ゲスト
(ka0000)
力と魂
マスター:有坂参八

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 不明
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- サポート
- 現在1人 / 0~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/11/22 09:00
- リプレイ完成予定
- 2015/12/06 09:00
オープニング
●
エンドレスと名乗った機械型の歪虚群は撃退されたものの、山岳猟団が受けた被害は小さくはなかった。
砦の半壊、十数名の団員の戦死、そして……シバの重傷。
戦闘中に錯乱し、一人飛び出したシバは、ハンターにその命を繋がれ、今またパシュパティ砦に臥していた。
……来る死神の手を、待ち構えながら。
「……敵は我らを、暴こうとしていた。我らの力を、戦い方を、理念を、全てを見ていた。恐らくは、はるか以前から」
老人は、絞りだす様な声で語った。
一つ一つ、伝えなければならない事、その全てを。
「その内に奴は、赤き大地において、情報の流れを握る者が誰かを悟り、まずその者を潰そうとした。それが儂じゃ」
シバが率いるは、辺境の諜報組織『部族無き部族』。
シバは彼らに、影として辺境に根を張り、あらゆる情報を集め共有する力を与えた。
人類を……ひいては愛する故郷、赤き大地を守る為に。
「いつからか儂の行動が、何者かに監視される様になった。影の如く、儂の行く所に姿をちらつかせ、その威を示した。『お前を見ている』と」
次第にその監視は、シバの精神を蝕んでいく。
それに重なる様に、先の戦でハイルタイから受けた傷は、癒えること無く悪化する。
齢一〇〇に迫ろうかという老いた体は、それでも迫り来る死の影に抗い、そして、敗れた。
やがてシバは幻覚にうなされ、敵の正体を探る前に正気を失ってしまった。
……
シバは、虚ろな瞳と掠れる様な声で、淡々とその経緯を語った。
八重樫は、黙ってその話を聞いていたが、やがて口を開く。
「唯の痴呆ではないだろうな」
と、一言。
シバは、く、く、くと自嘲した。
「かも、しれん。今の儂には、目の前に居るお主が、現か幻かも、区別がつかぬ」
「……」
「儂は死ぬ。もう一刻の猶予もない。やり残した事は、多いが……死神を、誤魔化す浅知恵も、尽きた。ならば、最も重要な事だけは、済まさねば」
「何を考えている」
「いかな戦士も老いさらばえ、いずれは、先の戦での儂の様に、足手纏となる。シバ族の戦士は、これをどうしてきたか、判るか」
「知らん。だが」
「だが……お主は、判っている筈だ。いつかお主は、儂に、伝えてきた」
「……『お前が俺の障害になれば、俺はお前を即座に切り捨てる』」
「止めるか」
「いや。考えは今も同じだ。好きにしろ」
「今やお主とも、他人とはいえぬ間柄。未練かも、しれんが」
「慣れている」
「そうかな。儂は、一度はお主と、本気で、戦ってみたかったぞ」
「……同感だな、それだけは」
シバは、八重樫に首飾りのようなものを放った。
それは、連合宙軍の軍人が身に付けるドッグタグで……階級氏名の欄には『Captain,Atsushi=Yaegashi』と刻まれていた。
「赤き大地を長く歩いておるとな、色々なモノを拾える。青の世界からの漂着物も、そうさな」
「知っていて俺を、団長に担いだのか」
老人は問に答える事無く、ただ笑って立ち上がり、八重樫の前から姿を消した。永遠に。
シバがハンターに決闘を申し込んだのは、そのすぐ後のことだった。
●
ハンターが砦の前にやってくると、そこにはシバがいた。
血と膿の染みた包帯に身を覆われ、微かにふらつきながら、しかし自分の足でしかと立ち、シバはハンター達へ高らかに告げた。
「この体に残った、最後の命を、儂は、真実を教える為に、使うと決めた。他ならぬハンター、お主達に。
シバ族に伝わる、これが『別離の儀』。即ちこの儂に打ち克ち、我らの戦いを継ぐに相応しき強さを、証明せよ」
そう言ってシバは、腰に下げた金色の剣を抜いた。
過酷な赤き大地にあっては、弱き者は死し、強き者が生きる。
ただ強くあれ。強き戦士たれ。生きるに相応しき強者であれ、と。
それがこの戦士の流儀、『シバ』族の流儀なのだ。
何百年も歪虚と戦い、死に、そして生きてきた、赤き大地に歩む血脈の。
「これから先、お主達に振りかかる、試練の過酷なるは、こんなものでは、済まされぬ。
友が討たれる戦がある。
友の屍を踏み越えねばならぬ戦がある。
友をその手で討たねばならぬ戦さえ、あるだろう。
ただ言葉で、守る守ると口にするだけでは、何一つも救えぬ戦が、いつかきっとやってくる。
お主達に、覚悟があるか?
未来を勝ち取る為に、戦うとはどういう事か、その意味を知って、なお戦場に歩む、その覚悟が」
シバは、決して付け入る隙など無い強い語調で、ハンター達に語った。
紡ぐ声は震えながら掠れており、また瞳は既に濁って焦点を失っている。
脂汗を垂らしながら剣を構えるその姿に、かつての戦士の面影など無いようにさえ思われた。
しかし。
しかしそれでいてシバの剣の切っ先は、刹那の隙も見せぬままハンターに向けられていた。
獲物に相対する、蛇の如く。
「然らばこの儂に克って、示してみせろ。お主達の資格を。力と魂を。
お主達の戦姿が僅かたりとも覚悟を欠いたならば。
あるいは、恥知らずにも試練に背を向けるならば。
儂が、今、この場で、お主達を殺す。
いずれ来るその日、その弱き故に苦しみ、絶望し死ぬならば、今この場で楽に殺してやるは戦士の慈悲と知れ。
旧き時代の戦士を殺した時、新しき血は、相応しき時代を拓くにふさわしい資格を手に入れるだろう。
心せよ。
赤き大地最強の霊闘士との、これが最初で最期の死合いぞ」
ハンター達は … ……… ……した。それぞれの、想いを込めて。
そしてシバは……
「我はシバ。パシュパティ=シバ。
我は戦士。蛇の戦士。月と、蛇の戦士。
我が敵を討ち、血と刃に死す者也」
エンドレスと名乗った機械型の歪虚群は撃退されたものの、山岳猟団が受けた被害は小さくはなかった。
砦の半壊、十数名の団員の戦死、そして……シバの重傷。
戦闘中に錯乱し、一人飛び出したシバは、ハンターにその命を繋がれ、今またパシュパティ砦に臥していた。
……来る死神の手を、待ち構えながら。
「……敵は我らを、暴こうとしていた。我らの力を、戦い方を、理念を、全てを見ていた。恐らくは、はるか以前から」
老人は、絞りだす様な声で語った。
一つ一つ、伝えなければならない事、その全てを。
「その内に奴は、赤き大地において、情報の流れを握る者が誰かを悟り、まずその者を潰そうとした。それが儂じゃ」
シバが率いるは、辺境の諜報組織『部族無き部族』。
シバは彼らに、影として辺境に根を張り、あらゆる情報を集め共有する力を与えた。
人類を……ひいては愛する故郷、赤き大地を守る為に。
「いつからか儂の行動が、何者かに監視される様になった。影の如く、儂の行く所に姿をちらつかせ、その威を示した。『お前を見ている』と」
次第にその監視は、シバの精神を蝕んでいく。
それに重なる様に、先の戦でハイルタイから受けた傷は、癒えること無く悪化する。
齢一〇〇に迫ろうかという老いた体は、それでも迫り来る死の影に抗い、そして、敗れた。
やがてシバは幻覚にうなされ、敵の正体を探る前に正気を失ってしまった。
……
シバは、虚ろな瞳と掠れる様な声で、淡々とその経緯を語った。
八重樫は、黙ってその話を聞いていたが、やがて口を開く。
「唯の痴呆ではないだろうな」
と、一言。
シバは、く、く、くと自嘲した。
「かも、しれん。今の儂には、目の前に居るお主が、現か幻かも、区別がつかぬ」
「……」
「儂は死ぬ。もう一刻の猶予もない。やり残した事は、多いが……死神を、誤魔化す浅知恵も、尽きた。ならば、最も重要な事だけは、済まさねば」
「何を考えている」
「いかな戦士も老いさらばえ、いずれは、先の戦での儂の様に、足手纏となる。シバ族の戦士は、これをどうしてきたか、判るか」
「知らん。だが」
「だが……お主は、判っている筈だ。いつかお主は、儂に、伝えてきた」
「……『お前が俺の障害になれば、俺はお前を即座に切り捨てる』」
「止めるか」
「いや。考えは今も同じだ。好きにしろ」
「今やお主とも、他人とはいえぬ間柄。未練かも、しれんが」
「慣れている」
「そうかな。儂は、一度はお主と、本気で、戦ってみたかったぞ」
「……同感だな、それだけは」
シバは、八重樫に首飾りのようなものを放った。
それは、連合宙軍の軍人が身に付けるドッグタグで……階級氏名の欄には『Captain,Atsushi=Yaegashi』と刻まれていた。
「赤き大地を長く歩いておるとな、色々なモノを拾える。青の世界からの漂着物も、そうさな」
「知っていて俺を、団長に担いだのか」
老人は問に答える事無く、ただ笑って立ち上がり、八重樫の前から姿を消した。永遠に。
シバがハンターに決闘を申し込んだのは、そのすぐ後のことだった。
●
ハンターが砦の前にやってくると、そこにはシバがいた。
血と膿の染みた包帯に身を覆われ、微かにふらつきながら、しかし自分の足でしかと立ち、シバはハンター達へ高らかに告げた。
「この体に残った、最後の命を、儂は、真実を教える為に、使うと決めた。他ならぬハンター、お主達に。
シバ族に伝わる、これが『別離の儀』。即ちこの儂に打ち克ち、我らの戦いを継ぐに相応しき強さを、証明せよ」
そう言ってシバは、腰に下げた金色の剣を抜いた。
過酷な赤き大地にあっては、弱き者は死し、強き者が生きる。
ただ強くあれ。強き戦士たれ。生きるに相応しき強者であれ、と。
それがこの戦士の流儀、『シバ』族の流儀なのだ。
何百年も歪虚と戦い、死に、そして生きてきた、赤き大地に歩む血脈の。
「これから先、お主達に振りかかる、試練の過酷なるは、こんなものでは、済まされぬ。
友が討たれる戦がある。
友の屍を踏み越えねばならぬ戦がある。
友をその手で討たねばならぬ戦さえ、あるだろう。
ただ言葉で、守る守ると口にするだけでは、何一つも救えぬ戦が、いつかきっとやってくる。
お主達に、覚悟があるか?
未来を勝ち取る為に、戦うとはどういう事か、その意味を知って、なお戦場に歩む、その覚悟が」
シバは、決して付け入る隙など無い強い語調で、ハンター達に語った。
紡ぐ声は震えながら掠れており、また瞳は既に濁って焦点を失っている。
脂汗を垂らしながら剣を構えるその姿に、かつての戦士の面影など無いようにさえ思われた。
しかし。
しかしそれでいてシバの剣の切っ先は、刹那の隙も見せぬままハンターに向けられていた。
獲物に相対する、蛇の如く。
「然らばこの儂に克って、示してみせろ。お主達の資格を。力と魂を。
お主達の戦姿が僅かたりとも覚悟を欠いたならば。
あるいは、恥知らずにも試練に背を向けるならば。
儂が、今、この場で、お主達を殺す。
いずれ来るその日、その弱き故に苦しみ、絶望し死ぬならば、今この場で楽に殺してやるは戦士の慈悲と知れ。
旧き時代の戦士を殺した時、新しき血は、相応しき時代を拓くにふさわしい資格を手に入れるだろう。
心せよ。
赤き大地最強の霊闘士との、これが最初で最期の死合いぞ」
ハンター達は … ……… ……した。それぞれの、想いを込めて。
そしてシバは……
「我はシバ。パシュパティ=シバ。
我は戦士。蛇の戦士。月と、蛇の戦士。
我が敵を討ち、血と刃に死す者也」
解説
シバは残された僅かな時間を、次の世代への『試練』に費やすと決めました。
試練を通して次の世代へ、伝えなければならないことを伝え、与えねばならないものを与えるというのです。
そして、シバがその試練の相手に選んだのは、山岳猟団でも、自らの弟子でもなく、ほかならぬハンターの皆様。
最強、という自称の真偽は別としても、かつてのシバがそう名乗るだけの力を持った戦士であったことは事実です。
友と認む皆様を相手取り、しかし愛する友と認むが故に、全力で戦いを挑んでくる事でしょう。
既に死を避けられぬ程の容体であることも足し引き勘案すれば、その強さは全くの未知数。
しかし。
しかし、です。
問題の本質はさにあらず、シバの言葉を借りるならば、そんなことは『瑣末な括り』にすぎないのです。
ならば、その真意は何処に有りや……
ハンターの皆様ならばきっと答えることができる筈。
それこそが、シバの与える試練です。
初めて出会った日から、今までのシバの行動。
彼とハンター達が交わした言葉。
誰かが辺境などという呼び名で貶めた、この赤き大地に紡がれた物語。
その全てが、一つに連なるヒントとなることでしょう。
どうか皆様の資質を、皆様の覚悟で以って示してください。
戦士を戦士として死なせる事のできる、力と魂を。
※このシナリオは正規の依頼ではありませんので、報酬はごく僅かとなります。ご了承ください。
※サポート参加につきましては、『試練』に直接関わらない形であれば、なんらかのアクションを行う事ができます。状況が状況ですのである程度柔軟に対応いたしますが、サポート対象のPC様とは十分ご協議・ご了承の上ご参加ください。
試練を通して次の世代へ、伝えなければならないことを伝え、与えねばならないものを与えるというのです。
そして、シバがその試練の相手に選んだのは、山岳猟団でも、自らの弟子でもなく、ほかならぬハンターの皆様。
最強、という自称の真偽は別としても、かつてのシバがそう名乗るだけの力を持った戦士であったことは事実です。
友と認む皆様を相手取り、しかし愛する友と認むが故に、全力で戦いを挑んでくる事でしょう。
既に死を避けられぬ程の容体であることも足し引き勘案すれば、その強さは全くの未知数。
しかし。
しかし、です。
問題の本質はさにあらず、シバの言葉を借りるならば、そんなことは『瑣末な括り』にすぎないのです。
ならば、その真意は何処に有りや……
ハンターの皆様ならばきっと答えることができる筈。
それこそが、シバの与える試練です。
初めて出会った日から、今までのシバの行動。
彼とハンター達が交わした言葉。
誰かが辺境などという呼び名で貶めた、この赤き大地に紡がれた物語。
その全てが、一つに連なるヒントとなることでしょう。
どうか皆様の資質を、皆様の覚悟で以って示してください。
戦士を戦士として死なせる事のできる、力と魂を。
※このシナリオは正規の依頼ではありませんので、報酬はごく僅かとなります。ご了承ください。
※サポート参加につきましては、『試練』に直接関わらない形であれば、なんらかのアクションを行う事ができます。状況が状況ですのである程度柔軟に対応いたしますが、サポート対象のPC様とは十分ご協議・ご了承の上ご参加ください。
マスターより
有坂参八と申します。
日暮れて道遠し。
果たされぬ約束をいくつも抱えながら、道標たる灯火は今、潰えようとしています。
その先に待つのは、果たして暗闇だけなのでしょうか。
全ては皆様の行動一つ。
願わくばその御手が、赤き大地の子の心に触れ給う事を。
日暮れて道遠し。
果たされぬ約束をいくつも抱えながら、道標たる灯火は今、潰えようとしています。
その先に待つのは、果たして暗闇だけなのでしょうか。
全ては皆様の行動一つ。
願わくばその御手が、赤き大地の子の心に触れ給う事を。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/12/03 22:36
参加者一覧
サポート一覧
- ルシオ・セレステ(ka0673)
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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試練に際し エアルドフリス(ka1856) 人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/11/22 00:12:17 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/18 22:08:03 |