• 無し

クリスとマリー 伸ばした手に君を触れ

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,800
参加人数
現在10人 / 6~10人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2018/04/23 22:00
リプレイ完成予定
2018/05/02 22:00

オープニング

 その日、侯爵家の三男ソードは煩悶して眠れぬ夜を、宿舎の自室ではなく広域騎馬警官隊の詰所のソファの上で過ごしていた。……なぜならこの日は、彼が憎からず思っていたオードラン家伯爵令嬢クリスティーヌと、兄である侯爵家次男シモンとの結婚式が行われることになっていたからだ。
 全てはオードラン家を実質的に乗っ取るための謀略に塗れた結婚だった。当初は入り婿の候補にはソードの名が挙がっていたが、実質、侯爵家の跡取りレースからの脱落を意味するその役割を彼はどうしても受け入れられなかった。結果、計画はシモンを入り婿とすることで継続し……クリスの父であるオードラン伯爵が家を守る為か「当家にクリスなる娘は存在しない」と表明して計画が流れた後も、シモンは「計画の成否に関わらず、このままクリスを侯爵家に迎えたい」とこの結婚を強く望んだ。
 シモンもクリスを愛しているのか──その話を聞いた時、ソードは頭を殴られた様な衝撃を受けた。自分はちっぽけなプライドの為に自身の想いを踏みつけにしたというのに、兄は『伯爵令嬢でなくなった』娘の為にそこまでするのか、と……
 一度、火がつくと、ソードの想いは日に日に強くなっていき、その心は魂に火を掛けられたかの様に苦しみ悶え、千々に乱れた。しかし、今更、全てを引っ繰り返そうと考えるには彼のプライドは高すぎた。
 そして、当日、未明──
「……ソード隊長」
 ソファの上で毛布を引っ被って寝るソードの肩を、部下であるヤングが揺らした。
「……どうも様子が変です。何者かに詰所を取り囲まれています」
 ソードは眠気まなこのままむくりと身を起こした。そして、暫し時間を空費した後……ようやく酔いが醒めたのか、目を見開いて、部下らに武装と警戒待機を命じた。
 遅かった。直後、大勢の武装した兵隊たちが詰所に雪崩れ込んで来て……広域騎馬警官詰所は瞬く間に制圧された。
「その部隊証──カール兄の手のものか」
 剣を突きつけられながら、ソードは全てを理解した。──懸命に父ベルムドに仕えて来た長兄。にも関わらず、四男ルーサーを後継に指名した現当主。……現在、侯爵軍の主力は旧スフィルト子爵領で起きた反乱討伐に出払っている。少数の兵力でも要所を押さえることは可能だ。
「クーデターか。カール兄も思い切った事を……」
「ソード様。貴方を拘束させていただきます。そう長い間のことにはなりません。暫しご辛抱いただけますよう」
 貴人に対する配慮として縄も打たず、自身について来るようソードに促す部隊長。
 直後、半ば開け放たれたままになっていた両開きの扉を蹴破って、全身鎧を纏った四騎の騎兵がその場に乱入する。建物の外を守っていた兵たちは誰何の声を上げる間もあればこそ、あっという間に蹴散らされ、その突破を許してしまった。
「なんだ、貴様らは……!?」
「この無礼者め。そのお方は侯爵家の次代を担うお方ぞ」
 叫び、抜剣しようとした隊長らを、騎兵たちは長大な槍の穂先で串刺しにした。ごぽっ、と口から血を溢れさせた隊長に、リーダーらしき初老の騎兵がふん、と鼻を鳴らして告げる。
「……その声、爺、か?」
「親父!?」
 驚愕するソードとヤング。その騎兵は長らくソードの母と彼に仕えてきた宿老──引退した先代の騎馬警官隊長、そして、ヤングの父であるオルダーと元部下たちだった。
「お話は後程。今はここを脱出しましょう」
 騎士たちはそう言うとソードとヤングを馬上に引き上げ、その場を脱出した。
 夜の帳に包まれたニューオーサンに、彼らを負う呼び子が幾重にも吹き鳴らされた。


「官庁街、各警察本部、制圧を完了しました。広域騎馬警官隊においてはソード様を取り逃がしましたが、機能は掌握。計画の進行に問題はありません」
 当日、払暁。ニューオーサン、クーデター部隊司令部──
 今回のクーデターを首謀した侯爵家長男カールは、厳つい表情を崩さぬまま、各地から上がって来る進捗報告を小動もせずに聞いていた。
 侯爵領の実質的な首府であるニューオーサンの制圧は、ほぼ計画通りに進んでいた。本来ならそれに対抗できたであろう治安部隊は、その全てが不意を打たれ、碌に抵抗らしい抵抗も出来ぬまま武装解除されていった。事前に兆候を察知すべき秘密警察は、彼らに何の情報も上げていなかった。それもそのはず、なぜなら秘密警察の長であるシモンもまた、今回のクーデターに加担していたからだ。
「後は現当主の身柄を押さえ、譲位を認めさせれば我々の勝ちだ。ソードの政治基盤は取るに足らん。ルーサーに至っては皆無と言っていい」
 カールは心の中で、父上が悪いのだよ、と、その日、何度目になるか分からぬ呟きを繰り返した。
(既得権益を侵さなければ、役人も商人たちも私の当主就任を拒みはしない。なぜなら、彼らとの折衝も皆、私が受け持っていたのだからな。……そうだ。侯爵家の実務は全て、父に代わり自分が実行してきたのではないか。なのに……なぜ次期当主がルーサーなのだ…… オレーリアの息子だから? ふざけるな。納得など出来るものか……!)
 表向きには軽く拳を握っただけで、その表情に感情のさざ波一つ見せずに、カール。……共に実務を担ってきたシモンもまた彼と同じ想いであったのだろう。思いの丈をぶつけると、弟は今回の譲位工作に喜んで加担してくれた。表向きの政治と軍事、裏の諜報──現在の侯爵家の実務を担っている兄弟二人が協力すれば、この程度の工作、陰謀と呼ぶ程のものでもない。
(父の身柄を押さえたら、一刻も早くマーロウ大公との会見の場を設けて対外的にも承認を得る。今は大公も大事な時期だ。ダフィールド派閥の支持と協力は喉から手が出るほど欲しいはず……)
 既に次のステップへ思考を進めるカールは、しかし、直後に蒼い顔をして飛び込んで来た伝令の言葉に思わず、椅子を蹴立てて立ち上がることになった。
「……侯爵家別邸に向かった部隊から報告です! 邸に当主は存在せず! 聞けば、前日、シモン様からオーサンバラの館に泊まるよう願い出る使者が来訪し、応じて出かけていったとか……」
 どういうことだ! と、カールはその表情を崩して叫んだ。重要人物の所在に関する情報は全て秘密警察から上げられてきたものだった。
「すぐにシモンに使いを出せ。いったいこれはどういうつもりかと……!」

 同刻。オーサンバラ──
 館中に縦横無尽に張り巡らされた隠し通路の奥。当主と館の秘密を預かる者しかしらないその空間の、地下に設けられた座敷牢──
 薬を嗅がされ、鎖に繋がれて項垂れた現当主ベルムド──父に向かって、驚くほど酷薄な表情をしたシモンがポツリと呟いた。
「……貴方が悪いのですよ、父上。貴方が母を苦しめることばかりしてきたから……」

解説

1.オーサンバラ組
 村中が祭りでごった返している。

1a.雇われた人
 何も知らずに仕事に精を出している。館の中と外の出入り、祭りで使うような物資の調達が可能。
 オーサンバラ組と接触、合流が可能。ただし、先方から働き掛けが無ければ自主的な行動は起こせない。

1b.旅芸人偽装組
 オーサンバラの村で興行中。
 館のエントランスの隠し扉に気付くことが可能。内部には凄腕の軽装歩兵ら(闇色段階増強あり)
 王都の諜報員(+先行組)と接触可能。ずっと以前、ヘルメス情報局の記者と一緒にリンダールの森を抜けたことがある人なら知ってる顔かも

1c.マリー班の先行組
 ニューオーサンに向かわず、王都の諜報員らと共にこちらに来ていても良い。その場合は祭りの客?
 尾行が倒されたことは相手も承知。見つかれば祭りの最中に暗闘が行われるかも(秘密警察の戦闘員は人前では闇色を出さない)
 マリーがいる場合、特に暗闘が激しくなる予感。


2.ニューオーサン組
 マリー班とルーサー組の合流が可能。王都の諜報員の同行、別働可。
 合流後、クーデターによる戒厳令発布。移動の自由が制限される。オーサンバラへ向かうなら検問と封鎖の突破が必要。そして、迂回している時間はない。
 その後は前から後ろからクーデター部隊が頻繁に登場。「ここは俺に任せて先に行け!」系?(勿論、他の展開も可能)
 クーデター部隊がルーサーの存在を認知した瞬間、暫し混乱状態に(所在不明のルーサー?(攻撃停止) 誘拐された保護対象? でもクーデター的には・ 本部にお伺い。「ええい、とにかく確保しろ!」)
 幻術の使えるユグディラはこちら。
 町の人の噂話からソードらと接触および協力(或いは一時的な共闘)の要請が可能。闇色オーラ力については「さる人物から(詳細は言えない)」。危険な力とは認知。受け入れた理由は「ソード母の息子であるソードに当主を継がせる為」。

(マスターよりへ続く)

マスターより

(解説続き)

3.進行予定
→館から招待客らと村の教会へ移動(屋根付き馬車。以下、正装騎士の護衛隊列付き)
→教会で式(侯爵家伝統。神前の誓いで夫婦)
→館まで屋根なし馬車でパレード
→館内で招待客向け披露宴
→シモンが地下牢で父を……


4.NPC
ルーサー:性格に難でもそれでも父。やっぱり助けたい
シモン:貴女は私の母に似ている。貴族の横暴に振り回されながら、誰かの為にそれに耐えていく人生を自身に課している
ソード:兄は何もかも引っ繰り返そうと行動を。俺も
クリス:マリーと対面以外、誰のどんな言葉も受け入れず
マリー:このオードラン伯爵家次期当主、マリアンヌ・オードランがその結婚を認めないって言ってんのよ!
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/05/01 05:33

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • みんなトモダチ?
    レベッカ・ヘルフリッヒ(ka0617
    人間(蒼)|20才|女性|猟撃士
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 掲げた穂先に尊厳を
    ルーエル・ゼクシディア(ka2473
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • それでも私はマイペース
    レイン・ゼクシディア(ka2887
    エルフ|16才|女性|機導師
  • 笑顔で元気に前向きに
    狐中・小鳥(ka5484
    人間(紅)|12才|女性|舞刀士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/04/23 06:24:09
アイコン 相談所
サクラ・エルフリード(ka2598
人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/04/23 11:55:24