ゲスト
(ka0000)
【血断】死体になど芽吹くものか
マスター:ゆくなが

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,500
- 参加人数
- 現在7人 / 3~7人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/06/19 12:00
- リプレイ完成予定
- 2019/07/03 12:00
オープニング
死体に芽吹くくらいなら、仇花でいい。
もしかしたら、クリュティエ(kz0280)の思考とはそういうものなのかもしれない。
彼女は今、リゼリオにいた。
リゼリオ、ハンターズソサエティ前。ハンターたちの本拠地の建物前である。
今日は雨だった。
傘を叩く雨粒の音が、それ以外の音をかき消して思考に没頭させてくれる。自分の呼吸の音とか、心臓の音とか、そんなものも雨音に埋もれてしまうのだが、歪虚たるクリュティエにそれらの生体音はないのだろう。
彼女は、あのオフィスの扉からハンターたちが出てくるのを待っていた。
経緯を語るには、少し時間を遡る。
●死体に花は咲くのだろうか
「彼らは邪神の討伐を選んだの」
黙示騎士の居城たるサルヴァトーレ・ネロの展望室でバニティーが発した言葉に、クリュティエの胸はひやりと凍りついた。
「どう、して……?」
声が震えていた。平静を装うように努めても、どうにもうまくいかなかった。
「それはハンターにしかわからないよ」
バニティーは窓の向こうの星々を眺めながら、クリュティエと目を合わせずに言う。
「もし、気になるのなら……ハンターと直接話して答えを聞く以外ないんじゃないかな」
淡々と、バニティーは言う。
「ハンターズソサエティはリゼリオにある。そこに行けば確実にハンターと話せると思うよ」
「でも……、負のマテリアルの影響はどうする? リゼリオは都市だ。無用な混乱を我は招きたくない」
「そこはわたしの虚飾の能力でどうにかしてあげる。2時間くらいは持続するはずだから、その間に話せばいいでしょ? 転移はテセウスに頼めばいい」
「……すまない。我は行ってくる」
「謝ることないよ。きっと、戦いが本格的になってしまえば──挨拶をする時間もないから」
●花が芽吹くには何が必要だろう
かくしてクリュティエは、ハンターたちに会いにやってきた。
無論、彼女はリゼリオの天気など知らないし傘など持っていない。傘を買う金銭もない。けれど、こうして傘で雨を避けているのは、オフィスに努めるまだ少女の面影のある職員が貸してくれたからだ。その職員は丁寧にタオルすら用意していた。雨に濡れたクリュティエに体を拭くことを勧めた。歪虚はきっと風邪をひかないのだけれど、少女の気持ちを無下にはできなかったのでクリュティエは大人しく、髪を拭いて服の水滴を払い、傘を受け取った。タオルを返すと、少女はお辞儀して、小走りにオフィスまで戻って行った。
その少女の背中を見ながらクリュティエは思った。
「ああ──、奪うのはなんて嫌なことだろう」
邪神討伐をハンターが決めた以上、この先には苛烈な戦いが待っている。それはクリュティエもわかっているし、ハンターだってそうだろう。
クリュティエだってわかっている。ハンターは考えなしではない。邪神に抵抗することだって、考えた末に決めたことなのだろう。自分たちの世界に多大な被害が出るとわかっていて、決めたことなのだ。その覚悟は生半可なものではないはずだ。だからきっと──話したところで彼らの決定は覆らないだろう。
わかっている。でも、やはり思ってしまう。どうして恭順してくれなかったのか。どうしても恭順の道はないのだろうか、と。
でもきっと、ハンターは『未来』のために討伐の道を選んだのだ。
会ったことのあるハンターたちは『未来』の話をしていた。でもそれがクリュティエにとってはよくわからなかった。
確実にここある『今』ではなく、どうしてまだここにはない『未来』を信じられるのだろう。どうしてそれが希望に溢れたものだと言えるのだろう。
だって、ハンターたちが選ぼうとしている未来は、犠牲の先にしかないじゃないか。それなら、今を続けてもいいじゃないか。
邪神討伐で一体、どれだけの被害が出ることだろう。クリムゾンウェスト、リアルブルー、エバーグリーン。彼らが邪神を倒したのなら、邪神の中に記録されている世界だって犠牲になるのだ。クリムゾンウェストの何倍も、何億倍も、那由多を掛けても足りないような数の人々の願いがあそこには詰まっているのに。
そんな犠牲を積み上げた丘の上で、蒼穹を仰いで大団円のつもりか。
そんな犠牲を積み上げた大地に芽吹く花を、お前たちは美しいと言うのか。
笑えない。全く──全く、笑えない。
そんな花なら実も結ばずに枯れるがいい。そもそも、芽吹くに値しない。咲いた花が美しいから、必要な犠牲だった? 喪失が輝かせるものがあるだと?
結局、見捨てたお前の力不足なだけだろう。犠牲を肯定するな。治らぬ傷を刺青みたいに見せびらかすな。失ったものはどうやったって戻らない。代替えは存在しない。だから、大切なんだろう。だから、大事なんだろう。だから、だから、だから──
「──失うことも、奪うことも辛いじゃないか」
過日の戦闘で、人を斬った感触を思い出して、クリュティエは震えた。感触を上書きするように、傘の持ち手をぎゅっと握った。
「わかっている。……わかっているさ」
それでもわかっていると言い聞かせる。この後に及んで、ハンターの決断は覆らないだろう。クリュティエがどんなに恭順を望んでも、きっと変わりはしない。
だから、今日はゆっくり話す最後の機会なんだ。クリュティエはそう思うことにした。次に会ったら、戦うしかないだろうから。
だって、戦わなければ邪神の中の、数多の世界が、人々が、願いが、消えてしまうのだから。
「わかっている。わかっている……」
──本当に、わかってる?
呪文みたいに呟く言葉は、やはり雨音に散り散りになった。
●枯れた花もある、これから咲く花もある
バニティーはまだ展望室で、クリュティエのいた場所を見つめていた。彼女はハンターの決断に関する大事な部分を意図的に言わなかった。
ファーザーを毒電波から解放し、全宇宙と永遠は無理だけどひとつの宇宙として世界を再誕させること。そして、ハンターたちが黙示騎士を説得し味方にしようとしていることを。
特に後者を言ってしまえばクリュティエは警戒するだろう。ハンターに会いに行くことすらしなかったかもしれない。そういう理由もあるけれど、なにより。
「これはあなたたちの決断。わたしは機会を作ったよ。だから、あとは──頑張れ、かな」
もしかしたら、クリュティエ(kz0280)の思考とはそういうものなのかもしれない。
彼女は今、リゼリオにいた。
リゼリオ、ハンターズソサエティ前。ハンターたちの本拠地の建物前である。
今日は雨だった。
傘を叩く雨粒の音が、それ以外の音をかき消して思考に没頭させてくれる。自分の呼吸の音とか、心臓の音とか、そんなものも雨音に埋もれてしまうのだが、歪虚たるクリュティエにそれらの生体音はないのだろう。
彼女は、あのオフィスの扉からハンターたちが出てくるのを待っていた。
経緯を語るには、少し時間を遡る。
●死体に花は咲くのだろうか
「彼らは邪神の討伐を選んだの」
黙示騎士の居城たるサルヴァトーレ・ネロの展望室でバニティーが発した言葉に、クリュティエの胸はひやりと凍りついた。
「どう、して……?」
声が震えていた。平静を装うように努めても、どうにもうまくいかなかった。
「それはハンターにしかわからないよ」
バニティーは窓の向こうの星々を眺めながら、クリュティエと目を合わせずに言う。
「もし、気になるのなら……ハンターと直接話して答えを聞く以外ないんじゃないかな」
淡々と、バニティーは言う。
「ハンターズソサエティはリゼリオにある。そこに行けば確実にハンターと話せると思うよ」
「でも……、負のマテリアルの影響はどうする? リゼリオは都市だ。無用な混乱を我は招きたくない」
「そこはわたしの虚飾の能力でどうにかしてあげる。2時間くらいは持続するはずだから、その間に話せばいいでしょ? 転移はテセウスに頼めばいい」
「……すまない。我は行ってくる」
「謝ることないよ。きっと、戦いが本格的になってしまえば──挨拶をする時間もないから」
●花が芽吹くには何が必要だろう
かくしてクリュティエは、ハンターたちに会いにやってきた。
無論、彼女はリゼリオの天気など知らないし傘など持っていない。傘を買う金銭もない。けれど、こうして傘で雨を避けているのは、オフィスに努めるまだ少女の面影のある職員が貸してくれたからだ。その職員は丁寧にタオルすら用意していた。雨に濡れたクリュティエに体を拭くことを勧めた。歪虚はきっと風邪をひかないのだけれど、少女の気持ちを無下にはできなかったのでクリュティエは大人しく、髪を拭いて服の水滴を払い、傘を受け取った。タオルを返すと、少女はお辞儀して、小走りにオフィスまで戻って行った。
その少女の背中を見ながらクリュティエは思った。
「ああ──、奪うのはなんて嫌なことだろう」
邪神討伐をハンターが決めた以上、この先には苛烈な戦いが待っている。それはクリュティエもわかっているし、ハンターだってそうだろう。
クリュティエだってわかっている。ハンターは考えなしではない。邪神に抵抗することだって、考えた末に決めたことなのだろう。自分たちの世界に多大な被害が出るとわかっていて、決めたことなのだ。その覚悟は生半可なものではないはずだ。だからきっと──話したところで彼らの決定は覆らないだろう。
わかっている。でも、やはり思ってしまう。どうして恭順してくれなかったのか。どうしても恭順の道はないのだろうか、と。
でもきっと、ハンターは『未来』のために討伐の道を選んだのだ。
会ったことのあるハンターたちは『未来』の話をしていた。でもそれがクリュティエにとってはよくわからなかった。
確実にここある『今』ではなく、どうしてまだここにはない『未来』を信じられるのだろう。どうしてそれが希望に溢れたものだと言えるのだろう。
だって、ハンターたちが選ぼうとしている未来は、犠牲の先にしかないじゃないか。それなら、今を続けてもいいじゃないか。
邪神討伐で一体、どれだけの被害が出ることだろう。クリムゾンウェスト、リアルブルー、エバーグリーン。彼らが邪神を倒したのなら、邪神の中に記録されている世界だって犠牲になるのだ。クリムゾンウェストの何倍も、何億倍も、那由多を掛けても足りないような数の人々の願いがあそこには詰まっているのに。
そんな犠牲を積み上げた丘の上で、蒼穹を仰いで大団円のつもりか。
そんな犠牲を積み上げた大地に芽吹く花を、お前たちは美しいと言うのか。
笑えない。全く──全く、笑えない。
そんな花なら実も結ばずに枯れるがいい。そもそも、芽吹くに値しない。咲いた花が美しいから、必要な犠牲だった? 喪失が輝かせるものがあるだと?
結局、見捨てたお前の力不足なだけだろう。犠牲を肯定するな。治らぬ傷を刺青みたいに見せびらかすな。失ったものはどうやったって戻らない。代替えは存在しない。だから、大切なんだろう。だから、大事なんだろう。だから、だから、だから──
「──失うことも、奪うことも辛いじゃないか」
過日の戦闘で、人を斬った感触を思い出して、クリュティエは震えた。感触を上書きするように、傘の持ち手をぎゅっと握った。
「わかっている。……わかっているさ」
それでもわかっていると言い聞かせる。この後に及んで、ハンターの決断は覆らないだろう。クリュティエがどんなに恭順を望んでも、きっと変わりはしない。
だから、今日はゆっくり話す最後の機会なんだ。クリュティエはそう思うことにした。次に会ったら、戦うしかないだろうから。
だって、戦わなければ邪神の中の、数多の世界が、人々が、願いが、消えてしまうのだから。
「わかっている。わかっている……」
──本当に、わかってる?
呪文みたいに呟く言葉は、やはり雨音に散り散りになった。
●枯れた花もある、これから咲く花もある
バニティーはまだ展望室で、クリュティエのいた場所を見つめていた。彼女はハンターの決断に関する大事な部分を意図的に言わなかった。
ファーザーを毒電波から解放し、全宇宙と永遠は無理だけどひとつの宇宙として世界を再誕させること。そして、ハンターたちが黙示騎士を説得し味方にしようとしていることを。
特に後者を言ってしまえばクリュティエは警戒するだろう。ハンターに会いに行くことすらしなかったかもしれない。そういう理由もあるけれど、なにより。
「これはあなたたちの決断。わたしは機会を作ったよ。だから、あとは──頑張れ、かな」
解説
●目的
クリュティエの説得
●クリュティエについて
邪神が「カレンデュラ(kz0262)」のデータをもとに作り出した歪虚。
4本の剣を使って戦い、防御能力に優れ、戦局を見極める頭脳もある。
『犠牲を出しなくない』という考えから、ハンターが邪神に恭順することを望んでいた。だが、ハンターは邪神討伐を選んだことを知って、やや取り乱してリゼリオにやって来た。
『ハンターも生半可な覚悟で決断したわけではない』とわかってはいるつもりだが、やはり邪神に恭順してほしいという思いもあるので、現在のクリュティエは彼女自身が思っているほど平静ではない。今回がハンターとゆっくり話す最後の機会だと思うことにしている。
負のマテリアルはバニティーの虚飾の能力によって影響が抑えられている。市街地にいても問題はないだろう。ただし、効果時間は2時間程度でクリュティエもそれを理解しているので、効果が完全に切れる前に転移により帰還する。
クリュティエが一般人を傷つけることも懸念されているが、彼女の性質上それは考えにくい。もし、抜刀することがあるしたら自己防衛の為だろう。
●場所について
リゼリオ。ハンターズソサエティ(ハンターオフィス本部)前が初期配置。街を歩き回っても良い。
●天気について
雨が降っている。傘はオフィスで貸し出している。人数分ある。プレイングに『傘不要』と書かない限りは、オフィスから借りているという描写になる。
アクセサリや携帯品で傘に類するアイテムが持ち込まれた場合、持ち込みアイテムを優先する。
●注意事項
クリュティエは『ただハンターと話すつもりでいる』。ハンターが黙示騎士たちを説得しようとしていることは『知らない』。
不測の事態に備え高位歪虚たるクリュティエと2人きりになるようなことは控えた方がよいだろう。
クリュティエが関連NPCとして設定されているが、質問には答えない。
クリュティエの説得
●クリュティエについて
邪神が「カレンデュラ(kz0262)」のデータをもとに作り出した歪虚。
4本の剣を使って戦い、防御能力に優れ、戦局を見極める頭脳もある。
『犠牲を出しなくない』という考えから、ハンターが邪神に恭順することを望んでいた。だが、ハンターは邪神討伐を選んだことを知って、やや取り乱してリゼリオにやって来た。
『ハンターも生半可な覚悟で決断したわけではない』とわかってはいるつもりだが、やはり邪神に恭順してほしいという思いもあるので、現在のクリュティエは彼女自身が思っているほど平静ではない。今回がハンターとゆっくり話す最後の機会だと思うことにしている。
負のマテリアルはバニティーの虚飾の能力によって影響が抑えられている。市街地にいても問題はないだろう。ただし、効果時間は2時間程度でクリュティエもそれを理解しているので、効果が完全に切れる前に転移により帰還する。
クリュティエが一般人を傷つけることも懸念されているが、彼女の性質上それは考えにくい。もし、抜刀することがあるしたら自己防衛の為だろう。
●場所について
リゼリオ。ハンターズソサエティ(ハンターオフィス本部)前が初期配置。街を歩き回っても良い。
●天気について
雨が降っている。傘はオフィスで貸し出している。人数分ある。プレイングに『傘不要』と書かない限りは、オフィスから借りているという描写になる。
アクセサリや携帯品で傘に類するアイテムが持ち込まれた場合、持ち込みアイテムを優先する。
●注意事項
クリュティエは『ただハンターと話すつもりでいる』。ハンターが黙示騎士たちを説得しようとしていることは『知らない』。
不測の事態に備え高位歪虚たるクリュティエと2人きりになるようなことは控えた方がよいだろう。
クリュティエが関連NPCとして設定されているが、質問には答えない。
マスターより
こんにちは、あるいはこんばんは。ゆくながです。
【血断】連動、投票結果を受けての説得依頼です。
もし、ここでクリュティエを説得し味方にできれば、ハンター側の被害も減るでしょう。
今回は難しい依頼なので失敗した場合のことも考えておいた方がよいかもしれません。説得できず失敗しても、自分の心情整理をするなど、クリュティエとの間に禍根を残さないことは出来ると思います。
それでは皆様のご参加をお待ちしております。
【血断】連動、投票結果を受けての説得依頼です。
もし、ここでクリュティエを説得し味方にできれば、ハンター側の被害も減るでしょう。
今回は難しい依頼なので失敗した場合のことも考えておいた方がよいかもしれません。説得できず失敗しても、自分の心情整理をするなど、クリュティエとの間に禍根を残さないことは出来ると思います。
それでは皆様のご参加をお待ちしております。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/06/28 10:04
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/06/13 23:54:11 |
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相談卓 紅薔薇(ka4766) 人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2019/06/19 08:49:44 |