ゲスト
(ka0000)
【Serenade】喇叭水仙-04
マスター:愁水

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,300
- 参加人数
- 現在5人 / 3~5人
- サポート
- 現在0人 / 0~1人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- プレイング締切
- 2019/06/30 19:00
- リプレイ完成予定
- 2019/07/14 19:00
オープニング
●
道を拓く為には先ず、歩まねばならない。
**
仄暗い灯りの中を、こつんこつん、と、規則的な音が上っていく。
先へと続く薄墨を何とはなしに仰げば、幻想的な曲線を描く螺旋階段が何処までも待ち受けているようであった。
自然と、胸の内側に溜息が宿る。
思いは、想いは、巡る。
廻っていた。
それは、元の場所に戻ること無く進んでいくのだろうか。
鼻からやるせなさを抜くと、辿り着いた扉のノブに手を掛け、勢いよく押し開けた。途端、夜気が彼――シュヴァルツ(kz0266)の長い髪を梳いていく。ちり、と、心が――いや、目尻が疼いたのは、きっと紫煙を含んだ風の所為だろう。
「よう、一人で月見か?」
カントリー調の外観に、急勾配のカラフルな屋根。
寝静まる空気を見渡せる、広々とした屋上。
アカシアのベンチに腰を掛けている、一人の男性――。
シュヴァルツの気配が近づくと、煙を纏った言葉を返してきたのは、此のアパートに住まう白亜(kz0237)だ。
「……下戸でもなければ月見酒と洒落込めたのだろうがな」
何処か自嘲的に呟く彼の脇には、煙草盆が鎮座している。灰落としを確認せずとも、白亜の香が彼自身の心情を語っていた。
「(気ぃ紛らわす愛用品は、昔から変わらねぇな)」
シュヴァルツは一瞬、眦を歪めるが、小さくかぶりを振ると、白亜の隣にどっかりと腰を落とした。鋳鉄の装飾が施されている背凭れに背中を預け、夜空を仰ぐ。
――あの夜と同じ、瑠璃色に浮かぶ月が見えた。
「俯いてたら、月は見えねぇぜ」
夜の海原へ視線を据えたまま、シュヴァルツは優しく諭すような口調で語りかける。妙に涼しい夜風が、二人の耳許を過ぎていった。
白亜からの返答はない。
只、微動だにしないその様は、独りぼっちで世界の端に取り残されているかのようだ。
「黒亜の経過は良好だぜ。紅亜の精神状態も少しずつ回復してる」
梳き上げていない前髪が宵の風に揺れ、翳を差していた白亜の双眸が僅かに垣間見える。虚ろなその色は緩慢な瞬きを一つすると、「そうか」と、吐息を漏らした。
指に挟んだ煙管から、物言わぬ紫煙が立ち上っていく。
苦い香り。
苦い記憶――。
互いに覚悟はしていた。
悟っていたことだ。
互いに信念の変動はない。――いや、そう決め込んでしまっていたのか。
だが、
「……今となっては過去に埋もれた真実か」
世迷い言のように呟く白亜。
シュヴァルツは耳に届かなかったふりをしながら顎を引くと――
「ここいらでちょい、羽休めに行かねぇか?」
平素の調子を崩さず、一つの提案を発した。
「実はコネのある旅館があってよ。小ぢんまりしたとこではあるんだが、海が一望できるえぇ所なんだわ。かいつまんだ事情を話したら、厚意で貸し切りにしてくれるっつってよ。お前も黒亜達も最近、息抜けてなかったろ」
心身を休めるには――と言いかけ、シュヴァルツは唇を引く。代わりに、筋張った掌を白亜の肩にぽんと置き、
「なあ、白亜。正しい道は一つじゃねぇぜ。どの道にも、お前が望む幸福は必ずある」
そう告げた。そして、彼の肩を軽く二度弾くと、颯爽と屋上を後にした。
残された香り。
「…………正しい道、か」
遺された記憶。
「君が“幸せ”になる為に俺がやったことは、無駄なことではなかったのだよな……?」
胸元から取り出した琥珀のブローチを掌へ沈め、茫と見上げた瑠璃の瞳に月が映る。
月は、“彼”は、何も語らない。
唯、穏やかに白亜を見下ろしていた。
道を拓く為には先ず、歩まねばならない。
**
仄暗い灯りの中を、こつんこつん、と、規則的な音が上っていく。
先へと続く薄墨を何とはなしに仰げば、幻想的な曲線を描く螺旋階段が何処までも待ち受けているようであった。
自然と、胸の内側に溜息が宿る。
思いは、想いは、巡る。
廻っていた。
それは、元の場所に戻ること無く進んでいくのだろうか。
鼻からやるせなさを抜くと、辿り着いた扉のノブに手を掛け、勢いよく押し開けた。途端、夜気が彼――シュヴァルツ(kz0266)の長い髪を梳いていく。ちり、と、心が――いや、目尻が疼いたのは、きっと紫煙を含んだ風の所為だろう。
「よう、一人で月見か?」
カントリー調の外観に、急勾配のカラフルな屋根。
寝静まる空気を見渡せる、広々とした屋上。
アカシアのベンチに腰を掛けている、一人の男性――。
シュヴァルツの気配が近づくと、煙を纏った言葉を返してきたのは、此のアパートに住まう白亜(kz0237)だ。
「……下戸でもなければ月見酒と洒落込めたのだろうがな」
何処か自嘲的に呟く彼の脇には、煙草盆が鎮座している。灰落としを確認せずとも、白亜の香が彼自身の心情を語っていた。
「(気ぃ紛らわす愛用品は、昔から変わらねぇな)」
シュヴァルツは一瞬、眦を歪めるが、小さくかぶりを振ると、白亜の隣にどっかりと腰を落とした。鋳鉄の装飾が施されている背凭れに背中を預け、夜空を仰ぐ。
――あの夜と同じ、瑠璃色に浮かぶ月が見えた。
「俯いてたら、月は見えねぇぜ」
夜の海原へ視線を据えたまま、シュヴァルツは優しく諭すような口調で語りかける。妙に涼しい夜風が、二人の耳許を過ぎていった。
白亜からの返答はない。
只、微動だにしないその様は、独りぼっちで世界の端に取り残されているかのようだ。
「黒亜の経過は良好だぜ。紅亜の精神状態も少しずつ回復してる」
梳き上げていない前髪が宵の風に揺れ、翳を差していた白亜の双眸が僅かに垣間見える。虚ろなその色は緩慢な瞬きを一つすると、「そうか」と、吐息を漏らした。
指に挟んだ煙管から、物言わぬ紫煙が立ち上っていく。
苦い香り。
苦い記憶――。
互いに覚悟はしていた。
悟っていたことだ。
互いに信念の変動はない。――いや、そう決め込んでしまっていたのか。
だが、
「……今となっては過去に埋もれた真実か」
世迷い言のように呟く白亜。
シュヴァルツは耳に届かなかったふりをしながら顎を引くと――
「ここいらでちょい、羽休めに行かねぇか?」
平素の調子を崩さず、一つの提案を発した。
「実はコネのある旅館があってよ。小ぢんまりしたとこではあるんだが、海が一望できるえぇ所なんだわ。かいつまんだ事情を話したら、厚意で貸し切りにしてくれるっつってよ。お前も黒亜達も最近、息抜けてなかったろ」
心身を休めるには――と言いかけ、シュヴァルツは唇を引く。代わりに、筋張った掌を白亜の肩にぽんと置き、
「なあ、白亜。正しい道は一つじゃねぇぜ。どの道にも、お前が望む幸福は必ずある」
そう告げた。そして、彼の肩を軽く二度弾くと、颯爽と屋上を後にした。
残された香り。
「…………正しい道、か」
遺された記憶。
「君が“幸せ”になる為に俺がやったことは、無駄なことではなかったのだよな……?」
胸元から取り出した琥珀のブローチを掌へ沈め、茫と見上げた瑠璃の瞳に月が映る。
月は、“彼”は、何も語らない。
唯、穏やかに白亜を見下ろしていた。
解説
《目的》
・名目は一泊二日の慰安旅行。
どう過ごすかはあなた次第。
OPから一週間後。
正午前には宿に到着している。
《海辺の御宿『夏衣』》
・場所は海辺に佇む、和の様式美を極めた老舗宿。
・客室は和室。
寝具は敷き布団タイプ。
宿は貸し切りな為、一人一部屋でも、一部屋に数人でも可。
男部屋は、白亜+黒亜、琉架+シュヴァルツに分かれている。紅亜は現時点では一人部屋の予定。
・料理は海の幸と山の幸を使った上品な懐石料理。
・露天風呂は海が一望出来る。混浴は無い為男女別だが、隣接している。
・宿には小さな庭園があり、鮮やかな緑や池の中を泳ぐ鯉、季節の花が咲いている。
・女将はシュヴァルツの友人。
《その他》
・海水浴が可能。
・宿の周辺には神社やお土産店、石塀の小路にカフェなどがある。
《NPC》
白亜:
兄として、団長としての役割は熟しているものの、上の空なことが多い。
煙管を吸う頻度が増えている。
又、必要以上の他人との接触を無意識に避けている。
黒亜:
完治して間もない。主治医のシュヴァルツに無理はすんなと言われているが、聞く気はない。
妹との蟠りはない様子。
紅亜:
精神状態にややムラはあるが、今在る現実から目を背けず、自分なりに受け止めようと努力している。
桜久世 琉架:
相変わらずの平常運転。しかし、一連の出来事に思うことがないわけでもない。
シュヴァルツ:
気の利く傍観者。
※詰め込み過ぎに注意。
※質問はシュヴァルツが回答。
・名目は一泊二日の慰安旅行。
どう過ごすかはあなた次第。
OPから一週間後。
正午前には宿に到着している。
《海辺の御宿『夏衣』》
・場所は海辺に佇む、和の様式美を極めた老舗宿。
・客室は和室。
寝具は敷き布団タイプ。
宿は貸し切りな為、一人一部屋でも、一部屋に数人でも可。
男部屋は、白亜+黒亜、琉架+シュヴァルツに分かれている。紅亜は現時点では一人部屋の予定。
・料理は海の幸と山の幸を使った上品な懐石料理。
・露天風呂は海が一望出来る。混浴は無い為男女別だが、隣接している。
・宿には小さな庭園があり、鮮やかな緑や池の中を泳ぐ鯉、季節の花が咲いている。
・女将はシュヴァルツの友人。
《その他》
・海水浴が可能。
・宿の周辺には神社やお土産店、石塀の小路にカフェなどがある。
《NPC》
白亜:
兄として、団長としての役割は熟しているものの、上の空なことが多い。
煙管を吸う頻度が増えている。
又、必要以上の他人との接触を無意識に避けている。
黒亜:
完治して間もない。主治医のシュヴァルツに無理はすんなと言われているが、聞く気はない。
妹との蟠りはない様子。
紅亜:
精神状態にややムラはあるが、今在る現実から目を背けず、自分なりに受け止めようと努力している。
桜久世 琉架:
相変わらずの平常運転。しかし、一連の出来事に思うことがないわけでもない。
シュヴァルツ:
気の利く傍観者。
※詰め込み過ぎに注意。
※質問はシュヴァルツが回答。
マスターより
「……道草の途中にも、小さな幸せが落ちているだろうか」
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/07/13 02:19
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/06/24 23:35:54 |
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夏の衣を携えて(相談卓) ミア(ka7035) 鬼|22才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2019/06/28 23:55:05 |