• 調査

【審判】閉じた世界

マスター:藤山なないろ

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―

難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/08/07 22:00
リプレイ完成予定
2015/08/21 22:00

オープニング


 王国北部を中心としたゴブリンの動きに対する国の対応決議から然程時間を置かず、開かれた定例軍事会議。円卓の間では、王国騎士団長エリオット・ヴァレンタインが報告を上げていた。
「以上が、直近までの騎士団の動きです」
「北部の亜人騒動では貴族の動きが鈍くない。だが、東は憤怒の王……始祖の七が動いたと聞く」
 大司教セドリック・マクファーソンが、すいと視線を動かした。その先に座しているのは、鮮やかな青緑色の髪の乙女──
「他人事、と断じるつもりは毛頭ありません。東方へは私たち聖堂戦士団が出ましょう」
 ──ヴィオラ・フルブライト。女は、表情一つ変えずに応える。
「多少の気がかりはありますが……今すべきことは理解しています」
 “気がかり”。その言葉を受けたエリオットの表情にも陰りが見え、大司教は重い息を吐く。
「……クラベル出現の報せ、か」
「イスルダで何らか動きがあったのかもしれませんが、それでもただ王都に構えたまま、歪虚の動きに後手を続ける訳にも参りませんから」
 痛烈な批判に緊迫した空気が張りつめる。東方に出張ってさえいなければ、王国騎士団副長のダンテ・バルカザールが口笛の一つも吹いた事だろう。生憎冗談を言えるような人間はこの場に出席していないが。
 誰もが口を閉ざすなか、大司教が苦笑交じりに窘める。
「聖堂戦士団長」
「出兵の準備を致します。議題が消化されたのなら、私はこの辺で失礼しても宜しいでしょうか」
 意に介さず、席を立とうと周囲を見渡すヴィオラに対し、それを“批判されたばかりの男”が制した。
「最後に一つ、俺も気になっていることがある」
 大司教が促し、許可を得てエリオットが発言。だが、それが会議を思わぬ方向へと導いてしまうことになる。
「恐らくヴィオラ殿は気付いているだろうが……最近、巡礼中のエクラ教徒が歪虚の襲撃を受ける事件が多発している」
「エリオット殿」
 女の鋭い視線と声が、エリオットの報告を遮った。
「被害者はエクラの敬虔な教徒たちだ。心情を慮ればヴィオラ殿の裁量で事を進めるべきだと、これまで触れずに来たが……これ以上黙って被害を拡大させる気は、俺にはない」
「前提だけはご理解頂いているようで、安心致しました。そうです、本件は我々聖堂戦士団が引き続き対処を行います。北部に青の隊、東方に赤の隊を派遣した騎士団の皆さんには聊か荷が重いと思われますので」
 睨み合う二人。口を開けば互いの言葉が、互いを煽り合うばかり。だが──
「巡礼中のエクラ教徒が歪虚に襲撃される案件が多発……か」
 卓上戦争を思わぬ形で破ったのは大司教だった。
「それが事実かはさておき、今は北部のこともある。些事なら猶のこと、徒に長引かせる理由もない。早急な対処が不可欠だ」
 セドリックがはっきり言い放てば、素直にヴィオラが応じ、かたやエリオットは視線を外す。聖堂戦士団が引き続き本件の対応を行う──そう思われたが、しかしその後に伝えられたのは想定外の事態だった。
「本件は、騎士団と戦士団、両組織で情報を共有しながら一刻も早い解決に繋げたまえ」
「大司教様? 一体、どういう……」
「これは国としての意向だ。進展は逐次報告を」
 何事か零れそうになる唇を噛み、青髪の乙女は反論を呑み込む。
 二人のやり取りを、その真意を、見極めようと黙って見守っていたエリオットは、
「承知しました」
 ある決意をもってそう答えた。

 会議後、一言も交わす間もなくヴィオラは早々に席を立った。城の廊下をつかつかと進む彼女を追う形で、エリオットはその背に声をかける。
「事件の状況はどうなっている。騎士団側で対処を行った件も幾つかあるが、我々が持っている情報は少ない。実際、全て偶然の可能性もあるだろうが、そちらで何か心当たりは──」
 突如、ぴたりと足を止めて振り返るヴィオラ。流れる青緑色の髪が柔らかに女の挙動に合わせて、揺れる。
「私は、これから東方へ赴きます。不在の間、警邏や再発防止策の対応は願いますが……余計なことはしないでください。決して」
 一方的に言い残すと、女は再び背を向けて去っていった。
 残された男はと言えば、
「……あの様子、俺への悪感情であればいいんだが」
 苦い面持ちで髪を掻き、憚ることなく嘆息した。



 王都イルダーナ第3街区。王国騎士団本部の執務室でエリオットは報告書類を眼前に並べていた。思い起こすのは、先の大司教の指示だ。
 大規模な戦闘において王国騎士団と聖堂戦士団が共に戦うことはあっても、国の大事と直接的な関連性すら定かではない案件に王国の二大軍事力を投入するという事態。その決断が、“恐ろしく早かった”ことも含め──
「どう考えても、異例の対応だ」
 そう零し、眉間に皺を寄せた。現場の長である両名の意思はそこに沿っていなかったにもかかわらず……これには一体どんな意味がある?
 本来的にはヴィオラが対応するのが最良であるはずだった。だが、彼女はこれから東方遠征……指揮権を騎士団へ移行する選択肢もあったはずだが、大司教はそれをしなかった。
 単純に“早期解決”を願うだけでなく、どこかで“保険”をかけている節がある。大司教にとってはエクラの教えに従順な聖堂戦士団の方がより“子飼い”意識は強いのだろうが、あの二人にそれほど密な関係が築けているとは考え難い。
 王国騎士団を信じきれない部分は……確かにあるだろう。諜報偵察その他オールラウンドな青の隊は王国北部へ、戦闘経験豊富な赤の隊は東方へと既に出払っていることも大きい。
 節ばった長い指先で顎に触れながら思案していると、扉から規則的なノックが聞こえてくる。
「失礼します。エリオット様、何か御用があると伺ったのですが」
「フィアか、他言無用で頼むが……」
 男は立ち上がると、唐突に纏っていた執務服のジャケットを脱ぎながら、白の隊女性騎士フィアのもとへ歩み寄る。
「エリオット様?」
 あまり経験したことのない独特の緊張感。その雰囲気に後退りするフィアだが、しかし彼女に次に落ちてきた言葉は想像の遥か外れを通り抜けていった。
「俺は、今日一日“闘狩人のカイン”だ」
「……はい?」
 刹那、エリオットの執務服がフィアの肩にばさりとかけられる。
「そして、お前は今日一日“王国騎士団長”だ」
「私が、ですか?」
「有事には迷わず出撃命令を出せ。責任は俺がとる。警鐘をならせば俺もすぐに戻ろう。とはいえ、今日の勤怠状況を見るに、警邏が十全そうな日を選んではみたのだが」
「確かに、本日副隊長はお休みですから、私が承っても構いませんけれど、でも……」
「……ただでさえ身動きの取れない俺にこれ以上枷を課さないでくれ。多くに知られたくはない。それと、お前に頼んだのはもう一つ大きな理由がある」
 首を傾げて先を促すフィアに対し、男は間髪入れずに明瞭に告げた。
「一目で俺と解らないような身なりになりたい。できるか?」

解説

●目的
エクラ教の巡礼者が歪虚に襲撃された事件に関する情報を一つでも多く得ること

●背景
皆様は、ソサエティを介して闘狩人のカインに「調査用人員(内容不明)」として雇われました。

直接会って話を聞くと、最近「エクラ教の巡礼者が歪虚に襲撃される」事件が多発しているようで、その件を調べたいとのこと。
偶然、巡礼者が襲われる事件が多発しただけなのでしょうか?
巡礼者襲撃に関する情報を一つでも多く集めたいようです。

今回の調査期間は1日。王都の中での聞き込みをお願いします。
依頼主カインは、周囲に警戒心を植え付けないよう短時間でケリをつけたい意向のようで、カインも一緒に調査に加わります。

●王都
王国騎士団、聖堂戦士団2つの軍事力を擁するグラズヘイム王国の首都。
王城の傍には聖堂教会の総本山たる聖ヴェレニウス大聖堂が建っているが、王都内には別途いくつかの教会が存在している。
街は中心付近が貴族邸などの高級街で、外に向かうほど大衆的、雑多的になっていく。
治安は非常に良く、多くの住民の生活も規則正しい。教会の教義に忠実な人が多いようだ。
※第二、第一街区、王城(大聖堂)に行くには検問があるため、今回の依頼では入れない

●カイン
王国騎士団長エリオット・ヴァレンタインが正体を隠した姿。エクラ教徒っぽい姿に変装中。
ご指示があれば対応します。
エリオットが巡礼者襲撃事件のことを調べている、ということを公に知られたくないようです。

藤山の依頼で彼と同行された方は、「元々面識あり」として話しているうちに正体に気付けると思います。
ただ、気付いても今回は彼の身分や立場を利用した調査方法は余り用いることはできません。
ご利用は計画的に。
※当然エリオットなしで大成功可能

●参考
エクラ教は「ワールドガイド>聖堂教会」に掲載
過去依頼
【審判】ローズクォーツを供にして@鹿野MS
【審判】ワールドグレイヴ@藤山

●プレイヒント
どんな人にどんな話を聞くか

マスターより

【審判】とは
『ある事件を、聖堂戦士団サイド、王国騎士団サイドに分かれて2つのパーティで同時に追いかけていく』
という連動です。

ある物事を見極める際に、一つの情報だけでそのもの本来の姿が正しく見えることは、余りありません。
表を見た時は「熟していておいしそうな果物」でも、裏から見ると「半分腐ってダメになってた」なんてことはよくある話です。
ならばつまり「真実は一つの視点で語れるものではない」のではないでしょうか。

エリオットは、多くの情報を求めています。真実を知るために必要なものは、沢山の「視点」です。
今回で失敗した場合「騎士団側は情報不足」のまま話が進んでしまいますので、ぜひ今回頑張ってみてください。

関連NPC

  • 王国騎士団“黒の騎士長”
    エリオット・ヴァレンタイン(kz0025
    人間(クリムゾンウェスト)|29才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/08/23 18:49

参加者一覧


  • ルカ(ka0962
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • 『未来』を背負う者
    エリー・ローウェル(ka2576
    人間(紅)|19才|女性|闘狩人
  • 未来を想う
    アイシュリング(ka2787
    エルフ|16才|女性|魔術師
  • 太陽猫の矛
    アイラ(ka3941
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 現代っ子
    高円寺 義経(ka4362
    人間(蒼)|16才|男性|疾影士
  • (強い)爺
    バリトン(ka5112
    人間(紅)|81才|男性|舞刀士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/04 21:08:13
アイコン 方針相談
高円寺 義経(ka4362
人間(リアルブルー)|16才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/08/07 20:08:59