ゲスト
(ka0000)
【王国始動】思い出の高原
マスター:京乃ゆらさ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/06/23 19:00
- リプレイ完成予定
- 2014/07/02 19:00
オープニング
謁見の間には、数十名の騎士が微動だにすることなく立ち並んでいた。
ピンと張り詰めた空気が、足を踏み入れた者を押し潰そうとでもしているかのようだ。
「これが歴史の重みってやつかね」
軽く茶化して薄笑いを浮かべる男――ハンターだが、その口調は精彩を欠いている。
頭上には高い天井にシャンデリア。左右の壁には瀟洒な紋様。足元には多少古ぼけたように見える赤絨毯が敷かれており、その古臭さが逆に荘厳さを醸し出している。そして前方には直立する二人の男と――空席の椅子が二つ。
どちらかが玉座なのだろう。
グラズヘイム王国、王都イルダーナはその王城。千年王国の中心が、あれだ。
椅子の左右に立つ男のうち、年を食った聖職者のような男が淡々と言った。
「王女殿下の御出座である。ハンター諸君、頭を垂れる必要はないが節度を忘れぬように」
いくらか軽くなった空気の中、前方右手の扉から甲冑に身を包んだ女性が姿を現した。そしてその後に続く、小柄な少女。
純白のドレスで着飾った、というよりドレスに着られている少女はゆっくりと登壇して向かって右の椅子の前に立つと、こちらに向き直って一礼した。
「皆さま、我がグラズヘイム王国へようこそ」
落ち着いた、けれど幼さの残る声が耳をくすぐる。椅子に腰を下ろした少女、もとい王女は胸に手を当て、
「はじめまして、私はシスティーナ・グラハムと申します。よろしくお願いしますね。さて、今回皆さまをお呼び立てしたのは他でもありません……」
やや目を伏せた王女が、次の瞬間、意を決したように言い放った。
「皆さまに、王国を楽しんでいただきたかったからですっ」
…………。王女なりに精一杯らしい大音声が、虚しく絨毯に吸い込まれた。
「あれ? 言葉が通じなかったのかな……えっと、オリエンテーションですっ」
唖然としてハンターたちが見上げるその先で、王女はふにゃっと破顔して続ける。
「皆さまの中にはリアルブルーから転移してこられた方もいるでしょう。クリムゾンウェストの人でもハンターになったばかりの方が多いと思います。そんな皆さまに王国をもっと知ってほしい。そう思ったのです」
だんだん熱を帯びてくる王女の言葉。
マイペースというか視野狭窄というか、この周りがついてきてない空気で平然とできるのはある意味まさしく貴族だった。
「見知らぬ地へやって来て不安な方もいると思います。歪虚と戦う、いえ目にするのも初めての方もいると思います。そんな皆さまの支えに私はなりたい! もしかしたら王国には皆さま――特にリアルブルーの方々に疑いの目を向ける人がいるかもしれない、けれどっ」
王女が息つく間すら惜しむように、言った。
「私は、あなたを歓迎します」
大国だからこその保守気質。それはそれで何かと面倒があるのだろう、と軽口を叩いた男はぼんやり考えた。
「改めて」
グラズヘイム王国へようこそ。
王女のか細く透き通った声が、ハンターたちの耳朶を打った。
◆◆
深夜、私室。
今回のオリエンテーションに関する諸々の雑事や、いつもの座学をようやく終え、目をこすりながらノビをしたシスティーナ・グラハムは、逸る心を抑えて傍に置いてあった資料にゆっくりと手を伸ばした。
それは、このオリエンテーションに来てくれたハンターたちの氏名が記載されたリストだった。氏名だけの情報に過ぎないそれが、とても輝いているように見える。
ただ名前を見るだけなのに、なんとなく緊張した。それを持ってベッドの脇まで歩き、深呼吸して腰を下ろすと、宝物に触れるように――もとい、まさしく宝物に触れる為に、慎重に目を落とした。
ゆっくりと噛み締めるように、一人一人の名前を口に出して読んでは、どんな人なのかなと想像してみる。
そこには、ハンターたちの迸る何かが垣間見える気がした。彼らは今、どこにいるだろう。王国にいるのか、それとももう帰ってしまったのか。楽しく寛ぐことができたのか、それとも……何らかのトラブルに巻き込まれてしまったか。
トラブルに巻き込んでしまうことがあれば、申し訳なく思う。でも。
――でも、それもまた今の王国の一面……。
他国の間者など相手ならともかくとして、ハンター相手に隠してもいずれ分かる、仕方のないことだ。今のありのままの王国を見てもらうしか、ない。
「楽しんで、もらえたかな……」
独りごちた時、ふと頭の片隅に何かが過ぎった。それは――
「ヒカヤ高原っ」
――私のお気に入りの場所も紹介してみよう。あそこならきっと今も美しいはず……!
そうしてシスティーナは早速段取りを整えるべく、侍従長マルグリッド・オクレールを呼び出したのだった。
0時を回った、真夜中に。
『グラズヘイム王国北東部、ヒカヤ高原で茶葉を摘んできてほしい』
そんな依頼がハンターオフィスに掲載されたのは次の日のことだった。
曰く、ヒカヤ高原の茶葉で淹れた紅茶は独特の風味があって美味しい。
曰く、家に備蓄してあった在庫が少なくなってきた為、至急補充したい。
曰く、でも雑魔が出るかもしれなくて怖いからお願いしたい。などなど。
まるで言い訳のように並べ立てられた詳細文。極めつけは最後に書かれたこの文章だった。
『案内役にオクレールという人をつけます。オクレールさんと呼んであげてくださいね。また、うまく摘むことができたらその場でお茶会をしてもいい、とオクレールさんに言っておきますので、楽しみにしていてください。
依頼人 匿名希望』
……。その依頼を目にした男女のハンターが苦虫を噛み潰したような苦笑と共に眉を顰めた。
「あやしい」
「まぁ依頼として通ってるってこたぁ一応ヤバいことではないんじゃね?」
「うーんそうなのかなぁ」
釈然としないまま別の依頼文を眺め始める女ハンター。男の方もまた多少気になりつつも別の――特に存分に戦闘できる依頼を探し始めたのだった……。
ピンと張り詰めた空気が、足を踏み入れた者を押し潰そうとでもしているかのようだ。
「これが歴史の重みってやつかね」
軽く茶化して薄笑いを浮かべる男――ハンターだが、その口調は精彩を欠いている。
頭上には高い天井にシャンデリア。左右の壁には瀟洒な紋様。足元には多少古ぼけたように見える赤絨毯が敷かれており、その古臭さが逆に荘厳さを醸し出している。そして前方には直立する二人の男と――空席の椅子が二つ。
どちらかが玉座なのだろう。
グラズヘイム王国、王都イルダーナはその王城。千年王国の中心が、あれだ。
椅子の左右に立つ男のうち、年を食った聖職者のような男が淡々と言った。
「王女殿下の御出座である。ハンター諸君、頭を垂れる必要はないが節度を忘れぬように」
いくらか軽くなった空気の中、前方右手の扉から甲冑に身を包んだ女性が姿を現した。そしてその後に続く、小柄な少女。
純白のドレスで着飾った、というよりドレスに着られている少女はゆっくりと登壇して向かって右の椅子の前に立つと、こちらに向き直って一礼した。
「皆さま、我がグラズヘイム王国へようこそ」
落ち着いた、けれど幼さの残る声が耳をくすぐる。椅子に腰を下ろした少女、もとい王女は胸に手を当て、
「はじめまして、私はシスティーナ・グラハムと申します。よろしくお願いしますね。さて、今回皆さまをお呼び立てしたのは他でもありません……」
やや目を伏せた王女が、次の瞬間、意を決したように言い放った。
「皆さまに、王国を楽しんでいただきたかったからですっ」
…………。王女なりに精一杯らしい大音声が、虚しく絨毯に吸い込まれた。
「あれ? 言葉が通じなかったのかな……えっと、オリエンテーションですっ」
唖然としてハンターたちが見上げるその先で、王女はふにゃっと破顔して続ける。
「皆さまの中にはリアルブルーから転移してこられた方もいるでしょう。クリムゾンウェストの人でもハンターになったばかりの方が多いと思います。そんな皆さまに王国をもっと知ってほしい。そう思ったのです」
だんだん熱を帯びてくる王女の言葉。
マイペースというか視野狭窄というか、この周りがついてきてない空気で平然とできるのはある意味まさしく貴族だった。
「見知らぬ地へやって来て不安な方もいると思います。歪虚と戦う、いえ目にするのも初めての方もいると思います。そんな皆さまの支えに私はなりたい! もしかしたら王国には皆さま――特にリアルブルーの方々に疑いの目を向ける人がいるかもしれない、けれどっ」
王女が息つく間すら惜しむように、言った。
「私は、あなたを歓迎します」
大国だからこその保守気質。それはそれで何かと面倒があるのだろう、と軽口を叩いた男はぼんやり考えた。
「改めて」
グラズヘイム王国へようこそ。
王女のか細く透き通った声が、ハンターたちの耳朶を打った。
◆◆
深夜、私室。
今回のオリエンテーションに関する諸々の雑事や、いつもの座学をようやく終え、目をこすりながらノビをしたシスティーナ・グラハムは、逸る心を抑えて傍に置いてあった資料にゆっくりと手を伸ばした。
それは、このオリエンテーションに来てくれたハンターたちの氏名が記載されたリストだった。氏名だけの情報に過ぎないそれが、とても輝いているように見える。
ただ名前を見るだけなのに、なんとなく緊張した。それを持ってベッドの脇まで歩き、深呼吸して腰を下ろすと、宝物に触れるように――もとい、まさしく宝物に触れる為に、慎重に目を落とした。
ゆっくりと噛み締めるように、一人一人の名前を口に出して読んでは、どんな人なのかなと想像してみる。
そこには、ハンターたちの迸る何かが垣間見える気がした。彼らは今、どこにいるだろう。王国にいるのか、それとももう帰ってしまったのか。楽しく寛ぐことができたのか、それとも……何らかのトラブルに巻き込まれてしまったか。
トラブルに巻き込んでしまうことがあれば、申し訳なく思う。でも。
――でも、それもまた今の王国の一面……。
他国の間者など相手ならともかくとして、ハンター相手に隠してもいずれ分かる、仕方のないことだ。今のありのままの王国を見てもらうしか、ない。
「楽しんで、もらえたかな……」
独りごちた時、ふと頭の片隅に何かが過ぎった。それは――
「ヒカヤ高原っ」
――私のお気に入りの場所も紹介してみよう。あそこならきっと今も美しいはず……!
そうしてシスティーナは早速段取りを整えるべく、侍従長マルグリッド・オクレールを呼び出したのだった。
0時を回った、真夜中に。
『グラズヘイム王国北東部、ヒカヤ高原で茶葉を摘んできてほしい』
そんな依頼がハンターオフィスに掲載されたのは次の日のことだった。
曰く、ヒカヤ高原の茶葉で淹れた紅茶は独特の風味があって美味しい。
曰く、家に備蓄してあった在庫が少なくなってきた為、至急補充したい。
曰く、でも雑魔が出るかもしれなくて怖いからお願いしたい。などなど。
まるで言い訳のように並べ立てられた詳細文。極めつけは最後に書かれたこの文章だった。
『案内役にオクレールという人をつけます。オクレールさんと呼んであげてくださいね。また、うまく摘むことができたらその場でお茶会をしてもいい、とオクレールさんに言っておきますので、楽しみにしていてください。
依頼人 匿名希望』
……。その依頼を目にした男女のハンターが苦虫を噛み潰したような苦笑と共に眉を顰めた。
「あやしい」
「まぁ依頼として通ってるってこたぁ一応ヤバいことではないんじゃね?」
「うーんそうなのかなぁ」
釈然としないまま別の依頼文を眺め始める女ハンター。男の方もまた多少気になりつつも別の――特に存分に戦闘できる依頼を探し始めたのだった……。
解説
▼目的
ヒカヤ高原に行き、ヒカヤ茶葉をある程度摘採してくること。
▼状況
PCはグラズヘイム王国の中北部にある古都アークエルスまで転移門で移動後、東に向かって2台の馬車で移動することになる。
朝出発し、到着は昼過ぎを予定。摘採することは管理者に通知済である為、誰かの許可を得る必要はない。
ヒカヤ高原は広い草原になっており、その一角には整然と茶樹が栽培されている。今の時期はそこそこの質の茶葉を摘むことができるようだ。
高原から北東を見ると大きな山が遠望できる。また作業には多少時間がかかる為、この日は高原でキャンプを張り、翌日帰路につく予定となっている。
▼敵情報(PL情報:PCは遭遇するまで知らない情報)
紅玉蝶
小型の蝶の雑魔。高原で何体か見かけることがある。鱗粉や超音波などの面倒な攻撃が多い。
茶樹近辺にふわふわと漂っており、近づくと襲いかかってくる。
最近この周辺に居着いたらしく、管理人もちょうど討伐を依頼しようと思っていたようだ。
▼お茶会
昼間のうちにうまくある程度の量の茶葉を摘んでおくことができれば、夕方~夜にかけて案内人のオクレールさんと共にお茶会をすることができる。
茶葉はこの日摘んだものではなく、オクレールさんが「何故か」用意してきたもの。とはいえ他にもPC自身でお茶請けやら何やら持参していってもよい。
お茶会というより夕食会かもしれない(
▼補足情報
プレイングにもよるが、リプレイは主にヒカヤ高原到着後~就寝までを描写する予定である為、馬車移動中の警戒行動等は特に必要ない。
王国の穏やかな自然を楽しむことが重要だと思われる。
ヒカヤ高原に行き、ヒカヤ茶葉をある程度摘採してくること。
▼状況
PCはグラズヘイム王国の中北部にある古都アークエルスまで転移門で移動後、東に向かって2台の馬車で移動することになる。
朝出発し、到着は昼過ぎを予定。摘採することは管理者に通知済である為、誰かの許可を得る必要はない。
ヒカヤ高原は広い草原になっており、その一角には整然と茶樹が栽培されている。今の時期はそこそこの質の茶葉を摘むことができるようだ。
高原から北東を見ると大きな山が遠望できる。また作業には多少時間がかかる為、この日は高原でキャンプを張り、翌日帰路につく予定となっている。
▼敵情報(PL情報:PCは遭遇するまで知らない情報)
紅玉蝶
小型の蝶の雑魔。高原で何体か見かけることがある。鱗粉や超音波などの面倒な攻撃が多い。
茶樹近辺にふわふわと漂っており、近づくと襲いかかってくる。
最近この周辺に居着いたらしく、管理人もちょうど討伐を依頼しようと思っていたようだ。
▼お茶会
昼間のうちにうまくある程度の量の茶葉を摘んでおくことができれば、夕方~夜にかけて案内人のオクレールさんと共にお茶会をすることができる。
茶葉はこの日摘んだものではなく、オクレールさんが「何故か」用意してきたもの。とはいえ他にもPC自身でお茶請けやら何やら持参していってもよい。
お茶会というより夕食会かもしれない(
▼補足情報
プレイングにもよるが、リプレイは主にヒカヤ高原到着後~就寝までを描写する予定である為、馬車移動中の警戒行動等は特に必要ない。
王国の穏やかな自然を楽しむことが重要だと思われる。
マスターより
どうもです。京乃です。
簡単に言うと茶葉を摘んだり敵と戦ったりキャンプしたりする依頼です。
匿名希望……誰なんでしょうね……(
案内人のオクレールさんも当然現場にいますので、ちょっとくらい構ってあげてくださったら嬉しいです。
【王国始動】という名の王国紹介オリエンテーションはこれで終幕となります。しかし王女が――王国が皆さんのPCと共に今後どのような道を歩んでいくのか、それはまだ始まったばかりです。
FNB全体を余すところなく楽しみつつ、その中に確かに存在する王国という物語もまた楽しんでいただければ幸いです。
簡単に言うと茶葉を摘んだり敵と戦ったりキャンプしたりする依頼です。
匿名希望……誰なんでしょうね……(
案内人のオクレールさんも当然現場にいますので、ちょっとくらい構ってあげてくださったら嬉しいです。
【王国始動】という名の王国紹介オリエンテーションはこれで終幕となります。しかし王女が――王国が皆さんのPCと共に今後どのような道を歩んでいくのか、それはまだ始まったばかりです。
FNB全体を余すところなく楽しみつつ、その中に確かに存在する王国という物語もまた楽しんでいただければ幸いです。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/07/01 08:03
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
お茶会相談卓 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2014/06/22 16:08:30 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/19 00:53:53 |