ゲスト
(ka0000)
人形繰り「別離」
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- シリーズ(新規)
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,300
- 参加人数
- 現在10人 / 3~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/01/23 09:00
- リプレイ完成予定
- 2019/02/01 09:00
オープニング
「クリームヒルト様……」
そう切り出したのはベント伯だった。二人の間を挟む机には金庫の鍵や通帳などが丁寧に並べられている。それらをすべてクリームヒルトに押しやるようにした後、ベント伯は深く深く頭を下げた。
頭の包帯、襟の外から覗く痣など、前回の襲撃してきた暴漢の傷跡がまだ見える。
「クリームヒルト様。私はもうご一緒することはできません」
目に見える傷跡もひどいが、それは心にまで及んでいることは、こんな言葉を聞くよりもずっと前から薄々と感じていた。
「差し上げられるものはこれが全てです。私の罪状で一生を償う生活となっても構いませんが、どうかもうこれ以上、私と娘を縛るのはよしてくださいませんか」
横に座るメルツェーデスも膝の上で握りしめる手を震わせていた。それが恐怖によるものであるのは痛いほどに伝わってくる。
「お金はいらないわ。今までありがとうね」
クリームヒルトにはそう言って、親子が去っていく様子を見送るしかできなかった。
「それで、よ。こんな時に申し訳ないんだが……練魔院から声がかかってさ」
「……そう」
頭をかいたり、髭をいじったりしながら言葉を紡ぐレギンの様子は、言いにくい事をなんとか当たり障りのないように四苦八苦していることをうかがわせた。
クリームヒルトはそんなレギンの仕草を、苦笑して見届けると、ゆっくり首を縦に振った。
「自分のやりたい道だったんでしょう。その道が開けたのならわたしも嬉しいわ」
「ヴルツァライヒとの戦いするって言った矢先で、本当にすまねぇ」
「ヴルツァライヒといっても先帝との戦いでもあったように、全部が悪者じゃないのよ。戦うのはそれを扇動するごくごく一部よ。だから大丈夫。それよりレギン。あなたのおかげで魔導列車が、地方が連携する礎が作れたわ。ありがとう」
「オレこそ、一度は死んだ身なのにこんなにしてもらって。……なんかあったらすぐ駆けつけますから」
レギンは、はにかんだ笑顔で、何度もこっちに手を振っていった。
「最近色んな産業の再編が激しいみたいで……本当にすみません」
久々に訪れたミネアの言葉はなんとも歯切れが悪く、そして顔色もあまりよくなかった。
「お世話になっていた人々は大丈夫なの」
「はい……。服飾の方が儲かるっていうんで、ジャガイモ作らなくなっただけですし。そうなんですよね。故郷を守りたい、家族を守りたいっていう想いが柱なんですから、ジャガイモにこだわる理由ってないんですよね」
憔悴の色さえ見せるミネアの顔色からして、それでも随分と手を打ってきたに違いない。だが、それでもこんな報告に来たということは……。
「無理しなくていいのよ。ミネアも今までわたしの提案を形にしてくれて、地方の人々を幸せにしてくれたわ。あなたがいなければ、ミネアカンパニーがなければきっと苦しんだままこの世を去った人もいると思うわ」
その言葉に、ミネアはこらえきれずに大粒の涙をぼろぼろと溢れ出させて、膝の上に落とした。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「ううん。それよりあなたや従業員のことを考えましょう。なんとしても商会を持たせるんだと思わなくていいわ。今は働いた分の休暇をもらったと思って?」
クリームヒルトはそう言うとベント伯から譲り受けた現金の類はほとんどミネアに与えた。
「ギュントの言う『帝国全体が変わりつつあるのです』っていう言葉だけが心の支えよ。実際、良くなっていると思う」
クリームヒルトは気丈に締め切られた扉の向こうに話しかけた。
扉の向こう、与えられた部屋の主はテミスだった。彼女も暴漢の襲撃によって深い傷を負い、それは心にまで至ってしまった。彼女は自分を責め続けていた。
「みんないなくなっちゃったけど、誰のせいでもないわ。うん、むしろ成果なのよ。悪い事じゃないわ」
テミスに言い聞かせているのか、自分に言い聞かせているのか、段々分からなくなってきた。
帝国中、困ったことがあったらどこでも飛んでいけたのに、今では誰もいなくなった屋敷はとても広く感じて、その屋敷の端から端まで歩くまでもが果てしなく遠く感じる。
「人形使いと戦う、争いの根本を打ちはらう! なんて言ってたのにね」
頼りになる仲間はいっぱいいる。
だけど、どうしてだろう。何かが虚ろに感じる。
「……テミス。わたしはどうすればいいのかしら」
ふと、遥か昔、テミスの生家でブランド起こしをし始めた頃を思い出す。
あの時も同じような言葉を言ってた。だけど、今と違うのは……星のように瞬いていた希望が一つも見えないことだ。
「ごめん。ギュントとの打ち合わせだわ。行ってくるね。ご飯、ちゃんと食べるのよ」
その言葉を扉の向こうでテミスは静かに聞き、馬車が走る音が完全に消え去ると、彼女はそっと街の方向へと走った。
●
「人形使いのことを調べたい?」
「ヴルツァライヒと関連しているという存在の人形使いです。前はアミィという女性でしたが……もっと古くからいるとも聞きます。多分、その女性を指すのではなく、もっと概念の存在なんだと思います」
テミスはハンターオフィスでそう切り出した。
「人形使いは人間の行動を操ることができるなら、例えばずっと一緒にいた人の忠誠心を覆したり、村の産業を一気に乗り換えさせるような変化を起こすこともできるのではないかと」
偶然かもしれない。
帝国全体が変わりつつあるという言葉も間違ってはないかもしれない。
でも、それがいきなりクリームヒルト様を孤立無援にするような状態を引き起こせるのか。
「大切な人が踊らされるのなら、私は……看過できません」
「といってもねぇ」
職員が悩むのは無理もない。どうすればいいのか、何も知らないハンターにどう説明して、その力を適切に振るってもらえるか。今の現状では無暗が過ぎる。
「漠然とした思いだけなのは承知です。だから切っ掛けでもいい。何か、何かを掴めたらと思います」
そう切り出したのはベント伯だった。二人の間を挟む机には金庫の鍵や通帳などが丁寧に並べられている。それらをすべてクリームヒルトに押しやるようにした後、ベント伯は深く深く頭を下げた。
頭の包帯、襟の外から覗く痣など、前回の襲撃してきた暴漢の傷跡がまだ見える。
「クリームヒルト様。私はもうご一緒することはできません」
目に見える傷跡もひどいが、それは心にまで及んでいることは、こんな言葉を聞くよりもずっと前から薄々と感じていた。
「差し上げられるものはこれが全てです。私の罪状で一生を償う生活となっても構いませんが、どうかもうこれ以上、私と娘を縛るのはよしてくださいませんか」
横に座るメルツェーデスも膝の上で握りしめる手を震わせていた。それが恐怖によるものであるのは痛いほどに伝わってくる。
「お金はいらないわ。今までありがとうね」
クリームヒルトにはそう言って、親子が去っていく様子を見送るしかできなかった。
「それで、よ。こんな時に申し訳ないんだが……練魔院から声がかかってさ」
「……そう」
頭をかいたり、髭をいじったりしながら言葉を紡ぐレギンの様子は、言いにくい事をなんとか当たり障りのないように四苦八苦していることをうかがわせた。
クリームヒルトはそんなレギンの仕草を、苦笑して見届けると、ゆっくり首を縦に振った。
「自分のやりたい道だったんでしょう。その道が開けたのならわたしも嬉しいわ」
「ヴルツァライヒとの戦いするって言った矢先で、本当にすまねぇ」
「ヴルツァライヒといっても先帝との戦いでもあったように、全部が悪者じゃないのよ。戦うのはそれを扇動するごくごく一部よ。だから大丈夫。それよりレギン。あなたのおかげで魔導列車が、地方が連携する礎が作れたわ。ありがとう」
「オレこそ、一度は死んだ身なのにこんなにしてもらって。……なんかあったらすぐ駆けつけますから」
レギンは、はにかんだ笑顔で、何度もこっちに手を振っていった。
「最近色んな産業の再編が激しいみたいで……本当にすみません」
久々に訪れたミネアの言葉はなんとも歯切れが悪く、そして顔色もあまりよくなかった。
「お世話になっていた人々は大丈夫なの」
「はい……。服飾の方が儲かるっていうんで、ジャガイモ作らなくなっただけですし。そうなんですよね。故郷を守りたい、家族を守りたいっていう想いが柱なんですから、ジャガイモにこだわる理由ってないんですよね」
憔悴の色さえ見せるミネアの顔色からして、それでも随分と手を打ってきたに違いない。だが、それでもこんな報告に来たということは……。
「無理しなくていいのよ。ミネアも今までわたしの提案を形にしてくれて、地方の人々を幸せにしてくれたわ。あなたがいなければ、ミネアカンパニーがなければきっと苦しんだままこの世を去った人もいると思うわ」
その言葉に、ミネアはこらえきれずに大粒の涙をぼろぼろと溢れ出させて、膝の上に落とした。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「ううん。それよりあなたや従業員のことを考えましょう。なんとしても商会を持たせるんだと思わなくていいわ。今は働いた分の休暇をもらったと思って?」
クリームヒルトはそう言うとベント伯から譲り受けた現金の類はほとんどミネアに与えた。
「ギュントの言う『帝国全体が変わりつつあるのです』っていう言葉だけが心の支えよ。実際、良くなっていると思う」
クリームヒルトは気丈に締め切られた扉の向こうに話しかけた。
扉の向こう、与えられた部屋の主はテミスだった。彼女も暴漢の襲撃によって深い傷を負い、それは心にまで至ってしまった。彼女は自分を責め続けていた。
「みんないなくなっちゃったけど、誰のせいでもないわ。うん、むしろ成果なのよ。悪い事じゃないわ」
テミスに言い聞かせているのか、自分に言い聞かせているのか、段々分からなくなってきた。
帝国中、困ったことがあったらどこでも飛んでいけたのに、今では誰もいなくなった屋敷はとても広く感じて、その屋敷の端から端まで歩くまでもが果てしなく遠く感じる。
「人形使いと戦う、争いの根本を打ちはらう! なんて言ってたのにね」
頼りになる仲間はいっぱいいる。
だけど、どうしてだろう。何かが虚ろに感じる。
「……テミス。わたしはどうすればいいのかしら」
ふと、遥か昔、テミスの生家でブランド起こしをし始めた頃を思い出す。
あの時も同じような言葉を言ってた。だけど、今と違うのは……星のように瞬いていた希望が一つも見えないことだ。
「ごめん。ギュントとの打ち合わせだわ。行ってくるね。ご飯、ちゃんと食べるのよ」
その言葉を扉の向こうでテミスは静かに聞き、馬車が走る音が完全に消え去ると、彼女はそっと街の方向へと走った。
●
「人形使いのことを調べたい?」
「ヴルツァライヒと関連しているという存在の人形使いです。前はアミィという女性でしたが……もっと古くからいるとも聞きます。多分、その女性を指すのではなく、もっと概念の存在なんだと思います」
テミスはハンターオフィスでそう切り出した。
「人形使いは人間の行動を操ることができるなら、例えばずっと一緒にいた人の忠誠心を覆したり、村の産業を一気に乗り換えさせるような変化を起こすこともできるのではないかと」
偶然かもしれない。
帝国全体が変わりつつあるという言葉も間違ってはないかもしれない。
でも、それがいきなりクリームヒルト様を孤立無援にするような状態を引き起こせるのか。
「大切な人が踊らされるのなら、私は……看過できません」
「といってもねぇ」
職員が悩むのは無理もない。どうすればいいのか、何も知らないハンターにどう説明して、その力を適切に振るってもらえるか。今の現状では無暗が過ぎる。
「漠然とした思いだけなのは承知です。だから切っ掛けでもいい。何か、何かを掴めたらと思います」
解説
調査シナリオです。
ヴルツァライヒの裏で暗躍する『人形使い』の存在がどのようなものであるかを探ります。
個々の知識や経験、また人間関係などを元にして、その存在をより確固なものとしてうかびあがらせてください。
●目的
人形使いについて調べる
そして可能であれば、クリームヒルトの元から人が離れたことに対して対策を練る
●現状確認
ベント伯・メルツェーデス
クリームヒルトからは縁を切って、帝都に移り住みました。探せばすぐに合うことはできますが、基本的には縁はきったと言い張り非協力的です。
レギン
練魔院で研究職として呼ばれたそうです。帝都で少し調べれば会うことはできます。
ミネア
ミネアカンパニーに特産のジャガイモを提供していた村が、移住を決めたり産業を切り替えたために商品の確保が難しくなり、現在は休業状態です。
人形使い・アミィ
シグルドに管理されて日々服役しています。特に過激な言動は見当たらず大人しい様子です。
ギュント
クリームヒルトについて産業の整理などを行っています。なかなかの手腕で成果はかなり順調です。
●その他
クリームヒルト(テミスを含む)がNPC参加しますので、その他質問があればどうぞ。
ヴルツァライヒの裏で暗躍する『人形使い』の存在がどのようなものであるかを探ります。
個々の知識や経験、また人間関係などを元にして、その存在をより確固なものとしてうかびあがらせてください。
●目的
人形使いについて調べる
そして可能であれば、クリームヒルトの元から人が離れたことに対して対策を練る
●現状確認
ベント伯・メルツェーデス
クリームヒルトからは縁を切って、帝都に移り住みました。探せばすぐに合うことはできますが、基本的には縁はきったと言い張り非協力的です。
レギン
練魔院で研究職として呼ばれたそうです。帝都で少し調べれば会うことはできます。
ミネア
ミネアカンパニーに特産のジャガイモを提供していた村が、移住を決めたり産業を切り替えたために商品の確保が難しくなり、現在は休業状態です。
人形使い・アミィ
シグルドに管理されて日々服役しています。特に過激な言動は見当たらず大人しい様子です。
ギュント
クリームヒルトについて産業の整理などを行っています。なかなかの手腕で成果はかなり順調です。
●その他
クリームヒルト(テミスを含む)がNPC参加しますので、その他質問があればどうぞ。
マスターより
●マスターより
DoLLerが展開していた物語のまとめになりシリーズシナリオです。
今までの登場してきたNPCの物語などは基本的にこのシリーズで話が完結する予定となっていますので、気になる方は是非ご参加ください。
DoLLerが展開していた物語のまとめになりシリーズシナリオです。
今までの登場してきたNPCの物語などは基本的にこのシリーズで話が完結する予定となっていますので、気になる方は是非ご参加ください。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/01/28 11:45
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談場所 ソフィア =リリィホルム(ka2383) ドワーフ|14才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2019/01/23 00:21:54 |
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クリームヒルトさんへの質問卓 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2019/01/18 06:51:32 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/01/20 19:26:55 |