ゲスト
(ka0000)
赫木の森
マスター:硲銘介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/03/09 09:00
- リプレイ完成予定
- 2015/03/18 09:00
オープニング
●
その日も男は森へ入っていった。
生業である狩りをする為に、猟師である男は獲物を求めて森を歩く。
進む先には途切れぬ木立、頭上を覆うは葉の緑。鳥や動物の鳴き声と気配、それらを孕みつつも広がる静寂。
全てがいつも通り。男は踏みなれた森の地面を枝木を折りつつ進んでいった。
行き先は定まってはいない。一定の狩場を設ける事で獲物に余計な知恵でもついたら困る、その考えから毎日適当な所で狩る事にしていた。
今日はどの辺りにするか考えながら進む男、だが突如その歩みが停止した。
獲物がいた訳ではない。見つけたのは別の物だった。
眼前の葉を払おうと手を伸ばした先に、不意に――おかしな物を見つけたのだ。
赤い葉、だった。葉脈に至るまで、全てが真っ赤に染められている。
紅葉、にしたってこれは――おかしい。そもそも季節が合わないが、それよりも異常なのは色そのものだ。
「まるで、血の色じゃねぇか……」
知らず、男はそんな言葉を零していた。
確かにその形容は相応しい。葉の色は赤く、紅く――おぞましいとさえ思える深い赤色だった。足元の折れた枝、その断面を見るとやはり、真っ赤だった。
葉と枝、それらの大本である木を順に目で追っていく。この木の表面を傷つければ赤い樹液でも噴出すのだろうか。それはまるで――
「っ……よせよせ」
自分の想像を振り切るように首を振る。
少し落ち着いて考える。異常に思えるこの木だが、実際それほどおかしなものなのだろうか。
男はあくまで猟師であり、植物には詳しくない。今まで見なかっただけで、普通に自生していたという事も十分に有り得る。
実際、毒々しい程に赤い花は存在する。自分の趣味ではないが、好む者は大勢いる筈だ。
そう考えればこの木もおかしな物でもない。病気の可能性もあるが、そう怯える必要は――
「……何?」
思考が停止する。
赤い葉を宿す赤い木、その不気味な存在に対する擁護など一瞬に吹っ飛んでしまった。
男は頭上を見上げていた。木の上部に広がる光景を見てやろうと、顔を上げていた。
そこで見たのは、空を覆う赤い葉の群れ。あぁ、それはいい。この木が空へ赤い葉を広げている事など容易に想像できていたのだから。
問題なのは頭上に見える葉が――“全て”真っ赤だったという事。
自分がこれまで歩いてきた後方すらも、赤い葉が覆っていたのだ。それは――おかしい。
此処までの道のり、ずっと上を見上げていた訳でないが、赤い葉など一枚も見なかった。此処に来てようやく見つけた赤葉に自分は立ち止まっていたのだ。
なのに、赤葉は天を覆う。風に揺れる木の葉が囁く様だった――お前はずっと、赤い森の中を進んできた、と。
恐る恐る後ろを振り返る。男の目が映すのは当たり前の緑を喪失した風景。
そこには、赤色の森が広がっていた。
「どういうことだ……これは……」
自分は普通の、いつも通りの森を歩いていた……つもりだった。いや、間違いない。間違いなんて有り得ない。
この異常に気づかず進んでこれる程自分は間抜けではない。自分が歩いてきたのは確かに、緑の森だったはずだ。
ならばこれはどういう事だ。自分は何故、赤い木々に囲まれている。何故、周りが全て赤く染まっている。
自分の認識が狂っている筈は無い。自分は此処から動いてもいない。だとしたら、変わったのは――
「ッ……!? ぐあああぁぁぁっ!!」
突如、何かが男を襲った。激痛を訴える箇所、自分の腹部へと視線を移す。
――細く鋭い物体が脇腹を貫いていた。これは槍か、はたまた矢か。違う。これは、枝だ。
凶器の正体に辿り着いた瞬間、それが腹から抜かれる。無遠慮に傷口を這う枝が激痛を呼ぶと同時に、赤い血飛沫が噴出す。
咄嗟に、男は相手を振り返る。そこには自分を狙う狩人の姿があった。
――曰く、とある木が艶やかな桃色の花を咲かすのは、人の血を吸うからだと言う。ならば、毒々しい赤を纏うこれもまた、吸血の怪物であった。
名を、吸血樹。腐り果てた一本の木は、いつしか色と共にその性質を変えて再び大地に立った。
以前と異なるのは這わせた根も伸びた枝も、自由に動かせるという事。虫に目を付けられれば食われるしか無かった木偶はもういない。今は鮮やかな色彩で獲物を誘い、喰らう側へと回った。
地面から吸血樹の根が伸び、男の足へ巻き付く。動きを封じた獲物へ、槍状に尖った枝が向かう。
「ぁ……っ、この……ォ!」
男はなんとか腕を伸ばし枝を捕まえると、ナイフを突き立て切り落とした。
露になった断面から赤い樹液が滴る。切られた枝の先端は死んだ様に動きを静止していた。
すかさず、男は猟銃を構え吸血樹の幹へと発砲する。命中箇所からは血の様に液体が飛び散る。
男の足を縛る根が弛む。歪める顔も発する声も無い為、分かりづらいが攻撃は効いているらしい。
流血の止まらない腹を押さえつつ、眼前の獲物へ注意を払う。不意の一撃は堪えたが、勝ち目の無い相手ではない。倒すにしろ逃げるにしろ、やり様が在るというのは大分気分が違う。
自分は狩人、狩る側の存在だ。その立場を再確認し、場を乗り切る算段を付ける。そして、
「――――あ……?」
次の瞬間、その背中は無数の槍に貫かれていた。
自分の胸から飛び出す凶器。それが何なのか、男が認識する間もなく――次がやってくる。その一撃は頭蓋に大穴を穿ち、男は絶命する。
最期の瞬間、男は己の間違いに気づく。獲物を誤認していた。敵は眼前の木などではなかったのだ。
最初に赤い木の葉を目にした時点で罠にかかっていた。その時から、狩人と獲物の立場は入れ替わっていたのだ。
獲物は狩人を気取った脆弱な人間一人。敵は、狩人は――森そのもの。
赤い葉を宿す木全てが吸血樹。それに辿り着けなかった事が――否、森という奴らの狩場に踏み込んだ事こそが致命的な間違いだった。
●
――曰く、其の森は時々赤く染まるのだと言う。
秋の季節でも黄昏が落ちた訳でも無く、不意討ちの様にそれは現出する。森の一部が赤く染まり、暫くすると元の緑に戻る。
決まっているのは誰かが森の奥地へ踏み入った時、森は染まる。そしてその誰かが――帰らない、という事。
いつからか、こんな噂が広まった。
森の奥には神様が住んでいる。聖域に踏み込んだ人間に対する怒りで神は森を赤く染め上げ、愚か者には罰を与える。いなくなった者は、神隠しにあった。
近隣の町はそこを立ち入ってはいけない土地とし、無名の森は赫木の森と呼ばれ恐れられた。
だが、いなくなった者の縁者達はそんな事では納得出来ない。これまで何も無かった森にいきなり神様が住み着いたりするものか。
不可侵の森。森の神の祟りを恐れながらも、その存在に疑いを抱いた町人達はその調査をハンター達へと委ねる事にした――――
その日も男は森へ入っていった。
生業である狩りをする為に、猟師である男は獲物を求めて森を歩く。
進む先には途切れぬ木立、頭上を覆うは葉の緑。鳥や動物の鳴き声と気配、それらを孕みつつも広がる静寂。
全てがいつも通り。男は踏みなれた森の地面を枝木を折りつつ進んでいった。
行き先は定まってはいない。一定の狩場を設ける事で獲物に余計な知恵でもついたら困る、その考えから毎日適当な所で狩る事にしていた。
今日はどの辺りにするか考えながら進む男、だが突如その歩みが停止した。
獲物がいた訳ではない。見つけたのは別の物だった。
眼前の葉を払おうと手を伸ばした先に、不意に――おかしな物を見つけたのだ。
赤い葉、だった。葉脈に至るまで、全てが真っ赤に染められている。
紅葉、にしたってこれは――おかしい。そもそも季節が合わないが、それよりも異常なのは色そのものだ。
「まるで、血の色じゃねぇか……」
知らず、男はそんな言葉を零していた。
確かにその形容は相応しい。葉の色は赤く、紅く――おぞましいとさえ思える深い赤色だった。足元の折れた枝、その断面を見るとやはり、真っ赤だった。
葉と枝、それらの大本である木を順に目で追っていく。この木の表面を傷つければ赤い樹液でも噴出すのだろうか。それはまるで――
「っ……よせよせ」
自分の想像を振り切るように首を振る。
少し落ち着いて考える。異常に思えるこの木だが、実際それほどおかしなものなのだろうか。
男はあくまで猟師であり、植物には詳しくない。今まで見なかっただけで、普通に自生していたという事も十分に有り得る。
実際、毒々しい程に赤い花は存在する。自分の趣味ではないが、好む者は大勢いる筈だ。
そう考えればこの木もおかしな物でもない。病気の可能性もあるが、そう怯える必要は――
「……何?」
思考が停止する。
赤い葉を宿す赤い木、その不気味な存在に対する擁護など一瞬に吹っ飛んでしまった。
男は頭上を見上げていた。木の上部に広がる光景を見てやろうと、顔を上げていた。
そこで見たのは、空を覆う赤い葉の群れ。あぁ、それはいい。この木が空へ赤い葉を広げている事など容易に想像できていたのだから。
問題なのは頭上に見える葉が――“全て”真っ赤だったという事。
自分がこれまで歩いてきた後方すらも、赤い葉が覆っていたのだ。それは――おかしい。
此処までの道のり、ずっと上を見上げていた訳でないが、赤い葉など一枚も見なかった。此処に来てようやく見つけた赤葉に自分は立ち止まっていたのだ。
なのに、赤葉は天を覆う。風に揺れる木の葉が囁く様だった――お前はずっと、赤い森の中を進んできた、と。
恐る恐る後ろを振り返る。男の目が映すのは当たり前の緑を喪失した風景。
そこには、赤色の森が広がっていた。
「どういうことだ……これは……」
自分は普通の、いつも通りの森を歩いていた……つもりだった。いや、間違いない。間違いなんて有り得ない。
この異常に気づかず進んでこれる程自分は間抜けではない。自分が歩いてきたのは確かに、緑の森だったはずだ。
ならばこれはどういう事だ。自分は何故、赤い木々に囲まれている。何故、周りが全て赤く染まっている。
自分の認識が狂っている筈は無い。自分は此処から動いてもいない。だとしたら、変わったのは――
「ッ……!? ぐあああぁぁぁっ!!」
突如、何かが男を襲った。激痛を訴える箇所、自分の腹部へと視線を移す。
――細く鋭い物体が脇腹を貫いていた。これは槍か、はたまた矢か。違う。これは、枝だ。
凶器の正体に辿り着いた瞬間、それが腹から抜かれる。無遠慮に傷口を這う枝が激痛を呼ぶと同時に、赤い血飛沫が噴出す。
咄嗟に、男は相手を振り返る。そこには自分を狙う狩人の姿があった。
――曰く、とある木が艶やかな桃色の花を咲かすのは、人の血を吸うからだと言う。ならば、毒々しい赤を纏うこれもまた、吸血の怪物であった。
名を、吸血樹。腐り果てた一本の木は、いつしか色と共にその性質を変えて再び大地に立った。
以前と異なるのは這わせた根も伸びた枝も、自由に動かせるという事。虫に目を付けられれば食われるしか無かった木偶はもういない。今は鮮やかな色彩で獲物を誘い、喰らう側へと回った。
地面から吸血樹の根が伸び、男の足へ巻き付く。動きを封じた獲物へ、槍状に尖った枝が向かう。
「ぁ……っ、この……ォ!」
男はなんとか腕を伸ばし枝を捕まえると、ナイフを突き立て切り落とした。
露になった断面から赤い樹液が滴る。切られた枝の先端は死んだ様に動きを静止していた。
すかさず、男は猟銃を構え吸血樹の幹へと発砲する。命中箇所からは血の様に液体が飛び散る。
男の足を縛る根が弛む。歪める顔も発する声も無い為、分かりづらいが攻撃は効いているらしい。
流血の止まらない腹を押さえつつ、眼前の獲物へ注意を払う。不意の一撃は堪えたが、勝ち目の無い相手ではない。倒すにしろ逃げるにしろ、やり様が在るというのは大分気分が違う。
自分は狩人、狩る側の存在だ。その立場を再確認し、場を乗り切る算段を付ける。そして、
「――――あ……?」
次の瞬間、その背中は無数の槍に貫かれていた。
自分の胸から飛び出す凶器。それが何なのか、男が認識する間もなく――次がやってくる。その一撃は頭蓋に大穴を穿ち、男は絶命する。
最期の瞬間、男は己の間違いに気づく。獲物を誤認していた。敵は眼前の木などではなかったのだ。
最初に赤い木の葉を目にした時点で罠にかかっていた。その時から、狩人と獲物の立場は入れ替わっていたのだ。
獲物は狩人を気取った脆弱な人間一人。敵は、狩人は――森そのもの。
赤い葉を宿す木全てが吸血樹。それに辿り着けなかった事が――否、森という奴らの狩場に踏み込んだ事こそが致命的な間違いだった。
●
――曰く、其の森は時々赤く染まるのだと言う。
秋の季節でも黄昏が落ちた訳でも無く、不意討ちの様にそれは現出する。森の一部が赤く染まり、暫くすると元の緑に戻る。
決まっているのは誰かが森の奥地へ踏み入った時、森は染まる。そしてその誰かが――帰らない、という事。
いつからか、こんな噂が広まった。
森の奥には神様が住んでいる。聖域に踏み込んだ人間に対する怒りで神は森を赤く染め上げ、愚か者には罰を与える。いなくなった者は、神隠しにあった。
近隣の町はそこを立ち入ってはいけない土地とし、無名の森は赫木の森と呼ばれ恐れられた。
だが、いなくなった者の縁者達はそんな事では納得出来ない。これまで何も無かった森にいきなり神様が住み着いたりするものか。
不可侵の森。森の神の祟りを恐れながらも、その存在に疑いを抱いた町人達はその調査をハンター達へと委ねる事にした――――
解説
『依頼内容』
今回の依頼はとある森の調査です。
時折赤く染まり踏み入った者を消し去るそこを近隣の住民達は神の住まう、赫木の森と呼んでいます。
皆様には森の調査、及び、発見された脅威の排除をお願いします。
森の規模は大した事はありませんが、本来立ち入りを禁じられている地故に情報が不足しています。
また、神の存在を信じる町民達からは、くれぐれも神の怒りに触れないように、という注意を受けています。
調査、戦闘の際に必要以上に森を傷つける事の無いようにお願い致します。
『噂』
町民から得た噂では、赫木の森の木は動くとかなんとか……何の話でしょうか。
少なくとも森の入り口、外周にある木は普通の物のようです。
マスターより
こんにちは、硲銘介です。
今回は森の中のお話です。また森かよ、と内心思いつつもそのまま行きました。
さて、赫木の森には本当に神様がいるのでしょうか……? (白々しい)
情報が少ないですが頑張ってください。(考えるのが面倒だった訳じゃないよ。……本当ダヨ)
こんなお話ですが、関わって頂けたら幸いです。
それでは、皆様の参加をお待ちしております。
今回は森の中のお話です。また森かよ、と内心思いつつもそのまま行きました。
さて、赫木の森には本当に神様がいるのでしょうか……? (白々しい)
情報が少ないですが頑張ってください。(考えるのが面倒だった訳じゃないよ。……本当ダヨ)
こんなお話ですが、関わって頂けたら幸いです。
それでは、皆様の参加をお待ちしております。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/03/16 13:40
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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作戦会議 ルナ・レンフィールド(ka1565) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/03/08 22:32:53 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/06 09:21:43 |