ゲスト
(ka0000)
【碧剣】陰惨なる狂気の庭で
マスター:ムジカ・トラス

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/07/10 07:30
- リプレイ完成予定
- 2018/07/24 07:30
オープニング
●
「おろろろろろろろ」
イェスパーの情けない嗚咽が寝室内に木霊した。イェスパーはパルムの端くれである。嘔吐のようだが、いや、限りなく嘔吐のように聞こえるが、実際には何も出てきてはいない。
演技のようにも見えず、ハンターは苛立たしげに見下ろしていたが、
「や、そ、そうは言っても何も……や、勿論、マイアシが把握していたことくらいは知っていたが……がっ!」
ヨレヨレと机の上でへたり込むイェスパーは、キノコヘッドをやつれさせながら荒く息を吐く。
「…………ふ、辛い。宿で臨む二日酔いがこれほどとは……これぞ宿の粋、それすなわちシュクスイ……や、なんでもない! なんでもないぞ! えー、あー、知ってることであったな!?」
視線に射抜かれて身を竦ませたイェスパーは、ふう、と一つ息を吐く。
「アイツは……シュリは、我輩が知る碧剣の持ち主とは違うように見えてなあ……核であったのだろう宝玉が無いことを抜きにしても……そう、だなあ……」
ぬぬ、と唸る。
「興味、だなあ……我輩の……文豪たる何かが……魂が……叫ぶのよなあ……絶叫しておるのだ……」
瞑目したまま、自問自答するイェスパーは、
「コヤツは、"あの御方"のように一つ大きな、……ん……?」
そのまま、小首を傾げて、呟いた。
「あの御方……はて……我輩何を……?」
事態が動いたのは、その時のことだった。
●
雪の中、シュリ・エルキンズがたどったであろう走り抜けたであろう足跡を辿る。
すぐに、森に入った。冬の森とはいえ、異常なまでの静けさだ。足跡のみならず吐息ですらも大きく聞こえるほど。音という音を雪が吸い込んでいるかのよう。
驢馬に跨ったエステル・マジェスティもそこにいた。
「………………解った!」
彼女のものとは思えぬほどの豊かな声量であった。ただ、声には焦りと、怯えが混じっている。
「僕たちは、シュリに気を取られすぎていた。歪虚の狙いを、見落としていた」
「狙い……は、村人だったのでは?」
「……それは、きっとそう。でも、それは今回もそうだったかは、別。シュリは一年間、歪虚を追い続けていた。それこそ、寝る間もないほどに。僕たちはその痕跡を俯瞰して、シュリにたどり着いた。……あの村を囮にして」
目眩を覚え、驢馬の手綱を握る手と鞍を挟む足に力を込める。
「けど、それは、歪虚たちにとっても、そうだった」
エステルの背筋に、冷たいものが走る。
シュリが追う歪虚にとって、あの村への襲撃はただの囮、捨て石だった。
シュリに狩られながら長い時間を費やして、あれだけの数を揃えた上で――なお。
「あの村は、シュリを引きつけるための餌だった。シュリの手が回らないうちに何人かを連れ去ることはできたかもしれないし、狙いはシュリそのものだったかもしれない……けど」
思い返されるのはシュリの現状、碧剣の性能だった。それに晒され続けてきて、あの手勢でシュリを殺しきれると確信していたとは思えない。
加えてもう一つ、材料があった。
「あの日の襲撃は僕たちが知っていたものと明らかに違った。足並みの揃わない襲撃は、明らかにおかしかった。前は包囲しながら戦術的に必要な手を打ってきたのに、今回はまっすぐにむかってくるだけ。本命は、他にあった」
エステル達の介入が無く、あの場にいたのがシュリだけだったら、このことに気づくことができただろうか。
――恐らく、出来なかっただろう。シュリが追い、狩り続けてきたのは獣に毛が生えた程度の立ち回りしかしなかった。であれば、現状を予見することは不可能に近い。
「……だから、多分、もう」
推察を喋れと、そう言われたばかりだ。考えを詳らかにするのは慣れていない。悲劇の予感と、意見を話すことへの不安を感じながらも、告げる。
「北の村は――手遅れだと、思う」
●
「…………………………ッ!」
シュリ・エルキンズは硬直していた。口の端から、無自覚に震える吐息がこぼれ続ける。
恐らく、もともとは先程まで滞在していた村と同様の規模のものなのだろう。雪に覆われながらも、最低限の備えとして、塀や物見台があったと見える。
ああ、かつては村だったのだろう。しかし、今シュリの眼の前にあるのは――。
「ううう…………ッ!」
『茨』、だった。
巨大な、人の背丈ほどの太さを有する茨が、村を圧壊させていた。
かつて逃げ出すことになった状況とは明らかに違う状況が、そこにあった。いや。それなら、良い。それだけならば、まだよかった。
"今ならまだ、追える"のだから。あの日とは違う。まだ、救うことができる。
碧剣が伝えてくる歪虚の気配は散逸している。目的を達成した歪虚が、この場から撤退しているのだ。
けれど、シュリは動けなかった。
「ぐ………………ッ!」
茨に取り付き、剣を振るう。その先から、響く声があった。
泣き叫び、咽び泣く、子供の泣き声だった。絶叫する女の声だった。
「うわああああああああ、来ないで、来ないで……!!!」「お母さん……!」「イヤアアァァァ……!」
「ううううう……ッ!!!」
周到に罠に掛けられたことはもう解っていた。その上でなお、手を打たれた。
――僕が、至らないから……ッ!
其処は、悪意に塗れた地獄だった。けれど、剣を振るうことは止められない。
――はやく。
はやく、と。願う。ハンターたちの到着が、今は待ち遠しい。
「おろろろろろろろ」
イェスパーの情けない嗚咽が寝室内に木霊した。イェスパーはパルムの端くれである。嘔吐のようだが、いや、限りなく嘔吐のように聞こえるが、実際には何も出てきてはいない。
演技のようにも見えず、ハンターは苛立たしげに見下ろしていたが、
「や、そ、そうは言っても何も……や、勿論、マイアシが把握していたことくらいは知っていたが……がっ!」
ヨレヨレと机の上でへたり込むイェスパーは、キノコヘッドをやつれさせながら荒く息を吐く。
「…………ふ、辛い。宿で臨む二日酔いがこれほどとは……これぞ宿の粋、それすなわちシュクスイ……や、なんでもない! なんでもないぞ! えー、あー、知ってることであったな!?」
視線に射抜かれて身を竦ませたイェスパーは、ふう、と一つ息を吐く。
「アイツは……シュリは、我輩が知る碧剣の持ち主とは違うように見えてなあ……核であったのだろう宝玉が無いことを抜きにしても……そう、だなあ……」
ぬぬ、と唸る。
「興味、だなあ……我輩の……文豪たる何かが……魂が……叫ぶのよなあ……絶叫しておるのだ……」
瞑目したまま、自問自答するイェスパーは、
「コヤツは、"あの御方"のように一つ大きな、……ん……?」
そのまま、小首を傾げて、呟いた。
「あの御方……はて……我輩何を……?」
事態が動いたのは、その時のことだった。
●
雪の中、シュリ・エルキンズがたどったであろう走り抜けたであろう足跡を辿る。
すぐに、森に入った。冬の森とはいえ、異常なまでの静けさだ。足跡のみならず吐息ですらも大きく聞こえるほど。音という音を雪が吸い込んでいるかのよう。
驢馬に跨ったエステル・マジェスティもそこにいた。
「………………解った!」
彼女のものとは思えぬほどの豊かな声量であった。ただ、声には焦りと、怯えが混じっている。
「僕たちは、シュリに気を取られすぎていた。歪虚の狙いを、見落としていた」
「狙い……は、村人だったのでは?」
「……それは、きっとそう。でも、それは今回もそうだったかは、別。シュリは一年間、歪虚を追い続けていた。それこそ、寝る間もないほどに。僕たちはその痕跡を俯瞰して、シュリにたどり着いた。……あの村を囮にして」
目眩を覚え、驢馬の手綱を握る手と鞍を挟む足に力を込める。
「けど、それは、歪虚たちにとっても、そうだった」
エステルの背筋に、冷たいものが走る。
シュリが追う歪虚にとって、あの村への襲撃はただの囮、捨て石だった。
シュリに狩られながら長い時間を費やして、あれだけの数を揃えた上で――なお。
「あの村は、シュリを引きつけるための餌だった。シュリの手が回らないうちに何人かを連れ去ることはできたかもしれないし、狙いはシュリそのものだったかもしれない……けど」
思い返されるのはシュリの現状、碧剣の性能だった。それに晒され続けてきて、あの手勢でシュリを殺しきれると確信していたとは思えない。
加えてもう一つ、材料があった。
「あの日の襲撃は僕たちが知っていたものと明らかに違った。足並みの揃わない襲撃は、明らかにおかしかった。前は包囲しながら戦術的に必要な手を打ってきたのに、今回はまっすぐにむかってくるだけ。本命は、他にあった」
エステル達の介入が無く、あの場にいたのがシュリだけだったら、このことに気づくことができただろうか。
――恐らく、出来なかっただろう。シュリが追い、狩り続けてきたのは獣に毛が生えた程度の立ち回りしかしなかった。であれば、現状を予見することは不可能に近い。
「……だから、多分、もう」
推察を喋れと、そう言われたばかりだ。考えを詳らかにするのは慣れていない。悲劇の予感と、意見を話すことへの不安を感じながらも、告げる。
「北の村は――手遅れだと、思う」
●
「…………………………ッ!」
シュリ・エルキンズは硬直していた。口の端から、無自覚に震える吐息がこぼれ続ける。
恐らく、もともとは先程まで滞在していた村と同様の規模のものなのだろう。雪に覆われながらも、最低限の備えとして、塀や物見台があったと見える。
ああ、かつては村だったのだろう。しかし、今シュリの眼の前にあるのは――。
「ううう…………ッ!」
『茨』、だった。
巨大な、人の背丈ほどの太さを有する茨が、村を圧壊させていた。
かつて逃げ出すことになった状況とは明らかに違う状況が、そこにあった。いや。それなら、良い。それだけならば、まだよかった。
"今ならまだ、追える"のだから。あの日とは違う。まだ、救うことができる。
碧剣が伝えてくる歪虚の気配は散逸している。目的を達成した歪虚が、この場から撤退しているのだ。
けれど、シュリは動けなかった。
「ぐ………………ッ!」
茨に取り付き、剣を振るう。その先から、響く声があった。
泣き叫び、咽び泣く、子供の泣き声だった。絶叫する女の声だった。
「うわああああああああ、来ないで、来ないで……!!!」「お母さん……!」「イヤアアァァァ……!」
「ううううう……ッ!!!」
周到に罠に掛けられたことはもう解っていた。その上でなお、手を打たれた。
――僕が、至らないから……ッ!
其処は、悪意に塗れた地獄だった。けれど、剣を振るうことは止められない。
――はやく。
はやく、と。願う。ハンターたちの到着が、今は待ち遠しい。
解説
●目的:取り残された人々を最大限お救いください
●解説
最初に襲撃された村とは別の、北の村が戦場となっています。
700メートル四方程度の村は四方すべてを太い茨に覆われており、閉鎖されています。
南側にはシュリが切り開いた入り口が形成されている模様。そこから内部が伺えますが、内側にも茨が縦横無尽に走っているようです。
また、不安定ながら歩行する人型の影も確認されます。
皆様はシュリが入り口を切り開いたところに到着します。
▼要救助者について
悲鳴は村の"各所"から響いています。一部は拘束されているようです。悲鳴の種類は最低で7−8人ですが、硬直している者もいる模様。
▼敵情報
茨:固く頑丈ないばら。壁として存在する茨は直径1メートルほどある。一部、30−50cm程度の細い茨は動くようだが、俊敏なムチというよりは、拘束系のトラップとして機能するよう。
人型歪虚x??:ゾンビのような挙動をしている歪虚。体には茨や、目玉、鱗や獣のパーツなどが付いている。村の中を散策しており、村人たちを追い回している様子。追跡する動きは鈍いが、頑丈。名状しがたきプレッシャーで、視認すると抵抗判定が生じるよう。
▼味方情報
エステル・マジェスティ&イェスパー:村の外で待機しています。特に何をしなくても安全です。
●解説
最初に襲撃された村とは別の、北の村が戦場となっています。
700メートル四方程度の村は四方すべてを太い茨に覆われており、閉鎖されています。
南側にはシュリが切り開いた入り口が形成されている模様。そこから内部が伺えますが、内側にも茨が縦横無尽に走っているようです。
また、不安定ながら歩行する人型の影も確認されます。
皆様はシュリが入り口を切り開いたところに到着します。
▼要救助者について
悲鳴は村の"各所"から響いています。一部は拘束されているようです。悲鳴の種類は最低で7−8人ですが、硬直している者もいる模様。
▼敵情報
茨:固く頑丈ないばら。壁として存在する茨は直径1メートルほどある。一部、30−50cm程度の細い茨は動くようだが、俊敏なムチというよりは、拘束系のトラップとして機能するよう。
人型歪虚x??:ゾンビのような挙動をしている歪虚。体には茨や、目玉、鱗や獣のパーツなどが付いている。村の中を散策しており、村人たちを追い回している様子。追跡する動きは鈍いが、頑丈。名状しがたきプレッシャーで、視認すると抵抗判定が生じるよう。
▼味方情報
エステル・マジェスティ&イェスパー:村の外で待機しています。特に何をしなくても安全です。
マスターより
お世話になっております、ムジカです。
シリーズ、最終話です。
絵面としてはずーーーっとこの場面を意識していたのですが、シリーズを経ていく中で"敵"の思考がムジカの中で醸成されてきて、より深く、このシーンにたどり着いたように思います。
長きに渡りましたが、この"冬"の終わりを、一緒に描けたらと思います。
リプレイについては、ひょっとしたら戦闘の類はがっつり減るかもしれません。
今につながる過去を、悔いのないように過ごして頂けたらと思います。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしておりますね。
シリーズ、最終話です。
絵面としてはずーーーっとこの場面を意識していたのですが、シリーズを経ていく中で"敵"の思考がムジカの中で醸成されてきて、より深く、このシーンにたどり着いたように思います。
長きに渡りましたが、この"冬"の終わりを、一緒に描けたらと思います。
リプレイについては、ひょっとしたら戦闘の類はがっつり減るかもしれません。
今につながる過去を、悔いのないように過ごして頂けたらと思います。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしておりますね。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/08/09 21:06
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 八原 篝(ka3104) 人間(リアルブルー)|19才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/07/10 01:11:40 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/07/06 07:30:39 |