ゲスト
(ka0000)
闇の中で、交錯する意志
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,500
- 参加人数
- 現在10人 / 4~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/06/01 07:30
- リプレイ完成予定
- 2015/06/10 07:30
オープニング
●
「アウグスト……」
クリームヒルトは食事するアウグストの前に仁王立ちしていた。その顔はきつく、瞳は怒りに燃えていた。
「貴方がヘルトシープの村を壊滅させ、アドランケン鉱山を我が物にしていたのね?」
問い詰める彼女に、まるでくだらない話を聞いているかのように、アウグストは不味そうな顔で肉を食いちぎっていた。
「クリームヒルト様。よくお考えください。金は有限です。投資はビジネスです。ヘルトシープは一時期持て囃されましたが、後は全くダメでした。そんな所に応援などしていては我々の資金も尽きてしまいますぞ。民草と我々支配者は互恵関係です。我々は彼らを助ける。民は富を我らに渡す。これがルールです。富を作れない者は『民』ではなく『ゴミ』です」
ガシャンっ!!
クリームヒルトがテーブルを叩いた。
「だから、ゾンビにしたっていうの?」
「ありゃ便利ですぞ。食べ物も寝床も必要ないし文句も言わない。最高の人材です。あれを前にすれば大抵の人間はその力にひれ伏し、そして民らしくなります」
こんな男が自分の後援者であったのかと思うと心底腹が立った。アウグスト自体にも、それに気付けなかった自分にも。
「クリームヒルト様、ご立腹のようですが、どうぞお考え直しください。憎きウランゲル政権を倒すためには金、物、人間。全てが必要なのです。金をどうやって生み出すのか、資材をどう集めるのか、人間をどうするのか、貴女様にプランがおありですかな?」
クリームヒルトには答えられない。
十分な時間を取って、アウグストはかじっていた肉を指揮棒のように振り回しながら立ち上がった。
「私にはプランがあります。貴女様と共に地方産業に投資をする。成功すれば金になる。失敗すればゾンビにすることで兵力を生み出せます。空白の余地は成功した産業に回せばさらに金になる。ゾンビには人を襲わせれば次々死体を増やせる。死体は次々ゾンビにすれば労働力にもなるし、兵力にもなる。いい考えではありませんかな?」
「ふざけないで! 死体の上に築く国に何の価値があるっていうの! 今の帝国どころか、昔の帝国よりもずっと悪い」
「やれやれ、貴女様にはきっと志が足りなのですな。まだ子供じみた理想が現実にあると思っていらっしゃる。私はこの方法であのシルヴァリーヴァントの小隊をまるごとゾンビにすることができました。今度はその小隊を使って別の小隊を、そして次は中隊をも飲み込めましょう」
アウグストが振る肉が布巾からずると滑ると、愛らしい五本の指がちらりと見えた。
クリームヒルトは凍り付いた。
いつから? いつからこの男は狂っていた?
「まあ、まだお若い。ですがご安心召されよ。彼女がいれば貴女様もきっとすぐに理想とはなんたるか、志が如何であるべきか理解できるでしょう」
うすら寒い空気が背中から漂った。
凍り付いたように動かない体ながらも、ゆっくり後ろを振り向くと、いつの間にかそこには一人の美しい少女が立っていた。
「お初目にかかります。私はブリュンヒルデ……あなたの夢のお手伝いをさせていただきます。クリームヒルト王女」
●
「はい、彼らの後ろにいたのはアウグストです……」
震える兵士の前で、帝国第一師団の副師団長シグルドはにっこりと笑った。
「なるほど。ナナミ川への応援物資を小隊ごと奪って、ヴルツァライヒの兵力に転換しようとしたわけか」
「あの、でも、私は知らなかったんです! まさかゾンビを使って小隊を攻撃するなんて」
ここはシュレーベンラント州。穀倉地帯と知られるここの警備を担当する兵長は、自分の椅子に座るシグルドに完全に怯えきっていた。ナナミ川決戦時に於いて魔導アーマーの移送計画を漏らしていたことがシグルドに掌握されていた。機密情報を漏らした罪、旧帝国派の過激派組織への加担。その罪は決して軽くない。
「でも、君が教えてくれて良かった」
シグルドはそう言うと立ち上がった。そこに厳罰への姿勢もなければ、裏切り者への怒りもない。むしろすっきりしたような感じだ。
「あ、あの……私を処罰するのでは……」
「しないよ?」
シグルドはあっさりそう言った。
「君が帝国民の中に救われない人間がいたことに心を痛めていた事は知っているよ。人を守るため、だったんだろう? なんでそれを罰しなくちゃならないんだい? アウグストの事を黙秘し続けていたならエイゼンシュタインの憲兵大隊に任せざるを得なくなって、あそこだと即処罰されただろうけれど。僕はそんなに残酷じゃない」
シグルドは微笑んで、唇に人差し指を当てた。
黙っててあげるよ。そういう意味だろう。
「し、し、シグルド様……!」
「あはは、ま、これからも帝国の人々の為に頑張っておくれ。もう迷惑はかけちゃダメだよ?」
泣きすがる兵士に困った顔をしながら、シグルドは警備詰め所を後にした。
「いいんですか? エイゼンシュタイン様に報告しなくて」
「君も真面目だなあ」
外で待機していた兵長が声をかけるとシグルドはげんなりとした顔をした。
「人間は法だけで全部を縛ることのできる存在じゃない。情もあれば、利害でも変わるものさ。それを理解してこそ人の世は治まるってものさ」
それに懐かしい名前も聞いた。
シグルドは内通者がぽろりと漏らした話が耳にこびりついていた。
「旧帝国派閥の希望の星である旧帝国の王女クリームヒルトが、シュレーベンラントにて名乗りを上げて各地に散らばる旧帝国勢力の結集を謳う」
クリームヒルトがヴルツァライヒの頭につけば応援の数は半端ではなくなる。
見た目に応援したくなるような可愛い顔だったけれど。やれやれ、腐敗帝と忌み嫌われた旧帝である父の残酷さはちゃんと継いでいるようだ。
「エイゼン如きにそんな美味しい役を与える訳にはいかないなぁ」
シグルドは口元を釣り上げた。そんな笑みがこぼれてしまう。
「シグルド様……」
「僕は寄るところがあるから先に帰ってていいよ。僕が帰ってくるまで何も知らないふりをしとくんだよ? 派兵を命じられたらできるだけのんびり準備して時間稼ぎしててくれ。そんなに時間はかからないだろうからさ」
ハンターと共に急襲するつもりだ。
兵長は直感し、黙って敬礼をした。
「アウグスト……」
クリームヒルトは食事するアウグストの前に仁王立ちしていた。その顔はきつく、瞳は怒りに燃えていた。
「貴方がヘルトシープの村を壊滅させ、アドランケン鉱山を我が物にしていたのね?」
問い詰める彼女に、まるでくだらない話を聞いているかのように、アウグストは不味そうな顔で肉を食いちぎっていた。
「クリームヒルト様。よくお考えください。金は有限です。投資はビジネスです。ヘルトシープは一時期持て囃されましたが、後は全くダメでした。そんな所に応援などしていては我々の資金も尽きてしまいますぞ。民草と我々支配者は互恵関係です。我々は彼らを助ける。民は富を我らに渡す。これがルールです。富を作れない者は『民』ではなく『ゴミ』です」
ガシャンっ!!
クリームヒルトがテーブルを叩いた。
「だから、ゾンビにしたっていうの?」
「ありゃ便利ですぞ。食べ物も寝床も必要ないし文句も言わない。最高の人材です。あれを前にすれば大抵の人間はその力にひれ伏し、そして民らしくなります」
こんな男が自分の後援者であったのかと思うと心底腹が立った。アウグスト自体にも、それに気付けなかった自分にも。
「クリームヒルト様、ご立腹のようですが、どうぞお考え直しください。憎きウランゲル政権を倒すためには金、物、人間。全てが必要なのです。金をどうやって生み出すのか、資材をどう集めるのか、人間をどうするのか、貴女様にプランがおありですかな?」
クリームヒルトには答えられない。
十分な時間を取って、アウグストはかじっていた肉を指揮棒のように振り回しながら立ち上がった。
「私にはプランがあります。貴女様と共に地方産業に投資をする。成功すれば金になる。失敗すればゾンビにすることで兵力を生み出せます。空白の余地は成功した産業に回せばさらに金になる。ゾンビには人を襲わせれば次々死体を増やせる。死体は次々ゾンビにすれば労働力にもなるし、兵力にもなる。いい考えではありませんかな?」
「ふざけないで! 死体の上に築く国に何の価値があるっていうの! 今の帝国どころか、昔の帝国よりもずっと悪い」
「やれやれ、貴女様にはきっと志が足りなのですな。まだ子供じみた理想が現実にあると思っていらっしゃる。私はこの方法であのシルヴァリーヴァントの小隊をまるごとゾンビにすることができました。今度はその小隊を使って別の小隊を、そして次は中隊をも飲み込めましょう」
アウグストが振る肉が布巾からずると滑ると、愛らしい五本の指がちらりと見えた。
クリームヒルトは凍り付いた。
いつから? いつからこの男は狂っていた?
「まあ、まだお若い。ですがご安心召されよ。彼女がいれば貴女様もきっとすぐに理想とはなんたるか、志が如何であるべきか理解できるでしょう」
うすら寒い空気が背中から漂った。
凍り付いたように動かない体ながらも、ゆっくり後ろを振り向くと、いつの間にかそこには一人の美しい少女が立っていた。
「お初目にかかります。私はブリュンヒルデ……あなたの夢のお手伝いをさせていただきます。クリームヒルト王女」
●
「はい、彼らの後ろにいたのはアウグストです……」
震える兵士の前で、帝国第一師団の副師団長シグルドはにっこりと笑った。
「なるほど。ナナミ川への応援物資を小隊ごと奪って、ヴルツァライヒの兵力に転換しようとしたわけか」
「あの、でも、私は知らなかったんです! まさかゾンビを使って小隊を攻撃するなんて」
ここはシュレーベンラント州。穀倉地帯と知られるここの警備を担当する兵長は、自分の椅子に座るシグルドに完全に怯えきっていた。ナナミ川決戦時に於いて魔導アーマーの移送計画を漏らしていたことがシグルドに掌握されていた。機密情報を漏らした罪、旧帝国派の過激派組織への加担。その罪は決して軽くない。
「でも、君が教えてくれて良かった」
シグルドはそう言うと立ち上がった。そこに厳罰への姿勢もなければ、裏切り者への怒りもない。むしろすっきりしたような感じだ。
「あ、あの……私を処罰するのでは……」
「しないよ?」
シグルドはあっさりそう言った。
「君が帝国民の中に救われない人間がいたことに心を痛めていた事は知っているよ。人を守るため、だったんだろう? なんでそれを罰しなくちゃならないんだい? アウグストの事を黙秘し続けていたならエイゼンシュタインの憲兵大隊に任せざるを得なくなって、あそこだと即処罰されただろうけれど。僕はそんなに残酷じゃない」
シグルドは微笑んで、唇に人差し指を当てた。
黙っててあげるよ。そういう意味だろう。
「し、し、シグルド様……!」
「あはは、ま、これからも帝国の人々の為に頑張っておくれ。もう迷惑はかけちゃダメだよ?」
泣きすがる兵士に困った顔をしながら、シグルドは警備詰め所を後にした。
「いいんですか? エイゼンシュタイン様に報告しなくて」
「君も真面目だなあ」
外で待機していた兵長が声をかけるとシグルドはげんなりとした顔をした。
「人間は法だけで全部を縛ることのできる存在じゃない。情もあれば、利害でも変わるものさ。それを理解してこそ人の世は治まるってものさ」
それに懐かしい名前も聞いた。
シグルドは内通者がぽろりと漏らした話が耳にこびりついていた。
「旧帝国派閥の希望の星である旧帝国の王女クリームヒルトが、シュレーベンラントにて名乗りを上げて各地に散らばる旧帝国勢力の結集を謳う」
クリームヒルトがヴルツァライヒの頭につけば応援の数は半端ではなくなる。
見た目に応援したくなるような可愛い顔だったけれど。やれやれ、腐敗帝と忌み嫌われた旧帝である父の残酷さはちゃんと継いでいるようだ。
「エイゼン如きにそんな美味しい役を与える訳にはいかないなぁ」
シグルドは口元を釣り上げた。そんな笑みがこぼれてしまう。
「シグルド様……」
「僕は寄るところがあるから先に帰ってていいよ。僕が帰ってくるまで何も知らないふりをしとくんだよ? 派兵を命じられたらできるだけのんびり準備して時間稼ぎしててくれ。そんなに時間はかからないだろうからさ」
ハンターと共に急襲するつもりだ。
兵長は直感し、黙って敬礼をした。
解説
シグルド副師団長からの依頼です。
シュレーベンラント州にてヴルツァライヒのアジトを発見したので、これを共に急襲せよ。とのことです。
●目的
ヴルツァライヒのアジト制圧。
敵の生死及び逃亡は特に問わない。
●場所
シュレーベンラント州にある廃村の屋敷です。屋敷内には中央の広間、客間、厨房、書斎の部屋があります。
●戦力
革命戦士30名。銃、ナイフ、盾を装備しており5名一組で行動しています。全員よく訓練されていますが非覚醒者です。
●その他
屋敷のどこかにクリームヒルト、アウグスト、ブリュンヒルデがいると思われます。(シグルドから情報共有があり、そんな人物がいると聞かされます)
彼らの扱い及び発見と対処はお任せします。
また一定時間経過後、ヴルツァライヒ幹部が増援します。(これはPL情報です)
●登場人物
クリームヒルト 旧帝国の第一王女。後援者たるアウグストが歪虚と手を組んでゾンビを動かすなどの悪事に手を染めていると知り問い詰めたが逆に拘留されました。
アウグスト 旧帝国の大臣。様々なところで投資をしてその利潤で活動資金を得ていました。最近人肉料理がお好み。
ブリュンヒルデ 歪虚。「夢の実現を手伝うこと」を目的に動きます。アウグストとは別の場所で出会いその夢のお手伝いをしているようです。
●その他
シグルドが質疑に応答します。クリームヒルトは設定していますが会話できませんのでお気を付けください。
シュレーベンラント州にてヴルツァライヒのアジトを発見したので、これを共に急襲せよ。とのことです。
●目的
ヴルツァライヒのアジト制圧。
敵の生死及び逃亡は特に問わない。
●場所
シュレーベンラント州にある廃村の屋敷です。屋敷内には中央の広間、客間、厨房、書斎の部屋があります。
●戦力
革命戦士30名。銃、ナイフ、盾を装備しており5名一組で行動しています。全員よく訓練されていますが非覚醒者です。
●その他
屋敷のどこかにクリームヒルト、アウグスト、ブリュンヒルデがいると思われます。(シグルドから情報共有があり、そんな人物がいると聞かされます)
彼らの扱い及び発見と対処はお任せします。
また一定時間経過後、ヴルツァライヒ幹部が増援します。(これはPL情報です)
●登場人物
クリームヒルト 旧帝国の第一王女。後援者たるアウグストが歪虚と手を組んでゾンビを動かすなどの悪事に手を染めていると知り問い詰めたが逆に拘留されました。
アウグスト 旧帝国の大臣。様々なところで投資をしてその利潤で活動資金を得ていました。最近人肉料理がお好み。
ブリュンヒルデ 歪虚。「夢の実現を手伝うこと」を目的に動きます。アウグストとは別の場所で出会いその夢のお手伝いをしているようです。
●その他
シグルドが質疑に応答します。クリームヒルトは設定していますが会話できませんのでお気を付けください。
マスターより
クリームヒルト編が一区切りする最終章です。シナリオは3本予定です。
悪を一掃しようという人もいるでしょうし、クリームヒルトは助けたいという人も、もしかしたらブリュンヒルデともお話したいという方もいるかもしれませんね。
参加者一人一人きっと考えも目的も異なるでしょう。バラバラの動きだと非覚醒者の兵士にすら手こずるかもしれません。よく相談し落としどころを見つけた上で戦いに挑んでください。
ところでアウグストとブリュンヒルデ、どこでつながっていたんですか? って? 某錬成依頼のパトロンはやたら恰幅が良かったようですよ。旧帝国再興の夢は彼の「悲願とも呼べる夢」ですしね。
悪を一掃しようという人もいるでしょうし、クリームヒルトは助けたいという人も、もしかしたらブリュンヒルデともお話したいという方もいるかもしれませんね。
参加者一人一人きっと考えも目的も異なるでしょう。バラバラの動きだと非覚醒者の兵士にすら手こずるかもしれません。よく相談し落としどころを見つけた上で戦いに挑んでください。
ところでアウグストとブリュンヒルデ、どこでつながっていたんですか? って? 某錬成依頼のパトロンはやたら恰幅が良かったようですよ。旧帝国再興の夢は彼の「悲願とも呼べる夢」ですしね。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/06/09 06:56
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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悪き夢を打ち砕く為に 久我・御言(ka4137) 人間(リアルブルー)|21才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/05/31 22:48:46 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/27 14:41:42 |