ゲスト
(ka0000)
【羽冠】歯車じゃない
マスター:坂上テンゼン

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/04/06 09:00
- 完成日
- 2018/04/12 23:56
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム王国西部、スフォルツァ子爵家邸宅――
一つの報せが届けられた。
システィーナ王女がウェルズ・クリストフ・マーロウ大公の孫に結婚を迫られているという内容であった。
これを受けたマハ・スフォルツァ――当主ヒューバートの母親にして相談役――は、その時飲んでいた紅茶のカップを落とした。
メイドが慌てて片付けようとする。
その最中、マハはこう言った。
「これは国政の乗っ取りではないか……!」
王家とマーロウが結びつく。
王国は一つに纏まる。
その点でのみ見れば善いことなのかもしれない。
だが、結果としてグラズヘイム王国の方針に、変化が起こることは間違いなく、それはマーロウの考えに沿った変化だ。
グラズヘイム王国が、グラハム王家ではなく、マーロウ家の意図で動く……。
それは「乗っ取り」以外の何物でもない。
「母上、落ち着いて下さい」
「……ええ。大丈夫です」
ヒューバートの呼びかけに応え、マハはしばししていつもの冷静さを取り戻した。
「これは……もしこの結婚が成れば、マーロウが勝利したということになるのでしょうか?」
ヒューバートが問う。マーロウ大公自身は『忠臣』を標榜してはいるが、貴族の立場からすればマーロウ家が王家の政敵であることは明らかだ。
だが、この問いにマハは首を横に振る。
「正しくない方法で権力を得たとして、長続きはしません。どこかに無理がでるはず。
人の上に立つには資質が問われます」
ウェルズ・クリストフ・マーロウがその器に相応しいかどうかは別の問題だ。
(しかし……結婚が成立すればマーロウ大公が国政に関与するようになることは疑いの余地がない。
穏便に済むはずがない……
もし、こんな時に歪虚の侵攻があれば……)
マハ・スフォルツァの、その予感は的中した。――彼女が予期したのとは別な形で。
「申し上げます! 王女殿下のご結婚に反対する領民が集まって反対運動を行っております!
かれらは自分達だけで王都に行って、マーロウ大公に直接訴えると言っております!」
「なんて無謀な……」
その報告を聞いたマハ・スフォルツァは思わず額を抑えた。なおこの時は執務中であったため、カップを割る事態は避けられた。
無事で済むはずがない。距離だけでも相当なものなのに加え、このリベルタース地方は王国で最も歪虚が多い地方だ。
「訴えが大きいものになるほど」「無理であればあるほど」「無理をするのが正当化される」というわけのわからない錯覚を、人は時としてする。
「……規模は?」
ヒューバートが、責任感を総動員して聞く。まだ若く未熟者だが、領主はあくまでも彼なのだ。
「確認はできていませんが……百人や二百人というものではありません!」
「すぐに『光貴なる盾』を出動させ、鎮圧にあたらせるのだ」
よろしいですね、という意志を込めてマハを見る。
「それだけでは足りないでしょう……
ハンターにも協力の要請を」
マハは付け加えた。これはもはや暴徒鎮圧依頼になる。
歪虚ではないものの、力を持った存在の助力が必要だ。
「王女様は政略結婚の道具じゃない!」
「そうだ!」
「国を動かす歯車でもない!」
「そうだ!」
「王女様は王国の宝だ!」
「そうだ!」
示し合わせたわけでもないのに、いちいち合いの手が入る。
大半は名前も知らない人間達でありながら、意見が合っているのは、目的がはっきりしていてわかりやすいからだ。その上、大勢が一体感を感じる事自体への快感も手伝っている。
かれらは今、領地の境目にある関所に殺到していた。
「集まれば集まるもんだなあ。この領地、こんなに人いたのかよ」
最前線で暴徒を抑える、スフォルツァ私兵団『光貴なる盾』の中核を担うギョーム・ペリエが言った。
彼等の前に集まった人の数といったら
――まるで津波だ。
「心配だ……お嬢が領民相手に制圧射撃しないかメチャクチャ心配だ……」
人数の少ない覚醒者は拡散して暴徒鎮圧に当たっていたので、ギョームの心配は直接本人に伝えられることはなかったのだが。
(さすがに領民に向ける銃は持ちませんわ……一体どうしたら)
『光貴なる盾』の覚醒者メンバーにしてスフォルツァの末娘、ジョセファは拳銃ではなく盾を持って暴徒を押し返していた。
「皆さん! 早まらないでください!
王都まで歩いていくなんて無茶です!」
同じくピエ・ドゥメールが呼びかけるが、暴徒は耳を貸さない。
いや、聞いてはいるのだが、勢いに流されて拒否してしまっている。
皆で渡れば怖くない。この『皆』というものは魔物であった。いや、信仰されているという意味では神か。
「駄目だわ……これでは説得力が足りない……! もっと注意を惹かないと……!」
「パニックが起これば大惨事になる。
ここで相手が疲れるのを待つしかないのか……」
同じく、ビセンテ・ド・リュズ。老人と言ってもいい年齢の彼も覚醒者である以上、一般人が何人集まっても力負けすることはなかったが、逆に傷つけないよう気を使う必要があった。彼らは領民を守る私兵団である。
「しかしこれはちょっと大袈裟すぎじゃ。王家派の貴族の領地とはいえ、マーロウの影響力がここまで響くものなのかのう……」
マーロウの行いが地方民の反感を買った。それがこの結果である。
果たして、それが現在の王国の風潮であるだけなのか、否か。
一つの報せが届けられた。
システィーナ王女がウェルズ・クリストフ・マーロウ大公の孫に結婚を迫られているという内容であった。
これを受けたマハ・スフォルツァ――当主ヒューバートの母親にして相談役――は、その時飲んでいた紅茶のカップを落とした。
メイドが慌てて片付けようとする。
その最中、マハはこう言った。
「これは国政の乗っ取りではないか……!」
王家とマーロウが結びつく。
王国は一つに纏まる。
その点でのみ見れば善いことなのかもしれない。
だが、結果としてグラズヘイム王国の方針に、変化が起こることは間違いなく、それはマーロウの考えに沿った変化だ。
グラズヘイム王国が、グラハム王家ではなく、マーロウ家の意図で動く……。
それは「乗っ取り」以外の何物でもない。
「母上、落ち着いて下さい」
「……ええ。大丈夫です」
ヒューバートの呼びかけに応え、マハはしばししていつもの冷静さを取り戻した。
「これは……もしこの結婚が成れば、マーロウが勝利したということになるのでしょうか?」
ヒューバートが問う。マーロウ大公自身は『忠臣』を標榜してはいるが、貴族の立場からすればマーロウ家が王家の政敵であることは明らかだ。
だが、この問いにマハは首を横に振る。
「正しくない方法で権力を得たとして、長続きはしません。どこかに無理がでるはず。
人の上に立つには資質が問われます」
ウェルズ・クリストフ・マーロウがその器に相応しいかどうかは別の問題だ。
(しかし……結婚が成立すればマーロウ大公が国政に関与するようになることは疑いの余地がない。
穏便に済むはずがない……
もし、こんな時に歪虚の侵攻があれば……)
マハ・スフォルツァの、その予感は的中した。――彼女が予期したのとは別な形で。
「申し上げます! 王女殿下のご結婚に反対する領民が集まって反対運動を行っております!
かれらは自分達だけで王都に行って、マーロウ大公に直接訴えると言っております!」
「なんて無謀な……」
その報告を聞いたマハ・スフォルツァは思わず額を抑えた。なおこの時は執務中であったため、カップを割る事態は避けられた。
無事で済むはずがない。距離だけでも相当なものなのに加え、このリベルタース地方は王国で最も歪虚が多い地方だ。
「訴えが大きいものになるほど」「無理であればあるほど」「無理をするのが正当化される」というわけのわからない錯覚を、人は時としてする。
「……規模は?」
ヒューバートが、責任感を総動員して聞く。まだ若く未熟者だが、領主はあくまでも彼なのだ。
「確認はできていませんが……百人や二百人というものではありません!」
「すぐに『光貴なる盾』を出動させ、鎮圧にあたらせるのだ」
よろしいですね、という意志を込めてマハを見る。
「それだけでは足りないでしょう……
ハンターにも協力の要請を」
マハは付け加えた。これはもはや暴徒鎮圧依頼になる。
歪虚ではないものの、力を持った存在の助力が必要だ。
「王女様は政略結婚の道具じゃない!」
「そうだ!」
「国を動かす歯車でもない!」
「そうだ!」
「王女様は王国の宝だ!」
「そうだ!」
示し合わせたわけでもないのに、いちいち合いの手が入る。
大半は名前も知らない人間達でありながら、意見が合っているのは、目的がはっきりしていてわかりやすいからだ。その上、大勢が一体感を感じる事自体への快感も手伝っている。
かれらは今、領地の境目にある関所に殺到していた。
「集まれば集まるもんだなあ。この領地、こんなに人いたのかよ」
最前線で暴徒を抑える、スフォルツァ私兵団『光貴なる盾』の中核を担うギョーム・ペリエが言った。
彼等の前に集まった人の数といったら
――まるで津波だ。
「心配だ……お嬢が領民相手に制圧射撃しないかメチャクチャ心配だ……」
人数の少ない覚醒者は拡散して暴徒鎮圧に当たっていたので、ギョームの心配は直接本人に伝えられることはなかったのだが。
(さすがに領民に向ける銃は持ちませんわ……一体どうしたら)
『光貴なる盾』の覚醒者メンバーにしてスフォルツァの末娘、ジョセファは拳銃ではなく盾を持って暴徒を押し返していた。
「皆さん! 早まらないでください!
王都まで歩いていくなんて無茶です!」
同じくピエ・ドゥメールが呼びかけるが、暴徒は耳を貸さない。
いや、聞いてはいるのだが、勢いに流されて拒否してしまっている。
皆で渡れば怖くない。この『皆』というものは魔物であった。いや、信仰されているという意味では神か。
「駄目だわ……これでは説得力が足りない……! もっと注意を惹かないと……!」
「パニックが起これば大惨事になる。
ここで相手が疲れるのを待つしかないのか……」
同じく、ビセンテ・ド・リュズ。老人と言ってもいい年齢の彼も覚醒者である以上、一般人が何人集まっても力負けすることはなかったが、逆に傷つけないよう気を使う必要があった。彼らは領民を守る私兵団である。
「しかしこれはちょっと大袈裟すぎじゃ。王家派の貴族の領地とはいえ、マーロウの影響力がここまで響くものなのかのう……」
マーロウの行いが地方民の反感を買った。それがこの結果である。
果たして、それが現在の王国の風潮であるだけなのか、否か。
リプレイ本文
●人々の主張
すでに声は雑音となり、群集と私兵団は衝突状態にあった。石を投げるものもいる。このままでは私兵団も実力行使に出なければならなかった。
そんな中、自走するソリに乗った杢(ka6890)が民衆に近づいていく。
(おら政治とかよくわがんねばって王女さま思う気持ちはとっても素敵なことだと思うだんず。ばってこげに危ねこどはよぐねだんず)
もっと方言盛りの心情だったが、敢えて方言の風味を残したまま要約した。
誰も杢には気づかない。
杢は呼びかけるのではなく、スノーホワイトを発動した。
「キラキラだんず、ピカピカだんずよー」
白い雪の幻影が踊る。
さながら孔雀のように、見た目の美しさで訴えようと言うのである。
しかし群集は誰一人気づかない。
続いて、杢はワンダーフラッシュを使った。
空中に光の花が咲く。その美しさに人は見とれ、溜め息をつく。……今が夜であれば。
だが残念ながら今は昼だ。
「……なにしてるんだオマエ。
ここは危ないぞ。帰って遊びな」
親切な人に心配されてしまった。
その時声が響いた。
「皆と王女様の味方のハンター登場っす!
皆、落ち着いて俺達の話を聞いて欲しいっす!」
神楽(ka2032)。Gnomeの頭上に乗って登場した。
咄嗟に思いついた杢が、ゴーレムに併走しながら神楽の周りに光の花を咲かせる。
群集はさすがに無視できなかった。なぜならゴーレムは警戒に足るからである。
「何だ?! どうしてハンターが?」
「ゴーレムがなんぼのもんじゃい!」
「ハンターなら中立のはず! 行かせてくれ!」
反応はあったが、反抗的だ。
「あれを見ろ! もう一体いやがる」
別サイドからGnomeとともに現れたのはメイム(ka2290)だった。
「のーむたん、前進してCモード「wall」使用。街道上に5枚敷設」
愛称でGnomeに呼びかけ、私兵の後ろ側に回らせて街道上に壁を作るようgnomeに命じる。
「やめろコラー!」
「邪魔するなら帰れー!」
反発を招いた。何人かがGnomeに石を投げる。
「話を聞くっす! 力づくで止めたりはしないっすよ!」
神楽が呼びかけるが、民衆はすでに『できあがっていた』。まず話を聞いてもらえる状態ではない。
「皆さーん! ちゅーもーく!」
神楽と反対のサイドでは、イェジドに乗った八島 陽(ka1442)が呼びかけていたが、やはり反応はない。ソウルトーチを使うと何人かが陽を見たが、それだけだ。止まろうとはしない。
「盛り上がっちゃってるなあ」
陽は嘆息した。
「仕方がない……」
神楽の後に続くアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は、相棒のユグディラを呼ぶ。
ユグディラは頷き、リュートで落ち着いた曲を奏でた。
曲目は、『猫たちの挽歌』。
そして反対側のサイド、陽の傍らに居るルベーノ・バルバライン(ka6752)もまた、行動に移った。
(上空からなら効果的だが……我が『縮地瞬動・虚空』は今は使えん。仕方あるまい……)
ルベーノは、一心に祈った。
それは荒ぶる心を諫める慈愛の祈りだった。
猫たちの挽歌。慈愛の祈り。
この二つによって闘争心を削がれた群集は石を投げるのは止めるか、本気で投げられなれなくなった。
「やっぱり行かない方が……」
「でも王女様のためには……」
「……うん……行くよ……王都」
消極的にはなったが、行動自体は変わらない。しかもスキルの効果は一時的だ。これだけでは解決しない。
アルトを追い抜くようにして前に出たカーミン・S・フィールズ(ka1559)が、魔導拡声器で呼びかけた。
「行くなら私たちを護衛に雇っていきなさい。今なら黒の騎士・アルト・ヴァレンティーニと候補・セルゲンもいるわ」
「黒の騎士? 心強いな!」
心持ち落ち着いた群集はカーミンの言葉を聞き反応した。
「雇うぞ!」
「そして王都へ!」
「何で騎士がここにいるの?」
中には黒の騎士という制度を知らない者もいたが、その言葉のインパクトは強い。
カーミンは続ける。
「大事なのはここからよ! いい、この二人がいてもこれだけの人数は守りきれない。ほんとうに何人かは死ぬわよ」
この言葉でカーミンは、死を匂わせたが、
「かれらが守ってくれる!」
「いざ王都へ!」
都合の悪い所は聞き流された。
「そーだ王女殿を何だと思ってんだー!」
声はカーミンの後ろからだった。声の主は叫ぶや否や巨大化する。
彼がセルゲン(ka6612)である。
「うわーでかくなったあああ!?」
ちょうどカーミンに着目していた人々は驚く。
少し、驚きが伝播したようだ。だが注目を集めることはできた。
「俺、セルゲン。今回は皆を心配した子爵殿とご母堂に雇われたんだ。
王女殿を何だと思ってんだー! ……って、気持ちはすげぇ分かる。でもちっと落ち着いて、話し聴かせてくんねぇかな?」
「このでかい奴は話がわかる奴なのかもしれない……?」
セルゲンの態度に軟化する者と、
「何ででっかくなった?!」
気になる所しか見ない者、
「いや、でかいから何じゃ……」
引いた者、
「何と言われようと帰らないよ」
そして威圧感を感じ、反発する者がいた。
「静かに! 静かに!! 今から黒の騎士アルトが話をするわよ!」
カーミンは前に出て、拡声器で呼びかけた。注意喚起のつもりか、杢がスノーホワイトを使う。
「アルト・ヴァレンティーニだ。ハンターでもあるが、王国の黒の騎士であるという身分も持っている。
まず、始めにユグディラにスキルを使わせてしまったことを詫びたい」
さすがに皆聞いている。
基本的にハンターは自分達を歪虚から守ってくれる有難い存在だが、信頼に足る肩書きがあればなお善い。『黒の騎士』は、その条件に合致する肩書きだった。
アルトは続ける。
「上司でもあるエリオット・ヴァレンタインを筆頭に、ゲオルギウス騎士団長などにも直接話すこともできる。彼らに話を必ず通して見せ、必ず有耶無耶にはしないと誓おう。
だから、まず、落ち着いて欲しい。皆で一緒に、王女のためにこの国のために話し合おう」
普通、王女や王家に敬意を払う人間は、王国騎士団にも敬意は払う。エリオットや騎士団長の名を出すことは効果的だった。
「ああかれらは話し合いたいのだな」
ハンターの目的は、ようやく正しい形で理解されつつあった。
「護衛してくれるんじゃないのか?」
誤解したままの人間も、いないわけではない。そう簡単に考えは変わらない。
「なら俺達の意見を聞いて欲しい」
とにかく、かれらは主張したいのだ。
一方、反対サイドで群集が落ち着いたことを確認したルベーノは、息を吸って、魔導マイクに向かって話した。
「俺達は、お前たち一人一人の意見を聞いて回りたいのだ。お前たち一人一人も言いたいことがあろう。ここで転んで怪我をしてはつまらぬ! 王女のために集まったお前たちが軽々しく自らの身を損なうな!」
「彼らはそのために来たのか……」
今はまだ騒がしいこともあって、アルトの声が届かない所がある。そういう所でもルベーノの話を聞いてハンターの目的を理解した人が出始めた。
「話を聞いてどうしようというんだ」
「邪魔をするなら追い返してやれ!」
まだ、反発的な者も見受けられたが、
「俺達の意見を聞いてくれ!」
意見をぶつける相手を望む者も、確かにいた。
ともかく、話し合いができそうな状態に持ち込めた。
そう感じた陽は、話した。
「本日は些少ではありますが差し入れをご用意したく思います。
つきましては人数確認の為、整列の上その場にご着座いただけますか? 誘導はこちらで致します」
一気にイベント会場のような空気になった。
「何だかわからないが自分達を止めるために現れたわけではないのか?」
群集の何人かが、態度を軟化させた。
「差し入れって?」
欲望を刺激されるワードでもあった。
「誘導される必要はない! 王都に行かせろ!」
そして、やはり考えの変わらない者もいるのである。
このときメイムのGnomeはルベーノと陽の後ろに移動してきていた。
また、神楽のGnomeも反対側に陣取り、何かを始めていた……。
●メイムと神楽のゴーレムキッチン
「繰り返します! 差し入れをご用意ししておりますので、整列の上その場にご着座お願いします! 誘導はこちらで致します」
陽の呼びかけには最初、戸惑う者も多かったが、ここまでの流れで多くの者が聞く体勢に入っていたため、やがて大半が素直に座りだした。
「隣や前の人間を突き飛ばさないようゆっくり進め……大いに話し合おうではないか」
ルベーノのも誘導しながら本意を口にしている。その隣では彼の相棒のユグディラがリュートで心落ち着く音楽を奏でていた。
で、差し入れが何かと言うと。
「のーむたん、クッキングモード『戦士たちの満腹』展開♪」
メイムはGnomeに命じた。Gnomeは返事をするように駆動音を立て収容コンテナを地面に設置。
Gnomeは基本的に何でも搭載できる。キッチンさえ――そう、それが『戦士達の満腹』である。
「さ~て、今日のメニューは野菜とヴルストのスープ、そしてハムサンド♪」
メイムは寸胴のスープに下茹でした野菜と切り分けたヴルストを投入。ミルクを追加して一緒に煮たてる。
温かみのある空気と共に食欲を誘う匂いが、群集の食欲を刺激した。
「そう言えば腹減ってた」
「おらも。遠くから歩いてきたもんでさあ」
「ふふ~ん、さすがに食欲には反発できないみたいだね」
メイムの目論見通りだった。
煮ている間にパンを切り、ハム、チーズを挟み、大皿に盛る。
「誰か配膳手伝ってー、カップと紙皿は食器棚にあるから。受け取るみんなは順番に~♪」
はじめ遠巻きに眺めていた民衆も、何人かが受け取りに来て、やがて列が出来た。
中には料理好きな女がいて、手伝いを申し出てきたりもする。
「なに、久しぶりに血が騒いじまったからさ……」
昔、食堂で働いていたらしい。
「このスープを作った奴は誰だあ!」
なんかオッサンが出てきた。
「あたしだけど?」
配膳しながら応えるメイム。
「単純で粗い味付けながら材料の旨味が十二分に引き出されている……野菜もヴルストも十二分に個性を出しつつ、さらにミルクのまろやかさが全体を包んでいる……貴殿ただのハンターではないな!」
「ふっ、それを見抜くとは……そう! あたしこそは『鉄人』と呼ばれた、
鍋を使ってる」
説明しよう! メイムが使っている寸胴鍋は「鉄人の鍋」という代物で、熱伝導を高める魔法が魔力がかけられており、この鍋で煮込むと材料の旨味が十二分に引き出されると言われる。
「なぜに伝聞調なんだ?!」
「これが公式なんだってば」
「うーまーいーぞー!」
「あのネタにそれ被せちゃダメだよー」
「いつまでやってるんだ並んでるんだぞ!」
後ろの人が怒った。
「も、もう一杯もらおうか」
「お一人様お一つまででーす♪」
別に鍋のCMではない。
一方、神楽も同様に『戦士達の満腹』を活用して調理していた。
「俺は焼き立て肉のサンドイッチ、季節野菜と新鮮な魚のスープを作るっすよ!」
勢い良く音を上げて肉を焼く。食欲をそそるあの音と匂いがした。
「領主様からの差し入れの料理をごちそうするんで話を聞きながら食べてくれっす。あ、材料をくれたり調理を手伝ってくれる人と彼女になってくれる人は大歓迎っすよ!」
領主云々は神楽の出任せである。もっとも、後で代金を請求しても問題ないことであるが。
「あら可愛い」
「手伝ってあげよっか?」
「なんなら彼女にしてくれてもいいのよ?」
キッチンの内側に、三人ほどの女性が集まって、神楽に詰め寄って……もとい友好的に接していた。
皆、御年50は上回っているだろうか。いずれもパワフルなマダムである。
(この年代って……どうしてこんなにフレンドリーなんっすかね……!)
「差し入れはこちらだんず。かっちゃのゴーレムでもひっぺーってるだんず。たげめじゃしだんず」
神楽のほうでは杢がスノーホワイトと着ぐるみで目印になっている。あえて翻訳を投げた(注:反対側のゴーレムでも配っています。とても美味しいですよ、程度の意味か)、親構な数の人々が眺めていた。魔導カメラでもあれば記念撮影などしていたところだろう。
この食欲に訴える作戦は、群集に『別にデモは死活問題ではないし飯くらい食っても良かろう』という気にさせた。『タダ飯だとう! タダ飯だとーーーう!』ぐらいの勢いで食いついた者もいた。ごはんをくれる人は大事です。
なんにせよ食っている間は大人しい。
とはいえ、『自分は遊びに来たわけではない!』と頑として並ばない者も三割ほどいる。
「何が目的だ!?」
陽は詰め寄る男性に、穏やかに応える。
「皆さんの主張を否定するわけではないです。ただ、そのやり方はちょっと待って欲しい」
「何をう……」
「とにかくオレ達の話を聞いて下さい」
「結論を急がないで。私たちが貴方たちの話を聞くし、届ける。行く行かぬはそれからでもいいでしょ?」
別の場所ではカーミンが説明をしている。
「届ける? なんでさ」
「問題を理解しなさい。王都まで歩いていくのが危険だって事くらいわかるでしょ?
貴方たちの大切な人を悲しませたいの?」
ピンクのツインテールを揺らしたり、人差し指を立て、時々片目をつぶったりする。
可愛く振舞うのは彼女なりの話術である。
統合して考えられるものならこう思っただろう。
「自分達の意見を届けることが本意。しかし、できれば危険じゃない方がいい。
王都に歩いていこうとしているのは、それしか選択肢がないからだ。
これはリスクが高い。他にもあるのであれば……」
「かれらの話を聞こう!」
誰かが言い出した。
●ハンター側の主張
群集は食べ物を貰ったことと、理に叶った説明を受けて、多くがハンター達の話を聞く気になっていた。
誰かがハンターに話すよう促し、それを遮る者はいなかった。
まず、アルトが話した。
「今のように、直接的な訴えを起こせばどこかで誰かが怪我をしてしまうかもしれない。それを、あの優しいシスティーナ王女が喜ぶだろうか?
慕われていることには喜ぶかもしれないが……それ以上に、そのことが見えなくなるぐらいに自身のせいで傷つく人が出る事に心を痛めるような方ではないだろうか?」
「確かにそうだ……」
「俺達は王女様の気持ちを考えていなかった」
「行動すればいいわけじゃないのか……」
この話は、多くに反省を促した。
アルトは続ける。
「そこで、署名を提案したい。
今回この場に来れてはいないが、貴方達と一緒の思いの人は、まだ、たくさんいるのではないだろうか?
貴方達の思いを纏めて頂き、それに賛成する人たちの名前を集めてもらいたい。
もちろん第1弾としてこの場にいる人の分は先行して持っていきたいが……」
「俺達の意見も聞いてもらえるのか」
「無駄には、ならない」
「歩いて王都まで行くよりいいな……」
アルトの提案は現実的な代案となった。
セルゲンが、アルトに補足するように話す。
「このアルトは本物の黒の騎士だ。皆の意見はきっと然るべき場所へ届けるから。
それに何日も田畑放って平気か? 子供に食わすモンねぇのは辛いぜ?」
「やっぱ仕事ほっぽって王都に行くのは駄目ですよねー」
粗忽な誰かに現実を思い出させた。
続いて、ルベーノが話す。
「仮にお前たちが移動するとしよう……食事はどうする? 準備できずに誰かから奪ってしまえば暴徒と変わらん。ここの領主は王女派だ……王女の民が王女の民を徒に傷つけたとあっては王家の面目が大きく傷つくことになる。
空腹で歪虚に襲われたら逃げるものも逃げられん。全員で行くのは悪手に過ぎる。護衛を雇って代表を送ってはどうだ。同盟の帆のようにみんなの思いを書いて彼らに持たせ王女に届けるのだ。護衛も雇わずお前らが歪虚に喰われることになれば、お前たちの王女が悲しむぞ?」
「代表か……」
「所詮、群集というのは一人では何もできぬ」
「それならあなた方に!」
代表というならハンター達に、という意見が出た。意志そのものは受け入れられたようだ。
キッチンから一時離れた神楽が話した。
「皆の足じゃ王都まで時間がかかるんで下手したら王都まで行く間に王女様が結婚しちゃうかもっす。だから転移門で一気に移動できる俺達に任せろっす! つーわけで落ち着いてご飯を食べながら皆の主張を俺達に聞かせてっす。俺達が責任もって伝えるっすよ!」
「つまりそういうことか」
「効率的だ……」
「実にわかりやすい」
ここから、群集は自分達の主張を話していく流れになる。
●民衆の主張
「お話聞いてほしいだんず? せばだばこげにたげー数で話しかけられてもおらならまっだくわがんねだんず。一人には一人で話かけねばならねだんず」
もちろん杢の言葉である。翻訳は(以下略)
驚くべきことにみんな杢の言うように座って、一人一人発言することになった。
発言を希望する者は自分の番が来るまで座って聞いている。
そして、人々は語った……。
「王女様は俺達みんなの宝なんだ!
政治のことを考えなければならない立場なのもわかる……。
けど俺たちは一人の人間として王女様に幸せであって欲しいんだ。
どうか国の為に我慢をしないで欲しい。
それが人の心ってものだろう!」
「マーロウ大公という人物な……どうも好きになれんのじゃよ。
歪虚を滅ぼすために重税を民に強いるような人物じゃないかね、あれは」
「国の大事に民の気持ちを無視する事自体が許せん!」
「相手ってまだガキなんだろう?
まだオレの方が王女様を幸せに出来る自信あるね!
……例えばの話だよ?」
「結婚って互いが好き合ってするものじゃないですか。
王女様だからってそれが許されないなんて可哀想だと思うんですよ」
「詰まるところ、みんな王女様が好きなんだよ」
一人一人の声にハンター達は熱心に耳を傾ける。
セルゲンはその一つ一つを丁寧にメモしていった。
(ホント、どっちが子だかわかりゃしない。そろそろ王女を信じてあげてもいいんじゃないかしら?)
カーミンは内心で思う。趣旨に反するので声には出さなかった。
皆、王女を自分の子のように思っている。だが王女は王女で、王国の民を我が子のように慈しんでいる。そう感じた。
想いの、すれ違いだった。
陽は蓄音石に皆の声(シュプレヒコール)を録音して添えようとも思ったが、蓄音石に記録できるのは1分程度。何人分も蓄音は出来ない。
意見を述べた民衆の中から独断で選ぶことを断わった上で、もっとも共感を集めたと思われる、「王女様は国の宝だ」と言った男性の言葉を蓄音することにした。
●王女様の結婚に反対する人は署名を
陽の「話がまとまるなら私兵団の偉い人に立会人として文書に署名を依頼、できれば領主に近しい人」という考えに従い、領主の妹であるジョセファが立ち会うことになった。
「わわわわかりましたわ。領主の妹ジョセファ・スフォルツァの名において、立会人になってさしあげてもよろしくてよ……?」
「お嬢、力抜いて」
神楽である。
こうして、人々の意見とともに、署名が集められた。
そして……
意思を託すという選択肢を得た群集は満足して、王都まで歩いていくという無謀を止めた。
私兵団の誘導により地域毎に集まり、護衛されて帰ることになる。
……………………
これは、後でわかったことだが。
帰った先が「宿屋」であるなど、明らかに領外から来たと思われる人間が、何人か混じっていた。
行商人などの、移動することが当たり前の立場であったが……。
何人かは、意図的に群集を扇動した何者かがいると考えていた。
カーミンは群集に通信手段があると踏み、通信を傍受しようと試みたが、かれらは連絡を取り合っていなかった。
あるいは隠していたのかもしれないが。
デモ中に連絡を取り合う必要は必ずしもない。
神楽はファミリアズアイでカラスを飛ばし精神操作系スキルに極端な反応を示したり抵抗した者がいないか見ていたが、抵抗する理由もないし、そう簡単にできるものではない。
一度群衆が動きさえすれば成功なのだから、あとはどうなってもよいのである。例えば、現場にいなくとも。
セルゲンは主導者が誰なのか何人かに尋ねたが、はっきりしなかった。
誰が言い出したのか、誰が始めたのか、始まってしまえばわからない。そんな集団だった。
そもそも一カ所で発生したとも限らないのである。
疑わしい点はあるが、確信も持てない。
●見送り
杢は帰って行く群衆に、ワンダーフラッシュの残り回数を振り絞って見送った。騒いだ挙げ句落ち着いて少し恥ずかしくなった人々が何人か、優しい表情を向けてきた。
「こげにたげー数の人に心配してもらえるなんで女さまは凄いだんずね。
……せば『王女さま』っでなんだんず?」
「いまごろ?!」
メイムの渾身の一言だった。
●今回のお嬢と猿
「気を付けるっすよ、お嬢。これが仕組まれてたなら次があるかもっす。んで、扇動された領民がマーロウ派の貴族の領地への襲撃事件なんて起こされたらお嬢は犯罪者になった領民に銃を向ける事になるっすよ?」
神楽と、『光貴なる盾』のジョセファである。
「それにそんな事が起きたら最悪王家派とマーロウ派で内戦が勃発、よくても当主様とマハさんは責任を取らされるっす」
「何か良い知恵はありませんの、猿?」
他人に頼る、ということを最近覚えたらしい。
「襲撃事件は王国のどこかで発生したらアウトなんで当主様かマハさんに伝えて貴族連中に警告をして貰うといいっす。ただ、どこか一つが成功すれば相手の勝ちだから正直防ぐのは難しいんで、お嬢も人間に銃を向ける覚悟をしておいた方がいいかもっすよ」
「貴族連中って貴方……まあ良いですわ。
でもあなたの言ってることが本当に起きたら、王国はどうなるのかしら。
わたくしの火薬しか詰まってない頭でも、ろくなことにならないということはわかりますわ」
「カッコイイたとえっすねお嬢」
ジョセファはしばし考えてから、口を開いた。
「今回ばかりは……綺麗な言葉で締められそうにございませんわね?
きっと、これからが大変ですわ、王国(わたくしたち)……」
すでに声は雑音となり、群集と私兵団は衝突状態にあった。石を投げるものもいる。このままでは私兵団も実力行使に出なければならなかった。
そんな中、自走するソリに乗った杢(ka6890)が民衆に近づいていく。
(おら政治とかよくわがんねばって王女さま思う気持ちはとっても素敵なことだと思うだんず。ばってこげに危ねこどはよぐねだんず)
もっと方言盛りの心情だったが、敢えて方言の風味を残したまま要約した。
誰も杢には気づかない。
杢は呼びかけるのではなく、スノーホワイトを発動した。
「キラキラだんず、ピカピカだんずよー」
白い雪の幻影が踊る。
さながら孔雀のように、見た目の美しさで訴えようと言うのである。
しかし群集は誰一人気づかない。
続いて、杢はワンダーフラッシュを使った。
空中に光の花が咲く。その美しさに人は見とれ、溜め息をつく。……今が夜であれば。
だが残念ながら今は昼だ。
「……なにしてるんだオマエ。
ここは危ないぞ。帰って遊びな」
親切な人に心配されてしまった。
その時声が響いた。
「皆と王女様の味方のハンター登場っす!
皆、落ち着いて俺達の話を聞いて欲しいっす!」
神楽(ka2032)。Gnomeの頭上に乗って登場した。
咄嗟に思いついた杢が、ゴーレムに併走しながら神楽の周りに光の花を咲かせる。
群集はさすがに無視できなかった。なぜならゴーレムは警戒に足るからである。
「何だ?! どうしてハンターが?」
「ゴーレムがなんぼのもんじゃい!」
「ハンターなら中立のはず! 行かせてくれ!」
反応はあったが、反抗的だ。
「あれを見ろ! もう一体いやがる」
別サイドからGnomeとともに現れたのはメイム(ka2290)だった。
「のーむたん、前進してCモード「wall」使用。街道上に5枚敷設」
愛称でGnomeに呼びかけ、私兵の後ろ側に回らせて街道上に壁を作るようgnomeに命じる。
「やめろコラー!」
「邪魔するなら帰れー!」
反発を招いた。何人かがGnomeに石を投げる。
「話を聞くっす! 力づくで止めたりはしないっすよ!」
神楽が呼びかけるが、民衆はすでに『できあがっていた』。まず話を聞いてもらえる状態ではない。
「皆さーん! ちゅーもーく!」
神楽と反対のサイドでは、イェジドに乗った八島 陽(ka1442)が呼びかけていたが、やはり反応はない。ソウルトーチを使うと何人かが陽を見たが、それだけだ。止まろうとはしない。
「盛り上がっちゃってるなあ」
陽は嘆息した。
「仕方がない……」
神楽の後に続くアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は、相棒のユグディラを呼ぶ。
ユグディラは頷き、リュートで落ち着いた曲を奏でた。
曲目は、『猫たちの挽歌』。
そして反対側のサイド、陽の傍らに居るルベーノ・バルバライン(ka6752)もまた、行動に移った。
(上空からなら効果的だが……我が『縮地瞬動・虚空』は今は使えん。仕方あるまい……)
ルベーノは、一心に祈った。
それは荒ぶる心を諫める慈愛の祈りだった。
猫たちの挽歌。慈愛の祈り。
この二つによって闘争心を削がれた群集は石を投げるのは止めるか、本気で投げられなれなくなった。
「やっぱり行かない方が……」
「でも王女様のためには……」
「……うん……行くよ……王都」
消極的にはなったが、行動自体は変わらない。しかもスキルの効果は一時的だ。これだけでは解決しない。
アルトを追い抜くようにして前に出たカーミン・S・フィールズ(ka1559)が、魔導拡声器で呼びかけた。
「行くなら私たちを護衛に雇っていきなさい。今なら黒の騎士・アルト・ヴァレンティーニと候補・セルゲンもいるわ」
「黒の騎士? 心強いな!」
心持ち落ち着いた群集はカーミンの言葉を聞き反応した。
「雇うぞ!」
「そして王都へ!」
「何で騎士がここにいるの?」
中には黒の騎士という制度を知らない者もいたが、その言葉のインパクトは強い。
カーミンは続ける。
「大事なのはここからよ! いい、この二人がいてもこれだけの人数は守りきれない。ほんとうに何人かは死ぬわよ」
この言葉でカーミンは、死を匂わせたが、
「かれらが守ってくれる!」
「いざ王都へ!」
都合の悪い所は聞き流された。
「そーだ王女殿を何だと思ってんだー!」
声はカーミンの後ろからだった。声の主は叫ぶや否や巨大化する。
彼がセルゲン(ka6612)である。
「うわーでかくなったあああ!?」
ちょうどカーミンに着目していた人々は驚く。
少し、驚きが伝播したようだ。だが注目を集めることはできた。
「俺、セルゲン。今回は皆を心配した子爵殿とご母堂に雇われたんだ。
王女殿を何だと思ってんだー! ……って、気持ちはすげぇ分かる。でもちっと落ち着いて、話し聴かせてくんねぇかな?」
「このでかい奴は話がわかる奴なのかもしれない……?」
セルゲンの態度に軟化する者と、
「何ででっかくなった?!」
気になる所しか見ない者、
「いや、でかいから何じゃ……」
引いた者、
「何と言われようと帰らないよ」
そして威圧感を感じ、反発する者がいた。
「静かに! 静かに!! 今から黒の騎士アルトが話をするわよ!」
カーミンは前に出て、拡声器で呼びかけた。注意喚起のつもりか、杢がスノーホワイトを使う。
「アルト・ヴァレンティーニだ。ハンターでもあるが、王国の黒の騎士であるという身分も持っている。
まず、始めにユグディラにスキルを使わせてしまったことを詫びたい」
さすがに皆聞いている。
基本的にハンターは自分達を歪虚から守ってくれる有難い存在だが、信頼に足る肩書きがあればなお善い。『黒の騎士』は、その条件に合致する肩書きだった。
アルトは続ける。
「上司でもあるエリオット・ヴァレンタインを筆頭に、ゲオルギウス騎士団長などにも直接話すこともできる。彼らに話を必ず通して見せ、必ず有耶無耶にはしないと誓おう。
だから、まず、落ち着いて欲しい。皆で一緒に、王女のためにこの国のために話し合おう」
普通、王女や王家に敬意を払う人間は、王国騎士団にも敬意は払う。エリオットや騎士団長の名を出すことは効果的だった。
「ああかれらは話し合いたいのだな」
ハンターの目的は、ようやく正しい形で理解されつつあった。
「護衛してくれるんじゃないのか?」
誤解したままの人間も、いないわけではない。そう簡単に考えは変わらない。
「なら俺達の意見を聞いて欲しい」
とにかく、かれらは主張したいのだ。
一方、反対サイドで群集が落ち着いたことを確認したルベーノは、息を吸って、魔導マイクに向かって話した。
「俺達は、お前たち一人一人の意見を聞いて回りたいのだ。お前たち一人一人も言いたいことがあろう。ここで転んで怪我をしてはつまらぬ! 王女のために集まったお前たちが軽々しく自らの身を損なうな!」
「彼らはそのために来たのか……」
今はまだ騒がしいこともあって、アルトの声が届かない所がある。そういう所でもルベーノの話を聞いてハンターの目的を理解した人が出始めた。
「話を聞いてどうしようというんだ」
「邪魔をするなら追い返してやれ!」
まだ、反発的な者も見受けられたが、
「俺達の意見を聞いてくれ!」
意見をぶつける相手を望む者も、確かにいた。
ともかく、話し合いができそうな状態に持ち込めた。
そう感じた陽は、話した。
「本日は些少ではありますが差し入れをご用意したく思います。
つきましては人数確認の為、整列の上その場にご着座いただけますか? 誘導はこちらで致します」
一気にイベント会場のような空気になった。
「何だかわからないが自分達を止めるために現れたわけではないのか?」
群集の何人かが、態度を軟化させた。
「差し入れって?」
欲望を刺激されるワードでもあった。
「誘導される必要はない! 王都に行かせろ!」
そして、やはり考えの変わらない者もいるのである。
このときメイムのGnomeはルベーノと陽の後ろに移動してきていた。
また、神楽のGnomeも反対側に陣取り、何かを始めていた……。
●メイムと神楽のゴーレムキッチン
「繰り返します! 差し入れをご用意ししておりますので、整列の上その場にご着座お願いします! 誘導はこちらで致します」
陽の呼びかけには最初、戸惑う者も多かったが、ここまでの流れで多くの者が聞く体勢に入っていたため、やがて大半が素直に座りだした。
「隣や前の人間を突き飛ばさないようゆっくり進め……大いに話し合おうではないか」
ルベーノのも誘導しながら本意を口にしている。その隣では彼の相棒のユグディラがリュートで心落ち着く音楽を奏でていた。
で、差し入れが何かと言うと。
「のーむたん、クッキングモード『戦士たちの満腹』展開♪」
メイムはGnomeに命じた。Gnomeは返事をするように駆動音を立て収容コンテナを地面に設置。
Gnomeは基本的に何でも搭載できる。キッチンさえ――そう、それが『戦士達の満腹』である。
「さ~て、今日のメニューは野菜とヴルストのスープ、そしてハムサンド♪」
メイムは寸胴のスープに下茹でした野菜と切り分けたヴルストを投入。ミルクを追加して一緒に煮たてる。
温かみのある空気と共に食欲を誘う匂いが、群集の食欲を刺激した。
「そう言えば腹減ってた」
「おらも。遠くから歩いてきたもんでさあ」
「ふふ~ん、さすがに食欲には反発できないみたいだね」
メイムの目論見通りだった。
煮ている間にパンを切り、ハム、チーズを挟み、大皿に盛る。
「誰か配膳手伝ってー、カップと紙皿は食器棚にあるから。受け取るみんなは順番に~♪」
はじめ遠巻きに眺めていた民衆も、何人かが受け取りに来て、やがて列が出来た。
中には料理好きな女がいて、手伝いを申し出てきたりもする。
「なに、久しぶりに血が騒いじまったからさ……」
昔、食堂で働いていたらしい。
「このスープを作った奴は誰だあ!」
なんかオッサンが出てきた。
「あたしだけど?」
配膳しながら応えるメイム。
「単純で粗い味付けながら材料の旨味が十二分に引き出されている……野菜もヴルストも十二分に個性を出しつつ、さらにミルクのまろやかさが全体を包んでいる……貴殿ただのハンターではないな!」
「ふっ、それを見抜くとは……そう! あたしこそは『鉄人』と呼ばれた、
鍋を使ってる」
説明しよう! メイムが使っている寸胴鍋は「鉄人の鍋」という代物で、熱伝導を高める魔法が魔力がかけられており、この鍋で煮込むと材料の旨味が十二分に引き出されると言われる。
「なぜに伝聞調なんだ?!」
「これが公式なんだってば」
「うーまーいーぞー!」
「あのネタにそれ被せちゃダメだよー」
「いつまでやってるんだ並んでるんだぞ!」
後ろの人が怒った。
「も、もう一杯もらおうか」
「お一人様お一つまででーす♪」
別に鍋のCMではない。
一方、神楽も同様に『戦士達の満腹』を活用して調理していた。
「俺は焼き立て肉のサンドイッチ、季節野菜と新鮮な魚のスープを作るっすよ!」
勢い良く音を上げて肉を焼く。食欲をそそるあの音と匂いがした。
「領主様からの差し入れの料理をごちそうするんで話を聞きながら食べてくれっす。あ、材料をくれたり調理を手伝ってくれる人と彼女になってくれる人は大歓迎っすよ!」
領主云々は神楽の出任せである。もっとも、後で代金を請求しても問題ないことであるが。
「あら可愛い」
「手伝ってあげよっか?」
「なんなら彼女にしてくれてもいいのよ?」
キッチンの内側に、三人ほどの女性が集まって、神楽に詰め寄って……もとい友好的に接していた。
皆、御年50は上回っているだろうか。いずれもパワフルなマダムである。
(この年代って……どうしてこんなにフレンドリーなんっすかね……!)
「差し入れはこちらだんず。かっちゃのゴーレムでもひっぺーってるだんず。たげめじゃしだんず」
神楽のほうでは杢がスノーホワイトと着ぐるみで目印になっている。あえて翻訳を投げた(注:反対側のゴーレムでも配っています。とても美味しいですよ、程度の意味か)、親構な数の人々が眺めていた。魔導カメラでもあれば記念撮影などしていたところだろう。
この食欲に訴える作戦は、群集に『別にデモは死活問題ではないし飯くらい食っても良かろう』という気にさせた。『タダ飯だとう! タダ飯だとーーーう!』ぐらいの勢いで食いついた者もいた。ごはんをくれる人は大事です。
なんにせよ食っている間は大人しい。
とはいえ、『自分は遊びに来たわけではない!』と頑として並ばない者も三割ほどいる。
「何が目的だ!?」
陽は詰め寄る男性に、穏やかに応える。
「皆さんの主張を否定するわけではないです。ただ、そのやり方はちょっと待って欲しい」
「何をう……」
「とにかくオレ達の話を聞いて下さい」
「結論を急がないで。私たちが貴方たちの話を聞くし、届ける。行く行かぬはそれからでもいいでしょ?」
別の場所ではカーミンが説明をしている。
「届ける? なんでさ」
「問題を理解しなさい。王都まで歩いていくのが危険だって事くらいわかるでしょ?
貴方たちの大切な人を悲しませたいの?」
ピンクのツインテールを揺らしたり、人差し指を立て、時々片目をつぶったりする。
可愛く振舞うのは彼女なりの話術である。
統合して考えられるものならこう思っただろう。
「自分達の意見を届けることが本意。しかし、できれば危険じゃない方がいい。
王都に歩いていこうとしているのは、それしか選択肢がないからだ。
これはリスクが高い。他にもあるのであれば……」
「かれらの話を聞こう!」
誰かが言い出した。
●ハンター側の主張
群集は食べ物を貰ったことと、理に叶った説明を受けて、多くがハンター達の話を聞く気になっていた。
誰かがハンターに話すよう促し、それを遮る者はいなかった。
まず、アルトが話した。
「今のように、直接的な訴えを起こせばどこかで誰かが怪我をしてしまうかもしれない。それを、あの優しいシスティーナ王女が喜ぶだろうか?
慕われていることには喜ぶかもしれないが……それ以上に、そのことが見えなくなるぐらいに自身のせいで傷つく人が出る事に心を痛めるような方ではないだろうか?」
「確かにそうだ……」
「俺達は王女様の気持ちを考えていなかった」
「行動すればいいわけじゃないのか……」
この話は、多くに反省を促した。
アルトは続ける。
「そこで、署名を提案したい。
今回この場に来れてはいないが、貴方達と一緒の思いの人は、まだ、たくさんいるのではないだろうか?
貴方達の思いを纏めて頂き、それに賛成する人たちの名前を集めてもらいたい。
もちろん第1弾としてこの場にいる人の分は先行して持っていきたいが……」
「俺達の意見も聞いてもらえるのか」
「無駄には、ならない」
「歩いて王都まで行くよりいいな……」
アルトの提案は現実的な代案となった。
セルゲンが、アルトに補足するように話す。
「このアルトは本物の黒の騎士だ。皆の意見はきっと然るべき場所へ届けるから。
それに何日も田畑放って平気か? 子供に食わすモンねぇのは辛いぜ?」
「やっぱ仕事ほっぽって王都に行くのは駄目ですよねー」
粗忽な誰かに現実を思い出させた。
続いて、ルベーノが話す。
「仮にお前たちが移動するとしよう……食事はどうする? 準備できずに誰かから奪ってしまえば暴徒と変わらん。ここの領主は王女派だ……王女の民が王女の民を徒に傷つけたとあっては王家の面目が大きく傷つくことになる。
空腹で歪虚に襲われたら逃げるものも逃げられん。全員で行くのは悪手に過ぎる。護衛を雇って代表を送ってはどうだ。同盟の帆のようにみんなの思いを書いて彼らに持たせ王女に届けるのだ。護衛も雇わずお前らが歪虚に喰われることになれば、お前たちの王女が悲しむぞ?」
「代表か……」
「所詮、群集というのは一人では何もできぬ」
「それならあなた方に!」
代表というならハンター達に、という意見が出た。意志そのものは受け入れられたようだ。
キッチンから一時離れた神楽が話した。
「皆の足じゃ王都まで時間がかかるんで下手したら王都まで行く間に王女様が結婚しちゃうかもっす。だから転移門で一気に移動できる俺達に任せろっす! つーわけで落ち着いてご飯を食べながら皆の主張を俺達に聞かせてっす。俺達が責任もって伝えるっすよ!」
「つまりそういうことか」
「効率的だ……」
「実にわかりやすい」
ここから、群集は自分達の主張を話していく流れになる。
●民衆の主張
「お話聞いてほしいだんず? せばだばこげにたげー数で話しかけられてもおらならまっだくわがんねだんず。一人には一人で話かけねばならねだんず」
もちろん杢の言葉である。翻訳は(以下略)
驚くべきことにみんな杢の言うように座って、一人一人発言することになった。
発言を希望する者は自分の番が来るまで座って聞いている。
そして、人々は語った……。
「王女様は俺達みんなの宝なんだ!
政治のことを考えなければならない立場なのもわかる……。
けど俺たちは一人の人間として王女様に幸せであって欲しいんだ。
どうか国の為に我慢をしないで欲しい。
それが人の心ってものだろう!」
「マーロウ大公という人物な……どうも好きになれんのじゃよ。
歪虚を滅ぼすために重税を民に強いるような人物じゃないかね、あれは」
「国の大事に民の気持ちを無視する事自体が許せん!」
「相手ってまだガキなんだろう?
まだオレの方が王女様を幸せに出来る自信あるね!
……例えばの話だよ?」
「結婚って互いが好き合ってするものじゃないですか。
王女様だからってそれが許されないなんて可哀想だと思うんですよ」
「詰まるところ、みんな王女様が好きなんだよ」
一人一人の声にハンター達は熱心に耳を傾ける。
セルゲンはその一つ一つを丁寧にメモしていった。
(ホント、どっちが子だかわかりゃしない。そろそろ王女を信じてあげてもいいんじゃないかしら?)
カーミンは内心で思う。趣旨に反するので声には出さなかった。
皆、王女を自分の子のように思っている。だが王女は王女で、王国の民を我が子のように慈しんでいる。そう感じた。
想いの、すれ違いだった。
陽は蓄音石に皆の声(シュプレヒコール)を録音して添えようとも思ったが、蓄音石に記録できるのは1分程度。何人分も蓄音は出来ない。
意見を述べた民衆の中から独断で選ぶことを断わった上で、もっとも共感を集めたと思われる、「王女様は国の宝だ」と言った男性の言葉を蓄音することにした。
●王女様の結婚に反対する人は署名を
陽の「話がまとまるなら私兵団の偉い人に立会人として文書に署名を依頼、できれば領主に近しい人」という考えに従い、領主の妹であるジョセファが立ち会うことになった。
「わわわわかりましたわ。領主の妹ジョセファ・スフォルツァの名において、立会人になってさしあげてもよろしくてよ……?」
「お嬢、力抜いて」
神楽である。
こうして、人々の意見とともに、署名が集められた。
そして……
意思を託すという選択肢を得た群集は満足して、王都まで歩いていくという無謀を止めた。
私兵団の誘導により地域毎に集まり、護衛されて帰ることになる。
……………………
これは、後でわかったことだが。
帰った先が「宿屋」であるなど、明らかに領外から来たと思われる人間が、何人か混じっていた。
行商人などの、移動することが当たり前の立場であったが……。
何人かは、意図的に群集を扇動した何者かがいると考えていた。
カーミンは群集に通信手段があると踏み、通信を傍受しようと試みたが、かれらは連絡を取り合っていなかった。
あるいは隠していたのかもしれないが。
デモ中に連絡を取り合う必要は必ずしもない。
神楽はファミリアズアイでカラスを飛ばし精神操作系スキルに極端な反応を示したり抵抗した者がいないか見ていたが、抵抗する理由もないし、そう簡単にできるものではない。
一度群衆が動きさえすれば成功なのだから、あとはどうなってもよいのである。例えば、現場にいなくとも。
セルゲンは主導者が誰なのか何人かに尋ねたが、はっきりしなかった。
誰が言い出したのか、誰が始めたのか、始まってしまえばわからない。そんな集団だった。
そもそも一カ所で発生したとも限らないのである。
疑わしい点はあるが、確信も持てない。
●見送り
杢は帰って行く群衆に、ワンダーフラッシュの残り回数を振り絞って見送った。騒いだ挙げ句落ち着いて少し恥ずかしくなった人々が何人か、優しい表情を向けてきた。
「こげにたげー数の人に心配してもらえるなんで女さまは凄いだんずね。
……せば『王女さま』っでなんだんず?」
「いまごろ?!」
メイムの渾身の一言だった。
●今回のお嬢と猿
「気を付けるっすよ、お嬢。これが仕組まれてたなら次があるかもっす。んで、扇動された領民がマーロウ派の貴族の領地への襲撃事件なんて起こされたらお嬢は犯罪者になった領民に銃を向ける事になるっすよ?」
神楽と、『光貴なる盾』のジョセファである。
「それにそんな事が起きたら最悪王家派とマーロウ派で内戦が勃発、よくても当主様とマハさんは責任を取らされるっす」
「何か良い知恵はありませんの、猿?」
他人に頼る、ということを最近覚えたらしい。
「襲撃事件は王国のどこかで発生したらアウトなんで当主様かマハさんに伝えて貴族連中に警告をして貰うといいっす。ただ、どこか一つが成功すれば相手の勝ちだから正直防ぐのは難しいんで、お嬢も人間に銃を向ける覚悟をしておいた方がいいかもっすよ」
「貴族連中って貴方……まあ良いですわ。
でもあなたの言ってることが本当に起きたら、王国はどうなるのかしら。
わたくしの火薬しか詰まってない頭でも、ろくなことにならないということはわかりますわ」
「カッコイイたとえっすねお嬢」
ジョセファはしばし考えてから、口を開いた。
「今回ばかりは……綺麗な言葉で締められそうにございませんわね?
きっと、これからが大変ですわ、王国(わたくしたち)……」
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暴徒鎮圧相談卓 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2018/04/06 00:14:05 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/05 23:49:48 |