ゲスト
(ka0000)
【落葉】優しき剣魔達と哀しき死者に誓いの酒を
マスター:ことね桃

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- イベント
関連ユニオン
APV- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加人数
- 現在25人 / 1~25人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/01/01 22:00
- リプレイ完成予定
- 2019/01/15 22:00
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
●痛みを忘れるために
『……眠れん』
フリーデリーケ・カレンベルク(kz0254)は苦々しげに呟くと、鉄パイプでできたベッドからぎしりと巨躯を起こした。
彼女は精霊である。本来は寝る必要もないし、モノを食べる必要もない。信仰さえあれば十分に身体を維持できるのだが、あの戦いの日から心が疼いて仕方がなく……その疼きを抑えるために幾度もベッドの上で目を閉じていた。
帝国軍から部族を守ろうとした勇敢な若き勇者たち。家族を逃がすべく震える腕で鍬を持って立ち向かってきた男。子供を抱きかかえて「この子だけは」と地に額を押し付けて懇願した母親。そのいずれも巨大な斧で殺めてきた自分。
あの怨念の群れの中に自分が討った無辜の民がいたのだろうと思うと、胸が痛み――それを忘れるための鎮痛剤として眠りを求める己の弱さに腹が立つ。剣魔でさえ死者から目を逸らさず、手段は誤っていても彼らを慰め続けたというのに!
ベッドとサイドテーブルしかない殺風景なコロッセオの自室。もとは物置部屋だったそこを彼女は生前生活の場にしていた牢獄に似ているからと、積み荷を放り出して寝室に作り替えている。そんな石打ちっぱなしの壁を蹴飛ばすと、フリーデは夜の街にふらりと向かった。
夜の街は多くの人で溢れていた。聖輝祭だけではなく、ラズビルナムの脅威が消え去り平穏に新年を迎えられる――それは多くの帝国民にとって幸福なことなのだ。
特にリアルブルーから避難している人々にとっては2度目の受難を避けることができたのだから嬉しいことに違いはない。少しでも帝国の文化に馴染めるようにと買い物に興じる姿をちらほらと見かける。
『ハンター達は多くの人々を助けたというのに、私は……』
もっとも、そればかりはどうしようもない。精霊は転移門を使えないのだし、信仰から離れれば戦闘能力も自然と落ちていく。人々を救いたいと願っていても、その力が及ぶのはほぼ帝国領の中のみだ。
(邪神ファナティックブラッド……その脅威から私は本当に民を守れるのか?)
大きな手を見つめるも、答えは出ない。フリーデは喧騒から離れるべく、通いなれた酒場のドアを開いた。
●めぐりあわせ
ドアを開いた途端、木と酒の香りが鼻をつく。普段より人が多い――中には何がおかしいのか大声で笑いながら酒を呷る男もいる。
今日は日が悪そうだ。そう背を向けた時に、聞きなれた声が聞こえた。
『おや、姐さん。あんたは呑みに来たのかい?』
振り向けばそこにはドレスを纏った精霊ローザリンデ(kz0269)が煙管を吸いながらカウンターに肘をついていた。
『ローザリンデ……』
『アタシは呑めない身体なんだけどさ、ここの光は心地よくてね。今日の分の浄化が無事終わったから休憩に来たってわけさ』
たしかに暖色系の明かりは柔らかで、夜闇に煌めく街灯よりも心が温まりそうな気がする。
フリーデはローザの隣に座ると『いつもの』と店主に告げ、大きなグラスに並々と注がれたそれを一気に呷った。
『旨いのかい? それは』
興味津々といった様子でのぞき込むローザにフリーデが苦く笑う。
『所詮安酒だ。旨くはないが酔いはする』
『どうせ呑むなら旨いものを選べばいいだろうに。変な話だねェ』
『旨いものは良い値がついている。友人の墓を造り直してやりたくてな。自然とこればかりだ。それに酔って思考を止めたいのだ、自分は』
『ふぅん……』
ローザはその言葉に興味を示さず、目の前のナッツを供え物として吸収しては再び煙管を咥えた。
『アタシは朝になればまたラズビルナムを浄化する。かつての剣魔の真意を知るにはまだ浄化を繰り返して研究者が入れるようにしなきゃならないしね。あんたはどうするんだい?』
『そうだな……雑魔が出るのなら随行しよう。戦うしか能がないし……戦えば、民のためになっていると思い込める。心が……痛くなくなる』
『……』
ローザはそれに答えることなく、灰皿に灰を落とした。食事をしにきたのか、家族連れがカウンターにちょこちょこ座り始めたのだ。
『まァ、好きにすればいいさ。ただこれだけは言っておく。自己犠牲で人が救えると思ったら大間違いだ。あんたの友達も言っていたんだろう? 自分を大切にしろと。……そうでなきゃ、あんたを想う人を傷つけることになるんだよ。昔のアタシのようにね。今のあんたに必要なのは責めることではなく、かつての過ちを繰り返さずに生きて世界を守ることだ。違うかい?』
そう言って、ローザはカウンター傍の壁に背を預けた。煙管はいつの間にか手から消えている。彼女はそれ以上の会話を拒むように目を伏せると、店内に流れる静かな音楽に耳を傾けた。
●ケーキがいっぱい!!
フリーデとローザの会話が進む中、花の精霊フィー・フローレ(ka0255)は大きなバスケットにたくさんの掌大のタルトを詰めて自然公園から駆け出した。
ケーキ屋さんバトルロイヤルで販売を手伝うさなか、読んだレシピ集から覚えた一品を仲間達と一緒に焼いたのだ。帝国を救ってくれたハンター達に感謝を伝えるために。
「コレダケアレバ皆ニ渡セルノ!」
ニコニコしながら走っていく、身体に花を無数に飾ったコボルドの姿にリアルブルーの人々は驚くばかり。
そこにふと、精霊の匂いがする酒場があることに気がついた彼女はドアをトントンと叩いた。木の香りにうっとりするフィー。
すると店主がドアを開き、彼女から事情を聞いた。どうやらこのコボルドは精霊で悪意もないようだし、店の中にいるハンター達に小さなケーキを渡すぐらいなら問題ないだろう。そう受け入れる店主。
フィーは傍にいたハンターにとことこと近づくとバスケットからタルトを差し出してにっこり笑った。
●痛みを忘れるために
『……眠れん』
フリーデリーケ・カレンベルク(kz0254)は苦々しげに呟くと、鉄パイプでできたベッドからぎしりと巨躯を起こした。
彼女は精霊である。本来は寝る必要もないし、モノを食べる必要もない。信仰さえあれば十分に身体を維持できるのだが、あの戦いの日から心が疼いて仕方がなく……その疼きを抑えるために幾度もベッドの上で目を閉じていた。
帝国軍から部族を守ろうとした勇敢な若き勇者たち。家族を逃がすべく震える腕で鍬を持って立ち向かってきた男。子供を抱きかかえて「この子だけは」と地に額を押し付けて懇願した母親。そのいずれも巨大な斧で殺めてきた自分。
あの怨念の群れの中に自分が討った無辜の民がいたのだろうと思うと、胸が痛み――それを忘れるための鎮痛剤として眠りを求める己の弱さに腹が立つ。剣魔でさえ死者から目を逸らさず、手段は誤っていても彼らを慰め続けたというのに!
ベッドとサイドテーブルしかない殺風景なコロッセオの自室。もとは物置部屋だったそこを彼女は生前生活の場にしていた牢獄に似ているからと、積み荷を放り出して寝室に作り替えている。そんな石打ちっぱなしの壁を蹴飛ばすと、フリーデは夜の街にふらりと向かった。
夜の街は多くの人で溢れていた。聖輝祭だけではなく、ラズビルナムの脅威が消え去り平穏に新年を迎えられる――それは多くの帝国民にとって幸福なことなのだ。
特にリアルブルーから避難している人々にとっては2度目の受難を避けることができたのだから嬉しいことに違いはない。少しでも帝国の文化に馴染めるようにと買い物に興じる姿をちらほらと見かける。
『ハンター達は多くの人々を助けたというのに、私は……』
もっとも、そればかりはどうしようもない。精霊は転移門を使えないのだし、信仰から離れれば戦闘能力も自然と落ちていく。人々を救いたいと願っていても、その力が及ぶのはほぼ帝国領の中のみだ。
(邪神ファナティックブラッド……その脅威から私は本当に民を守れるのか?)
大きな手を見つめるも、答えは出ない。フリーデは喧騒から離れるべく、通いなれた酒場のドアを開いた。
●めぐりあわせ
ドアを開いた途端、木と酒の香りが鼻をつく。普段より人が多い――中には何がおかしいのか大声で笑いながら酒を呷る男もいる。
今日は日が悪そうだ。そう背を向けた時に、聞きなれた声が聞こえた。
『おや、姐さん。あんたは呑みに来たのかい?』
振り向けばそこにはドレスを纏った精霊ローザリンデ(kz0269)が煙管を吸いながらカウンターに肘をついていた。
『ローザリンデ……』
『アタシは呑めない身体なんだけどさ、ここの光は心地よくてね。今日の分の浄化が無事終わったから休憩に来たってわけさ』
たしかに暖色系の明かりは柔らかで、夜闇に煌めく街灯よりも心が温まりそうな気がする。
フリーデはローザの隣に座ると『いつもの』と店主に告げ、大きなグラスに並々と注がれたそれを一気に呷った。
『旨いのかい? それは』
興味津々といった様子でのぞき込むローザにフリーデが苦く笑う。
『所詮安酒だ。旨くはないが酔いはする』
『どうせ呑むなら旨いものを選べばいいだろうに。変な話だねェ』
『旨いものは良い値がついている。友人の墓を造り直してやりたくてな。自然とこればかりだ。それに酔って思考を止めたいのだ、自分は』
『ふぅん……』
ローザはその言葉に興味を示さず、目の前のナッツを供え物として吸収しては再び煙管を咥えた。
『アタシは朝になればまたラズビルナムを浄化する。かつての剣魔の真意を知るにはまだ浄化を繰り返して研究者が入れるようにしなきゃならないしね。あんたはどうするんだい?』
『そうだな……雑魔が出るのなら随行しよう。戦うしか能がないし……戦えば、民のためになっていると思い込める。心が……痛くなくなる』
『……』
ローザはそれに答えることなく、灰皿に灰を落とした。食事をしにきたのか、家族連れがカウンターにちょこちょこ座り始めたのだ。
『まァ、好きにすればいいさ。ただこれだけは言っておく。自己犠牲で人が救えると思ったら大間違いだ。あんたの友達も言っていたんだろう? 自分を大切にしろと。……そうでなきゃ、あんたを想う人を傷つけることになるんだよ。昔のアタシのようにね。今のあんたに必要なのは責めることではなく、かつての過ちを繰り返さずに生きて世界を守ることだ。違うかい?』
そう言って、ローザはカウンター傍の壁に背を預けた。煙管はいつの間にか手から消えている。彼女はそれ以上の会話を拒むように目を伏せると、店内に流れる静かな音楽に耳を傾けた。
●ケーキがいっぱい!!
フリーデとローザの会話が進む中、花の精霊フィー・フローレ(ka0255)は大きなバスケットにたくさんの掌大のタルトを詰めて自然公園から駆け出した。
ケーキ屋さんバトルロイヤルで販売を手伝うさなか、読んだレシピ集から覚えた一品を仲間達と一緒に焼いたのだ。帝国を救ってくれたハンター達に感謝を伝えるために。
「コレダケアレバ皆ニ渡セルノ!」
ニコニコしながら走っていく、身体に花を無数に飾ったコボルドの姿にリアルブルーの人々は驚くばかり。
そこにふと、精霊の匂いがする酒場があることに気がついた彼女はドアをトントンと叩いた。木の香りにうっとりするフィー。
すると店主がドアを開き、彼女から事情を聞いた。どうやらこのコボルドは精霊で悪意もないようだし、店の中にいるハンター達に小さなケーキを渡すぐらいなら問題ないだろう。そう受け入れる店主。
フィーは傍にいたハンターにとことこと近づくとバスケットからタルトを差し出してにっこり笑った。
解説
●目的
剣魔クリピクロウズや帝国領で犠牲になった人々に献杯する。
成人は好みのお酒を選べますが、成人前の方はミルクやジュースになります。
また、物語の開始は午後6時からですが、
成人前の方は夜10時までに帰宅するよう促されますのでご了承ください。
(ただしほぼフリーアタックシナリオです)
●会場
帝都で夜間も経営中の落ち着いたラウンジ。
カウンターに椅子が並べられている以外は基本立ち飲みという気楽な店でもある。
ジャガイモ料理にもっぱらの定評あり。
雰囲気は良く暖色系のランプで店内が照らされている中、ライブもできるよう小さなステージも用意されている。
●登場NPC
フリーデリーケ……今回はしょんぼりモードに入っています。眠れないので酒場に来ました。
基本うわばみなので黙ってガブガブ呑みますが、過去を思い返すと目が潤みます。
メンタルがいつもより弱いです。激弱です。場合によっては絡みますが弱いので放っておくと大人しくなります。
ローザリンデ……夜は浄化の作業から離れ、光のある場所で休んでいる模様。
お酒は飲めませんが雰囲気は楽しんでいます。
剣魔には同情している部分があり、いずれはきちんと現場で鎮魂したい模様。
ついでに今回の作戦に参加したことにより信仰が高まり、強くなりました。
フィー・フローレ……最近料理の楽しさに目覚めた模様。
ケーキ屋さんバトルロイヤルの手伝いのうちに読んだ本からフルーツタルトを作れるようになりました。
小さなものを箱に詰めて皆に「お疲れさま」の意を込めて配るつもりのようです。
剣魔クリピクロウズや帝国領で犠牲になった人々に献杯する。
成人は好みのお酒を選べますが、成人前の方はミルクやジュースになります。
また、物語の開始は午後6時からですが、
成人前の方は夜10時までに帰宅するよう促されますのでご了承ください。
(ただしほぼフリーアタックシナリオです)
●会場
帝都で夜間も経営中の落ち着いたラウンジ。
カウンターに椅子が並べられている以外は基本立ち飲みという気楽な店でもある。
ジャガイモ料理にもっぱらの定評あり。
雰囲気は良く暖色系のランプで店内が照らされている中、ライブもできるよう小さなステージも用意されている。
●登場NPC
フリーデリーケ……今回はしょんぼりモードに入っています。眠れないので酒場に来ました。
基本うわばみなので黙ってガブガブ呑みますが、過去を思い返すと目が潤みます。
メンタルがいつもより弱いです。激弱です。場合によっては絡みますが弱いので放っておくと大人しくなります。
ローザリンデ……夜は浄化の作業から離れ、光のある場所で休んでいる模様。
お酒は飲めませんが雰囲気は楽しんでいます。
剣魔には同情している部分があり、いずれはきちんと現場で鎮魂したい模様。
ついでに今回の作戦に参加したことにより信仰が高まり、強くなりました。
フィー・フローレ……最近料理の楽しさに目覚めた模様。
ケーキ屋さんバトルロイヤルの手伝いのうちに読んだ本からフルーツタルトを作れるようになりました。
小さなものを箱に詰めて皆に「お疲れさま」の意を込めて配るつもりのようです。
マスターより
こんにちは、ことねです。
今回は個人的な落葉の締めとして、大人の雰囲気漂うラウンジでの物語をご用意しました。
剣魔や犠牲者たちに想いを馳せるもよし、かの地の平穏を祈るもよし、
彼らの神殿から発見された文化について考えを巡らせるもよし、普通にお食事をするもよし。
基本的にフリーアタックですので、のんびりお過ごしください。
なお、確認したいことがある時は質問卓をご利用ください。NPCのうちどちらかが反応しますので!
それではなにとぞよろしくお願いします。
今回は個人的な落葉の締めとして、大人の雰囲気漂うラウンジでの物語をご用意しました。
剣魔や犠牲者たちに想いを馳せるもよし、かの地の平穏を祈るもよし、
彼らの神殿から発見された文化について考えを巡らせるもよし、普通にお食事をするもよし。
基本的にフリーアタックですので、のんびりお過ごしください。
なお、確認したいことがある時は質問卓をご利用ください。NPCのうちどちらかが反応しますので!
それではなにとぞよろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/01/16 13:56