ゲスト
(ka0000)
【未来】Tomorrow and...
マスター:ムジカ・トラス

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在33人 / 1~50人
- ユニット参加人数
- 現在20 / 0~50
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 8日
- プレイング締切
- 2019/10/27 19:00
- リプレイ完成予定
- 2019/11/10 19:00
オープニング
●
蕭々と草原を撫でていった風が、小高い丘にぶつかり、吹き上がっていく。
その先で、ふわりと浮き上がりそうになる帽子をおさえ、男が笑った。男は車椅子に座っていた。背後には、女が一人。
「――最後に、これが見たかったんだよねえ」
王都を見下ろしながら、男は笑みを深めた。もともと色素の薄かった髪は白髪へと染まり、その肌にも柔らかな皺が刻まれている。
眼下に広がる光景を、両の目に焼き付ける。夜闇のかんばせが薄く白んで青を描き、地平線の先に橙色が滲み始める。
夜明けの光景だった。
美しい、春の夜明け。
「ごめんね、どうしても目が覚めちゃったんだ。君には無理ばかり押し付けちゃうけど」
「……別に、いい。ボクは貴方と違って元気。大口のパトロンだし。少しくらいのワガママは聞いてもいい」
「それは良い」
くつくつと笑う男は、司祭――エクラ教の役職としては下位にあたる――の装束を身にまとっていた。黒色のカソック。しいて言えば生地が上質な程度で、かつてセドリック・マクファーソン(kz0026)が着ていたような豪奢な装飾はない。男が病と世継の不在を理由に貴族の身を退いて聖堂教会に属するようになってから長い。位階には責務が伴うという理由と、かつての遺恨を仄めかして聖職者としては下位に名を連ねることになったが、勤労に励むことはなく、一向にその役職があがることもなかった。彼が興した商会では精力的に活動していたようではあるのだが、ともあれ、その転身には政治的な手打ちという見方が強い。
それでも、彼はそのカソックを身にまとい続け、ここにいる。
車椅子に身を沈めている彼は介護者を必要としていた。それが、応じた声の主、エステル・マジェスティである。騒がしいパルムの相棒は不在だった。かつての少女はすでに成熟した女性となっていたが、野暮ったいローブに身を包み、男と同じ光景を眺めている。
「……勝手だけど、さ。似ていると思っていたんだ。"君"のこと。目的のために手段を選ばないところとかさ」
遠くを見つめ、言葉を落とす。ここではない何処かに在る、塔にむけて。
「君と違って、僕にはお膳立てぐらいしかできなかったけれど……それでも、運命に抗うことはできたと思うよ」
眼前に広がる黄金の夜明けに祈りを捧げるように、黙祷。
そして。
「……いろんなもの、を……犠牲に、した、けど、さ……」
言葉のひとひらをすくい上げるように、風が吹き上がった。
王国歴1050年4月。
ヘクス・シャルシェレット(kz0015)は静かにその生に幕をおろした。
●
「……というわけで。仕事が残ってる」
「ふむ!」
エステル・マジェスティは作家である。傍らのパルム、イェスパーは五月蝿いだけのパルムだ。役には立たない。
年の頃も四十に入ったエステルであったが、フィールドワーク中心の生活のためか、三十路に入ったところにみえる、活力的な美女、といった外見であった。
背丈はかつてよりもずいぶんと伸び、165cm程度。伸長相応にすらりと伸びた手足は、すっぽりとローブに包まれており、いささか野暮ったい。長く伸びた赤毛はかるく結い上げている。
ヘルメス情報局での彼女の記事はそれなりに好評を博しており、書籍化されたものも少なくない。
特に、ハンター達の活動を記した記事は時節から熱狂的に支持され、資料的価値も手伝い、ひと財産を彼女のもとにもたらした。
彼女はその財産を第六商会に預けながら活動を続けていたが――ヘクス・シャルシェレットから呼び出しを受けたのは約25年前、王国歴1025年のことだ。
曰く、記事を書いてくれないかとのことだった。提示された報酬はただの取材と比べたら桁が6つほど多い。下手な貴族の総資産ほどの額とともに、ヘクスは何百人かの一般人と、「それから、ハンターたち。何人でもいい。多ければ多いほうがいいね」と添えた。
いつまで、と聞いた。「君が死ぬまでに。できれば、死後も続くといいねえ」と言う。
無茶苦茶だ……とは、思わなかった。
それなりに付き合いもあった。何のためにヘクスがそれを望んでいるかは良くわかった。
取材には一定の対価が生じる。エステル――あるいはその後継となる者はそのための窓口であり、同時に、ヘクスにとっては誰かたちに向けた支援の一環となる、ということだろう。
彼女はそれを引き受け、以来、活動を続けている。弔いもそこそこに、彼女は遺志を果たさんと今日も歩く。
「ん。次はリゼリオに行く」
幸いというべきか、アポイントメントはある。書くべきことも、また。
●序文
敬愛なる読者諸君。これなるは、数多の個々人の物語だ。
歴史の中に沈み、あるいは綺羅星の如く瞬いた一時の断片だ。
事実とは筆者らは言うまい。
空想とも筆者らは語るまい。
これらは記録である前に、記事である。
断片的記事の集体が、この書籍――失敬、正しくはアーカイブである。
神霊樹に頼ることなく、この形を選んだことを、鑑みていただきたい。
多少の嘘も許容した方が読み物として相応しかろうと我々は愚考する。
彼らの生涯の断片が、貴方がたにもたらすものを筆者らは約束しかねる。
なぜならこれは、ある一人の男の、私的な試みに過ぎないからだ。
はるか【未来】に残したい。語り継ぐべき物語のはずだ、と。
その想いだけで蒐集された断片に過ぎないからだ。
これは、未来を望んだ者たちの物語。
明日を求め、運命に抗い、道を拓いた者たちの、終わることのない事後譚だ。
――どうか、心ゆくまで、お楽しみ願いたい。
蕭々と草原を撫でていった風が、小高い丘にぶつかり、吹き上がっていく。
その先で、ふわりと浮き上がりそうになる帽子をおさえ、男が笑った。男は車椅子に座っていた。背後には、女が一人。
「――最後に、これが見たかったんだよねえ」
王都を見下ろしながら、男は笑みを深めた。もともと色素の薄かった髪は白髪へと染まり、その肌にも柔らかな皺が刻まれている。
眼下に広がる光景を、両の目に焼き付ける。夜闇のかんばせが薄く白んで青を描き、地平線の先に橙色が滲み始める。
夜明けの光景だった。
美しい、春の夜明け。
「ごめんね、どうしても目が覚めちゃったんだ。君には無理ばかり押し付けちゃうけど」
「……別に、いい。ボクは貴方と違って元気。大口のパトロンだし。少しくらいのワガママは聞いてもいい」
「それは良い」
くつくつと笑う男は、司祭――エクラ教の役職としては下位にあたる――の装束を身にまとっていた。黒色のカソック。しいて言えば生地が上質な程度で、かつてセドリック・マクファーソン(kz0026)が着ていたような豪奢な装飾はない。男が病と世継の不在を理由に貴族の身を退いて聖堂教会に属するようになってから長い。位階には責務が伴うという理由と、かつての遺恨を仄めかして聖職者としては下位に名を連ねることになったが、勤労に励むことはなく、一向にその役職があがることもなかった。彼が興した商会では精力的に活動していたようではあるのだが、ともあれ、その転身には政治的な手打ちという見方が強い。
それでも、彼はそのカソックを身にまとい続け、ここにいる。
車椅子に身を沈めている彼は介護者を必要としていた。それが、応じた声の主、エステル・マジェスティである。騒がしいパルムの相棒は不在だった。かつての少女はすでに成熟した女性となっていたが、野暮ったいローブに身を包み、男と同じ光景を眺めている。
「……勝手だけど、さ。似ていると思っていたんだ。"君"のこと。目的のために手段を選ばないところとかさ」
遠くを見つめ、言葉を落とす。ここではない何処かに在る、塔にむけて。
「君と違って、僕にはお膳立てぐらいしかできなかったけれど……それでも、運命に抗うことはできたと思うよ」
眼前に広がる黄金の夜明けに祈りを捧げるように、黙祷。
そして。
「……いろんなもの、を……犠牲に、した、けど、さ……」
言葉のひとひらをすくい上げるように、風が吹き上がった。
王国歴1050年4月。
ヘクス・シャルシェレット(kz0015)は静かにその生に幕をおろした。
●
「……というわけで。仕事が残ってる」
「ふむ!」
エステル・マジェスティは作家である。傍らのパルム、イェスパーは五月蝿いだけのパルムだ。役には立たない。
年の頃も四十に入ったエステルであったが、フィールドワーク中心の生活のためか、三十路に入ったところにみえる、活力的な美女、といった外見であった。
背丈はかつてよりもずいぶんと伸び、165cm程度。伸長相応にすらりと伸びた手足は、すっぽりとローブに包まれており、いささか野暮ったい。長く伸びた赤毛はかるく結い上げている。
ヘルメス情報局での彼女の記事はそれなりに好評を博しており、書籍化されたものも少なくない。
特に、ハンター達の活動を記した記事は時節から熱狂的に支持され、資料的価値も手伝い、ひと財産を彼女のもとにもたらした。
彼女はその財産を第六商会に預けながら活動を続けていたが――ヘクス・シャルシェレットから呼び出しを受けたのは約25年前、王国歴1025年のことだ。
曰く、記事を書いてくれないかとのことだった。提示された報酬はただの取材と比べたら桁が6つほど多い。下手な貴族の総資産ほどの額とともに、ヘクスは何百人かの一般人と、「それから、ハンターたち。何人でもいい。多ければ多いほうがいいね」と添えた。
いつまで、と聞いた。「君が死ぬまでに。できれば、死後も続くといいねえ」と言う。
無茶苦茶だ……とは、思わなかった。
それなりに付き合いもあった。何のためにヘクスがそれを望んでいるかは良くわかった。
取材には一定の対価が生じる。エステル――あるいはその後継となる者はそのための窓口であり、同時に、ヘクスにとっては誰かたちに向けた支援の一環となる、ということだろう。
彼女はそれを引き受け、以来、活動を続けている。弔いもそこそこに、彼女は遺志を果たさんと今日も歩く。
「ん。次はリゼリオに行く」
幸いというべきか、アポイントメントはある。書くべきことも、また。
●序文
敬愛なる読者諸君。これなるは、数多の個々人の物語だ。
歴史の中に沈み、あるいは綺羅星の如く瞬いた一時の断片だ。
事実とは筆者らは言うまい。
空想とも筆者らは語るまい。
これらは記録である前に、記事である。
断片的記事の集体が、この書籍――失敬、正しくはアーカイブである。
神霊樹に頼ることなく、この形を選んだことを、鑑みていただきたい。
多少の嘘も許容した方が読み物として相応しかろうと我々は愚考する。
彼らの生涯の断片が、貴方がたにもたらすものを筆者らは約束しかねる。
なぜならこれは、ある一人の男の、私的な試みに過ぎないからだ。
はるか【未来】に残したい。語り継ぐべき物語のはずだ、と。
その想いだけで蒐集された断片に過ぎないからだ。
これは、未来を望んだ者たちの物語。
明日を求め、運命に抗い、道を拓いた者たちの、終わることのない事後譚だ。
――どうか、心ゆくまで、お楽しみ願いたい。
解説
●目的
取材に応じてください。
●解説
このシナリオは、以下のような形でリプレイが書かれます。
1.時系列、年代記
or
2.インタビューシーン
or
3.該当のPC同士、NPCとの交流シーン
いずれにおいても「偽り」が混じっても構いません。
▼1.時系列、年代記
いわゆる人物史。現在【未来】の特設ページに記載されているような年表・年代史です。
描写量は最も少なく、メインの描写の前段、後段的に用いることを想定しています。
▼2.インタビューシーン
エステルあるいはその後継者に対して、本人やその関係者が語っているシーンです。
1025年以降の描写になります。
▼3.該当のPC同士、NPCとの交流リプレイ
PC、あるいは王国関係のNPC、施設、組織などに関しての交流シーンです。
PCについてはお誘い合わせ/相談の上で参加ください。
ムジカが担当していないNPCについては都度相談が必要となるため描写はお約束できません。
また、NPCに対する確定RPはできませんが、最大限イイ感じにはしたい(願望)。
●プレイングについて
最大2回まで描写機会あり(描写量は分散されますので、どちらかに重点をおくことをオススメします)
作業管理上、以下の書き方をしていただけると非常に助かります。
また、プレイングシート以外に参考にするべき内容がある場合、シナリオ名など記載ください。
PC、NPCの指定については、プレイング内にIDもしくはお名前をわかる形で記載ください。
【●●年●●月】(不明でも可)
描写:1
以下、プレイング
【▼▼年▼▼月】
描写:3
以下、プレイング
●その他注意点
このシナリオは他の【未来】リプレイを否定するものではありません。
NPCのその後など、質疑応答については適宜質問卓を通じてお願いします。
回答に時間を要するものもあるため、回答が間に合わない可能性があること、ご了解くださいませ。
取材に応じてください。
●解説
このシナリオは、以下のような形でリプレイが書かれます。
1.時系列、年代記
or
2.インタビューシーン
or
3.該当のPC同士、NPCとの交流シーン
いずれにおいても「偽り」が混じっても構いません。
▼1.時系列、年代記
いわゆる人物史。現在【未来】の特設ページに記載されているような年表・年代史です。
描写量は最も少なく、メインの描写の前段、後段的に用いることを想定しています。
▼2.インタビューシーン
エステルあるいはその後継者に対して、本人やその関係者が語っているシーンです。
1025年以降の描写になります。
▼3.該当のPC同士、NPCとの交流リプレイ
PC、あるいは王国関係のNPC、施設、組織などに関しての交流シーンです。
PCについてはお誘い合わせ/相談の上で参加ください。
ムジカが担当していないNPCについては都度相談が必要となるため描写はお約束できません。
また、NPCに対する確定RPはできませんが、最大限イイ感じにはしたい(願望)。
●プレイングについて
最大2回まで描写機会あり(描写量は分散されますので、どちらかに重点をおくことをオススメします)
作業管理上、以下の書き方をしていただけると非常に助かります。
また、プレイングシート以外に参考にするべき内容がある場合、シナリオ名など記載ください。
PC、NPCの指定については、プレイング内にIDもしくはお名前をわかる形で記載ください。
【●●年●●月】(不明でも可)
描写:1
以下、プレイング
【▼▼年▼▼月】
描写:3
以下、プレイング
●その他注意点
このシナリオは他の【未来】リプレイを否定するものではありません。
NPCのその後など、質疑応答については適宜質問卓を通じてお願いします。
回答に時間を要するものもあるため、回答が間に合わない可能性があること、ご了解くださいませ。
マスターより
こんにちは! ムジカ・トラスです。
【未来】タグのシナリオを、ムジカ自身の最後の活動として取り扱わせていただきます。
描写量は膨らむであろうという想定のもとEXにさせていただきました。
プレイングに書ける量にも限界があるかと存じますが、最後に良きリプレイをお届けできるよう最善を尽くしますので、よろしくおねがいします。
(浦島・ムジカ・太郎になっているので、諸般の履修不足についてはご寛恕ください;
最大限努力はしますが、プレイングにそっと資料など添えていただけますと非常に助かります)
【未来】タグのシナリオを、ムジカ自身の最後の活動として取り扱わせていただきます。
描写量は膨らむであろうという想定のもとEXにさせていただきました。
プレイングに書ける量にも限界があるかと存じますが、最後に良きリプレイをお届けできるよう最善を尽くしますので、よろしくおねがいします。
(浦島・ムジカ・太郎になっているので、諸般の履修不足についてはご寛恕ください;
最大限努力はしますが、プレイングにそっと資料など添えていただけますと非常に助かります)
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/11/07 19:45