ゲスト
(ka0000)
隻腕の青年
マスター:DoLLer

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/08/28 15:00
- リプレイ完成予定
- 2019/09/11 15:00
オープニング
震える羽ペン。
そこから生まれる筆跡は、力加減もままならず、滲みとガタガタに揺れる文字はひどく読みにくい。それがたとえ自分の名前であろうとも。彼は目を細めて、その文字に集中し続ける。
そして次の瞬間には、羽ペンが少しでも綺麗な字にしようと、込められる指先の力に負けて折れ曲がった。
彼の机には同じ運命をたどった羽ペンが散らばっていた。
「意外と難しいものだね……」
さっさと慣れてしまわないといけないのだが、慣れにはどうしても時間がいる。
その時間とは積み重ねによって起きるものだから、ただ待っているわけにもいかない。だからこうしていそしんでいるのだが……。
彼は悩んだことはあまりなかった。言われれば大抵のことは理解したし、やれと言われたことは一度見れば大体の事は実践できた。もちろん練習もしたし、勉強もした。それをするにしても、自分が何が足りていないか理解していたし、何をどう訓練すれば成果を得られるかも見えていた。
だけど今は。
「兄様っ」
少しの思案を吹き飛ばすような、急き込んだ女の声が飛び込んできた。見れば帝国庶民議員に選出されたクリームヒルト・モンドシャッテがそこにいるではないか。クリームヒルトは彼の姿を見て、一瞬の安堵の後、瞳孔が急激に絞られていくのが見えた。
「兄様……」
「やあクリームヒルト。元気そうで何よりだ」
兄様と呼ばれた彼は、いつも通りに笑って、それから左の手で最高級のアールグレイに満たされたティーカップに指をかけ……ようとして空を切り、二度目にしてようやくカップをつまむことができた。
慣れていないのは誰の目にも明らかだった。持ち上げた微かにティーカップの水面がわななき立つ。
「利き腕……無くしたの、本当だったのね。視力も……」
「まあ、この程度で済んだから上等さ」
サーコートに隠したままの右腕は今日は一日も姿を見せていない。
これからも見せる事はない。炭化して、神経が戻らなくなったそいつはゴミ箱に捨ててきたのだから。
「誰かさんの命に比べれば軽いものだよ。不便ではあるけどね。まあ助けるくれる人がいるから、本当のところは大して困っていないよ。お遊びみたいなものさ」
シグルドは軽く微笑みを浮かべて、そのままティーカップに口を付けた。
いつもの上品さはそこにはなく、やはりどこか不格好であるのはクリームヒルトには見て取れた。クリームヒルトだから、あえて見せてくれたのだろうか。
「何かお手伝いできることはある?」
「そうだね。まだ暴食王ハヴァマールは健在だし、直接対決しなくとも、決戦する時はこちらも多少なりとも荒れるだろうから、それまでに何とかしたい」
「……義手の作成をお願いしてくるわ。錬魔院に武器開発をしていた知り合いがいるの」
●
「というわけで、義手をどんな風にするかよ。兄様の得意武器であるアーテムコッドは両手で使わないといけないほど長大だから、義手ではもう使えないかもしれないわ。くっつけちゃってもいいと思うし、むしろ銃器の方が夢があるかもしれない。綺麗な腕にしてあげたい気持ちもあるのよ」
クリームヒルトの言葉に、特別顧問として呼び出された錬魔院所属の研究者レギンはため息をついた。
「玩具かよ……腕に得物くっつける程度ならすぐ済むけどよ。神経につないで本物の腕同様にするって言うんなら、リアルブルーの技術でも転用できるかどうか。できたとしても調整だけでかなりの時間を食っちまうぜ? 副師団長ご希望のハヴァマールをなんとかしようっていう時期にはとても間に合わないと思うけどね」
「錬魔院に何かないの」
「俺を殺す気か」
クリームヒルトの無邪気な質問に、レギンはぞっとした。錬魔院では日々様々な実験が行われている。非人道的なものはほとんど排除されてはいるが、門外不出の、簡単に言えば触れてはならないものも山ほどある。そんなものを嗅ぎまわったら、それこそシグルドの腕ではなく、自分の命が危うい。
「…… ……」
「その目で見るのは止めてくれ」
じっと見つめられるのを忌避するようにしてレギンはクリームヒルトに軽く手を振って追い払ったが、クリームヒルトは止めようとはしなかった。
「方法あるのね? 少しだけなら政治方面から声かけてみるから」
「あああーーーー!!! もう、そんな無茶すんなっての!!」
彼女が止めてどうなる人間ではないことはレギンはよく知っていた。
「錬魔院に貸しなんか作るもんじゃねぇぞ……ったく、当たれるところは当たるよ。そっちはどんな腕にするか考えといてくれ。ハンターなら歪虚と戦った経験も多いから、使いやすそうな腕とか考えつくだろ」
レギンはため息をついて、とぼとぼと部屋を出て行った。
そこから生まれる筆跡は、力加減もままならず、滲みとガタガタに揺れる文字はひどく読みにくい。それがたとえ自分の名前であろうとも。彼は目を細めて、その文字に集中し続ける。
そして次の瞬間には、羽ペンが少しでも綺麗な字にしようと、込められる指先の力に負けて折れ曲がった。
彼の机には同じ運命をたどった羽ペンが散らばっていた。
「意外と難しいものだね……」
さっさと慣れてしまわないといけないのだが、慣れにはどうしても時間がいる。
その時間とは積み重ねによって起きるものだから、ただ待っているわけにもいかない。だからこうしていそしんでいるのだが……。
彼は悩んだことはあまりなかった。言われれば大抵のことは理解したし、やれと言われたことは一度見れば大体の事は実践できた。もちろん練習もしたし、勉強もした。それをするにしても、自分が何が足りていないか理解していたし、何をどう訓練すれば成果を得られるかも見えていた。
だけど今は。
「兄様っ」
少しの思案を吹き飛ばすような、急き込んだ女の声が飛び込んできた。見れば帝国庶民議員に選出されたクリームヒルト・モンドシャッテがそこにいるではないか。クリームヒルトは彼の姿を見て、一瞬の安堵の後、瞳孔が急激に絞られていくのが見えた。
「兄様……」
「やあクリームヒルト。元気そうで何よりだ」
兄様と呼ばれた彼は、いつも通りに笑って、それから左の手で最高級のアールグレイに満たされたティーカップに指をかけ……ようとして空を切り、二度目にしてようやくカップをつまむことができた。
慣れていないのは誰の目にも明らかだった。持ち上げた微かにティーカップの水面がわななき立つ。
「利き腕……無くしたの、本当だったのね。視力も……」
「まあ、この程度で済んだから上等さ」
サーコートに隠したままの右腕は今日は一日も姿を見せていない。
これからも見せる事はない。炭化して、神経が戻らなくなったそいつはゴミ箱に捨ててきたのだから。
「誰かさんの命に比べれば軽いものだよ。不便ではあるけどね。まあ助けるくれる人がいるから、本当のところは大して困っていないよ。お遊びみたいなものさ」
シグルドは軽く微笑みを浮かべて、そのままティーカップに口を付けた。
いつもの上品さはそこにはなく、やはりどこか不格好であるのはクリームヒルトには見て取れた。クリームヒルトだから、あえて見せてくれたのだろうか。
「何かお手伝いできることはある?」
「そうだね。まだ暴食王ハヴァマールは健在だし、直接対決しなくとも、決戦する時はこちらも多少なりとも荒れるだろうから、それまでに何とかしたい」
「……義手の作成をお願いしてくるわ。錬魔院に武器開発をしていた知り合いがいるの」
●
「というわけで、義手をどんな風にするかよ。兄様の得意武器であるアーテムコッドは両手で使わないといけないほど長大だから、義手ではもう使えないかもしれないわ。くっつけちゃってもいいと思うし、むしろ銃器の方が夢があるかもしれない。綺麗な腕にしてあげたい気持ちもあるのよ」
クリームヒルトの言葉に、特別顧問として呼び出された錬魔院所属の研究者レギンはため息をついた。
「玩具かよ……腕に得物くっつける程度ならすぐ済むけどよ。神経につないで本物の腕同様にするって言うんなら、リアルブルーの技術でも転用できるかどうか。できたとしても調整だけでかなりの時間を食っちまうぜ? 副師団長ご希望のハヴァマールをなんとかしようっていう時期にはとても間に合わないと思うけどね」
「錬魔院に何かないの」
「俺を殺す気か」
クリームヒルトの無邪気な質問に、レギンはぞっとした。錬魔院では日々様々な実験が行われている。非人道的なものはほとんど排除されてはいるが、門外不出の、簡単に言えば触れてはならないものも山ほどある。そんなものを嗅ぎまわったら、それこそシグルドの腕ではなく、自分の命が危うい。
「…… ……」
「その目で見るのは止めてくれ」
じっと見つめられるのを忌避するようにしてレギンはクリームヒルトに軽く手を振って追い払ったが、クリームヒルトは止めようとはしなかった。
「方法あるのね? 少しだけなら政治方面から声かけてみるから」
「あああーーーー!!! もう、そんな無茶すんなっての!!」
彼女が止めてどうなる人間ではないことはレギンはよく知っていた。
「錬魔院に貸しなんか作るもんじゃねぇぞ……ったく、当たれるところは当たるよ。そっちはどんな腕にするか考えといてくれ。ハンターなら歪虚と戦った経験も多いから、使いやすそうな腕とか考えつくだろ」
レギンはため息をついて、とぼとぼと部屋を出て行った。
解説
先の大戦で、第一師団副師団長のシグルドは利き腕を損傷し、肩より下の部分を切断しました。
この腕にどんな義手を作るかアイデアを出し、また形にすることが参加者の役割になります。
●人物
シグルド
義手を付けることになった本人。覚醒者・闘狩人
希望はとくになし。参加者の意見ならきっといい物ができるだろうから期待している。とのことです。
あまり気にしていないように見せていますが、視力もかなり低下しています。(が、気配を察知して動くのでさほど問題はないようです)
性格は飄々としているのですが、さすがにちょっと困っているようです
質実剛健な帝国の中で、優雅を楽しむ人間です。毎日節制したところで経済は回らないし、リーダーがまずい飯で我慢していたら下々も我慢するしかないんだから、普段からいいもの食べよう。という彼なりの考えによるものです。
他
クリームヒルトが依頼人
サポートとしてレギンという錬魔院の研究員が出てくれます。
質問がある場合は質問卓を立ててください。
不定期ですが、できるだけお答えいたします。
●目的と行動
義手のアイデアを出す。アイデアに必要な技術や情報を集める。実際に作る
●成功度の判定
シグルドが使いやすいと感じたなら成功です。
本人の予想の斜め上をいくアイデアとそれを実現する補足があれば大成功となります。
この腕にどんな義手を作るかアイデアを出し、また形にすることが参加者の役割になります。
●人物
シグルド
義手を付けることになった本人。覚醒者・闘狩人
希望はとくになし。参加者の意見ならきっといい物ができるだろうから期待している。とのことです。
あまり気にしていないように見せていますが、視力もかなり低下しています。(が、気配を察知して動くのでさほど問題はないようです)
性格は飄々としているのですが、さすがにちょっと困っているようです
質実剛健な帝国の中で、優雅を楽しむ人間です。毎日節制したところで経済は回らないし、リーダーがまずい飯で我慢していたら下々も我慢するしかないんだから、普段からいいもの食べよう。という彼なりの考えによるものです。
他
クリームヒルトが依頼人
サポートとしてレギンという錬魔院の研究員が出てくれます。
質問がある場合は質問卓を立ててください。
不定期ですが、できるだけお答えいたします。
●目的と行動
義手のアイデアを出す。アイデアに必要な技術や情報を集める。実際に作る
●成功度の判定
シグルドが使いやすいと感じたなら成功です。
本人の予想の斜め上をいくアイデアとそれを実現する補足があれば大成功となります。
マスターより
戦後処理その1です。あとアミィと、死亡者についてシナリオを出す予定にしています。
さて、彼の利き腕はどんなになるのでしょうか。
真面目に書いてますが、絶対楽しそうな外見になりそうでワクワクしています。
さて、彼の利き腕はどんなになるのでしょうか。
真面目に書いてますが、絶対楽しそうな外見になりそうでワクワクしています。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/09/04 12:42
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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贈り物を考えよう アーシュラ・クリオール(ka0226) 人間(リアルブルー)|22才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2019/08/28 02:48:08 |
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【質問卓】義手仕様検討卓 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2019/08/28 13:01:40 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/08/23 21:30:09 |