ゲスト
(ka0000)
【幻想】目を閉じれば 遠い日の記憶
マスター:凪池シリル

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在4人 / 3~4人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/02/23 15:00
- リプレイ完成予定
- 2019/03/04 15:00
オープニング
「やあ……調子、どうなんだ?」
見舞い……という言葉はこの場合適切なのだろうか。先日、怠惰の大感染に巻き込まれ救出されたチィ=ズヴォーは、改めて伊佐美 透が彼の元を訪れたその時、少なくとも身体的には壮健に見えた。
「ん、まあ、なんともねぇでさあ。一旦影響を抜けちまえば特には何とも残らねえみてえですねい」
軽く腕を曲げ伸ばししてみせながらチィは答える。その挙動やそれまでの所作に不自然さは無かった。
「なんともない……か」
確かめるようにその言葉を復唱して、透はそれから、一呼吸して尋ねた。
「あの時……お前が言ったあれは……どういうことなんだ? 今は?」
怠惰の大感染──ニガヨモギの影響を抜けたその後、チィは透に「辺境の戦いには関わるな」と告げた。相棒としてやってきた存在のその言葉、数年の関わりを経ても初めて見るような態度と言葉に……一度、時間を置くことを選んだ。
そうして、怠惰の影響は無いと確かめてから……改めて、尋ねる。
チィは苦笑した──ほんの少し、ぎこちなさを伴って。
「透殿は、ニガヨモギには近づくべきじゃねえでさぁ。……大事なもんを、自分自身でどうでもいいってなるありゃあ……それが生涯をかけようってなもんであればあるほど、後で『歪虚のせいだ』なんて済ませられるもんじゃねえでしょう?」
言われたそれは……確かに、透にとって怖じ気づく話ではあった。結局諦められない夢なのだろうと認めた筈の、願い続けていたものを、強制的にとはいえ「どうでもいい」と思ってしまった感覚はどんなものなのだろう。その後で……正気にもどったら。
「お前……は、どうなんだ? 大丈夫なのか?」
「手前どもは別に。んな気にするようなもんも持ってねえし仕方ねえもんを引きずるガラでもねえでさあ」
「……じゃあ、それ以外で何かあったか?」
「──……」
咄嗟に何かを言おうとして。数秒の沈黙を挟んでしまったところでもう失敗を悟ったのだろう。諦めて一度口を閉じて……開き直す。
「……何でそう思いやした?」
「お前の言うことは……正しいよ。話を聞いてる限りじゃ俺はニガヨモギには触れない方が良いんだろう……けど。それでも……お前は、他人の行動を決めようとする奴じゃないだろ。助言はしても」
信頼を込めて伝えたつもりのそれに。チィはひくりと小さく表情と肩を動かした。一瞬の痛みをこらえるかのように。
……開いている傷口に直に触れてしまったかのようなばつの悪さを、そこに感じた。
「……そう、でさあねえ。勿論手前どもに透殿のやることを止める権利はねえでさあ。あくまで、手前どもがそう願うってだけの話でさあ」
返すチィもどこか決まり悪そうではあった。
──……何なんだろう、これは。まるで分からない。こんな……
「こんな手前どもは、知らねえって感じですかい?」
「……っ!」
「……手前どももでさあ」
チィは、ゆっくりと首を振りながら言った。
「手前ども自身、んな手前どもは生まれて初めて知りやしたよ……だから、すまねえですが、多分手前どもには、今は時間が必要なんだと思いまさあ……」
静かに告げるチィに、透は少しの驚きと共に表情を平静に戻すと、自分に認めさせるように、聞いた。
「──その時間に、俺は居ない方が良さそうなのか?」
その問いに、チィは目を閉じて暫ししてから。
「……すまねえでさあ」
それだけを、答えて。
「……分かった。今ハンターがすべきことは沢山あるし……俺は一旦そっちに行くよ。ただ……なんと言われようがやっぱり、お前の危機と聞いたらじっとはしていられないと、思う」
●
……そうして、今回の辺境の戦いに対する備えには透は参加しないことになった。
もとより、今回の任務は神霊樹ライブラリからの調査。何があっても夢のようなもので、肉体的な危険はない。
ただ……──
(そんで調べるのがここってのもなんてぇか……因果ですかねぃ……)
チュプ神殿。
この時代の幻獣王から、この神殿を『研究施設』へと明け渡すこと、彼らはそのために拠点であるここを放棄し、囮となるべく別の砦へと向かうことを聞いた一行は、そこから二手に行動を分けることにした。
一つは、共にムネマサ砦で戦い、その戦いを追体験すると共に情報を聞き出すこと。
そしてもう一つは、このままチュプ神殿で待ち続けて、やってくる研究者から彼らが講じようとしていた『対策』を探り出すことだ。
チュプ神殿に何度か立ち入り構造を知っているだろうというチィは、こちらに残るべきだと言われ……断るとも言えず、彼はこちら側に残った。
(ここに来る研究者……ですかい。どんな……どこの世界の人たち、なんですかねぃ)
ここには複数の世界に跨がる技術が利用されている。もしかしたら、その、複数の世界の技術者が手を取り合っていた場面に出くわすのかもしれない。それを、今の自分はどんな心地で見るのだろう。何を見ることになるだろう。
異なる技術体系を築く者同士が協力してここを造り上げた。……その発見の切欠を見出だしたその時に、チィと透も居合わせていた。
その時のことを思い出す──間違いなくあの時は二人、笑い合っていた。
ほんの少し前のことのはずだ。今遡って見ているここの記憶と比べたらほんの僅か前。
それが……──
想いを巡らせるうちに、周囲が騒がしくなってきた。
「……たどり着いたぞ! チュプ神殿だ!」
「っ! ……王は本当に、ここを我らに……」
「感傷に浸る暇は無いぞ。それだけ私たちの研究が最後の希望だと言うことだ」
「ええ……そうですね。貴殿方のおかげで、あれの出力には間違いなく向上が見られました。更に効果を上げさえすれば……あれは対抗手段になりうるはず!」
聞こえてくる声に、ハンターたち一行は一度息をひそめ、耳を澄ませた。
ここで……彼らが完成させかけた対抗策、その詳細が分かるかもしれない。聞き漏らしてはならない。
「貴殿方の協力には、本当に感謝します。理不尽な状況から、力を、知恵を貸してくださったこと、本当に感謝しきれません」
「何、半分くらいは技術者のサガってやつさ。知ってみりゃあこっちの世界の技術も興味深い……何より、お前さんらの熱意さ。プロジェクトってなあ結局、一緒にやるやつ次第ってな!」
異世界から来たらしいその技術者は、危機的状況にも関わらず朗らかに声を張り上げる。
「だからいいんだよもう! 俺はこっちの世界が気に入った! ここに骨埋める覚悟は、とっくに出来てらあ!」
……息を潜めて。
身体を縮めて。
彼らの言葉を、聞く。
手を取り合った彼らに訪れる結末は、滅びだ。共に生きようとした結果、共に死ぬ。
……そこから、貴方たちは何を掬い上げるだろう。
見舞い……という言葉はこの場合適切なのだろうか。先日、怠惰の大感染に巻き込まれ救出されたチィ=ズヴォーは、改めて伊佐美 透が彼の元を訪れたその時、少なくとも身体的には壮健に見えた。
「ん、まあ、なんともねぇでさあ。一旦影響を抜けちまえば特には何とも残らねえみてえですねい」
軽く腕を曲げ伸ばししてみせながらチィは答える。その挙動やそれまでの所作に不自然さは無かった。
「なんともない……か」
確かめるようにその言葉を復唱して、透はそれから、一呼吸して尋ねた。
「あの時……お前が言ったあれは……どういうことなんだ? 今は?」
怠惰の大感染──ニガヨモギの影響を抜けたその後、チィは透に「辺境の戦いには関わるな」と告げた。相棒としてやってきた存在のその言葉、数年の関わりを経ても初めて見るような態度と言葉に……一度、時間を置くことを選んだ。
そうして、怠惰の影響は無いと確かめてから……改めて、尋ねる。
チィは苦笑した──ほんの少し、ぎこちなさを伴って。
「透殿は、ニガヨモギには近づくべきじゃねえでさぁ。……大事なもんを、自分自身でどうでもいいってなるありゃあ……それが生涯をかけようってなもんであればあるほど、後で『歪虚のせいだ』なんて済ませられるもんじゃねえでしょう?」
言われたそれは……確かに、透にとって怖じ気づく話ではあった。結局諦められない夢なのだろうと認めた筈の、願い続けていたものを、強制的にとはいえ「どうでもいい」と思ってしまった感覚はどんなものなのだろう。その後で……正気にもどったら。
「お前……は、どうなんだ? 大丈夫なのか?」
「手前どもは別に。んな気にするようなもんも持ってねえし仕方ねえもんを引きずるガラでもねえでさあ」
「……じゃあ、それ以外で何かあったか?」
「──……」
咄嗟に何かを言おうとして。数秒の沈黙を挟んでしまったところでもう失敗を悟ったのだろう。諦めて一度口を閉じて……開き直す。
「……何でそう思いやした?」
「お前の言うことは……正しいよ。話を聞いてる限りじゃ俺はニガヨモギには触れない方が良いんだろう……けど。それでも……お前は、他人の行動を決めようとする奴じゃないだろ。助言はしても」
信頼を込めて伝えたつもりのそれに。チィはひくりと小さく表情と肩を動かした。一瞬の痛みをこらえるかのように。
……開いている傷口に直に触れてしまったかのようなばつの悪さを、そこに感じた。
「……そう、でさあねえ。勿論手前どもに透殿のやることを止める権利はねえでさあ。あくまで、手前どもがそう願うってだけの話でさあ」
返すチィもどこか決まり悪そうではあった。
──……何なんだろう、これは。まるで分からない。こんな……
「こんな手前どもは、知らねえって感じですかい?」
「……っ!」
「……手前どももでさあ」
チィは、ゆっくりと首を振りながら言った。
「手前ども自身、んな手前どもは生まれて初めて知りやしたよ……だから、すまねえですが、多分手前どもには、今は時間が必要なんだと思いまさあ……」
静かに告げるチィに、透は少しの驚きと共に表情を平静に戻すと、自分に認めさせるように、聞いた。
「──その時間に、俺は居ない方が良さそうなのか?」
その問いに、チィは目を閉じて暫ししてから。
「……すまねえでさあ」
それだけを、答えて。
「……分かった。今ハンターがすべきことは沢山あるし……俺は一旦そっちに行くよ。ただ……なんと言われようがやっぱり、お前の危機と聞いたらじっとはしていられないと、思う」
●
……そうして、今回の辺境の戦いに対する備えには透は参加しないことになった。
もとより、今回の任務は神霊樹ライブラリからの調査。何があっても夢のようなもので、肉体的な危険はない。
ただ……──
(そんで調べるのがここってのもなんてぇか……因果ですかねぃ……)
チュプ神殿。
この時代の幻獣王から、この神殿を『研究施設』へと明け渡すこと、彼らはそのために拠点であるここを放棄し、囮となるべく別の砦へと向かうことを聞いた一行は、そこから二手に行動を分けることにした。
一つは、共にムネマサ砦で戦い、その戦いを追体験すると共に情報を聞き出すこと。
そしてもう一つは、このままチュプ神殿で待ち続けて、やってくる研究者から彼らが講じようとしていた『対策』を探り出すことだ。
チュプ神殿に何度か立ち入り構造を知っているだろうというチィは、こちらに残るべきだと言われ……断るとも言えず、彼はこちら側に残った。
(ここに来る研究者……ですかい。どんな……どこの世界の人たち、なんですかねぃ)
ここには複数の世界に跨がる技術が利用されている。もしかしたら、その、複数の世界の技術者が手を取り合っていた場面に出くわすのかもしれない。それを、今の自分はどんな心地で見るのだろう。何を見ることになるだろう。
異なる技術体系を築く者同士が協力してここを造り上げた。……その発見の切欠を見出だしたその時に、チィと透も居合わせていた。
その時のことを思い出す──間違いなくあの時は二人、笑い合っていた。
ほんの少し前のことのはずだ。今遡って見ているここの記憶と比べたらほんの僅か前。
それが……──
想いを巡らせるうちに、周囲が騒がしくなってきた。
「……たどり着いたぞ! チュプ神殿だ!」
「っ! ……王は本当に、ここを我らに……」
「感傷に浸る暇は無いぞ。それだけ私たちの研究が最後の希望だと言うことだ」
「ええ……そうですね。貴殿方のおかげで、あれの出力には間違いなく向上が見られました。更に効果を上げさえすれば……あれは対抗手段になりうるはず!」
聞こえてくる声に、ハンターたち一行は一度息をひそめ、耳を澄ませた。
ここで……彼らが完成させかけた対抗策、その詳細が分かるかもしれない。聞き漏らしてはならない。
「貴殿方の協力には、本当に感謝します。理不尽な状況から、力を、知恵を貸してくださったこと、本当に感謝しきれません」
「何、半分くらいは技術者のサガってやつさ。知ってみりゃあこっちの世界の技術も興味深い……何より、お前さんらの熱意さ。プロジェクトってなあ結局、一緒にやるやつ次第ってな!」
異世界から来たらしいその技術者は、危機的状況にも関わらず朗らかに声を張り上げる。
「だからいいんだよもう! 俺はこっちの世界が気に入った! ここに骨埋める覚悟は、とっくに出来てらあ!」
……息を潜めて。
身体を縮めて。
彼らの言葉を、聞く。
手を取り合った彼らに訪れる結末は、滅びだ。共に生きようとした結果、共に死ぬ。
……そこから、貴方たちは何を掬い上げるだろう。
解説
●目的
神霊樹ライブラリでの追体験による過去の調査。
貴方たちは神霊樹ライブラリにより「過去のチュプ神殿」の記憶を見ています。
それにより、彼らがここで開発を進めていた「大感染の対策」の情報を探ってください。
身を隠して彼らの会話を聞いてもいいでしょう。
また現状、「この時点でこの場所にいる覚醒者」はどちらかと言えば好意的に推察されるでしょう。話の持って行き方次第では直接会話によって情報を引き出すことも可能です。
また、オートマトンであっても不審に思われることはありません。
ぶっちゃけ研究者の皆さんは必死ですので隠密については難易度は低くなります。適当に聞き耳立ててるだけでも最低限の目標は達成出来るので色々試してみたり心情に寄せるのもアリでしょう。
やがてここも怠惰の大感染に巻き込まれるのが歴史なので、そこまで待って死んでみるまでニガヨモギを体験してみることも出来ます(嫌なら個別にその前に退避も出来ます)。
チィ=ズヴォーが体験したように、「ずっと我慢してたけどそのことも面倒になって抑えていたものが溢れ出す(そしてそれも直後にどうでも良くなる)」といった体験も出来ますのでそれを理解したいとかそれによって書いてほしい事があるとかいう方もどうぞ。
なお、ライブラリは過去の記録に過ぎず、ここで何をしても『結果は変えられません』。
ライブラリである為、回復薬などの消費アイテムは利用できません。また重傷や死亡シーンがあっても処理はありません。
神霊樹ライブラリでの追体験による過去の調査。
貴方たちは神霊樹ライブラリにより「過去のチュプ神殿」の記憶を見ています。
それにより、彼らがここで開発を進めていた「大感染の対策」の情報を探ってください。
身を隠して彼らの会話を聞いてもいいでしょう。
また現状、「この時点でこの場所にいる覚醒者」はどちらかと言えば好意的に推察されるでしょう。話の持って行き方次第では直接会話によって情報を引き出すことも可能です。
また、オートマトンであっても不審に思われることはありません。
ぶっちゃけ研究者の皆さんは必死ですので隠密については難易度は低くなります。適当に聞き耳立ててるだけでも最低限の目標は達成出来るので色々試してみたり心情に寄せるのもアリでしょう。
やがてここも怠惰の大感染に巻き込まれるのが歴史なので、そこまで待って死んでみるまでニガヨモギを体験してみることも出来ます(嫌なら個別にその前に退避も出来ます)。
チィ=ズヴォーが体験したように、「ずっと我慢してたけどそのことも面倒になって抑えていたものが溢れ出す(そしてそれも直後にどうでも良くなる)」といった体験も出来ますのでそれを理解したいとかそれによって書いてほしい事があるとかいう方もどうぞ。
なお、ライブラリは過去の記録に過ぎず、ここで何をしても『結果は変えられません』。
ライブラリである為、回復薬などの消費アイテムは利用できません。また重傷や死亡シーンがあっても処理はありません。
マスターより
凪池シリルです。
連動にかこつけてにょろっと調査兼心情シナリオです。
何やらうちの連中が面倒なことになってますがそこは別に成功度には関係しませんので気にしない人はほっといてくれて構いません。
何か面倒なことになってすみません、が、最後に向けて、書きたいことへと進めて参りますので、どうぞよろしくお願いします。
連動にかこつけてにょろっと調査兼心情シナリオです。
何やらうちの連中が面倒なことになってますがそこは別に成功度には関係しませんので気にしない人はほっといてくれて構いません。
何か面倒なことになってすみません、が、最後に向けて、書きたいことへと進めて参りますので、どうぞよろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/03/03 10:27
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/02/22 00:32:52 |
|
![]() |
相談場所 万歳丸(ka5665) 鬼|17才|男性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2019/02/22 23:59:49 |