込み。
 ンレが穂先を合わせた。
「先達に任せてのうのうと控えていられるか。……私にも戦士の意地がある」
「それは私だっていっしょだよ!」
 ンレの言葉尻を吹き散らしてステラが駆け込んできた。
 魔剣を大きく振りかざし、体を大きく張って堂々と。
「ステラの嬢ちゃんか!?」
 声をあげるバリトンに「後はお任せ! バリトンさんのこと盾にするかもだけどごめんねっ!」。しかし、その足はバリトンの背後ならぬ右脇を進んでいる。
 怠惰がこっち見てくれたらいい。
 本命は私だって思い込んでくれたらもっといい。
 電撃を受けた瞬間、肉斬骨断を返す。そのためにもう一歩、あと一歩、踏み込む!
 対してゴヴニアは。
「初撃をくれた娘御よ、反撃狙いは知れておるぞ」
 内に潜ませていた電気を舌先で結び、噴き出した。
 夜気を焼く黄金の雷。それは歯を食いしばったンレを、バリトンを、そしてガンジへ通電し、勢いを損ないながらも直ぐに飛ぶ。
「そうじゃん、こっちじゃん!?」
 その軌道の先にいたのはゾファル。攻撃を捨て、ガウスジェイルで回避の足すらも捨てて自らを的とし、このときを待ち受けていたのだ。
「盾となることはできなんだが……繋げたことでよしとしようか」
 バリトンが痺れる口の端をぎちりと吊り上げる。
 要となる役どころは逃したが、まあよかろう。今夜はただの「挨拶」。戦いの場で対峙したとき、意地と我とを張り通せばいい。
 古戦士の思いに気づくことなく、戦闘狂たるゾファルは彼同様に口の端を吊り上げていた。
 直撃じゃねーのはつまんねーけど、せいぜい楽しく遊ぼうじゃん!?
 自身へ向けて飛来する電撃に、パリィグローブ「ディスターブ」で鎧った指先を伸べる。それはンレがランスで為そうとした避雷針の構えだ。
 果たして彼女の中指の先に衝撃が灯った瞬間、電撃の黄金を照り返す白光の障壁――ラストテリトリーが顕われる。
 漏らさねーよ、どこにもよ!
 電撃は障壁に出ていく先を塞がれ、ゾファルの体内をでたらめに跳ね回った。
 舌を噛まぬよう歯の間にグローブの指を挟んだ彼女は硬直した足をわずかににじり、ンレの撒いた水へつま先を浸す。
「……効いたかどうかわかんねーけど、気はココロってやつじゃん?」
 ひとすじの黒煙と共に吐き出した。
「ゾファルちゃん無茶するんだから!」
 自分がしようとしていたことは棚に上げ、ステラがやれやれ、息をついた。

●8秒
 ゾファルが電撃を抑えに入ったと同時、ティーア・ズィルバーン(ka0122)は顎の先が地にこするほど低く上体を倒し込み、戦場へと駆け込んでいた。
 ここまでお膳立てしてもらったんだ。刈れませんでしたってわけにはいかねーだろ!?
「ティーアさん!」
 前もって打ち合わせていたとおり、ベストポジションに移動していたイヴが背を突き出し、呼ばわった。このために彼女はあえて動きの鈍るブレストプレートを着込み、備えてきたのだ。
「んじゃ、久しぶりに一戦交えさせてもらうぜ!」
 ティーアがその背を踏んだ瞬間。イヴは「そーれっ!」、思いきり体を上げ、アシスト。
 その勢いに乗ってティーアは大きく跳んだ。
 ――いや、一戦交える時間はねーのか。なら。
 瞳に灯った蒼光の軌跡を引き、ンレとバリトンが盾を押し込む左の上からゴヴニアへ降り落ちていく。
「一閃、くらわせるだけだ……!」
 自らの称号ともなっているアックスブレード「ツヴァイシュトースツァーン」を“剣”とし、振りかざす。たとえ盾が来たとて、その隙間に刃を潜りませ、首をはねる!
 発動した部位狙いのスキルが刃をより迅くはしらせ、鋭く研ぎ澄まし、ゴヴニアの首へ――
 ゴヴニアがままならぬ左右の盾を捨てた。
 支えを失ってつんのめり、膝をつくハンターに構わず、両手を十字に組んでティーア必殺の斬撃を受け止めた。
「首! よこせやァァァ!!」
 裂帛の気合と共にそのゴヴニアの腕を踏みつけて体をずらし、刃にひねりを加えながら刃をねじこめば、ぐぢり。やわらかい黄金はひしゃげ、前に置いていた左腕がちぎれて落ちる。
 しかし。刃はゴヴニアの首に届くことはなく、無情に静止した。
「退け」
 残る右手で払いのけられたティーアは墜落しながらうそぶいた。
「ま、これが今の実力ってな」
 しかしその目は落胆に沈んでなどいない。いっそうの強い光を映し、蒼く輝いていた。
 首は刈り損ねたが、役目はきっちり果たしたぜ。

 ゾファルの胴に巻きつけられたライトは今なお過ぎるほど強い光を振りまき、ゴヴニアの黄金を晒し続けている。
 だからこそ。光の及ばぬ先にはより深い闇がわだかまり、そこに潜む者を包み隠すのだ。
 ……皆が繋いでくれた機を無駄にはしない。
 最後の一手たるメンカル(ka5338)は隠の徒に合わせ、岩陰に、闇に潜んでここまで来た。
 そして今、ゴヴニアは盾を捨て、左腕をも損なっている。
 タイムリミットはあとわずか。この後交わす一合で勝負は決まる。
 ゴヴニアの正面に踏み込んだメンカルが左に佩いた竜尾刀「ディモルダクス」を抜き打った。
「真っ向か」
 悪いな。真っ向勝負は踏み込みだけだ。俺はちょっと避けたり狙ったりするのが得意なだけの雑魚だぞ。
 メンカルの指が柄のしかけを起動させれば、竜尾刀の刀身がじゃらりと解けた。時に剣、時に鞭を成す竜尾、それこそが「ディモルダクス」だ。
「……おまえは、当てさえすればいいと言ったな?」
 言いながらも彼の足は立ち位置を変え続け、刃の軌道と合わせてゴヴニアの逃げ場を塞ぐ。小賢しいと嗤うならば嗤え。しかし、だからといって気にしてなどやらんがな。なにせこれは、そういうゲームなんだろう?
「然り」
 ゴヴニアの声音が鋼の竜尾に巻き取られ、歪む。
 認めたな。その言葉、覆してくれるなよ?
「ならば悪いが“詰み”だ」
 鋼の鞭がギギッ。ゴヴニアの首をこすって固い悲鳴をあげさせた。

●余韻
「挨拶の出来を語るは野暮。ゆえに汝らを等しく讃えようぞ。妾はゴヴニアとでも呼ぶがよい」
 ゴヴニアは首の傷をなぜ、艶やかに笑んだ。
「ふん、次に会ったそのときこそ……この槍、届かせてみせる」
 自らへの叱咤と決意を含めた言葉を返すンレ。
「おまえはおもしろい奴だな、ゴヴニア。あらためて自己紹介をしようか。メンカルと呼んでくれ」
 後を継いだメンカルは姿勢を正して名乗り、ニヤリと笑んだ。
「こちらも楽しませてもらった。また遊んでくれるか?」
「面倒は好かぬが、次は妾を尽くして戯れよう」
 そして黄金の体を細かに砕き散らし、風に吹かれて消えた。
「自分で壊れちゃった……」
 追いかけようとしてやめたステラにバリトンがうなずく。
「おかしな歪虚じゃったのう」
 ティーアは肩をすくめて息をつき。
「これはこれで復帰の肩慣らしにはなった」
「って、まだ始まったばっかみてーじゃんよ?」
 ゾファルは両の拳を打ちつけ、気炎を噴く。
「なんでもいいけどよ、メシ! 腹減ったぜ」
 少年の姿を取り戻したガンジが言えば、イヴはふと思い出したように「あ」。
「頭使ったらおなかすいたしー。ママさんのお店でパスタとか――まさか、オンナノコ出入り禁止とかじゃないよね!? トマト! トマトのパスタ食べたい! トマトはトマトートマトマトー。長くて丸くてプリップリー」
 即興の歌で空腹をごまかしつつ歩き出す。

 かくてクリムゾンウェストの辺境に不可思議な怠惰は来たり、ひとつの予感を残していったのだった。

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • アックスブレード「ツヴァイシュトースツァーン」マイスター
    ティーア・ズィルバーン(ka0122
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • ゾファル怠極拳
    ゾファル・G・初火(ka4407
    人間(蒼)|16才|女性|闘狩人
  • (強い)爺
    バリトン(ka5112
    人間(紅)|81才|男性|舞刀士
  • 甘苦スレイヴ
    葛音 ステラ(ka5122
    人間(蒼)|19才|女性|舞刀士
  • 胃痛領主
    メンカル(ka5338
    人間(紅)|26才|男性|疾影士
  • 今日を笑顔で全力!
    道元 ガンジ(ka6005
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • きざはしの一歩
    イヴ(ka6763
    エルフ|21才|女性|猟撃士
  • 黄金の縁
    ンレ(ka7142
    ドラグーン|21才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン ゴヴニア歓迎会~相談卓~
ゾファル・G・初火(ka4407
人間(リアルブルー)|16才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/04/10 03:04:00
アイコン 質問卓だよ!
イヴ(ka6763
エルフ|21才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2018/04/07 05:39:46
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/04/07 23:42:27