• 戦闘

【Serenade】蛍袋-02

マスター:愁水

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
難しい
オプション
参加費
1,300
参加人数
現在5人 / 3~5人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
6日
プレイング締切
2019/03/02 22:00
リプレイ完成予定
2019/03/16 22:00

オープニング

※このシナリオは難易度が高く設定されています。所持金の大幅な減少や装備アイテムの損失、場合によっては、再起不能、死亡判定が下される可能性があります。
再起不能、死亡判定の下されたキャラクターはログイン、及びコンテンツへのアクセスが制限されます。


「――ちょっと。人が買い物行ってる間になんでいなくなるの」

 天幕の天鵞絨を分け入り、黒亜(kz0238)は客席の階段を足早に下りながら、最前列に腰を掛ける白い背中へ、苛立たしげに言い放った。憔悴した青白い顔が、一拍置いて肩越しに振り返る。

「……ああ、クロか。書置きを残しただろう」
「見てない」

 テーブルに目を向ける余裕すらなかったのだろう。強張った表情で息を切らせる黒亜からは、兄である彼――白亜(kz0237)を暫く探し回っていた様子が見て取れた。

「すまない。動物達の様子が気になってな」
「は? 世話ならクラウンに頼んだって言ったでしょ。……あのさ、少しでいいから自分の身体労ってくれない? シュヴァルツが力を尽くしてくれたけど、まだ本調子じゃないでしょ」
「心配しすぎだ」

 白亜は、ふ、と、口角を上げる。しかし、その言に説得力はなかった。

 篝火に拘束され、拷問を受けていたのはつい先日の事だ。加え、心身に消えない傷跡を残した親友が堕落者となり、妹の紅亜(kz0239)を攫った――。篝火が告げ示したことを事実とするならば、白亜の心に底知れぬ衝撃を与えたことだろう。

「紅亜は……無事だろうか」

 白亜がぽつりと零す。それは黒亜に確認するというよりも、繰り返し頭に浮かんでいる言語を口にした、という様子であった。

「……楽観視はできないけど、少なくとも乱暴に扱われてるってことはないと思う。勿論、だからと言って救出を遅らせることなんかしないけど。アジトを移動されたら厄介だしね。……待ってて、って言ってもついてくる気でしょ」
「ああ。こればかりは譲れん」

 茫と漂っていた視線が、揺るぎない意志を帯びて、弟の窺う眼差しへと絡む。

 ――兄の心は、折れないだろう。
 一歩も、引くことはないだろう。

 此処ぞという時、兄は一切妥協をしない。

「(……昔から、こういう人だよね)」

 そうやって弟と妹を養い、護ってきたことを黒亜は知っている。護られていたことを、知っている。だから――



「いいよ。ハク兄の好きにしたらいい。何があっても、どんなことが起きても、ハク兄のことはオレが護るから」



 淀みのない美しい声音で以て、“改めて”誓う。





 その時――まるで、立てられた意を断切するかのように、天幕の割れ目から光が奔ってきた。




「状況は?」
「正門はとっくに突破された。五分前の情報じゃあ、司令部庁舎の方でやり合ってるってことだったが――」

 近づいてくる喧騒から、ひとつふたつと悲鳴が響いてくる。

「……まあ、並みのヤツらじゃ止められるワケねーわな」
「日和っていないだけ、まだマシだよ」

 行き交う人と張り詰めた空気の中を、桜久世 琉架(kz0265)とシュヴァルツ(kz0266)は世間話でもするかのように歩いて行く。

「先手を取られちまったな。真っ昼間から軍人の基地を叩きに来るたぁいい度胸してんじゃねーか」
「おや、じゃあ君が相手を努めるかい? 男相手でも色々と得意だろう?」
「先ずは巧みな弁舌で褒めてやれってか?」
「その後はお好きにどうぞ」
「アイツぁ趣味じゃねーわ」
「それは残念」

 琉架は落ち着いた足取りで隊舎の階段を下りると、外から飛び交う不協和音の先――陽を差し込んだ半開きの扉に手を掛けた。

「足止めだと思うか?」

 背後からトーンを低くしたシュヴァルツが息を潜める。

「さあね。まあ、そうであってもなくとも、俺にはどうでもいいことだよ。所詮、“彼”と顔を合わせれば――」





 殺し合うのだから。





「おやおや、まあ。派手にやったねぇ。同盟軍も形無しじゃないか」

 悠然と現れた琉架を目に映し、元軍人であるその堕落者は「漸く姿を見せましたか」と、半ば呆れたように応えた。

「貴方は悠々と構えていたのでしょうが、その間、彼等は職務を全うしていたのですよ」

 血振りをした男の周りで、血溜まりの地面を点々と蹲る兵士達がいた。しかし、その傷は――

「全く……何が“全う”だい。致命傷一つ負っていない重傷が名誉の負傷にでもなるのかい? だとしたら、最近の“正義“は随分と安っぽいね」

 堕落者が、忌々しげに目尻を吊り上げる。

「君の正義は中途半端なんだよ。俺を釣りたいが為に一般人を犬の餌にしておいて、彼等には情けをかけるのかい?」
「……」
「本当に……君は昔から、肝心な時に限って甘いね。俺だったら全員殺すよ?」
「私は、貴方とは違う。偽善の皮を被り、人の心を弄ぶ貴方とは……違うッ……!」

 殺気を孕んだ視線が、強い意に揺れる。そう、元よりこれは――

「貴方は何時だって自由だった。人の情にも、自らの力にも縛られず、只々貴方は自由で……気紛れに人を傷つけ、気紛れに……優しくした」

 只の、私情。

「とち狂っているくせに、強烈な光を見せつける。私の持ちうる正義とは程遠い、貴方自身が“見放した正義”だ」

 唯の、心残り。

「おやおや、随分と饒舌じゃないか」
「心当たりがないとでも?」
「ないね」
「……だから貴方は、“独り”なのですよ」
「何を今更。生きるも死ぬも、何時だって独りだ。……所詮、力も正義も人生という喜劇に映し出された一片でしかないんだよ」

 琉架は一瞬、留めることの出来ない朝焼けのような脆さで微笑んだ。だが、次の瞬間には、人を食ったような質を現す。まるで、剥がれ落ちた仮面を挿げ替えるかのように。

「そろそろいいかな。余計な手出しが入る前に始めようじゃないか。お喋りをする為に俺に会いに来たわけではないだろう」
「……そうですね。私は、私自身を、貴方を、質したかったのかもしれません。ですが、それも今となっては……」

 彼は語る言の葉を、宿る心を散らすように、炯と一度、槍を薙ぎ払った。そして――

「自らの正義を断ったこと、後悔しながら死んでください」

 堕落者クラルスは、どれ程焦がれても持ち得なかった“光”へ――悲しい“正義”へと、矛先を向けた。










「目を逸らすなよ、小僧。“もう一度”、俺の目を見ながら死ね」


解説

《目的》
・敵の撃破

《状況》
・白亜とシュヴァルツから略同じタイミングで助勢の要請が入った。
 PCは、天鵞絨サーカス団の天幕、又は、同盟軍駐屯地、どちらに向かうかを選択。

《情報》
・時刻は正午辺り。

>天鵞絨サーカス団の天幕
 天幕の中は広く、戦闘が可能な空間としては客席や舞台など。
 外は見晴らしのいい丘。
 黒亜と忌花去ルは天幕の外で戦闘中。

>同盟軍駐屯地
 点在している駐屯地の中では小規模。
 負傷した兵士の避難は完了している。
 琉架とクラルスは営庭で戦闘中。

《敵》
 クラルス・レンフィールド
 元帝国軍の軍人。
 琉架、シュヴァルツ、白亜は嘗ての仲間。
 琉架に対しては、堕落してからも憧れと嫉妬の狭間を彷徨っている。基本的に、横槍を入れてこなければ琉架しか標的にしない。

 頭以外は甲冑を身に着けており、武器に毒を纏わせたBSを扱う。

 物理攻撃・敏捷性特化型。
 基本は中距離を保ちながら戦う。相手の動きを見切り、スピードを重視した戦法が得意。
 刺突の破壊力は絶大。
 “aula”…地面に槍を突き立て、半径5mに衝撃波を放つ。
 “arcanum”…目にも止まらぬ速さの連続攻撃。一撃一撃が致命的な攻撃力を持つ。

 忌花去ル(きかざる):
 女性の人型歪虚。
 魔法攻撃・物理攻撃特化型。
 体長1.8m。黒薔薇の蔓が身体に巻き付いており、常に掌で両耳を塞いでいる。蔓の棘には出血のBS。聴覚を遮られている代わりに、動体視力が非常に鋭い。
 空中を浮遊している為(地上から2m程)、攻撃を当てにくい。
 主な物理攻撃は突進や回旋。魔法攻撃は、口から一直線に伸びる雷撃を放つ。
 半径10mに、完全麻痺効果(1ターン)のある金切り声を上げる。

《NPC》
 桜久世 琉架:
 得物はレイピア。体術も扱う。
 強い精神力と高い戦闘力を持つが、連携プレーは苦手。
 元より易々と死ぬつもりはないが、本人にとって人生とは死ぬまでの暇潰し(PL情報)

マスターより

 シュヴァルツ:
 得物は魔導書。
 回復能力は極めて高い。
 エピキュリアンである琉架の数少ない理解者。

 白亜:
 得物はカービンタイプの銃。体術も扱う。
 本来の調子は戻っていない。

 黒亜:
 得物は刀身の長い日本刀。
 高い瞬発力を持ち、手数で攻める戦法を得意とする。
 兄を護る為、敵の攻撃を自身に引き付けている。

《その他》
・危険フラグはNPCにも適応される。










「死ぬということは何でもありませんでした。唯、“死んだ”私はもう、貴方を越えられない。わかりますか? 貴方は、今――」

関連NPC

  • 花一華ノ蛇
    桜久世 琉架(kz0265
    人間(クリムゾンウェスト)|26才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
  • 薫衣草ノ獅子
    シュヴァルツ(kz0266
    人間(クリムゾンウェスト)|35才|男性|聖導士(クルセイダー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2019/03/14 01:59

参加者一覧

  • 天鵞絨ノ空木
    白藤(ka3768
    人間(蒼)|28才|女性|猟撃士
  • ヒトとして生きるもの
    蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009
    エルフ|22才|女性|魔術師
  • 軌跡を辿った今に笑む
    ロベリア・李(ka4206
    人間(蒼)|38才|女性|機導師
  • 天鵞絨ノ風船唐綿
    ミア(ka7035
    鬼|22才|女性|格闘士
  • 花車の聖女
    灯(ka7179
    人間(蒼)|23才|女性|聖導士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/02/24 21:29:48
アイコン 蛇と正義と、護るもの【相談卓】
ミア(ka7035
鬼|22才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2019/03/02 00:59:23