ゲスト
(ka0000)
【審判】闖入者、名を、半藏と云う
マスター:ムジカ・トラス

- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/12/07 22:00
- リプレイ完成予定
- 2015/12/16 22:00
オープニング
●
深い深い森の中で、二つの声が響いていた。
「遠かったね、イエ」
「そうだね、ユエ」
少女とも、少年ともつかぬ幼い声が零れた。その姿も、声もよく似ている二人。
かつて、彼らは東方に居た。その時から変わらず微笑みに縁取られた瞳とその色は金と銀。
ただ、その声色には不快の色があった。
「……どっちが言い出したんだっけ、イエ」
「僕じゃないとおもうよ、ユエ」
ぶす、と不満気に頬を膨らませた銀目の『少女』ユエと、同じく不満気な顔の『少年』イエは――リンダールの森、王国東部の樹上を泳ぐように進みながら、幾度目とも知れぬ戯れ言を交わしていた。
「仕方がないんだよね」
「うん、仕方がないんだよ」
「あそこ、もう居づらくなっちゃったし」
「もう、遠くまで来ちゃったし」
軽やかに枝を蹴り、音もなく着地した二人は下弦の月のように薄く口の端を釣り上げ。
「「……ついたね、王国」」
そう、嗤った。
一方、その頃。
●
「うお……おおおおおッ」
静謐な闇の玉座より響く、悲嘆の叫び。
「私の……クラベルよおおおぉぉぉッ」
途方もない怒りを遮るように、現れた“異形”が言う。
「ふむ、存外に脆かったな」
尾を一度動かすだけの“それ”に、黒大公ベリアルは悲憤を隠さない。
「メフィスト、貴様ぁッ!!」
玉座を立ち、獣の瞳をぎらつかせる巨体を制し、メフィストと呼ばれた異形は笑い声をあげた。その声が、恐ろしいまでの冷たさをもって場を支配する。あのベリアルが、笑い声一つで黙らされたのだ。
あとじさる哀れな羊に尚も笑いかけるメフィストは、殺気立っていた羊の腹を軽く叩く。
「こんなにも心惹かれるのは久方ぶりだな。なに、ベリアル。6年前の傷も癒えたのだろう? 今度はもっとマシなものを作れ。“あの御方”の怒りに触れぬように、な」
青ざめるベリアルを残し、身を翻す異形。冷たい廊下に響く足音。メフィストの姿が徐々に闇に溶け行く中、
「探究は退屈を紛らわす。それが主への手柄足りうるものならば、猶の事な」
最後に残った声はどこか愉悦を含む色をしていたのだった。
●
王国東部。寒さも深くなってきたが、陽の光は幾ばくかの温かみを世界に届けている。
その光に支えられるように、街道を往く者が、二人。
幼子である。襤褸に似た巡礼衣を身にまとい、肩を並べる姿は信心深い者にとっては試練の象徴であると同時に、光差す道程を感じさせる光景かもしれない。
王国の中でも比較的安全な南部、東部の巡礼には、彼らのような子供たちが出されることは少なくない。彼らの多くは何らかの事情で食い詰めたものが教会の戸を叩いた結果、巡礼の旅に出る。
――そのことを『彼』は知っていた。
(……俺の担当は楽でイイ)
他所へ回されている同胞と比べると破格の楽さであると『彼』は思う。
男の心中に、昏い願望が淡く咲く。
生きることの希望の為に、教会の戸を叩いたであろう二人。
二人して寒さをしのぎ、巡礼の果てに篤く夢を――エクラの加護を見る二人。
全ては幻だ。エクラが見せる幻影、まやかしに踊らされている二人が、哀れで仕方がない。
『彼』は歩む足を速めた。
「――目を、覚ませ」
近づいて、近づいて、その頭衣に頭を寄せた『彼』は二人に向かいそう言って。
「ねえ、やっときたよ、イエ」
「そうだねぇ、ユエ」
彼の人生――とうに捨てたものであったとはいえ――で最大の不幸の蓋を、開く事になったのだった。
「くすくす」
「くすくす」
湧き上がった可愛らしい笑い声に、『彼』の理解が追いつかない。何だ? 何だ? 何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だこれは!?
「バカなヤツだねえ、イエ」
「バカなヤツだよお、ユエ」
「バレてるのことに気づかないなんて」
「”成り立て”かなぁ、きみィ……?」
「なっ……!?」
何が起こったのか、解らない。ただ、『彼』は幼子のうちの一人に取り込まれつつあった。黒い。黒黒とした泥が、ぬらりぬらりと『彼』を覆おうとする。
「まあいいや。あの子たちは譲ってあげたんだから。コレはぼくが食べちゃうね、イエ」
「うん、いいよ、ユエ。いっぱいお食べ」
『彼』の頭部はまだ覆われていなかった。身体全体を包まれ、身動きが取れなくなった『彼』は死の恐怖に怯えながら、息を深く、吸った。
死ぬ。死ぬ。死ぬ。嫌だ。震えだしそうになる身体は、強く固定されている。
だから。
だから彼は、その御名を、叫んだのだ。
●
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―――ッッッ!!!!」
遠くから響いた声に、ハンター達は駆けた。了解不能の絶叫に只ならぬ事態だと悟ったからだ。ただ、巡礼路の警戒を依頼されていただけの、不可思議な依頼だった。そこに、これだ。遠くから届いた絶叫に、当たりか、と。誰かが呟いた。不吉な予感を払って、辿り着いた先。
「気が変わったや……この子は連れていくね、イエ」
「うん、わかった。この子たちと遊んでくね」
黒々とした『泥』に崩れた――半藏ユエと、巡礼衣を着たままの、半藏イエ。
そして、同じく巡礼衣を着込んだ『男』。こちらはすでに、ユエの下腹部が変じた泥に取り込まれ、身動きも取れない様子である。背負った二本の刀を指差して、ユエは、イエとハンター達をちらと見て。
「九弦の刀は?」
「いらなぁい」
「そ。じゃあね、イエ」
「じゃ、ね。ユエ」
そのまま、泥に変じた身体で滑るように、東へ――リンダールの森と呼ばれる大森林へと向かっていった。追走しようとするハンター達を前に、残ったのはただ一人、金眼の『半藏』イエ。
イエは静止したまま、口元だけをゆるりと釣り上げて、笑った。
「……来てくれて、良かったよ。『あの子』達だけじゃ、足りなかったんだぁ……」
そうして、手や足、胴――『衣服以外』を泥に変じさせながら、ハンター達の方へと飛び込んできた。
深い深い森の中で、二つの声が響いていた。
「遠かったね、イエ」
「そうだね、ユエ」
少女とも、少年ともつかぬ幼い声が零れた。その姿も、声もよく似ている二人。
かつて、彼らは東方に居た。その時から変わらず微笑みに縁取られた瞳とその色は金と銀。
ただ、その声色には不快の色があった。
「……どっちが言い出したんだっけ、イエ」
「僕じゃないとおもうよ、ユエ」
ぶす、と不満気に頬を膨らませた銀目の『少女』ユエと、同じく不満気な顔の『少年』イエは――リンダールの森、王国東部の樹上を泳ぐように進みながら、幾度目とも知れぬ戯れ言を交わしていた。
「仕方がないんだよね」
「うん、仕方がないんだよ」
「あそこ、もう居づらくなっちゃったし」
「もう、遠くまで来ちゃったし」
軽やかに枝を蹴り、音もなく着地した二人は下弦の月のように薄く口の端を釣り上げ。
「「……ついたね、王国」」
そう、嗤った。
一方、その頃。
●
「うお……おおおおおッ」
静謐な闇の玉座より響く、悲嘆の叫び。
「私の……クラベルよおおおぉぉぉッ」
途方もない怒りを遮るように、現れた“異形”が言う。
「ふむ、存外に脆かったな」
尾を一度動かすだけの“それ”に、黒大公ベリアルは悲憤を隠さない。
「メフィスト、貴様ぁッ!!」
玉座を立ち、獣の瞳をぎらつかせる巨体を制し、メフィストと呼ばれた異形は笑い声をあげた。その声が、恐ろしいまでの冷たさをもって場を支配する。あのベリアルが、笑い声一つで黙らされたのだ。
あとじさる哀れな羊に尚も笑いかけるメフィストは、殺気立っていた羊の腹を軽く叩く。
「こんなにも心惹かれるのは久方ぶりだな。なに、ベリアル。6年前の傷も癒えたのだろう? 今度はもっとマシなものを作れ。“あの御方”の怒りに触れぬように、な」
青ざめるベリアルを残し、身を翻す異形。冷たい廊下に響く足音。メフィストの姿が徐々に闇に溶け行く中、
「探究は退屈を紛らわす。それが主への手柄足りうるものならば、猶の事な」
最後に残った声はどこか愉悦を含む色をしていたのだった。
●
王国東部。寒さも深くなってきたが、陽の光は幾ばくかの温かみを世界に届けている。
その光に支えられるように、街道を往く者が、二人。
幼子である。襤褸に似た巡礼衣を身にまとい、肩を並べる姿は信心深い者にとっては試練の象徴であると同時に、光差す道程を感じさせる光景かもしれない。
王国の中でも比較的安全な南部、東部の巡礼には、彼らのような子供たちが出されることは少なくない。彼らの多くは何らかの事情で食い詰めたものが教会の戸を叩いた結果、巡礼の旅に出る。
――そのことを『彼』は知っていた。
(……俺の担当は楽でイイ)
他所へ回されている同胞と比べると破格の楽さであると『彼』は思う。
男の心中に、昏い願望が淡く咲く。
生きることの希望の為に、教会の戸を叩いたであろう二人。
二人して寒さをしのぎ、巡礼の果てに篤く夢を――エクラの加護を見る二人。
全ては幻だ。エクラが見せる幻影、まやかしに踊らされている二人が、哀れで仕方がない。
『彼』は歩む足を速めた。
「――目を、覚ませ」
近づいて、近づいて、その頭衣に頭を寄せた『彼』は二人に向かいそう言って。
「ねえ、やっときたよ、イエ」
「そうだねぇ、ユエ」
彼の人生――とうに捨てたものであったとはいえ――で最大の不幸の蓋を、開く事になったのだった。
「くすくす」
「くすくす」
湧き上がった可愛らしい笑い声に、『彼』の理解が追いつかない。何だ? 何だ? 何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だこれは!?
「バカなヤツだねえ、イエ」
「バカなヤツだよお、ユエ」
「バレてるのことに気づかないなんて」
「”成り立て”かなぁ、きみィ……?」
「なっ……!?」
何が起こったのか、解らない。ただ、『彼』は幼子のうちの一人に取り込まれつつあった。黒い。黒黒とした泥が、ぬらりぬらりと『彼』を覆おうとする。
「まあいいや。あの子たちは譲ってあげたんだから。コレはぼくが食べちゃうね、イエ」
「うん、いいよ、ユエ。いっぱいお食べ」
『彼』の頭部はまだ覆われていなかった。身体全体を包まれ、身動きが取れなくなった『彼』は死の恐怖に怯えながら、息を深く、吸った。
死ぬ。死ぬ。死ぬ。嫌だ。震えだしそうになる身体は、強く固定されている。
だから。
だから彼は、その御名を、叫んだのだ。
●
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―――ッッッ!!!!」
遠くから響いた声に、ハンター達は駆けた。了解不能の絶叫に只ならぬ事態だと悟ったからだ。ただ、巡礼路の警戒を依頼されていただけの、不可思議な依頼だった。そこに、これだ。遠くから届いた絶叫に、当たりか、と。誰かが呟いた。不吉な予感を払って、辿り着いた先。
「気が変わったや……この子は連れていくね、イエ」
「うん、わかった。この子たちと遊んでくね」
黒々とした『泥』に崩れた――半藏ユエと、巡礼衣を着たままの、半藏イエ。
そして、同じく巡礼衣を着込んだ『男』。こちらはすでに、ユエの下腹部が変じた泥に取り込まれ、身動きも取れない様子である。背負った二本の刀を指差して、ユエは、イエとハンター達をちらと見て。
「九弦の刀は?」
「いらなぁい」
「そ。じゃあね、イエ」
「じゃ、ね。ユエ」
そのまま、泥に変じた身体で滑るように、東へ――リンダールの森と呼ばれる大森林へと向かっていった。追走しようとするハンター達を前に、残ったのはただ一人、金眼の『半藏』イエ。
イエは静止したまま、口元だけをゆるりと釣り上げて、笑った。
「……来てくれて、良かったよ。『あの子』達だけじゃ、足りなかったんだぁ……」
そうして、手や足、胴――『衣服以外』を泥に変じさせながら、ハンター達の方へと飛び込んできた。
解説
目的:半藏イエの撃退
解説:王国東部の街道沿い、周囲は平野。時刻は10時頃。皆様ハンター達は街道の警らを依頼されており、遠くから聞こえた悲鳴に駆けつけたところ、半藏イエとユエに遭遇しました。
『男』を取り込んだユエは全速離脱しており、東にある大森林(通称リンダールの森と呼ばれています)へと向かっております。目測で移動力4はありそうですが、全速力かどうかは不明。イエはハンターとユエとの間に立ってへらへら笑っています。
▼位置関係
ハンター達からイエまで:20Sq
イエからユエまで:100Sq
ユエから森まで:300Sq
●敵情報
・半藏イエ
身体が粘質な黒い泥で構成されている歪虚忍者。元は諜報・暗殺などを専門としていた武門『半藏』の出であり、機動性に優れる。
以下の能力が明らかになっています。
『泥』:黒い泥状の物体により、抵抗判定に失敗するとBSによるスリップダメージが加わります。
『大食い』:『泥』の性質の別の表現形。瀕死などにより抵抗判定が『不能』になったものを取り込み、吸収する。
『傀儡召喚』:イエに似た泥を作成しユニット化。近接攻撃、射撃攻撃を行います。
『大蛭化』:身体を構成する『泥』の形状を変化させ、サイズ変化します。
・半藏ユエ
イエとほぼ同等の能力を持つものと思われる。現在『男』を取り込んで逃走中。
二本の刀を背負って逃走中。東方の『九弦』の名に覚えがある方は、この刀を警戒してもよいし、しなくてもよい。
解説:王国東部の街道沿い、周囲は平野。時刻は10時頃。皆様ハンター達は街道の警らを依頼されており、遠くから聞こえた悲鳴に駆けつけたところ、半藏イエとユエに遭遇しました。
『男』を取り込んだユエは全速離脱しており、東にある大森林(通称リンダールの森と呼ばれています)へと向かっております。目測で移動力4はありそうですが、全速力かどうかは不明。イエはハンターとユエとの間に立ってへらへら笑っています。
▼位置関係
ハンター達からイエまで:20Sq
イエからユエまで:100Sq
ユエから森まで:300Sq
●敵情報
・半藏イエ
身体が粘質な黒い泥で構成されている歪虚忍者。元は諜報・暗殺などを専門としていた武門『半藏』の出であり、機動性に優れる。
以下の能力が明らかになっています。
『泥』:黒い泥状の物体により、抵抗判定に失敗するとBSによるスリップダメージが加わります。
『大食い』:『泥』の性質の別の表現形。瀕死などにより抵抗判定が『不能』になったものを取り込み、吸収する。
『傀儡召喚』:イエに似た泥を作成しユニット化。近接攻撃、射撃攻撃を行います。
『大蛭化』:身体を構成する『泥』の形状を変化させ、サイズ変化します。
・半藏ユエ
イエとほぼ同等の能力を持つものと思われる。現在『男』を取り込んで逃走中。
二本の刀を背負って逃走中。東方の『九弦』の名に覚えがある方は、この刀を警戒してもよいし、しなくてもよい。
マスターより
お世話になっております、ムジカ・トラスです。
鹿野MS、藤山MS両名が進めてきた【審判】にお邪魔させていただきます。
東方からこんにちは、シノビブラザーズ……シスターズ? の半藏です。
上司命令をぶっちした結果東方に居づらくなって遠く西方までやって来ちゃいました。
【審判】を取り巻く状況はよくわからなくても大丈夫、目の前のイエを打ち倒せばいい、そんなシナリオです。
今回のイエは特に遠慮はしませんが、前回の激戦で消耗している模様ではあります。その戦闘内容は、特に変わらないですけれども。
それでは。いざ、尋常に。
鹿野MS、藤山MS両名が進めてきた【審判】にお邪魔させていただきます。
東方からこんにちは、シノビブラザーズ……シスターズ? の半藏です。
上司命令をぶっちした結果東方に居づらくなって遠く西方までやって来ちゃいました。
【審判】を取り巻く状況はよくわからなくても大丈夫、目の前のイエを打ち倒せばいい、そんなシナリオです。
今回のイエは特に遠慮はしませんが、前回の激戦で消耗している模様ではあります。その戦闘内容は、特に変わらないですけれども。
それでは。いざ、尋常に。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/12/18 06:24
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/02 11:24:46 |
|
![]() |
相談卓 リーリア・バックフィード(ka0873) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/12/07 00:01:32 |