静かな森の湖畔、鮮やかに花咲き乱れる所に、一軒の家が建っている。
　新しく建てられた赤いレンガに黄色い漆喰、小さな窓枠のついた可愛い家の持ち主は、結婚したばかりの若い夫婦だった。
　ふたりのための新居なのだ。

「どうだいキャリー、とっても素敵だろう？」
「素敵！　トニオ、まるで夢のようだわ！」
「きみは言っていたよね、静かな湖畔の森の影で二人だけの時間を過ごしたいって」
「覚えていてくれたのね！」
「これからの夜は毎日がパラダイスさ！」
「愛してるわトニオ！　貴方はまるで太陽に向かって一直線に伸びる向日葵のよう！」
「キャリー、ならば君は僕の太陽だね」
「いますぐわたしを抱いて！　さあ！」
「勿論だよ、真夏の太陽のように愛し合おギャー？！」
「キャーーーーーーーー！！！」
　そこで壁が破裂。
　男は壁の破片を後頭部に食らって倒れ、女は壁の穴の向こうに巨大な何かを見た……。
「……カタツムリーーー！？」



「……ということがあったのさ……」
　リゼリオの酒場のカウンターで、アントニオはマスター相手に話していた。
　アントニオの話はこうだった。
　青年実業家として成功し、恋人との明るい未来のために建てた新居。
　そこに巨大なカタツムリが壁をぶち破って乱入してきたという。
「そりゃ罰が当たったな」
　少し笑みを浮かべてマスターは返す。
「何だ？　それは。僕は悪い事などしていないぞ」
「成功して美人の嫁さんをもらったお前さんに、世の独身男達の怨みと妬みが、カタツムリの化け物となって襲いかかったのさ」
　アントニオよりずっと年上だが、いまだ独身のマスターは、そう言ってグラスに液体を注いだ。
「失恋の記念に」
　出されたのは、カンパリビアというカクテル。
　失恋した時に飲むカクテルである。
「喜ぶな。別れてなんかいない」
　アントニオはグラスを突き返した。
　確かに別れてはいない。しかし、キャロラインは実家に帰っているし、あのカタツムリをなんとかしない限りはいつか愛想を尽かされてしまうかもしれない。
「でもあんなもの一体どうすればいいんだ……」
　商売の才覚があって顔も良いが腕っぷしはからっきしのアントニオは頭を抱えてカウンターに突っ伏した。
「ま……そいつは多分歪虚だろう。ならハンターにでも依頼するんだな」
　グラスを磨きながらのマスターの言葉に、アントニオは顔を上げて目を輝かせた。

敵詳細
・カタツムリ型雑魔「ハニーイーター」(アントニオ命名)
　特徴……
　カップルがイチャついてると甘い空気を察知して現れる（＊偶然です）。
　カタツムリを全長5mほどまでにそのまま巨大化させた雑魔。
　この巨大な軟体動物の全身はフレキシブルな筋肉の塊であり、骨格にとらわれない自由な動きで攻撃してくる。
　特に巨大な体を持ち上げてからの押しつぶしが脅威。
　また、身体を目一杯伸ばしての薙ぎ払いも注意が必要だ。こちらは２スクエアまで（最大四人）一度に攻撃できる。
　滑るような動きで意外な速さで動く。
　サイズ……サイズ３　全員が前衛に立って攻撃できる。

【特筆事項】ピンチになると殻にこもる。その際は殻の入り口も膜に覆われる。この殻が異常に硬く（入り口を覆う膜も同様）、通常の攻撃では傷を付けることはできない。戦闘用の武器ではなく、破壊に特化した道具・手段を用意することが望ましい。
　一定以上の威力の衝撃を与えれば破壊できる。要は威力の問題である。
　殻を破壊できない限り殺すことは出来ない。
　弱点は殻の内側。殻を壊すことが出来れば、すでにチェックメイトも同然である。
　アイテムショップにない道具も、一般的な品であれば（ハンマーなど機械的・魔法的ではない道具）ハンターズソサエティに言ったらそろえてもらえる。
　なお、塩をかけると身体の水分を奪うことができる。ただし500kg以上の量が必要で、動くことはできなくなるが殺すことは出来ない。
　また湖に沈めるなど、窒息させて倒すことはできない。

戦場
　トニオとキャリーの愛の巣（半壊）
　目標は家の中に陣取っている。
　このまま戦っても構わないが、放って置いても出てこないので、外で戦いたい場合はおびき出す必要があるだろう。
　中で戦った場合、敵がいるスクエアに隣接して戦えるのは４人までで、障害物があるため射撃武器／魔法の射線は通らない可能性がある。
　外には障害物はない。

　坂上テンゼンに御座います。

　なんでカタツムリなんだろう。きっと六月だからですね。ともかくカタツムリの雑魔を退治するためにハンターズソサエティに依頼が舞い込みました。

　倒し方がやや特殊なので、いろいろ考えてみてください。