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  • 戦闘

【落葉】腑は異界から零れる

マスター:ゆくなが

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
APV

難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,500
参加人数
現在8人 / 3~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2018/11/29 19:00
リプレイ完成予定
2018/12/13 19:00

オープニング

※このシナリオは難易度が高く設定されています。所持金の大幅な減少や装備アイテムの損失、場合によっては、再起不能、死亡判定が下される可能性があります。
再起不能、死亡判定の下されたキャラクターはログイン、及びコンテンツへのアクセスが制限されます。

 なんでもない日の午後だった。
 薄曇りの空に、一条の黒い線が走った。よく観察していれば、その黒い線がラズビルナムの方から走ったことに気がついたであろう。
 つまり黒い線とはソードオブジェクトのことである。それはこの街の中心にある広場に突き刺さった。幸いなことに、近くに人がいなかったので、ソードオブジェクトの下敷きになったり、その衝撃で吹き飛ばされて死傷したりした人間はなかった。
 だが、周囲には凄まじい振動と轟音が走る。周辺住民はなんだなんだと様子を見に来た。
 彼らはソードオブジェクトから異界が展開するのも見たであろう。
 そして、その黒い穴から、ひとりの騎士が出てくるのも見たはずだ。
 彼は黒い鎧を着て、腰には剣と短剣を帯びていた。その顔は精悍で、物語に出てくる騎士そのものだった。
 黒い騎士はきょろきょろ周りを見渡す。
 その騎士の様子を見て、ひとり男性が、騎士に近づいて問いかけた。
「どうなすったんです?」
「いや、急に知らない街に放り出されてしまったものでね。ここはなんという街か教えていただけないだろうか?」
 男性は街の名を告げ、またこの街が帝都から近いことも説明した。
「帝都? ゾンネンシュトラール帝国とは……、失礼だがはじめて聞いた名だ」
「……お名前を伺っても?」
 男性は続いて問う。
「これは名乗りが遅れて悪いことをした。我が名はエミル・ズィック。2代目辺境伯に仕える騎士だ」

 武装したエミルであるが、その誠実な態度に敵意はなく、人々は警戒を解いた。
「エミルって……本当にあのエミルなんですか?」
 ひとりが憧憬を視線に込めてきく。
 2代目辺境伯に仕えた騎士エミルといえば、『不眠の騎士』とも呼ばれ、絶火の騎士として現代に名を残す英雄だった。6日間不眠不休で戦い続け、忠義の騎士として伝説を残している。彼は剣と短剣と使い、漆黒の鎧を愛用した。目前の騎士はまさしく伝承のままのエミルの姿をしていた。
 英霊として過去の人間が再現されることもある。だから、彼らはエミルの再来をすぐに受け入れたのだった。
──だとしたら、あのソードオブジェクトはエミルと一体どんな関係があるのだろう?
 ソードオブジェクトは黒い穴──異界を形成する。それに触れると記憶を無くすので、非覚醒者は接触しないようにと知らせが来ている。
 だが、好奇心は走り出したら止まらない。
 異界からはスケルトンが出現する場合もあるようだが、今回出て来たのは英雄エミルだ。もしかしたらこの異界は無害かもしれない……。
 そんな風に考えた青年が異界へ手を伸ばすのをエミルが制止した。
「それには触らないほうがいい!」
 毅然とした口調だった。周囲の空気が張り詰める。
「でも……その、中がどうなっているのか気になって……」
 青年の言葉にエミルは眉根を寄せた。
「……私はここから出て来たらしいが、私にもこの内側のことは全くわからないんだ。気づいたらここにいた。……ただ」
 エミルは今までの温和な態度からは考えられないほどの嫌悪感をあらわにして異界をにらんだ。
「この中には何か良くないものがある気がする」
「はあ……。でも、この中では過去の世界が再現されてるって噂があるんですよ。英雄であるエミルさんが出て来たモノなんです。きっと、あなたの素晴らしい戦果が再現されて……」
 青年からその先の言葉は紡がれなかった。代わりに口からこぼれたのは鮮血。
そして、彼の腹には鋭い刃物が突き刺さっており、その持ち手は異界から突き出た黒い手が握っていた。
「下がれ!」
 エミルは異界の近くにいた者たちをその膂力で無理やり引っ張って、自分の後ろに隠した。
 青年を刺した腕は、ぬるぬると異界から脱皮するように全貌をあらわした。
 それは質量を持った影のような存在だった。体も顔も黒く、詳しい正体が知れない存在である。
 影は手にした鋭い──体は正体不明なくせにそれだけは鋭いナイフだとわかるものを振りかざしてエミルの背後にいる人間たちに襲いかった。
 だが、その軌道はエミルが抜き放った剣で軌道を変えられる。
「走って逃げろ!」
 エミルが呆然としている人々に呼びかける。
 状況を認識した人間は悲鳴をあげて走り始めた。
 だが、その中で、最初に刺された青年の弟らしき少年だけが、血を流す青年の元に駆け寄ろうとした。
「彼はもう死んでいる。君も早く逃げ……」
 そう口にした時だった。異界から同じような影が続いて3体出現したのだ。そのどれもが手に鋭い刃物を持っており、自分たちが殺す側の存在なのだと誇示している。
「……すまないが君に頼みがある」
 エミルが少年に言った。
「誰でもいい。戦える者を連れて来てくれ。恥ずかしい限りだが……4体のあの敵を倒す力は、私にはきっとない」
 少年はその言葉だけで自分が重大な使命を託されていることを理解した。
「わかりました」
 と、短く返事をすると、この街で1番の駿馬がいる厩へと走り出した。
 だが、その道中、少年はあることに身震いしていた。目の前で行われた殺人でも、異界の出現でもない。なにより怖かったのはエミルの、影を睨む嫌悪に満ちた瞳だった。


 帝都近隣の街から馬を走らせて来た少年が告げたのは以上の事実だった。
 オフィスの職員が大急ぎで情報をまとめてハンターに伝える。
「まず、出現したエミルは英霊ではなく異界の住人……反影作戦であらわれたカレンデュラ(kz0262)のような存在だと考えられます。異界から出現するものは帝国の過去のいさかいを歪虚として再現される場合もあるようです。つまり、エミルは本物の『エミル・ズィック』ではなく、帝国に伝わる伝承を元に再現された『不眠の騎士エミル』と考えるのが正しいでしょう。同時に……」
 職員はここで言葉を切った。
「現れた影は、2代目辺境伯時代に起こった連続殺人事件の再現でしょう。犯人は未だ特定されていませんが、鋭い凶器を使うという手口の同一性から『殺人鬼デミアン』として帝国に名を残しています。それが、人々の想像により複数の影になって異界から現れたと推測します」
 影がデミアンの再現であるのなら、これからも人を殺すだろう。
 ハンターに与えられた依頼は、異界の排除および影による殺人行為の抑制だ。
 かくしてある街での惨劇がはじまったのだった。

解説

●目的
異界の排除、および影による殺人被害の抑制

●ハンター到着時の街の状況
ある街にソードオブジェクトが飛来し、異界が展開。そこから絶火の騎士エミルと影(殺人鬼デミアンの再現)4体が出現。
影は人間を積極的に殺傷しており、エミルが食い止めようとしたが、3体はエミルの手を逃れ、それぞれ街のどこかで殺戮行為をしている。

●ソードオブジェクトの場所
街の中心にある広場。
これを排除するには異界に突入して中にあるソードオブジェクトを破壊する必要がある。

●エミルについて
異界の住人(イレギュラー)と思われる。本人の再現ではなく、伝承を元に再現されているようだ。
武器は剣と短剣。広場で影1体と交戦中。
影を見る目には異様な嫌悪感が滲んでいる。
また、影による被害を抑えたいと思っている。
伝承補正もあり、エミル自身はかなり強い。

●影について
異界から出現したモノ。全部で4体。殺人鬼デミアンの話が人々に伝播した結果、妄想の受け皿となり、複数体の再現が生み出された模様。
全員がナイフを装備している。詳細は不明だが、警戒すべき相手である。
1体は広場にてエミルと交戦中。他3体はそれぞれ街のどこかにいる。
ハンターが到着した時点で、すでに何人か殺害済みで、街には死体と血痕が残されており、追跡可能。人が襲われれば悲鳴をあげる場合があるので、これも影捜索の手がかりになる。
影は放置しておけば際限なく人を殺す。

●街の住人について
一時パニックになったが、ハンター到着時には多少落ち着いている。道が大混雑になっているという状態でもないが、人はいる。
広場から離れた場所にいてまだ騒ぎを知らない人や身体的理由で逃げ遅れている人、怯えていて隠れているだけの人もいるので、影の対処を誤れば被害は増える。

●PL情報
エミルは異界へ何者かが触れるのを快く思わない。異界へ突入しようとするハンターへ攻撃するようなことはないが、なにか一言あるといいかもしれない。

マスターより

こんにちは、あるいはこんばんは。ゆくながです。
【落葉】連動シナリオをお届けします。
影から人々を救い、異界を排除してください。

エミルとデミアンについてはシナリオ「【落葉】英雄の腑」で既に取り上げています。
依頼を達成するためには未読でも構いませんが、該当シナリオを読んでいただくと、本作がより深読みできるかもしれません。

それでは皆様のご参加をお待ちしております。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/12/10 16:33

参加者一覧

  • THE "MAGE"
    フワ ハヤテ(ka0004
    エルフ|26才|男性|魔術師
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 非情なる狙撃手
    コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • 背負う全てを未来へ
    東條 奏多(ka6425
    人間(蒼)|18才|男性|疾影士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/11/28 22:05:09
アイコン 作戦相談
東條 奏多(ka6425
人間(リアルブルー)|18才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2018/11/29 09:45:22