• 調査

半熟王女の謁見 1

マスター:京乃ゆらさ

このシナリオは3日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
プレイング締切
2015/05/24 12:00
リプレイ完成予定
2015/06/05 12:00

オープニング

 グラズヘイム王国、王城。謁見の間よりさらに内奥。
 システィーナ・グラハム(kz0020)は自室のベッドに腰掛け、一人深く息を吐いた。心身共に堪え難い虚脱感を覚え、こてんと横たわる。
 ――あちらは大丈夫でしょうか……。
 CAM稼働実験場を奇襲してきた敵との戦いが終わったのが五日前。とある部族にゴースロンを贈ったのが三日前。騎士団長と共にノアーラ・クンタウへ引き返し、転移門をくぐったのが二時間前。リゼリオを経由して王都に戻ったのが一時間前。手早く湯殿に浸かり、侍従長にめちゃくちゃにされたのが十分前。
 もはや一歩たりとて動けない身体に鞭打ち、辺境での出来事を思い返す。
 奇襲を受けた実験場は様々な物的損害を出しながらも、人的被害は奇襲の激しさの割に少なそうだ、と騎士団長に言われた。けれどそれは、中には喪われた命もあることを意味している。
 ――……りがと……ございます……。
 その戦士たちの魂に、システィーナは感謝の言葉を告げる。
 頬を伝って熱いものが零れ、ぽつぽつとシーツを濡らしたが、それくらいは許してほしいとシスティーナは思う。
『ごめんなさいと謝らないで……ありがとうと言ってあげて』
 それは先日ハンターに言われたこと。だから、目を瞑ってただ滂沱の涙を流すことは許されない。
 ――ノート……。
 システィーナは気怠げに机の方を見やるが、寝転んだままでは当然見えない。諦めて枕に顔を埋め、もらったノートを思い出す。
 ――気付いたこと、やりたいことを……書き留める……何でもいいの、かな。
 このまま意識を手放してしまいたい欲求を跳ね除けるには大きな苦痛を伴った。それでもシスティーナは手足に力を込めるや、机に置かれた白紙のノートに向かった。

●未熟な王女に課せられた幾つかの案件
「どうか王女様、儂らの村を助けてくだせえ!」
 謁見の間。
 平身低頭するのは王国の北西に位置する村の長で、玉座に浅く腰掛けて慌ただしく資料に目を通すのはシスティーナ・グラハム当人。脇に控えるセドリック・マクファーソン(kz0026)が秘かに陳情の概略を耳打ちする。
「川の水を上流のジャン・リュエ村に塞き止められたとのこと」
「なるほど……」頷き、村長に声をかける。「詳しく教えていただけますか?」
「へえ、実はそれがよく分からねえんで……」
 ある朝、村の傍を流れる川の水量が激減していることに気付いた。原因を探るべく川を遡上していくと、土嚢で川を塞き止め、流れを変えるかのような土木工事に出くわしたらしい。
 何しろ水は村にとっての生命線。このままでは作物が実らないどころか飲み水もろくに確保できない、と。
「何度も抗議したんですが、奴らめ話も聞かねえんです!」
「工事をしていたのは確かにジャン・リュエの人だったのですか?」
「そいつは確かでごぜえます。同じ川に恵みをもらってますんでね、よく若モン同士を引き合わせたりもしておったんですよ。それが……」
 突然こんなことに。
 村長は困惑の表情を浮かべる。システィーナは返答に窮し、咄嗟に質問を重ねる。
「領主はなんと?」
「ああ、ええ、実はジャン・リュエとうちは別々のご領主様なんですがね、うちのご領主様に伝えたところ『話してみる』とおっしゃったきりで」
「そう、ですか……えっと」
 うーんと考え込むシスティーナと、それを不安げに見つめる村長。セドリック大司教が咳払いし、
「そちらの領主はバーナル子爵でしたな。ジャン・リュエ村の方がベル侯爵。双方の領主、リュエの村長にも話を聞く必要がありましょう」
「へえ、そうしていただけると……」
 ちら、と大司教がシスティーナを見やる。
 お叱りの言葉でもあるのかと身構える。が、こない。少ししてようやく意図を察し、薄い胸に手を当て謁見者に声をかけた。
「解決するまで人を送ります。ですので食べ物と飲み物のことはご安心ください」
「あ、ありがとうごぜえます!」
 侍従隊の一人に促され、村長が退出していく。
 システィーナはじーっと不出来な生徒を責めるような視線を向けてくる大司教からそっと顔を背け、ため息をついた。
 ――わたくしはどうしてこんなにだめなの……。

 などと悠長に落ち込んでいる暇はシスティーナにはない。
「次の者」
 合図と共にやって来たのは、先ほどの村長とは打って変わった壮年の精悍な男性だった。
 男はアルナバ村の長を勤めているアラム、領主に代わって来たと告げ、慣れない様子で頭を垂れた。
「ち、近頃我々の村にユグディラ被害が頻発してい……おりまして、困っています。まだ住み始めだと思う……ですが、ここで油断すると完全に居着いてしまう。追い払ってく……いただけないだろうか?」
「ユグディラが……え、と。ここ一週間ほどのようですが、何か変わったことはありませんでしたか?」
「特には」
「作物を収穫した、ですとか……」
「無論収穫した、が……それ以前には畑仕事の最中も見たことがなかった」
 資料に目をやる。
 偶然にもこれも王国北西、ちょうど先ほど水を塞き止めたというジャン・リュエ村から東に数十kmの所だった。
 最近は北部全域でどうも小規模な事件が頻発している気がする、とシスティーナは僅かに眉を顰めるが、ユグディラの件で思いつくことはない。ひとまず調査に人をやり、それからだろうか。
 ――問答無用で追い払うのも可哀想ですし……。けれど最悪の場合は……。
 システィーナが嫌な考えを振り払い、沙汰を下そうとし――、
「そ、それと別件が!」
「にゃっ、何でしょうっ!?」
「あ、も、申し訳ねえ、いやございません! 別件なんですが、あいや、これはお願いとかじゃねえんです。報告っちゅうか。どうにも最近ゴブリンをよく見かけるんで、その」
「ゴブリン……確かに多くなっているようですね。そちらは大丈夫ですか?」
「ご、ご存知でしたか! あ、うちは若い奴らが多いんで、少しくれえは戦えますんで! それでその、だからこっちに来るときゃ皆さん方もお気を付けください」
「ぁ……ありがとう、ございます……」
 逞しい体を持て余すようにぎくしゃくと退出していく男性。その後ろ姿を見ていると、システィーナは薄い胸が熱くなった。
 ――がんばらないと。がんばりたい……!
 にへらーと緩みそうな表情に力を込め、きゅっと唇を引き結ぶ。が、どうしても胸が躍って意味もなく両脚を一回バタつかせてみた。ちょっと楽しい。もう一回バタ……、
「王女殿下、一つ残念なご報告がございます」
「は、はいっ!?」
「本日の謁見、ハンターとの交流を兼ねて彼らにも同席いただいているのは覚えておいででしょうか?」
「は、い……?」
「――殿下。はしたない姿をこれ以上彼らに曝す前に引っ込んでください。ついでにユグディラ問題でも解決してくればよろしい」
 大司教と侍従長の嘆息が音楽のように重なる。
 システィーナは声にならない悲鳴を上げた。

解説

▼主な目的
アルナバ村の陳情を解決する。
???

▼状況
現場は王国北西にあるアルナバ村周辺。天候は晴れ。行くなら一泊二日の旅が王国から保証される。指定がなければ到着は14時。
やや大きめの村で、人口もそこそこ。民家、風車、雑貨屋、酒宿場(一階が酒場で二階が宿屋になっているアレ)、倉庫、畑、牧場などがある。付近に小さな森がある。
村の外周や畑には柵、落とし穴、鳴子などの罠が設置されているが、ユグディラはそれらを掻い潜り食料を盗んでいるようだ。彼らのねぐらは不明。集団規模も不明だが、盗まれる量から多くはないと予想される。

それに合わせるようにゴブリンが多く見られるようになったらしい。二、三人で歩き回っている姿が複数確認されている。
自警団が村の防備についているが、それだけで手一杯でもある。

ジャン・リュエ村の塞き止め問題もPCは謁見に同席していたため知っている。
それぞれの村は馬でのんびり行って数時間の距離にある。

▼動向
・システィーナ
要請があれば侍従長と共に外出も可。
アルナバ村と王城では距離が遠く、魔導短伝話・トランシーバーは通じない(それぞれの村同士も通じない)。

・アラム
アルナバ村の村長。現在は王城にいる。自警団を率いている。
自警団員は村内なら気軽に協力できるが、外に出るには相応の理由が必要。

▼略図
     北
   ×
 ○ ×
   ×
    ×          ■
     ×          ☆
      ×
     ● ==========
     南

○:ヨルド村
●:ジャン・リュエ村
☆:アルナバ村
■:森
=:川
×:塞き止められている部分

▼補足情報
依頼成功度は、アルナバ村の陳情を解決あるいは目処が立つ段階まで調査して成功。情報「???」の開示に成功すれば大成功。
リプレイは何もなければアルナバ村到着からだが、王城で何かすることも可。
俯瞰して見る目と実際の行動を完遂する勇気が重要かと思われる。

マスターより

どうもです。京乃です。
簡単に言うと、村に食料を盗むユグディラが現れるのを何とかする依頼です。
システィーナを連れ出しても侍従長は怒ったりしませんが、王女に何ができるのかは分からないです(
タイトルに1とありますが、さっくり終わる可能性もあります。皆さんの活躍によって続く可能性もあります。もし続く場合は一ヶ月に一本ペースで3くらいまであるかもしれません。全てを解決できれば王女も半熟がちょっとだけ完熟に近付く……気がします!?
あ、でも熟してもきっと胸はうs(ry
ところで知らなかったんですけど【聖呪】ってのがあるらしいですね。わぁ何なんだろう。これからもちょいちょい出るのかなぁ!(棒

関連NPC

  • グラズヘイム王国女王
    システィーナ・グラハム(kz0020
    人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|一般人
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/06/02 23:12

参加者一覧

  • エアロダンサー
    月影 夕姫(ka0102
    人間(蒼)|20才|女性|機導師
  • システィーナのお兄さま
    ラィル・ファーディル・ラァドゥ(ka1929
    人間(紅)|24才|男性|疾影士
  • 歩む道に、桜
    薬師神 流(ka3856
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • ミルクプリンちゃん
    セリア・シャルリエ(ka4666
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • 英知へ至る道標
    フレイア(ka4777
    エルフ|25才|女性|魔術師
  • 王女の私室に入った
    シン(ka4968
    人間(蒼)|16才|男性|舞刀士
依頼相談掲示板
アイコン ご相談
フレイア(ka4777
エルフ|25才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/05/24 03:29:07
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/05/23 04:33:50